(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086210
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】テンプレート、テンプレートの製造方法、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201230
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100121843
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 賢郎
(72)【発明者】
【氏名】大田原 隆太郎
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146AA32
(57)【要約】
【課題】レジストパターンの形成不良を抑制することを可能とする。
【解決手段】テンプレートは、基材と、基材の表面から突出するように設けられるメサ部と、を備える。メサ部の基準面には、当該基準面から突出するように複数の突出部を有する。複数の突出部には、第1突出部と、メサ部の基準面からの突出量が第1突出部よりも低い第2突出部と、が含まれる。第1突出部の頂面の表面積よりも第2突出部の頂面の表面積の方が大きい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された樹脂にパターンを転写することが可能なテンプレートであって、
基材と、
前記基材の表面から突出するように設けられるメサ部と、を備え、
前記メサ部の基準面には、当該基準面から突出するように複数の突出部を有し、
複数の前記突出部には、第1突出部と、前記メサ部の基準面からの突出量が前記第1突出部よりも低い第2突出部と、が含まれ、
前記第1突出部の頂面の表面積よりも前記第2突出部の頂面の表面積の方が大きい
テンプレート。
【請求項2】
前記第2突出部の頂面の表面粗さは、前記第1突出部の頂面の表面粗さよりも大きい
請求項1に記載のテンプレート。
【請求項3】
前記第2突出部の頂面には、前記第1突出部の頂面に形成されていない凹凸構造、又は前記第1突出部の頂面に形成されている凹凸構造よりも大きい凹凸構造が形成されている
請求項1に記載のテンプレート。
【請求項4】
前記第2突出部の頂面に形成されている前記凹凸構造に含まれる凸部の高さは、前記メサ部の基準面からの前記第2突出部の突出量よりも短い
請求項3に記載のテンプレート。
【請求項5】
前記第2突出部の頂面に形成されている前記凹凸構造に含まれる複数の凸部の間に形成される隙間の幅は、複数の前記第2突出部の間に形成される隙間の幅よりも狭い
請求項3に記載のテンプレート。
【請求項6】
複数の前記突出部として、前記基準面からの突出量が異なる少なくとも3つの突出部を備え、
少なくとも3つの前記突出部は、前記突出量が低いものほど頂面の表面積が大きくなるように形成されている
請求項1に記載のテンプレート。
【請求項7】
複数の前記突出部は、前記基準面からの突出量が同一であって、且つ互いに所定の隙間を有して配置される複数の突出片を有している
請求項1に記載のテンプレート。
【請求項8】
前記第2突出部の頂面は、前記有機系材料に対する接触角が90度以下となる濡れ性を有している
請求項1に記載のテンプレート。
【請求項9】
前記第2突出部の頂面は、前記有機系材料に対する接触角が65度以下となる濡れ性を有している
請求項1に記載のテンプレート。
【請求項10】
基板に塗布された樹脂にパターンを転写することが可能なテンプレートの製造方法であって、
基材の表面を加工して、前記基材から突出するようにメサ部を形成し、
前記メサ部の基準面に、第1突出部と、前記基準面からの突出量が前記第1突出部よりも低い第2突出部とを含む複数の突出部を形成し、
前記第1突出部の頂面の表面積よりも前記第2突出部の頂面の表面積の方が大きくなるように前記第2突出部の頂面に対して表面加工処理を施す
テンプレートの製造方法。
【請求項11】
前記表面加工処理は、前記第2突出部の頂面に凹凸構造を形成する表面加工処理である
請求項10に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項12】
前記表面加工処理は、前記第2突出部の頂面を粗面化する表面加工処理である
請求項10に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載されたテンプレートを用いて、前記メサ部に形成されたパターンを、前記基板上に塗布された樹脂に転写してレジストパターンを形成し、
前記レジストパターンに基づいて前記基板を加工する
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テンプレート、テンプレートの製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、テンプレートのパターンを被加工膜上のレジスト膜に転写して、被加工膜に所望のパターンを形成するインプリント処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示された実施形態によれば、レジストパターンの形成不良を抑制することが可能なテンプレート、テンプレートの製造方法、及び半導体装置の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のテンプレートは、基板に塗布された樹脂にパターンを転写することが可能なテンプレートであって、基材と、基材の表面から突出するように設けられるメサ部と、を備える。メサ部の基準面には、当該基準面から突出するように複数の突出部を有する。複数の突出部には、第1突出部と、メサ部の基準面からの突出量が第1突出部よりも低い第2突出部と、が含まれる。第1突出部の頂面の表面積よりも第2突出部の頂面の表面積の方が大きい。
【0006】
実施形態のテンプレートの製造方法は、基板に塗布された樹脂にパターンを転写することが可能なテンプレートの製造方法であって、基材の表面を加工して、基材から突出するようにメサ部を形成し、メサ部の基準面に、第1突出部と、基準面からの突出量が第1突出部よりも低い第2突出部とを含む複数の突出部を形成し、第1突出部の頂面の表面積よりも第2突出部の頂面の表面積の方が大きくなるように第2突出部の頂面に対して表面加工処理を施す。
【0007】
実施形態の半導体装置の製造方法は、上記のテンプレートを用いて、メサ部に形成されたパターンを、基板上に塗布された有機系材料に転写してレジストパターンを形成し、レジストパターンに基づいて基板を加工する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の断面構造を示す断面図。
【
図2】第1実施形態の半導体装置のメモリ層周辺の断面構造を示す断面図。
【
