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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086261
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】バランスウエイト
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20240620BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240620BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J175/04
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201297
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛生
(72)【発明者】
【氏名】堀 大祐
(72)【発明者】
【氏名】伴場 健太
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF001
4J040EF111
4J040EF131
4J040EF181
4J040EF281
4J040GA31
4J040HA066
4J040HD30
4J040HD36
4J040JA06
4J040JB01
4J040JB04
4J040KA03
4J040KA14
4J040KA24
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA06
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】(1)常温で固体の湿気硬化型接着剤を使用したバランスウェイト用組成物及びそれから得られるバランスウェイトを提供すること、及び/又は、
(2)バランスウェイト用組成物の調製や塗布・配設に際して自動化が容易であり、固化速度が速く、速硬化性・速接着性に優れており、バランスウェイト用組成物の塗布・配設後直ぐにバランスの釣り合いを測定しても、液だれやズレの発生が抑制でき、次工程への展開が可能で作業性に優れたバランスウェイト用組成物及びそれから得られるバランスウェイトを提供すること。
【解決手段】常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)、タングステン系粉末(B)、を含み、常温で固体であり、比重が8.5未満である、バランスウェイト用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)、
タングステン系粉末(B)、
を含み、
常温で固体であり、比重が8.5以下である、
バランスウェイト用組成物。
【請求項2】
前記常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー又は架橋性ケイ素基含有ポリマーを主成分とする、
請求項1に記載のバランスウェイト用組成物。
【請求項3】
前記常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、120℃における粘度が50Pa・s以下であり、
前記タングステン系粉末(B)は、粒度が0.1~200μmの範囲にある、
請求項1に記載のバランスウェイト用組成物。
【請求項4】
請求項1又は3に記載のバランスウェイト用組成物を回転体のバランスを調整するために回転体の必要部位に適用した、
バランスウェイト。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスウェイト用組成物及びバランスウェイトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回転体のダイナミックバランスによる釣合い調整を行う場合、二通りの方法がある。第一の方法は、局所的に重い部分を削って、全体の釣合い調整を取る方法である。第二の方法は、局所的に軽い部分にバランスウエイトを適用して、全体の釣合い調整を図る手法である。第一の方法に比べて第二の方法の方が簡便でコスト的にも有利である。
不均一な慣性モーメントに起因するアンバランス回転を修正する為に、回転体の周部にバランスウエイトを塗布し、アンバランス量を修正する方法が広く採用されている。
【0003】
バランスウエイト用組成物としては、例えば、エポキシ樹脂からなる接着剤を含むバランスウェイト用組成物が用いられている。このようなバランスウェイト用組成物としては、例えば、東亜電測社製のバランス調整用エポキシ系樹脂組成物「ドリームウエイト」が広く知られている。
従来は、回転体に対しておもり(バランスウェイト)を付着させる位置をあらかじめ計測し、バランスウエイト用エポキシ系樹脂組成物をその部分に付着させ、常温硬化及び/又は加熱硬化することで、回転体のバランスを調整していた。
【0004】
特許文献1~3には、回転体のアンバランス回転を修正するために用いるバランスウエイトが開示されている。これらのバランスウェイト用組成物は、主剤と硬化剤を混合し反応硬化させる二液混合タイプが主流であり、主剤と硬化剤の二液を混合してから使用するまでの時間(可使時間)が制約され、可使時間内に対象物にバランスウェイト用組成物を塗布しなければならなかった。また、バランスウェイト用組成物の調製に際しては、パテ状の高粘度であるため、二液の混合及び塗布を手作業で行わざるを得ず、自動化が困難で作業性に劣るものであった。
特許文献4、5には、タングステンを主成分とする金属粉と、常温で粘度が1Pa・s~50Pa・sでチクソ性を有する一液硬化型接着剤を含むバランスウェイト用組成物が開示されている。このバランスウェイト用組成物は、管理や取扱いが容易で作業性に優れ、更には塗布の自動化が容易であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-298929号公報
【特許文献2】特開2001-298925号公報
【特許文献3】特開平3-107646号公報
【特許文献4】特開2004-366575号公報
【特許文献5】特開2005-121166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のバランスウェイト用組成物は、バランスウェイト用組成物の調製や塗布・配設に際して自動化が困難であり、作業性に劣るものであった。また、常温で液体の接着剤を使用した場合には、塗布・配設の直後にバランスの釣り合いを測定すると、バランスウェイト用組成物が固化していないため、液だれや塗布・配設位置からのズレが生じるおそれがあり、次工程への展開は固化した後でなければならず、作業性に劣るものであった。
本発明が解決しようとする課題は、
(1)常温で固体の湿気硬化型接着剤を使用したバランスウェイト用組成物及びそれから得られるバランスウェイトを提供すること、及び/又は、
(2)バランスウェイト用組成物の調製や塗布・配設に際して自動化が容易であり、固化速度が速く、速硬化性・速接着性に優れており、バランスウェイト用組成物の塗布・配設後直ぐにバランスの釣り合いを測定しても、液だれやズレの発生が抑制でき、次工程への展開が可能で作業性に優れたバランスウェイト用組成物及びそれから得られるバランスウェイトを提供すること、
である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の構成を有するバランスウエイトにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
項1:常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)、
タングステン系粉末(B)、
を含み、常温で固体であり、比重が8.5以下である、
バランスウェイト用組成物。
項2:前記常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー又は架橋性ケイ素基含有ポリマーを主成分とする、
項1に記載のバランスウェイト用組成物。
項3:前記常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、120℃における粘度が50Pa・s以下であり、
前記タングステン系粉末(B)は、粒度が0.1~200μmの範囲にある、
項1又は2に記載のバランスウェイト用組成物。
項4:項1~3のいずれか1項に記載のバランスウェイト用組成物を回転体のバランスを調整するために回転体の必要部位に適用した、バランスウェイト。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、常温で固体の湿気硬化型接着剤を使用したバランスウェイト用組成物及びそれから得られるバランスウェイトが提供される。
また、本発明により、バランスウェイト用組成物の調製や塗布・配設に際して自動化が容易であり、固化速度が速く、速硬化性・速接着性に優れており、バランスウェイト用組成物の塗布・配設後直ぐにバランスの釣り合いを測定しても、液だれやズレの発生が抑制でき、次工程への展開が可能で作業性に優れたバランスウェイト用組成物及びそれから得られるバランスウェイトが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のバランスウェイト用組成物は、常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)及びタングステン系粉末(B)を含み、常温で固体であり、比重が8.5以下である。
本発明のバランスウェイトは、前記バランスウェイト用組成物を回転体のバランスを調整するために回転体の必要部位に適用したものである。
本発明者らは、常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)と、タングステン系粉末(B)と、を含む常温で固体の湿気硬化型接着剤をバランスウェイトが、
(i)使用時に加熱溶融すればバランスウェイトを回転体に容易に塗布することができること、
(ii)塗布後速やかに湿気硬化型接着剤が固化するため、速やかに回転体全体のバランス(釣合い)を確認することができること、
