(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086214
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 303
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201235
(22)【出願日】2022-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG12
2C057AG42
2C057AG45
2C057AG91
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】吐出チャネル内のインクに対して効果的に弾性エネルギーを伝え、所望の吐出性能を得ることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るヘッドチップは、噴射チャネル及び非噴射チャネルが交互に配列されたアクチュエータプレートと、噴射チャネルの内面のうち、第2方向で向かい合う内側面に形成された側面共通電極と、噴射チャネルの内面のうち、厚さ方向の第1側を向く底面に形成された底面共通電極と、非噴射チャネルの内面のうち、第2方向で向かい合う内側面に形成され、側面共通電極との間で電位差を発生させる第1個別電極と、アクチュエータプレートのうち厚さ方向の第2側を向く反対面に設けられ、底面共通電極との間で電位差を発生させる第2個別電極と、を備えている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の第1側に開口するとともに、前記厚さ方向に交差する第1方向に延びる噴射チャネル及び非噴射チャネルが、前記厚さ方向から見て前記第1方向に交差する第2方向に交互に配列されたアクチュエータプレートと、
前記噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成された側面共通電極と、
前記噴射チャネルの内面のうち、前記厚さ方向の第1側を向く底面に形成された底面共通電極と、
前記非噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成され、前記側面共通電極との間で電位差を発生させる第1個別電極と、
前記アクチュエータプレートのうち前記厚さ方向の第2側を向く反対面に設けられ、前記底面共通電極との間で電位差を発生させる第2個別電極と、を備えているヘッドチップ。
【請求項2】
前記非噴射チャネルは、前記アクチュエータプレートを前記厚さ方向に貫通し、
前記第1個別電極は、前記非噴射チャネルの前記内側面における前記厚さ方向の全域に亘って形成されている請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記反対面には、前記第1個別電極と前記第2個別電極とを接続する接続配線が形成されている請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記アクチュエータプレートにおける前記第1方向の第1側端面には、前記噴射チャネルに各別に連通する噴射孔を有する噴射孔プレートが重ね合わされている請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記アクチュエータプレートに対して前記厚さ方向の第2側には、前記第1方向の第1側端部において前記噴射チャネルに連通する入口流路、及び前記第1方向の第2側端部において前記噴射チャネルに連通する出口流路を有するカバープレートが設けられ、
前記アクチュエータプレートに対して前記厚さ方向の第1側には、前記噴射チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートが設けられている請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップを備えている液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに搭載されるヘッドチップは、吐出チャネル及び非吐出チャネルが形成されたアクチュエータプレートと、吐出チャネルに連通するノズル孔を有するノズルプレートと、を備えている。吐出チャネル及び非吐出チャネルは、駆動壁を隔てて交互に配列されている(例えば、下記特許文献1参照)。
ヘッドチップにおいて、インクを吐出させるには、駆動壁に形成された電極間に電圧を印加することで、駆動壁に電界を発生させる。これにより、駆動壁がシェアモード(ウォールベンド型)によりせん断変形(厚み滑り変形)することで、吐出チャネル内の容積が変化する。その結果、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にあっては、インク吐出時における吐出チャネル内での発生圧力を向上させる点で未だ改善の余地があった。従来技術では、特に駆動壁の幅を維持したままで、吐出チャネルの幅を拡大させようとした場合等において、吐出チャネル内のインクに対して効果的に弾性エネルギーを伝えることが難しく、所望の発生圧力を得ることが難しかった。
【0005】
本開示は、吐出チャネル内のインクに対して効果的に弾性エネルギーを伝え、所望の吐出性能を得ることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係るヘッドチップは、厚さ方向の第1側に開口するとともに、前記厚さ方向に交差する第1方向に延びる噴射チャネル及び非噴射チャネルが、前記厚さ方向から見て前記第1方向に交差する第2方向に交互に配列されたアクチュエータプレートと、前記噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成された側面共通電極と、前記噴射チャネルの内面のうち、前記厚さ方向の第1側を向く底面に形成された底面共通電極と、前記非噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成され、前記側面共通電極との間で電位差を発生させる第1個別電極と、前記アクチュエータプレートのうち前記厚さ方向の第2側を向く反対面に設けられ、前記底面共通電極との間で電位差を発生させる第2個別電極と、を備えている。
【0007】
本態様によれば、側面共通電極と第1個別電極との間に第2方向で電位差を発生させることで、アクチュエータプレートをシェアモードで第2方向に変形させることができる。また、底面共通電極と第2個別電極との間に厚さ方向の電位差を生じさせることで、アクチュエータプレートをベンドモードで厚さ方向に変形させることができる。このように、アクチュエータプレートを第2方向及び厚さ方向の双方に変形させることで、電圧印加時におけるアクチュエータプレートの弾性エネルギーを確保し易い。したがって、チャネルの幅を確保したとしても、噴射チャネル内の液体に対して効果的に弾性エネルギーを伝え、液体噴射時において噴射チャネル内の発生圧力を確保し易い。その結果、所望の噴射性能を得ることができる。この場合、チャネルの幅を確保することで、斜め蒸着等によってチャネルの内面に電極材料を形成する際に、チャネルの開口部を通じてチャネル内に電極材料を導入させ易い。よって、製造効率や歩留まりの向上を図ることができる。
【0008】
(2)上記(1)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記非噴射チャネルは、前記アクチュエータプレートを前記厚さ方向に貫通し、前記第1個別電極は、前記非噴射チャネルの前記内側面における前記厚さ方向の全域に亘って形成されていることが好ましい。
本態様によれば、第1個別電極のうち噴射チャネルの底面よりも第2側に位置する部分と、底面電極と、の間で電位差を発生させることができる。そのため、噴射チャネルの容積が拡大又は縮小する方向に、アクチュエータプレートをより効果的に変形させることができる。これにより、液体噴射時における噴射チャネル内の発生圧力の更なる向上を図ることができる。
【0009】
