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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086202
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】接着シート、発泡硬化体及び電動機
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20240620BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240620BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J201/00
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201217
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】水町 春菜
(72)【発明者】
【氏名】今村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】エイヒラー, イェンス
(72)【発明者】
【氏名】テゲダー, パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ジャコースキー, ジョン
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AB05
4J004AC03
4J004CA06
4J004CD06
4J004EA05
4J004FA08
4J040EC001
4J040EE062
4J040HC10
4J040HC23
4J040HD30
4J040HD35
4J040JA09
4J040JA10
4J040JB02
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA37
4J040KA42
4J040LA08
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】発泡剤を有する膨張可能な接着剤層を備え、発泡硬化後の熱伝導性に優れる接着シートを提供すること。
【解決手段】基材と、基材の一方面上に配置された第一の接着剤層と、基材の他方面上に配置された第二の接着剤層と、を備え、第一の接着剤層が、接着剤(A)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B)と、発泡剤(C)と、を含み、熱伝導性フィラー(B)が、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B-1)を含み、第二の接着剤層が、接着剤(A’)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B’)と、発泡剤(C’)と、を含み、熱伝導性フィラー(B’)が、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B’-1)を含む、接着シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方面上に配置された第一の接着剤層と、
前記基材の他方面上に配置された第二の接着剤層と、
を備え、
前記第一の接着剤層が、接着剤(A)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B)と、発泡剤(C)と、を含み、
前記熱伝導性フィラー(B)の含有量が、前記第一の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、
前記熱伝導性フィラー(B)が、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B-1)を含み、
前記第二の接着剤層が、接着剤(A’)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B’)と、発泡剤(C’)と、を含み、
前記熱伝導性フィラー(B’)の含有量が、前記第二の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、
前記熱伝導性フィラー(B’)が、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B’-1)を含む、
接着シート。
【請求項2】
前記フィラー(B-1)の含有量が、前記第一の接着剤層の全体積基準で、0.1体積%以上であり、
前記フィラー(B’-1)の含有量が、前記第二の接着剤層の全体積基準で、0.1体積%以上である、
請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記第一の接着剤層上に配置されており、前記第一の接着剤層の発泡時に前記接着剤(A)を透過可能な第一の接着剤透過層と、
前記第二の接着剤層上に配置されており、前記第二の接着剤層の発泡時に前記接着剤(A’)を透過可能な第二の接着剤透過層と、
を更に備える、請求項1に記載の接着シート。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラー(B)の含有量が、前記第一の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上30体積%以下であり、
前記熱伝導性フィラー(B’)の含有量が、前記第二の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上30体積%以下である、
請求項3に記載の接着シート。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラー(B)が、窒化ホウ素、窒化アルミ及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を含み、
前記熱伝導性フィラー(B’)が、窒化ホウ素、窒化アルミ及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を含む、
請求項1に記載の接着シート。
【請求項6】
前記フィラー(B-1)が、プレートレット状、ウィスカー状又はアグロメレート状であり、
前記フィラー(B’-1)が、プレートレット状、ウィスカー状又はアグロメレート状である、
請求項1に記載の接着シート。
【請求項7】
前記発泡剤(C)が熱膨張性粒子(C-1)を含み、
前記発泡剤(C’)が熱膨張性粒子(C’-1)を含む、
請求項1に記載の接着シート。
【請求項8】
電動機のステータコアのスロットライナーである、請求項1に記載の接着シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の接着シートの発泡硬化体。
【請求項10】
ステータを備える電動機であって、
前記ステータが、
少なくとも1つのスロットを有するステータコアと、
前記スロット内に少なくとも一部が収容された巻線と、
前記ステータコアと前記巻線とを接着する接着層と、
を備え、
前記接着層が、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着シートの発泡硬化体を含む、電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート、接着シートの発泡硬化体、及び、接着シートの発泡硬化体を含む電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被接着物同士を接着するために接着シートが用いられており、その用途、要求特性等に応じて、様々な構成の接着シートが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ステータコアと巻線とを固定するための接着シートとして、多官能エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、硬化剤としてのフェノール樹脂と、硬化触媒としてのイミダゾール系化合物と、感温性発泡剤とを含有してなる膨張性接着剤層を有する接着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/163514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膨張性接着剤層は、被接着物間の隙間を充填できる点で有用であるが、膨張に伴って接着剤層中に空隙が生じるため、膨張後に十分な熱伝導性を得ることが難しい。
【0006】