(iii)空気中の湿気(水分)により湿気硬化型接着剤の架橋反応が進行し、回転体との密着性を十分に向上できること、
を見出した。以下、詳細に説明する。
【0010】
[用語の定義・意義]
本明細書において用いられる用語の定義・意義は、以下のとおりである。
「常温」若しくは「室温」は、23℃の温度である。
「常温で固体状の湿気硬化型接着剤」は、湿気硬化型接着剤が結晶性、部分的に結晶性又はガラス状非晶質であって、環球法による軟化点又は融点が23℃を超える湿気硬化型接着剤であることを意味する。
「融点」は、例えば、動的示差熱量測定(示差走査型熱量測定:DSC)によって、加熱操作中に測定した曲線の最大値であって、固体状態から液体状態に転移する温度を意味する。
「湿気硬化型接着剤」は、水又は水蒸気と化学反応することで硬化する接着剤を意味する。
【0011】
[バランスウェイト用組成物]
<常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)>
本発明のバランスウェイト用組成物の構成成分となる「常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)」は、常温(23℃)標準気圧(1013.25hPa)で固体状(環球法による軟化点又は融点が23℃を超える)であり、水又は水蒸気と化学反応することで硬化する接着剤である。
「常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)」としては、例えば、「反応性ホットメルト接着剤」、「一液型湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤」と称される接着剤を用いることができる。
【0012】
常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)としては、例えば、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーAaを主成分とする接着剤、架橋性ケイ素基含有ポリマーAbを主成分とする接着剤が挙げられる。
【0013】
(イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーAa)
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーAaは、イソシアネート基を有するプレポリマーであれば、製造方法等は特に限定されない。例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を、ポリイソシアネート成分が過剰となるように反応させて得ることができる。例えば、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基とポリオール成分の水酸基とのモル比であるイソシアネート基/水酸基は、1.0超、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上であり、例えば2.5以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.1以下である。イソシアネート基/水酸基は、良好な塗工性とするために1.2以上であることが好ましく、良好な硬化性とするために2.5以下であることが好ましい。
【0014】
{ポリイソシアネート成分}
ポリイソシアネート成分は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されない。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの誘導体等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0015】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基を有するものが挙げられる。例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル、リジンジイソシアネート(2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル)等の脂肪族ジイソシアネート;1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0016】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、炭素数3~20の脂環族炭化水素基を有するものが挙げられる。例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4-メチル-1,3-シ
クロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添キシリレンジイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0017】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物(XDI)、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0018】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-又はp-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-TDI及び2,6-TDIの混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)等の芳香族ポリイソシアネート;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0019】
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン等が挙げられる。
【0020】
これらのうち、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンイソシアネート等からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。加熱溶融させて用いるホットメルト接着剤とする観点から、加熱時の蒸気圧が低いジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0021】
{ポリオール}
ポリオール成分は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。ポリオール成分は、低分子量ポリオールであっても、高分子量ポリオール(ポリマーポリオール)のいずれであってもよい。
本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤を構成するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーAaとするためには、ポリオール成分中に、少なくとも2個の水酸基を有するとともに常温で固体、特に少なくとも部分的に結晶性の固体である少なくとも1種のポリエステルポリオールを含有することが好ましい。これにより、塗布後速やかに湿気硬化型接着剤を固化させることが可能となり、速やかに回転体全体のバランス(釣合い)を確認することが可能となる。
本発明においては、ポリオール成分として、常温で固体のアクリルポリオール及び/又は常温で固体のポリカーボネートポリオール等を用いることもできる。さらに、塗布性の向上や湿気硬化後の可撓性を付与するために、ポリオール成分として、常温で液体のポリオールであるポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール等からなる群より選ばれる1種以上を用いることもできる。
【0022】
-常温で固体のポリエステルポリオール-
常温で固体のポリエステルポリオールは、1分子中に水酸基を2つ以上とポリエステル繰返し単位を有するポリオールである。
ポリエステルポリオールは、例えば、水酸基を2つ以上有するポリオール成分とカルボキシル基又はその反応性誘導体を2つ以上有するポリカルボン酸成分を、ポリオール成分過剰で反応させることで得ることができる。また、ポリエステルポリオールをジイソシアネートで連結して得ることができる。また、例えば1,6-ヘキサンジオール等の2官能性のスターター(starter)分子を用いて、ポリカプロラクトン誘導体等の環状ポリエステルを開館重合して得ることができる。
【0023】
水酸基を2つ以上、好ましくは2つ又は3つ、より好ましくは2つ有するポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチルプロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素原子数が2~16個の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のエーテル結合を有する脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール系化合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、γ-ブチロラクトンやε-カプロラクトン等を開環付加反応させて得られる芳香族ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の脂肪族トリオール;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、得られたポリエステルポリオールの結晶性を高めることができることから、炭素数2~14、好ましくは炭素数2~12の直鎖脂肪族ジオールからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0024】