(3)上記(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記反対面には、前記第1個別電極と前記第2個別電極とを接続する接続配線が形成されていることが好ましい。
本態様によれば、アクチュエータプレートの反対面において第1個別電極及び第2個別電極を接続することで、第1個別電極及び第2個別電極を外部配線に対して一括して接続することが可能になる。これにより、第2個別電極の追加に伴う構成の複雑化を抑制できる。
【0010】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記アクチュエータプレートにおける前記第1方向の第1側端面には、前記噴射チャネルに各別に連通する噴射孔を有する噴射孔プレートが重ね合わされていることが好ましい。
本態様によれば、チャネルの長さを確保した上で、第1方向から見たヘッドチップの外形の小型化が可能になる。
【0011】
(5)上記(1)から(3)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記アクチュエータプレートに対して前記厚さ方向の第2側には、前記第1方向の第1側端部において前記噴射チャネルに連通する入口流路、及び前記第1方向の第2側端部において前記噴射チャネルに連通する出口流路を有するカバープレートが設けられ、前記アクチュエータプレートに対して前記厚さ方向の第1側には、前記噴射チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートが設けられていることが好ましい。
本態様によれば、入口流路、噴射チャネル及び出口流路を通じて液体を循環させることで、噴射チャネル内を流れる液体の流量を確保できる。その上で、本態様では、上記の通り吐出圧力を向上させることができるので、液体の噴射量を確保し、印刷効率を向上させることができる。
【0012】
(6)本開示に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(5)の何れかの態様に係るヘッドチップを備えている。
本態様によれば、上記態様に係るヘッドチップを備えているので、所望の噴射性能が発揮できる高品質な液体噴射ヘッドを提供できる。
【0013】
(7)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、上記(6)の態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、上記態様に係る液体噴射ヘッドを備えているので、所望の噴射性能が発揮できる高品質な液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、噴射チャネル内の液体に対して効果的に弾性エネルギーを伝え、所望の噴射性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線に対応するヘッドチップの断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に対応するヘッドチップの断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るアクチュエータプレートの平面図である。
【
図7】第1実施形態に係るアクチュエータプレートの底面図である。
【
図8】第1実施形態に係るヘッドチップの動作説明図である。
【
図9】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】第1実施形態に係るヘッドチップの工程図である。
【
図11】第1実施形態に係るヘッドチップの工程図である。
【
図12】第1実施形態に係るヘッドチップの工程図である。
【
図13】第1実施形態に係るヘッドチップの工程図である。
【
図14】第1実施形態に係るヘッドチップの工程図である。
【
図15】第2実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図17】
図15のXVII-XVII線に対応する断面図である。
【
図18】
図15のXVIII-XVIII線に対応する断面図である。
【
図21】第3実施形態に係るヘッドチップの断面図である。
【
図22】第3実施形態に係るヘッドチップの断面図である。
【
図23】第3実施形態に係るアクチュエータプレートの底面図である。
【
図24】第3実施形態に係るアクチュエータプレートの平面図である。
【
図26】第1変形例に係るアクチュエータプレートの底面図である。
【
図27】第1変形例に係るアクチュエータプレートの平面図である。
【
図28】第2変形例に係るアクチュエータプレートの底面図である。
【
図29】第2変形例に係るアクチュエータプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インク供給機構4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、走査機構6と、を備えている。
【0018】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構6の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本明細書において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0019】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インク供給機構4は、インクが収容されたインクタンク13と、インクタンク13とインクジェットヘッド5とを接続するインク配管14と、を備えている。インクタンク13には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク13に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。
【0020】
走査機構6は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構6は、Y方向に延びるガイドレール15と、ガイドレール15に移動可能に支持されたキャリッジ16と、を備えている。図示の例において、一つのキャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド5がY方向に並んで搭載されている。
【0021】
<インクジェットヘッド5>
インクジェットヘッド5は、キャリッジ16に搭載されている。図示の例では、複数のインクジェットヘッド5が、一つのキャリッジ16にY方向に並んで搭載されている。インクジェットヘッド5は、ヘッドチップ50(
図3参照)と、インク供給機構4及びヘッドチップ50間を接続するインク供給部(不図示)と、ヘッドチップ50に駆動電圧を印加する制御部(不図示)と、を備えている。
【0022】
<ヘッドチップ50>
図2は、ヘッドチップ50の分解斜視図である。
図2に示すヘッドチップ50は、後述する吐出チャネル61における延在方向(Z方向)の端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプである。具体的に、ヘッドチップ50は、アクチュエータプレート51と、カバープレート52と、ノズルプレート53と、を備えている。
【0023】
アクチュエータプレート51は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料で形成されている。アクチュエータプレート51は、Y方向(厚さ方向)における分極方向が異なる(向かい合う)2枚の圧電プレートが積層された構成である(いわゆる、シェブロン基板)。但し、アクチュエータプレート51の分極方向は、Y方向の全体で一様な構成(いわゆる、モノポール基板)であってもよい。
【0024】