図3】第1実施形態のインプリント装置の構造を模式的に示す図。
【
図4】第1実施形態のテンプレートの正面構造を示す正面図。
【
図5】第1実施形態のテンプレートの実パターン及びダミーパターンの拡大断面構造を示す断面図。
【
図6】第1実施形態のテンプレートの実パターンの断面構造を示す断面図。
【
図7】(A),(B)は、第1実施形態の柱状パターンの頂面周辺の断面構造を示す断面図。
【
図8】(A)は、レジスト材に対する第1実施形態の柱状パターンの頂面の濡れ性を模式的に示す断面図。(B)は、レジスト材に対する参考例の柱状パターンの頂面の濡れ性を模式的に示す断面図。
【
図9】(A)~(C)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図。
【
図10】(A)~(C)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図。
【
図11】(A)~(F)は、第1実施形態の半導体装置の製造工程の一部を示す断面図。
【
図12】(A)~(C)は、第1実施形態のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図13】(A)~(C)は、第1実施形態のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図14】(A)~(C)は、第1実施形態のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図15】(A)~(C)は、第1実施形態のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図16】(A)~(C)は、第1実施形態のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図17】(A)~(D)は、第1実施形態のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図18】(A),(B)は、第1実施形態のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図19】(A),(B)は、第1実施形態のテンプレートとウェハとの間にレジスト材が浸透する様子を示す断面図。
【
図20】(A)~(C)は、第1実施形態の変形例のテンプレートの製造工程の一部を示す断面図。
【
図21】(A),(B)は、第2実施形態の柱状パターンの頂面周辺の断面構造を示す断面図。
【
図22】他の実施形態のテンプレートの実パターンの断面構造を示す断面図。
【
図23】他の実施形態のテンプレートの実パターンの断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
1 第1実施形態
第1実施形態のテンプレート、テンプレートの製造方法、及び半導体装置の製造方法について説明する。本実施形態の半導体装置は、NAND型フラッシュメモリとして構成された不揮発性の記憶装置である。
【0010】
1.1 半導体装置の構成
図1は、本実施形態の半導体装置MDVの概略構成を示す断面図である。なお、
図1においては、図面の視認性を高めるために、断面部分を示すハッチングが省略されている。
【0011】
図1に示されるように、半導体装置MDVは、周辺回路CUA、ソース線SL、及び積層体LMを備えている。周辺回路CUA、ソース線SL、及び積層体LMは、この順で基板SB上に形成されている。基板SBはシリコン基板等である。
周辺回路CUAは、トランジスタTR等を備えており、後述するメモリセルの電気的な動作に寄与する。トランジスタTRは基板SB上に形成されている。周辺回路CUAは絶縁膜51により覆われている。絶縁膜51はシリコン酸化膜等である。絶縁膜51上にはソース線SLが形成されている。ソース線SLは導電性のポリシリコン層等である。
【0012】
積層体LMはソース線SL上に形成されている。積層体LMは、積層された複数のワード線WLにより構成されている。ワード線WLはタングステン層又はモリブデン層等である。複数のワード線WLの間には絶縁層がそれぞれ介在されている。絶縁層は酸化シリコン層等である。
【0013】
積層体LMは、メモリ領域MR、コンタクト領域PR、及び貫通コンタクト領域TPを備えている。それぞれの領域MR,PR,TPには、複数のピラーPL、及び複数のコンタクトCC,C4が設けられている。積層体LMの全体は絶縁膜52により覆われている。絶縁膜52はシリコン酸化膜等である。
【0014】
複数のピラーPLのそれぞれは積層体LMを貫通してソース線SLに到達している。ピラーPLの詳細の構成を
図2に示す。
図2に示されるように、ピラーPLはメモリ層ME及びチャネル層CNを備えている。メモリ層ME及びチャネル層CNは、この順でピラーPLの外周から順に配置されている。チャネル層CNの内側にはコア層CRが充填されている。メモリ層MEは、ブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、及びトンネル絶縁層TNが積層された多層構造を有している。ブロック絶縁層BK、電荷蓄積層CT、及びトンネル絶縁層TNは、この順でピラーPLの外周から順に配置されている。なお、ピラーPLの下端部にはメモリ層MEが配置されておらず、メモリ層MEの内側に設けられるチャネル層CNがソース線SLと接続されている。
【0015】
チャネル層CNは、例えばポリシリコン層又はアモルファスシリコン層等の半導体層である。コア層CR、トンネル絶縁層TN、及びブロック絶縁層BKは、例えば酸化シリコン層等である。電荷蓄積層CTは例えば窒化シリコン層等である。
なお、
図2に示される符号OLは、複数のワード線WLの間に形成される絶縁層を表している。
【0016】
このような構成により、ピラーPLとワード線WLとの交差部には、高さ方向に並ぶ複数のメモリセルMCが形成される。ワード線WLからメモリセルMCに所定の電圧を印加することにより、メモリセルMCの電荷蓄積層CTに対する電荷の蓄積、あるいは電荷蓄積層CTからの電荷の引き出しを行うことができる。電荷蓄積層CTに対する電荷の蓄積、あるいは電荷蓄積層CTからの電荷の引き出しにより、メモリセルMCに対するデータの書き込み、あるいは読み出しが行われる。メモリセルMCから読み出されたデータは、ピラーPLの上方に設けられるプラグ及び上層配線等を介して、例えば半導体装置MDVのセンスアンプに伝達される。
【0017】
図1に示される複数のコンタクトCCのそれぞれは、積層体LMに含まれる複数のワード線WLのうち、いずれかのワード線WLに接続される深さまで延びるように形成されている。また、複数のコンタクトCCのそれぞれは、上層配線及びプラグを介して複数のコンタクトC4に接続されている。
【0018】
