(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086217
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/02 BRP
B65D1/02 BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201238
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】荻野 大介
(72)【発明者】
【氏名】加堂 立樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大住 裕一
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA18
3E033CA20
3E033DA03
3E033DB01
3E033DC03
3E033DE20
3E033EA01
3E033EA05
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】従来技術に比して胴部を折り畳みやすい樹脂製容器を実現する。
【解決手段】口部2、肩部3、胴部4、および底部5を備え、胴部4が、口部2の中心と底部5の中心とを結ぶ中心軸Xを含む平面に関して対称な二つの位置に、上下方向に延びる縦凸リブ41を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部、および底部を備え、
前記胴部が、前記口部の中心と前記底部の中心とを結ぶ中心軸を含む平面に関して対称な二つの位置に、上下方向に延びる凸リブを有する樹脂製容器。
【請求項2】
前記凸リブが前記中心軸と略平行である請求項1に記載の樹脂製容器。
【請求項3】
前記胴部が、前記胴部の周方向に延びる凹リブをさらに有し、
前記凸リブが前記凹リブを横切る請求項1に記載の樹脂製容器。
【請求項4】
前記胴部が略角筒状であり、
前記凸リブが前記胴部の稜部に沿って設けられている請求項1に記載の樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料などの液体製品を充填し、これを流通や販売などに供するための容器として、樹脂製容器が汎用されている。樹脂製容器は、他の容器に比べて軽量である、容量やデザイン等の要請に従って任意の形状を作りやすい、透明である場合は内容物を確認しやすい、などの利点を有するため、幅広い用途に用いられている。
【0003】
使用後の樹脂製容器を再利用、廃棄等のために保管、運搬等するにあたり、その嵩高さが問題になる場合がある。たとえば缶や紙容器などは、使用後の空容器を平坦に押し潰すことが容易である。しかし樹脂製容器は、樹脂の弾性に起因して、押しつぶすことが難しい場合がある。この課題に対し、特開2008-56291号公報(特許文献1)には、折り畳み操作の起点となる縦方向リブおよび横方向リブが設けられた容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、容器の肩部と底部とを折りたたむことは考慮されているが、最も大きな体積を占める胴部を折りたたむことは考慮されていなかった。そのため従来の技術には、使用後の容器の嵩高さを抑える点で改善の余地があった。
【0006】
そこで、従来技術に比して胴部を折り畳みやすい樹脂製容器の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樹脂製容器は、口部、肩部、胴部、および底部を備え、前記胴部が、前記口部の中心と前記底部の中心とを結ぶ中心軸を含む平面に関して対称な二つの位置に、上下方向に延びる凸リブを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、樹脂製容器を折りたたむ際に凸リブが折り目として機能するため、従来の樹脂製容器に比べて胴部を折り畳みやすい。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0010】
本発明に係る樹脂製容器は、一態様として、前記凸リブが前記中心軸と略平行であることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、凸リブを折り目として折りたたまれた樹脂製容器が平らになりやすいので、使用後の容器の嵩高さを抑える点で一層有利である。
【0012】