カルボキシル基又はその反応性誘導体を2つ以上有するポリカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸等の炭素原子数2以上16以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の炭素数が8以上の芳香族ジカルボン酸;これらの反応性誘導体(酸ハロゲン化物、酸無水物、酸エステル等)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、得られたポリエステルポリオールの結晶性を高めることができることから、炭素数6~14、好ましくは8~12の直鎖脂肪族ジカルボン酸又はこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0025】
{常温で固体のアクリルポリオール}
常温で固体のアクリルポリオールとしては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーや、アクリル系ポリマーの末端に水酸基を導入したものが挙げられる。
アクリルポリオールを含有することで、バランスウェイト用組成物の固化時間の調整や湿気硬化後の硬化物の強靭化を付与することができる。
【0026】
{常温で固体のポリカーボネートポリオール}
常温で固体のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、ジオールとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールを用いることができる。これにより、バランスウェイト用組成物の硬化物の耐加水分解性及び耐湿接着性を向上させることができる。
【0027】
炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0028】
ジオールとしては、例えば、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖脂肪族ジオール;ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐鎖脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール;ビスフェノールA等の芳香族ジオール;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ここで、1種類の直鎖脂肪族ジオールのみを有するポリカーボネートポリオールは、常温で固体であり、結晶性を有する。本発明においては、1,6-ヘキサンジオールのみを有するポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0029】
{常温で液体のポリオール}
本発明においては、ポリオール成分として、必要に応じて、常温で液体のポリオールを含んでいてもよい。常温で液体のポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0030】
-ポリエーテルポリオール-
常温で液体のポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、特に限定されない。例えば500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、例えば30,000以下、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下である。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、ジオールであることが好ましい。
また、ポリエーテルポリオールとしては、2種以上のポリエーテルポリオールを共重合した化合物を用いてもよい。例えば、ポリオキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合ジオールが挙げられる。係るジオールは、末端基が1級水酸基で、イソシアネート基との反応性が良いことから好ましい。ポリオキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合ジオールは、エチレンオキサイドのコンテントが5重量%以上であることが好ましく、90重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、20重量%以下が更に好ましい。
【0032】
-ポリエステルポリオール-
常温で液体のポリエステルポリオールとしては、芳香族ポリステルポリオールや脂環式ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエスエルポリオール等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。例えば、常温で液体の芳香族ポリエステルポリオールを混合して用いることで、接着強さの優れた常温で固体の湿気硬化型接着剤とすることができる。
【0033】
常温で液体のポリエステルポリオールは、例えば、2,000以上5,000以下の数平均分子量を有し30℃以上のガラス転移温度を有する芳香族ポリエステルポリオールと、400以上3,500以下の数平均分子量を有し20℃以下のガラス転移温度を有する芳香族ポリエステルポリオールとの混合物を用いてもよい。
【0034】
ポリエステルポリオールのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されない。接着性をより一層向上できる観点から、好ましくは20℃以下であり、好ましくは-30℃以上である。
【0035】
-ポリカーボネートポリオール-
常温で液体のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコール成分が、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールと1,9-ノナンジオールとからなる共重合ポリカーボネートジオール等が挙げられる。これら常温で液体のポリカーボネートポリオールを用いることで、本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤の硬化被膜の可撓性を向上させることができる。
【0036】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤の接着性をより一層向上できる点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、5,000以下が好ましく、4,000以下がより好ましい。
【0037】
ポリカーボネートポリオールのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されない。接着性をより一層向上できる観点から、好ましくは20℃以下であり、好ましくは-30℃以上である。
【0038】
(架橋性ケイ素基含有ポリマーAb)
本発明に係る架橋性ケイ素基含有ポリマーAbは、分子中に架橋性ケイ素基を含有するポリマーであれば、特に限定されない。例えば、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーAaのイソシアネート基と、イソシアネート基と反応する官能基及び架橋性ケイ素基を有する化合物を反応させることによって得ることができる。また、イソシアネート基と反応する官能基を有するポリマー又は化合物と、イソシアネート基及び架橋性ケイ素基を有するポリマー又は化合物を反応させることによって得ることができる。ここで、イソシアネート基と反応する官能基としては、水酸基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素含有基であり、架橋性ケイ素基は、アルコキシシリル基、シラノール基等である。
【0039】
イソシアネート基と反応する官能基及び架橋性ケイ素基を有する化合物としては、例えば、アミノ基、水酸基、メルカプト基等のイソシアネート基と反応する官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0040】
イソシアネート基と反応する官能基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;2-エトキシ-4(5)-(2-トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサン-1-オール等の水酸基含有シラン;3-アミノプロピルトリメトキシシラン等の一級アミノシラン;N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等の二級アミノシラン;N-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノコハク酸ジメチル及びジエチルエステル等の一級アミノシランのマイケル型付加物;ケイ素に結合したメトキシ基の代わりにエトキシ又はイソプロポキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基を有する上述のアミノシランの類似体;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0041】
本発明においては、二級アミノシランを用いることが好ましい。これは、一級アミノシラン等と比べて比較的緩やかにイソシアネート基と反応することから、目的とする化合物を得やすいためである。
【0042】
本発明に係る架橋性ケイ素基含有ポリマーAbは、上記ポリマー以外にも例えば、イソシアネート基を有するポリマー又は化合物と、イソシアネート基と反応する官能基と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を反応させることによって得られる架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体や、イソシアネート基及び架橋性ケイ素基を有するポリマー又は化合物と、イソシアネート基と反応する官能基を有する(メタ)アクリル系重合体を反応させることによって得られる架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体等の1種以上が挙げられる。ここで、イソシアネート基と反応する官能基としては、水酸基、アミノ基、メルカプト基等の活性水素含有基であり、架橋性ケイ素基は、アルコキシシリル基、シラノール基等である。
