(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086240
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】投写制御装置、投写制御方法
(51)【国際特許分類】
B63B 45/04 20060101AFI20240620BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20240620BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240620BHJP
G08G 3/00 20060101ALI20240620BHJP
G09F 19/18 20060101ALI20240620BHJP
F21W 111/04 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
B63B45/04
B63B35/00 T
F21S2/00 390
F21S2/00 612
G08G3/00 A
G09F19/18 H
G09F19/18 J
F21W111:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201266
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大輔
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB04
5H181BB09
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF13
5H181HH15
(57)【要約】
【課題】船舶に対して各種情報を伝えることが可能であり、保守の負担を低減することが可能な投写制御装置を提供する。
【解決手段】洋上風力発電設備に設置される映像投写装置に接続される投写制御装置であって、前記洋上風力発電設備に対して割り当てられたエリアを航行する船舶を検出する検出部と、前記検出された船舶に応じたメッセージを抽出する抽出部と、前記抽出されたメッセージを前記映像投写装置から海面または洋上風力発電設備に対して投写させる出力部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備に設置される映像投写装置に接続される投写制御装置であって、
前記洋上風力発電設備に対して割り当てられたエリアを航行する船舶を検出する検出部と、
前記検出された船舶に応じたメッセージを抽出する抽出部と、
前記抽出されたメッセージを前記映像投写装置から海面または洋上風力発電設備に対して投写させる出力部と、
を有する投写制御装置。
【請求項2】
前記検出部の検出結果に基づいて、前記検出された船舶と前記洋上風力発電設備との距離を求める距離算出部を有し、
前記出力部は、前記メッセージの表示態様を前記距離に応じて変更する
請求項1に記載の投写制御装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記メッセージを前記海面に投写させる場合、前記距離に応じて、前記船舶からメッセージを見た場合の垂直方向における台形補正の度合いを変更する
請求項2に記載の投写制御装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記距離に応じて、前記メッセージの表示サイズを変更する
請求項2に記載の投写制御装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記映像投写装置が設置された洋上風力発電設備とは異なる洋上風力発電設備のタワーに対して投写させる
請求項1に記載の投写制御装置。
【請求項6】
前記エリアの海象情報を取得する取得部と、
前記海象情報に基づいて、前記エリアの海面に生じる波が基準レベル以上であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、投写する対象を前記海面または前記洋上風力発電設備のいずれかを選択する選択部と、を有し、
前記出力部は、前記選択部によって選択された投写対象に対して前記メッセージを投写させる
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の投写制御装置。
【請求項7】
洋上風力発電設備に設置される映像投写装置に接続されるコンピュータにより実行される投写制御方法であり、
前記洋上風力発電設備に対して割り当てられたエリアを航行する船舶を検出し、
