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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086264
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素
(51)【国際特許分類】
   C09B 19/00 20060101AFI20240620BHJP
   C07D 498/04 20060101ALI20240620BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
C09B19/00 CSP
C07D498/04 111
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201302
(22)【出願日】2022-12-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、創発的研究支援事業 創発的研究支援、「革新的化学ツールによるRNA機能の制御と理解」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 和光
(72)【発明者】
【氏名】長澤 瞭佑
(72)【発明者】
【氏名】岩田 遼平
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】永次 史
【テーマコード(参考)】
4C072
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072AA06
4C072BB02
4C072BB06
4C072CC03
4C072CC11
4C072EE07
4C072FF09
4C072GG07
4C072HH04
4C072HH07
4C072JJ03
4C072UU10
(57)【要約】
【課題】RNAやDNAに対する選択性と結合力に優れる水素結合認識型の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素を提供する。
【解決手段】X-Y-Zで表される化合物からなり、Xは1,3-ジアザフェノキサジン誘導体、Yはリンカー、Zは標識物質である、核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X-Y-Zで表される化合物からなり、
Xは1,3-ジアザフェノキサジン誘導体、Yはリンカー、Zは標識物質である、核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素。
【請求項2】
下記の化学式(1)または下記の化学式(2)で表される、請求項1に記載の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素。
【化1】
(式中、Rは炭素数1~6の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基およびフェネチル基からなる群から選択されるいずれか1種であり、n=1~5の整数である。)
【化2】
(式中、Rは炭素数1~6の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基およびフェネチル基からなる群から選択されるいずれか1種であり、n=1~5の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素に関する。
【背景技術】
【0002】
リボ核酸(RNA)やデオキシリボ核酸(DNA)に選択的に結合する蛍光分子は、RNAやDNAの検出プローブとして生化学、分析化学、疾病診断分野等において極めて重要である。
【0003】
RNA非存在またはRNA存在下において、OFF/ON型蛍光応答を示す1,3-ジアザフェノキサジン誘導体(G-clamp)のダイマーが、Short hairpin RNAに対してnmol/Lの結合力を示すことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。G-clampのダイマーの蛍光応答は、G-clampにチアゾールオレンジ(TO)系の化合物をコンジュゲートさせた化合物(TO-G-clamp)よりも不明瞭である。
【0004】
DNA中の8-オキソ-デオキシグアノシンを認識する蛍光プローブとしては、G-clampにリボースや塩基をコンジュゲートさせた構造を有するG-clamp誘導体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
RNA二重鎖の溝に結合するペプチド核酸(PNA)をベースとした骨格に、蛍光色素としてチアゾールオレンジを導入したプローブが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/077800号
【特許文献2】特開2021-23291号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Murase,Hirotaka、Nagatsugi,Fumi、“Development of the binding molecules for the RNA higher-order structures based on the guanine-recognition by the G-clamp”、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2019年、第29巻、第11号、p.1320-1324。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、RNA検出プローブやDNA検出プローブとして一般的に使用される化合物は、RNAやDNAに対する選択性と結合力に改善の余地があった。また、既存のプローブはほとんどがインターカレーターであり、蛍光指示薬競合置換アッセイの観点から、結合様式の多様化が求められていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、RNAやDNAに対する選択性と結合力に優れる水素結合認識型の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]X-Y-Zで表される化合物からなり、
Xは1,3-ジアザフェノキサジン誘導体、Yはリンカー、Zは標識物質である、核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素。
【0011】
[2]下記の化学式(1)または下記の化学式(2)で表される、[1]に記載の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素。
【0012】
【化1】
(式中、Rは炭素数1~6の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基およびフェネチル基からなる群から選択されるいずれか1種であり、n=1~5の整数である。)
【0013】
【化2】
(式中、Rは炭素数1~6の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基およびフェネチル基からなる群から選択されるいずれか1種であり、n=1~5の整数である。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、RNAやDNAに対する選択性と結合力に優れる水素結合認識型の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例3において、化合物23の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図2】実施例3において、化合物23の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
図3】比較例1において、化合物60の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図4】比較例1において、化合物60の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
図5】実施例4において、DNaseまたはRNaseを添加する前の細胞培養液の蛍光顕微鏡像を示す図である。
図6】実施例4において、DNaseを添加した後の細胞培養液の蛍光顕微鏡像を示す図である。
図7】実施例4において、RNaseを添加した後の細胞培養液の蛍光顕微鏡像を示す図である。
図8】実施例5において、化合物61の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図9】実施例5において、化合物61の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
図10】実施例6において、化合物62の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図11】実施例6において、化合物62の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
図12】実施例7において、化合物63の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図13】実施例7において、化合物63の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
図14】実施例8において、DNaseを添加する前の細胞培養液の蛍光顕微鏡像を示す図である。
図15】実施例8において、DNaseを添加した後の細胞培養液の蛍光顕微鏡像を示す図である。
図16】実施例9において、RNaseを添加する前の細胞培養液の蛍光顕微鏡像を示す図である。
図17】実施例9において、RNaseを添加した後の細胞培養液の蛍光顕微鏡像を示す図である。