【0043】
イソシアネート基と反応する官能基と架橋性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体及びイソシアネート基と反応する官能基を有する(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、水酸基等のイソシアネート基と反応する官能基を有するモノマーを含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル共重合体を用いることができる。特に常温(23℃)で固体である、末端に水酸基を有する架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体を用いることが好ましい。これは、常温で固体の(メタ)アクリル酸メチル系共重合体等の「ハードセグメント」とポリエーテルや結晶性ポリエステル等の「ソフトセグメント」により構成された「(ハードセグメント)―(ソフトセグメント)―(ハードセグメント)」型のブロックポリマー構造を有しており、強靭性を向上させることができる。また、アルコキシシリル基等の架橋性ケイ素基を含有していることで、架橋反応が進行し、接着性や耐熱性を更に向上させることができる。
【0044】
架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を1つ有するものであることが好ましい。水酸基を1つだけ有する架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体を用いることで、常温で固体の湿気硬化型接着剤のゲル化を抑制できる。ここで、架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体への水酸基の導入方法は、とくに限定されない。例えば、以下の方法を挙げることができる。なお、水酸基は末端以外に導入しても良い。
(1)水酸基を有する不飽和化合物を共重合する。
(2)水酸基を有する開始剤や連鎖移動剤を用いて重合する。
(3)水酸基を有するチオール化合物を用いた反応や、水酸基を有するチオール化合物、及びメタロセン化合物を用いて重合する。
なお、(3)の方法は、特許第5222467号に記載の方法が利用できる。
水酸基の導入方法としては水酸基を一個導入できる観点からは、水酸基を有するチオール化合物、及びメタロセン化合物を用いて重合する方法が好ましい。水酸基を有するチオール化合物としては、例えば、2-メルカプトエタノール等が挙げられる。
【0045】
架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量は、とくに限定されない。例えば1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上であり、例えば50,000以下、好ましくは30,000以下、より好ましくは15,000以下である。
【0046】
架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体の構成モノマーである水酸基等のイソシアネート基と反応する官能基を有するモノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。そのような化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等のモノヒドロキシアクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のポリヒドロキシアクリレート等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシアクリレートが好ましい。また、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体一分子あたり、水酸基が平均して0.5個以上3個以下になる量が好ましく、1.1個以上2個以下になる量がより好ましい。
【0047】
本発明において、架橋性ケイ素基含有ポリマーAbを調製する際には、イソシアネート基と反応する官能基を1個有し架橋性ケイ素基を有さない化合物を用いることで、架橋性ケイ素基含有ポリマーAbのシリル基数を調整(減少)することができる。これにより、架橋性ケイ素基含有ポリマーAbが硬化した後の架橋密度を調整することができ、その結果、硬化被膜の柔軟性、及び/又は伸びを調整することができる。ここで、イソシアネート基と反応する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられ、水酸基、アミノ基が好ましく、常温で固体の湿気硬化型接着剤を安定的に製造する観点からは、2級アミノ基がより好ましい。
【0048】
イソシアネート基と反応する官能基を1個有し架橋性ケイ素基を有さない化合物としては、例えば、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の直鎖又は分岐のモノアルキルアルコール;プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ポリオキシプロピレンモノオール等のエーテルアルコール又はエステルアルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等のモノ一級アミン;ジブチルアミン、ブチルオクチルアミン、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等のモノ二級アミン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0049】
架橋性ケイ素基含有ポリマーAbの1分子中の架橋性ケイ素基は、硬化性の点で、平均して1.0個以上が好ましく、1.2個以上がより好ましく、1.4個以上が更に好ましく、1.6個以上が特に好ましい。物性の観点から、平均して4.0個以下が好ましく、3.0個以下がより好ましく、2.5個以下が更に好ましく、2.0個以下が特に好ましい。
【0050】
本発明に係る架橋性ケイ素基含有ポリマーAbは、常温で固体の湿気硬化型(メタ)アクリル系化合物を用いることもできる。例えば、架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体が好ましく用いられる。
【0051】
架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度は、例えば-20℃以上、好ましくは-10℃以上であり、例えば120℃以下、好ましくは100℃以下である。
架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体の架橋性ケイ素基は、例えば、ケイ素原子に結合したアルコキシ基等の架橋性基を有し、シラノール縮合反応により架橋することができる基である。架橋性ケイ素基としては、下記一般式(I)で表される基が挙げられる。
【0052】
【化1】
【0053】
一般式(I)中、R11は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20の置換アルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基を示し、R11が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Xはアルコキシ基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2、又は3を示す。一般式(I)の架橋性ケイ素基においてaが2又は3である場合が好ましい。aが3の場合、aが2の場合よりも硬化速度が大きくなる。一般式(I)で示される架橋性ケイ素基の場合、硬化性を考慮するとaは2以上が好ましい。
【0054】
11の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシメチル基等の置換アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。これらの中ではメチル基が好ましい。
【0055】
Xで示されるアルコキシ基としては、特に限定されず、従来公知のアルコキシ基であればよい。アルコキシ基の中では炭素数の少ない基の方が反応性は高く、メトキシ基>エトキシ基>プロポキシ基の順のように炭素数が多くなる程に反応性が低くなる。目的や用途に応じて選択できるが、通常、メトキシ基やエトキシ基が用いられる。
具体的に、架橋性ケイ素基としては、反応性が高い点からアルコキシシルル基、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基が更に好ましい。柔軟性を有する硬化物を要求される場合は、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が好ましい。
架橋性ケイ素基は単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。架橋性ケイ素基は、主鎖若しくは側鎖、又はいずれにも存在していてよい。
【0056】
架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体の重合法としては、ラジカル重合方法を用いることができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の熱重合開始剤を用いる通常の溶液重合方法や塊状重合方法を用いることができる。また、光重合開始剤を用い、光又は放射線を照射して重合する方法も用いることができる。ラジカル共重合においては、分子量を調節するために、例えば、ラウリルメルカプタンや3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の連鎖移動剤を用いてもよい。また、熱重合開始剤を用いるラジカル重合方法を用いることができ、係る方法で本発明に係る架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体の重合体を容易に得ることができる。なお、特開2000-086998号公報に記載されているようなリビングラジカル重合法等、他の重合方法を用いてもよい。