前記検出された船舶に応じたメッセージを抽出し、
前記抽出されたメッセージを前記映像投写装置から海面または洋上風力発電設備に対して投写させる
投写制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写制御装置、投写制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航路標識は、船舶が安全に航行するために、海上の船舶から視認可能な位置に設けられる。航路標識の一つとして、光や形を利用した光波標識がある。光波標識は、発光することで、船舶からの視認性を向上させることができる。
また、近年は、洋上風力発電設備の設置が進みつつある。そのため、洋上風力発電設備の存在を船舶から認識してもらう必要がある。このような洋上風力発電設備の存在を船舶側に知らせるために、洋上風力発電設備の上部に発光装置を設け、点灯させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発光装置を設けることで、洋上風力発電設備の存在を船舶に認識してもらうことができるが、洋上風力発電設備の存在を通知するだけでなく、他の情報も通知できた方が、船舶の安全な航行に寄与すると考えられる。ここで、洋上風力発電設備に液晶表示装置を設け、各種情報を表示することが考えられるが、液晶表示装置の表示画面が汚れた場合には、遠方から表示画面を認識しにくくなる。また、表示画面の清掃するために洋上風力発電設備が設置された場所まで出向く必要があり、保守の負担が大きい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、船舶に対して各種情報を伝えることが可能であり、保守の負担を低減することが可能な投写制御装置、投写制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、洋上風力発電設備に設置される映像投写装置に接続される投写制御装置であって、前記洋上風力発電設備に対して割り当てられたエリアを航行する船舶を検出する検出部と、前記検出された船舶に応じたメッセージを抽出する抽出部と、前記抽出されたメッセージを前記映像投写装置から海面または洋上風力発電設備に対して投写させる出力部と、を有する投写制御装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、洋上風力発電設備に設置される映像投写装置に接続されるコンピュータにより実行される投写制御方法であり、前記洋上風力発電設備に対して割り当てられたエリアを航行する船舶を検出し、前記検出された船舶に応じたメッセージを抽出し、前記抽出されたメッセージを前記映像投写装置から海面または洋上風力発電設備に対して投写させる投写制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、船舶に対して各種情報を伝えることが可能であり、保守の負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の一実施形態による航路標識システムSの構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】航路標識システムSが設置された様子を示す概略の概念図である。
【
図3】投写制御装置70の動作について説明するフローチャートである。
【
図4】映像投写装置21から映像を投写した場合を示す概念図である。
【
図5】映像投写装置21から映像を投写した場合を示す他の概念図である。
【
図6】映像投写装置21から映像を投写した場合を示す他の概念図である。
【
図7】映像投写装置21から映像を投写した場合を示す他の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による航路標識システムSについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による航路標識システムSの構成を示す概略ブロック図である。
航路標識システムSは、洋上風力発電設備20、映像投写装置21、レーダ30、AIS40、サーバ装置50、メッセージ管理装置60、投写制御装置70、ネットワークNWを含む。ネットワークNWは、例えば、インターネットである。
【0011】
洋上風力発電設備20は、海洋上に設置され、自然エネルギー(風力)によって発電する。洋上風力発電設備20は、海洋上に複数設置される場合がある。
【0012】