アクチュエータプレート51には、インクが充填される吐出チャネル(噴射チャネル)61、及びインクが充填されない非吐出チャネル(非噴射チャネル)62が形成されている。各チャネル61,62は、アクチュエータプレート51において、X方向(第2方向)に間隔をあけた状態で交互に配列されることで、チャネル列60を構成している。第1実施形態では、チャネル延在方向がZ方向(第1方向)に一致する構成について説明するが、チャネル延在方向がZ方向に交差していてもよい。
【0025】
図3は、
図2のIII-III線に対応するヘッドチップ50の断面図である。以下の説明において、+Y側を表面側とし、-Y側を裏面側とし、+Z側を上側とし、-Z側を下側として説明する。
図3に示すように、吐出チャネル61は、アクチュエータプレート51の表面上で開口するとともに、Z方向に延びている。吐出チャネル61の上端部は、上方に向かうに従いY方向の深さが漸次浅くなっている。
【0026】
図4は、
図2のIV-IV線に対応するヘッドチップ50の断面図である。
図4に示すように、非吐出チャネル62は、アクチュエータプレート51の表面上で開口するとともに、アクチュエータプレート51をZ方向に貫通している。非吐出チャネル62におけるY方向の深さは、Z方向の全長に亘って一様である。非吐出チャネル62は、アクチュエータプレート51をY方向に貫通している。
【0027】
図2に示すように、アクチュエータプレート51のうち、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62間に位置する部分は、それぞれ駆動壁65を構成している。したがって、吐出チャネル61は、一対の駆動壁65によってX方向の両側が囲まれている。アクチュエータプレート51のうち、吐出チャネル61に対して上方に位置する部分は、尾部68を構成している。なお、アクチュエータプレート51の裏面には、非吐出チャネル62の裏面側開口部を閉塞するバックプレートが設けられていてもよい。
【0028】
アクチュエータプレート51には、駆動配線69が形成されている。駆動配線69は、Ti/AuやNi/Au等の電極材料を、例えば蒸着やスパッタ、めっき等により成膜することで形成される。駆動配線69の詳細については、後述する。
【0029】
<カバープレート52>
図2~
図4に示すように、カバープレート52は、アクチュエータプレート51の表面に重ね合わされている。具体的に、カバープレート52は、尾部68の表面を露出させた状態で各チャネル61,62の表面側開口部を閉塞している。カバープレート52は、アクチュエータプレート51の表面に接合されている。カバープレート52の下端面は、アクチュエータプレート51の下端面と面一に配置されている。
【0030】
カバープレート52において、吐出チャネル61の上端部とY方向から見て重なり合う位置には、共通インク室70が形成されている。共通インク室70は、例えばチャネル列60を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート52の表面上で開口している。
共通インク室70において、吐出チャネル61とY方向から見て重なり合う位置には、スリット71が形成されている。スリット71は、各吐出チャネル61の上端部と、共通インク室70内と、の間を各別に連通している。したがって、共通インク室70は、各スリット71を通じて各吐出チャネル61にそれぞれ連通する一方、各非吐出チャネル62には連通していない。
【0031】
<ノズルプレート53>
ノズルプレート53は、アクチュエータプレート51の下端面に接合されている。ノズルプレート53は、Z方向を厚さ方向として配置されている。第1実施形態において、ノズルプレート53は、金属材料(SUSやNi-Pd等)により厚さが50μm程度に形成されている。但し、ノズルプレート53は、金属材料の他、ポリイミド等の樹脂材料、ガラス、シリコン等による単層構造、又は積層構造であってもよい。ノズルプレート53は、アクチュエータプレート51の下端面に直接固定されていてもよく、例えば中間プレート等を介して間接的に固定されていてもよい。
【0032】
ノズルプレート53には、ノズルプレート53をZ方向に貫通するノズル孔75が形成されている。ノズル孔75は、ノズルプレート53のうち、吐出チャネル61にZ方向で向かい合う位置に各別に形成されている。なお、各ノズル孔75は、上方から下方に向かうに従い漸次先細るテーパ状に形成されている。
【0033】
続いて、駆動配線69の構造について説明する。
駆動配線69は、共通配線81と、個別配線82と、を備えている。
【0034】
図5は、アクチュエータプレート51の平面図である。
図6は、
図2のVI矢視図である。
図3、
図5、
図6に示すように、共通配線81は、共通電極85と、共通端子86と、を備えている。
共通電極85は、吐出チャネル61の内面に形成されている。共通電極85は、側面電極85aと、底面電極85bと、を備えている。側面電極85aは、吐出チャネル61の内面のうち、X方向で向かい合う内側面にそれぞれ形成されている。側面電極85aは、各内側面の全域に亘って形成されている。
底面電極85bは、吐出チャネル61の底面(+Y側を向く面)全域に形成されている。底面電極85bは、同一の吐出チャネル61に形成された側面電極85aに一体で連なっている。なお、側面電極85aと底面電極85bとは、吐出チャネル61内において互いに離間していてもよい。
【0035】
共通端子86は、尾部68の表面に形成されている。共通端子86は、尾部68の表面において、各吐出チャネル61に対応して設けられている。各共通端子86は、対応する吐出チャネル61の上方でZ方向に直線状に延びている。共通端子86における下端部は、吐出チャネル61の上端開口縁において共通電極85(底面電極85b)に連なっている。
【0036】
図7は、アクチュエータプレート51の底面図である。
図4~
図7に示すように、個別配線82は、個別電極87と、接続配線88と、個別端子89と、を備えている。
個別電極87は、共通電極85との間で電位差を生じさせる。個別電極87は、第1個別電極87aと、第2個別電極87bと、を含んでいる。
【0037】
第1個別電極87aは、非吐出チャネル62の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。各第1個別電極87aは、非吐出チャネル62の内側面全域に亘って形成されている。すなわち、第1個別電極87aは、吐出チャネル61の底面よりも裏面側まで延びている。但し、第1個別電極87aは、X方向から見て側面電極85aと少なくとも一部が重なり合うように(向かい合うように)形成されていればよい。
【0038】
図7に示すように、第2個別電極87bは、アクチュエータプレート51の裏面のうち、Y方向から見て吐出チャネル61と重なり合う部分に形成されている。第2個別電極87bは、吐出チャネル61と同等の幅を有し、吐出チャネル61と同等の長さでZ方向に延びる帯状に形成されている。なお、第2個別電極87bは、アクチュエータプレート51の裏面(反対面)の少なくとも一部に形成されていればよい。この場合、第2個別電極87bは、アクチュエータプレート51の裏面全域に形成されていてもよい。
【0039】
接続配線88は、第1個別電極87a及び第2個別電極87b同士を接続している。接続配線88は、アクチュエータプレート51の裏面のうち、上端部をX方向に延びている。接続配線88は、非吐出チャネル62の裏面側開口縁において、一の吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う第1個別電極87a同士を接続している。一方、接続配線88は、X方向の中央部において、第2個別電極87bの上端部に接続されている。なお、接続配線88は、第1個別電極87a及び第2個別電極87b同士を接続する構成であれば、適宜変更が可能である。
【0040】