本開示は、発泡剤を有する膨張可能な接着剤層を備え、発泡硬化後の熱伝導性に優れる接着シートに関する。また、本開示は、当該接着シートの発泡硬化体であり、高い熱伝導性を有する発泡硬化体に関する。更に、本開示は、当該発泡硬化体を含み、良好な放熱性を有するステータを備える電動機に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面は、基材と、上記基材の一方面上に配置された第一の接着剤層と、上記基材の他方面上に配置された第二の接着剤層と、を備える、接着シートに関する。上記第一の接着剤層は、接着剤(A)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B)と、発泡剤(C)と、を含み、上記熱伝導性フィラー(B)の含有量は、上記第一の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、上記熱伝導性フィラー(B)は、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B-1)を含む。上記第二の接着剤層は、接着剤(A’)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B’)と、発泡剤(C’)と、を含み、上記熱伝導性フィラー(B’)の含有量は、上記第二の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、上記熱伝導性フィラー(B’)は、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B’-1)を含む。
【0008】
このような接着シートは、被接着物の間に配置してから加熱することで第一の接着剤層及び第二の接着剤層が膨張するため、被接着物の間を埋めつつ、被接着物同士を接着することができる。また、第一の接着剤層及び第二の接着剤層が膨張性を有することにより、接着シートの厚さは被接着物間の隙間よりも薄くてよい。このため、上記接着シートは被接着物の間への配置が容易である。
【0009】
また、上記接着シートは、第一の接着剤層及び第二の接着剤層が、熱伝導性フィラーを所定量含有し、且つ、熱伝導性フィラーの少なくとも一部が、アスペクト比が1.3以上のフィラーであるため、発泡硬化後に高い熱伝導性を有する発泡硬化体を形成できる。このような効果が奏される理由の一つは、フィラーのアスペクト比が高いことで、膨張時に生じた気泡と気泡との間が狭い場合でも、接着剤層の一方面側から他方面側への熱伝導路が形成されやすいため、と考えられる。上記接着シートでは、このような熱伝導路の形成により、高い膨張倍率(例えば1.4倍以上)で発泡硬化させた場合でも、高い熱伝導性を有する発泡硬化体が得られる。
【0010】
本開示の更に他の一側面は、ステータを備える電動機に関する。上記ステータは、少なくとも1つのスロットを有するステータコアと、上記スロット内に少なくとも一部が収容された巻線と、上記ステータコアと上記巻線とを接着する接着層と、を備える。また、上記接着層は、上述の接着シートの発泡硬化体を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の接着シートは、発泡剤を有する膨張可能な接着剤層を備え、発泡硬化後の熱伝導性に優れる。また、本開示の発泡硬化体は、当該接着シートの発泡硬化体であり、高い熱伝導性を有する。更に、本開示の電動機は、当該発泡硬化体を含み、良好な放熱性を有するステータを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】接着シートの一態様を示す断面図である。
図2】接着シートの他の一態様を示す断面図である。
図3】発泡硬化体の一態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
【0014】
本実施形態の接着シートは、基材と、基材の一方面上に配置された第一の接着剤層と、基材の他方面上に配置された第二の接着剤層と、を備える。
【0015】
第一の接着剤層は、接着剤(A)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B)と、発泡剤(C)と、を含む。また、第二の接着剤層は、接着剤(A’)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B’)と、発泡剤(C’)と、を含む。
【0016】
熱伝導性フィラー(B)の含有量は、第一の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、熱伝導性フィラー(B)は、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B-1)を含む。
【0017】
熱伝導性フィラー(B’)の含有量は、第二の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、熱伝導性フィラー(B’)は、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B’-1)を含む。
【0018】
本明細書中、アスペクト比は、平均短辺長さに対する平均長辺長さの比を示す。また、平均短辺長さは、透過型電子顕微鏡により観察される粒子投影像の外接矩形のうち、面積が最小となる外接矩形(最小外接矩形)の短辺の平均長さを示す。また、平均長辺長さは、透過型電子顕微鏡により観察される粒子投影像の外接矩形のうち、面積が最小となる外接矩形(最小外接矩形)の長辺の平均長さを示す。なお、短辺及び長辺の平均長さは、1種類のフィラーにつき透過型電子顕微鏡の観察画像を少なくとも3枚取得し、1枚につき10~30個、合計で50個以上のフィラーの短辺及び長辺を測定して求められる平均値である。
【0019】
本実施形態の接着シートは、被接着物の間に配置してから加熱することで第一の接着剤層及び第二の接着剤層が膨張するため、被接着物の間を埋めつつ、被接着物同士を接着することができる。また、本実施形態の接着シートは、第一の接着剤層及び第二の接着剤層が膨張性を有するため、被接着物間の隙間より厚さが薄くてもよく、被接着物の間への配置が容易である。
【0020】
また、本実施形態の接着シートは、第一の接着剤層及び第二の接着剤層が、熱伝導性フィラーを所定量含有し、且つ、熱伝導性フィラーの少なくとも一部が、アスペクト比が1.3以上のフィラーであるため、発泡硬化後に高い熱伝導性を有する発泡硬化体を形成できる。このような効果が奏される理由の一つは、フィラーのアスペクト比が高いことで、膨張時に生じた気泡と気泡との間が狭い場合でも、接着剤層の一方面側から他方面側への熱伝導路が形成されやすいため、と考えられる。本実施形態の接着シートでは、このような熱伝導路の形成により、高い膨張倍率(例えば1.4倍以上)で発泡硬化させた場合でも、高い熱伝導性を有する発泡硬化体が得られる。
【0021】
本実施形態の接着シートは、第一の接着剤層上に配置された第一の接着剤透過層を更に備えていてよい。また、本実施形態の接着シートは、第二の接着剤層上に配置された第二の接着剤透過層を更に備えていてよい。第一の接着剤透過層は、第一の接着剤の発泡時に接着剤(A)を透過可能な層であり、第二の接着剤透過層は、第二の接着剤の発泡時に接着剤(A’)を透過可能な層である。
【0022】
本実施形態の接着シートが第一の接着剤透過層及び第二の接着剤透過層を備える場合、接着シートを被接着物の間に配置してから加熱すると、第一の接着剤層及び第二の接着剤層が熱膨張を開始し、接着剤(A)が第一の接着剤透過層の外側表面に滲み出し、接着剤(A’)が第二の接着剤透過層の外側表面に滲み出る。これにより、加熱前に最外層にあった第一の接着剤透過層及び第二の接着剤透過層の外側に接着剤を到達させることができ、被接着物同士を接着することができる。接着シートの加熱前、すなわち、接着シートを被接着物に対して位置決めするときには、接着シートの最外層には第一の接着剤透過層及び第二の接着剤透過層が配置されているため、接着シートが意図せず被接着物等に被着することが防止されており、作業性に優れる。
【0023】
また、第一の接着剤透過層及び第二の接着剤透過層は、第一の接着剤層及び第二の接着剤層の膨張時に、接着剤(A)及び接着剤(A’)の面方向への拡がりを抑制する部材としても機能し得る。
【0024】
以下、本実施形態の接着シートの各構成について詳述する。
【0025】
(基材)
基材は、第一の接着剤層及び第二の接着剤層を形成するためのベースとなる部分であり、実質的に接着シートの接着面の大きさを規定する部材である。
【0026】
基材は、接着シートの製造段階において、第一の接着剤層及び第二の接着剤層を形成するためのベースとして機能する。このため、基材を構成する材料は、第一の接着剤層及び第二の接着剤層を支持できるだけの強度を有し、且つ、第一の接着剤層及び第二の接着剤層の膨張時(例えば、加熱時)に接着力を低下させない材料であれば、どのような材料であってもよい。