映像投写装置21は、洋上風力発電設備20に設置される。例えば、映像投写装置21は、洋上風力発電設備20のナセルの上部に設置される。
映像投写装置21は、プロジェクションマッピングによって映像を投写するプロジェクタ装置であってもよい。映像投写装置21は、海面または洋上風力発電設備に映像を投写する。映像が投写される対象の洋上風力発電設備は、映像投写装置21が設置された洋上風力発電設備または、映像投写装置21が設置された洋上風力発電設備の近傍に設置された洋上風力発電設備である。映像投写装置21は、海面に映像を投写する場合、映像投写装置21を基準として予め決められた範囲(例えば、投写可能な距離内)の海面に投写する。
洋上風力発電設備に映像を投写する場合、例えば、洋上風力発電設備のタワー(柱部)の外周面の少なくとも一部に投写する。洋上風力発電設備20のブレードの先端までの高さが約80~100m程度である場合、その洋上風力発電設備のタワーの直径は4~5m程度である。そのため、タワーを遠方から見た場合、ある程度の広さを持つスクリーンとして利用することができる。例えば、洋上風力発電設備は、1つのエリアに複数設置される場合があり、そのうちの1つまたはいくつかの洋上風力発電設備にプロジェクタ装置を映像投写装置21として設置し、そのエリア内の他の洋上風力発電設備20のタワーに映像を投写する。
投写される映像は、任意のものであればよいが、例えば、船舶に対するメッセージであり、航路標識に関する情報、文字、図形、記号のうち少なくともいずれか1つを含む。航路標識に関する情報としては、航路標識の外観を表す図形であってもよいし、航路標識が示す内容を文字や図形を用いて説明するメッセージであってもよい。
【0013】
また、1基の洋上風力発電設備の支柱に1つの文字や図形を投写するようにしてもよい。例えば、洋上風力発電設備20は、洋上において、数十基並べて設置される場合がある。このような場合に、少なくともいずれか1基の洋上風力発電設備20に対して映像投写装置21を設け、他の複数の洋上風力発電設備20のタワーに対して映像を投写するようにしてもよい。ここでは、1つの映像を、複数基の洋上風力発電設備の支柱にまたがるようにして投写するようにしてもよい。また、映像投写装置21を異なる洋上風力発電設備20にそれぞれ1つずつ設け、各映像投写装置21に対して投写する対象の洋上風力発電設備20のタワーを割り当てる。そして、各映像投写装置21から投写することで、複数の洋上風力発電設備20のタワーの全体として1つの映像が視認できるように投写してもよい。
【0014】
映像投写装置21の電源は、洋上風力発電設備20によって発電された電力の一部を利用するようにしてもよいし、太陽光発電装置を映像投写装置21の近傍に設け、太陽光発電装置によって発電された電力をバッテリに充電しておき、このバッテリから映像投写装置21に電力を供給するようにしてもよい。
映像投写装置21は、昼間、夜間のいずれにおいても映像を投写してもよい。
【0015】
レーダ30は、電波を発射し、その反射波を受信することで、海上に存在する船舶の距離と方位とを測定する。
【0016】
AIS40は、船舶自動識別装置(AIS;Automatic Identification System)であり、船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態等の情報を及びその他の安全に関する情報を船舶との間で送受信する。
【0017】
サーバ装置50は、ネットワークNWに通信可能に接続される。サーバ装置50は、視程の情報を含む海象情報を蓄積しており、外部からの送信要求に応じて、海象情報を送信する。海象情報は、視程の他に、天候、風向、風力、波の高さ等を含んでいてもよい。
このような海象情報を配信するサーバ装置としては、例えば、気象庁のサーバ装置、海上保安庁のサーバ装置、その他の気象情報を配信する配信サーバ装置のうちいずれかのサーバ装置であってもよい。
【0018】
メッセージ管理装置60は、ネットワークNWに通信可能に接続される。
メッセージ管理装置60は、映像投写装置21から投写させる映像(メッセージ)を記憶する。記憶される映像は、予め記憶されていてもよいし、メッセージ管理装置60の外部に接続される管理用の端末装置から、必要に応じて追加、削除、編集等を行うようにしてもよい。
【0019】
投写制御装置70は、映像投写装置21、レーダ30、AIS40、サーバ装置50、メッセージ管理装置60に対して通信可能に接続される。投写制御装置70とサーバ装置50、投写制御装置70とメッセージ管理装置60は、ネットワークNWを介して接続される。