図5に示すように、個別端子89は、尾部68の表面において、共通端子86よりも上方に位置する部分に形成されている。個別端子89は、X方向に延びる帯状に形成されている。個別端子89は、吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル62の表面側開口縁において、吐出チャネル61を間に挟んでX方向で向かい合う第1個別電極87a同士を接続している。すなわち、第2個別電極87bは、接続配線88及び第1個別電極87aを介して個別端子89に接続されている。尾部68において、共通端子86と個別端子89との間に位置する部分には、区画溝90が形成されている。区画溝90は、尾部68において、X方向に延びている。区画溝90は、共通端子86と個別端子89とを分離している。
【0041】
図3、
図4に示すように、尾部68の表面には、フレキシブルプリント基板91が圧着されている。フレキシブルプリント基板91は、尾部68の表面において、共通端子86と個別端子89に接続されている。フレキシブルプリント基板91は、ヘッドチップ50と制御部との間を接続している。
【0042】
[プリンタ1の動作方法]
次に、上述のプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、
図1に示す4つのインクタンク13にはそれぞれ異なる色のインクが十分に充填されているものとする。また、インクタンク13内のインクは、インク配管14を通じてインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0043】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pが搬送機構2,3のローラ11,12に挟み込まれながら+X側に搬送される。被記録媒体Pの搬送と同時にキャリッジ16がY方向に移動することで、キャリッジ16に搭載されたインクジェットヘッド5がY方向に往復移動する。
【0044】
インクジェットヘッド5が往復移動する間に、各インクジェットヘッド5よりインクを被記録媒体Pに適宜吐出させる。具体的に、キャリッジ16(
図1参照)の移動によってインクジェットヘッド5の往復移動が開始されると、フレキシブルプリント基板91を介して共通電極85及び個別電極87間に駆動電圧が印加される。この際、個別電極87を駆動電位Vddとし、共通電極85を基準電位GNDとして各電極85,87間に駆動電圧(パルス信号)を印加する。
【0045】
図8は、ヘッドチップ50の動作説明図である。
すると、
図8に示すように、側面電極85aと第1個別電極87aとの間には、X方向で電位差が生じる(
図8中矢印A)。X方向に生じた電位差により、アクチュエータプレート51(各圧電プレート)には分極方向(Z方向)に直交する方向に電界が生じる。その結果、各圧電プレートが、シェアモードによりX方向に厚み滑り変形することで、吐出チャネル61のY方向の中央部を起点にして、駆動壁65がV字状に屈曲変形する。すなわち、駆動壁65は吐出チャネル61の容積が拡大するように変形する。
また、底面電極85bと第2個別電極87bとの間には、Y方向で電位差が生じる(
図8中矢印B)。Y方向に生じた電位差により、アクチュエータプレート51には分極方向に平行な方向(Y方向)に電界が生じる。その結果、アクチュエータプレート51のうち、吐出チャネル61の底面と、アクチュエータプレート51の裏面との間に位置する部分が、ベンドモードにより吐出チャネル61の容積が拡大する方向(裏面側)に伸長変形する。
その上で、第1実施形態では、第1個別電極87aのうち吐出チャネル61の底面よりも裏面側に位置する部分(以下、オフセット部分87a1という。)と、底面電極85bと、の間で電位差が生じる(
図8中矢印C)。これにより、アクチュエータプレート51のうちオフセット部分87a1と底面電極85bとの間に位置する部分が、シェアモード及びベンドモードにより吐出チャネル61の容積が拡大する方向に変形する。すなわち、第1実施形態では、駆動電圧の印加に伴い、吐出チャネル61をX方向の両側及び裏面側に拡大させるようにアクチュエータプレート51が変形する。
【0046】
各吐出チャネル61の容積が増大した後、共通電極85及び個別電極87間に印加した駆動電圧をゼロにする。すると、駆動壁65が復元し、一旦増大した吐出チャネル61の容積が元の容積に戻る。これにより、吐出チャネル61の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。そして、吐出チャネル61内の圧力増加によって発生した圧力波が、ノズル孔75に向けて伝播する。その結果、吐出チャネル61内のインクがノズル孔75を通じて液滴状に吐出される。ノズル孔75から吐出されたインクが被記録媒体P上に着弾することで、被記録媒体Pに文字や画像等の印刷情報を記録することができる。
【0047】
<ヘッドチップ50の製造方法>
次に、ヘッドチップ50の製造方法について説明する。
図9は、ヘッドチップ50の製造方法を示すフローチャートである。以下の説明では、便宜上、ヘッドチップ50をチップレベルで製造する場合を例にして説明する。
図9に示すように、ヘッドチップ50の製造方法は、アクチュエータプレート加工工程S1と、第1配線形成工程S2と、カバープレート積層工程S3と、グラインド工程S4と、第2配線形成工程S5と、ノズルプレート積層工程S6と、を備えている。
【0048】
図10~
図14は、ヘッドチップ50の工程図である。
図10に示すように、アクチュエータプレート加工工程S1では、アクチュエータプレート51のうち、吐出チャネル61及び非吐出チャネル62の形成領域に対してアクチュエータプレート51の表面側からダイサーを進入させる。この際、非吐出チャネル62の形成領域へのダイサーの進入量は、吐出チャネル61の形成領域へのダイサーの進入量よりも深く設定する。
【0049】
図11に示すように、第1配線形成工程S2では、アクチュエータプレート51の表面側から電極材料を成膜することで、駆動配線69の一部(共通電極85や第1個別電極87a、共通端子86、個別端子89)を形成する。第1配線形成工程S2は、例えばマスクパターンを通じて斜め蒸着等を行う。これにより、アクチュエータプレート51の表面やチャネル61,62の内面の所望の位置に電極材料が選択的に形成される。電極材料の成膜後、リフトオフ等によってマスクパターンを除去する。
【0050】
図12に示すように、カバープレート積層工程S3では、アクチュエータプレート51の表面に対し、カバープレート52を貼り付ける。
図13に示すように、グラインド工程S4では、アクチュエータプレート51の裏面に対してグラインド加工を施す。この際、非吐出チャネル62がアクチュエータプレート51の裏面で開口するようにアクチュエータプレート51をグラインドする。
【0051】
図14に示すように、第2配線形成工程S5では、アクチュエータプレート51の裏面側から電極材料を成膜することで、駆動配線69の一部(第2個別電極87b、接続配線88)を形成する。第2配線形成工程S5は、例えばマスクパターンを通じて斜め蒸着等を行う。これにより、アクチュエータプレート51の裏面の所望の位置に電極材料が選択的に形成される。電極材料の成膜後、リフトオフ等によってマスクパターンを除去する。
【0052】
ノズルプレート積層工程S6では、ノズル孔75と吐出チャネル61とを位置合わせした状態で、アクチュエータプレート51の下端面にノズルプレート53を貼り付ける。
以上により、ヘッドチップ50が製造される。
【0053】
ここで、第1実施形態のヘッドチップ50は、表面側(厚さ方向の第1側)に開口するとともに、Z方向(第1方向)に延びる吐出チャネル61及び非吐出チャネル62が形成されたアクチュエータプレート51と、吐出チャネル61の内側面に形成された側面電極(側面共通電極)85aと、吐出チャネル61の底面に形成された底面電極(底面共通電極)85bと、非吐出チャネル62の内側面に形成された第1個別電極87aと、アクチュエータプレート51の裏面(厚さ方向の第2側を向く反対面)に設けられた第2個別電極87bと、を備えている構成とした。
