(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086189
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】吸収性コア及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20240620BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20240620BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240620BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240620BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61F13/49 100
A61F13/47 300
A61F13/53 300
A61F13/532 200
A61F13/535 200
A61F13/49 315Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201199
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 啓介
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA13
3B200BB11
3B200CA08
3B200DA08
3B200DA11
3B200DB01
3B200DB05
3B200DB11
(57)【要約】
【課題】着用者へのフィット性及び体液の吸収効率に優れた吸収性物品を提供すること。
【解決手段】吸収性物品1は、剛性が互いに異なる第1領域15、第3領域17及び第2領域16を、着用者の前後方向に対応する縦方向Xに沿ってこの順で有する吸収性コア7を備えている。第1領域15は第2領域16よりも縦方向Xの剛性が高く、第2領域16は第3領域17よりも縦方向Xの剛性が高い。第3領域17は、吸収性コア7に横方向Yに沿って折り線が形成されるように該吸収性コア7を変形させ得る第1の変形誘導部21を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有し、剛性が互いに異なる第1領域、第3領域及び第2領域を、前記縦方向に沿ってこの順で有する吸収性コアであって、
前記第1領域は前記第2領域よりも前記縦方向の剛性が高く、
前記第2領域は前記第3領域よりも前記縦方向の剛性が高く、
前記第3領域は前記吸収性コアに前記横方向に沿って折り線が形成されるように該吸収性コアを変形させ得る第1の変形誘導部を含む、吸収性コア。
【請求項2】
前記第1領域の前記縦方向の剛性が5.0gf・cm2/cm以上20.0gf・cm2/cm以下であり、前記第2領域の前記縦方向の剛性が3.0gf・cm2/cm以上5.0gf・cm2/cm以下である、請求項1に記載の吸収性コア。
【請求項3】
前記第3領域の前記縦方向の剛性が0gf・cm2/cm超3.0gf・cm2/cm以下である、請求項1又は2に記載の吸収性コア。
【請求項4】
前記第1の変形誘導部は少なくとも前記吸収性コアの両側縁から前記横方向の内方へ向けて配されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項5】
前記第1の変形誘導部は、前記横方向の長さが10mm以上であり、前記縦方向の長さが10mm以上50mm以下である、請求項4に記載の吸収性コア。
【請求項6】
前記第1の変形誘導部は、前記第3領域における第1の変形誘導部以外の坪量よりも低く、
前記第1の変形誘導部の坪量が0g/m2超50g/m2以下である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項7】
前記第1の変形誘導部は接着剤を含有しない、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項8】
前記第1領域が、前記吸収性コアに前記縦方向に沿って折り線が形成されるように該吸収性コアを変形させ得る第2の変形誘導部を有する、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の吸収性コア。
【請求項9】