投写制御装置70は、映像投写装置21とともに洋上風力発電設備20に設置されてもよいし、映像投写装置21に対して一体として組み込まれてもよいし、陸上に設置されてもよい。投写制御装置70と映像投写装置21は、ネットワークNWを介して接続されてもよい。
【0020】
投写制御装置70は、通信部701、記憶部702、検出部703、抽出部704、距離算出部705、判定部706、選択部707、出力部708、制御部709を含む。
【0021】
通信部701は、映像投写装置21、レーダ30、AIS40、サーバ装置50、メッセージ管理装置60と通信をする。例えば、通信部701は、エリアの海象情報を取得する取得部として機能する。
【0022】
記憶部702は、各種データを記憶する。例えば、記憶部702は、映像投写装置21に投写させるメッセージ(映像データ)を記憶する。メッセージは、メッセージ管理装置60から通信部701によって受信し、記憶部702に書き込まれる。
【0023】
記憶部702は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部702は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0024】
検出部703は、洋上風力発電設備に対して割り当てられたエリアを航行する船舶を検出する。検出部703は、レーダ30またはAIS40から得られるデータを取得し、取得結果に基づいて、船舶の存在を検出する。
【0025】
抽出部704は、検出された船舶に応じたメッセージを記憶部702から抽出する。抽出部704は、検出部703によって検出された船舶の種別が、洋上風力発電設備20の近傍の場所に船舶が侵入できない場合には、「侵入禁止」等のように、侵入が禁止されていることを表すメッセージを抽出する。また、例えば、抽出部704は、検出された船舶の位置が、洋上風力発電設備20から基準距離よりも近い位置に近づいている場合には、「接近注意」等のように、洋上風力発電設備に近づき過ぎないように促すメッセージを抽出するようにしてもよい。
【0026】
距離算出部705は、検出部703の検出結果に基づいて、検出された船舶と洋上風力発電設備との距離を求める。より具体的に、距離算出部705は、レーダ30の測定結果を用いる場合、レーダ30によって洋上に存在する船舶の方向や距離が測定された測定結果を取得し、その測定結果に基づいて、方向と距離に基づく船舶の位置と洋上風力発電設備との距離を算出する。また、距離算出部705は、AIS40から得られるデータを用いる場合、洋上に存在する船舶の位置と、洋上風力発電設備との距離を算出する。
【0027】
判定部706は、通信部701によって取得された海象情報に基づいて、エリアの海面に生じる波が基準レベル以上であるか否かを判定する。例えば判定部706は、海象情報に含まれる波高が基準レベル以上であるか否かを判定する。基準レベルは、予め決められた値であってもよく、例えば、基準となる波高を表す値が用いられる。
また、判定部706は、海象情報に含まれる風速が基準レベル以上であるか否かを判定する。この場合の基準レベルは予め決められた値であってもよく、例えば基準となる風速を表す値が用いられる。ここでは、ある程度の風速がある場合には、ある程度の波が生じていると推定することができる。
【0028】
選択部707は、判定部706の判定結果に基づいて、投写する対象を海面または洋上風力発電設備のいずれかを選択する。例えば、選択部707は、判定部706の判定結果において、エリアの海面に生じる波が基準レベル以上である場合に、投写する対象を洋上風力発電設備として選択し、エリアの海面に生じる波が基準レベル未満である場合に、投写する対象を海面として選択する。海面に生じる波が基準レベル未満であれば、海面が平面に近い状態であると推定することができるため、海面に映像が投写されたとしても、投写された映像を視認しやすい。
また、選択部707は、判定部706の判定結果において、海象情報に含まれる風速が基準レベル以上である場合に、投写する対象を洋上風力発電設備として選択し、海象情報に含まれる風速が基準レベル未満である場合に、投写する対象を海面として選択する。この場合、風速が基準レベル未満であれば、海面における波があまり生じない程度であり、海面が平面に近い状態であると推定することができるため、海面に映像が投写されたとしても、投写された映像を視認しやすい。
【0029】
出力部708は、抽出されたメッセージを映像投写装置から海面または洋上風力発電設備に対して投写させる。
