(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086233
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び作業車両
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240620BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240620BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240620BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240620BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20240620BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/00 A
H01M8/04858
H01M8/04701
H01M8/00 Z
B60L58/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201257
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戎崎 英世
(72)【発明者】
【氏名】海部 宏昌
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AC07
5H125AC11
5H125BD14
5H125CD05
5H125EE37
5H125FF08
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC07
5H127DC81
5H127DC96
5H127EE04
5H127EE14
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムの効率を向上すること。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池と、熱電変換素子と、熱電変換素子の第1面に対向し、燃料電池に水素を供給する第1部材と、熱電変換素子の第2面に対向し、燃料電池から冷媒が供給される第2部材と、熱電変換素子に接続される蓄電池と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の第1面に対向し、前記燃料電池に水素を供給する第1部材と、
前記熱電変換素子の第2面に対向し、前記燃料電池から冷媒が供給される第2部材と、
前記熱電変換素子に接続される蓄電池と、を備える、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池が水素を消費する水素消費時において、前記水素の温度が前記冷媒の温度よりも低くなり、
前記水素消費時において、前記熱電変換素子は、ゼーベック効果により発電し、
前記蓄電池は、前記熱電変換素子が発電した電力で充電される、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1部材に水素を充填する水素充填時において、前記水素の温度が前記冷媒の温度よりも高くなり、
前記水素充填時において、前記蓄電池から前記熱電変換素子に電力が供給され、前記熱電変換素子は、ペルチェ効果により前記第1部材を冷却する、
請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
水素を収容する水素タンクと、
前記水素タンクと前記燃料電池のアノード入口とを接続する燃料ガス供給チューブと、を備え、
前記第1部材は、前記水素タンク及び前記燃料ガス供給チューブの少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池の冷媒出口に接続される排出チューブと、
前記排出チューブに接続されるラジエータと、を備え、
前記第2部材は、前記排出チューブ及び前記ラジエータの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃料電池システムを備える、