前記第2の変形誘導部の坪量は、前記第1領域における前記第2の変形誘導部以外の坪量よりも低く、
前記第2の変形誘導部の坪量が0g/m2以上50g/m2以下である、請求項8に記載の吸収性コア。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の吸収性コアを備えた吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収性コアが、前記第1の変形誘導部とは別に、前記横方向に沿う折り線を有する、請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記第1の変形誘導部が、前記吸収性物品を前記縦方向に二等分する中央線よりも背側部側に配されている、請求項10又は11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記第1の変形誘導部が、前記吸収性物品を前記縦方向に二等分する中央線よりも腹側部側に配されている、請求項10又は11に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記吸収性物品は、前記縦方向に沿って伸びる伸縮性部位を有し、
前記第1の変形誘導部が、前記伸縮性部位と厚み方向において重なる部分を有する、請求項10ないし13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性コア及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品に用いられる吸収性コアにおいて、溝やスリット等の変形誘導部を設けることによって着用者へのフィット性を向上させる技術が知られている。例えば特許文献1には、吸収性コアの長手方向における前方域及び後方域に、側縁から幅方向内方及び長手方向内方に向かって入り込んだ一対の変形誘導部を有する吸収性物品が記載されている。該吸収性コアは、長手方向に沿う両側部に、一対の長手方向変形誘導部を更に有している。
【0003】
特許文献2には、坪量の異なる第1領域及び第2領域を少なくとも有し、第1領域は少なくとも股下部を含み、第2領域は少なくとも背側部を含む吸収性コアを備えたパンツ型吸収性物品が記載されている。該吸収性コアの第1領域は吸収性コアの長手方向に延びる折曲誘導部からなる折曲誘導部群を有している。
【0004】
特許文献3には、幅方向における吸収コアの両外側縁に位置する一対のサイドスリットを有する吸収性コアを備えた吸収性物品が記載されている。該一対のサイドスリットの最も内側に位置する内縁部は、前記吸収コアの後端縁と、吸収性物品を2つ折りにするための折り線との中間線よりも後側に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-117321号公報
【特許文献2】国際公開第2015/072218号パンフレット
【特許文献3】特開2019-118576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ないし3に記載のとおり、変形誘導部を有する吸収性コアを備えた吸収性物品は種々提案されているものの、着用者へのフィット性や体液の吸収効率を一層高めたいという要求がある。
したがって本発明の課題は、着用者へのフィット性及び体液の吸収効率に優れた吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有し、剛性が互いに異なる第1領域、第3領域及び第2領域を、前記縦方向に沿ってこの順で有する吸収性コアに関する。
一実施形態において、前記第1領域は前記第2領域よりも前記縦方向の剛性が高いことが好ましい。
一実施形態において、前記第2領域は前記第3領域よりも前記縦方向の剛性が高いことが好ましい。