複数のコンタクトC4は、積層体LM及びソース線SLを貫通して積層体LMの下方に設けられる絶縁膜51まで延びるように形成されている。複数のコンタクトC4のそれぞれの下端部は、絶縁膜51において、下層配線、ビア、及びコンタクト等を介して周辺回路CUAのトランジスタTRに接続されている。
【0019】
このような構成により、周辺回路CUAから、コンタクトC4,CCを介してそれぞれのメモリセルMCに所定の電圧を印加することにより、メモリセルMCを電気的に動作させることができる。
上記のような構成を備える半導体装置MDVにおいて、高度の3次元構造を有する立体的な形状を有する構成については、例えばテンプレートを用いたインプリント処理により形成することができる。高度の3次元構造を有する構成としては、例えばコンタクトC4と周辺回路CUAとを電気的に接続するビアと配線とが一括形成されたデュアルダマシン構造DD、及び積層体LMの異なる深さのワード線WLにそれぞれ到達する複数のコンタクトCC等がある。
【0020】
1.2 インプリント装置の構成
次に、上述の半導体装置MDVの製造工程に用いられるインプリント装置80の構成について説明する。
図3は、本実施形態のインプリント装置80の構成例を示したものである。
図3に示されるように、インプリント装置80は、テンプレートステージ81、ウェハステージ82、基準マーク85、アライメントセンサ86、液滴下装置87、ステージベース88、光源89、及び制御部90を備えている。インプリント装置80には、ウェハ30上のレジスト材に微細パターンを転写してレジストパターンを形成するテンプレート10がインストールされている。なお、レジスト材は、例えば光が照射されることにより硬化する光硬化性の有機系薬液である。
【0021】
基板ステージとしてのウェハステージ82は本体83及びウェハチャック84を備えている。ウェハチャック84は、半導体基板としてのウェハ30を本体83上の所定位置に固定する。ウェハステージ82上には基準マーク85が設けられている。基準マーク85は、ウェハ30をウェハステージ82上にロードする際の位置合わせに用いられる。
【0022】
ウェハステージ82にはウェハ30が載置される。ウェハステージ82は、載置されたウェハ30と一体となって、水平面に平行な方向に移動する。ウェハステージ82は、ウェハ30にレジスト材を滴下する際にウェハ30を液滴下装置87の下方に移動させる。また、ウェハステージ82は、ウェハ30への転写処理を行う際にウェハ30をテンプレート10の下方に移動させる。
【0023】
ステージベース88は、テンプレートステージ81によってテンプレート10を支持するとともに、上下方向(鉛直方向)に移動することにより、テンプレート10の微細パターンをウェハ30上のレジスト材に接触させる。
ステージベース88上には、アライメントセンサ86が設けられている。アライメントセンサ86は、ウェハ30及びテンプレート10に設けられた位置合わせマークに基づき、ウェハ30の位置検出やテンプレート10の位置検出を行う。
【0024】
液滴下装置87は、インクジェット方式によってウェハ30上にレジスト材を滴下する装置である。液滴下装置87が備えるインクジェットヘッドは、レジスト材の液滴を噴出する複数の微細孔を有しており、レジスト材の液滴をウェハ30上に滴下する。
光源89は、例えば紫外線を照射する装置であり、ステージベース88の上方に設けられている。光源89は、テンプレート10がレジスト材に押し当てられた状態で、テンプレート10上から光を照射する。
【0025】
制御部90は、テンプレートステージ81、ウェハステージ82、基準マーク85、アライメントセンサ86、液滴下装置87、ステージベース88、及び光源89を制御する。
1.3 テンプレートの構成
次に、上述のインプリント装置80に用いられるテンプレート10の構成について説明する。ここでは、
図1に示される複数のコンタクトCCを形成するためのテンプレート10の例について説明する。
【0026】
図4は、本実施形態のテンプレート10の構成を模式的に示したものである。
図4に示されるように、テンプレート10は、例えば石英等の透明基板BAを備えている。本実施形態では、透明基板BAが基材に相当する。透明基板BAはメサ部MSを備えている。メサ部MSは、透明基板BAの一方の面である表面から突出するように形成されている。透明基板BAの裏面側にはザグリCBが形成されている。これにより、透明基板BAの裏面中央部は窪んでいる。
【0027】
メサ部MSには複数の実パターンAC及びダミーパターンDMが設けられている。複数の実パターンACは、後述する被加工膜に転写されて、半導体装置MDVの一部構成となるパターンである。ダミーパターンDMは、後述する被加工膜に転写されることなく消失するダミーのパターンである。
【0028】
図5は、テンプレート10の実パターンAC及びダミーパターンDMの拡大断面構造を示したものである。
図5に示されるように、複数の実パターンAC及びダミーパターンDMはメサ部MSの基準面RPから突出するように形成されている。複数の実パターンACは、図中に矢印Xで示される方向、すなわちメサ部MSの基準面RPに沿った方向に離れて設けられている。ダミーパターンDMは、複数の実パターンACの間、及びメサ部MSの外縁部に設けられている。
【0029】
複数の実パターンACのそれぞれは、基準面RPからの突出高さが異なる複数の柱状パターンCLを含んでいる。本実施形態では、柱状パターンCLが、メサ部MSの基準面RPから突出するように形成される突出部に相当する。
図5では、これらの柱状パターンCLが、X方向に平行な一方向に向かって順次、高くなるように形成されている。なお、複数の柱状パターンCLの配置及び並び順は、
図5に示される例に限らず任意に変更可能である。
【0030】
図5に示される例では、隣接する柱状パターンCL同士の高さの差は、例えば数nm~数百nm程度である。これらの柱状パターンCLは、例えば突出方向に直交する断面の面積が略等しく、且つ高さが異なる四角柱状に形成されている。メサ部MSには、これらの柱状パターンCLが例えば数十~百程度の数だけ形成されている。
【0031】
実パターンACは、矢印Xで示される方向において一対のダミーパターンDMにより挟み込まれるように配置されている。また、複数の実パターンACの間にはダミーパターンDMが複数配置されている。複数のダミーパターンDMのそれぞれは凸状に形成されている。複数のダミーパターンDMは、実パターンACが形成されている部分を除いて、メサ部MSの全面に亘って、矢印Xで示される方向に互いに所定の間隔をあけて配置されている。
【0032】
図6は、テンプレート10の実パターンACの拡大断面構造を示したものである。