【0027】
また、本実施形態の接着シートを電気絶縁性が必要な用途に用いる場合、基材として絶縁性基材を選択することで、接着シートに電気絶縁性を容易に付与できる。
【0028】
基材を構成する材料は、特に限定されないが、強度、耐熱性及び電気絶縁性に優れ、電動機のステータコアのスロットライナーとして特に有用であるという観点からは、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂(例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド等)、ポリアミド樹脂(例えば、ポリエーテルアミド、ポリアラミド、ナイロン等)、アクリル系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等)、変性ポリフェニレンオキシド等が好ましい。基材は、これらのうち1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0029】
基材の厚さは、被接着物同士の間隔に応じて適宜調整してもよい。被接着物間の隙間が大きい場合には、基材の厚さを増加させることで隙間の充填が容易となる。基材の厚さは、例えば2μm以上であってよく、絶縁破壊電圧がより向上しやすい観点からは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、9μm以上又は11μm以上であってもよい。また、基材の厚さは、接着シートの柔軟性の観点から、例えば200μm以下であってよく、150μm以下、100μm以下又は90μm以下であってもよい。
【0030】
(第一の接着剤層)
第一の接着剤層は、基材の一方面上に配置されており、接着剤(A)と平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B)と発泡剤(C)とを含む。第一の接着剤層は、発泡剤(C)を含むため、被接着物同士の接着時に膨張して、被接着物間の隙間を埋めることができる。
【0031】
接着剤(A)としては、例えば、室温においてほぼ固体状態であり、加熱により流動性が生じ、更に加熱を継続することで硬化可能なものを用いてよい。すなわち、接着剤(A)は熱硬化性接着剤であってよい。このような接着剤としては、例えばエポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0032】
接着剤(A)は、熱硬化性樹脂を含有していてよい。例えば、接着剤(A)がエポキシ系接着剤であるとき、接着剤(A)は、熱硬化性エポキシ樹脂を含有していてよい。
【0033】
熱硬化性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、脂肪族エポキシ樹脂(例えば、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、トリグリシジルアミノフェノール等)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等)、脂環式エポキシ樹脂(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアジペート)等)、臭素化エポキシ樹脂(例えば、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル等)、多官能エポキシ樹脂(例えば、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等)、結晶性エポキシ樹脂(例えば、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル等)等が挙げられる。これらは単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
接着剤(A)は、硬化剤を更に含有していてもよい。硬化剤は、熱硬化性樹脂を硬化可能な硬化剤であればよく、公知の硬化剤から適宜選択してよい。硬化剤としては、発泡剤(C)の発泡前の硬化を避ける観点から、潜在性硬化剤が好ましい。
【0035】
接着剤(A)がエポキシ系接着剤であるとき、硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、等が挙げられる。
【0036】
硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂の種類及び硬化剤の種類に応じて適宜調整してよい。硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば1質量部以上であってよく、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上又は5質量部以上であってもよい。また、硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば20質量部以下であってよく、18質量部以下、16質量部以下、14質量部以下、12質量部以下又は10質量部以下であってもよい。
【0037】
接着剤(A)は、硬化促進剤を更に含有していてもよい。硬化促進剤を、熱硬化性樹脂の硬化剤による硬化を促進可能なものであればよく、公知の硬化促進剤から適宜選択してよい。
【0038】
接着剤(A)がエポキシ系接着剤であるとき、硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤(例えば、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン等)、ウレア系硬化促進剤(例えば、4,4’-メチレンビスフェニルジメチルウレア、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア等)等が挙げられる。
【0039】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂の種類及び硬化剤の種類に応じて適宜調整してよい。硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、0.2質量部以上、0.3質量部以上、0.4質量部以上又は0.5質量部以上であってもよい。また、硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、8質量部以下、6質量部以下、4質量部以下又は2質量部以下であってもよい。
【0040】
接着剤(A)は、熱可塑性樹脂を更に含有していてもよい。
【0041】
接着剤(A)は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えばシランカップリング剤等が挙げられる。
【0042】
熱伝導性フィラー(B)は、平均短辺長さが1μm以上のフィラーである。
【0043】
平均短辺長さが1μm未満のフィラーは、熱伝導性への寄与が低く、熱伝導性フィラーとして機能し難い。熱伝導性フィラー(B)の平均短辺長さは、1μm以上であり、熱伝導性への寄与がより大きくなる観点からは、1.5μm以上又は2μm以上であってもよい。また、熱伝導性フィラー(B)の平均短辺長さは、例えば100μm以下であってよく、90μm以下、80μm以下又は70μm以下であってもよい。
【0044】
熱伝導性フィラー(B)の含有量は、第一の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上であり、発泡硬化体の熱伝導性がより向上する観点からは、3体積%以上、5体積%以上又は10体積%以上であってもよい。熱伝導性フィラー(B)の含有量は、第一の接着剤層の全体積基準で、37体積%以下であり、被接着物との接着強度がより向上する観点からは、35体積%以下又は33体積%以下であってもよい。
【0045】
また、接着シートが第一の接着剤透過層を有する場合、接着剤(A)が第一の接着剤透過層を透過しやすくなり、被接着物との高い接着強度が得られやすい観点から、熱伝導性フィラー(B)の含有量は、第一の接着剤層の全体積基準で、30体積%以下、27質量%以下、25質量%以下、23質量%以下、21質量%以下、19質量%以下、17質量%以下又は15質量%以下であってもよい。
【0046】
熱伝導性フィラー(B)の材質は特に限定されず、公知の熱伝導性フィラーから適宜選択できる。熱伝導性フィラー(B)は、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミ、アルミナ、酸化マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0047】
