(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086270
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】カムクラッチユニット
(51)【国際特許分類】
F16D 41/07 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
F16D41/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201314
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】森田 彰
(72)【発明者】
【氏名】村上 将
(72)【発明者】
【氏名】経田 宏和
(57)【要約】
【課題】ケージリングの剛性を高めたり、別部材を配置することなく、少ないスペースでアキシャル荷重を受けることができるカムクラッチユニットを提供すること。
【解決手段】内輪と外輪の間において周方向に並ぶように配置された複数のカム130及び複数のローラ140と、カム130及びローラ140の周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部151、152を有するケージリング150と、カム130を付勢する環状のスプリング160を備え、ローラ140は、ケージリング150に保持された際にケージリング150よりも軸方向に突出した部分を有すること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に相対回転可能に設けられている内輪及び外輪の間に配置される複数のカム及び複数のローラと、前記カム及び前記ローラの周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部を有するケージリングと、前記カムを付勢する環状のスプリングを備えたカムクラッチユニットであって、
前記ローラは、前記ケージリングに保持された際に前記ケージリングよりも軸方向に突出した部分を有することを特徴とするカムクラッチユニット。
【請求項2】
前記ローラは、円周状の溝部を有し、
前記ケージリングの前記ローラのポケット部は、前記溝部内に進入可能な円周方向に延びる保持桁部を有することを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチユニット。
【請求項3】
前記ローラは、軸方向の端部に小径円筒部を有することを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチユニット。
【請求項4】
前記ケージリングの前記ローラのポケット部は、前記小径円筒部に対応する位置に円周方向に延びる保持桁部を有することを特徴とする請求項3に記載のカムクラッチユニット。
【請求項5】
前記ケージリングは、金属製の板状材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸と出力軸との間でトルクの伝達及び遮断を行うカムクラッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
カムクラッチユニットとして、同軸上に相対回転可能に設けられている内輪と外輪の間に配置される複数のカム及び複数のローラと、カム及びローラの周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部を有するケージリングと、カムを付勢する環状のスプリングを備えたものが公知である。
カム及びローラを備えたカムクラッチユニット500は、例えば
図10乃至
図14に示すように、同軸上に相対回転可能に設けられている内輪及び外輪の間に複数のカム530及び複数のローラ540が周方向に配置されるように、カム530及びローラ540がケージリング550のポケット部551に収容され、カム530及びローラ540の周方向の相対的な移動が規制されている。
また、カム530及びローラ540には、それぞれ周方向の溝部535、545を有しており、溝部535、545内に環状のスプリング560が収容されてカム530及びローラ540を内輪側に付勢するように構成されている。
【0003】
公知のカムクラッチユニットでは、摩耗や衝撃に強い材料が要求されるカム530及びローラ540の中央に環状のスプリング560が収容される周方向の溝部535、545を有していることから、カム530及びローラ540の製造時の加工工数が大きく難度が高く、加工上、幅寸法に制限があり薄幅化できないという問題があった。
また、ローラ540は、軸方向の拘束のみされて自由に回転する必要があるが、溝部5545の底部とスプリング560との間に摩擦摺動が生じることから高速回転時に無視できない回転抵抗を生じるという問題があるとともに、スプリング560が摩耗により劣化することで、カムクラッチ自体の寿命に影響を及ぼす虞があった。
例えば、特許文献1に示すように、カム及びローラの軸方向の両端側にスプリングによる付勢部を設けたものも公知であるが、カムにはスプリングの軸方向の抜け落ちを防止するための係止構造が必要であり、カム及びローラの加工の難度は多少軽減するものの、加工工数は減らすことはできない。
【0004】
これらの課題を解決するため、出願人は、
図15乃至