この構成によれば、側面電極85aと第1個別電極87aとの間にX方向(第2方向)で電位差を発生させることで、アクチュエータプレート51(駆動壁65)をシェアモードでX方向に変形させることができる。また、底面電極85bと第2個別電極87bとの間にY方向(厚さ方向)の電位差を生じさせることで、アクチュエータプレート51をベンドモードでY方向に変形させることができる。このように、アクチュエータプレート51をX方向及びY方向の双方に変形させることで、電圧印加時におけるアクチュエータプレート51の弾性エネルギーを確保し易い。したがって、チャネル61,62の幅を確保したとしても、吐出チャネル61内のインクに対して効果的に弾性エネルギーを伝え、インク吐出時において吐出チャネル61内の発生圧力を確保し易い。その結果、所望の吐出性能を得ることができる。この場合、チャネル61,62の幅を確保することで、斜め蒸着等によってチャネル61,62の内面に電極材料を形成する際に、チャネル61,62の表面側開口部を通じてチャネル61,62内に電極材料を導入させ易い。よって、製造効率や歩留まりの向上を図ることができる。
【0054】
第1実施形態のヘッドチップ50は、非吐出チャネル62がアクチュエータプレート51をY方向に貫通するとともに、第1個別電極87aは非吐出チャネル62のY方向の全域に亘って形成されている構成とした。
この構成によれば、第1個別電極87aのうち吐出チャネル61の底面よりも裏面側に位置する部分(オフセット部分87a1)と、底面電極85bと、の間で電位差を発生させることができる。そのため、吐出チャネル61の容積が拡大する方向に、アクチュエータプレート51をより効果的に変形させることができる。これにより、インク吐出時における吐出チャネル61内の発生圧力の更なる向上を図ることができる。
【0055】
第1実施形態のヘッドチップ50は、アクチュエータプレート51の裏面には、第1個別電極87a及び第2個別電極87b間を接続する接続配線88が形成されている構成とした。
この構成によれば、アクチュエータプレート51の裏面において第1個別電極87a及び第2個別電極87bを接続することで、第1個別電極87a及び第2個別電極87bをフレキシブルプリント基板91に対して一括して接続することが可能になる。これにより、第2個別電極87bの追加に伴う構成の複雑化を抑制できる。
【0056】
第1実施形態のヘッドチップ50は、アクチュエータプレート51の下端面(第1側端面)にノズルプレート53が重ね合わされている構成とした。
この構成によれば、チャネル61,62の長さを確保した上で、Z方向から見たヘッドチップ50の外形の小型化が可能になる。
【0057】
第1実施形態のインクジェットヘッド5及びプリンタ1では、上述したヘッドチップ50を備えているので、所望の吐出性能が発揮できる高品質なインクジェットヘッド5及びプリンタ1を提供できる。
【0058】
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態に係るヘッドチップ200の分解斜視図である。
図16は、
図15のXVI-XVI線に対応する断面図である。
図17は、
図15のXVII-XVII線に対応する断面図である。第2実施形態では、サイドシュートタイプのヘッドチップ200に本開示を採用した場合について説明する。
図15~
図17に示すように、サイドシュートタイプのヘッドチップ200は、吐出チャネル211における延在方向の中央部からインクを吐出する。具体的に、ヘッドチップ200は、アクチュエータプレート201と、カバープレート202と、ノズルプレート203と、を備えている。
【0059】
アクチュエータプレート201は、3枚の圧電プレート(第1圧電プレート201a、第2圧電プレート201b及び第3圧電プレート201c)がZ方向(厚さ方向)に積層された構成である。第1圧電プレート201a及び第2圧電プレート201bは、第1実施形態と同様に分極方向がZ方向で互いに異なる、いわゆるシェブロン基板を構成している。第3圧電プレート201cの分極方向は、第2圧電プレート201bと同様に設定されている。第2実施形態において、第1圧電プレート201aの分極方向は下向きに設定され、第2圧電プレート201b及び第3圧電プレート201cの分極方向は上向きに設定されている。
【0060】
アクチュエータプレート201には、チャネル列210が形成されている。チャネル列210は、吐出チャネル211及び非吐出チャネル212がX方向に交互に並んで形成されている。
図15、
図16に示すように、吐出チャネル211は、第1圧電プレート201a及び第2圧電プレート201bをZ方向に跨って形成されている。吐出チャネル211は、X方向から見て下方に向けて凸の円弧状に形成されている。吐出チャネル211は、Y方向の中央部において、アクチュエータプレート201(第1圧電プレート201a)の下面で開口している。一方、吐出チャネル211の上端開口部は、第3圧電プレート201cによって閉塞されている。吐出チャネル211は、Y方向の両端部において、Y方向の外側に向かうに従い深さが漸次浅くなっている。
【0061】
図15、
図17に示すように、非吐出チャネル212は、アクチュエータプレート201(第1圧電プレート201a~第3圧電プレート201c)をZ方向に貫通した状態で、Y方向に直線状に延びている。アクチュエータプレート201のうち、吐出チャネル211及び非吐出チャネル212間に位置する部分は、それぞれ駆動壁215を構成している。したがって、チャネル211,212は、一対の駆動壁215によってX方向の両側が囲まれている。
【0062】
第3圧電プレート201cには、入口連通路213及び出口連通路214が形成されている。入口連通路213は、第3圧電プレート201cのうち、Z方向から見て吐出チャネル211の-Y側端部と重なり合う部分を貫通している。出口連通路214は、第3圧電プレート201cのうち、Z方向から見て吐出チャネル211の+Y側端部と重なり合う部分を貫通している。
【0063】
図15に示すように、アクチュエータプレート201には、駆動配線219が形成されている。駆動配線219は、共通配線220及び個別配線221を含んでいる。
図16に示すように、共通配線220は、共通電極225と、共通端子226と、を備えている。
【0064】
図18は、
図15のXVIII-XVIII線に対応する断面図である。
図16、
図18に示すように、共通電極225は、吐出チャネル211の内面に形成されている。共通電極225は、側面電極225aと、底面電極225bと、を備えている。側面電極225aは、吐出チャネル211の内面のうち、X方向で向かい合う内側面にそれぞれ形成されている。側面電極225aは、各内側面の全域に亘って形成されている。
底面電極225bは、各吐出チャネル211の底面(下方を向く面)全域に形成されている。底面電極225bは、同一の吐出チャネル211に形成された側面電極225aに一体で連なっている。
【0065】
図19は、
図15のXIX矢視図である。
図19に示すように、共通端子226は、アクチュエータプレート201のうち、吐出チャネル211に対して+Y側に位置する部分(以下、尾部201dという。)に形成されている。共通端子226は、尾部201dの下面において、各吐出チャネル211に対応して設けられている。各共通端子226は、対応する吐出チャネル211に対してY方向に直線状に延びている。共通端子226における-Y側端部は、吐出チャネル211の下端開口縁を通じて共通電極225に連なっている。
【0066】
図20は、
図15のXX矢視図である。
図17~
図20に示すように、個別配線221は、個別電極227と、接続配線228と、個別端子229と、を備えている。
個別電極227は、第1個別電極227aと、第2個別電極227bと、を備えている。第1個別電極227aは、各非吐出チャネル212の内面のうち、X方向で向かい合う内側面全域に形成されている。第2個別電極227bは、アクチュエータプレート201(第3圧電プレート201c)の上面のうち、Z方向から見て吐出チャネル211と重なり合う部分に形成されている。第2個別電極227bは、吐出チャネル211と同等の幅を有し、Y方向に延びる帯状に形成されている。
【0067】