熱伝導性フィラー(B)は、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B-1)を含んでいてよい。このようなフィラー(B-1)は、アスペクト比が高いため、膨張時に生じた気泡と気泡との間が狭い場合でも、接着剤層の一方面側から他方面側への熱伝導路を形成しやすい。このため、フィラー(B-1)によれば、高い膨張倍率(例えば1.4倍以上)で発泡硬化させた場合でも、高い熱伝導性を有する発泡硬化体が得られる。
【0048】
フィラー(B-1)の形状は、上記アスペクト比を満たす形状であれば特に限定されないが、例えば、プレートレット状、ウィスカー状、アグロメレート状等であってよい。
【0049】
フィラー(B-1)のアスペクト比は、上記効果がより顕著に奏される観点から、例えば1.4以上、1.5以上又は1.6以上であってもよい。
【0050】
フィラー(B-1)のアスペクト比は、例えば200以下であってよく、150以下又は100以下であってもよい。
【0051】
フィラー(B-1)がプレートレット状又はアグロメレート状である場合、フィラー(B-1)のアスペクト比は、例えば50以下、30以下、10以下、5以下又は3以下であってもよい。フィラー(B-1)がウィスカー状である場合、フィラー(B-1)のアスペクト比は、例えば50を超えていてよく、60以上、70以上、80以上又は90以上であってもよい。
【0052】
フィラー(B-1)の平均短辺長さは、熱伝導性フィラー(B)の平均短辺長さと同様であってよい。
【0053】
本実施形態では、アスペクト比の高いフィラー(B-1)により、気泡と気泡との間で熱伝導路が効率良く形成される。熱伝導性フィラー(B)は、少なくとも一部がフィラー(B-1)であればよく、全部がフィラー(B-1)であってもよい。
【0054】
熱伝導路をより多く形成する観点から、フィラー(B-1)の含有量は、第一の接着剤層の全体積基準で、例えば0.01体積%以上であってよく、0.05体積%以上、0.1体積%以上又は0.15体積%以上であってもよい。
【0055】
熱伝導性フィラー(B)は、アスペクト比が1.3未満のフィラー(B-2)を更に含んでいてもよい。すなわち、熱伝導性フィラー(B)は、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B-1)とアスペクト比が1.3未満のフィラー(B-2)とを含んでいてもよい。
【0056】
熱伝導性フィラー(B)に占めるフィラー(B-1)の割合は、熱伝導性フィラー(B)の全体積基準で、例えば0.1体積%以上であってよく、熱伝導路をより効率良く形成する観点からは、0.3体積%以上、0.5体積%以上、0.7体積%以上又は1体積%以上であってもよい。
【0057】
フィラー(B-1)のアスペクト比が50を超える場合(例えばフィラー(B-1)がウィスカー状である場合)、熱伝導性フィラー(B)に占めるフィラー(B-1)の割合は、熱伝導性フィラー(B)の全体積基準で、例えば100体積%以下であってよく、50体積%以下、30体積%以下、10体積%以下、5体積%以下又は3体積%以下であってもよい。
【0058】
フィラー(B-1)のアスペクト比が50以下である場合(例えばフィラー(B-1)がプレートレット状又は塊状である場合)、熱伝導性フィラー(B)に占めるフィラー(B-1)の割合は、熱伝導性フィラー(B)の全体積基準で、例えば10体積%以上、30体積%以上、50体積%以上、70体積%以上又は90体積%以上であってもよく、100体積%であってもよい。
【0059】
発泡剤(C)は、被接着物との接着時に発泡し、接着剤層を膨張させることができる発泡剤であればよい。発泡剤(C)は感温性発泡剤であることが好ましい。
【0060】
発泡剤(C)としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド類等の無機系発泡剤;トリクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン系化合物、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物、N,N-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ化合物等の有機系発泡剤;熱膨張剤(例えば炭化水素系化合物等)をマイクロカプセル化させた熱膨張性マイクロカプセル;等が挙げられる。これらのうち、接着剤(A)の硬化を阻害し難い観点からは、熱膨張性粒子(C-1)が好ましい。
【0061】
熱膨張性粒子(C-1)は、例えば、熱可塑性樹脂のシェルとシェルに内包された膨張剤(例えば、液状炭化水素)とを含むものであってよい。熱膨張性粒子(C-1)としては、例えば、マツモトマイクロスフィアー(登録商標)の各シリーズ(松本油脂製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0062】
発泡剤(C)の発泡開始温度(Tc)は、例えば、90℃以上であってよく、接着剤(A)が十分に軟化した後に発泡が開始しやすい観点からは、95℃以上又は100℃以上であってもよい。また、発泡剤(C)の発泡開始温度(Tc)は、例えば、140℃以下であってよく、接着剤(A)の硬化前に十分な膨張倍率が得られやすい観点からは、135℃以下又は130℃以下であってもよい。
【0063】
発泡剤(C)の含有量は、後述の膨張倍率を達成し得る含有量であってよい。発泡剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、例えば0.5質量部以上であってよく、1質量部以上、3質量部以上又は5質量部以上であってもよい。また、発泡剤(C)の含有量は、例えば30質量部以下であってよく、25質量部以下又は20質量部以下であってもよい。
【0064】
第一の接着剤層は、加熱によって発泡及び硬化する。第一の接着剤層の発泡倍率は、特に限定されず、発泡硬化体に要求される熱伝導率及び接着強度、被接着物同士の間隔等に応じて適宜決定してよい。第一の接着剤層の発泡倍率は、例えば1.5倍以上であってよく、2倍以上、2.5倍以上又は3倍以上であってもよい。また、第一の接着剤層の発泡倍率は、例えば10倍以下であってよく、9倍以下、8倍以下又は7倍以下であってもよい。なお、発泡倍率が大きいほど発泡により生じた空隙が多くなり、発泡硬化後の熱伝導性が低くなる傾向がある。本明細書中、第一の接着剤層の発泡倍率は、発泡硬化前後の第一の接着剤層の厚さの比として求められる値である。
【0065】
第一の接着剤層の発泡倍率は、例えば、発泡剤(C)の含有量等により適宜調整することができる。
【0066】
第一の接着剤層は、接着剤(A)、熱伝導性フィラー(B)及び発泡剤(C)以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、増粘剤、耐衝撃性改良剤等が挙げられる。
【0067】
増粘剤としては、例えば、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0068】
増粘剤の含有量は特に限定されない。第一の接着剤層は、接着剤(A)、熱伝導性フィラー(B)、発泡剤(C)及び溶剤を含有する塗液を、塗布及び乾燥して形成されたものであってよい。増粘剤は、当該塗液の粘度が、塗布に好適な粘度となるように配合されたものであってよく、増粘剤の含有量は、当該塗液の粘度が、塗布に好適な粘度となるように調整された量であってよい。増粘剤の含有量は、第一の接着剤層の熱伝導性フィラー(B)以外の成分の全量基準で、例えば5質量%以下であってよく、3質量%以下、2.5質量%以下又は2質量%以下であってもよい。また、増粘剤の含有量は、第一の接着剤層の熱伝導性フィラー(B)以外の成分の全量基準で、例えば0.1質量%以上であってよく、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上又は1質量%以上であってもよい。
【0069】
耐衝撃性改良剤としては、例えば、コア-シェル型の耐衝撃性改良剤が挙げられる。コア-シェル型の耐衝撃性改良剤としては、例えば、コアシェルゴムが挙げられる。
【0070】
コアシェルゴムは、内側のコア部分と外側のシェル部分にそれぞれ異なる材料を含む。シェル部分のガラス転移温度(Tg)は、コア部分のTgよりも高いことが好ましい。コア部分のTgは、例えば-110℃~-30℃であってよく、シェル部分のTgは、例えば0℃~200℃であってよい。なお、本明細書中、コア部分及びシェル部分のTgは、動的粘弾性測定におけるtanδのピーク値の温度として定義される。コアシェルゴムのコア部分が応力の集中点として働くことで耐衝撃性が改良され、また、シェル部分がコアシェルゴム同士の望ましくない凝集を抑制してコアシェルゴムが均一に分散される。