図6に示されるように、以下では、実パターンACに含まれる複数の柱状パターンCLについて、メサ部MSの基準面RPからの突出量が高いものから順に柱状パターンCL21,CL22,CL23,CL24,CL25と称する。柱状パターンCL21~CL25のそれぞれの突出量とは、例えばメサ部MSの基準面RPからの高さ、より詳細には基準面RPに直交する方向における基準面RPから頂面31~35までの長さを含む。したがって、柱状パターンCL21は、メサ部MSの基準面RPからの突出量が最も大きい。また、柱状パターンCL25は、メサ部MSの基準面RPからの突出量が最も小さい。本実施形態では、柱状パターンCL21~CL24の少なくとも一つが第1突出部に相当し、柱状パターンCL25が第2突出部に相当する。
【0033】
図7(A)は、柱状パターンCL25の頂面35の拡大断面構造を示したものである。
図7(A)に示されるように、突出量が最も低い柱状パターンCL25の頂面35には微細な凹凸構造45が形成されている。凹凸構造45は、所定の間隔をあけて配置される複数の凸部450を有している。凸部450の高さL20は、
図6に示される柱状パターンCL25の高さL10よりも大幅に短い。
図7(A)に示される凸部450の幅H20は、
図6に示される柱状パターンCL25の幅H10よりも大幅に狭い。また、凹凸構造45は、硬化前のレジスト材に対して親和性を有するように形成されている。
【0034】
具体的には、
図8(A)に示されるように、柱状パターンCL25の頂面35に平行な面と、硬化前のレジスト材95の外縁の液面とがなす角度θ
rを「接触角θ
r」とするとき、接触角θ
rは、例えば
図7(A)に示される凸部450の高さL10及び幅H20、並びに各凸部450間に形成される隙間の幅H30等により変化する。例えば、凸部450の高さL10及び幅H20、並びに各凸部450間に形成される隙間の幅H30のそれぞれの値によっては、
図8(B)に示されるような凹凸構造47を有する参考例の柱状パターンCL26のように、接触角θ
rが、
図8(B)に示されるように90度よりも大きくなる場合がある。この場合、硬化前のレジスト材95に対する柱状パターンCL25の頂面35の親和性は低くなる。一方、本実施形態の柱状パターンCL25の頂面35では、
図8(A)に示されるように接触角θ
rが90度以下になっている。このように、本実施形態のテンプレート10では、硬化前のレジスト材95に対して柱状パターンCL25の頂面35の親和性が高くなっている。
【0035】
以上のように、本実施形態のテンプレート10では、硬化前のレジスト材95に対して接触角θrが90度以下となる濡れ性を柱状パターンCL25の頂面35が有するように、凹凸構造45の形状が設定されている。具体的には、凹凸構造45における凸部450の高さL10及び幅H20、並びに各凸部450間に形成される隙間の幅H30等が設定されている。なお、より好ましくは、硬化前のレジスト材95に対して接触角θrが65度以下となる濡れ性を柱状パターンCL25の頂面35が有するように、凹凸構造45の形状が設定されているとよい。
【0036】
図7(B)は、柱状パターンCL21の頂面31の拡大断面構造を示したものである。
図7(B)に示されるように、柱状パターンCL21の頂面31には、
図7(A)に示されるような凹凸構造45が形成されていない。同様に、他の柱状パターンCL22~24のそれぞれの頂面にも凹凸構造45が形成されていない。
【0037】
このような凹凸構造45の有無により、柱状パターンCL25の頂面35の表面積は、他の柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面積よりも大きくなっている。
1.4 半導体装置の製造方法
次に、
図9~
図11を用いて、上述のインプリント装置80を用いた半導体装置MDVの製造方法について説明する。
【0038】
図9~
図11は、本実施形態の半導体装置MDVの製造方法の一部を順に示したものである。
半導体装置MDVを製造する際には、まず、
図9(A)に示されるように下地膜UF上に被加工膜PFを形成する。下地膜UFは、上述の半導体装置MDVにおける周辺回路CUAを覆う絶縁膜51、及び絶縁膜51上に形成されるソース線SL等である。被加工膜PFは、例えば窒化層と酸化層とが複数交互に積層された多層膜である。被加工膜PFは、後に窒化層がタングステン層等に置き換えられて、上述の半導体装置MDVの積層体LMとなる。本実施形態では、被加工膜PF及び下地膜UFの全体が、
図3に示されるインプリント装置80に用いられるウェハ30に相当する。
【0039】
続いて、被加工膜PF上にレジスト材91を形成する。レジスト材91は、例えば光硬化型樹脂膜等であって、スピンコート法等を用いて被加工膜PF上に光硬化型樹脂膜等を塗布することで形成される。このとき、レジスト材91は、例えばテンプレート10のメサ部MS内の実パターンAC及びダミーパターンDMが転写される被加工膜PF上の領域全体を覆うように形成される。レジスト材91は、この段階では未硬化の状態となっている。本実施形態では、レジスト材91が有機系材料に相当する。
【0040】
続いて、テンプレート10の複数の柱状パターンCLをレジスト材91に転写するために、テンプレート10を、柱状パターンCLが形成された面を被加工膜PF側に向けるようにしてレジスト材91に対向させる。
続いて、
図9(B)に示されるように、テンプレート10の柱状パターンCLを被加工膜PF上のレジスト材91に押し当てる。このとき、テンプレート10のメサ部MSが被加工膜PFに接触しないように、突出量の最も大きい柱状パターンCLと被加工膜PFとの間に若干の隙間を設ける。
【0041】
この状態を所定時間維持することで、レジスト材91がテンプレート10の複数の柱状パターンCLの間、及び複数のダミーパターンDMの間に浸透していく。レジスト材91が、これらの柱状パターンCLの間及びダミーパターンDMの間に行き渡った後、テンプレート10をレジスト材91に押し当てたまま、テンプレート10を透過させて紫外光等の光をレジスト材91に照射する。これにより、レジスト材91が硬化する。
【0042】
続いて、
図9(C)に示されるように、テンプレート10を離型すると、テンプレート10のメサ部MSの基準面RPとの接触面を上面とするレジストパターン91pが形成される。レジストパターン91pの接触面には複数のコンタクトパターンPP及び複数の凹パターンDPが形成されている。
【0043】
複数のコンタクトパターンPPは、テンプレート10の実パターンACが転写されたパターンである。複数のコンタクトパターンPPのそれぞれは互いに離れて配置されている。複数のコンタクトパターンPPのそれぞれは、テンプレート10の柱状パターンCLが転写された複数のホールパターンCPを有している。
【0044】
複数の凹パターンDPは、ダミーパターンDMが転写されたパターンである。複数の凹パターンDPのそれぞれは凹状に形成されている。複数の凹パターンDPは、複数のコンタクトパターンPPのそれぞれを挟み込むように配置されるとともに、複数のコンタクトパターンPPの間に配置されている。
【0045】