【0057】
常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)としては、バランスウェイトにした際の加熱時の増粘がしにくいという観点から、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(a1)よりも架橋性ケイ素基含有ポリマー(a2)の方が好ましい。
【0058】
(シラン系接着付与剤)
本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、シラン系接着付与剤を更に含有していてもよい。シラン系接着付与剤は、湿気硬化により、接着付与剤効果を発現し、湿気硬化後の回転体との接着性の向上や耐水接着性、及び耐熱接着性を向上させることができる。
【0059】
シラン系接着付与剤の架橋性ケイ素基は、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシシリル基であることが加水分解速度の観点から好ましい。アルコキシシリル基のアルコキシ基の個数は、2個以上が好ましく、3個がより好ましい。また、シラン系接着付与剤は、官能基を有するモノであってもよい。官能基としては、アミノ基、エポキシ基等が接着性の観点から好ましく、アミノ基がより好ましい。
【0060】
シラン系接着付与剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ビス-(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-[2-(ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びアミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン:N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等のケチミン系シラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン;ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリ(β-メトキシシラン)等のビニルシラン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン;3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等の尿素シラン;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン;等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0061】
また、シラン系接着付与剤としては、上記のアミノシランとエポキシシランとの反応物、アミノシランとイソシアネートシランとの反応物、アミノシランと(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランとの反応物、アミノシランとエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等)との反応物、アミノシランとポリイソシアネートとの反応物、アミノシランとポリアクリレートとの反応物、上記シラン類を部分的に縮合した縮合体(好ましくは上記のアミノシラン、イソシアネートシラン、アミノシラン反応物、及び反応物の混合物を部分的に縮合したアミノシラン縮合体)、これらを変性した誘導体、アミノ変性シリルポリマー、架橋性ケイ素基含有アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、架橋性ケイ素基含有アミノシリコーン、架橋性ケイ素基含有ポリエステル、光アミノシラン発生剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いてもよい。
【0062】
シラン系接着付与剤の分子量は、特に限定されない。例えば、分子量が320以上、好ましくは400以上、より好ましくは450以上である場合、常温で固体の湿気硬化型接着剤を溶融させた際に、揮散しにくいため好ましい。接着性及びホットメルト接着剤の溶融時に揮散しにくいことより、ビス-シリルアミノシラン、イソシアヌレートシラン、アミノシラン反応物、アミノシラン縮合体等のシリル基を2個以上有するシラン系接着付与剤が好ましく、アミノシラン反応物、アミノシラン縮合体がより好ましく、アミノシラン反応物が最も好ましい。なお、アミノシラン反応物は混合工程時に反応材料を別途添加して反応させてもよい。
【0063】
シラン系接着付与剤は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。シラン系接着付与剤の使用量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーや架橋性ケイ素基含有ポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、1質量部以上が特に好ましく、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。0.01質量部未満であると、接着性付与効果や硬化触媒としての効果が不十分であり、一方、20質量部を超えると、添加量に応じた触媒としての作用が顕著でなく経済的に好ましくない。
【0064】
(架橋触媒)
本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、架橋触媒を含んでいてもよい。架橋触媒としては、特に架橋性ケイ素基含有ポリマーの架橋触媒(シラノール触媒)を用いることができる。例えば、チタン酸エステル、4価の有機錫化合物、オクチル酸錫等の2価の有機錫化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、ビスマス化合物、一級・二級アミン系化合物、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジモルホリノジエチルエーテル、N,N-ジメチルドデシルアミン、ビス-(N,N’-ジメチルアミノエチル)エーテル等の三級アミン系化合物、光潜在性アミン化合物(光塩基発生剤)、1,3-ジアザビシクロ(5,4,6)ウンデセン-7等のアミジン化合物若しくはそれらのカルボン酸塩、フッ素化ポリマー等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0065】
フッ素化ポリマーとしては、例えば、Si-F結合を有する有機重合体が挙げられ、国際公開第2015/088021号に記載のフルオロシリル基を有する有機重合体等が挙げられる。フッ素化ポリマーとしては、主鎖又は側鎖の末端にジフルオロメチルシリル基、ジフルオロメトキシシリル基、ジフルオロエトキシシリル基、トリフルオロシリル基等のフルオロシリル基を有する重合体が好ましい。
フッ素化ポリマーの主鎖骨格としては、後述する液状高分子化合物において説明する重合体を用いることができ、これらの重合体の中では、ポリオキシアルキレン系重合体、及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系重合体が取り扱い易く、貼り合わせ可能時間を長くする効果が大きいため好ましい。フッ素化ポリマーの数平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算において3,000以上が好ましく、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下が特に好ましい。
【0066】
本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)が架橋触媒を含む場合、架橋触媒の含有量は、架橋性ケイ素基含有ポリマー100質量部に対して、例えば0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、例えば10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0067】
(改質樹脂)
本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、固化時間の調整、溶融粘度の低減、各種物性の改良・調整等のための改質樹脂を含んでいてもよい。
なお、改質樹脂は対象の樹脂を構成するセグメントの種類によって異なる機能を発揮する。すなわち、改質樹脂は、主としてハードセグメントで構成される樹脂に添加されると改質樹脂として物性調整の機能を発揮し、主としてソフトセグメントで構成される樹脂に添加されると粘着付与樹脂としての機能を発揮する。特に、架橋性ケイ素基含有ポリマーの骨格は主としてハードセグメントで構成されているので、下記に例示する樹脂は改質樹脂として作用する。
【0068】
改質樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペン類とフェノール類とを共重合させたテルペン-フェノール樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロック共重合体、スチレン系ブロック共重合体の水素添加物、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、DCPD樹脂等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0069】
本発明においては、スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物が好ましい。スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0070】
改質樹脂としては、架橋性ケイ素基含有ポリマーとの相溶性がよく、接着剤の加熱安定性がよい観点からテルペンフェノール樹脂や芳香族系石油樹脂が好ましい。芳香族系石油樹脂としては、芳香族系スチレン樹脂、脂肪族-芳香族共重合体系スチレン樹脂が好ましく、テルペンフェノール樹脂、脂肪族-芳香族共重合体系スチレン樹脂がより好ましい。また、VOC及びフォギングの観点からは、脂肪族-芳香族共重合体系スチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0071】