図19に示すように、同一軸上に相対回転可能に設けられた内輪の軌道面と外輪の軌道面との間の環状空間において内輪と外輪との間でトルクの伝達及び遮断を行う係合子としての複数のカム630と、内輪と外輪を自由に回転させる複数のローラ640と、カム630及びローラ640の周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部651、652を有するケージリング650と、複数のカム630の各々を内輪及び外輪に対する噛み合い方向に付勢する環状のスプリング660を備えたカムクラッチユニット600を提案した(特願2022-5605号)。
【0005】
このカムクラッチユニット600は、複数のカム630の各々が、
図17等に示すように、軸方向の一方の端面に環状のスプリング660と係合可能な係合段部631を有している。
係合段部631はカム630がフリーとなる状態で
図17の図示右側が外周側に位置する傾斜形状となっており、スプリング660が係合段部631の右側を押圧することで、カム630が内輪側に付勢されるとともに、カム630が作動する方向に揺動するよう付勢される。
複数のローラ640は、
図18等に示すように、溝や段部を有さず、ローラ640の軸方向寸法rwはカム630の係合段部631を除いた軸方向寸法cw以下である。
ローラ640の両端面の外周縁部は面取りされており、スプリング660との引っ掛かりを防止している。
【0006】
ケージリング650は、カム630を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部651及びローラ640を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部652と、環状のスプリング660の軸方向への移動を規制する複数のフック部653を有している。
ケージリング650のカム630を収容するポケット部651とローラ640を収容するポケット部652とが周方向交互に配置されている。
各ポケット部651、652は、軸方向の一方の端面側の面でカム630及びローラ640の軸方向の一方の移動が規制され、軸方向の他方への移動はスプリング660によって規制される。
また、ローラ640を収容するポケット部652のローラ640に隣接する面は、ローラ640の外輪側及び内輪側への移動を規制する形状に形成されている。
さらに、
図19に示すように、カム630を収容するポケット部651の図示左側に隣接するフック部653は、環状のスプリング660の半径方向への移動を規制するフック底部654を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の出願人の提案するカムクラッチユニットは、構造がシンプルで製造時の加工工数が少なく難度が低くなり、薄幅化が可能となるとともに、カムの端面の係合段部をスプリングの軸方向の移動を規制する形状に加工する必要がなく、さらに加工工数が少なく難度が低くなるという格別の効果を有している。
また、フック底部によって各カムの両端でのスプリングの半径が規定されて各カムの押圧力の他のカムの姿勢の変化による影響が抑制され、隣り合うカムを均等に加圧することができ精度の高いカムクラッチを提供することができるとともに、ローラは軸方向の拘束のみされて自由に回転する事ができ、スプリングとの間にほとんど摩擦摺動が生じることなく回転抵抗を低減化できるという格別の効果があった。
【0009】
しかしながら、内輪または外輪に生じるアキシャル荷重をカムクラッチユニットで受けようとした場合、公知のカムクラッチユニットや上記の出願人の提案するカムクラッチユニットは、ケージリングのポケット部にカムとローラが挿入された際に、カムやローラの軸方向の端部より外側にケージリングが存在する構造のため、ケージリングでアキシャル荷重を受ける必要があるが、ケージ構造であることから荷重に耐える剛性を確保することが難しかった。
また、アキシャル荷重を受けるための部材を追加して配置することも考えられるが、そのために大きなスペースが必要となる。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決することを目的とするものであり、ケージリングの剛性を高めたり、別部材を配置することなく、少ないスペースでアキシャル荷重を受けることができるカムクラッチユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、同軸上に相対回転可能に設けられている内輪及び外輪の間に配置される複数のカム及び複数のローラと、前記カム及び前記ローラの周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部を有するケージリングと、前記カムを付勢する環状のスプリングを備えたカムクラッチユニットであって、前記ローラは、前記ケージリングに保持された際に前記ケージリングよりも軸方向に突出した部分を有するように構成することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本請求項1に記載のカムクラッチユニットによれば、ローラがケージリングに保持された際にケージリングよりも軸方向に突出していることで、外輪や内輪からアキシャル荷重を伝達する部材がローラの突出端部と当接可能となり、アキシャル荷重をローラで受けることが可能となるため、ケージリングの剛性を高めたり、別部材を配置することなく、少ないスペースでアキシャル荷重を受けることが可能となる。
【0013】
