(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086230
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】マイコスポリン様アミノ酸含有化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240620BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240620BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q17/04
A61Q13/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201254
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】522490620
【氏名又は名称】センシエントテクノロジーズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 峰行
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB241
4C083AB442
4C083AC092
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC211
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC471
4C083AC511
4C083AC521
4C083AC551
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC842
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC902
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD391
4C083CC01
4C083CC19
4C083EE01
4C083EE17
4C083KK03
(57)【要約】
【課題】染料により着色された組成物に配合しても、光による退色を防止できて、特に着色透明な組成物の着色状態を維持できる紫外線吸収剤を得ること。及び、加えて、紫外線による日焼け防止化粧料とするために化粧料に配合できて、紫外線吸収性の無機顔料の含有量を削減して肌触りと紫外線防止性を向上させること。
【解決手段】マイコスポリン様アミノ酸を含有する化粧料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコスポリン様アミノ酸を含有する化粧料。
【請求項2】
マイコスポリン様アミノ酸が、下記一般式(1)に示される構造を有する化合物又はその塩である請求項1記載の化粧料。
【化1】
【請求項3】
下記の物質から選ばれた1種以上を含有する請求項1又は2記載の化粧料。
酸化チタン、酸化亜鉛、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、サリチル酸ホモメンチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸 2-エチルヘキシルエステル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリスビフェニルトリアジン、パラアミノ安息香酸及びそのエステル、4-(2-β-グルコピラノシロキシ)プロポキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、サリチル酸オクチル、2,5-ジイソプロピルケイ皮酸メチル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、シノキサート、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸 2-エチルヘキシル、テトラヒドロキシベンゾフェノン、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、ドロメトリゾールトリシロキサン、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸 2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸 2-エチルヘキシル、2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸およびその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸およびその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、フェルラ酸、2,2’-メチレンビス(6-(2H ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール
【請求項4】
組成物にマイコスポリン様アミノ酸を含有することによる、組成物の退色防止方法。
【請求項5】
組成物にマイコスポリン様アミノ酸を含有することによる、組成物の紫外線吸収性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイクアップ、スキンケア、サンケア、ヘアケアなど多岐にわたる剤型において、高い紫外線吸収効果を消費者から求められる傾向にあり、透明容器を用いた外観を重視した色鮮やかな化粧品製剤(医薬部外品や雑貨なども含む)が、消費者に求められる傾向にある。
また、日焼け止め防止の効果を有するスキンケア化粧料は広く使用されるが、これらは酸化チタンや酸化亜鉛等の無機粒子を含有する。
このような無機粒子を多く含有させることで日焼け止め防止効果をさらに高くすることができるものの、肌表面に塗布する際には、これらの無機粒子の含有量が多いために、ざらざらとした感じの肌悪さが目立つことで感触に劣る傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紫外線吸収材がサンゴなど海洋生物への悪影響などが確認されるなど環境影響も危惧されている。そのため、紫外線吸収材の選択肢が非常に少なくなってきている。更に、上記のように、酸化チタンや酸化亜鉛などの無機紫外線吸収材は肌触りが悪いため高配合しにくい。さらに、パラメトキシケイ皮酸 2-エチルヘキシルやサリチル酸オクチル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどの有機紫外線吸収材は、肌の感触が悪く、かつ肌への刺激が強いことから化粧料への配合を抑えることが必要とされる。
このため、染料により着色された組成物に配合しても、光による退色を防止できて、特に着色透明な組成物の着色状態を維持できる紫外線吸収剤を得ることが望まれている。