(液状高分子化合物)
本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、溶融時の粘度調整、固化時間の調整のための液状高分子化合物を含んでいてもよい。液状高分子化合物は、常温(23℃)における粘度(B型粘度計)が200Pa・s以下、好ましくは150Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下のものである。
【0072】
液状高分子化合物の主鎖骨格としては、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;エチレン-プロピレン系重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、又は、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ポリアミド系重合体;ポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体等が挙げられる。これらの骨格は、2種類以上がブロック若しくはランダムに含まれていてもよい。これらの重合体の中では、ポリオキシアルキレン系重合体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系重合体が取り扱い易い観点で好ましい。
液状高分子化合物はバランスウェイトを塗布後、湿気硬化することで耐熱性が付与される観点より、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーや架橋性ケイ素基含有ポリマーのような湿気硬化型の官能基を有していても良い。
【0073】
架橋性ケイ素基含有ポリマーの架橋性ケイ素基は、ポリマーの主鎖若しくは側鎖、又は双方に結合していてもよい。硬化物の引張特性等の硬化物の物性が優れる観点からは、架橋性ケイ素基が分子鎖末端に存在することが好ましい。
架橋性ケイ素基含有ポリマーは、常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)の固化時間の調整や溶融粘度の低減を目的として混合され、物性を変性及び/又は調整する機能を有する。
【0074】
(その他の成分)
本発明の常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は、充填剤、希釈剤、安定剤等の「その他の成分」を含有していてもよい。
【0075】
{充填剤}
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、カーボンブラック、溶融シリカ、沈降性シリカ、けいそう土、白土、カオリン、クレー、タルク、木粉、クルミ殻粉、もみ殻粉、無水ケイ酸、石英粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、鉄粉末、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の無機充填剤や、パルプ、木綿チップ等の木質充填剤、粉末ゴム、再生ゴム、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂の微粉末、ポリエチレン等の中空体等の有機充填剤が挙げられる。充填剤は、1種類のみを添加してもよく、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0076】
{希釈剤}
希釈剤を添加することにより、溶融時の粘度等の物性を調製できる。希釈剤は、接着剤の使用温度(塗布、溶融)が高温であることから、安全性(火災、健康)の観点を考慮し、沸点が150℃以上の溶剤(希釈剤)を用いることが好ましい。希釈剤の沸点は、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、300℃以上が更に好ましい。
本発明においては、沸点120℃以下の希釈剤を用いないことがよく、沸点150℃以下の希釈剤を用いないことが好ましく、沸点200℃以下の希釈剤を用いないことがより好ましい。
【0077】
希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アタクチックポリプロピレン等の合成ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス等が挙げられる。これらの希釈剤は単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。
【0078】
{安定剤}
安定剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
酸化防止剤を含有する場合には、バランスウェイト用組成物の硬化物の耐候性、耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
光安定剤を含有する場合には、バランスウェイト用組成物の硬化物の光酸化劣化を防止することができる。光安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。特にヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
光安定剤を含有する場合には、バランスウェイト用組成物の硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤、サリチレート系光安定剤、置換トリル系光安定剤及び金属キレート系化合物等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。特にベンゾトリアゾール系光安定剤が好ましい。
安定剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とを併用することが好ましい。
【0079】
<タングステン系粉末(B)>
タングステン系粉末(B)としては、タングステンを主成分とする粉末であれば特に限定されない。例えば、タングステン粉末、タングステン合金粉末、タングステン化合物粉末からなる群より選ばれる1種以上が用いられる。
タングステン合金粉末としては、例えば、タングステンを主成分とし、鉄、銅、ニッケル等からなる群より選ばれる1種以上を含むタングステン合金粉末の1種以上が挙げられる。
タングステン化合物粉末としては、例えば、タングステンカーバイド(炭化タングステン)、酸化タングステン、タングステンを主成分とするセラミックス等からなる群からなる1種以上が挙げられる。
【0080】
本発明において、タングステン系粉末(B)の粒度は、特に限定されない。例えば0.1μm以上、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上であり、例えば100.0μm以下、好ましくは80.0μm以下、より好ましくは60.0μm以下である。
タングステン系粉末(B)の粒度が0.05μm未満の場合は、バランスウェイト用組成物の加熱溶融時の粘度が高くなりやすく、作業性が低下するおそれがある。タングステン系粉末(B)の粒度が100μmを超える場合は、バランスウェイト用組成物の加熱溶融時にタングステン系粉末(B)の沈降が起きやすくなるおそれがある。
本発明においては、タングステン系粒子(B)として、粒度0.1~100μmの範囲内において、粒度の異なるタングステン系粒子(B)を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
本発明において、タングステン系粉末の比重は、特に限定されない。例えば10.0以上、好ましくは11.0以上、より好ましくは13.0以上であり、例えば20.5以下、好ましくは20.0以下、より好ましくはタングステンの比重(19.30)以下である。
【0082】
タングステン系粉末のうち、タングステン粉の市販品としては、例えば、日本新金属社製の「W-H」(粒度:0.45~0.59μm)、「W-6」(粒度:8.0~16.0μm)、アライドマテリアル社製の「A20」(粒度:0.5~0.6μm)、「W-U250」(粒度:23~28μm)等が挙げられる。本発明においては、これらの1種以上を用いることができる。
【0083】
タングステン系粉末のうち、タングステン化合物粉末の市販品としては、例えば、タングステンカーバイド粉末が挙げられる。タングステンカーバイド粉末の市販品としては、例えば、日本新金属社製の「WC-10」(粒度:0.70~1.19μm)、「WC-90」(粒度:7.5~12.0μm)、アライドマテリアル社製の「WC08」(粒度:0.7~0.9μm)、「WC60」(粒度:5.0~7.1μm)等が挙げられる。本発明においては、これらの1種以上を用いることができる。
【0084】
<バランスウェイト用組成物の調製法>
本発明に係るバランスウェイトは、例えば、常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)の製造時にタングステン(B)を混合し、バランスウェイトを調整することができる。
【0085】
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤の調製法には特に限定はなく、例えば、上記した成分を所定の配合比で配合し、ミキサー、ロール、ニーダー等を用いて常温又は加熱下で混練することや、所定の溶剤を少量用いて各成分を溶解させ、混合する等の通常の方法を用いることができる。
【0086】
本発明に係るバランスウェイトの120℃における粘度は、200Pa・s以下が好ましく、180Pa・s以下がより好ましく、160Pa・s以下が更に好ましい。120℃における粘度が200Pa・sを超えると塗出性や作業性が低下し、若しくは塗出性や作業性を確保するためにより高い温度で塗布する必要が生じる。その場合、耐熱性の低い基材等への使用が困難になる等、使用範囲が限定される。
【0087】
[バランスウェイト]