接続配線228は、アクチュエータプレート201の上面(反対面)のうち、Y方向の中央部をX方向に延びている。接続配線228は、非吐出チャネル212の上端開口縁において、一の吐出チャネル211を間に挟んでX方向で向かい合う第1個別電極227a同士を接続している。一方、接続配線228は、アクチュエータプレート201の上面において第2個別電極227bに接続されている。
【0068】
図19に示すように、個別端子229は、尾部201dの下面において、共通端子226よりも+Y側に位置する部分に形成されている。個別端子229は、X方向に延びる帯状とされている。個別端子229は、吐出チャネル211を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル212の下端開口縁において、吐出チャネル211を間に挟んでX方向で向かい合う第1個別電極227a同士を接続している。
【0069】
図16、
図17に示すように、尾部201dの下面には、フレキシブルプリント基板230が圧着される。フレキシブルプリント基板230は、尾部201dの下面において、共通端子226と個別端子229に接続されている。
【0070】
カバープレート202は、各チャネル211,212の上端開口部を覆うように、アクチュエータプレート201の上面に重ね合わされている。カバープレート202において、チャネル列210の-Y側端部と平面視で重なり合う位置には、入口共通インク室240が形成されている。入口共通インク室240は、例えばチャネル列210を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート202の上面で開口している。
入口共通インク室240において、入口連通路213と平面視で重なり合う位置には、入口スリット241が形成されている。各入口スリット241は、入口連通路213を通じて各吐出チャネル211内と入口共通インク室240内との間を各別に連通している。
【0071】
カバープレート202において、チャネル列210の+Y側端部と平面視で重なり合う位置には、出口共通インク室245が形成されている。出口共通インク室245は、例えばチャネル列210を跨る長さでX方向に延びるとともに、カバープレート202の上面で開口している。
出口共通インク室245において、各出口連通路214と平面視で重なり合う位置には、出口スリット246が形成されている。出口スリット246は、各吐出チャネル211内と出口共通インク室245内との間を各別に連通している。したがって、入口スリット241及び出口スリット246は、それぞれ各吐出チャネル211に連通する一方、非吐出チャネル212には連通していない。
【0072】
図16に示すように、ノズルプレート203は、アクチュエータプレート201の下面に接合されている。ノズルプレート203には、ノズルプレート203をZ方向に貫通する複数のノズル孔251が形成されている。各ノズル孔251は、それぞれX方向に間隔をあけて配置されている。ノズル孔251は、吐出チャネル211のうちY方向の中央部に各別に連通している。
【0073】
第2実施形態においても、インク吐出時において、側面電極225aと第1個別電極227aとの間にX方向で電位差を発生させることで、アクチュエータプレート201(駆動壁215)をシェアモードでX方向に変形させることができる。また、底面電極225bと第2個別電極227bとの間にZ方向の電位差を生じさせることで、アクチュエータプレート201をベンドモードでZ方向に変形させることができる。
その上で、第1個別電極227aのうち吐出チャネル211の底面よりも上方に位置する部分と、底面電極225bと、の間でZ方向に電位差を発生させることができる。そのため、シェアモード及びベンドモードにより、吐出チャネル211の容積が拡大する方向に、アクチュエータプレート201を変形させることができる。
このように、アクチュエータプレート201をX方向及びZ方向の双方に変形させることで、電圧印加時におけるアクチュエータプレート201の弾性エネルギーを確保し易い。したがって、インク吐出時において吐出チャネル211内の発生圧力を確保し易く、所望の吐出性能を得ることができる。
【0074】
しかも、第2実施形態のヘッドチップ200は、-Y側端部(第1方向の第1側端部)において吐出チャネル211に連通する入口スリット(入口流路)241、及び+Y側端部(第1方向の第2側端部)において吐出チャネル211に連通する出口スリット(出口流路)246を有するカバープレート202が設けられ、アクチュエータプレート201の下方(厚さ方向の第1側)には、吐出チャネル211に連通するノズル孔251が形成されたノズルプレート203が設けられている構成とした。
この構成によれば、入口スリット241、吐出チャネル211及び出口スリット246を通じてインクを循環させることで、吐出チャネル211内を流れるインクの流量を確保できる。その上で、第2実施形態では、上記の通り発生圧力を向上させることができるので、インクの吐出量を確保し、印刷効率を向上させることができる。
【0075】
(第3実施形態)
図21、
図22は、第3実施形態に係るヘッドチップ300の断面図である。
図21、
図22に示すヘッドチップ300は、アクチュエータプレート301と、カバープレート302と、ノズルプレート303と、を備えている。
【0076】
アクチュエータプレート301は、分極方向がZ方向に異なる2枚の圧電プレートが積層された構成である。アクチュエータプレート301には、チャネル列305と、共通流路306と、が形成されている。
チャネル列305は、吐出チャネル311と非吐出チャネル312と駆動壁315を挟んでX方向に交互に並んで形成されている。吐出チャネル311は、アクチュエータプレート301の下面で開口するとともに、Y方向に延びる溝状である。吐出チャネル311におけるZ方向の深さは、Y方向の全体に亘って一様になっている。
非吐出チャネル312は、X方向から見て下方に突の円弧状に形成されている。非吐出チャネル312は、アクチュエータプレート301の上下面それぞれで開口している。
【0077】
共通流路306は、入口側共通流路306aと、出口側共通流路306bと、を備えている。
入口側共通流路306aは、アクチュエータプレート301のうち、チャネル列305に対して+Y側に位置する部分に形成されている。入口側共通流路306aは、アクチュエータプレート301の下面で開口するとともに、チャネル列305の全体を跨る長さでX方向に延びている。入口側共通流路306aには、各吐出チャネル311の+Y側端部が接続されている。これにより、入口側共通流路306aを流れるインクが各吐出チャネル311に分配される。入口側共通流路306aにおける-X側端部は、入口ポート(不図示)に接続される。インクタンク内のインクは、入口ポートを通じて入口側共通流路306aに供給される。
【0078】
出口側共通流路306bは、アクチュエータプレート301のうち、チャネル列305に対して-Y側に位置する部分に形成されている。出口側共通流路306bは、アクチュエータプレート301の下面で開口するとともに、チャネル列305の全体を跨る長さでX方向に延びている。出口側共通流路306bには、各吐出チャネル311の-Y側端部が接続されている。これにより、各吐出チャネル311を通過したインクが出口側共通流路306bに戻される。出口側共通流路306bにおける+X側端部は、出口ポート(不図示)に接続される。出口側共通流路306bを流れるインクは、出口ポートを通じてインクタンク内に戻される。
【0079】
図22に示すように、アクチュエータプレート301において、各非吐出チャネル312に対してY方向の両側に位置する部分には、一対の共通配線用第1孔320がそれぞれ形成されている。一対の共通配線用第1孔320は、アクチュエータプレート301をZ方向に貫通している。なお、共通配線用第1孔320は、非吐出チャネル312に対して片側のみに形成されていてもよい。
【0080】
カバープレート302は、アクチュエータプレート301の上面に接着剤等により固定されている。カバープレート302は、非吐出チャネル312及び共通配線用第1孔320の上端開口部を閉塞している。
【0081】