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、燃料電池が知られている。燃料電池は、内燃機関に比べてエネルギー効率が高いため、自動車又はバスなどのモビリティーの動力源として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モビリティーの総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)の改善又はエネルギー有効利用の観点から、燃料電池の更なる効率向上が求められている。燃料電池の発電効率を高める方法は、大きく2つに分けられる。第1の方法は、燃料電池そのものの発電効率を高めることで、燃料電池の性能向上によるものである。第2の方法は、燃料電池からの排気や排熱からエネルギー回収を行うものである。しかし、第2の方法については、燃料電池の作動温度が80℃程度と内燃機関に対して低く、周辺環境との温度差が小さいため、内燃機関搭載モビリティーのように排熱利用が進んでいない。
【0005】
本開示は、燃料電池システムの効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、燃料電池と、熱電変換素子と、熱電変換素子の第1面に対向し、燃料電池に水素を供給する第1部材と、熱電変換素子の第2面に対向し、燃料電池から冷媒が供給される第2部材と、熱電変換素子に接続される蓄電池と、を備える、燃料電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、燃料電池システムの効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業車両を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業車両の構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る燃料電池システムの一部を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る燃料電池が水素を消費する水素消費時における熱電変換素子を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る水素タンクに水素を充填する水素充填時における熱電変換素子を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る燃料電池システムの一部を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る燃料電池システムの一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[作業車両]
図1は、実施形態に係る作業車両2を模式的に示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る作業車両2の構成を模式的に示す図である。作業車両2とは、作業現場で作業する車両をいう。作業現場として、鉱山又は採石場が例示される。実施形態において、作業車両2は、作業現場で積荷を運搬する運搬作業を実施する運搬車両である。作業車両2は、作業車両2に搭乗した運転者による運転操作に基づいて稼働する有人車両でもよいし、運転者による運転操作によらずに無人で稼働する無人車両でもよい。実施形態においては、作業車両2を適宜、ダンプトラック2、と称する。
【0011】
図1及び
図2に示すように、ダンプトラック2は、燃料電池システム3と、電動モータ4と、パワーテイクオフ6と、油圧ポンプ5と、バルブ装置7と、前輪8Aと、後輪8Bと、走行モータ4Bと、ステアリングシリンダ9と、車体10と、ダンプボディ12と、ホイストシリンダ13とを備える。
【0012】
電動モータ4は、燃料電池システム3が発電した電力に基づいて駆動する。実施形態において、電動モータ4は、駆動モータ4A及び走行モータ4Bを含む。
【0013】
油圧ポンプ5は、パワーテイクオフ6を介して駆動モータ4Aに接続される。駆動モータ4Aは、油圧ポンプ5を駆動させる。油圧ポンプ5は、ステアリングシリンダ9及びホイストシリンダ13のそれぞれに供給される作動油を吐出する。油圧ポンプ5から吐出された作動油は、バルブ装置7を介して、ステアリングシリンダ9及びホイストシリンダ13のそれぞれに供給される。
【0014】