図18】実施例10において、RNAとしてhsa-mir-4520-1(配列番号1)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図19】実施例10において、図18に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を示す図である。
図20】実施例10において、DNAとしてds-DNA(配列番号12、配列番号13)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図21】実施例10において、図20に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を示す図である。
図22】実施例11において、RNAとしてhsa-mir-4520-1(配列番号1)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図23】実施例11において、図22に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を示す図である。
図24】実施例11において、図22に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を示す図である。
図25】実施例11において、DNAとしてds-DNA(配列番号12、配列番号13)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図26】実施例11において、図25に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を示す図である。
図27】実施例12において、化合物64の蛍光滴定スペクトルを示す図である。
図28】実施例12において、化合物64の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施の形態において、RNA(リボ核酸)およびDNA(デオキシリボ核酸)のヌクレオチド配列は、5’末端側から3’末端側に向かって記載する。ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、RNAについては、A=アデニル酸、C=シチジル酸、G=グアニル酸、及びU=ウリジル酸を用い、DNAについては、A=デオキシアデニル酸、C=デオキシシチジル酸、G=デオキシグアニル酸、およびT=デオキシチミジル酸を用いて表す。
【0017】
[核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素]
本発明の一実施形態に係る核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素は、X-Y-Zで表される化合物からなる。前記Xは、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体(G-clamp)である。前記Yは、リンカーである。前記Zは、標識物質である。
【0018】
「X:1,3-ジアザフェノキサジン誘導体」
1,3-ジアザフェノキサジン誘導体は、下記の化学式(3)で表される化合物である。1,3-ジアザフェノキサジン誘導体は、水素結合を形成していない核酸中のグアニン(G)、特に、RNAヘアピンループ構造中のグアニン(G)やDNAヘアピンループ構造中のグアニン(G)を認識して、選択的に結合する。
【0019】
【化3】
【0020】
上記の化学式(3)中、Yはリンカー、Zは標識物質からなる。
【0021】
「Y:リンカー」
リンカーは、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体と標識物質の間に介在し、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体と標識物質を結合(架橋)する物質である。リンカーは、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体の活性や、標識物質の活性には影響を及ぼさない。
【0022】
リンカーとしては、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体と標識物質を結合し、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体および標識物質の活性に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、-(C-O)-C-CONH-(CH(nは1~5の整数であり、好ましくは3~4であり、より好ましくは3である。mは2~8の整数であり、好ましくは4~6である。)及び-(C-O)-C-トリアゾール-(CH(nは1~5の整数であり、好ましくは3~4であり、より好ましくは3である。mは2~8の整数であり、好ましくは4~6である。)が挙げられる。
【0023】
本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素において、リンカーは、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体および標識物質と等モル存在する。
【0024】
「標識物質」
標識物質としては、蛍光色素が挙げられる。
標識物質としては、標識物質としては、RNAに結合することで、蛍光性がオンになるライトアップ蛍光性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、下記の化学式(4)で表されるチアゾールオレンジ(TO)系の化合物、または下記の化学式(5)で表されるチアゾールオレンジ(TO3)系の化合物が挙げられる。
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素において、標識物質は、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体およびリンカーと等モル存在する。
【0028】
リンカーは活性に影響を及ぼさないもの、標識物質はRNAに結合することで、蛍光性がオンになるライトアップ蛍光性を示すものであれば特に限定されないが、本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素は、下記の化学式(1)または下記の化学式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0029】
【化6】
(式中、Rは炭素数1~6の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基およびフェネチル基からなる群から選択されるいずれか1種であり、n=1~5の整数である。)
【0030】
【化7】
(式中、Rは炭素数1~6の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基およびフェネチル基からなる群から選択されるいずれか1種であり、n=1~5の整数である。)
【0031】
上記の化学式(1)または上記の化学式(2)において、結合力、選択性の観点から、nは1~5の整数であり、好ましくは3~4であり、より好ましくは3である。
本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素は、下記の化学式(6)で表される化合物であってもよい。
【0032】
【化8】
(式中、n=1~5の整数である。)
【0033】
上記の化学式(6)において、結合力、選択性の観点から、nは1~5の整数であり、好ましくは3~4であり、より好ましくは3である。
上記の化学式(1)で表される化合物の具体例としては、下記の化学式(7)で表される化合物が挙げられる。化学式(7)中、Meはメチル基を表す。
【0034】
【化9】
【0035】
上記の化学式(2)で表される化合物の具体例としては、下記の化学式(8)で表される化合物が挙げられる。化学式(8)中、Meはメチル基を表す。
【0036】
【化10】
【0037】
本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素は、下記の化学式(9)に示すように、1,3-ジアザフェノキサジン誘導体は、水素結合を形成していない核酸中のグアニン(G)、特に、RNAヘアピンループ構造中のグアニン(G)やDNAヘアピンループ構造中のグアニン(G)を認識して、選択的に結合する。
【0038】
【化11】
【0039】
また、本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素は、励起光を照射すると、チアゾールオレンジ系の化合物が蛍光を発する。
【0040】
本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素が結合可能なRNAとしては、例えば、hsa-mir-4520-1(配列番号1:CCAAAUCAGAAAAGGAUUUGG)、hsa-mir-125a(配列番号2:CUGUGAGGACAUCCAGGGUCACAG)、hsa-mir-4291(配列番号3:AGCUGGGUGGAGGCAGAGCU)、hsa-mir-526a-1(配列番号4:UCUGUUGCUUGAAAGAAGAGA)、hsa-mir-105-1(配列番号5:CUGUGGUGGCUGCUCAUGCACCACGG)、hsa-mir-100(配列番号6:CUUGUGGUAUUAGUCCGCACAAG)、hsa-mir-548ba(配列番号7:UGCUAUUAGAAAGUAAUGGCA)、hsa-mir-6786(配列番号8:GCGUCACGUGCACCCAAGUGACGC)、hsa-mir-299(配列番号9:CAUACAUUUUGAAUAUGUAUG)、hsa-mir-4773-1(配列番号10:UCUGCUUUAUUUCAUCAAAGCAGA)、hsa-mir-4282(配列番号11:UUUAGUAUGCCACAUUUCUAAA)等が挙げられる。
【0041】
