(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086234
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】二酸化炭素固定方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201258
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】景山 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】杉本 南
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA00
2D040CA10
(57)【要約】
【課題】既存の構造物や、二酸化炭素を固定するため以外の目的で構築される構造物へ、二酸化炭素を固定できる二酸化炭素固定方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素固定方法は、セメントを含む材料を用いて構築された地盤改良体20の少なくとも先端が浸漬された地下水を含む地盤Gに、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む水を注入し、注入された二酸化炭素を、地盤改良体20に固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを含む材料を用いて構築された地盤改良体の少なくとも先端が浸漬された地下水を含む地盤に、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む水を注入し、注入された前記二酸化炭素を、前記地盤改良体に固定する、二酸化炭素固定方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素を含む水を前記地盤に構築した第一井戸から注入し、
地下水を前記第一井戸と離れて前記地盤に構築した第二井戸から揚水する、
請求項1に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項3】
前記第二井戸から前記地下水を揚水した後に、
前記第二井戸から二酸化炭素を含む水を注入し、
前記地下水を前記第一井戸から揚水する、
請求項2に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項4】
前記第二井戸から前記地下水を揚水した後に、
揚水された地下水を前記地盤へ注入する、
請求項2に記載の二酸化炭素固定方法。
【請求項5】
前記第一井戸及び前記第二井戸は、前記地盤改良体の周囲に構築された止水壁の内側に配置されている、請求項2~4の何れか1項に記載の二酸化炭素固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、地盤改良用スラリー組成物における高炉スラグ微粉末の割合を高くして、二酸化炭素の発生を抑制する、地盤改良用スラリー組成物及びソイルセメントスラリーの調製方法が記載されている。この技術は、地盤改良を実施する前の段階において二酸化炭素の発生を抑制する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたような二酸化炭素の発生を抑制する技術のほか、発生した二酸化炭素を固定して再度大気へ放出させない技術も求められている。しかしながら、二酸化炭素を固定する対象として新たな構造物を構築する場合、当該構造物を構築するために、固定化できる二酸化炭素を上回る二酸化炭素を排出する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、既存の構造物や、二酸化炭素を固定するため以外の目的で構築される構造物へ、二酸化炭素を固定できる二酸化炭素固定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の二酸化炭素固定方法は、セメントを含む材料を用いて構築された地盤改良体の少なくとも先端が浸漬された地下水を含む地盤に、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む水を注入し、注入された前記二酸化炭素を、前記地盤改良体に固定する。
【0007】