出力部708は、距離算出部705によって算出された距離に応じて、メッセージの表示態様を変更する。距離に応じてメッセージの表示態様する場合、出力部708は、映像を海面に投写させる場合において、洋上風力発電設備20と船舶との距離に応じて、船舶からメッセージを見た場合の垂直方向における台形補正の度合いを変更するようにしてもよい。例えば、洋上風力発電設備20と船舶との距離が近い場合に比べ、洋上風力発電設備20と船舶との距離が遠い場合には、投写されたメッセージが、船舶からみて垂直方向において映像が台形にゆがんで見える場合がある。そのため、出力部708は、洋上風力発電設備20と船舶との距離が近い場合に比べ、洋上風力発電設備20と船舶との距離が遠くなるほど、投写されたメッセージがゆがまないように台形補正する度合いを高くし、洋上風力発電設備20と船舶との距離が近くなるほど、台形補正する度合いを低くする。これにより、遠方に存在する船舶からメッセージを視認する場合であっても、投写時における台形にゆがんでしまうことを低減することができる。
【0030】
また、距離に応じてメッセージの表示態様する場合、出力部708は、距離に応じて、メッセージの表示サイズを変更するようにしてもよい。例えば、出力部708は、船舶と洋上風力発電設備20との距離が近いほど表示サイズを小さくし、船舶と洋上風力発電設備20との距離が遠いほど表示サイズを大きくする。
距離が近いほど表示サイズを小さくする場合、映像の表示サイズをそれほど大きくしなかったとしても、船舶から映像の表示内容を把握することができ、また、映像投写装置21の消費電力を抑えることができる。
距離が遠いほど表示サイズを大きくする場合、投写された映像を遠方から視認したとしても、表示内容を把握しやすくすることができる。
【0031】
出力部708は、選択部707によって選択された投写対象に対して前記メッセージを投写させる。また、出力部708は、映像投写装置21が設置された洋上風力発電設備とは異なる洋上風力発電設備のタワーに対して投写させるようにすることで、投写対象を変更することができる。
【0032】
制御部709は、投写制御装置70における各部を制御する。
【0033】
投写制御装置70において、通信部701、検出部703、抽出部704、距離算出部705、判定部706、選択部707、出力部708、制御部709は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
また、投写制御装置70は、映像投写装置21とともに風力発電設備20に設けられてもよい。また、投写制御装置70は、陸上のいずれかの場所(例えば、陸上監視局)に設けられ、映像投写装置21とはネットワークNWを介して接続するようにしてもよい。
【0034】
図2は、航路標識システムSが設置された様子を示す概略の概念図である。
洋上風力発電設備20は、海洋上に複数並べられて設置されている。洋上風力発電設備20のナセルの上部または下方には、映像投写装置21が設置される。船舶SPは、洋上風力発電設備20が設置された場所の近傍であって一定程度の距離が離れた位置を航行する。ここで船舶は、1隻のみではなく、複数の船舶が存在し得る。
レーダ30は、陸上であって沿岸沿いに設置される。レーダ30の近傍には、カメラや、AIS受信装置等も設置されていてもよい。レーダ30は、洋上風力発電設備20のタワーに取り付けられてもよいし、タワーの基部に台を設け、その台の上に設置されてもよい。
施設50aは陸上に設置され、サーバ装置50を収容している。
陸上監視局80は、AIS40、投写制御装置70等が収容される。ここでは、メッセージ管理装置60は、陸上監視局80と施設50とのうちいずれか一方に収容されていてもよいし、別の施設に収容されていてもよい。
【0035】
次に、上述した投写制御装置70の動作について説明する。
図3は、投写制御装置70の動作について説明するフローチャートである。
ここでは、複数の投写制御装置70のうちいずれか1つの投写制御装置70を制御する場合について説明する。他の投写制御装置70についても、それぞれについて同様の処理を実行すればよい。
まず、投写制御装置70の検出部703は、レーダ30またはAIS40から船舶に関するデータを取得し、取得したデータに基づいて船舶の存在を検出する(ステップS101)。
船舶の存在が検出されると、抽出部704は、検出された船舶に応じたメッセージを記憶部702から抽出する(ステップS102)。
距離算出部705は、検出部703によって検出された結果に基づいて、検出された船舶と洋上風力発電設備20との距離を求める(ステップS103)。船舶が複数検出される場合には、距離算出部705は、洋上風力発電設備20から最も近い位置に存在する船舶までの距離を求める。