本発明に係るバランスウェイトの比重は、8.5以下である。バランスウェイトの比重の下限は、例えば2.0以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上である。バランスウェイトの比重の上限は、塗出性、作業性等の観点から、8.5以下であり、好ましくは8.3以下、より好ましく8.2以下、さらに好ましくは8.0以下である。 本発明のバランスウェイトは、回転体、例えばファンモータのインペラなど回転体、特に、ブラシレスモータのロータに付着させて、バランスを調整するために好適に用いられる。
例えば、回転軸を介してファンモータの本体の中央に取り付けられた軸受により回転可能に支持されているブラシレスモータであるファンモータのインペラ(ロータ)に用いるバランスウェイトとして好適に用いられる。
インペラは、組立てばらつき、部品の寸法ばらつき、製造ばらつき等に起因して、回転軸を中心とした質量分布が均一でなく、アンバランスな場合もある。このような場合に、本発明のバランスウェイトを適用して、アンバランスを解消することができる。
【0088】
本発明に係るバランスウェイトは、常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)とタングステン系粒子を含むバランスウェイト用組成物を硬化することで得られる。
バランスウェイトは、湿気硬化後の比重が4.0以上となるように調整されることで、回転体の不釣り合いの調整材として好適に使用でき、塗布直後にバランスウェイト用組成物が瞬時に固化することで、全体の釣合いを測定できる。更に空気中の湿気によって架橋反応が進行することで十分に回転体との密着性を向上させることができる。
【0089】
本発明においては、タングステン系粒子(B)として、比重が10.0以上で粒度が0.1~100μmの範囲にあるタングステン系粒子(B)を用いることが好ましい。
【0090】
本発明に係るバランスウェイトは、常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)が常温で固体状であるために、加熱溶融して回転体へと塗布した直後に接着剤が軟化点以下若しくは融点以下になることで固化するため、回転体全体の釣合いを測定することができる。
【0091】
本発明に係るバランスウェイトに用いる常温で固体の湿気硬化型接着剤(A)は加熱溶融時の粘度が低いことが重要である。例えば120℃加熱時の粘度が100Pa・s以下が好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、40Pa・s以下が更に好ましい。
【0092】
<常温で固体の湿気硬化型接着剤を用いたバランスウェイトの施工方法>
本発明に係るバランスウェイトの施工方法としては、公知の各種の反応性ホットメルト接着剤と同様の施工方法を採用できる。例えば、施工方法は、本発明に係るバランスウェイトを50℃~130℃の範囲で温度に加熱する工程(加熱工程)と、加熱したバランスウェイトを回転体のバランス調整箇所に塗布する工程(塗布工程)とを備える。
【0093】
本発明に係る常温で固体の湿気硬化型接着剤を用いたバランスウェイトは、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーや架橋性ケイ素基含有ポリマーを主成分とする常温で固体の湿気硬化型接着剤を含んで構成されるので、塗布直後にバランスウェイトが固化するため、回転体に塗布したバランスウェイトの液だれやズレが生じない。また、湿気硬化型接着剤を使用しているため、湿気硬化後の硬化物に接着性や耐熱性が付与される。
【実施例0094】
以下に実施例を挙げて更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は例示であり、限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。特に規定されていない場合には、各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0095】
[合成例1]
メチルメタクリレート70部、2-エチルヘキシルメタクリレート30部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン8部、金属触媒としてチタノセンジクロライド0.1部、及び有機溶剤として酢酸エチル40部を反応容器に入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら80℃に加熱した。次いで、メルカプトエタノール3.4部を添加し、反応容器内の温度を80℃に維持できるように加熱及び/又は冷却により温度調整しつつ16時間反応させた。16時間反応後、反応物の温度を常温(23℃)に戻し、重合を終了させ、水酸基を有する架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(a1)の溶液(不揮発分66質量%)を得た。
ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、水酸基を有する架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(a1)の数平均分子量は、4,755であった。
【0096】
[合成例2]
ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物(三井化学SKC社製、「EDL-S101」(数平均分子量7,000))100部、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール系結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(豊国製油社製、「HS2H-201AP」(数平均分子量2,000))84.7部、及びアジピン酸/1,6-ヘキサンジオール系結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(豊国製油社製、「HS2H-451A」(数平均分子量4,500))31.9部を、100℃で1時間溶融混合した後に減圧脱水してポリオール混合物を得た。得られたポリオール混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー社製、「ミリオネートMT」)23.9部を添加し、窒素雰囲気下、撹拌しながら100℃で3時間反応させてウレタンプレポリマー(a2)を得た。
得られたウレタンプレポリマー(a2)に、合成例1で得られた架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(a1)64.7部(固形分換算)、及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(a3)(信越化学工業社製、「KBMB573」(アニリノシラン))13.3部を加え、100℃で2時間撹拌し、IRスペクトル測定にてイソシアネート基由来の-NCOの吸収が消失するまで反応を行った。
反応終了後、溶剤を留去し、架橋性ケイ素基含有ポリマー(ポリマーA)を得た。
【0097】
[合成例3]
撹拌装置、窒素ガス導入管、温度計及び環流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレート70部、2-エチルヘキシルメタクリレート30部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12部、金属触媒としてチタノセンジクロライド0.1部、及び有機溶媒として酢酸エチル40部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを導入しながらフラスコ内容物を80℃に加熱して撹拌した。次いで、充分に窒素ガス置換した3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン8.5部を撹拌中のフラスコ内に一気に添加した後、フラスコ内容物を撹拌しつつ加熱・冷却し、温度を80℃に16時間維持した。反応後、反応物の温度を常温(23℃)に戻して重合を終了し、1分子中に2個のシリル基を有する架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体(ポリマーB)の酢酸エチル溶液を得た。
ポリマーBの酢酸エチル溶液のモノマー残存率を、ガスクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定して重合率を求めたところ、重合率97%であった。
ポリマーBの酢酸エチル溶液について、25℃における粘度は、2.2(Pa・s)であり、105℃に加熱して固形分を求めたところ70.5%であった。
また、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、得られたポリマーBの分子量は、重量平均分子量(Mw)=3800、数平均分子量(Mn)=1500、分散指数=2.4であった。
【0098】
[合成例4]
ポリプロピレングリコール(AGC社製、「EXCENOL2020」(水酸基数2、Mn2 000)25部、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール系結晶性脂肪族ポリエステルポリオール(豊国製油社製、「HS2H-451A」(数平均分子量4,500))25部、芳香族非晶性ポリエステルポリオール(豊国製油社製、数平均分子量2,000)50部を100℃で1時間溶融混合した後に減圧脱水してポリオール混合物を得た。得られたポリオール混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー社製、「ミリオネートMT」)21.0部を添加し、窒素雰囲気下、撹拌しながら100℃で3時間反応させてウレタンプレポリマー(ポリマーC)を得た。
【0099】
[測定方法]
合成例1、2、3において、数平均分子量及びIRスペクトルは、以下のように測定した。
【0100】
<数平均分子量>
測定対象物を下記測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレンを標準物質として、標準ポリエチレングリコールで換算した最大頻度の分子量を数平均分子量とした。