なお、上述のようにテンプレート10と被加工膜PFとの間に隙間を設けた状態でレジスト材91を硬化させているため、レジストパターン91pは、複数のホールパターンCPのうち、最も深く形成されるホールパターンCPの底部との間にレジスト残膜91rを有している。同様に、レジストパターン91pは、それぞれの凹パターンDPの底部との間にレジスト残膜91rを有している。
【0046】
続いて、
図10(A)に示されるように、レジストパターン91pを覆うようにレジスト膜92を形成する。レジスト膜92は、フォトリソグラフィ等で用いられる感光性のポジ型レジスト膜等であって、例えばスピンコート法等を用いて、レジストパターン91p上にポジ型のレジスト材を塗布することで形成される。
【0047】
続いて、
図10(B)に示されるように、レジスト膜92の一部を露光するために、フォトマスク40をレジスト膜92に対向させて配置する。フォトマスク40は、透明基板41と、遮光膜パターン42pとを備えている。
遮光膜パターン42pは複数の開口部42opを有する。複数の開口部42opは、被加工膜PF上のレジストパターン91pに形成された複数のコンタクトパターンPPと上下に重なる位置に配置されている。複数の開口部42opは、複数のコンタクトパターンPPが形成された領域よりも大きく形成されており、個々のコンタクトパターンPPの全体が、開口部42opの下方位置に収まるように配置される。
【0048】
続いて、フォトマスク40をレジスト膜92に対向させた状態で、フォトマスク40の開口部42opを透過させて紫外光等の露光光をレジスト膜92に照射する。これにより、レジストパターン91pを覆うレジスト膜92のうち、複数のコンタクトパターンPPを覆う部分が露光される。
【0049】
続いて、一部を露光したレジスト膜92を現像することで、
図10(C)に示されるようなレジストパターン92pが形成される。レジストパターン92pは、レジストパターン91pのコンタクトパターンPPと重なる位置に開口部92opを有している。レジストパターン92pが形成されることにより、レジスト膜92で覆われていたレジストパターン91pのうち、コンタクトパターンPPが形成されている部分がレジストパターン92pの開口部92opから露出する。
【0050】
続いて、
図11(A)に示されるように、レジスト残膜91rのうち、最も深く形成されたホールパターンCPの底部に設けられる部分を、酸素プラズマ等を用いて除去する。これにより、被加工膜PFの上面のうち、最も深く形成されたホールパターンCPの底部に設けられる部分が露出する。また、レジストパターン91p,92pの膜厚が全体的に減少する。
【0051】
続いて、
図11(B)に示されるように、レジストパターン91p,92pを介して被加工膜PFを加工する。これにより、レジストパターン91pから露出した被加工膜PFが除去されて、最も深く形成されたホールパターンCPに対応したコンタクトホールCHが形成される。また、レジスト残膜91rのうち、最も深く形成されたホールパターンCPの隣に配置されるホールパターンCPの底部を、酸素プラズマ等を用いて除去することにより、新たに被加工膜PFを露出させる。このとき、レジストパターン92pの膜厚もレジストパターン91pとともに減少する。
【0052】
続いて、
図11(C)に示されるように、レジストパターン91p,92pを介した被加工膜PFの加工を更に継続する。これにより、レジストパターン91pから新たに露出した被加工膜PFの上面が除去されて、新たなコンタクトホールCHが形成される。被加工膜PFに既に形成されているコンタクトホールCHは更に深く形成される。
【0053】
以降、レジストパターン91p,92pを介した被加工膜PFの加工と、酸素プラズマ等によるレジストパターン91p,92pの減膜とを更に継続することにより、
図11(D)~(F)に示されるように、深さが異なる複数のコンタクトホールCHが被加工膜PFに形成される。一方、複数の凹パターンDPは被加工膜PFには転写されない。
図11(F)に示される加工が完了した後、残ったレジストパターン91p,92pを除去する処理が行われる。
【0054】
以上により複数のコンタクトホールCHが形成された領域は、
図1に示される半導体装置MDVにおけるコンタクト領域PRとなる。以上により、テンプレート10を用いたパターン形成処理が終了する。
その後、例えば、被加工膜PFに形成された複数のコンタクト領域PR間に、
図1に示されるピラーPLを形成する。また、多層構造を有する被加工膜PFの窒化シリコン層をタングステン層等のワード線WLに置き換えるリプレース処理を行って、複数のワード線WLと複数の絶縁層OLとが交互に積層される積層体LMを形成する。
【0055】
さらに、テンプレート10を用いて形成した複数のコンタクトホールCHの側壁を絶縁層で覆い、絶縁層の内側を金属層で充填することで、深さの異なるワード線WLにそれぞれ接続される複数のコンタクトCCが形成される。以上により、本実施形態の半導体装置MDVが製造される。なお、被加工膜PFのリプレース処理が行われる際、形成された複数のコンタクトホールCHには、犠牲層が埋め込まれていてもよい。または、複数のコンタクトホールCHに金属層を充填させた後に、被加工膜PFのリプレース処理を行ってもよい。
【0056】
1.5 テンプレートの製造方法
次に、テンプレート10の製造方法について説明する。
図12~
図18は、本実施形態のテンプレート10の製造方法の一部、特にテンプレート10の実パターンACの形成手順を示したものである。
【0057】
実パターンACを形成する際には、まず、
図12(A)に示されるようにテンプレート10のメサ部MSの表面にレジスト材60を塗布した後、当該レジスト材60を硬化して加工することにより、
図12(B)に示されるようなレジストパターン61をテンプレート10の表面に形成する。
図12(A)から
図12(B)に示されるようにレジスト材60を加工してレジストパターン61を形成する方法としては、電子ビーム描画や光リソグラフィ等を用いることが可能である。
【0058】
続いて、
図12(B)に示されるレジストパターン61をハードマスクとしてテンプレート10にエッチング処理を施すことにより、
図12(C)に示されるような複数の柱状パターンCL21~CL25をテンプレート10の表面に形成する。エッチング処理としては、四フッ化メタン(CF)を利用したドライエッチングや、フッ化水素(HF)を利用したウェットエッチング等を用いることが可能である。なお、エッチング処理を施した後にテンプレート10の表面にレジスト材60が残存している場合には、アッシングや剥離液等により、残存しているレジスト材60をテンプレート10から剥離する処理を更に行ってもよい。
【0059】
続いて、
図13(A)に示されるようにテンプレート10の表面にレジスト材62を塗布した後、当該レジスト材62を光リソグラフィ等により、
図13(B)に示されるようなレジストパターン63を形成する。レジストパターン63は、例えば、一つの柱状パターンCL21の頂面にのみレジスト材が残存するようなパターン形状を有している。次に、