[核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素の製造方法]
本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素の製造方法は、実施例に示す通りである。
【0042】
本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素によれば、水素結合を形成していないグアニン塩基を含むRNAやDNAに対する選択性と結合力に優れる核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素を提供することができる。また、本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素によれば、水素結合を形成していないグアニン塩基を含むRNAまたはDNAの検出限界がnmol/Lオーダーであり、従来のRNAまたはDNAの検出試薬よりも高感度に検出することができる。また、本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素によれば、従来の細胞内RNA検出試薬と蛍光の強度と結合選択性が同等以上であるため、細胞内RNAを選択的かつ高感度に検出できる。本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素によれば、蛍光指示薬競合置換アッセイにおいて従来のRNAまたはDNAの検出試薬では検出できなかった化合物を検出でき、さらに非特異的な結合も見出すことができる。また、本実施形態の核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素によれば、標識物質としては、蛍光色素を変えることにより、蛍光の波長、強さ、選択性を制御することができる。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
「核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素の合成」
下記の式(10)で表される反応により、化合物11を合成した。
ジクロロメタン19mL中に5-アミノ-1-ペンタノール(化合物12)(1.01g、9.75mmol)を含む溶液に、トリエチルアミン(1.1g、11mmol)を添加した。
得られた反応混合物を0℃に冷却し、二炭酸ジ-tert-ブチル(2.4g、11mmol)を加えて攪拌した。
6分後、二炭酸ジ-tert-ブチを加えた反応混合物の温度を室温(25℃)に上げて、20時間撹拌した。
反応混合物に、水(50mL)とクロロホルム(50mL)を加え、有機層と水層を分離して、水層をクロロホルム(30mL×3回)で抽出した。
有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥させた。
溶液をろ過し、減圧下で濃縮した。
粗生成物(3.48g)をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1から1/1から1/2)で精製して、化合物11を無色油として得た(1.74g、収率88%)。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(500MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.39(2H,m),1.43(9H,s),1.51(2H,quintet,J=7.3Hz),1.59(2H,quintet,J=7.0Hz),3.12(2H,q,J=6.3Hz),3.64(2H,t,J=6.5Hz),4.55(1H,br s)。
ESI-HRMS(m/z):[M+H] calcd for C1022NO3+、204.1594、found 204.1578。
上記の測定データから、下記の式(10)に示す化合物11が得られていることが確認された。
【0045】
【化12】
【0046】
下記の式(11)で表される反応により、化合物13を合成した。
ヨウ素(2.62g、10.3mmol)を含むジクロロメタン(7.0mL)溶液に、トリフェニルホスフィン(3.38g、12.9mmol)とイミダゾール(0.877g、12.9mmol)を0℃で加えた。
得られた混合物に、化合物11(1.74g、8.56mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液を加え、次いで、混合物を室温(25℃)に上げて、15時間撹拌した。
混合物に、チオ硫酸ナトリウム水和物(50mL)とジクロロメタン(50mL)を加え、有機層と水層を分離して、水層をジクロロメタン(50mL)で抽出した。
有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄した。
チオ硫酸ナトリウム水和物(50mL)とブライン(50mL)を加えて、硫酸ナトリウムで乾燥させた。
溶液をろ過し、減圧下で濃縮した。
粗生成物(6.41g)をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=8/1から4/1)で精製して、化合物13を無色油として得た(2.26g、収率84%)。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.41(2H,m),1.44(9H,s),1.49(2H,m),1.84(2H,quintet,J=7.2Hz),3.12(2H,q,J=6.3Hz),3.18(2H,t,J=7.0Hz),4.52(1H,br s)。
ESI-HRMS(m/z):[M+H] calcd for C1020INNaO 、336.0421、found 336.0423。
上記の測定データから、下記の式(11)に示す化合物13が得られていることが確認された。
【0047】
【化13】
【0048】
下記の式(12)で表される反応により、化合物14を合成した。
アセトニトリル(12mL)に2-メチルベンゾチアゾール(化合物15)(0.504g、3.38mmol)を加えた溶液に、ヨードメタン(1.0g、7.3mmol)を加え、この混合物を23時間還流した。混合物にさらにヨードメタン(0.91g、6.4mmol)を加え、17時間還流した。混合物を室温(25℃)まで冷却した後、固体をろ過し、酢酸エチル(30mL)で洗浄して、化合物14を白色固体として得た(0.914g、収率93%)。
得られた化合物のH-NMR、およびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(500MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):3.17(3H,s),4.20(3H,s),7.81(1H,dt,J=0.8,7.8Hz),7.90(2H,dt,J=1.2,8.0Hz),8.29(1H,d,J=8.5Hz),8.44(1H,d,J=7.5Hz)。
ESI-HRMS(m/z):[M+H] calcd for C10NS、164.0528、found 164.0534。
上記の測定データから、下記の式(12)で表される化合物14が得られていることが確認された。
【0049】
【化14】
【0050】
下記の式(13)で表される反応により、化合物16を合成した。
化合物13(2.10g、6.71mmol)およびキノリン(化合物17)(0.75g、5.8ミリモル)を丸底フラスコに加えた。この混合物を100℃で4時間撹拌した。混合物を室温(25℃)に冷却した後、混合物にアセトニトリル(13mL)とトリエチルアミン(0.58g、5.7mmol)を加え、0℃に冷却した。二炭酸ジ-tert-ブチル(1.2g、5.7mmol)を撹拌溶液に0℃で加えた。10分後、温度を室温(25℃)に上げ、17時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、ジエチルエーテル(30mL)でろ過した。固体をジクロロメタン/メタノール=9/1(50mL)で溶解した。ジクロロメタン/メタノール洗浄液を濃縮し、乾燥して、化合物16を赤色固体として得た(2.44g、収率81%)。化合物16をさらに精製することなく次の反応に使用した。
得られた化合物のH-NMR、およびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):1.35(9H,s),1.40(4H,m),1.97(2H,quintet,J=7.2Hz),2.90(2H,q,J=6.3Hz),5.04(2H,t,J=7.6Hz),6.80(1H,t,J=5.6Hz),8.06(1H,dt,J=0.4,7.6Hz),8.119(1H,dd,J=5.6,8.4Hz),8.28(1H,dt,J=1.5,8.0Hz),8.49(1H,dd,J=1.4,8.2Hz),8.63(1H,d,J=8.8Hz),9.29(1H,d,J=8.4Hz),9.54(1H,dd,J=1.2,6.0Hz)。
ESI-HRMS(m/z):[M-H] calcd for C1927 、315.2067、found 315.2075。
【0051】
【化15】
【0052】
下記の式(14)で表される反応により、化合物18を合成した。
化合物16(2.60mmol)および化合物14(0.897g、3.08mmol)のジクロロメタン(29mL)溶液にトリエチルアミン(3.2g、31mmol)を加え、室温で17時間撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮し、ろ過し、ジエチルエーテル(60mL)および水(30mL)で洗浄した。得られた固体をジクロロメタン/メタノール=20/1(100mL)で溶解し、ろ過した。ジクロロメタン/メタノール洗浄液を濃縮し、乾燥して、化合物18を赤色固体として得た(1.48ミリモル、収率48%)。化合物18をさらに精製することなく次の反応に使用した。