本請求項2に記載の構成によれば、ローラが円周状の溝部を有し、ローラのポケット部に溝部内に進入可能な円周方向に延びる保持桁部を有することにより、ケージリングに対する軸方向位置を溝部で規制することが可能となり、ローラを安定保持しつつ、ローラにケージリングより突出した部分を設けることができる。
本請求項3に記載の構成によれば、ローラが軸方向の端部に小径円筒部を有することにより、小径部をゲージリングより軸方向に突出させることが可能となる。
本請求項4に記載の構成によれば、ローラのポケット部が小径円筒部に対応する位置に円周方向に延びる保持桁部を有することにより、ローラの大径部の端面でケージリングに対する軸方向位置で規制することが可能となり、ローラを安定保持することが可能となる。
本請求項5に記載の構成によれば、ケージリングは、金属製の板状材料で形成されていることにより、ケージリングをより薄くて軽量なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態のカムクラッチユニットの斜視図。
【
図2】
図1に示すカムクラッチユニットの分解斜視図。
【
図4】本発明の第2実施形態のカムクラッチユニットの斜視図。
【
図5】
図4に示すカムクラッチユニットの分解斜視図。
【
図7】本発明の第3実施形態のカムクラッチユニットの斜視図。
【
図8】
図7に示すカムクラッチユニットの分解斜視図。
【
図11】
図10に示すカムクラッチユニットの回転軸方向に見た側面図。
【
図12】
図10に示すカムクラッチユニットのカムの側面図及び正面図。
【
図13】
図10に示すカムクラッチユニットのローラの側面図及び正面図。
【
図14】
図10に示すカムクラッチユニットの一部側面図及び断面図。
【
図15】参考例に係るカムクラッチユニットの斜視図。
【
図16】
図15に示すカムクラッチユニットの回転軸方向に見た側面図。
【
図17】
図15に示すカムクラッチユニットのカムの側面図及び正面図。
【
図18】
図15に示すカムクラッチユニットのローラの側面図及び正面図。
【
図19】
図15に示すカムクラッチユニットの一部側面図及び断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るカムクラッチユニット100は、
図1乃至
図3に示すように、同一軸上に相対回転可能に設けられた内輪の軌道面と外輪の軌道面との間の環状空間において内輪と外輪との間でトルクの伝達及び遮断を行う係合子としての複数のカム130と、内輪と外輪を自由に回転させる複数のローラ140と、カム130及びローラ140の周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部151、152を有するケージリング150と、複数のカム130の各々を内輪及び外輪に対する噛み合い方向に付勢する環状のスプリング160を備えている。
【0016】
複数のカム130の各々は、
図1、2に示すように、軸方向の中央に環状のスプリング160と係合可能な溝部135を有している。
本実施形態においては、溝部135の底部は偏芯した位置に凸部となる傾斜形状となっており、スプリング160が溝部135の底部の凸部を押圧することで、カム130が内輪側に付勢されるとともに、カム130が作動する方向に揺動するよう付勢される。
複数のローラ140は、
図1、2等に示すように、軸方向の中央に環状のスプリング160と係合可能な溝部145を有している。
本実施形態においては、ローラ140の溝部145の外周縁部は面取りされており、スプリング160との引っ掛かりを防止している。
【0017】
ケージリング150は、カム130を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部151及びローラ140を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部152を有している。
カム130を収容するポケット部151は、カム130の軸方向両端で軸方向の移動を規制するように、四方が囲まれた形状に構成されている。
ローラ140を収容するポケット部152は、ローラ140の溝部145内に進入可能な円周方向に延びる保持桁部155を有し、中央が保持桁部155によって円周方向に連結され軸方向両端は開放された形状に構成されている。
本実施形態においては、ケージリング150のカム130を収容するポケット部151が8カ所、ローラ140を収容するポケット部152が4カ所、均等に配置されている。
【0018】
ポケット部151においてカム130は両端面がポケット部151によって軸方向の移動が規制され、ポケット部152においてローラ140は溝部145の両側面が保持桁部155によって軸方向の移動が規制される。
また、カム130を収容するポケット部151の円周方向でカム130に隣接する端縁は、カム130の内輪側への移動を規制する形状に形成され、ローラ140を収容するポケット部152の円周方向でローラ140に隣接する端縁は、ローラ140の内輪側への移動を規制する形状に形成されている。
さらに、スプリング160がカム130の溝部135及びローラ140の溝部145に掛け回されて、カム130及びローラ140の外輪側への移動を規制することで、カムクラッチユニット100として、カム130及びローラ140の半径方向、円周方向、軸方向への移動が規制された状態に構成される。
【0019】
ローラ140は、
図1、3に示すように、ポケット部152の両端の開放された部分より突出し、ケージリング150よりも両側で軸方向に突出した部分を有する形状に構成されている。