【0071】
コアシェルゴムは、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等の共役ジエンの重合体;1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン等の非共役ジエンの重合体;共役ジエン又は非共役ジエンと、単官能モノマー(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリレート等)との共重合体;ポリブチルアクリレート等のアクリルゴム;シリコーンゴム;シリコーンとポリアルキルアクリレートとからなるIPN型複合ゴム;等のゴム成分を含むコア部分と、コア部分の周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル部分と、を有する、コアシェル型のグラフト共重合体であってよい。コア部分としては、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム-スチレン共重合体が有利に使用でき、シェル部分としては、メチル(メタ)アクリレートを共重合して形成したものが有利に使用できる。シェル部分は、層状であってよく、一層又は複数の層から構成されていてもよい。コアシェルゴムとして、2種以上のコアシェルゴムを組み合わせて使用してもよい。
【0072】
コアシェルゴムとしては、例えば、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-アクリルゴム共重合体、メチルメタクリレート-アクリルゴム-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。これらのうち、コアシェルゴムとしては、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-アクリル・ブタジエンゴム-スチレン共重合体が有利に使用できる。
【0073】
コアシェルゴムの一次粒径の平均値(質量平均粒径)は、例えば0.05μm以上であってよく、0.1μm以上であってもよい。また、コアシェルゴムの一次粒子径の平均値(質量平均粒径)は、例えば5μm以下であってよく、3μm以下又は1μm以下であってもよい。なお、コアシェルゴムの一次粒径の平均値は、ゼータ電位粒度分布測定によって得られた値から算出される。
【0074】
耐衝撃性改良剤の含有量は特に限定されず、第一の接着剤層の熱伝導性フィラー(B)以外の成分の全量基準で、例えば20質量%以下であってよく、15質量%以下又は10質量%以下であってもよい。また、耐衝撃性改良剤の含有量は、第一の接着剤層の熱伝導性フィラー(B)以外の成分の全量基準で、例えば1質量%以上であってよく、2質量%以上又は3質量部以上であってもよい。
【0075】
第一の接着剤層は、上述の各成分と溶剤とを含有する第一の塗液を、基材上に塗布及び乾燥して形成されたものであってよい。
【0076】
溶剤は特に限定されず、接着剤(A)を溶解可能であり、接着剤(A)を硬化させずに除去可能な溶剤であればよい。このような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0077】
第一の接着剤層の厚さは特に限定されず、例えば5μm以上であってよく、10μm以上又は15μm以上であってもよい。また、第一の接着剤層の厚さは特に限定されず、例えば200μm以下であってよく、作業性が良好となる観点からは、100μm以下、80μm以下又は60μm以下であってもよい。
【0078】
(第二の接着剤層)
第二の接着剤層は、基材の他方面上に配置されており、接着剤(A’)と平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B’)と発泡剤(C’)とを含む。第二の接着剤層は、発泡剤(C’)を含むため、被接着物同士の接着時に膨張して、被接着物間の隙間を埋めることができる。
【0079】
第二の接着剤層の各構成は、第一の接着剤層の各構成と同様であってよい。
【0080】
例えば、接着剤(A’)としては、接着剤(A)と同じものが例示できる。
【0081】
また、熱伝導性フィラー(B’)としては、熱伝導性フィラー(B)と同じものが例示できる。熱伝導性フィラー(B’)はアスペクト比が1.3以上のフィラー(B’-1)を含んでいてよく、アルペクト比が1.3未満のフィラー(B’-2)を含んでいてもよい。フィラー(B’-1)及びフィラー(B’-2)としては、フィラー(B-1)及びフィラー(B-2)と同じものが例示できる。
【0082】
また、発泡剤(C)としては、発泡剤(C’)と同じものが例示できる。発泡剤(C’)は熱膨張性粒子(C’-1)を含んでいてよい。熱膨張性粒子(C’-1)としては、熱膨張性粒子(C-1)と同じものが例示できる。
【0083】
第二の接着剤層中の各成分の含有量は、第一の接着剤層中の各成分の含有量と同様であってよい。
【0084】
(第一の接着剤透過層)
第一の接着剤透過層は、第一の接着剤層が膨張(発泡)した際に、接着剤(A)を第一の接着剤透過層の一方の主面側から他方の主面側に透過させる。
【0085】
第一の接着剤透過層は、一方の主面から他方の主面に貫通する複数の孔を有していてよい。この場合、第一の接着剤透過層の一方の主面にしか接していない第一の接着剤層が膨張(発泡)した際に、孔を通して、接着剤(A)を第一の接着剤透過層の他方の主面上にまで到達させることができる。
【0086】
第一の接着剤透過層を構成する材料は特に限定されず、接着剤(A)の硬化開始温度において接着剤(A)を透過させるための形状を維持できる材料であればよい。
【0087】
第一の接着剤透過層は、例えば、天然繊維、化学繊維又はこれらの混合物から構成された不織布であってよい。不織布は内部に多数の貫通孔を有するため、上記効果が顕著に得られる。
【0088】
第一の接着剤透過層の秤量は、例えば10g/m以上であってよく、11g/m以上であってもよい。第一の接着剤透過層の秤量の上限は特に限定されず、例えば、後述の第一の接着剤透過層の厚さの範囲を満たす範囲であればよい。
【0089】
第一の接着剤透過層の厚さは、例えば55μm以下であってよく、第一の接着剤層の膨張時に表面に滲み出る接着剤(A)の量が多くなり、より高い接着強度が得られる観点からは、50μm以下又は47μm以下であってもよい。第一の接着剤透過層の厚さの下限は特に限定されず、例えば、上述の第一の接着剤透過層の秤量の範囲を満たす範囲であればよい。
【0090】
(第二の接着剤透過層)
第二の接着剤透過層は、第二の接着剤層が膨張(発泡)した際に、接着剤(A’)を第二の接着剤透過層の一方の主面側から他方の主面側に透過させる。
【0091】
第二の接着剤透過層の各構成は、第一の接着剤透過層の各構成と同様であってよい。
【0092】
図1は、接着シートの一態様を示す断面図である。図1に示す接着シート1は、基材3と、基材3の一方面上に配置された第一の接着剤層5と、基材3の他方面上に配置された第二の接着剤層5’とを備えている。
【0093】
図1に示す接着シート1は、第一の接着剤層5及び第二の接着剤層5’が最外層にあるため、接着シート1の両面において接着力を有している。接着シート1を被接着物の間に配置し、加熱して第一の接着剤層5及び第二の接着剤層5’を膨張させることで、被接着物の間の隙間を埋めつつ、被接着物同士を接着することができる。
【0094】
図2は、接着シートの他の一態様を示す断面図である。図2に示す接着シート11は、基材13と、基材13の一方面上に配置された第一の接着剤層15と、基材13の他方面上に配置された第二の接着剤層15’と、第一の接着剤層15の基材13と反対側の面上に配置された第一の接着剤透過層17と、第二の接着剤層15’の基材13と反対側の面上に配置された第二の接着剤透過層17’とを備えている。
【0095】
図2に示す接着シート11は、第一の接着剤透過層17及び第二の接着剤透過層17’が最外層にあるため、タックフリー状態にあると言える。接着シート11を被接着物の間に配置し、加熱して第一の接着剤層15及び第二の接着剤層15’を膨張させることで、第一の接着剤透過層17及び第二の接着剤透過層17’の外側に接着剤が滲み出る。これにより、第一の接着剤透過層17と被接着物との間、及び、第二の接着剤透過層17’と被接着物との間に接着剤が介在することとなり、接着力が発揮される。その後、接着剤を硬化させることで、被接着物同士を接着することができる。
【0096】
本実施形態の接着シートを加熱することで、接着シートの発泡硬化体が得られる。
【0097】
本実施形態の発泡硬化体は、基材と、第一の接着剤層の発泡及び硬化により形成される第一の発泡層と、第二の接着剤層の発泡及び硬化により形成される第二の発泡層と、を備える。