得られた化合物のH-NMR、およびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):1.32-1.42(4H,m),1.35(9H,s),1.85(2H,quintet,J=7.0Hz),2.90(2H,q,J=6.3Hz),4.03(3H,s),4.59(2H,t,J=7.2Hz),6.80(1H,t,J=5.6Hz),6.94(1H,s),7.38(1H,d,J=6.8Hz),7.43(1H,dt,J=0.8,7.6Hz),7.63(1H,dt,J=1.1,7.8Hz),7.76(1H,t,J=7.6Hz),7.80(1H,d,J=8.4Hz),8.00(1H,dt,J=1.2,7.8Hz),8.06(1H,dd,J=0.8,8.0Hz),8.16(1H,d,J=8.8Hz),8.63(1H,d,J=7.2Hz),8.81(1H,d,J=8.8Hz)。
ESI-HRMS(m/z):[M-I] calcd for C2834、476.2366、found 476.2369。
【0053】
【化16】
【0054】
下記の式(15)で表される反応により、化合物19を合成した。
ジクロロメタン(67μL)に化合物18(48.5μmol)を加えた溶液に、トリフルオロ酢酸(0.60mL)を添加し、室温(25℃)で3.5時間撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮して、化合物19(定量的収率)を赤色固体として得た。化合物19をさらに精製することなく次の反応に使用した。
【0055】
【化17】
【0056】
下記の式(16)で表される反応により、化合物20を合成した。
下記の式(16)に示す化合物21(51.8mg,0.114mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(1.0mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(22.3mg,0.173mmol)と1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(62.8mg,0.166mmol)を0℃で加え、撹拌した。この混合物に、N,N-ジメチルホルムアミド(1.7mL)に化合物22(48.3mg,0.174mmol)を溶かした溶液を加え、室温(25℃)まで温め、16時間撹拌した。この混合物を酢酸エチル(40mL)で希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL×2)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5mL×2)およびブライン(5mL)、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させた。この溶液をろ過し、減圧下で濃縮した。粗生成物0.116g)をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=40/1から30/1から20/1)で精製して、化合物20を黄色の固体(60.4mg、収率74%)として得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(600MHz、溶媒:MeOD)δ(ppm):1.43(9H,s),2.46(2H,t,J=6.3Hz),3.40(2H,t,J=5.4Hz),3.54(4H,m),3.60(8H,m),3.68(2H,t,J=6.3Hz),4.03(2H,t,J=5.1Hz),4.38(2H,s),5.10(2H,s),6.38(1H,d,J=8.4Hz),6.56(2H,d,J=8.4),6.78(1H,t,J=8.4Hz),7.21(1H,s),7.29(5H,m)。
13C-NMRデータ(600MHz、溶媒:MeOD)δ(ppm):27.0,35.8,39.2,39.8,51.3,66.2,66.5,68.1,69.1,69.9,70.0,70.1,70.2,80.4,106.9,107.9,115.5,123.5,127.4,127.6,128.0,128.1,137.0,142.8,146.5,154.8,156.2,157.7,168.3,171.4。
ESI-HRMS(m/z):[M+H] calcd for C354611 、712.3188、found 712.3187。
【0057】
【化18】
【0058】
下記の式(17)で表される反応により、化合物23を合成した。
ジクロロメタン(50μL)に化合物24(18.9mg、26.6μmol)を加えた溶液に、トリフルオロ酢酸(0.30mL)を添加し、室温(25℃)で7時間撹拌した。この混合物を減圧下で蒸発させて、残渣を得た。残渣をN,N-ジメチルホルムアミド(0.20mL)に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(33.4mg,0.258mmol)と1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(15.2mg,40.1μmol)を0℃で加えて撹拌した。この混合物に、N,N-ジメチルホルムアミド(0.40mL)に化合物19(37.9μmol)を加えた溶液を加え、20時間撹拌した。この混合物を減圧下で蒸発させて、赤色油残渣を得た。残留物にトリフルオロ酢酸(0.35mL)およびチオアニソール(82.7mg、0.666mmol)を室温(25℃)で24時間添加した。その後、この混合物を減圧下で蒸発させて残渣を得た。残留物にジメチルスルホキシド(1.0mL)を添加し、ろ過し、逆相HPLCによって精製して、化合物23を赤色固体として得た(3工程、収率1.7%)。
HPLC条件;A:蒸留水中の0.1%トリフルオロ酢酸、B:アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸。B:0%→60%(~20分)→100%(~25分)→100%(~30分)
流量=4mL/分。温度=35.0℃;UV=254nm、C-18カラム(ナカライテスク:COSMOSIL 5C18-AR-II、10mm×250mm)
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(600MHz、溶媒:MeOD)δ(ppm):1.48(2H,quintet,J=7.6Hz),1.59(2H,quintet,J=7.0Hz),2.00(2H,quintet,J=7.4Hz),2.42(2H,t,J=6.0Hz),3.22,(2H,t,J=7.2Hz),3.39(2H,t,J=5.4Hz),3.54(2H,t,J=5.7Hz),3.60(10H,m),3.71(2H,t,J=6.0Hz),3.98(3H,s),4.21(2H,t,J=4.8Hz),4.34(2H,s),4.59(2H,t,J=7.5Hz),6.41(1H,d,J=8.4Hz),6.60(1H,d,J=8.4Hz),6.82(1H,t,J=8.4Hz),7.16(1H,m),7.19(1H,s),7.42(1H,t,J=7.5Hz),7.47(1H,d,J=7.2Hz),7.61(1H,t,J=7.8Hz),7.66(1H,d,J=7.8Hz),7.75(1H,t,J=7.8Hz),7.90(1H,d,J=7.8Hz),7.99(1H,t,J=7.8Hz),8.08(1H,d,J=8.4Hz),8.43(1H,d,J=7.2Hz),8.65(1H,d,J=8.4Hz)。
13C-NMRデータ(150MHz、溶媒:MeOD)δ(ppm):15.8,15.9,16.0,23.3,28.4,28.5,32.7,36.3,38.4,38.8,39.2,51.1,54.6,55.9,56.1,56.2,56.4,66.9,69.0,69.9,69.9,70.0,70.2,108.4,108.7,112.3,115.9,117.6,117.9,122.3,123.7,124.4,124.5,124.8,125.2,126.8,127.7,128.1,133.2,137.5,140.6,142.9,143.6,149.5,160.7,168.1,172.6。
ESI-HRMS(m/z):[M-CFCOO] calcd for C4655 、879.385、found 879.3835。
【0059】
【化19】
【0060】
[実施例2]
「核酸内グアニン塩基結合性蛍光色素の合成」
下記の式(18)で表される反応により、化合物31を合成した。
化合物32(0.28mL、2.36mmol)に、アセトニトリル(7.2mL)を加えた後、6-ヨード-1-ヘキシン(1.0g、4.81mmol)を加えて、23時間加熱還流した。放冷後、濃縮して、酢酸エチル10mLを加え、吸引ろ過し、固体を酢酸エチル20mLで洗浄した。得られた固体を乾燥した後、黄土色粉末状の化合物32を637mg(収率80%)得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):9.56(d,J=8.4Hz,1H),9.30(d,J=8.4Hz,1H),8.65(d,J=9.2Hz,1H),8.51(d,J=8.0Hz,1H),8.30(t,J=7.2Hz,1H),8.21(t,J=7.2Hz,1H),8.05(t,J=7.2Hz,1H),5.09(t,J=7.6Hz,2H),2.83(t,J=2.8Hz,1H),2.25(dt,J=2.8,7.2Hz,2H),2.10-2.02(m,2H),1.62-1.55(m,2H)。
ESI-HRMS(m/z):[M-I]calcd for C1516,210.1277,found 210.1287。
【0061】
【化20】
【0062】
下記の式(19)で表される反応により、化合物33を合成した。