請求項1の二酸化炭素固定方法では、地下水に、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む水を注入する。この地下水には、地盤改良体の少なくとも先端が浸漬されているので、地盤改良体は注入された二酸化炭素に晒される。そして、地盤改良体はセメントを含む材料を用いて構築されているため、セメントに含まれる水酸化カルシウムに代表されるカルシウム化合物が二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成する。これにより、二酸化炭素が地盤改良体に固定される。
【0008】
このように、請求項1の二酸化炭素固定方法によると、既存の構造物である地盤改良体へ、二酸化炭素を固定できる。また、二酸化炭素を固定する対象としてわざわざ新たな構造物を構築する場合と比較して、二酸化炭素の発生量を抑制できる。
【0009】
請求項2の二酸化炭素固定方法は、請求項1に記載の二酸化炭素固定方法において、前記二酸化炭素を含む水を前記地盤に構築した第一井戸から注入し、地下水を前記第一井戸と離れて前記地盤に構築した第二井戸から揚水する。
【0010】
請求項2の二酸化炭素固定方法では、地盤に第一井戸及び第二井戸を構築する。第二井戸から地下水を揚水することで、地下水には第一井戸から第二井戸へ向かう水流が発生する。第一井戸から水と共に注入した二酸化炭素は、この水流に乗って移動するので、水流がない場合と比較して二酸化炭素が拡散し易い。このため、地盤改良体が二酸化炭素に晒され安い。
【0011】
請求項3の二酸化炭素固定方法は、請求項2に記載の二酸化炭素固定方法において、前記第二井戸から前記地下水を揚水した後に、前記第二井戸から二酸化炭素を含む水を注入し、前記地下水を前記第一井戸から揚水する。
【0012】
2つの井戸からの注水及び揚水によって、地下水には水位差が生じる。このため、地下水位が高い注水井戸の近辺に配置された地盤改良体は二酸化炭素に晒され易い一方、地下水位が低い揚水井戸の近辺に配置された地盤改良体は二酸化炭素に晒され難い。これにより、地盤改良体には、二酸化炭素を固定し難い部分が生じる。
【0013】
そこで請求項3の二酸化炭素固定方法では、第一井戸から二酸化炭素を注入して第二井戸から揚水する工程のあと、第二井戸から二酸化炭素を注入して第一井戸から揚水する工程を実施する。
【0014】
これにより、最初の工程において二酸化炭素を固定し難い部分にも、後の工程で、二酸化炭素を固定することができる。このため、地盤改良体の多くの部分に二酸化炭素を固定できる。
【0015】
請求項4の二酸化炭素固定方法は、請求項2に記載の二酸化炭素固定方法において、前記第二井戸から前記地下水を揚水した後に、揚水された地下水を前記地盤へ注入する。
【0016】
第二井戸から揚水する地下水には、第一井戸から注水した水や地盤改良体に固定されずに残った二酸化炭素が含まれる。そこで請求項4の二酸化炭素固定方法では、残った二酸化炭素が含まれる地下水を再度地盤へ注入する。これにより、二酸化炭素の固定率を向上させることができる。
【0017】
請求項5の二酸化炭素固定方法は、請求項2~4の何れか1項に記載の二酸化炭素固定方法において、前記第一井戸及び前記第二井戸は、前記地盤改良体の周囲に構築された止水壁の内側に配置されている。
【0018】
請求項5の二酸化炭素固定方法では、第一井戸及び第二井戸が、地盤改良体の周囲に構築された止水壁の内側に構築されている。このため、第一井戸または第二井戸から注入した水や二酸化炭素が、止水壁の外側に拡散し難い。このため、止水壁がない場合と比較して、地盤改良体が晒される二酸化炭素の濃度が高くなる。これにより、地盤改良体に二酸化炭素を固定し易い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既存の構造物や、二酸化炭素を固定するため以外の目的で構築される構造物へ、二酸化炭素を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)は本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法の一例の概略を示す立断面図であり、(B)は平断面図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法において注水井戸と揚水井戸とを入れ替えた状態の概略を示す立断面図であり、(B)は平断面図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法において井戸を止水壁の内側に構築した変形例を示す立断面図であり、(B)は平断面図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法において地盤改良体としてサンドコンパクションパイルを使用した変形例を示す立断面図であり、(B)は平断面図である。
【