本発明に係る樹脂製容器は、一態様として、前記胴部が、前記胴部の周方向に延びる凹リブをさらに有し、前記凸リブが前記凹リブを横切ることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、樹脂製容器において、周方向に延びる凹リブを設けて強度を高めることと、凸リブを折り目として折り畳みやすくすることと、を両立できる。
【0014】
本発明に係る樹脂製容器は、一態様として、前記胴部が略角筒状であり、前記凸リブが前記胴部の稜部に沿って設けられていることが好ましい。
【0015】
角筒状の物体を折りたたむ場合、稜部に沿って折りたたむように操作することが、使用者にとって理解しやすい。上記の構成によれば、この理解しやすい操作に即した位置に折り目として機能する凸リブを設けるので、使用者が折り畳み操作を理解しやすくなる。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】実施形態に係るボトルを折りたたむ途中の断面図である。
【
図4】
図3のIV部を凸リブが設けられていない場合と比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る樹脂製容器の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る樹脂製容器を、プラスチックボトル1(以下、単にボトル1と称する。)に適用した例について説明する。
【0019】
〔ボトルの全体構成〕
本実施形態に係るボトル1はポリエチレンテレフタレート製であり、無色透明の容器である。ボトル1は、ポリエチレンテレフタレート製のプリフォームを原料とする二軸延伸ブロー成形により得られる。なお、ボトルを構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートに限定されず、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどであってもよい。また、当該材料の由来は、石油、植物由来原料、リサイクル原料などでありうる。
【0020】
本実施形態では、ボトル1の容量を525mLとしてある。ただし、ボトル1の容量は特に限定されず、一般的に流通している280mL、350mL、500mLなど、200mL~2L程度であってよい。
【0021】
ボトル1は、たとえば、清涼飲料水(炭酸飲料、果実飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、ミネラルウォーター、豆乳類、野菜飲料、スポーツ飲料、ココア飲料など)、アルコール飲料、乳飲料などの飲料、スープなどの液体食品、ソースや醤油などの液体調味料、などの液体製品を充填する用途に供される。
【0022】
本実施形態に係るボトル1は、口部2、肩部3、胴部4、および底部5を有する(
図1、
図2)。なお、以下の説明においてボトル1の上下方向について言及するときは、底部5が接地するようにボトル1を設置した姿勢(
図1に図示した姿勢)に基づく上下方向をいうものとする。すなわち、ボトル1の上側は口部2の側であり、ボトル1の下側は底部5の側である。また、ボトル1の横方向(または水平方向)について言及するときは、上記の上下方向と直交する方向(すなわち
図1の左右方向または紙面と直交する方向)をいうものとする。
【0023】
ボトル1は、平面図において略四角形状である(
図2)。なお、略四角形状とは、数学的な定義に従う四角形の形状に限定されず、工業製品として設けられうる丸みづけなどが設けられた実質的に四角形とみなせる形状であってもよいことを意味する。なお、本実施形態では、当該四角形は正方形である。
【0024】
口部2は、内部に充填される液体製品を出し入れする開口部であり、その外面にはキャップ(不図示)を螺合するための雄ねじ部が設けられている。肩部3は、口部2から胴部4に向けてボトル1が徐々に拡大する部分である。なお、口部2から下方に向けてボトル1が徐々に拡大して最大限拡大した高さ方向の位置を、肩部3と胴部4との境目と定義する。底部5は、ボトル1を机などの面に置くときに接地面になる部分であり、底部5から胴部4に向けてもボトル1が徐々に拡大している。なお、接地面から上方に向けてボトル1が徐々に拡大して最大限拡大した高さ方向の位置を、底部5と胴部4との境目と定義する。口部2、肩部3、および底部5の構造および機能は、公知のプラスチックボトルの口部、肩部、および底部と概ね同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0025】