このことで、外輪及び内輪から受ける軸方向のアキシャル荷重をローラ140の両端で受けることが可能となり、ケージリング150の剛性を高めたり、別部材を配置することなく、少ないスペースでアキシャル荷重を受けることが可能となる。
本実施形態では、ケージリング150は、カム130、ローラ140の位置規制と保持可能な程度の剛性でよいため、打ち抜き等でポケット部151、152が形成された環状の金属薄板で構成され、製作が容易で軽量なものとしている。
なお、本実施形態においては、8個のカム130と4個のローラ140が同数で交互に配置されているが、カム130とローラ140のそれぞれの数、配置はいかなるものであってもよい。
【0020】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るカムクラッチユニット200は、
図4乃至
図6に示すように、同一軸上に相対回転可能に設けられた内輪の軌道面と外輪の軌道面との間の環状空間において内輪と外輪との間でトルクの伝達及び遮断を行う係合子としての複数のカム230と、内輪と外輪を自由に回転させる複数のローラ240と、カム230及びローラ240の周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部251、252を有するケージリング250と、複数のカム230の各々を内輪及び外輪に対する噛み合い方向に付勢する環状のスプリング260を備えている。
【0021】
複数のカム230の各々は、
図4、5に示すように、軸方向の一方の端面に環状のスプリング260と係合可能な係合段部231を有している。
本実施形態においては、係合段部231は偏芯した位置に凸部となる傾斜形状となっており、スプリング260が係合段部231の凸部を押圧することで、カム230が内輪側に付勢されるとともに、カム230が作動する方向に揺動するよう付勢される。
複数のローラ240は、
図4、5等に示すように、軸方向の端部に環状のスプリング260と係合可能な小径円筒部246を有している。
本実施形態においては、ローラ240の小径円筒部246側の大径部の外周縁部は面取りされており、スプリング260との引っ掛かりを防止している。
【0022】
ケージリング250は、カム230を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部251及びローラ240を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部252と、環状のスプリング260の軸方向への移動を規制する複数のフック部253を有している。
カム230を収容するポケット部251は、カム230の軸方向両端で軸方向の移動を規制するように、四方が囲まれた形状に構成されている。
ローラ240を収容するポケット部252は、ローラ240の小径円筒部246に対応する位置に円周方向に延びる保持桁部255を有し、一方の軸方向端部が保持桁部255によって円周方向に連結され、他方の軸方向端部は開放された形状に構成されている。
本実施形態においては、ケージリング250のカム230を収容するポケット部251が8カ所、ローラ240を収容するポケット部252が4カ所、均等に配置されている。
【0023】
ポケット部251においてカム230は軸方向の一方の端面側でフック部253によって移動を規制され、軸方向の他方への移動はポケット部251によって移動が規制され、ポケット部252においてローラ240は軸方向の一方の端面側で保持桁部255によって移動が規制される。
また、カム230を収容するポケット部251の円周方向でカム230に隣接する端縁は、カム230の内輪側への移動を規制する形状に形成され、ローラ240を収容するポケット部252の円周方向でローラ240に隣接する端縁は、ローラ240の内輪側への移動を規制する形状に形成されている。
さらに、スプリング260がカム230の係合段部231及びローラ240の小径円筒部246に掛け回されて、カム230及びローラ240の外輪側への移動を規制することで、カムクラッチユニット200として、カム230及びローラ240の半径方向、円周方向、軸方向への移動が規制された状態に構成される。
【0024】
ローラ240は、
図4、6に示すように、一方の軸方向端部で小径円筒部246の先端が保持桁部255を超えて突出し、ケージリング250よりも軸方向に突出した部分を有する形状に構成されている。
ケージリング250は内輪に近い位置に配置されるため、内輪から受ける軸方向のアキシャル荷重をローラ240の開放側で受けることは困難なものの、外輪から受ける軸方向のアキシャル荷重をローラ240の開放側で受けることは容易であり、内輪から受ける軸方向のアキシャル荷重をケージリング250よりも軸方向に突出したローラ240の小径円筒部246の先端で受けることが可能となり、ケージリング250の剛性を高めたり、別部材を配置することなく、少ないスペースでアキシャル荷重を受けることが可能となる。
本実施形態では、ケージリング250の剛性はカム230、ローラ240の位置規制と保持可能な程度でよいため、打ち抜き等でポケット部251、252が形成され、折り曲げでフック部253が形成された環状の金属薄板で構成され、製作が容易で軽量なものとしている。
【0025】
なお、本実施形態においては、8個のカム230と4個のローラ240が同数で交互に配置されているが、カム230とローラ240のそれぞれの数、配置はいかなるものであってもよい。