化合物34(49.9mg、0.111mmol)とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(0.7mL)を加え、0℃で攪拌した後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(29.0μL、0.666mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)(62.9mg、0.166mmol)、DMF(1mL)に溶解させた化合物35(40.8mg、0.187mmol)を加え室温(25℃)に昇温した。24時間攪拌後、酢酸エチル40mLで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液5mLで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5mLで2回、飽和食塩水5mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後濃縮した。黄色の粗精製物71.0mgをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。目的物である黄色固体化合物33を47.7mg(収率66%)得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):7.22-7.34(m,5H),7.00(s,1H),6.90(s,1H),6.74(q,J=8.0Hz,16.0Hz,2H),6.38(q,J=8.0Hz,16.0Hz,2H),5.11(s,1H),5.07(s,1H),4.75(s,1H),4.36(s,1H),4.00-3.95(m,2H),3.67-3.56(m,14H),3.47(t,J=5.6Hz,2H),3.39(t,J=3.6Hz,2H)。
ESI-HRMS(m/z):[M+H] calcd for C3037 ,653.2678, found 653.2685。
【0063】
【化21】
【0064】
下記の式(20)で表される反応により、化合物36を合成した。
化合物33(12.2mg、0.019mmol)に、トリフルオロ酢酸(0.25mL)とチオアニソール(59mg、0.475mmol)とを加えて、室温(25℃)で19時間攪拌した後、メタノール10mLで希釈した。ヘキサン10mLで2回洗浄して濃縮して得た粗。精製物23.4mgをアミノシリカゲルカラムに通し、化合物36を含む黄色液体化合物を7.5mg得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.19(t,J=5.2Hz,1H),7.38(s,1H),6.79(t,J=8.0Hz,1H),6.60(d,J=8.4Hz,1H),6.44(d,J=8.0Hz,1H),4.24(s,2H),3.89(t,J=4.8Hz,2H),3.23(d,J=5.6Hz,2H),2.86(t,J=5.2Hz,2H)。
ESI-HRMS(m/z):[M+H] calcd for C2231 ,519.2310, found 519.2317。
【0065】
【化22】
【0066】
下記の式(21)で表される反応により、化合物37を合成した。
化合物38(499mg、3.34mmol)に、アセトニトリル(12mL)を加えた後、ヨードメタン(0.42mL、6.75mmol)を加え、19時間加熱還流した。ヨードメタン(0.42mL、6.75mmol)を追加し、3時間加熱還流し、放冷した後、吸引ろ過し、酢酸エチル30mLで洗浄した。乾燥後、緑白色粉末状の化合物37を774mg(収率80%)得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.44(d,J=8.0Hz,1H),8.30(d,J=8.4Hz,1H),7.90(t,J=8.0Hz,1H),7.81(t,J=7.6Hz,1H),4.20(s,3H),3.17(s,3H)。
ESI-HRMS(m/z):[M-I] calcd for C10NS,164.0528, found 164.0538。
【0067】
【化23】
【0068】
下記の式(22)で表される反応により、化合物39を合成した。
化合物38(509mg、3.41mmol)に、アセトニトリル(12mL)を加えた後、臭化ベンジル(0.60mL、5.05mmol)を加え、47時間加熱還流した。放冷後、吸引ろ過し、酢酸エチル30mLで洗浄した。乾燥後、緑白色粉末状の化合物39を665mg(収率61%)得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.50(d,J=7.6Hz,1H),8.20(d,J=8.0Hz,1H),7.87-7.78(m,2H),7.43-7.32(m,5H),6.09(s,2H),3.27(s,3H)。
ESI-HRMS(m/z):[M-Br] calcd for C1514NS,240.0841, found 240.0852。
【0069】
【化24】
【0070】
下記の式(23)で表される反応により、化合物40を合成した。
化合物38(500mg、3.35mmol)に、2-ブロモエチルベンゼン(0.68mL、5.03mmol)を加え、150℃で19時間攪拌した。放冷後、酢酸エチルを2mL加えて固体を砕き、吸引ろ過し、酢酸エチル30mLで洗浄した。乾燥後、白色~茶色粉末状の化合物40を763mg(収率68%)得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.50(d,J=8.4Hz,1H),8.33(d,J=8.Hz,1H),7.87(t,J=7.2Hz,1H),7.80(t,J=7.2Hz,1H),7.29-7.1(m,5H),4.99(t,J=7.2Hz,2H),3.22(t,J=7.2Hz,2H),2.92(s,3H)。
ESI-HRMS(m/z):[M-Br] calcd for C1616NS,254.0998, found 254.1009。
【0071】
【化25】
【0072】
下記の式(24)で表される反応により、化合物41を合成した。
化合物37(104mg、0.356mmol)に、化合物2(K)(100mg、0.297mmol)を加え、メタノール(10.8mL)を加えた後、トリエチルアミン(0.41mL、2.97mmol)を加えて50℃で攪拌したところ、赤色溶液となった。23時間後、濃縮しアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行なった。目的とする化合物41を含む暗赤色固体の粗精製物を15.3mg得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.97(d,J=7.2Hz,1H),8.66(d,J=8.0Hz,1H),7.74-7.62(m,4H),7.46(t,J=8.0Hz,1H),7.32(t,J=8.0Hz,3H),6.71(s,1H),4.61(t,J=7.6Hz,2H),3.99(s,3H),3.11(s,1H),2.32-2.29(m,2H),2.08-2.06(m,2H),2.01-1.97(m,2H)。
ESI-HRMS(m/z):[M-I] calcd for C2423,371.1576, found 371.1539。
【0073】
【化26】
【0074】
下記の式(25)で表される反応により、化合物42を合成した。
化合物39(114.5mg、0.358mmol)に、化合物31(100.5mg、0.298mmol)を加え、メタノール(19mL)を加えた後、トリエチルアミン(0.42mL、3.01mmol)を加えて、40℃で22時間攪拌した。化合物39のみが消失したため、9(76.1mg、0.238mmol)を追加し、40℃で24時間攪拌した後、反応を停止した。濃縮し、水(20mL)、ジエチルエーテル(20mL)の順で固体を洗浄した後、ジクロロメタンを加え、不溶物をろ別した。ろ液を濃縮し、アミノシリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行なった。目的とする化合物42を含む暗赤色固体の粗精製物を13.8mg得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):9.21(d,J=7.2Hz,1H),8.13(d,J=8.4Hz,1H),7.77(d,J=8.0Hz,3H),7.57(t,J=14.8Hz,1H),7.51(d,J=7.2Hz,1H),7.44(t,J=6.0Hz,1H),7.40-7.37(m,2H),7.34-7.31(m,5H),6.6(s, 1H),4.71(t,J=7.6Hz,2H),2.29(dt,J=2.4,6.8Hz,2H),2.06(t,J=7.6Hz,2H),1.94(t,J2.8 Hz,1H),1.75-1.68(m,4H)。
ESI-HRMS(m/z):[M-Br] calcd for C3027,447.1889, found 447.1885。
【0075】
【化27】
【0076】
下記の式(26)で表される反応により、化合物43を合成した。
化合物40(119.6mg、0.358mmol)に、化合物31(100.1mg、0.297mmol)を加え、メタノール(19mL)を加えた後、トリエチルアミン(0.42mL、3.01mmol)を加えて室温(25℃)で26時間攪拌したが、原料がかなり残っていたため、加熱還流して17時間攪拌した。溶液を濃縮し、水(20mL)、ジエチルエーテル(20mL)の順で固体を洗浄した後、ジクロロメタンを加え不溶物をろ別した。ろ液を濃縮し暗赤色固体を131.9mg得た。このうち40.2mgをアミノシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、目的とする化合物43を含む暗赤色固体の粗精製物を3.2mg得た。
得られた化合物のH-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):9.04(d,J=7.2Hz,1H),8.16(d,J=8.4Hz,1H),7.80(t,J=6.8Hz,1H),7.72(t,J=7.2Hz,2H),7.65(t,J=7.2Hz,1H),7.44(d,J=7.2Hz,1H),7.38(d,J=7.2Hz,1H),7.30-7.12(m,7H),6.44(s1H),4.68(m,4H),3.25(t,J=6.8Hz,4H),2.31(m,2H),2.08(m,2H),1.97(t,J=2.8Hz,1H),1.73(m,2H)。