前輪8A及び後輪8Bのそれぞれは、車体10を支持する。前輪8Aに前タイヤ11Aが装着される。後輪8Bに後タイヤ11Bが装着される。前輪8Aは、ステアリングシリンダ9により操舵される操舵輪である。後輪8Bは、走行モータ4Bが発生する動力により回転する駆動輪である。走行モータ4Bは、後輪8Bを回転させる。後輪8Bに装着された後タイヤ11Bが回転することにより、ダンプトラック2が走行する。
【0015】
ステアリングシリンダ9は、油圧アクチュエータの一種である油圧シリンダである。ステアリングシリンダ9は、油圧ポンプ5から吐出された作動油に基づいて駆動する。バルブ装置7は、油圧ポンプ5からステアリングシリンダ9に供給される作動油の方向及び流量を調整する。ステアリングシリンダ9は、前輪8Aを操舵する動力を発生する。
【0016】
車体10は、前輪8A及び後輪8Bのそれぞれに支持される。ダンプボディ12は、車体10に支持される。ダンプボディ12は、積荷が積み込まれる部材である。ダンプボディ12は、ホイストシリンダ13により回動される。ダンプボディ12は、リアダンプ方式である。ホイストシリンダ13によりダンプボディ12が後方に回動することにより、ダンプボディ12から積荷が排出される。
【0017】
ホイストシリンダ13は、油圧アクチュエータの一種である油圧シリンダである。ホイストシリンダ13は、油圧ポンプ5から吐出された作動油に基づいて駆動する。バルブ装置7は、油圧ポンプ5からホイストシリンダ13に供給される作動油の方向及び流量を調整する。ホイストシリンダ13は、ダンプボディ12を回動させる動力を発生する。
【0018】
[燃料電池システム]
燃料電池システム3は、ダンプトラック2に搭載される。
図2に示すように、燃料電池システム3は、燃料電池20と、酸化ガス供給装置30と、燃料ガス供給装置40と、ガス排出装置50と、電力調整装置60と、冷媒供給装置70とを有する。
【0019】
燃料電池20は、燃料ガスである水素と酸化ガスである酸素とを化学反応させて発電する。燃料電池20は、複数の単位セルが積層されたスタック構造を有する。
【0020】
酸化ガス供給装置30は、燃料電池20のカソードに酸素を含む空気を供給する。酸化ガス供給装置30は、エアコンプレッサ31と、酸素富化膜32と、タービン33と、給気ライン34と、給気ライン35と、給気ライン36とを有する。エアコンプレッサ31は、ダンプトラック2の外部の空気を吸引して燃料電池20に供給する。タービン33は、エアコンプレッサ31に接続される。給気ライン34は、エアコンプレッサ31と酸素富化膜32とを接続する。エアコンプレッサ31により吸引された空気は、給気ライン34を介して酸素富化膜32に供給される。酸素富化膜32は、空気から酸素濃度が増大した酸素富化空気と酸素濃度が低下した窒素富化空気とを生成する。給気ライン35は、酸素富化膜32と燃料電池20のカソード入口とを接続する。酸素富化膜32において生成された酸素富化空気は、給気ライン35を介して燃料電池20のカソードに供給される。給気ライン36は、酸素富化膜32とタービン33とを接続する。酸素富化膜32において生成された窒素富化空気は、給気ライン36を介してタービン33に供給される。窒素富化空気は、タービン33を回転させる。タービン33は、エアコンプレッサ31に回転力を与える。
【0021】
燃料ガス供給装置40は、燃料電池20のアノードに水素を供給する。燃料ガス供給装置40は、水素タンク41と、燃料ガス供給ライン42とを有する。水素タンク41は、水素を収容する。水素は、水素タンク41に充填される。燃料ガス供給ライン42は、水素タンク41と燃料電池20のアノード入口とを接続する。水素タンク41から送出された水素は、燃料ガス供給ライン42を介して燃料電池20のアノードに供給される。なお、燃料ガス供給ライン42に、水素タンク41の水素を燃料電池20に供給する水素ポンプが配置されてもよい。
【0022】
ガス排出装置50は、燃料電池20から排出されたガスをダンプトラック2の周囲の大気空間に排出する。ガス排出装置50は、排気ライン51と、タービン52とを有する。排気ライン51は、燃料電池20のカソード出口とタービン52とを接続する。タービン52は、燃料電池20から排出されたガスにより回転する。
【0023】
電力調整装置60は、DC/DCコンバータ61と、インバータ62と、DC/DCコンバータ63と、蓄電装置64とを有する。電力調整装置60は、燃料電池20が発電した電力及び蓄電装置64に蓄えられている電力の少なくとも一方を電動モータ4(4A,4B)に供給する。電動モータ4は、燃料電池20からの電力及び蓄電装置64からの電力の少なくとも一方に基づいて駆動する。
【0024】