【0098】
本実施形態の発泡硬化体は、第一の発泡層内に第一の接着剤透過層が埋設されていてもよい。また、実施形態の発泡硬化体は、第二の発泡層内に第二の接着剤透過層が埋設されていてもよい。
【0099】
本実施形態の接着シートの膨張倍率は、特に限定されず、発泡硬化体に要求される熱伝導率及び接着強度、被接着物同士の間隔等に応じて適宜決定してよい。接着シートの膨張倍率は、例えば1.3倍以上であってよく、1.35倍以上又は1.4倍以上であってもよい。また、接着シートの膨張倍率は、例えば6.5倍以下であってよく、5.8倍以下、5.3倍以下又は4.6倍以下であってもよい。明細書中、接着シートの膨張倍率は、接着シートの厚さと、接着シートが発泡硬化した発泡硬化体の厚さとの比として求められる値である。
【0100】
図3は、発泡硬化体の一態様を示す断面図である。図3に示す発泡硬化体21は、基材23と、第一の発泡層25と、第二の発泡層25’とを備える。第一の発泡層25内には第一の接着剤透過層27が内包されており、第二の発泡層25’内には第二の接着剤透過層27’が内包されている。
【0101】
なお、図3では、第一の発泡層25及び第二の発泡層25’の外表面を平滑に記載したが、第一の発泡層25及び第二の発泡層25’は、これらと接する被接着物の形状に沿った形状であってよい。
【0102】
本実施形態の接着シートの用途は特に限定されず、被接着物同士を接着する種々の用途に用いることができる。本実施形態の接着シートは、発泡硬化後の熱伝導性に優れることから、熱伝導性、放熱性等の特性を要する用途に好適に用いることができる。
【0103】
また、本実施形態の接着シートは、膨張性であるため、被接着物の表面形状に適合可能であり、被接着物の間を埋めることができる。また、被接着物の表面に意図しない凹凸が生じていても、被接着物同士を好適に接着することができる。このため、本実施形態の接着シートは、被接着物が表面に凹凸を有する場合や、被接着物間の隙間の充填を要する場合に、好適に用いることができる。
【0104】
本実施形態の接着シートは、例えば、電動機における、ステータコアのスロットライナーとして、好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の接着シートは、例えば、ステータコアと巻線との間に配置して、ステータコアと巻線とを接着するために用いてよい。
【0105】
本実施形態の電動機は、ステータを備えていてよく、ステータは、少なくとも1つのスロットを有するステータコアと、スロット内に少なくとも一部が収容された巻線と、ステータコアと巻線とを接着する接着層と、を備えていてよい。
【0106】
接着層は、接着シートの発泡及び硬化により形成された層であってよい。すなわち、接着層は、接着シートの発泡硬化体を含む層であってよい。
【0107】
本実施形態の電動機において、接着層以外の各構成は特に限定されず、公知の電動機における各構成と同様であってよい。
【0108】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0109】
本発明は、例えば以下の形態に関するものであってよい。
[1]
基材と、
前記基材の一方面上に配置された第一の接着剤層と、
前記基材の他方面上に配置された第二の接着剤層と、
を備え、
前記第一の接着剤層が、接着剤(A)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B)と、発泡剤(C)と、を含み、
前記熱伝導性フィラー(B)の含有量が、前記第一の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、
前記熱伝導性フィラー(B)が、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B-1)を含み、
前記第二の接着剤層が、接着剤(A’)と、平均短辺長さが1μm以上の熱伝導性フィラー(B’)と、発泡剤(C’)と、を含み、
前記熱伝導性フィラー(B’)の含有量が、前記第二の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上37体積%以下であり、
前記熱伝導性フィラー(B’)が、アスペクト比が1.3以上のフィラー(B’-1)を含む、
接着シート。
[2]
前記フィラー(B-1)の含有量が、前記第一の接着剤層の全体積基準で、0.1体積%以上であり、
前記フィラー(B’-1)の含有量が、前記第二の接着剤層の全体積基準で、0.1体積%以上である、
[1]に記載の接着シート。
[3]
前記第一の接着剤層上に配置されており、前記第一の接着剤層の発泡時に前記接着剤(A)を透過可能な第一の接着剤透過層と、
前記第二の接着剤層上に配置されており、前記第二の接着剤層の発泡時に前記接着剤(A’)を透過可能な第二の接着剤透過層と、
を更に備える、[1]又は[2]に記載の接着シート。
[4]
前記熱伝導性フィラー(B)の含有量が、前記第一の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上30体積%以下であり、
前記熱伝導性フィラー(B’)の含有量が、前記第二の接着剤層の全体積基準で、1体積%以上30体積%以下である、
[3]に記載の接着シート。
[5]
前記熱伝導性フィラー(B)が、窒化ホウ素、窒化アルミ及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を含み、
前記熱伝導性フィラー(B’)が、窒化ホウ素、窒化アルミ及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を含む、
[1]~[4]のいずれか一つに記載の接着シート。
[6]
前記フィラー(B-1)が、プレートレット状、ウィスカー状又はアグロメレート状であり、
前記フィラー(B’-1)が、プレートレット状、ウィスカー状又はアグロメレート状である、
[1]~[5]のいずれか一つに記載の接着シート。
[7]
前記発泡剤(C)が熱膨張性粒子(C-1)を含み、
前記発泡剤(C’)が熱膨張性粒子(C’-1)を含む、
[1]~[6]のいずれか一つに記載の接着シート。
[8]
電動機のステータコアのスロットライナーである、[1]~[7]のいずれか一つに記載の接着シート。
[9]
[1]~[8]のいずれか一つに記載の接着シートの発泡硬化体。
[10]
ステータを備える電動機であって、
前記ステータが、
少なくとも1つのスロットを有するステータコアと、
前記スロット内に少なくとも一部が収容された巻線と、
前記ステータコアと前記巻線とを接着する接着層と、
を備え、
前記接着層が、[1]~[8]のいずれか一つに記載の接着シートの発泡硬化体を含む、電動機。
【実施例0110】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0111】
(接着剤組成物(1)の準備)
表1に示す材料を準備した。
【表1】
【0112】
BTA731(コアシェル型耐衝撃性改良剤)とNPPN442(三官能エポキシ樹脂)とを混合し、次いでその他の表1に示す材料を添加し、ミキサーで混合することで接着剤組成物(1)を得た。各材料の量は、表2に示すとおりとした。なお、YP-50EK35(フェノキシ樹脂のMEK溶液、固形分濃度35質量%)の配合量は溶媒(MEK)を含んだ量を示す。
【表2】
【0113】
(熱伝導性フィラーの準備)
表3に示す熱伝導性フィラーを準備した。
【表3】
【0114】
各熱伝導性フィラーの平均短辺長さ、平均長辺長さ及びアスペクト比を以下の方法で求めた。結果を表4に示す。
<フィラーサイズの測定>
フィラーを試料台に貼り付けた導電性両面テープの上に振りかけ、ブロワーで余分なフィラーを除去した。次いで、オスミウムプラズマコーター(日本レーザ電子株式会社 OPC80N)を用いてフィラーにオスミウムをコーティングし、試料の導電処理を行った。
走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク S3400N)を用い、加速電圧10kV、ワーキングディスタンス10mm、観察倍率100倍から3000倍の範囲でフィラーの二次電子像を得た。得られた画像から、フィラーを覆うことのできる最小の長方形(最小外接矩形)を目視及び画像解析で確認し、当該長方形の長辺及び短辺をフィラーの長辺及び短辺として求めた。
1種類のフィラーにつき、画像を少なくとも3枚取得し、1枚につき10~30個、合計で50個以上のフィラーの長辺及び短辺の測定を行い、その平均値を、フィラーの平均長辺長さ及び平均短辺長さとした。また、平均長辺長さを平均短辺長さで除することで、フィラーのアスペクト比を求めた。
【表4】
【0115】
(基材の準備)