一実施形態において、前記第3領域は前記吸収性コアに前記横方向に沿っており線が形成されるように該吸収性コアを変形させ得る第1の変形誘導部を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、着用者へのフィット性及び体液の吸収効率に優れた吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを展開し且つ最大伸長状態にて肌対向面側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すおむつのII-II線に沿う断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すおむつにおける吸収性コアを肌対向面側から見た平面図、及び側面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す吸収性コアが、該吸収性コアに横方向に沿って折り線が形成されるように変形した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)及び(b)はそれぞれ、
図1に示すおむつにおける吸収性コアの別の実施形態を肌対向面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1及び2には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ(以下単に「おむつ」ともいう。)1が示されている。
【0011】
図1及び2に示すおむつ1は、その装着状態において着用者の腹側に位置する腹側部F及び背側に位置する背側部Rと、腹側部F及び背側部Rの間に位置する股下部Mとを有する。股下部Mは、おむつ1の装着状態において着用者の尿道や肛門等の排泄部に対向配置される。腹側部Fは、おむつ1の着用状態において股下部Mよりも着用者の腹側、即ち前側に配される部位である。背側部Rは、おむつ1の着用状態において股下部Mよりも着用者の背側、即ち後側に配される部位である。
おむつ1は、着用者の前後方向に対応する縦方向X及びこれに直交する横方向Yを有する。本明細書において、「着用者の前後方向」とは、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向を指す。おむつ1は、腹側部Fから股下部Mを介して背側部Rに延びる縦方向Xに延在している。
【0012】
おむつ1は、液保持性の吸収体4を有する吸収性本体5と、該吸収性本体5の非肌対向面側に配された外装体3とを備えている。外装体3において、腹側部F及び背側部Rそれぞれにおける縦方向Xに沿う両側部1F,1Rどうしは、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。これによって、おむつ1は、両側部1F,1Rどうしが接合された一対のサイドシール部(図示せず)を有し、更に着用者の胴が通されるウエスト開口部、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部を有する(図示せず)。
【0013】
本明細書において「肌対向面」とは、おむつ又はその構成部材(例えば吸収体)に着目したときに、おむつの装着状態において着用者の肌に向けられる面である。「非肌対向面」とは、おむつの装着状態において着用者の肌とは反対側に向けられる面である。
【0014】
吸収性本体5は、平面視長方形形状をなし、縦方向Xに延在しており、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の横方向Yの中央部に配置されている。吸収性本体5は、接着剤等の公知の接合手段によって外装体3に接合されている。
【0015】
図2に示すように、吸収性本体5は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート12、非肌対向面を形成する液不透過性又は液難透過性又は撥水性の防漏シート13、及びこれら表面シート12及び防漏シート13間に配された液保持性の吸収体4を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。
吸収体4は、尿等の体液を吸収保持する機能を有する。吸収体4は、吸液性材料を含む吸収性コア7と、該吸収性コア7の表面を被覆する液透過性のコアラップシート9を含んで構成されている。吸液性材料としては、例えばパルプ繊維等の親水性繊維、吸水性ポリマーの粒子、及びそれらの混合物などを用いることができる。
吸収体4においては、吸収性コア7の肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域が、コアラップシート9で覆われている。これに代えて、吸収性コア7は、その肌対向面のみがコアラップシート9で覆われていてもよい。また、吸収体4は、コアラップシート9を具備していなくともよい。
吸収性コア7の詳細については後述する。