DC/DCコンバータ61は、燃料電池20で発電された電圧を昇圧する。DC/DCコンバータ61は、燃料電池20で発電された直流電流をインバータ62に供給する。蓄電装置64は、燃料電池20が発電した電力により充電される。蓄電装置64は、ダンプトラック2の外部に設けられた充電装置により充電されてもよい。蓄電装置64は、電動モータ4の回生エネルギーにより充電されてもよい。蓄電装置64は、二次電池(蓄電池)を含む。実施形態において、蓄電装置64は、リチウムイオンバッテリ(LiB:Lithium ion Battery)を含む。なお、蓄電装置64は、リチウムイオンキャパシタ(LiC:Lithium ion Capacitor)を含んでもよいし、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)を含んでもよい。DC/DCコンバータ63は、蓄電装置64が燃料電池20と一体となってインバータ62へ電力を供給できるように、蓄電装置64の充放電を制御する。インバータ62は、DC/DCコンバータ61及びDC/DCコンバータ63の少なくとも一方からの直流電流を三相交流電流に変換して電動モータ4(4A,4B)に供給する。電動モータ4(4A,4B)は、インバータ62から供給された三相交流電流に基づいて駆動される。
【0025】
冷媒供給装置70は、燃料電池20を冷却するために燃料電池20に冷媒を供給する。冷媒として、水が例示される。冷媒供給装置70は、供給ライン71と、排出ライン72と、ラジエータ73と、冷媒ポンプ74とを有する。供給ライン71は、燃料電池20の冷媒入口に接続される。排出ライン72は、燃料電池20の冷媒出口に接続される。ラジエータ73は、供給ライン71と排出ライン72とに接続される。冷媒ポンプ74は、供給ライン71に配置される。冷媒ポンプ74は、燃料電池20に冷媒を供給する。冷媒ポンプ74は、供給ライン71、燃料電池20、排出ライン72、及びラジエータ73を含む循環経路において冷媒が循環するように駆動する。ラジエータ73は、燃料電池20から排出された冷媒とダンプトラック2の外部の空気とを熱交換して冷媒を冷却する。
【0026】
[熱電変換素子]
図3は、実施形態に係る燃料電池システム3の一部を模式的に示す図である。
図3に示すように、燃料電池システム3は、燃料電池20と、燃料ガス供給装置40と、冷媒供給装置70と、熱電変換素子100と、蓄電池200とを備える。
【0027】
燃料ガス供給装置40は、水素を収容する水素タンク41と、水素タンク41と燃料電池20のアノード入口とを接続する燃料ガス供給ライン42とを有する。燃料ガス供給ライン42は、水素タンク41と燃料電池20のアノード入口とを接続する燃料ガス供給チューブを含む。燃料ガス供給ライン42(燃料ガス供給チューブ)の一部に熱伝達部42Rが設けられる。熱伝達部42Rは、燃料ガス供給チューブの一部を複数回屈曲させた屈曲部を含む。熱伝達部42Rの単位面積当たりの熱伝達面の大きさは、熱伝達部42Rが設けられていない部分の燃料ガス供給チューブの単位面積当たりの熱伝達面の大きさよりも大きい。水素タンク41及び燃料ガス供給ライン42(燃料ガス供給チューブ)のそれぞれは、燃料電池20に水素を供給する第1部材として機能する。
【0028】
冷媒供給装置70は、燃料電池20の冷媒入口に接続される供給ライン71と、燃料電池20の冷媒出口に接続される排出ライン72と、供給ライン71及び排出ライン72のそれぞれに接続されるラジエータ73と、冷媒ポンプ74とを有する。供給ライン71は、燃料電池20の冷媒入口に接続される供給チューブを含む。排出ライン72は、燃料電池20の冷媒出口に接続される排出チューブを含む。冷媒ポンプ74は、供給ライン71、燃料電池20、排出ライン72、及びラジエータ73を含む循環経路において冷媒が循環するように駆動する。ラジエータ73は、燃料電池20から排出された冷媒とダンプトラック2の外部の空気とを熱交換して冷媒を冷却する。排出ライン72(排出チューブ)の一部に熱伝達部72Rが設けられる。熱伝達部72Rは、排出チューブの一部を複数回屈曲させた屈曲部を含む。熱伝達部72Rの単位面積当たりの熱伝達面の大きさは、熱伝達部72Rが設けられていない部分の排出チューブの単位面積当たりの熱伝達面の大きさよりも大きい。排出ライン72(排出チューブ)及びラジエータ73のそれぞれは、燃料電池20から冷媒が供給される第2部材として機能する。
【0029】