図13(B)に示されるレジストパターン63をハードマスクとしてテンプレート10にドライエッチング等のエッチング処理を施す。これにより、
図13(C)に示されるように、同一の突出量を有する複数の柱状パターンCL22~CL25と、それらよりも大きい突出量を有する柱状パターンCL21とをテンプレート10の表面に形成することができる。
【0060】
続いて、
図14(A)に示されるように、テンプレート10の表面にレジスト材64を塗布した後、当該レジスト材64を硬化して光リソグラフィ等により加工することにより、
図14(B)に示されるようなレジストパターン65を形成する。レジストパターン65は、二つの柱状パターンCL21,CL22のそれぞれの頂面にレジスト材が残存するようなパターン形状を有している。次に、
図14(B)に示されるレジストパターン65をハードマスクとしてテンプレート10にドライエッチング等のエッチング処理を施す。これにより、
図14(C)に示されるように、同一の突出量を有する複数の柱状パターンCL23~CL25と、それらよりも大きい突出量を有する柱状パターンCL22と、柱状パターンCL22よりも大きい突出量を有する柱状パターンCL21とをテンプレート10の表面に形成することができる。
【0061】
以降、レジストパターンを形成する凸部の数を一つずつ増やすことにより、柱状パターンCL21~CL25の突出量を順次変化させる。すなわち、
図15(A),(B)に示されるようにレジスト66の塗布及びレジストパターン67の形成を行った後、テンプレート10に対してドライエッチング等のエッチング処理を施すことにより、
図15(C)に示されるようなテンプレート10を形成する。続いて、
図16(A),(B)に示されるようにレジスト68の塗布及びレジストパターン69の形成を行った後、テンプレート10に対してドライエッチング等のエッチング処理を施すことにより、
図16(C)に示されるようなテンプレート10を形成する。
図16(C)に示されるテンプレート10では、柱状パターンCL21~CL25が、この順で徐々に突出量が小さくなるように形成されている。また、このときのテンプレート10のメサ部MSの表面が基準面RPを形成する。
【0062】
続いて、柱状パターンCL25の頂面35に、
図7(A)に示されるような微細な凹凸構造45を形成する。具体的には、
図17(A)に示されるように、テンプレート10の表面にレジスト材70を塗布した後、当該レジスト材70を光リソグラフィ等により加工することにより、
図17(B)に示されるようなレジストパターン71を形成する。このレジストパターン71は、柱状パターンCL25の部分に加工穴72を有している。柱状パターンCL25の頂面35は、この加工穴72を通じて露出している。
【0063】
図17(B)に示されるようなレジストパターン71を光リソグラフィ等により形成する際には、柱状パターンCL25の頂面35に対応する位置に、
図18(A)に示されるようなレジストパターン73を形成する処理も同時に行う。レジストパターン73は複数の微細な凸部74により構成されている。各凸部74は柱状パターンCL25の頂面35から突出するように形成されている。複数の凸部74は、互いに所定の間隔をあけて配置されている。
【0064】
続いて、
図17(B)に示されるレジストパターン71及び
図18(A)に示されるレジストパターン73をハードマスクとしてテンプレート10に対してドライエッチング等のエッチング処理を施す。これにより、加工穴72から露出している柱状パターンCL25の頂面35が加工される。具体的には、
図18(A)に示されるようなレジストパターン73をハードマスクとして柱状パターンCL25の頂面35に対してエッチング処理が施されて、
図17(C)および
図18(B)に示されるように、柱状パターンCL25の頂面35に凹凸構造45が形成される。凹凸構造45は、所定の間隔を開けて配置される複数の凸部450を有している。
【0065】
続いて、
図18(C)に示されるテンプレート10の表面からレジストパターン71を剥離する処理が行われる。これにより、
図18(D)に示されるように、テンプレート10の表面に柱状パターンCL21~CL25、換言すれば実パターンACが形成される。
【0066】
以上により、テンプレート10への実パターンACの形成が完了する。
【0067】
1.6 本実施形態のテンプレートを用いた際の作用及び効果
図9~
図11に示されるような工程を経て半導体装置MDVを製造する場合、
図9(A),(B)に示される工程としてテンプレート10をレジスト材91に押し付ける際に、実パターンACの部分にレジスト材91が適切に充填されない可能性がある。
【0068】
具体的には、テンプレート10をレジスト材91に押し付けた際に、例えば
図19(A)に矢印Vで示されるように柱状パターンCL21から柱状パターンCL25に向かってレジスト材91が浸透していく。この際、各柱状パターンCL21~CL25の間に形成される隙間には毛細管力に基づいてレジスト材91が浸透する。
【0069】
この毛細管力ΔPは、例えば以下のヤングの式f1により求めることができる。なお、式f1において、γはレジスト材91の表面張力であり、θrは上述した接触角であり、Rはレジスト材91の曲率半径である。
【0070】
【数1】
この式f1から明らかなように、レジスト材91の曲率半径Rが小さくなるほど、毛細管力ΔPは大きくなる。これに対して、レジスト材91の曲率半径Rが大きくなるほど、毛細管力ΔPは小さくなる。
【0071】
一方、レジスト材91の曲率半径Rは、各柱状パターンCL21~CL25の頂面31~35からウェハ30の表面までの距離と相関関係を有している。例えば、
図9(A)に示されるように、レジスト材91の表面が柱状パターンCL21の頂面31とウェハ30の表面との間に位置しているときには、レジスト材91の曲率半径Rは相対的に小さくなるため、毛細管力ΔPは大きくなる。これに対して、
図9(B)に示されるように、レジスト材91の表面が柱状パターンCL25とウェハ30の表面との間に位置しているときには、レジスト材91の曲率半径Rが相対的に大きくなるため、毛細管力ΔPは小さくなる。なお、本実施形態のテンプレート10では、突出量が最も高い柱状パターンCL21の頂面31からウェハ30の表面までの距離D11が20[nm]程度であり、突出量が最も低い柱状パターンCL25の頂面35からウェハ30の表面までの距離D25が230[nm]程度である。
【0072】
以上のレジスト材91の曲率半径Rと毛細管力ΔPとの関係を考慮すると、
図19(A)に矢印Vで示されるように柱状パターンCL21から柱状パターンCL25に向かってレジスト材91が浸透するにしたがって、毛細管力ΔPが減少することになる。その結果、柱状パターンCL25の付近にレジスト材91が流入する際にレジスト材91の流速が低下して、レジスト材91が浸透し難くなる。そのため、