【0016】
外装体3は、おむつ1の外形、即ち、腹側部F、股下部M及び背側部Rそれぞれの外形をなしている。外装体3は、
図1に示すように、展開且つ伸長状態の平面視において、腹側部F及び背側部Rでは、縦方向Xよりも横方向Yの長さが長い矩形の形状をなし、股下部Mでは、縦方向Xに沿う両側縁部、即ち一対のレッグ縁部LE,LEが横方向Yの内方に向けて括れた砂時計形状をなしている。外装体3は、展開且つ伸長状態の平面視において、股下部Mのレッグ縁部LEよりも、腹側部F及び背側部Rの縦方向Xに沿う両側縁部が横方向Y外方に張り出している。また外装体3は、腹側部Fの縦方向X外方縁6及び背側部Rの縦方向X外方縁6は、横方向Yに延びており、サイドシール部が形成されたおむつ1においてウエスト開口部を形成する。即ちこれら縦方向X外方縁6は、ウエスト開口部の周縁端WEとなる。
【0017】
外装体3は、内層シート61及び外層シート62が積層されて形成されている。外層シート62は、おむつ1の最外層を形成している。外層シート62は、内層シート61と直接接合されている。内層シート61は、防漏シート13の非肌対向面に直接接合されている。内層シート61及び外層シート62は、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。
【0018】
外装体3における縦方向Xの両端部域であるウエスト開口域1Wには、内層シート61と外層シート62とによって挟持されたウエスト弾性部材63Aが複数本配されている。ウエスト弾性部材63Aは糸ゴム等からなり、横方向Yに伸長可能な状態で両シート61,62間に固定されている。おむつ1の装着状態においてウエスト弾性部材63Aが収縮することによって、ウエスト開口域1Wにウエストギャザーが形成される。
おむつ1のウエスト開口域1Wよりも縦方向Xの内方には胴周り域1Dが位置している。胴周り域1Dには胴周り弾性部材63Bが複数本配されている。胴周り弾性部材63Bは、横方向Yに伸長可能な状態で両シート61,62間に固定されている。おむつ1の装着状態において胴周り弾性部材63Bが収縮することによって、胴周り域1Dに胴周りギャザーが形成される。本明細書において「胴周り域」とは、ウエスト開口域1Wと股下部Mとの間の領域のことである。
【0019】
外装体3は、一対のレッグ開口部それぞれの周縁部を形成するレッグ縁部LEには、内層シート61と外層シート62とによって挟持されたレッグ弾性部材64が1本又は複数本配されている。レッグ弾性部材64は、横方向Yに伸長可能な状態で両シート61,62間に固定されている。おむつ1の装着状態においてレッグ弾性部材64が収縮することによって、股下部Mにレッグギャザー(図示せず)が形成される。
【0020】
図1及び2に示すとおり、おむつ1の肌対向面側における両側域には、縦方向Xに沿って延びる一対の防漏カフ50,50が配されている。
防漏カフ50は、矩形状の防漏カフ形成用シート52と、縦方向Xに伸長可能なカフ弾性部材54とを含んで構成されている。防漏カフ50は、一枚の防漏カフ形成用シート52を二つ折りにし、相対向した二枚の防漏カフ形成用シート52どうしを接合することによって形成されている。相対向した二枚の防漏カフ形成用シート52の間には、カフ弾性部材54が1本以上伸長状態で配されている。それによって防漏カフ50は縦方向Xに沿って伸縮可能な伸縮性部位となっている。防漏カフ50は、横方向Y内方端部が自由端部となっており、横方向Y外方端部が吸収体4の非肌対向面側に巻き込まれて、該吸収体4と防漏シート13との間に接着剤等で固定されている。防漏カフ50は、伸長状態で配されたカフ弾性部材54が収縮することによって、少なくとも股下部Mで起立し、尿等の排泄液の横方向Y外方への流出を阻止する。
【0021】
図3に示すとおり吸収性コア7は、平面視して縦長の略短形の形状をしている。吸収性コア7は、おむつ1に対応して腹側部F、背側部R、股下部M、縦方向X及び横方向Yを有する。吸収性コア7の腹側部Fは、吸収性コア7がおむつ1の腹側部Fと重なっている領域である。吸収性コア7の背側部Rは、吸収性コア7がおむつ1の背側部Rと重なっている領域である。吸収性コア7の股下部Mは、吸収性コア7がおむつ1の股下部Mと重なっている領域である。吸収性コア7の縦方向Xは、おむつ1の縦方向Xと一致している。吸収性コア7の横方向Yは、おむつ1の横方向Yと一致している。
【0022】