基材として、厚さ75μmのPENフィルム(商品名:テオネックスQ51 帝人フィルムソリューション株式会社製)を準備した。
【0116】
(実施例1-1)
上記方法で準備した接着剤組成物(1)100質量部と、熱伝導性フィラー(1)24.9質量部(接着剤層中の含有量が13.9体積%)とを混合して、接着剤層形成用塗液を得た。この塗液を、上記基材の一方面側に塗布し、65℃で3分間、90℃で3分間乾燥させて、第一の接着剤層を形成した。第一の接着剤層の厚さは35.5μmであった。なお、第一の接着剤層の厚さは、第一の接着剤層形成後のサンプルのA4サイズ領域について、任意の3点の厚さを卓上マイクロメータを用いて測定してサンプルの平均厚さを求め、基材の厚さからこの平均厚さを差し引いた値とした。
次いで、不織布シート(PET、坪量23g/m)を積層し、ロール式ラミネート機を用い、ロール温度60℃で加熱加圧し、基材、第一の接着剤層及び第一の接着剤透過層からなる積層構造を得た。
次いで、上記塗布液を、上記基材の他方面側に塗布し、65℃で3分間、90℃で3分間乾燥させて、第二の接着剤層を形成した。第二の接着剤層の厚さは35.2μmであった。なお、第二の接着剤層の厚さは、第二の接着剤層の形成前後のサンプルのA4サイズ領域について、任意の3点の厚さを卓上マイクロメータを用いて測定し、第二の接着剤層の形成後の測定値の平均値から、第二の接着剤層の形成前の測定値の平均値を差し引いた値とした。
その後、第二の接着剤層上に、不織布シート(PET、坪量23g/m)を積層し、ロール式ラミネート機を用い、ロール温度60℃で加熱加圧し、厚さ(T)が190μmの接着シートを得た。
【0117】
得られた接着シートについて、以下の方法で、測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0118】
<測定用試験体の作製>
(1)熱伝導率測定用試験体の作製
接着シートを50mm×50mmにカットした。フッ素樹脂シート(アラム株式会社、厚み0.2mm)2枚を準備し、1枚のフッ素樹脂シートの上に、接着シートと、接着シートの全周を囲む厚さ400μmのスペーサーとを置き、もう1枚のフッ素樹脂シートを接着シート及びスペーサーの上に置き、160℃、10分間熱プレスして、厚さ(T)が360μmの発泡硬化体を得た。この発泡硬化体を熱伝導率測定用試験体とした。なお、発泡硬化体の厚さ(T)の測定は、後述の熱伝導率の測定時に、熱伝導率の測定点における厚さを、熱伝導率測定器の厚さ計測機能を用いて行った。
(2)せん断試験用試験体の作成
接着シートを12.5mm×25mmにカットした。メチルエチルケトンで表面を清掃した2枚のSPCC板(100mm×25mm×1.6mm(JIS G 3141に準拠))を準備し、1枚のSPCC板の上に端部側から順に接着シート及び厚さ400μmのスペーサーを置き、もう1枚のSPCC板を接着シート及びスペーサーの上に置き、160℃で10分間熱プレスして、厚さ(T)が380μmの発泡硬化体を含むせん断試験用試験体(JIS K 6850準拠)を得た。なお、発泡硬化体の厚さ(T)は、せん断試験用試験体全体の厚みを測定し、測定された値からSPCC板2枚分の厚み(3200μm)を差し引いて求めた。
【0119】
<膨張倍率の測定>
(1)熱伝導率測定用試験体における発泡硬化体の膨張倍率の測定
膨張倍率は、接着シートの厚さ(T)と、発泡硬化体の厚さ(T)とを用いて、T/Tにより求めた。
(2)せん断試験用試験体における発泡硬化体の膨張倍率の測定
膨張倍率は、接着シートの厚さ(T)と、せん断試験用試験体中の発泡硬化体の厚さ(T)とを用いて、T/Tにより求めた。
【0120】
<熱伝導率の測定>
熱伝導率測定装置(Analysis Tech Inc.製、サーマルインターフェイスマテリアルテスターTIM Tester モデル1300)を用い、熱伝導率測定用試験体の熱伝導率を米国規格ASTM D5470に準拠した測定方法で測定した。
【0121】
<せん断強度の測定>
恒温試験装置を設置した材料試験機(ORIENTEC社製 RTC-1325A)を使用した。測定試料(せん断試験用試験体)を200℃に温めた材料試験機内に10分静置し、十分に熱した。その後、5mm/分のせん断引張速度で、200℃でのせん断強度測定を行った。
【0122】
(実施例1-2)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(2)24.9質量部(接着剤層中の含有量が13.9体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを49μmとし、第二の接着剤層の厚さを49.3μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が220μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0123】
(実施例1-3)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(4)2.0質量部及び熱伝導性フィラー(5)34.2質量部(接着剤層中の(4)及び(5)の合計含有量が13.9体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを45μmとし、第二の接着剤層の厚さを30μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が225μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、スペーサーの厚さを440μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0124】
(実施例1-4)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(1)23.5質量部及び熱伝導性フィラー(4)2.0質量部(接着剤層中の(1)及び(4)の合計含有量が13.9体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを55μmとし、第二の接着剤層の厚さを60μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が260μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、スペーサーの厚さを440μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0125】
(比較例1-1)
熱伝導性フィラー(1)を配合せず、第一の接着剤層の厚さを35μmとし、第二の接着剤層の厚さを38.3μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が210μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0126】
(比較例1-2)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(3)24.9質量部(接着剤層中の含有量が13.9体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを43μmとし、第二の接着剤層の厚さを42μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が220μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0127】
(比較例1-3)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(5)36.2質量部(接着剤層中の含有量が13.9体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを39μmとし、第二の接着剤層の厚さを36μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が190μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0128】
(比較例1-4)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(6)40.4質量部(接着剤層中の含有量が13.9体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを30μmとし、第二の接着剤層の厚さを33.3μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が200μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表5に示す。