加えて、紫外線による日焼け防止化粧料とするために化粧料に配合できて、紫外線吸収性の無機顔料の含有量を削減して肌触りと紫外線防止性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はマイコスポリン様アミノ酸を含有した化粧料や香水にすることにより、紫外線を受けることによる染料の退色を防止できること、及び紫外線吸収性の化粧料において、酸化チタンや酸化亜鉛等の紫外線吸収性無機顔料の量を削減できることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、マイコスポリン様アミノ酸を含有した化粧料や香水にすることにより、紫外線を受けることによる染料の退色を防止して、透明容器内に充填した着色化粧料や着色香水の耐紫外線性を向上させて退色を防止できること、及び紫外線吸収性の化粧料において、酸化チタンや酸化亜鉛等の紫外線吸収性無機顔料の量を削減して、マイコスポリン様アミノ酸を含有させることにより、肌表面に塗り拡げたときのざらつき等を緩和したり削減したりできる。また、マイコスポリン様アミノ酸は海藻等の天然物から抽出等の手段により分離されて得られる。しかしながら、このようにして得られたマイコスポリン様アミノ酸は不純物を比較的多く含有するので、これらを含有した化粧料等とした際には、不純物も含有されることになるが、合成して得たマイコスポリン様アミノ酸を採用することによりこの不純物による障害を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
(マイコスポリン様アミノ酸)
本発明におけるマイコスポリン様アミノ酸は、公知の物質でも良く、アミノ酸やアミノアルコール等の窒素置換体がシクロヘキサノン発色団に結合した、近紫外線領域を強く吸収する水溶性物質の総称である。そして、天然物から得る等の公知の手段により得ることができる。そして、置換基を有していても良い下記式Iのシクロヘキセノンまたはシクロヘキセンイミン骨格にアミノ酸、アミン、アンモニアまたはアミノアルコールが結合した化合物である。また、合成により得てもよい。
【0008】
【化1】
上記式Iにおいて-N-R
1及び-N-R
3は、それぞれ独立して、アミノ酸、アミン、アンモニアまたはアミノアルコールの残基である。R
2は1つ又は2つがシクロヘキセン環に結合してもよく、その1つ又は2つのR
2は独立して、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基であり、好ましくは、水酸基、メトキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、である。Xは炭素原子、酸素原子及び窒素原子から選ばれた1種である。
中でも、シノリン(以下、式(II))、ポルフィラ-334(以下、式(III))、アステリナ-330(以下、式(IV))、パリテン(以下、式(V))、パリチン(以下、式(VI))、マイコスポリン-グリシン:バリン(以下、式(VII))、またはマイコスポリン-グリシン-アラニン(以下、式(VIII))である。
さらに合成物として、メトキシフェニルイミノジメチルシクロヘキセニシルエチルグリシネート(以下、式(VIIII))でも良い。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
(化粧料)
本発明における化粧料とは、粉体等の固体、溶液やエマルジョン等の液体及びクリーム状等の形態を特に問わない。そして薬事法で定めるところの医薬部外品のうち、育毛剤、浴用剤、薬用化粧料、薬用化粧品即ち薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用リンス、薬用化粧水、薬用クリーム・乳液、薬用パック、染毛料、頭髪用化粧品、一般クリーム・乳液、ひげそり用クリームまたはローション、日焼け・日焼け止めローション、化粧油、軟膏、日焼け・日焼け止めオイル、白粉、パウダー、ファンデーション、パック、爪クリーム、エナメル、エナメル除去剤、眉墨、頬紅、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、アイライナー、口紅、リップクリーム、はみがき、浴用化粧品等である。さらに化粧料としては、クレンジングオイルや香水を包含する。
【0018】
マイコスポリン様アミノ酸を化粧料に適用する場合、化粧料基材に配合することにより製造することができる。化粧料の形態は、上記のように乳液状、クリーム状、粉末状等のいずれであってもよい。このような化粧料を肌に適用することにより、紫外線防護作用を得ることができる。化粧料及び香水中のマイコスポリン様アミノ酸の濃度は0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、0.8重量%以上がさらに好ましい。また10.0重量%以下が好ましく、5.0重量%以下がより好ましく、3.0重量%以下が更に好ましい。
【0019】
化粧料基剤は、一般に化粧料に共通して配合されるものであって、例えば、油分、精製水及びアルコールを主要成分として、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、増粘剤、抗脂漏剤、血行促進剤、美白剤、pH調整剤、色素顔料、防腐剤及び香料から選択される少なくとも一種が適宜配合されてもよい。
【0020】
本発明の化粧料は、化粧料の製造に通常使用される構成成分、たとえば、着色染料、着色顔料、体質顔料、油分、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、防腐剤、香料、キレート剤、アミノ酸、糖類などを1種又は、2種以上含有するものであってもよい。また、マイコスポリン様アミノ酸以外の有機紫外線吸収剤、酸化チタンや酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤を含有しても良い。
【0021】
(化粧料用容器)
上記の各種の化粧料を収納する容器は、固体や液体等の性状に応じた、公知の材質からなく公知の構造の容器で良い。特に、本発明の化粧料は、太陽光や照明光等が有する紫外線を受けても、含有する染料等の着色剤が退色しないので、これまで使用が限定されていた、透明の容器を採用できる。
【実施例0022】
4種の香水処方に4種の染料(紫401、赤104(2)、黄4、赤504)の組み合わせたものを調整した、24時間の紫外線照射をして退色の程度を測定した。SENSISENT TECHNOLOGIES COSMETICS 社製SENSISORB BIOMIMを0.2%含有したものとSENSISENT TECHNOLOGIES COSMETICS 社製 COVBASORB(パラメトキシケイ皮酸 2-エチルヘキシルやサリチル酸オクチル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを組み合わせた製剤)を0.3%含有したものを中心に比較した。
図1に示すとおり、紫外吸収剤と同等の紫外線防御効果が期待できる結果が得られた。
図1中の[Condition]は使用した香水の種類であって、各色の上から順に、Oriental Infinity、Diamond Beauty、Mineral Splash、magical Amberである。
図1中左上は各香水に共通して、紫401、右上は赤104(2)、左下は黄4、右下は赤504により着色をした例である。
各色について、Controlは紫外線照射をする前の香水であり、Without protectionは紫外線吸収剤を含有しない香水の例、Market Leaderは紫外線吸収剤(パラメトキシケイ皮酸 2-エチルヘキシルやサリチル酸オクチル、t-ブチルメトキシジベンゾを含有させた香水の例であり、Sensisorb BiomimはSENSISORB BIOMIMを0.2重量%含有させた香水の例である。
紫外線照射の結果、Controlに対してWithout protectionは退色した。Sensisorb BiomimはMarket Leaderと同様に退色しなかった。
表1で示される比較例1のサンスクリーン処方に、SENSISENT TECHNOLOGIES COSMETICS 社製SENSISORB BIOMIM(合成して得た上記式(VIII)の化合物)を1.00wt%を添加して実施例とした。これらをVIVOにてSPFを測定した。その結果、比較例によるSPF値は17であり、実施例によるSPF値は25であった。比較例に対して実施例によればSPF値は45%増加した。