図5】(A)は本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法においてセメント系地盤改良体を上面視で格子状に形成した変形例を示す立断面図であり、(B)は平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0022】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
<基本構成>
本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法は、
図1(A)、(B)に示す既存の地盤改良体20に、二酸化炭素を固定する方法である。地盤改良体20は、本来、二酸化炭素を固定することを目的として構築される構造物ではなく、例えば建物10の不同沈下を抑制することを目的として構築される構造物である。
【0024】
地盤改良体20は、建物10を地盤Gに構築する際に、建物10の構築に先立って形成される。この図において、建物10は、地下階を有する態様で描かれているが、建物10は必ずしも地下階を備えている必要はない。
【0025】
図1(A)に示すように、地盤改良体20は、少なくとも先端が地盤Gの地下水Wに浸漬されている。地盤改良体20は、ポルトランドセメントや高炉セメント(高炉スラグを迄たセメント)等のセメントが混入された地盤改良材を用いて形成された杭状のセメント系地盤改良体であり、建物10の下方に、上下方向に沿って複数構築されている。
【0026】
<二酸化炭素固定方法>
本実施形態の二酸化炭素固定方法は、建物10の構築後に実施される。建物10の構築後において地盤改良体20に二酸化炭素を固定するために、建物10の周囲には、第一井戸30及び第二井戸40が構築される。
【0027】
第一井戸30と第二井戸40とは離れて構築される。また、第一井戸30及び第二井戸40は、建物10を挟んで配置される。より具体的には、第一井戸30及び第二井戸40は、建物10の角部の近傍と、当該角部と対角線上にある角部の近傍と、にそれぞれ1本ずつ配置される。
【0028】
(第一工程)
地盤改良体20に二酸化炭素を固定するためには、まず、
図1(A)、(B)に示す第一工程を実施する。第一工程では、第一井戸30から地下水Wを含む地盤Gへ、二酸化炭素を含む水を注入する(矢印T1)。
【0029】
「二酸化炭素を含む水を注入する」とは、二酸化炭素が溶解した水(所謂炭酸水)を注入する態様の他、気体の二酸化炭素と水とを同時に注入する態様や、二酸化炭素を含む気体と水とを同時に注入する態様を含む。「二酸化炭素を含む気体」には、少なくとも50%(質量パーセント)以上の二酸化炭素を含むことが、二酸化炭素を固定する効率の観点からは好ましい。
【0030】
そして、第二井戸40から、地下水Wを揚水する(矢印T2)。第二井戸40から地下水Wを揚水することで、地下水Wには、矢印F1で示す方向、すなわち第一井戸30から第二井戸40へ向かう方向に水流が発生する。これにより、二酸化炭素が水流に乗って移動して、地盤改良体20が二酸化炭素に晒される。
【0031】
さらに、第二井戸40から揚水した地下水Wを、第一井戸30から地盤へ注入する(矢印T3)。これにより、第二井戸40から揚水した地下水Wに含まれる二酸化炭素を、再度、地盤Gに注入できる。
【0032】
なお、二酸化炭素は必ずしも矢印F1で示す方向に沿って移動するわけではなく、第一井戸30と第二井戸40とを結ぶ線分の周囲にも、水平方向及び上下方向(上下方向においては、主に上方向)に、立体的に拡散する。このため、第一井戸30と第二井戸40に挟まれた位置にある建物10の下方に構築された地盤改良体20において、地下水Wに浸漬された部分は、二酸化炭素に晒され易い。
【0033】
ここで、
図1(A)、(B)に示された例では、第一井戸30が注水井戸として機能し、第二井戸40が揚水井戸として機能している。注水井戸である第一井戸30の周囲は地下水Wの水嵩が増え(水位が上昇し)、揚水井戸である第二井戸40の周囲は地下水Wの水嵩が減る(水位が下がる)。
【0034】
このため、第二井戸40の周囲に配置された地盤改良体20は、第一井戸30の周囲に配置された地盤改良体20と比較して、地下水Wに浸漬された部分、すなわち、二酸化炭素に晒される部分が少ない。そこで、上記第一工程のあと、
図2(A)、(B)に示す第二工程を実施する。
【0035】
(第二工程)
第二工程では、
図1(A)、(B)で示した矢印T1、T2、T3で示される地下水W及び二酸化酸素の循環を、逆向きに実施する。
【0036】
すなわち、