出力部708は、算出された距離に応じた表示態様を決定する(ステップS104)。ここでは、出力部708は、算出された距離に基づいて、洋上風力発電設備20と船舶との距離が近いほど表示サイズが小さくなるように設定し、船舶と洋上風力発電設備20との距離が遠いほど表示サイズが大きくなるように設定する。また、出力部708は、洋上風力発電設備20と船舶との距離に応じて、台形補正する度合いを決定する。
【0036】
表示態様が決まると、出力部708は、ステップS102において抽出されたメッセージを映像投写装置21に投写させる(ステップS105)。ここでは、出力部708は、ステップS104において定められた表示サイズであって、台形補正の度合いに応じたメッセージを投写させる。これにより、映像投写装置21は、投写制御装置70からの指示に応じてメッセージを投写する。
【0037】
制御部709は、処理を終了するか否かを判定し(ステップS106)、処理を終了しないと判定した場合(ステップS106-NO)には、処理をステップS101に移行し、処理を終了すると判定した場合(ステップS106-YES)には、処理を終了する。
【0038】
図4は、映像投写装置21から映像を投写した場合を示す概念図である。
この図においては、洋上風力発電設備20は、洋上風力発電設備20aと風力発電設備20bとが並べられて設置されている。洋上風力発電設備20aのナセルの下方であって、タワーの上端近傍には、映像投写装置21aが設けられている。映像投写装置21aは、洋上風力発電設備20bのタワーの外周面に対して映像を投写する。すなわち、映像投写装置21aは、隣接して設けられた洋上風力発電設備20bのタワーの外周面をスクリーンの代わりにして映像を投写する。ここでは、映像投写装置21aは、投写された映像の輝度が、投写制御装置70から出力された発光強度情報によって指定された発光強度となるようにして映像を投写する。
投写された映像は、例えば、『侵入禁止』の文字列を含む映像であり、浅瀬や暗礁が存在するために、船舶SPが近付かないように案内するための内容が表示されている。
【0039】
上述したように、洋上風力発電設備20のブレードの先端までの高さが約80~100m程度である場合、そのタワーの直径は、4~5m程度であるため、1つのタワーに対して映像を投写した場合であっても、ある程度の広さを持った領域に映像を投写することができ、洋上風力発電設備20aからある程度離れた位置にいる船舶SPの船員であっても、投写された映像を視認することができる。
なお、ここでは、『侵入禁止』の文字列が投写される場合について説明したが、『岩礁あり』、『浅瀬あり』、『一方通行あり』等のように、案内する内容に応じたメッセージを投写するようにしてもよい。
【0040】
図5は、映像投写装置21から映像を投写した場合を示す他の概念図である。
図4では、映像投写装置21aから1つの映像を1つのタワーに投写する場合について説明したが、複数のタワーに投写されたそれぞれの映像が全体として1つの映像となるように投写してもよい。
例えば、この
図5では、映像投写装置21によって投写された映像の一例を示している。ここでは、洋上風力発電設備20bのタワー20b1には『侵』、洋上風力発電設備20cのタワー20c1には『入』、洋上風力発電設備20dのタワー20d1には『禁』、洋上風力発電設備20eのタワー20e1には『止』の文字が投写される。これにより、洋上風力発電設備20bから洋上風力発電設備20eの4つを利用して1つのメッセージが完成するように投写されている。この場合、1つの映像投写装置21から4つの文字をそれぞれ投写してもよいし、4台の映像投写装置21からそれぞれ1文字ずつ投写するようにしてもよい。
【0041】
図6は、映像投写装置21から映像を投写した場合を示す他の概念図である。
この図において、洋上風力発電設備20aに取り付けられた映像投写装置21aは、当該映像投写装置21aが取り付けられた洋上風力発電設備20aのタワーに映像を投写する。このように、映像投写装置21aは、隣接する洋上風力発電設備20のタワーではなく、自身が取り付けられた洋上風力発電設備20のタワーに映像を投写するようにしてもよい。
【0042】
図7は、映像投写装置21から映像を投写した場合を示す他の概念図である。
この図の例では、映像投写装置21aから海面にメッセージを投写する場合について図示されている。映像投写装置21aが投写するメッセージとしては、例えば、浮標の外観を表す図形である。浮標をメッセージとして投写する場合、浮標のうち、例えば、右舷標識を投写する場合には、赤色によって投写される。また、投写される映像が、左舷標識である場合には、緑色で投写するようにしてもよい。また、投写される映像は、左航路優先標識、右航路優先標識等であってもよいし、方位標識等であってもよい。