ESI-HRMS(m/z):[M-Br] calcd for C3129,461.2046, found 461.2039。
【0077】
【化28】
【0078】
下記の式(27)で表される反応により、化合物44を合成した。
化合物41(2.99mg、6.0μmol)に、ジメチルスルホキシド(100μL)、化合物36(3.11mg、6.0μmol)、トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン(1.3mg、2.4μmol)、アスコルビン酸ナトリウム(3.0mg、15μmol)、水(100μL)、硫酸銅五水和物(0.6mg、2.4μmol)を加えて攪拌し、37℃で22時間反応させた後、ジメチルスルホキシド300μLで希釈した。テフロン(登録商標)系フィルターで不溶物を除き、HPLCにより精製を行なった。目的とする化合物44を0.869μmol得た。収量はマレイン酸を用いた定量NMRにより決定した。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(600MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.78(d,J=9.0Hz,1H),8.62(d,J=7.2Hz,1H),8.19(t,J=5.4Hz,1H),8.14(d,J=9.0Hz,1H),8.04(d,J=7.2Hz,1H),7.98(t,J=7.8Hz,3H),7.79(t,=9.0Hz,1H),7.75(t,J=7.2Hz,1H),7.61(t,J=7.8Hz,1H),7.42(t,J=7.2Hz,2H),7.37(d,J=7.2Hz,1H),6.91(s,1H),6.80(t,J=7.8Hz,1H),6.64(d,J=7.2Hz,1H),6.45(d,J=7.8Hz,1H),4.63(t,J=7.2Hz,2H),4.45(d,J=5.4Hz,3H),4.24(s,2H),4.13(t,J=4.8Hz,2H),4.01(s,3H),3.77(t,J=5.4Hz,3H),3.22(t,J=6.0Hz,2H),2.68(t,J=7.8Hz,2H),1.91(m,2H),1.69(t,J=7.2Hz,2H)。
13C-NMRデータ(151MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):167.2,160.1,148.6,146.1,144.4,140.5,137.0,133.3,128.2,126.8,125.8,124.5,124.3,123.9,122.9,122.3,122.3,118.1,113.0,107.9,88.1,69.7,69.6,69.6,69.0,68.8,53.9,50.7,49.2,33.8,28.4,26.0,24.5。
ESI-HRMS(m/z):[M+H]2+ calcd for C4654102+ 445.1944, found 445.1967。
【0079】
【化29】
【0080】
下記の式(28)で表される反応により、化合物45を合成した。
化合物31(4.8mg、9μmol)に、ジメチルスルホキシド(150μL)、化合物36(4.7mg、9μmol)、アスコルビン酸ナトリウム(4.5mg、22.5μmol)、水(300μL)、トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン(1.9mg、3.6μmol)硫酸銅五水和物(0.9mg、3.6μmol)を加え攪拌し、37℃で24時間反応させた後、ジメチルスルホキシド300μLで希釈した。テフロン(登録商標)系フィルターで不溶物を除き、HPLCにより精製を行なった。目的とする化合物45を1.78μmol得た。収量はマレイン酸を用いた定量NMRにより決定した。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(600MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.68(d,J=7.2Hz,1H),8.53(d,J=8.4Hz,1H),8.16,(t,J=9.0Hz,1H),8.09(d,J=7.8Hz,1H),8.08(d,J=8.4Hz,1H),7.96(t,J=7.2Hz,3H),7.79(t,J=8.4Hz,2H),7.72(t,J=7.2Hz,1H),7.59(t,J=7.8Hz,1H),7.44(t,J=6.6Hz,3H),7.37(t,J=7.2Hz,2H),7.33(d,J=7.2Hz,2H),7.30(t,J=7.2Hz,1H),6.98(s,1H),6.80(t,J=8.4Hz,1H),6.66(d,J=7.8Hz,1H),6.46(d,J=7.8Hz,1H),5.95(s,2H),4.65(t,J=7.2Hz,2H),4.46(t,J=5.4Hz,2H),4.26(s,2H),4.14(t,J=4.8Hz,2H),3.78(t,J=5.4Hz,2H),2.67(t,J=7.2Hz,2H),1.90(t,J=7.2Hz,2H),1.69(t,J=7.2Hz,2H)。
13C-NMRデータ(151MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):167.2,159.6,148.8,146.1,144.6,140.4,137.0,135.2,133.4,129.0,127.9,126.7,125.4,124.7,124.3,123.8,123.1,122.3,118.3,113.0,108.5,88.2,69.7,69.6,69.6,69.5,69.0,68.8,54.1,49.2,48.7,42.1,28.4,25.9,24.4。
ESI-HRMS(m/z):[M+H]2+ calcd for C5258102+ 483.2100, found 483.2114。
【0081】
【化30】
【0082】
下記の式(29)で表される反応により、化合物46を合成した。
化合物43(9.6mg、18μmol)とジメチルスルホキシド(300μL)、化合物36(9.3mg、18μmol)、アスコルビン酸ナトリウム(9.0mg、45μmol)、水(300μL)、硫酸銅五水和物(1.8mg、7.2μmol)を加え攪拌し、37℃で20時間反応させたのち、ジメチルスルホキシド300μLで希釈した。テフロン(登録商標)系フィルターで不溶物を除き、HPLCにより精製を行なった。目的化合物46を2.16μmol得た。収量はマレイン酸を用いた定量NMRにより決定した。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(600MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.58(d,J=7.2Hz,1H),8.50(d,J=8.4Hz,1H),8.19(t,J=6.0Hz,1H),8.12,(d,J=8.4Hz,1H),7.98(t,J=7.8Hz,2H),7.81(s,1H),7.76(t,J=7.8Hz,1H),7.67(d,J=8.4Hz,1H),7.54(t,J=7.8Hz,1H),7.39(t,J=7.8Hz,1H),7.34(d,J=7.2Hz,1H),7.23(t,J=7.2Hz,2H),7.18(t,J=7.2Hz,2H),7.09(t,J=7.2Hz,1H),6.81(t,J=8.4Hz,1H),6.73(s,1H),6.64(d,J=9.0Hz,1H),6.46(d,J=7.8Hz,1H),4.88(t,J=7.2Hz,2H),4.61(t,J=7.2Hz,2H),4.45(t,J=5.4Hz,2H),4.25(s,2H),3.77(t,J=5.4Hz,2H),3.21(t,J=6.0Hz,2H),3.15(t,J=7.2Hz,2H),2.68(t,J=7.2Hz,2H),1.90(t,J=7.2Hz,2H),1.69(t,J=7.2Hz,2H)。
13C-NMRデータ(151MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):167.3,159.7,148.6,146.2,144.3,139.9,137.6,137.1,133.4,129.2,128.5,128.3,126.8,125.9,124.7,124.2,123.8,122.9,122.4,118.2,113.2,108.0,88.3,69.7,69.7,69.6,69.6,69.0,68.8,54.0,49.3,47.1,32.9,28.5,26.0,24.5。
ESI-HRMS(m/z):[M-Br+H]2+ calcd for C5360102+ 490.2178, found 490.2197。
【0083】
【化31】
【0084】
下記の式(30)で表される反応により、化合物47を合成した。
レピジン(化合物48)(344mg、2.4mmol)を溶解したアセトニトリル(7.3mL)を、6-ヨードヘキス-1-イン(600mg、2.88mmol)に加えた。この混合物を還流して14時間攪拌した。その後、6-ヨードヘキス-1-イン(400mg、1.92mmol)を加え、還流して3時間攪拌した。次に、混合物を室温(25℃)に冷却し、溶媒を吸引して除去した。粗精製物に酢酸エチル(10mL)を加えて超音波処理した後、固形物が得られた。その固形物をろ過し、酢酸エチルで洗浄した後、真空乾燥し、黄土色粉末状の化合物47を803mg(収率95%)得た。
得られた化合物のH-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):9.41(d,J=6.0Hz,1H),8.61(d,J=9.2Hz,1H),8.55(dd,J=1.2,8.4Hz,1H),8.27(dt,J=2.4,7.2Hz,1H),8.08(m,2H),5.03(t,J=7.2Hz,2H),3.01(s,3H),2.81(t,J=2.8Hz,1H),2.24(dt,J=2.4,7.2Hz,2H),2.07-2.01(m,2H),1.60-1.52(m,2H)。