吸収性コア7は、剛性が互いに異なる第1領域15、第3領域17及び第2領域16の3つの領域を有する。第1領域15、第3領域17及び第2領域16は、縦方向Xに沿ってこの順で配されている。第3領域17に対して第1領域15は腹側部F側に位置し、第2領域16は背側部R側に位置している。第3領域17は、おむつ1の股下部Mに位置している。第1領域15、第2領域16及び第3領域17はいずれも、横方向Yの全域に連続して存在している。
【0023】
第1領域15、第2領域16及び第3領域17はいずれも同組成の吸液性材料から構成されており、且つ、概ね同密度になっている。後述するとおり、第1領域15、第2領域16及び第3領域17は互いに厚みが相違している。したがって、各領域を、例えば厚みの相違によって区分することができる。
【0024】
第1領域15、第2領域16及び第3領域17は、それらの縦方向Xの剛性が互いに異なっている。詳細には、第1領域15は第2領域16よりも縦方向Xの剛性が高く、第2領域16は第3領域17よりも縦方向Xの剛性が高い。吸収性コア7が剛性の異なる領域を有し、且つ、該3領域のうちの中央に位置する領域である第3領域17の縦方向Xの剛性が最も低いことに起因して、該吸収性コア7は、
図4に示すとおり、第3領域17において、横方向Yに沿って折り線25が形成されるように変形しやすくなる。よって、おむつ1の装着状態において、吸収性コア7は同図に示すとおりに容易に変形し、それによっておむつ1は着用者へのフィット性が向上したものとなる。また着用者の股間部とおむつ1の股下部Mとの間の空間を効率的に確保することができることから、おむつ1の体液の吸収効率を高めることができる。これに加えて、着用者の排尿部付近の圧迫を抑制することができる。
【0025】
第1領域15、第2領域16及び第3領域17の剛性を異ならせるためには種々の手法を採用することができる。例えば(i)各領域の厚みを異ならせる(ii)各領域の密度を異ならせる、(iii)各領域の構成材料を異ならせる、(iv)これらの手法のうちの任意の2つ以上の手法を組み合わせる、ことによって各領域の剛性を異ならせることができる。特に第3領域17に関しては、後述する第1変形誘導部を設けることで剛性を制御することが有利である。
【0026】
吸収性コア7をより確実に変形させ得る観点から、第1領域15の縦方向Xの剛性は好ましくは5.0gf・cm2/cm以上20.0gf・cm2/cm以下、より好ましくは7.5gf・cm2/cm以上10.0gf・cm2/cm以下である。
第2領域16の縦方向Xの剛性は、第1領域15の縦方向Xの剛性よりも低いことを条件として、好ましくは3.0gf・cm2/cm以上5.0gf・cm2/cm未満、より好ましくは3.5gf・cm2/cm以上4.5gf・cm2/cm以下である。
第3領域17の縦方向Xの剛性は、第2領域16の縦方向Xの剛性よりも低いことを条件として、好ましくは0gf・cm2/cm超3.0gf・cm2/cm未満、より好ましくは0gf・cm2/cm超1.5gf・cm2/cm以下である。
第1領域15、第2領域16及び第3領域17の剛性をかかる範囲内に設定するによって、おむつ1の着用者へのフィット性及び体液の吸収効率をより向上させることができる。
【0027】
前記と同様の観点から、第1領域15の縦方向Xの剛性R1に対する第2領域16の縦方向Xの剛性R2の比R2/R1は、0.15以上1.0未満であることが好ましく、0.3以上0.9以下であることがより好ましく、0.45以上0.8以下であることが更に好ましい。また、第1領域15の縦方向Xの剛性R1に対する第3領域17の縦方向Xの剛性R3の比R3/R1は、0以上0.6未満であることが好ましく、0以上0.45以下であることがより好ましく、0以上0.3以下であることが更に好ましい。
第1領域15、第2領域16及び第3領域17の縦方向Xの剛性は以下のように測定することができる。
【0028】
<縦方向Xの剛性の測定方法>
まず、必要に応じて吸収性コア7以外の部材を切り落とす等して、おむつ1から吸収性コア7を取り出す。次いで、縦方向X及び横方向Yに沿って吸収性コア7を切断することによって、測定対象とする領域(第1領域15、第2領域16及び第3領域17のそれぞれ)から、縦方向Xの辺の長さが50mmであり、横方向Yの辺の長さが100mmである略直方体形状のサンプルを切り出す。得られたサンプルについて、カトーテック株式会社製KES-FB2-L(大型曲げ試験機)を用いて三点曲げ試験を行い、縦方向Xの剛性を測定する。