〔胴部の構成〕
胴部4は、肩部3と底部5との間に延在する略四角筒状(略角筒状の一例である。)の部分であり、上下方向に延びる縦凸リブ41(上下方向に延びる凸リブの一例である。)と、水平方向に延びる横凹リブ42(胴部の周方向に延びる凹リブの一例である。)と、有する。胴部4が略四角筒状であることから、胴部4は四つの面部43を有し、二つの面部43が会合する部分に上下方向に延びる稜部44が形成されている。胴部4は、縦凸リブ41および横凹リブ42が設けられていることに起因して凹凸が認められるが、製造時や流通時などにおける取扱上の特徴として略四角筒状として取り扱われる。すなわち、胴部4についていう略四角筒状(略角筒状)とは、数学的な意味で四角筒状(角筒状)であることを要さない。
【0026】
縦凸リブ41は、ボトル1の表面から突出する態様のリブであり、四つの稜部44のうち、平面図(
図2)において対角線上に位置する二つの稜部44aに沿って、中心軸Xと略平行に設けられている。したがって二つの縦凸リブ41は、中心軸Xを含む平面に関して対称な二つの位置に設けられている。なお、「略平行」とは、縦凸リブ41が中心軸Xと平行であると工業上または実用上みなせる態様で設けられていることを意味し、二つの縦凸リブ41が数学的な意味で平行であることを要さない。また、それぞれの縦凸リブ41は、胴部4の上端(肩部3との境界)の付近から下端(底部5との境界)の付近まで、連続的に延びている。
【0027】
横凹リブ42は、ボトル1の内側方向に突入する態様のリブであり、胴部4の周方向(水平方向)に延びている。本実施形態では七つの横凹リブ42が設けられている。
【0028】
縦凸リブ41と横凹リブ42とは、縦凸リブ41が七つの横凹リブ42を横切る態様で設けられている関係にある。すなわち、縦凸リブ41はボトル1の表面から突出する部分が連続的に延びているのに対し、横凹リブ42はボトル1の内側方向に突入する部分が縦凸リブ41によって分断されている。
【0029】
〔ボトルの折り畳み方法〕
本実施形態に係るボトル1では、ボトル1を折りたたむべく胴部4を潰す際に二つの縦凸リブ41が折り目として機能して、二つの稜部44aにおける胴部4の折れ曲がりが誘発される。
図3は、縦凸リブ41が設けられていない二つの稜部44b同士を近づけるように胴部4を押した際の胴部4の断面形状の変化を示しており、この操作により、胴部4を平らに潰すことができる。
【0030】
図4は、
図3における縦凸リブ41部分の拡大図を、縦凸リブ41が設けられていない場合と並べて示したものである。縦凸リブ41が設けられているときは、元々外側に突出する形状で設けられている縦凸リブ41が稜部44aの変形を負担するので、変形により生じる反発力が大きくなりにくい。これに対し、縦凸リブ41が設けられていない場合は、略直角に設けられたコーナー部分45が直接に稜部44aの変形を負担することになるため、変形が進むに従って反発力が大きくなりやすい。
【0031】
このように、本実施形態に係るボトル1では、縦凸リブ41を設けることによって、折り曲げられる稜部44aにおける反発力が抑制されているので、従来のプラスチックボトルに比べて折り畳みやすい容器が実現されている。また、反発力が抑制されていることは、折りたたまれた後のボトル1が元の形状に戻ることを抑制する作用も奏する。これらの作用によって、使用後のボトル1を再利用、廃棄等のために折りたたんで保管、運搬等する際の体積を低減できる。
【0032】
〔実施例〕
以下では、実施例を用いて本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0033】
(試験に用いたボトル)
実施例として、上記の実施形態に係るボトル1(
図1、
図2)を用いた。
【0034】
比較例1として、
図5に示すボトル6を用いた。ボトル6は、ボトル1の縦凸リブ41に替えて上下方向に延びる縦凹リブ45を備えるほかは、ボトル1と同様である。
【0035】
比較例2として、
図6に示すボトル7を用いた。ボトル7は、上下方向に延びるリブを有さないほかは、ボトル1およびボトル6と同様である。
【0036】
(試験方法)
(1)満注容量の測定
実施例および比較例の各例のボトルについて、風袋質量および水を満充填した後の質量を測定した。両者を差し引きして得られる値を、ボトルの満注容量とした。水の充填は、ボトルを完全に浸漬できる量の水を張った水槽に、ボトルを横向き姿勢(口部2と底部5とを左右方向に配置した姿勢をいう。)で浸漬することにより行った。なお、この方法により得られる数値は質量(グラム単位)であるが、容量(mL単位)の近似値とみなせるため、「満注容量」と称している。