図21に示すように、カバープレート302のうち、各吐出チャネル311と平面視で重なり合う部分には、個別配線用孔330がそれぞれ形成されている。個別配線用孔330は、カバープレート302をZ方向に貫通している。つまり、アクチュエータプレート301の上面は、個別配線用孔330を通じて露出している。
図22に示すように、カバープレート302のうち、各共通配線用第1孔320と平面視で重なり合う部分には、共通配線用第2孔331が形成されている。共通配線用第2孔331は、カバープレート302をZ方向に貫通している。共通配線用第2孔331は、共通配線用第1孔320に連通している。
【0082】
ノズルプレート303は、アクチュエータプレート301の下面に接着剤等によって固定されている。ノズルプレート303は、吐出チャネル311、非吐出チャネル312、共通流路306及び共通配線用第1孔320の下端開口部を閉塞している。ノズルプレート303には、ノズルプレート303をZ方向に貫通する複数のノズル孔333が形成されている。ノズル孔333は、各吐出チャネル311のうちY方向の中央部に各別に連通している。
【0083】
次に、ヘッドチップ300が備える駆動配線340について説明する。
図23は、アクチュエータプレート301の底面図である。
図24は、アクチュエータプレート301の平面図である。
図25は、
図21のIIV-IIV線に対応する断面図である。
図21~
図25に示すように、駆動配線340は、共通配線341及び個別配線342を含んでいる。共通配線341は、共通電極345と、下面接続配線346と、上面接続配線347と、共通端子348と、貫通配線349と、を備えている。
【0084】
図21、
図25に示すように、共通電極345は、吐出チャネル311の内面に形成されている。共通電極345は、側面電極345aと、底面電極345bと、を備えている。
側面電極345aは、吐出チャネル311の内面のうち、X方向で向かい合う内側面それぞれに形成されている。側面電極345aは、各内側面の全域に亘って形成されている。
底面電極345bは、各吐出チャネル311の底面(下方を向く面)全域に形成されている。底面電極345bは、同一の吐出チャネル311に形成された側面電極345aに一体で連なっている。
【0085】
図23に示すように、下面接続配線346は、アクチュエータプレート301の下面のうち、非吐出チャネル312の下端開口部に対してY方向の両側にそれぞれ形成されている。下面接続配線346は、共通配線用第1孔320及び吐出チャネル311を横断するようにX方向に延びている。下面接続配線346は、各吐出チャネル311の下端開口縁において、共通電極345(側面電極345a)に接続されている。
【0086】
図24に示すように、上面接続配線347は、アクチュエータプレート301の上面のうち、下面接続配線346と平面視で重なり合う位置に形成されている。上面接続配線347は、共通配線用第1孔320を横断するようにX方向に延びている。
【0087】
図22に示すように、共通端子348は、カバープレート302の上面のうち、Y方向の両端部にそれぞれ形成されている。共通端子348におけるY方向の外側端縁は、共通配線用第2孔331の上端開口縁に達している。
貫通配線349は、共通配線用第1孔320及び共通配線用第2孔331の内面に形成されている。貫通配線349は、共通配線用第1孔320の下端開口縁において、下面接続配線346に接続されている。貫通配線349は、共通配線用第1孔320の上端開口縁において、上面接続配線347に接続されている。貫通配線349は、共通配線用第2孔331の上端開口縁において、共通端子348に接続されている。
【0088】
図21~
図25に示すように、個別配線342は、個別電極351と、接続配線352と、個別端子353と、貫通配線354と、を備えている。
個別電極351は、第1個別電極351aと、第2個別電極351bと、を備えている。
【0089】
図22に示すように、第1個別電極351aは、非吐出チャネル312の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。各第1個別電極351aは、非吐出チャネル312の内側面全域に亘って形成されている。
【0090】
図21、
図24に示すように、第2個別電極351bは、アクチュエータプレート301の上面(反対面)において、吐出チャネル311と平面視で重なり合う部分に形成されている。第2個別電極351bは、吐出チャネル311に沿ってY方向に直線状に延びている。
【0091】
接続配線352は、アクチュエータプレート301の上面において、第1個別電極351aと第2個別電極351bとを接続している。接続配線352は、アクチュエータプレート301の上面のうち、Y方向の中央部をX方向に延びている。接続配線352は、非吐出チャネル312の上端開口縁において、一の吐出チャネル311を間に挟んでX方向で向かい合う第1個別電極351a同士を接続している。一方、接続配線352は、アクチュエータプレート301の上面において第2個別電極351bに接続されている。
【0092】
図21に示すように、個別端子353は、カバープレート302の上面において、個別電極351に対応して複数形成されている。
貫通配線354は、カバープレート302に形成された個別配線用孔330を通じて個別端子353と第2個別電極351bとを接続している。個別配線用孔330は、カバープレート302のうち第2個別電極351bと平面視で重なり合う部分をZ方向に貫通している。貫通配線354は、個別配線用孔330の内面全域に亘って形成されている。貫通配線354は、個別配線用孔330の下端開口縁において第2個別電極351bに接続されている。貫通配線354は、個別配線用孔330の上端開口縁において個別端子353に接続されている。
【0093】
第3実施形態においても、インク吐出時において、側面電極345aと第1個別電極351aとの間にX方向で電位差を発生させることで、アクチュエータプレート301(駆動壁315)をシェアモードでX方向に変形させることができる。また、底面電極345bと第2個別電極351bとの間にZ方向の電位差を生じさせることで、アクチュエータプレート301をベンドモードでZ方向に変形させることができる。
その上で、第1個別電極351aのうち吐出チャネル311の底面よりも上方に位置する部分と、底面電極345bと、の間で電位差を発生させることができる。そのため、シェアモード及びベンドモードにより、吐出チャネル311の容積が拡大する方向に、アクチュエータプレート301を変形させることができる。
このように、アクチュエータプレート301をX方向及びZ方向の双方に変形させることで、電圧印加時におけるアクチュエータプレート301の弾性エネルギーを確保し易い。したがって、インク吐出時において吐出チャネル311内の発生圧力を確保し易く、所望の吐出性能を得ることができる。
【0094】
(第1変形例)
第3実施形態では、各吐出チャネル311に対応して共通配線用孔320,331を形成した場合について説明したが、この構成に限られない。
例えば
図26、
図27に示すように、アクチュエータプレート301のうち、チャネル列305に対してY方向の外側に位置する部分に、共通配線用第1孔320を一括して形成してもよい。図示の例において、共通配線用第1孔320は、チャネル列305を横断するようにX方向に亘って延びている。この場合、上面接続配線347は、アクチュエータプレート301の上面のうち、吐出チャネル311と平面視で重なり合う部分であって、第2個別電極351bに対してY方向の外側に位置する部分に形成されている。上面接続配線347は、共通配線用第1孔320の上端開口縁において貫通配線349に接続されている。
【0095】
この構成によれば、各吐出チャネル311毎に共通配線用第1孔320を個別に形成する場合に比べて製造効率の向上を図ることができるので、低コスト化や歩留まりの向上を図ることができる。また、各吐出チャネル311毎に共通配線用第1孔320を個別に形成する場合と異なり、アクチュエータプレート301のうち隣り合う共通配線用第1孔320間に位置する部分にクラック等が生じることも抑制できる。
