(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086279
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械の制動システムおよび作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20240620BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60T7/12 C
E02F9/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201324
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹野 陽
(72)【発明者】
【氏名】内海 将広
【テーマコード(参考)】
2D015
3D246
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB02
3D246AA14
3D246DA01
3D246EA09
3D246GB30
3D246HA51A
3D246HA52A
3D246JB11
(57)【要約】
【課題】運転操作に支障が生じにくい作業機械、作業機械の制動システムおよび作業機械の制御方法を提供する。
【解決手段】障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御が実行される。解除装置52は、オペレータの操作により自動制動制御を解除する。走行方向切替装置53は、オペレータの操作により走行方向を切り替える。コントローラ26は、解除装置52の操作により解除された自動制動制御を走行方向切替装置53における走行方向の切替信号に基づいて復帰させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う作業機械であって、
オペレータの操作により前記自動制動制御を解除する解除装置と、
オペレータの操作により走行方向を切り替える走行方向切替装置と、
前記解除装置の操作により解除された前記自動制動制御を前記走行方向切替装置における走行方向の切替信号に基づいて復帰させるコントローラと、を備えた、作業機械。
【請求項2】
走行を制動する制動装置と、
前記作業機械の走行方向に位置する障害物を検出する物体センサと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記自動制動制御において、前記物体センサによる障害物の検出結果に基づいて前記制動装置により走行を自動で制動する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、障害物の検出結果に基づいて走行を制動した状態で、前記解除装置の操作により前記自動制動制御を解除する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、障害物の検出前に、前記解除装置の操作により前記自動制動制御を解除する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、前記走行方向切替装置が後進から前進または中立に切替えられた場合に前記自動制動制御を復帰させる、請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
オペレータが着座するための運転席と、
前記運転席の側方に配置されたコンソールと、をさらに備え、
前記解除装置は、前記コンソールに配置されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う作業機械の制動システムであって、
オペレータの操作により前記自動制動制御を解除する解除装置と、
オペレータの操作により走行方向を切り替える走行方向切替装置と、
前記解除装置の操作により解除された前記自動制動制御を前記走行方向切替装置における走行方向の切替信号に基づいて復帰させるコントローラと、を備えた、作業機械の制動システム。
【請求項8】
障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う作業機械の制御方法であって、
前記自動制動制御を解除するステップと、
解除された前記自動制動制御を走行方向の切替信号に基づいて復帰させるステップと、を備えた、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械の制動システムおよび作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実用新案登録第3219005号(特許文献1)には、作業機械の一例であるホイールローダにおいて、後方の障害物を検出し自動で走行を停止する衝突防止制御が開示されている。
【0003】
特許文献1に示すホイールローダでは、ホイールローダから物体までのエリアは、物体からの距離が近い順に第一エリア、第二エリア、および第三エリアの3つのエリアに分けられている。衝突防止制御においては、ホイールローダからの距離が最も近い第一エリアに障害物が存在する場合にブレーキが自動で作動することにより車両の走行が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において衝突防止制御はオペレータが制御一時解除手段を操作することにより解除される。しかしながら衝突防止制御を解除し続けるためには、オペレータは制御一時解除手段を操作し続ける必要がある。この場合、オペレータは制御一時解除手段を操作しながら作業機械の走行および作業機の動作を操作しなければならず、運転操作に支障が生じる可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、運転操作に支障が生じにくい作業機械、作業機械の制動システムおよび作業機械の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業機械および作業機械の制動システムの各々は、障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う。本開示の作業機械および作業機械の制動システムの各々は、解除装置と、走行方向切替装置と、コントローラとを備える。解除装置は、オペレータの操作により自動制動制御を解除する。走行方向切替装置は、オペレータの操作により走行方向を切り替える。コントローラは、解除装置の操作により解除された自動制動制御を走行方向切替装置における走行方向の切替信号に基づいて復帰させる。
【0008】
本開示の作業機械の制御方法は、障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う作業機械の制御方法であって、自動制動制御を解除するステップと、解除された自動制動制御を走行方向の切替信号に基づいて復帰させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、運転操作に支障が生じにくい作業機械、作業機械の制動システムおよび作業機械の制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態におけるホイールローダの構成を示す側面図である。
【
図2】
図1のホイールローダの制動システムを示すブロック図である。
【
図3】
図2の制動装置の構成を示す油圧回路図である。
【
図4】走行方向切替装置と解除装置との配置位置を示す図である。
【
図5】
図2の操作装置、物体センサおよびコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の一実施形態におけるホイールローダの制御方法を示す第1フロー図である。
【
図7】本開示の一実施形態におけるホイールローダの制御方法を示す第2フロー図である。
【
図8】自動制動制御と制動動作のON・OFFの遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、実施の形態と変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0012】
<ホイールローダ100の構成>
本実施形態におけるホイールローダ100の構成について