図19(B)に示されるように、柱状パターンCL25の付近に、レジスト材91が充填されない未充填領域Auが形成され易くなる。これは、レジスト材91を硬化させた際に、それにより形成されるレジストパターン91pに形成不良を発生させる要因となる。
【0073】
ところで、表面粗さが濡れ性に影響を及ぼすというWenzelの理論が知られている。この理論では、微少な凹凸等が形成されている表面は、平滑な表面と比較して、濡れ易くなるという理論である。このWenzelの理論を上記の式f1に適用すると、上記の式f1は以下の式f2のように変形することができる。なお、式f2において、Aは、微少な凹凸等が形成されている表面の面積である。
【0074】
【数2】
この式f2から明らかなように、微少な凹凸等が形成されている表面の面積が大きくなるほど、毛細管力ΔPは大きくなる。
【0075】
この点、本実施形態のテンプレート10では、
図7(A)に示されるように、柱状パターンCL25の頂面31に凹凸構造45が形成されることにより、柱状パターンCL25の頂面31の表面積は、他の柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面積、換言すれば平滑な表面の表面積よりも大きくなっている。よって、
図19(B)に示されるように柱状パターンCL25の付近までレジスト材91が浸透した際に、より大きな毛細管力ΔPをレジスト材91に作用させることが可能である。結果的に、レジスト材91が柱状パターンCL25を超えて更に浸透し易くなるため、レジスト材91が充填され易くなる。よって、
図19(B)に示されるような未充填領域Auが形成され難くなるため、レジストパターン91pの形成不良を抑制することができる。
【0076】
本実施形態のテンプレート10では、柱状パターンCL25の頂面31に、他の柱状パターンCL21~CL24に形成されていない凹凸構造45が形成されている。
【0077】
この構成によれば、柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面積よりも柱状パターンCL25の頂面35の表面積の方が大きい構造を容易に実現することが可能である。
【0078】
本実施形態のテンプレート10では、
図6及び
図7(A)に示されるように、凹凸構造45に含まれる凸部450の高さL20は柱状パターンCL25の高さL10よりも短い。また、凹凸構造45に含まれる凸部450の幅H20は柱状パターンCL25の幅H10よりも狭い。
【0079】
この構成によれば、柱状パターンCL25の頂面35がレジスト材91に対して親和性を有し易くなるため、上述した毛細管力ΔPがレジスト材91に作用し易くなる。結果的に、レジスト材91に未充填領域Auが形成され難くなるため、レジストパターン91pに形成不良が発生し難くなる。
【0080】
柱状パターンCL25の頂面35は、レジスト材91に対する接触角θrが90度以下となる濡れ性を有している。より好ましくは、柱状パターンCL25の頂面35は、レジスト材91に対する接触角θrが65度以下となる濡れ性を有している。
【0081】
この構成によれば、柱状パターンCL25の頂面35がレジスト材91に対して親和性を有し易くなるため、毛細管力ΔPがレジスト材91に作用し易くなる。結果的に、レジスト材91に未充填領域Auが形成され難くなるため、レジストパターン91pに形成不良が発生し難くなる。
【0082】
本実施形態のテンプレート10の製造方法では、透明基板BAの表面を加工して、透明基板BAから突出するようにメサ部MSを形成する。続いて、柱状パターンCL21~CL25をメサ部MSの基準面RPに形成し、柱状パターンCL25の頂面35に対して表面加工処理を施す。この表面加工処理は、柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面積よりも柱状パターンCL25の頂面35の表面積を大きくするための表面加工処理であり、具体的には柱状パターンCL25の頂面35に凹凸構造45を形成するエッチング処理等である。
【0083】
この構成によれば、柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面積よりも柱状パターンCL25の頂面35の表面積の方が大きい構造を容易に実現することが可能である。
【0084】
1.7 テンプレートの製造方法の変形例
次に、第1実施形態のテンプレート10の製造方法の変形例について説明する。
上記の実施形態は、電子ビーム描画や光リソグラフィ等を利用して、
図12~
図16に示される工程を行うことにより、
図12(A)に示されるテンプレート10から、
図16(C)に示されるようなテンプレート10を形成するものであった。これに対して、本変形例では、ナノインプリント処理を利用して、
図12(A)に示されるテンプレート10から、
図16(C)に示されるようなテンプレート10を形成するものである。
【0085】
具体的には、本変形例のテンプレート10の製造方法では、まず、
図20(A)に示されるように、テンプレート10のメサ部MSの表面に、硬化前のレジスト材160を塗布した後、所定のインプリント装置を用いることにより、テンプレート10の表面に
図20(B)に示されるようなレジストパターン161を形成する。このレジストパターン161は、所定の間隔をあけて配置される複数の凸部161a~161eを有している。複数の凸部161a~161eは、この順で徐々に突出量が小さくなるように形成されている。
【0086】
続いて、レジストパターン161をハードマスクとしてテンプレート10にドライエッチング等のエッチング処理を施す。これにより、
図20(C)に示されるようなテンプレート10を形成することができる。
図20(C)に示されるテンプレート10では、柱状パターンCL21~CL25が、この順で徐々に突出量が小さくなるように形成されている。
【0087】
以降、上述した
図17(A)~(C)に示される工程を行うことにより、テンプレート10に実パターンACを形成することができる。
【0088】
本変形例の製造方法を用いれば、
図12~
図16に示されるような製造方法を用いる場合と比較すると、
図20(C)に示されるような突出量の異なる複数の柱状パターンCL21~CL25を、より容易にテンプレート10に形成することが可能である。
【0089】
2 第2実施形態
次に、第2実施形態のテンプレート10、テンプレート10の製造方法、及び半導体装置MDVの製造方法について説明する。以下、第1実施形態のテンプレート10、テンプレート10の製造方法、及び半導体装置MDVの製造方法との相違点を中心に説明する。
【0090】
2.1 テンプレートの構成
第1実施形態のテンプレート10は、柱状パターンCL25の頂面35に、