・測定装置:ゲル浸透クロマトグラフ分析装置(東ソー社製、「HLC-8220」)
・使用カラム:G7000HXL(東ソー社製)1本、GMHXL(東ソー社製)2本、G2000HXL(東ソー社製)1本
・溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0ml/min
・測定温度:40℃
【0101】
<IRスペクトル>
・測定装置:FT-IR測定装置(日本分光社製、「FT-IR460Plus」)
【0102】
[製造例1]
合成例2で得られたポリマーA、合成例3で得られたポリマーB、樹脂A、樹脂B、水分吸収剤、シラン系接着付与剤、架橋触媒を、表1に示す配合割合(固形分量;質量部)にて混合し、120℃環境下で撹拌混合した。最後に減圧脱泡し、常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A―1を製造した。
【0103】
[製造例2、3、4、5]
表1に示す成分を表1に示す配合割合(固形分量;質量部)にて混合したほかは、製造例1と同様にして、常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A―2、A―3、A-4、A-5及びA-6と、常温(23℃)で液体の接着剤A’-1を製造した。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示す成分は、以下のとおりである。
・ポリマーA:合成例2で得られた架橋性ケイ素基含有ポリマー
・ポリマーB:合成例3で得られた1分子中に2個のシリル基を有する架橋性ケイ素基含有(メタ)アクリル系重合体
・ポリマーC:合成例4で得られたウレタンプレポリマー
・樹脂A:スチレン樹脂(ヤスハラケミカル社製、「YSレジン SX100」)
・樹脂B:変成シリコーン樹脂(カネカ社製、「SAX220」)
・水分吸収剤:ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM1003」)
・接着付与剤:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM603」)
・架橋触媒:ジオクチル錫系化合物(日東化成社製、「ネオスタンU-830」)
・接着剤A:湿気硬化型接着剤(セメダイン社製、「スーパーXG No.777」)
【0106】
表1中の120℃粘度(Pa・s)は、以下の方法で測定した。
常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A―1、A―2、A―3、A-4、A-5及びA-6を、それぞれ120℃に加熱して溶融し、コーンプレート粘度計CV-1(東亜工業社製、コーン直径:14.5mm、コーン角度:2.0°回転数:20rpm)を用いて測定した。
なお、表1中の製造例7で用いた接着剤Aは、常温(23℃)で液体であるため、120℃粘度について、測定を行わず、常温(23℃)の粘度を表1中に記載した。
【0107】
[実施例1]
湿気硬化型接着剤(A)として製造例1で得られた湿気硬化型接着剤A-1を100部、タングステン系粉末(B)としてタングステン粉Bを250部及びタングステン粉Bを混合し、120℃環境下で撹拌した後に減圧脱泡してバランスウェイト用組成物を調製した。
【0108】
[実施例2~18、比較例1]
湿気硬化型接着剤(A)及びタングステン系粉末(B)として、それぞれ表2~表4に示されるものを用いたほかは実施例1と同様にして、バランスウェイト用組成物を調製した。
【0109】
[比較例2]
湿気硬化型接着剤(A)として、常温(23℃)で液状の湿気硬化型接着剤A’-1を用いたほかは実施例1と同様にして、バランスウェイト用組成物を調製した。
【0110】
実施例2~17、比較例1、2において用いられた各成分は、以下のとおりである。
・湿気硬化型接着剤A-1:表1に示す常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A-1
・湿気硬化型接着剤A-2:表1に示す常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A-2
・湿気硬化型接着剤A-3:表1に示す常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A-3
・湿気硬化型接着剤A-4:表1に示す常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A-4
・湿気硬化型接着剤A-5:表1に示す常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A-5
・湿気硬化型接着剤A-6:表1に示す常温(23℃)で固体の湿気硬化型接着剤A-6
・湿気硬化型接着剤A’-1:常温(23℃)で液体の湿気硬化型接着剤(セメダイン社製、商品名「スーパーXG No.777」(粘度:85.0Pa・s/23℃))
・タングステン粉A:タングステン粉(日本新金属社製、商品名「W-6」(粒度8.0~16.0μm;比重19.3))
・タングステン粉B:タングステン粉(日本新金属社製、商品名「W-L」(粒度10.0~40.0μm;比重19.3))
・タングステン粉C:タングステン粉(アライドマテリアル社製、商品名「D100」(粒度7.6~12.0μm;比重19.3))
・タングステン粉D:タングステン粉(アライドマテリアル社製、商品名「粗粒」(粒度23.0~28.0μm;比重19.3))
・タングステン粉E:タングステン粉(アライドマテリアル社製、商品名「W-U250」(粒度23.0~28.0μm;比重19.3))
【0111】
[物性・試験]
<比重>
実施例1で得られたバランスウェイト用組成物を120℃で加熱溶融し、剥離可能な面に塗布して硬化し、1cm×1cm×1mmのシートを作製した。作製したシートを23℃50%RHで1週間養生した後に、JISK7112に準じて、水中置換法にて比重を測定した。結果を表2に併せて示す。
同様にして、実施例2~18及び比較例1、2で得られたバランスウェイト用組成物を用いてシートを作製し、それぞれの比重を測定した。結果を表2~表4に併せて示す。
【0112】
<5分後せん断接着強さ>
実施例1で得られたバランスウェイト用組成物を120℃で加熱溶融し、塗布面をアセトンで脱脂した第1アルミニウム板(25mm×75mm×2mm)に厚さが100μmになるように塗布した。塗布直後、塗付面上に接着面をアセトンで脱脂した第2アルミニウム板(25mm×75mm×2mm)を、重ね合わせた領域が一端から25mm×2mmとなるように貼り合せ、試験体を作製した。試験体を23℃50%RH環境下で5分間養生した後に、JISK6850に準じて、引張速度50mm/分で5分後せん断接着強さ(5分後立ち上がりせん断接着強さ)(N/mm)を測定した。結果を表2に併せて示す。
同様にして、実施例2~18及び比較例1、2で得られたバランスウェイト用組成物を用いて試験体を作製し、それぞれの5分後せん断接着強さ(N/mm)を測定した。結果を表2~表4に併せて示す。
【0113】
<押出性>
武蔵エンジニアリング社製エアパルス式ディスペンサー「ML-808FX」、武蔵エンジニアリング社製卓上塗布型ロボット「SHOTMASTER 300DS」及び武蔵エンジニアリング社製金属ニードル「SNA19G-B」を用いて押出性試験を実施した。塗布条件は塗布圧力200kPaで10秒間として押出した際の吐出量を計測した。
【0114】
[評価]
得られた実施例1~18、比較例1、2のバランスウェイト用組成物について、以下のように評価を行った。
【0115】
<自動化特性>
押出性試験において、15mg/10秒以上である場合には、A評価(合格)とし、15mg/10秒未満である場合には、D評価(不合格)とした。評価結果を表2~表5に合わせて示す。
【0116】
<液だれ・ズレ抑制特性>
5分後せん断接着強さ試験において、0.2MPa以上である場合には、A評価(合格)とし、0.2MPa未満である場合には、D評価(不合格)とした。評価結果を表2~表5に合わせて示す。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
表2~表4から、実施例に係るバランスウェイト用組成物は、良好な押出性を示すことが確認され、バランスウェイト用組成物の塗布の自動化に係る自動化特性に優れていることが確認された。これより、パランスウエイト組成物を自動で塗布することで、回転体のダイナミックバランスによる釣合い調整を容易に行う場合が可能となり、作業性が向上することがわかる。
【0121】
表2~表4から、実施例に係るバランスウェイト用組成物は、良好な自動化特性を示すことが確認され、バランスウェイト用組成物の塗布の自動化特性に優れていることが確認された。これより、パランスウエイト組成物を自動で塗布する際に、適切な量を精密に塗布することが可能となり、回転体のダイナミックバランスによる釣合い調整を容易に行う場合が可能となり、作業性が向上することがわかる。
【0122】
表2~表4から、実施例に係るバランスウェイト用組成物は、良好な5分後せん断接着強さ(5分後立ち上がりせん断接着強さ)を示し、バランスウェイト用組成物の固化速度が速く(速硬化性・速接着性に優れる)液だれ・ズレ抑制特性に優れていることが確認された。これより、塗布後すぐにバランスの釣り合いを測定しても、バランスウェイト用組成物の液だれやズレの発生が抑制でき、次工程への展開が可能となり、作業性が向上することがわかる。
【0123】
一方、表2~表4から、比較例1に係る比重が9.0のバランスウエイト用組成物は、5分後せん断接着強さは優れているものの、押出制に劣り、自動化特性が劣るものであった。また、比較例2に係る常温(23℃)で液体の湿気硬化型接着剤を用いたバランスウェイト用組成物は、23℃での粘度が高く、加熱をすると湿気硬化が進行し塗布が困難となるものであった。このため、23℃にて塗布を実施した結果、5分後せん断接着強さ、押出性及び自動化特性が低く、速硬化性・速接着性、自動化特性及び液だれ・ズレ抑制特性に劣ることが確認された。これより、常温(23℃)で液体の湿気硬化型接着剤を用いたバランスウェイト用組成物では、塗布直後にバランスの釣り合いを測定することは難しく、次工程へ展開するためには塗布したバランスウェイトの液だれやズレが生じる可能性が高くなる。