【0129】
【表5】
【0130】
(実施例2-1)
熱伝導性フィラー(1)の量を50.0質量部(接着剤層中の含有量が24.5体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを39μmとし、第二の接着剤層の厚さを44.3μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が190μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表6に示す。
【0131】
(実施例2-2)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(2)49.5質量部(接着剤層中の含有量が24.3体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを48μmとし、第二の接着剤層の厚さを57μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が220μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表6に示す。
【0132】
(比較例2-1)
熱伝導性フィラー(1)を熱伝導性フィラー(3)49.5質量部(接着剤層中の含有量が24.3体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを85μmとし、第二の接着剤層の厚さを95μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が290μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、スペーサーの厚さを480μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表6に示す。
【0133】
【表6】
【0134】
(実施例3-1)
熱伝導性フィラー(1)の量を5.0質量部(接着剤中の含有量が3.1体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚みを31μmとし、第二の接着剤層の厚みを35.7μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が190μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、スペーサーの厚さを440μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表7に示す。
【0135】
(実施例3-2)
熱伝導性フィラー(1)の量を5.0質量部(接着剤中の含有量が3.1体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを33μmとし、第二の接着剤層の厚さを38.7μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が190μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表7に示す。
【0136】
(実施例3-3)
熱伝導性フィラー(1)の量を10.0質量部(接着剤中の含有量が6.1体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを36μmとし、第二の接着剤層の厚さを40.7μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が190μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表7に示す。
【0137】
(実施例3-4)
熱伝導性フィラー(1)の量を10.0質量部(接着剤中の含有量が6.1体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを55μmとし、第二の接着剤層の厚さを50μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が205μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、スペーサーの厚さを360μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表7に示す。
【0138】
(参考例1)
熱伝導性フィラー(1)の量を74.5質量部(接着剤中の含有量が32.5体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚さを55μmとし、第二の接着剤層の厚さを50μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして、厚さ(T)が250μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製を試みたが、参考例1の接着シートでは、加熱しても接着剤透過層(不織布シート)からの接着剤の滲み出しが不十分であり、熱伝導率及びせん断強度の評価ができなかった。
【0139】
(比較例3-1)
熱伝導性フィラー(1)の量を104.0質量部(接着剤中の含有量が40.2体積%)に変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして塗液の作成を試みた。しかし、比較例3-1では、塗液の混練が困難となり、接着剤層を形成することが困難であった。
【0140】
【表7】
【0141】
(実施例4-1)
上記方法で準備した接着剤組成物(1)100質量部と、熱伝導性フィラー(1)74.5質量部(接着剤層中の含有量が32.5体積%)とを混合して、接着剤層形成用塗液を得た。この塗液を、上記基材の一方面側に塗布し、65℃で3分間、90℃で3分間乾燥させて、乾燥させて第一の接着剤層を形成した。第一の接着剤層の厚さは55μmであった。なお、第一の接着剤層の厚さは、第一の接着剤層形成後のサンプルのA4サイズ領域について、任意の3点の厚さを卓上マイクロメータを用いて測定してサンプルの平均厚さを求め、基材の厚さからこの平均厚さを差し引いた値とした。
次いで、上記塗液を、上記基材の他方面上に塗布し、65℃で3分間、90℃で3分間乾燥させて、第二の接着剤層を形成し、厚さ(T)が215μmの接着シートを得た。第二の接着剤層の厚さは、51.7μmであった。なお、第二の接着剤層の厚さは、第二の接着剤層の形成前後のサンプルのA4サイズ領域について、任意の3点の厚みを卓上マイクロメータを用いて測定し、第二の接着剤層の形成後の測定値の平均値から、第二の接着剤層の形成前の測定値の平均値を差し引いた値とした。
【0142】
得られた接着シートについて、スペーサーの厚さを360μmとしたこと以外は、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表8に示す。
【0143】
(実施例4-2)
熱伝導性フィラー(1)の量を90.0質量部(接着剤中の含有量が36.8体積%)に変更し、第一の接着剤層の厚みを45μmとし、第二の接着剤層の厚みを40μmとしたこと以外は、実施例4-1と同様にして、厚さ(T)が210μmの接着シートを作製した。
得られた接着シートについて、スペーサーの厚さを360μmに変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして測定用試験体の作製、膨張倍率の測定、熱伝導率の測定及びせん断強度の測定を行った。結果を表8に示す。
【0144】
(比較例4-1)
熱伝導性フィラー(1)の量を95.0質量部(接着剤中の含有量が38.1体積%)に変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして塗液の作成を試みた。しかし、比較例4-1では、塗液の混練が困難となり、接着剤層を形成することが困難であった。
【0145】
(比較例4-2)
熱伝導性フィラー(1)の量を104.0質量部(接着剤中の含有量が40.2体積%)に変更したこと以外は、実施例4-1と同様にして塗液の作成を試みた。しかし、比較例4-1では、塗液の混練が困難となり、接着剤層を形成することが困難であった。
【0146】
【表8】
【符号の説明】
【0147】
1,11…接着シート、3,13,23…基材、5,15…第一の接着剤層、5’,15’…第二の接着剤層、17,27…第一の接着剤透過層、17’,27’…第二の接着剤透過層、21…発泡硬化体、23…基材、25…第一の発泡層、25’…第二の発泡層。
図1
図2
図3