【0029】
着用者へのフィット性の向上効果をより一層高める目的で、第3領域17は、吸収性コア7に横方向Yに沿って折り線25が形成されるように該吸収性コア7を変形させ得る第1の変形誘導部21を含むことが好ましい。第1の変形誘導部21が吸収性コア7の変形をより誘導しやすくする観点から、第1の変形誘導部21は、少なくとも横方向Yにおける吸収性コア7の両側縁から横方向Yの内方へ向けて配されていることが好ましい。詳細には、
図3に示す吸収性コアは、第1の変形誘導部21として一対の切り欠き部24,24を有している。切り欠き部24は、第3領域において横方向Yの両側縁から横方向Yの内方に向けて楔形に吸収性コア7が切り欠かれた部位である。第3領域17が切り欠き部24を有していることによって、吸収性コア7は該一対の切り欠き部24,24における楔形の頂点どうしを結ぶ直線を折り線25として折れ曲がりやすくなる。
なお、切り欠き部24は、吸収性コア7を構成する繊維等の材料を全く有しない領域であってもよく、あるいは少量の繊維等を含む領域であってもよい。
【0030】
第1の変形誘導部21は、吸収性コア7に横方向Yに沿って折り線25が形成されるような変形を誘導できる形態であればよく、楔形の切り欠き部24の形態に限定されるものではない。例えば、
図5(a)に示すとおり、吸収性コア7は第1の変形誘導部21として、切り欠き部24に代えて、圧搾部26を形成してもよい。あるいは、
図5(b)に示すように、吸収性コア7は第1の変形誘導部21として、切り欠き部24に代えて、横方向Yに沿って形成された圧搾溝27を形成してもよい。
【0031】
図5(a)に示す実施形態において、吸収性コア7に形成される圧搾部26は、横方向Yの両側縁から横方向Yの内方に向けて一対設けられている。圧搾部26は、吸収性コア7をその厚み方向に圧縮し、該吸収性コア7の構成材料を圧密化して形成された領域である。一対の圧搾部26,26の間では、吸収性コア7の構成材料は圧密化されていない。
図5(b)に示す実施形態において、吸収性コア7に形成される圧搾溝27は、吸収性コア7の横方向Yの全域に連続して線状に形成されている。これに代えて、圧搾溝27を、点線などの不連続な線状に形成してもよい。圧搾溝27は、吸収性コア7をその厚み方向に圧縮し、該吸収性コア7の構成材料を圧密化して形成された領域である。
【0032】
図5(a)に示す圧搾部26及び
図5(b)に示す圧搾溝27は、吸収性コア7の他の部位に比べて密度が高くなっており且つ厚みが小さくなっている。これによって吸収性コア7は、圧搾部26及び圧搾溝27は折れ曲がりの起点となり、それによって吸収性コア7は横方向Yに沿って折り線が形成されやすくなる。この折り線を一層形成しやすくする観点から、圧搾部26及び圧搾溝27の厚みT1は、吸収性コア7のうち、これらの部位が形成されていない部位の厚みT0に対して0超0.8以下であることが好ましく、0超0.5以下であることが更に好ましく、0.1超0.3以下であることが一層好ましい。
吸収性コア7の厚みは、厚み計PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いて、5cN/cm
2の荷重下で測定する。この時、厚み計の先端部とサンプルとの間に、荷重が5cN/cm
2となるように大きさを調整した平面視円形状又は正方形上プレート(厚み5mm程度のアクリル板)を配置して測定を行う。
【0033】
第1の変形誘導部21である切り欠き部24を含むおむつ1の断面図である
図2に示すとおり、第1の変形誘導部21は、伸縮性部位である防漏カフ50と厚み方向において重なる部分を有することが好ましい。第1の変形誘導部21と防漏カフ50との位置関係をこのように設定することによって、防漏カフ50の収縮に起因して吸収性コア7が第1の変形誘導部21を折り曲がりの起点として一層変形しやすくなるという利点がある。
【0034】
第1の変形誘導部21が吸収性コア7の変形をより誘導しやすくする観点から、第1の変形誘導部21は、いずれの形態であっても、横方向Yの長さが好ましくは10mm以上であり、より好ましくは20mm以上であり、更に好ましくは30mm以上である。また第1の変形誘導部21の縦方向Xの長さは好ましくは10mm以上50mm以下であり、より好ましくは15mm以上30mm以下である。
【0035】