図7(A)に示されるような凹凸構造45を形成することにより、柱状パターンCL25の頂面35の表面積を大きくするものであった。これに代えて、本実施形態のテンプレート10では、柱状パターンCL25の頂面35を粗面化することにより、柱状パターンCL25の頂面35の表面積を大きくしている。具体的には以下の通りである。
【0091】
図21(A)は、柱状パターンCL21の頂面31の拡大断面構造を示したものである。また、
図21(B)は、柱状パターンCL25の頂面35の拡大断面構造を示したものである。
【0092】
上述の
図12~
図15に示されるような工程を経て柱状パターンCL21を形成する場合、柱状パターンCL21の頂面31がエッチングされることにより、例えば
図21(A)に示されるように、柱状パターンCL21の頂面31は湾曲した形状に形成される。柱状パターンCL22~CL24のそれぞれの頂面32~34に関しても、
図21(A)に示される柱状パターンCL21の頂面31と同一又は類似の形状を有している。
【0093】
一方、
図21(B)に示されるように、本実施形態の柱状パターンCL25の頂面35は、柱状パターンCL21の頂面31と同様に湾曲した形状を有するとともに、粗面化されている。これにより、柱状パターンCL25の頂面35の表面粗さは、他の柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面粗さよりも大きくなっている。以下では、柱状パターンCL25の頂面35に形成されている粗面化された構造を「粗面化構造46」と称する。
【0094】
2.2 テンプレートの製造方法
次に、本実施形態のテンプレート10の製造方法について説明する。
本実施形態のテンプレート10を製造する際には、上記の
図17(B)に示されるようなレジストパターン71を光リソグラフィ等により形成する際に、柱状パターンCL25の頂面35に、
図18(A)に示されるようなレジストパターン73を形成せずに、柱状パターンCL25の頂面35を加工穴72から露出させる。この段階では、柱状パターンCL25の頂面35は、
図21(A)に示されるような他の柱状パターンCL21~CL24の頂面31~34と同様に湾曲した形状を有している。
【0095】
続いて、柱状パターンCL25の頂面35に対してフッ化水素(HF)等を用いたウェットエッチング処理を施すことにより、柱状パターンCL25の頂面35を、
図21(B)に示されるように粗面化する。これにより、
図21(B)に示されるように、柱状パターンCL25の頂面35に粗面化構造46が形成される。以降は、第1実施形態と同様にテンプレート10からレジストパターン71を剥離する工程が行われて、テンプレート10への実パターンACの形成が完了する。
【0096】
2.3 本実施形態のテンプレートを用いた際の作用及び効果
このような構成によれば、柱状パターンCL25の頂面35の表面積を他の柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面積よりも大きくすることができるため、第1実施形態のテンプレート10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0097】
3 他の実施形態
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。
例えば第2実施形態のテンプレート10に関しては、柱状パターンCL25の頂面35にのみ粗面化構造46を形成する構造に限らず、
図22に示されるように全ての柱状パターンCL21~CL25の頂面31~35に粗面化構造461~465をそれぞれ形成してもよい。この場合、粗面化構造461~465は、この順で徐々に表面粗さが大きくなるように形成されていてもよい。これにより、柱状パターンCL21~CL25は、突出量が低いものほど頂面の表面積が大きくなるように形成されることになる。そのため、レジスト材91が柱状パターンCL21から柱状パターンCL25に向かうほど、レジスト材91に対する柱状パターンCL21~CL25の頂面31~35の親和性が徐々に高くなる。よって、レジスト材91がより浸透し易くなるため、レジスト材91が充填されていない領域が発生することを抑制できる。
【0098】
なお、
図22に示される柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34に形成される粗面化構造461~464が略同一の表面粗さを有し、且つ柱状パターンCL25の頂面35に形成される粗面化構造465が、粗面化構造461~464よりも大きい表面粗さを有していてもよい。このような構成によれば、柱状パターンCL25の頂面35の表面積を他の柱状パターンCL21~CL24のそれぞれの頂面31~34の表面積よりも大きくすることができるため、第2実施形態のテンプレート10と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
【0099】
また、柱状パターンCL21~CL25の頂面31~35のそれぞれに凹凸構造を形成してもよい。この場合、柱状パターンCL25の頂面35には、他の柱状パターンCL21~CL24の頂面31~34に形成される凹凸構造よりも大きい凹凸構造、例えば凸部の高さがより高い凹凸構造や、凸部の数がより多い凹凸構造が設けられていればよい。
【0100】
テンプレート10の実パターンACを構成する柱状パターンの数は、5つに限らず、突出量が異なる2つ以上の任意の数であればよい。例えば少なくとも3つの柱状パターンをテンプレート10に形成する場合、少なくとも3つの柱状パターンが、突出量が低いものほど頂面の表面積が大きくなるように形成されていれば、各実施形態のテンプレート10と同一又は類似の作用及び効果を得ることが可能である。
【0101】
図23に示されるように、例えば柱状パターンCL21~CL25が、同一の形状を有する3つの突出片CL211,CL221,CL231,CL241,CL251によりそれぞれ構成されていてもよい。例えば、3つの突出片CL251は、メサ部MSの基準面RPからの突出量が略同一であって、且つ互いに所定の隙間を有して配置されている。この場合、3つの突出片CL251のそれぞれの頂面35に凹凸構造45が形成されていればよい。また、3つの突出片CL251のそれぞれの頂面35に、凹凸構造45に代えて、第2実施形態のような粗面化構造46を形成してもよい。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれ、且つ特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
BA:透明基板(基材)、CL:柱状パターン(突出部)、CL21~CL24:柱状パターン(第1突出部)、CL25:柱状パターン(第2突出部)、CL211,CL221,CL231,CL241,CL251:突出片、MS:メサ部、10:テンプレート、30:ウェハ(基板)、31~35:頂面、45:凹凸構造(凹凸構造)、91:レジスト材(有機系材料)。