また、本実施形態においては、ポケット部252の開放された側にはローラ240の移動は規制されていないが、ポケット部252を軸方向両側で閉じた形状とし、ローラ240の軸方向両側に小径円筒部246を設けて、ローラ240の軸方向の両方向の移動を規制してもよい。
さらに、ローラ240の開放側を延長したり、開放側にも小径円筒部246を設けることで、ケージリング250よりも軸方向に突出するようにし、外輪及び内輪から受ける軸方向のアキシャル荷重をローラ240の両端で受けることを可能としてもよい。
【0026】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るカムクラッチユニット300は、
図7乃至
図9に示すように、同一軸上に相対回転可能に設けられた内輪の軌道面と外輪の軌道面との間の環状空間において内輪と外輪との間でトルクの伝達及び遮断を行う係合子としての複数のカム330と、内輪と外輪を自由に回転させる複数のローラ340と、カム330及びローラ340の周方向の相対的な移動を規制する複数のポケット部351、352を有するケージリング350と、複数のカム330の各々を内輪及び外輪に対する噛み合い方向に付勢する環状のスプリング360を備えている。
【0027】
複数のカム330の各々は、
図7、8に示すように、軸方向の一方の端面に環状のスプリング360と係合可能な係合段部331を有している。
本実施形態においては、係合段部331は偏芯した位置に凸部となる傾斜形状となっており、スプリング360が係合段部331の凸部を押圧することで、カム330が内輪側に付勢されるとともに、カム330が作動する方向に揺動するよう付勢される。
複数のローラ340は、
図7、8等に示すように、軸方向の端部よりに環状のスプリング360と係合可能な溝部345を有している。
本実施形態においては、ローラ340の溝部345の外周縁部は面取りされており、スプリング360との引っ掛かりを防止している。
【0028】
ケージリング350は、カム330を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部351及びローラ340を収容し周方向の相対的な移動を規制するポケット部352を有している。
カム330を収容するポケット部351は、カム330の係合段部331の反対の端面で軸方向の移動を規制するように、三方が囲まれた形状に構成されている。
ローラ340を収容するポケット部352は、ローラ340の溝部345内に進入可能な円周方向に延びる保持桁部355を有し、保持桁部355によって円周方向に連結され軸方向両端は開放された形状に構成されている。
本実施形態においては、ケージリング350のカム330を収容するポケット部351が8カ所、ローラ340を収容するポケット部352が4カ所、均等に配置されている。
【0029】
ポケット部351においてカム330は軸方向の一方の端面側でスプリング360によって移動を規制され、軸方向の他方への移動はポケット部351によって軸方向の移動が規制され、ポケット部352においてローラ340は溝部345の両側面が保持桁部355によって軸方向の移動が規制される。
また、カム330を収容するポケット部351の円周方向でカム330に隣接する端縁は、カム330の内輪側への移動を規制する形状に形成され、ローラ340を収容するポケット部352の円周方向でローラ340に隣接する端縁は、ローラ340の内輪側への移動を規制する形状に形成されている。
さらに、スプリング360がカム330の係合段部331及びローラ340の溝部345に掛け回されて、カム330及びローラ340の外輪側への移動を規制することで、カムクラッチユニット300として、カム330及びローラ340の半径方向、円周方向、軸方向への移動が規制された状態に構成される。
【0030】
ローラ340は、
図7、9に示すように、ポケット部352の両端の開放された部分より突出し、ケージリング350よりも両側で軸方向に突出した部分を有する形状に構成されている。
このことで、外輪及び内輪から受ける軸方向のアキシャル荷重をローラ340の両端で受けることが可能となり、ケージリング350の剛性を高めたり、別部材を配置することなく、少ないスペースでアキシャル荷重を受けることが可能となる。
本実施形態では、ケージリング350は、樹脂で形成され、製作が容易で軽量なものとしている。
なお、本実施形態においては、8個のカム330と4個のローラ340が同数で交互に配置されているが、カム330とローラ340のそれぞれの数、配置はいかなるものであってもよい。
【0031】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0032】
100、200、300、500、600 ・・・ カムクラッチユニット
130、230、330、530、630 ・・・ カム
231、331、 631 ・・・ 係合段部
135、 535 ・・・ 溝部
140、240、340、540、640 ・・・ ローラ
145、 345、545 ・・・ 溝部
246 ・・・ 小径円筒部
150、250、350、550、650 ・・・ ケージリング
151、251、351、551、651 ・・・ ポケット部(カム用)
152、252、352、552、652 ・・・ ポケット部(ローラ用)
253、 653 ・・・ フック部
654 ・・・ フック底部
155、255、355 ・・・ 保持桁部
160、260、360、560、660 ・・・ スプリング