第1の変形誘導部21が吸収性コア7の変形をより誘導しやすくする観点から、第1の変形誘導部21は、第3領域17における第1の変形誘導部21以外の坪量よりも低いことも好ましい。この観点から、第1の変形誘導部21の坪量は好ましくは0g/m2超50g/m2以下、より好ましくは0g/m2超25g/m2以下である。
【0036】
第1の変形誘導部21が吸収性コア7の変形をより誘導しやすくする観点から、第1の変形誘導部21は接着剤を含有しないことが好ましい。この接着剤とは、例えば吸収性コア7を構成する材料どうしを接合するために用いられる剤のことである。
【0037】
第3領域17における変形誘導部による吸収性コア7の変形を一層容易に生じさせることを目的として、
図3に示すとおり、吸収性コア7の厚みを第1領域15で最も大きくし、且つ、第2領域16で最も小さくすることが好ましい。そして第3領域17においては、第1領域15から第2領域16に向けて厚みを連続的に減少させることが好ましい。尤も、第3領域17における厚みの減少の形態はこれに限られず、例えば、第3領域17の厚みは縦方向Xの第1領域15から第2領域16に向けて階段状に減少していてもよい。
吸収性コア7の厚みが上述の関係になっていることによって、着用者の排尿点付近で該吸収性コア7の厚みが大きくなることから液の吸収効率を高めることができる。
【0038】
吸収性コア7の厚みに関連して、該吸収性コア7の縦方向Xの長さは、第1領域15に関しては、好ましくは50mm以上500mm以下、より好ましくは175mm以上400mm以下、更に好ましくは250mm以上350mm以下である。
第2領域の長さは、好ましくは25mm以上200mm以下、より好ましくは50mm以上175mm以下、更に好ましくは75mm以上150mm以下である。
第3領域の長さは、好ましくは10mm以上100mm以下、より好ましくは25mm以上75mm以下である。
【0039】
吸収性コア7は、第1の変形誘導部21とは別に、横方向Yに沿う折り線を有する場合がある。横方向Yに沿う該折り線はおむつ1を縦方向Xに二つ折りする線(以下、おむつ二つ折り線ともいう。)であり、おむつ1を販売する際の梱包をより容易にするものである。したがって、この折り線は、第1の変形誘導部21によって生じる折り線とは、その目的及び作用効果が全く相違する。
【0040】
図1及び3に示すとおり、吸収性コア7の第1の変形誘導部21は、おむつ1を縦方向Xに二等分する中央線CLよりも背側部R側に配されている。これによって、おむつ二つ折り線と相互作用して、おむつ1の着用時に、吸収性コア7がより立体的な構造を形成する。
これに代えて、第1の変形誘導部21は、おむつ1を縦方向Xに二等分する中央線CLよりも腹側部F側に配されていてもよい。第1の変形誘導部21を中央線CLよりも腹側部F側に配することには、背側部R側に配置される場合と同様に、おむつ二つ折り線と相互作用して、おむつ1の着用時に、該吸収性物品がより立体的な構造を形成する。これによって、おむつ装着時に効率的に股下空間が形成され、排尿部におむつが触れなくなることで、肌の快適性の保持や、体液の吸収のために必要な空間の確保が可能となる。なお、かかる効果を得るためには、第1の変形誘導部21がおむつ1を縦方向Xに二等分する中央線CLよりも背側部R側に配され、別の第1の変形誘導部21が中央線CLよりも腹側部F側に配されていてもよい。
【0041】
図3ないし5に示すように、吸収性コア7は、第1領域15が吸収性コア7に縦方向Xに沿って折り線が形成されるように変形させ得る第2の変形誘導部22を有することが好ましい。吸収性コア7は、第2の変形誘導部22を1つ有していてもよいし、複数有していてもよい。
図3ないし5には、3つの変形誘導部22が第1領域15に形成されている状態が示されている。
【0042】
第2の変形誘導部22は、おむつ1おむつ1を装着した状態において、該おむつ1に外力が加わったときに、吸収性コア7の変形の起点ないし可撓軸として作用する部位である。この目的のために、第2の変形誘導部22は、例えば縦方向Xに延びるスリット、溝又は非積繊部からなることが好ましい。スリットとは、吸収性コア7の厚み方向に向けて切り込みを入れた部位のことであり、幅を有していない。溝とは、底部を有する所定幅の細長い凹部のことである。非積繊部とは、溝から底部を除去したものであり、吸収性コア7を構成するパルプ繊維等の積繊体が存在していない部位のことである。第2の変形誘導部22がいずれの形態であっても、それらの幅、すなわち横方向Yの長さは、縦方向Xのいずれの位置においても同じであることが好ましい。