【0037】
(2)ボトルの押しつぶし
実施例および比較例の各例のボトルについて、ボトルの稜部を一つ選択し、当該稜部上に三つの押圧点を設定した。第一の押圧点は、底部5側から一つ目の横凹リブ42と二つ目の横凹リブ42との中間点とした。第二の押圧点は、底部5側から三つ目の横凹リブ42と四つ目の横凹リブ42との中間点とした。第三の押圧点は、胴部4の上端(肩部3と胴部4との境界)とした。押しつぶしの単位操作を、押圧点に対向する稜部を親指以外の四本の指で支持した状態で押圧点を親指で押さえて、対向する二つの稜部が互いに接するまでボトルを変形させる操作とした。この単位操作を、第一の押圧点、第二の押圧点、第三の押圧点の順で行った。なお、単位操作の回数は各押圧点につき一回とした。また、ボトル1(実施例)については、縦凸リブ41が設けられていない稜部に押圧点を設定し、ボトル6(比較例1)については、縦凹リブ45が設けられていない稜部に押圧点を設定した。
【0038】
(3)押しつぶし後の容量の測定
実施例および比較例の各例のボトルを上記の手順で押しつぶした後に、満注容量の測定と同様の方法で、押しつぶし後の容量を測定した。満注容量に対する押しつぶし後の容量の割合を百分率で表した容積残存率を比較した。容積残存率が小さいほど、押しつぶし操作によって空容器の容量を削減する効果が大きいといえる。
【0039】
(結果)
実施例の容積残存率は53%であり、比較例1の容積残存率は60%であり、比較例2の容積残存率は67%だった。すなわち、縦凸リブ41を設けたボトル1において、空容器の容量を削減する効果が最も大きかった。以上の試験から、実施例において、折りたたみやすく、かつ折りたたまれた後に元の形状に戻りにくいボトルが実現されていることを確認した。
【0040】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る樹脂製容器のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0041】
上記の実施形態では、胴部4が略四角筒状である構成を例として説明した。しかし本発明において胴部の形状は限定されず、たとえば円筒状などでありうる。また、胴部が略角筒状である態様についても、上記の実施形態のように断面が略正方形の略四角筒状に限定されず、断面が略正方形状ではない略四角筒状の形状、または断面が他の多角形状である略角筒状の形状を採用できる。
【0042】
上記の実施形態では、縦凸リブ41が中心軸Xと略平行に設けられている構成を例として説明した。しかし本発明において。凸リブが中心軸Xと略平行でなくてもよい。たとえば、胴部が延びる方向に対して斜めに凸リブが設けられていても、当該凸リブにおいて胴部を折り畳みやすいという本発明の作用効果が同様に発現する。
【0043】
上記の実施形態では、縦凸リブ41が胴部4の上端から下端まで連続的に延びている構成を例として説明した。しかし本発明における凸リブは、断続的な形状であってもよい。
【0044】
上記の実施形態では、二つの縦凸リブ41が設けられている構成を例として説明した。しかし本発明において、中心軸を含む平面に関して対称な二つの位置に凸リブ設けられている限り、これに加えてさらなる凸リブが設けられていてもよい。たとえば上記の実施形態において、稜部44aに加えて稜部44bにも縦凸リブ41を設けて合計で四つの凸リブを設けると、ボトル1を折りたたむ際に稜部44aおよび稜部44bのいずれにおいても折り曲げることができるようになる。
【0045】
上記の実施形態では、七つの横凹リブ42が設けられている構成を例として説明した。しかし本発明において、凹リブの有無は任意である。また、縦凸リブ41が七つの横凹リブ42を横切る態様で設けられている構成を例として説明したが、凹リブが設けられる場合に、凸リブと凹リブとの位置関係は限定されない。
【0046】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、たとえば飲料等の液体製品の容器に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 :プラスチックボトル
2 :口部
3 :肩部
4 :胴部
41 :縦凸リブ
42 :横凹リブ
43 :面部
44 :稜部
5 :底部
6 :プラスチックボトル(比較例1)
45 :縦凹リブ
7 :プラスチックボトル(比較例2)
X :中心軸