蓄電池200は、熱電変換素子100に接続される。蓄電池200は、蓄電装置64の少なくとも一部とみなされてもよいし、蓄電装置64とは異なる蓄電装置とみなされてもよい。ゼーベック効果により熱電変換素子100が発電した場合、蓄電池200は、熱電変換素子100が発電した電力で充電される。蓄電池200から熱電変換素子100に電力が供給された場合、熱電変換素子100は、ペルチェ効果により周囲の物体を冷却する。
【0030】
熱電変換素子100は、燃料ガス供給ライン42の熱伝達部42Rが対向する第1面と、排出ライン72の熱伝達部72Rが対向する第2面とを有する。第1面と第2面とに温度差が生じると、熱電変換素子100は、ゼーベック効果により発電する。
【0031】
図4は、実施形態に係る燃料電池20が水素を消費する水素消費時における熱電変換素子100を模式的に示す図である。燃料電池20は、水素タンク41から供給される水素を消費することにより発電する。水素消費時において、水素タンク41に充填されている水素が燃料ガス供給ライン42を介して燃料電池20に供給される。水素タンク41には圧縮された水素が充填されている。水素タンク41から流出する水素の温度は、断熱膨張の原理により低下する。水素タンク41から流出し温度が低下した水素は、燃料ガス供給ライン42を流れる。燃料ガス供給ライン42の熱伝達部42Rを流れる水素の温度は、一例として、-20℃以上0℃以下である。
【0032】
水素消費時において、燃料電池20が発電している。そのため、燃料電池20から熱を奪った冷媒の温度は、上昇する。すなわち、水素消費時において、燃料電池20の冷媒出口から流出する冷媒の温度は、高い。燃料電池20の冷媒出口から流出し温度が高い冷媒は、排出ライン72を流れる。排出ライン72の熱伝達部72Rを流れる冷媒の温度は、一例として、80℃程度である。
【0033】
このように、燃料電池20が水素を消費する水素消費時において、水素の温度が冷媒の温度よりも低くなる。熱電変換素子100の第1面は、燃料ガス供給ライン42の熱伝達部42Rに対向する。熱電変換素子100の第2面は、排出ライン72の熱伝達部72Rに対向する。熱電変換素子100の第1面は、燃料ガス供給ライン42の熱伝達部42Rを流れる水素により冷却される。熱電変換素子100の第2面は、排出ライン72の熱伝達部72Rを流れる冷媒により加熱される。水素は、熱電変換素子100の冷熱源として機能する。冷媒は、熱電変換素子100の温熱源として機能する。水素消費時において、熱電変換素子100は、ゼーベック効果により発電する。蓄電池200は、熱電変換素子100が発電した電力で充電される。
【0034】
図5は、実施形態に係る水素タンク41に水素を充填する水素充填時における熱電変換素子100を模式的に示す図である。水素タンク41の水素が消費された場合、任意のタイミングで水素タンク41に水素が充填される。ダンプトラック2に水素充填ポートが設けられる。水素タンク41に水素を充填する場合、ダンプトラック2の外部に存在する水素供給装置(水素ステーション)と水素充填ポートとが接続される。水素供給装置から供給された水素が水素タンク41に充填される。水素充填時において、水素タンク41から燃料電池20に水素は供給されない。すなわち、水素充填時において、水素は、燃料電池20に消費されない。
【0035】
水素タンク41に圧縮された水素が充填される。水素タンク41に充填される水素の温度は、断熱圧縮の原理により上昇する。水素タンク41に充填される水素の温度が上昇するので、水素タンク41の温度及び水素タンク41に接続されている燃料ガス供給ライン42の温度も上昇する。水素充填時における燃料ガス供給ライン42の熱伝達部42Rの温度は、一例として、80℃程度である。
【0036】
水素充填時において、燃料電池20は発電していない。そのため、水素充填時において燃料電池20の冷媒出口から流出する冷媒の温度は、水素消費時において燃料電池20の冷媒出口から流出する冷媒の温度よりも低い。燃料電池20の冷媒出口から流出し温度が高い冷媒は、排出ライン72を流れる。水素充填時において排出ライン72の熱伝達部72Rを流れる冷媒の温度は、一例として、50℃以上80℃以下である。
【0037】