【0085】
【化32】
【0086】
下記の式(31)で表される反応により、化合物49を合成した。
化合物50(43.6mg、0.1mmol)を溶解したメタノール(1.0mL)に、化合物47(35.1mg、0.1mmol)とトリエチルアミン(20.2mg、0.2mmol)を加えた。その混合物を、50℃で12時間撹拌した後、溶媒を蒸発させて除去した。粗精製物を加温したエタノールで再結晶させた。得られた固形物をろ過し、冷却したエタノールで洗浄し、真空乾燥し、濃紫色粉末状の化合物49を22.9mg(収率44%)得た。
得られた化合物のH-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):8.69(d,J=6.8Hz,1H),8.33(d,J=8.0Hz,1H),7.86(t,J=12.4Hz,1H),7.69(t,J=7.2Hz,1H),7.60(dd,J=7.2,8.4Hz,2H),7.51(t,J=7.2Hz,2H),7.32(t,J=8.4Hz,1H),7.16(t,J=8.0Hz,1H),7.09(d,J=8.0Hz,1H),7.03(d,J=13.6Hz,1H),6.56(d,J=12.4Hz,1H),4.52(t,J=7.6Hz,2H),3.72(s,3H),2.30(dt,J=6.8,2.4Hz,2H),2.05(m,2H),1.97(t,J=2.4Hz,1H),1.70(m,2H)。
【0087】
【化33】
【0088】
下記の式(32)で表される反応により、化合物51を合成した。
化合物36(2.3mg、4.4μmol)を溶解したジメチルスルホキシド(73μL)に、化合物49(2.3mg、4.4μmol)、トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン(1.0mg、1.8μmol)、水(73μL)、L-アスコルビン酸ナトリウム(2.2mg、11μmol)、硫酸銅(II)五水和物(0.5mg、1.8μmol)を加えた。その混合物を37℃で23時間撹拌した後、ジメチルスルホキシド(300μL)と水(100μL)で希釈し、ろ過した。ろ液を、逆相HPLCによって精製し、暗い青色の粉末状の化合物51を1.1μmol(収率25%)得た。収率は、標準物質としてマレイン酸を用いた定量NMRによって決定した。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびESI-HRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(600MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):8.45(d,J=7.2Hz,1H),8.40(d,J=7.2Hz,1H),8.19(t,J=6.0Hz,1H),8.14(d,J=13.2Hz,1H),8.07(d,J=9.0Hz,1H),7.99(s,2H),7.94(t,J=8.4Hz,1H),7.88,(d,J=7.2Hz,1H),7.83(d,J=7.2Hz,1H),7.80(s,1H),7.69(t,J=7.8Hz,1H),7.60(d,J=7.8Hz,1H),7.50(t,J=7.8Hz,1H),7.43(s,1H),7.32(t,J=7.2Hz,1H),7.10(d,J=13.2Hz,1H),6.82(t,J=8.4Hz,1H),6.65(d,J=8.4Hz,1H),6.48(t,J=7.8Hz,2H),4.58(t,J=7.2Hz,2H),4.45(t,J=5.4Hz,2H),4.25(s,2H),4.14(t,J=4.8Hz,2H),3.78(t,J=5.4Hz,3H),3.73(s,3H),2.68(t,J=7.2Hz,2H),1.88(m,2H),1.69(m,2H)。
13C-NMRデータ(151MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):167.3161.7,158.0,154.1,150.4,146.2,143.9,142.5,142.3,142.0,137.9,133.4,127.7,126.7,125.6,125.2,124.7,124.3,123.2,122.6,122.3,117.9,112.6,109.6,109.3,108.5,98.9,69.7,69.6,69.6,69.6,69.0,68.8,53.8,50.7,49.2,33.0,28.5,26.0,24.5。
ESI-HRMS(m/z):[M+H]2+ calcd for C4856102+ 458.2022, found 458.2053。
【0089】
【化34】
【0090】
[実施例3]
リン酸緩衝液(pH7.0)にRNA(0~0.24μmol/L)を添加したときの上記化合物23(10nmol/L)の蛍光滴定スペクトルと、蛍光滴定からの解離定数(K)を算出した。RNAとしては、hsa-mir-4520-1(配列番号1)、hsa-mir-125a(配列番号2)、hsa-mir-4291(配列番号3)、hsa-mir-526a-1(配列番号4)、hsa-mir-105-1(配列番号5)、hsa-mir-100(配列番号6)、hsa-mir-548ba(配列番号7)、hsa-mir-6786(配列番号8)、hsa-mir-299(配列番号9)、hsa-mir-4773-1(配列番号10)、hsa-mir-4282(配列番号11)を用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定には、日本分光株式会社製の分光蛍光光度計FP-6500またはFP-8300を用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定条件を、励起波長(λex):507nm、蛍光波長(λem):530nm、温度:20℃とした。
結果を図1図2および表1に示す。図1は、化合物23の蛍光滴定スペクトルを示す図である。図2は、化合物23の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
【0091】
[比較例1]
リン酸緩衝液(pH7.0)にRNA(0~1μmol/L)を添加したときの下記の化学式(33)で表される化合物60(10nmol/L)の蛍光滴定スペクトルと、蛍光滴定からの解離定数(K)を算出した。RNAとしては、実施例3と同じものを用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定は、実施例3と同様に行った。
結果を図3図4および表1に示す。図3は、化合物60の蛍光滴定スペクトルを示す図である。図4は、化合物60の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
【0092】
【化35】
【0093】
【表1】
【0094】
表1に示す結果から、化合物23と化合物60では、解離定数(K)が約3桁異なることが分かった。化合物23は、結合強度が高いことが分かった。
【0095】
[実施例4]
1×10のHeLa細胞を培養し、24時間後、培地(D-MEM)を除去、4%PFA/PBS溶液100μLを添加して細胞を浸した。室温(25℃)で5分間インキュベート、PBS(-)で細胞を3回洗浄した。1%Triton X-100/PBS溶液 100μLを添加して細胞を浸し、室温(25℃)で20分間インキュベートした。PBS(-)で細胞を3回洗浄、化合物23(0.1μmol/L)を含む染色溶液を添加して細胞を浸した。さらに、培養液にデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)またはリボヌクレアーゼ(RNase)を添加した。光を遮断して5分間インキュベート後、蛍光顕微鏡で観察を行った。
図5は、DNaseまたはRNaseを添加する前の前記培養液の蛍光顕微鏡像を示す。図6は、DNaseを添加した後の前記培養液の蛍光顕微鏡像を示す。図7は、RNaseを添加した後の前記培養液の蛍光顕微鏡像を示す。
図5図7に示す結果から、化合物23は、細胞質および核小体のRNAの蛍光染色もできることが分かった。化合物23は、従来の蛍光色素よりもRNAに対する選択性と結合力が高いことが分かった。
【0096】
[実施例5]
リン酸緩衝液(pH7.0)にRNA(0~0.5μmol/L)を添加したときの、上記の化学式(2)で表される化合物において、Rがメチル基である下記の化学式(34)で表される化合物61(10nmol/L)の蛍光滴定スペクトルと、蛍光滴定からの解離定数(K)を算出した。RNAまたはDNAとしては、hsa-mir-4520-1(配列番号1)、hsa-mir-125a(配列番号2)、hsa-mir-4291(配列番号3)、hsa-mir-100(配列番号6)、hsa-mir-299(配列番号9)、hsa-mir-4773-1(配列番号10)、DD-RNA(配列番号14:CGCGAAUUCGCG、配列番号15:CGCGAAUUCGCG)、DD-DNA(配列番号16:CGCGAATTCGCG、配列番号17:CGCGAATTCGCG)を用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定は、実施例3と同様に行った。
結果を図8図9および表2に示す。図8は、化合物61の蛍光滴定スペクトルを示す図である。図9は、化合物61の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
【0097】
【化36】
【0098】
【表2】
【0099】
表2に示す結果から、化合物61は、水素結合を形成していないグアニン塩基を含むRNAへの結合強度・選択性が高いことが分かった。
【0100】
[実施例6]