【0096】
(第2変形例)
図28、
図29に示すヘッドチップ300のように、貫通配線349は、共通流路306a,306bの内面に形成してもよい。図示の例において、貫通配線349は、共通流路306a,306bの内面のうちY方向の外側を向く面の全域に亘って形成されている。また、本変形例において、共通流路306a,306bは、アクチュエータプレート301をZ方向に貫通している。したがって、貫通配線349は、共通流路306a,306bの上端開口縁において、上面接続配線347におけるY方向の外側端縁に接続されている。
【0097】
なお、貫通配線349は、絶縁性を有する保護膜で覆われていることが好ましい。保護膜としては、例えばパラキシリレン系樹脂材料(例えば、パリレン(登録商標))等の有機絶縁材料を用いることが好ましい。但し、保護膜は、酸化タンタル(Ta2O5)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、酸化シリコン(SiO2)又はダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like carbon)等により構成されていてもよく、これらの少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。
【0098】
この構成によれば、共通配線用第1孔320を別途形成する必要がないので、製造効率の向上を図ることができる。その結果、低コスト化や歩留まりの向上を図ることができる。
また、共通配線用第1孔320を別途形成する場合に比べてヘッドチップ300におけるY方向での小型化を図ることができる。
【0099】
(その他の変形例)
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0100】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が拡大する方向にアクチュエータプレートを変形させた後、アクチュエータプレートを復元させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、引き打ち)について説明したが、この構成に限られない。本開示に係るヘッドチップは、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が縮小する方向にアクチュエータプレートを変形させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、押し打ち)であってもよい。押し打ちを行う場合、駆動電圧の印加により、アクチュエータプレートは、吐出チャネル内に向けて膨出するように変形する。これにより、吐出チャネル内の容積が減少することで、吐出チャネル内の圧力が増加し、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて外部に吐出される。駆動電圧をゼロにすると、アクチュエータプレートが復元する。その結果、吐出チャネル内の容積が元に戻る。
【0101】
上述した実施形態では、アクチュエータプレートの厚さ方向において、第1個別電極の寸法が側面電極の寸法よりも大きい構成について説明したが、この構成に限られない。第1個別電極と側面電極とを同等の寸法にしてもよい。
上述した実施形態では、第1個別電極と第2個別電極とを接続配線によって接続する構成について説明したがこの構成に限られない。第1個別電極と第2個別電極とは、外部配線に対して別々に接続してもよい。
【0102】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1:プリンタ(液体噴射記録装置)
5:インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
50:ヘッドチップ
51:アクチュエータプレート
52:カバープレート
61:吐出チャネル(噴射チャネル)
62:非吐出チャネル(非噴射チャネル)
85:共通電極
87a:第1個別電極
87b:第2個別電極
88:接続配線
200:ヘッドチップ
201:アクチュエータプレート
202:カバープレート
203:ノズルプレート(噴射プレート)
211:吐出チャネル(噴射チャネル)
212:非吐出チャネル(非噴射チャネル)
225a:側面電極(側面共通電極)
225b:底面電極(底面共通電極)
227a:第1個別電極
227b:第2個別電極
228:接続配線
241:入口スリット(入口流路)
246:出口スリット(出口流路)
251:ノズル孔(噴射孔)
300:ヘッドチップ
301:アクチュエータプレート
302:カバープレート
303:ノズルプレート(噴射プレート)
333:ノズル孔(噴射孔)
345a:側面電極(側面共通電極)
345b:底面電極(底面共通電極)
351a:第1個別電極
351b:第2個別電極
352:接続配線
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の第1側に開口するとともに、前記厚さ方向に交差する第1方向に延びる噴射チャネル及び非噴射チャネルが、前記厚さ方向から見て前記第1方向に交差する第2方向に交互に配列されたアクチュエータプレートと、
前記噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成された側面共通電極と、
前記噴射チャネルの内面のうち、前記厚さ方向の第1側を向く底面に形成された底面共通電極と、
前記非噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成され、前記側面共通電極との間で電位差を発生させる第1個別電極と、
前記アクチュエータプレートのうち前記厚さ方向の第2側を向く反対面に設けられ、前記底面共通電極との間で電位差を発生させる第2個別電極と、を備え、
前記非噴射チャネルは、前記アクチュエータプレートを前記厚さ方向に貫通し、
前記第1個別電極は、前記非噴射チャネルの前記内側面における前記厚さ方向の全域に亘って形成されているヘッドチップ。
【請求項2】
前記反対面には、前記第1個別電極と前記第2個別電極とを接続する接続配線が形成されている請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記アクチュエータプレートにおける前記第1方向の第1側端面には、前記噴射チャネルに各別に連通する噴射孔を有する噴射孔プレートが重ね合わされている請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
厚さ方向の第1側に開口するとともに、前記厚さ方向に交差する第1方向に延びる噴射チャネル及び非噴射チャネルが、前記厚さ方向から見て前記第1方向に交差する第2方向に交互に配列されたアクチュエータプレートと、
前記噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成された側面共通電極と、
前記噴射チャネルの内面のうち、前記厚さ方向の第1側を向く底面に形成された底面共通電極と、
前記非噴射チャネルの内面のうち、前記第2方向で向かい合う内側面に形成され、前記側面共通電極との間で電位差を発生させる第1個別電極と、
前記アクチュエータプレートのうち前記厚さ方向の第2側を向く反対面に設けられ、前記底面共通電極との間で電位差を発生させる第2個別電極と、を備え、
前記アクチュエータプレートに対して前記厚さ方向の第2側には、前記第1方向の第1側端部において前記噴射チャネルに連通する入口流路、及び前記第1方向の第2側端部において前記噴射チャネルに連通する出口流路を有するカバープレートが設けられ、
前記アクチュエータプレートに対して前記厚さ方向の第1側には、前記噴射チャネルに連通する噴射孔が形成された噴射孔プレートが設けられているヘッドチップ。
【請求項5】
請求項1、請求項2又は請求項4に記載のヘッドチップを備えている液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。