図2(A)、(B)に示すように、第二井戸40から地下水Wを含む地盤Gへ、二酸化炭素を含む水を注入する(矢印T1)。そして、第一井戸30から、地下水Wを揚水する(矢印T2)。地下水Wには、矢印F2で示す方向、すなわち第二井戸40から第一井戸30へ向かう方向に水流が発生する。さらに、第一井戸30から揚水した地下水Wを、第二井戸40から地盤へ注入する(矢印T3)。
【0037】
第二工程では、第一井戸30の周囲に配置された地盤改良体20は、第二井戸40の周囲に配置された地盤改良体20と比較して、地下水Wに浸漬された部分、すなわち、二酸化炭素に晒される部分が少ない。
【0038】
このように、第一工程と第二工程とを、それぞれ複数回、繰り返し実行して、第一井戸30及び第二井戸40の双方を、注水井戸及び揚水井戸として交互に機能させる。これにより、複数の地盤改良体20が二酸化炭素に晒される部分や時間を平準化できる。
【0039】
なお、この二酸化炭素固定方法は、建物10の周囲に図示しない土留め壁が構築されている場合にも適用できる。この場合、第一井戸30及び第二井戸40は、土留め壁と建物10との間に配置する。但し、土留め壁が透水性の土留め壁であれば、第一井戸30及び第二井戸40を土留め壁の外側に配置することもできる。
【0040】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る二酸化炭素固定方法では、地下水に、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む水を注入する。この地下水には、地盤改良体の少なくとも先端が浸漬されているので、地盤改良体は注入された二酸化炭素に晒される。そして、地盤改良体はセメントを含む材料を用いて構築されているため、セメントに含まれる水酸化カルシウムに代表されるカルシウム化合物が、以下のように二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成する。
【0041】
カルシウム化合物の場合:
CaX+CO2→CaCO3+X(Xは特定されない物質を示す元素記号に代えた記号)
【0042】
水酸化カルシウムの場合:
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
【0043】
これにより、二酸化炭素が地盤改良体に固定される。
【0044】
このように、実施形態に係る二酸化炭素固定方法によると、既存の構造物である地盤改良体へ、二酸化炭素を固定できる。また、二酸化炭素を固定する対象としてわざわざ新たな構造物を構築する場合と比較して、二酸化炭素の発生量を抑制できる。
【0045】
また、カルシウム化合物が二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを生成することにより、カルシウム化合物が地下水Wに溶出することを抑制できる。これにより地下水Wの水素イオン濃度指数(PH)が高くなる(アルカリ性化する)ことを抑制できる。また、炭酸カルシウムを生成することにより、セメントに含まれる六価クロムを地下水W中に溶出汗難くできるといった効果も期待できる。
【0046】
また、実施形態に係る二酸化炭素固定方法では、地盤に第一井戸30及び第二井戸40を構築する。第二井戸40から地下水を揚水することで、地下水には第一井戸30から第二井戸40へ向かう水流(矢印F1)が発生する。第一井戸30から水と共に注入した二酸化炭素は、この水流に乗って移動するので、水流がない場合と比較して二酸化炭素が拡散し易い。このため、地盤改良体20が二酸化炭素に晒され安い。
【0047】
2つの井戸からの注水及び揚水によって、地下水Wには水位差が生じる。このため、地下水位が高い注水井戸である第一井戸30の近辺に配置された地盤改良体20は二酸化炭素に晒され易い一方、地下水位が低い揚水井戸である第二井戸40の近辺に配置された地盤改良体20は二酸化炭素に晒され難い。これにより、地盤改良体20には、二酸化炭素を固定し難い部分が生じる。
【0048】
そこで実施形態に係る二酸化炭素固定方法では、第一井戸30から二酸化炭素を注入して第二井戸40から揚水する工程のあと、第二井戸40から二酸化炭素を注入して第一井戸30から揚水する工程を実施する。
【0049】
これにより、最初の工程において二酸化炭素を固定し難い部分にも、後の工程で、二酸化炭素を固定することができる。このため、地盤改良体20の多くの部分に二酸化炭素を固定できる。
【0050】
ここで、例えば第二井戸40から揚水する地下水Wには、第一井戸30から注水した水や地盤改良体20に固定されずに残った二酸化炭素が含まれる。そこで本実施形態の二酸化炭素固定方法では、残った二酸化炭素が含まれる地下水Wを再度地盤Gへ注入する。これにより、二酸化炭素の固定率を向上させることができる。