リン酸緩衝液(pH7.0)にRNA(0~0.5μmol/L)を添加したときの、上記の化学式(2)で表される化合物において、Rがベンジル基である下記の化学式(35)で表される化合物62(10nmol/L)の蛍光滴定スペクトルと、蛍光滴定からの解離定数(K)を算出した。RNAまたはDNAとしては、実施例5と同じものを用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定は、実施例3と同様に行った。
結果を図10図11および表3に示す。図10は、化合物62の蛍光滴定スペクトルを示す図である。図11は、化合物62の蛍光滴定スペクトルの強度とRNAの濃度との関係を示す図である。
【0101】
【化37】
【0102】
【表3】
【0103】
表3に示す結果から、化合物62は、水素結合を形成していないグアニン塩基を含むRNAへの結合強度・選択性が高いことが分かった。
【0104】
[実施例7]
リン酸緩衝液(pH7.0)にRNA(0~0.5μmol/L)を添加したときの、上記の化学式(2)で表される化合物において、Rがフェネチル基である下記の化学式(36)で表される化合物63(10nmol/L)の蛍光滴定スペクトルと、蛍光滴定からの解離定数(K)を算出した。RNAまたはDNAとしては、実施例5と同じものを用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定は、実施例3と同様に行った。
結果を図12図13および表4に示す。図12は、化合物63の蛍光滴定スペクトルを示す図である。図13は、化合物63の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
【0105】
【化38】
【0106】
【表4】
【0107】
表4に示す結果から、化合物63は、水素結合を形成していないグアニン塩基を含むRNAへの結合強度・選択性が高いことが分かった。
【0108】
[実施例8]
1×10のHeLa細胞を培養し、24時間後、培地(D-MEM)を除去、4%PFA/PBS溶液100μLを添加して細胞を浸した。室温(25℃)で5分間インキュベート、PBS(-)で細胞を3回洗浄した。1%Triton X-100/PBS溶液 100μLを添加して細胞を浸し、室温(25℃)で20分間インキュベートした。PBS(-)で細胞を3回洗浄、化合物63(1μmol/L)を含む染色溶液を添加して細胞を浸した。さらに、培養液にデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を添加した。光を遮断して5分間インキュベート後、蛍光顕微鏡で観察を行った。
図14は、DNaseを添加する前の前記培養液の蛍光顕微鏡像を示す。図15は、DNaseを添加した後の前記培養液の蛍光顕微鏡像を示す。
図14および図15に示す結果から、化合物63は、細胞質および核小体のRNAの蛍光染色もできることが分かった。化合物63は、従来の蛍光色素よりもRNAに対する結合力が高いことが分かった。
【0109】
[実施例9]
1×10のHeLa細胞を培養し、24時間後、培地(D-MEM)を除去、4%PFA/PBS溶液100μLを添加して細胞を浸した。室温(25℃)で5分間インキュベート、PBS(-)で細胞を3回洗浄した。1%Triton X-100/PBS溶液 100μLを添加して細胞を浸し、室温(25℃)で20分間インキュベートした。PBS(-)で細胞を3回洗浄、化合物63(1μmol/L)を含む染色溶液を添加して細胞を浸した。さらに、培養液にリボヌクレアーゼ(RNase)を添加した。光を遮断して5分間インキュベート後、蛍光顕微鏡で観察を行った。
図16は、RNaseを添加する前の前記培養液の蛍光顕微鏡像を示す。図17は、RNaseを添加した後の前記培養液の蛍光顕微鏡像を示す。
図16および図17に示す結果から、化合物63は、細胞質および核小体のRNAの蛍光染色もできることが分かった。化合物63は、従来の蛍光色素よりもRNAに対する選択性が高いことが分かった。
【0110】
[実施例10]
95μLの緩衝液(20mmol/L リン酸、pH7.0、20mmol/L NaCl、80mmol/L KCl)に、ジメチルスルホキシド(4μL)と化合物23のジメチルスルホキシド溶液(1μL、10pmol)を加え、混合溶液を調製した。この混合溶液の蛍光滴定スペクトルを3回測定し、その結果から、蛍光強度の標準偏差を算出した。
混合溶液をRNAまたDNAで滴定し、蛍光強度の変化を観察した。蛍光滴定スペクトルの測定は、実施例3と同様に行った。
得られた蛍光滴定スペクトルのデータから、以下に示す式(A)によって蛍光強度の標準偏差を算出した。
DL=3.3s/a (A)
式(A)において、DLは検出限界、sはRNAまたはDNAが存在しない場合のサンプルの標準偏差(SD)、aは蛍光強度の変化とRNAまたはDNA濃度との間の線形回帰の勾配を示す。
RNAとしてhsa-mir-4520-1(配列番号1)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを図18に示す。また、図18に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を図19に示す。
図19に示す結果から、検出限界は0.12nmol/L(1.0ng/mL)であった。
DNAとしてds-DNA(配列番号12:GCGCTGCCAG、配列番号13:CTGGCAGCGC;配列番号13は配列番号12の相補DNAである。)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを図20に示す。また、図20に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を図21に示す。
図21に示す結果から、検出限界は3.8nmol/L(28ng/mL)であった。
図19および図21において、Fは観測された蛍光強度、F0はRNAまたはDNAが存在しない場合の蛍光強度を示す。
【0111】
[実施例11]
95μLの緩衝液(20mmol/L リン酸、pH7.0、20mmol/L NaCl、80mmol/L KCl)に、ジメチルスルホキシド(4μL)と化合物62のジメチルスルホキシド溶液(1μL、10pmol)を加え、混合溶液を調製した。この混合溶液の蛍光滴定スペクトルを3回測定し、その結果から、蛍光強度の標準偏差を算出した。
混合溶液をRNAまたDNAで滴定し、蛍光強度の変化を観察した。蛍光滴定スペクトルの測定は、実施例3と同様に行った。
得られた蛍光滴定スペクトルのデータから、実施例10と同様にして、蛍光強度の標準偏差を算出した。
RNAとしてhsa-mir-4520-1(配列番号1)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを図22に示す。また、図22に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を図23および図24に示す。
図23および図24に示す結果から、検出限界は0.35nmol/L(3.0ng/mL)であった。
DNAとしてds-DNA(配列番号12、配列番号13)を用いた場合の蛍光滴定スペクトルを図25に示す。また、図25に示す蛍光滴定スペクトルに基づいて検出限界を算出した結果を図26に示す。
図26に示す結果から、二本鎖DNAでは蛍光応答は観測されず、水素結合を形成しないグアニンに対する高い選択性が示された。
図23図24および図26において、Fは観測された蛍光強度、F0はRNAまたはDNAが存在しない場合の蛍光強度を示す。
【0112】
[実施例12]
リン酸緩衝液(pH7.0)にRNA(0~0.5μmol/L)を添加したときの、上記の化学式(6)で表される化合物において、Rがメチル基である下記の化学式(37)で表される化合物64(10nmol/L)の蛍光滴定スペクトルと、蛍光滴定からの解離定数(K)を算出した。RNAとしては、hsa-mir-4520-1(配列番号1)を用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定には、日本分光株式会社製の分光蛍光光度計FP-6500またはFP-8300を用いた。
蛍光滴定スペクトルの測定条件を、励起波長(λex):633nm、蛍光波長(λem):654nm、温度:20℃とした。
結果を図27および図28に示す。図27は、化合物64の蛍光滴定スペクトルを示す図である。図28は、化合物64の蛍光滴定スペクトルの強度比とRNAの濃度との関係を示す図である。
【0113】
【化39】
【0114】
図27図28に示す結果から、化合物64は、蛍光色素を変えることで検出の波長を変えることができ、さらに結合強度の高さも維持できることが分かった。
【0115】
[実施例13]
リン酸緩衝液(pH7.0)にRNA(0.1μmol/L)とテスト化合物(5μmol/L、LOPAC(登録商標)1280、Aldrich社)を添加したときの、上記の化学式(2)で表される化合物において、Rがベンジル基である上記の化学式(35)で表される化合物62(0.1μmol/L)の蛍光変化を測定した。蛍光の測定には、テカンジャパン株式会社製のマルチ検出モードプレートリーダー TECAN Infinite(登録商標) F200 PROを用いた。RNAは、hsa-mir-221(配列番号18:UCAGCAUUUCUGUGUUCGUUAGGCAACAGGCUGA)を用いた。また、比較実験として、上記の化学式(38)で表される既知のTO-PRO-1を用いて同様の実験を行った。テスト化合物存在下で蛍光強度が大きく減少したものをヒット化合物とすると、表に示すようにTO-PRO-1ではヒットしなかった化合物を1種類見出した。さらに、化合物62とTO-PRO-1の結合位置が違うため、両方がヒットした11種類の化合物は非特異的な結合であることが示唆される。
【0116】
【化40】
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
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【配列表】
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