【0043】
また、映像投写装置21aから浮標を表す図形を投写する場合、投写された浮標の図形を船舶SPから見たときに、投写された浮標が実際の浮標のように立体的に見えるように投写するようにしてもよい。ここでは、台形補正をしつつメッセージを投写することができるため、図形や文字を投写したとしても、船舶からみてメッセージがゆがまないように投写することができる。
【0044】
また、映像投写装置21aは、浮標を表す図形を投写する場合、実際に物理的に設置される浮標と同じ程度のサイズとなるように、浮標を表す図形を投写するようにしてもよい。
これにより、実際の浮標を設置しなくても、浮標が示す案内内容と同じように、船舶SPに対して通知することができる。
また、浮標の外観と同じような図形を海面に投写するようにしたので、実際の浮標を設置しなくても、浮標が設置されているように船舶SPの船員に認識してもらうことができる。
また、必要なときに浮標の外観を表す図形を投写し、不要なときは投写をしない(投写をオフにする)ようにしてもよい。これにより、実際の浮標の設置や撤去等の作業を実施しなくても、浮標の機能を実現することができる。
【0045】
以上説明した実施形態において、船舶SPとの距離は、レーダ30またはAIS40から得られるデータに基づいて得るようにしたが、例えば、レーダ30の近傍に設置され洋上の船舶を撮影するカメラから得られる画像を解析することで、船舶SPまでの距離を求め、レーダ30またはAIS40から得られるデータを補完し、距離を求めるようにしてもよい。
【0046】
以上説明した実施形態によれば、映像投写装置21からメッセージを海面または洋上風力発電設備20に対して投写させるようにしたので、船舶に対して各種情報を伝えることが可能である。また、映像投写装置21からメッセージを投写するようにしたので、メッセージを表示するにあたり、液晶表示装置を用いることがないため、表示画面が汚損することがなく、表示画面を清掃する必要がない。そのため、液晶表示装置を洋上風力発電設備に対して設置した場合には、液晶表示装置の表示画面を清掃する必要がないため、洋上風力発電設備まで出向く必要がなく、保守の負担を低減することができる。
【0047】
上述した実施形態において、メッセージ管理装置60と投写制御装置70とが別の装置として構成された場合について説明したが、メッセージ管理装置60に投写制御装置70が搭載され1つの装置として構成されてもよい。
【0048】
なお、上述の実施形態において、制御対象の映像投写装置21の近傍における船舶が、レーダ30やAIS40によって複数存在することが測定された場合には、映像投写装置21に最も近い船舶を選択し、その船舶までの距離に基づいて、メッセージを投写するようにしてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態において、通信部701によって海象情報を一定時間毎に取得し、判定部706が、海象情報が得られる毎に、当該海象情報に基づいて、エリアの海面に生じる波が基準レベル以上であるか否かを判定するようにしてもよい。これにより、海面にある程度の波が生じると推定される場合、出力部708は、メッセージを洋上風力発電設備20に対して投写させ、海面に生じる波が生じにくい場合には、メッセージを海面に対して投写させるようにしてもよい。これにより、海面の状況に応じて、メッセージを投写させる対象を切り替えることができる。
【0050】
また、上述の実施形態において、抽出部704は、検出部703によって船舶が検出された場合、検出部703によって検出された船舶の種別を判定し、船舶の種類に応じてメッセージを抽出するようにしてもよい。これにより、メッセージを伝える対象の船舶に応じて、異なるメッセージを投写することができる。
【0051】
上述した実施形態における投写制御装置70をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
20…洋上風力発電設備、20b1,20c1,20d1,20e1…タワー、21,21a,21c…映像投写装置、30…レーダ、50…サーバ装置、60…メッセージ管理装置、70…投写制御装置、80…陸上監視局、701…通信部、702…記憶部、703…検出部、704…抽出部、705…距離算出部、706…判定部、707…選択部、708…出力部、709…制御部