【0051】
<変形例>
上記実施形態の二酸化炭素固定方法は、建物10の構築後に実施されるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図3(A)、(B)に示す例では、建物10の構築「前に」地盤改良体20に二酸化炭素を固定している。
【0052】
この場合、地下階を有する建物10を構築するために、地盤改良体20の周囲に止水性を有する土留壁(止水壁)50を構築し、その内側の地盤Gを掘削して床付けする。また、第一井戸30及び第二井戸40は、土留壁50の内側に構築する。二酸化炭素固定方法は、上記の第一工程および第二工程を同様に実施する。
【0053】
この実施形態において、第一井戸30及び第二井戸40は、建物10の工事の進捗状況に応じて撤去する。
【0054】
(効果)
変形例に係る二酸化炭素固定方法では、第一井戸30及び第二井戸40が、地盤改良体20の周囲に構築された止水壁である土留壁50の内側に構築されている。このため、第一井戸30または第二井戸40から注入した水や二酸化炭素が、土留壁50外側に拡散し難い。このため、土留壁50がない場合と比較して、地盤改良体20が晒される二酸化炭素の濃度が高くなる。これにより、地盤改良体20に二酸化炭素を固定し易い。
【0055】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、地盤改良体20を、セメントが混入された地盤改良材を用いて形成された、杭状のセメント系地盤改良体としたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0056】
例えば
図4(A)、(B)に示す地盤改良体22は、再生砕石などのコンクリート廃材を使用したサンドコンパクションパイルである。すなわち、地盤改良体22においいては、再生砕石が含有するセメント成分に二酸化炭素が固定される。
【0057】
また、
図5(A)、(B)に示す地盤改良体24は、セメント系地盤改良体を上面視で格子状に形成した地盤改良体である。二酸化炭素は地下水W中を浮力により浮上するため、このような格子状の地盤改良体も、二酸化炭素に晒すことができる。
【0058】
このように、本発明の二酸化炭素固定方法は、セメント系材料を用いたものであれば各種の地盤改良体に適用することができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、
図1に示すように、第二井戸40から揚水した地下水Wを第一井戸30から地盤へ注入し、
図2に示すように、第一井戸30から揚水した地下水Wを第二井戸40から地盤へ注入(矢印T3)しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0060】
すなわち、揚水した地下水Wは必ずしも地盤Gへ再注入する必要はない。揚水した地下水Wを地盤Gへ再注入しなくても、第一井戸30または第二井戸40から地盤Gへ二酸化炭素を注入することにより、地盤改良体20等に二酸化炭素を固定できる。
【0061】
また、上記実施形態においては、第一工程と第二工程とを繰り返し実行しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば第一工程と第二工程とを、それぞれ1回ずつ実行してもよい。また、第一工程のみ(または第二工程のみ)を実行してもよい。このような態様でも、地盤改良体20等に二酸化炭素を固定する効果を得ることができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、第一井戸30及び第二井戸40をそれぞれ1つずつ設けているが、本発明の実施形態はこれに限らない。第一井戸30及び第二井戸40は、それぞれ複数設けてもよいし、第一井戸30の本数と第二井戸40の本数とは一致させなくてもよい。第一井戸30及び第二井戸40の本数に関わらず、地盤改良体20等に二酸化炭素を固定する効果を得ることができる。
【0063】
さらに、揚水井戸として機能させる井戸を設けなくてもよい。揚水井戸を設けなくても地盤Gに二酸化炭素を注入すれば、地盤改良体20等に二酸化炭素を固定する効果を得ることができる。
【0064】
またさらに、注水井戸として機能させる井戸を設けなくてもよい。柱水井戸を設けなくても、例えば地盤Gに二酸化炭素を含んだ水を散水すれば、地盤改良体20等に二酸化炭素を固定する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
20 地盤改良体
22 地盤改良体
24 地盤改良体
30 第一井戸
40 第二井戸
50 土留壁(止水壁)
G 地盤
W 地下水