このように、水素タンク41に水素を充填する水素充填時において、水素の温度が冷媒の温度よりも高くなる。熱電変換素子100の第1面は、燃料ガス供給ライン42の熱伝達部42Rに対向する。熱電変換素子100の第2面は、排出ライン72の熱伝達部72Rに対向する。熱電変換素子100の第1面は、温度上昇した燃料ガス供給ライン42の熱伝達部42Rにより加熱される。熱電変換素子100の第2面は、排出ライン72の熱伝達部72Rを流れる冷媒により冷却される。水素は、熱電変換素子100の温熱源として機能する。冷媒は、熱電変換素子100の冷熱源として機能する。水素充電時において、蓄電池200から熱電変換素子100に電力が供給される。熱電変換素子100は、ペルチェ効果により燃料ガス供給ライン42を冷却する。水素充電時において、燃料ガス供給ライン42が冷却されることにより、燃料ガス供給ライン42に接続されている水素タンク41が冷却される。
【0038】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、燃料電池システム3は、燃料電池20と、熱電変換素子100と、熱電変換素子100の第1面に対向し、燃料電池20に水素を供給する燃料ガス供給ライン42(燃料ガス供給チューブ)と、熱電変換素子100の第2面に対向し、燃料電池20から冷媒が供給される排出ライン72(排出チューブ)と、を備える。
【0039】
実施形態によれば、水素と冷媒との温度差により、熱電変換素子100にゼーベック効果又はペルチェ効果を発揮させることができる。水素消費時においては、ゼーベック効果により、燃料電池20の冷媒出口から流出した冷媒の熱エネルギーが電気エネルギーに変換される。水素充填時においては、ペルチェ効果により、燃料ガス供給ライン42及び水素タンク41の温度上昇が抑制される。そのため、燃料電池システム3の効率が向上する。例えば水素タンク41がプラスチック製である場合、水素タンク41の熱劣化を抑制するために、水素充填時に水素タンク41の温度上昇が抑制されることが好ましい。水素タンク41の温度上昇を抑制するために、水素タンク41に対する水素充填速度を低下させた場合、水素充填時間が長期化してしまう。水素タンク41の温度上昇を抑制するために、水素タンク41に充填前の水素の温度を低下させる場合、水素供給装置(水素ステーション)の負荷が大きくなってしまう。実施形態によれば、水素充填時においては、熱電変換素子100のペルチェ効果により、燃料ガス供給ライン42及び水素タンク41の温度上昇が抑制される。
【0040】
[その他の実施形態]
図6は、実施形態に係る燃料電池システム3の一部を模式的に示す図である。上述の実施形態においては、熱電変換素子100の第1面に燃料ガス供給ライン42が対向し、熱電変換素子100の第2面に排出ライン72が対向することとした。
図6に示すように、熱電変換素子100の第1面に水素タンク41が対向し、熱電変換素子100の第2面にラジエータ73が対向してもよい。
【0041】
図7は、実施形態に係る燃料電池システム3の一部を模式的に示す図である。
図7は、水素タンク41の断面を示す。
図7に示すように、水素タンク41の周囲に環状の熱電変換素子100Bが配置されてもよい。熱電変換素子100Bの周囲に排出ライン720(排出チューブ)が配置されてもよい。排出ライン720は、熱電変換素子100Bに巻き付けられるように配置されてもよい。熱電変換素子100Bの内周面に水素タンク41が対向する。熱電変換素子100Bの外周面に排出ライン720が対向する。
図7に示す例においても、熱電変換素子100Bは、ゼーベック効果又はペルチェ効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0042】
2…ダンプトラック(作業車両)、3…燃料電池システム、4…電動モータ、4A…駆動モータ、4B…走行モータ、5…油圧ポンプ、6…パワーテイクオフ、7…バルブ装置、8A…前輪、8B…後輪、9…ステアリングシリンダ、10…車体、11A…前タイヤ、11B…後タイヤ、12…ダンプボディ、13…ホイストシリンダ、20…燃料電池、30…酸化ガス供給装置、31…エアコンプレッサ、32…酸素富化膜、33…タービン、34…給気ライン、35…給気ライン、36…給気ライン、40…燃料ガス供給装置、41…水素タンク、42…燃料ガス供給ライン(燃料ガス供給チューブ)、42R…熱伝達部、50…ガス排出装置、51…排気ライン、52…タービン、60…電力調整装置、61…DC/DCコンバータ、62…インバータ、63…DC/DCコンバータ、64…蓄電装置、70…冷媒供給装置、71…供給ライン、72…排出ライン(排出チューブ)、72R…熱伝達部、73…ラジエータ、74…冷媒ポンプ、100…熱電変換素子、100B…熱電変換素子、200…蓄電池、720…排出ライン(排出チューブ)。