【0043】
吸収性コア7が第2の変形誘導部22を複数有する場合、それらの幅は全て同じであってもよく、異なっていてもよい。特に、各第2の変形誘導部22の幅が同じであると、着用者の体液が吸収性コア7内で均一に、かつ素早く拡散しやすくなり、体液の吸収効率が高まるので好ましい。この利点を一層顕著にする観点から、第2の変形誘導部22の幅は、1mm以上20mm以下であることが好ましく、3mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【0044】
吸収性コア7が第2の変形誘導部22を複数有する場合、それらの縦方向Xの長さは全て同じであってもよく、異なっていてもよい。特に、各第2の変形誘導部22の縦方向Xの長さが同じであると、着用者の体液が吸収性コア7内で均一に、かつ素早く拡散しやすくなり、体液の吸収効率が高まるので好ましい。この利点を一層顕著にする観点から、第2の変形誘導部22の縦方向Xの長さは50mm以上350mm以下であることが好ましく、100mm以上300mm以下であることがより好ましい。
【0045】
第2の変形誘導部22の縦方向Xの長さが全て同じである場合、それらの腹側部F側の端部の、縦方向Xにおける位置は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。同様に、背側部R側の端部の縦方向Xにおける位置は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
図3ないし5に示す実施形態においては、第2の変形誘導部22の腹側部F側の端部の縦方向Xにおける位置は同じであり、したがって背側部R側の端部の縦方向Xにおける位置も同じになっている。
【0046】
第2の変形誘導部22の坪量は、第1領域15における第2の変形誘導部22以外の坪量よりも低いことが好ましい。また第2の変形誘導部22の坪量は好ましくは0g/m2以上50g/m2以下、より好ましくは0g/m2超25g/m2以下である。
【0047】
以上の各実施形態の吸収性コア7は、当該技術分野においてこれまで知られている方法によって製造できる。例えば当該技術分野において公知の積繊装置を用いて吸収性コア7を製造できる。積繊装置は、一般に固定ドラムと、該固定ドラムの外周に配置された回転ドラムとを備えている。回転ドラムはその外周面に、吸液性材料を集積させるための集積用凹部を有している。集積用凹部は、回転ドラムの外周面から内部に向けて空気の吸引が可能な構造になっている。具体的には、集積用凹部は、吸液性材料を集積させる底面が通気性材料から構成されており、該通気性材料の通気性が場所によって異なっている。その結果、該底面は、空気の高吸引部及び低吸引部を有する。高吸引部及び低吸引部は、空気の吸引の程度が異なるので、それによって吸液性材料の集積の程度が高吸引部と低吸引部とで相違し、得られる吸収性コア7の坪量が相違することになる。その結果、吸収性コアに、互いに剛性が異なる部位が生じる。
【0048】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、前記の実施形態は本発明をパンツ型使い捨ておむつに適用したものであるが、本発明の適用対象はこれに限られず、パンツ型使い捨ておむつ以外の形態の使い捨ておむつや、使い捨ておむつ以外の吸収性物品、例えば生理用ナプキン、失禁パッド及びおりものシート等に本発明を適用してもよい。なかでも、本発明は使い捨ておむつに適用されることが好ましい。
また、吸収性コア7は単層構造であることに限られず、多層構造であってもよい。具体的には、例えば吸収性コア7は上層コアと下層コアからなる二層構造を有していてもよい。
また、前記の実施形態では、吸収性コア7は第1領域15、第2領域16及び第3領域17を1つずつ有していたが、これらの領域15ないし17のうち1つ以上を複数有していてもよい。具体的には、例えば吸収性コア7は、縦方向Xに沿って、第1領域15、第3領域17、第2領域16及び第1領域15をこの順で有していてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 パンツ型使い捨ておむつ
3 外装体
5 吸収性本体
7 吸収性コア
15 第1領域
16 第2領域
17 第3領域
21 第1の変形誘導部
22 第2の変形誘導部
50 防漏カフ