図1を用いて説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態におけるホイールローダ100(作業機械の一例)の構成を示す側面図である。
図1に示されるように、本実施形態におけるホイールローダ100は、車両本体1と、物体センサ25とを有している。車両本体1は、走行体2と、作業機3とを有している。作業機3は、走行体2に配置されている。走行体2は、車体フレーム10と、一対のフロントタイヤ4と、キャブ5と、エンジンルーム6と、一対のリアタイヤ7と、ステアリングシリンダ9とを有している。ホイールローダ100は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0014】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、および「下」とはキャブ5内の運転席5sに着座したオペレータから前方を見た状態を基準とする方向を示す。
図1では、前後方向をZで示し、前方向を示すときはZf、後方向を示すときはZbで示す。
【0015】
車体フレーム10は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、連結軸部13とを有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方向Zfに配置されている。連結軸部13は、車体フレーム10における左右方向(車幅方向)の中央に設けられており、フロントフレーム11と、リアフレーム12とを互いに回動可能に連結している。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0016】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、ベルクランク18とを有している。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0017】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に回動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に回動する。
【0018】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されている。キャブ5の内部には、オペレータが着座するための運転席5s、ステアリング操作のためのハンドル、作業機3を操作するためのレバー、各種のスイッチ、表示装置などが配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後方向Zbであってリアフレーム12上に配置されており、エンジン31を収納している。
【0019】
<ホイールローダ100の制動システム>
次に、本実施形態におけるホイールローダ100の制動システムについて
図2~
図5を用いて説明する。
【0020】
図2は、
図1のホイールローダの制動システムを示すブロック図である。
図3は、
図2の制動装置の構成を示す油圧回路図である。
図4は、走行方向切替装置と解除装置との配置位置を示す図である。
図5は、
図2の操作装置、物体センサおよびコントローラの構成を示すブロック図である。
【0021】
図2に示されるように、ホイールローダ100の制動システムは、駆動装置21と、制動装置22と、操作装置23と、物体センサ25と、コントローラ26とを有している。
【0022】
駆動装置21は、ホイールローダ100の駆動を行う。制動装置22は、ホイールローダ100の制動を行う。操作装置23は、オペレータによって操作される。物体センサ25は、車両本体1の周囲の物体(障害物)を検出する。コントローラ26は、操作装置23に対するオペレータの操作および物体センサ25による検出に基づいて、駆動装置21および制動装置22の操作を行う。
【0023】
(駆動装置21)
図2に示されるように、駆動装置21は、エンジン31と、HST32と、トランスファ33と、アクスル34と、フロントタイヤ4と、リアタイヤ7とを有している。
【0024】
エンジン31は、たとえばディーゼル式のエンジンであり、エンジン31で発生した駆動力がHST(Hydro Static Transmission)32のポンプ32aを駆動する。
【0025】
HST32は、ポンプ32aと、モータ32bと、油圧回路32cとを有している。ポンプ32aは、たとえば斜板式可変容量型のポンプであって斜板の角度をソレノイド32dによって変更することができる。ポンプ32aがエンジン31によって駆動されることにより作動油を吐出する。吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、たとえば斜板式ポンプであって、斜板の角度をソレノイド32eによって変更することができる。
【0026】
油圧回路32cは、ポンプ32aとモータ32bとを接続している。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と、第2駆動回路32c2とを有している。作動油が、ポンプ32aから第1駆動回路32c1を通じてモータ32bに供給されることにより、モータ32bが一方向(たとえば、前進方向)に駆動される。作動油が、ポンプ32aから第2駆動回路32c2を通じてモータ32bに供給されることにより、モータ32bが他方向(たとえば、後進方向)に駆動される。なお、作動油の第1駆動回路32c1または第2駆動回路32c2への吐出方向はソレノイド32dによって変更することができる。
【0027】
トランスファ33は、エンジン31からの出力を前後のアクスル34に分配する。
前側のアクスル34には一対のフロントタイヤ4が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。また、後側のアクスル34には一対のリアタイヤ7が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。
【0028】
(制動装置22)
図2に示されるように、制動装置22は、ブレーキペダル54の操作に基づく車両本体1の制動の実施およびコントローラ26からの指令に基づく車両本体1の自動制動制御の実施を行う。
【0029】
制動装置22は、ブレーキ弁ユニット41と、ブレーキ回路42a、42b(サービスブレーキの一例)と、パーキングブレーキ43と、作動油供給路44a、44bと、EPC(Electric Proportional Valve)弁46と、シャトル弁ユニット47と、タンク48とを有している。
【0030】
作動油供給路44a、44bには、アキュームレータ、ポンプなどが接続されており、作動油が供給される。
【0031】
図3に示されるように、ブレーキ弁ユニット41は、後述するブレーキペダル54によって操作される。ブレーキ弁ユニット41は、リア用ブレーキ弁41aと、フロント用ブレーキ弁41bとを有している。リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの各々は、3つのポートを有する3位置切替弁である。
【0032】
リア用ブレーキ弁41aの第1ポートは、アキュームレータ49aを介して作動油供給路44aに接続されている。また、リア用ブレーキ弁41aの第2ポートは、タンク48に接続されている。リア用ブレーキ弁41aの第3ポートは、シャトル弁ユニット47のリア用シャトル弁47aに接続されている。
【0033】
リア用ブレーキ弁41aは、第1状態において第1ポートと第3ポートを繋ぎ、作動油供給路44aとリア用シャトル弁47aとを接続し、リア用シャトル弁47aに作動油を供給する。リア用ブレーキ弁41aは、第2状態において、全てのポートを閉じる。リア用ブレーキ弁41aは、第3状態において第2ポートと第3ポートとを接続し、リア用シャトル弁47aとリア用ブレーキ弁41aとの間の作動油をタンク48に排出する。リア用ブレーキ弁41aは、第2状態および第3状態において、リア用シャトル弁47aへの作動油の供給を停止する。
【0034】
フロント用ブレーキ弁41bの第1ポートは、アキュームレータ49bを介して作動油供給路44bに接続されている。また、フロント用ブレーキ弁41bの第2ポートは、タンク48に接続されている。フロント用ブレーキ弁41bの第3ポートは、シャトル弁ユニット47のフロント用シャトル弁47bに接続されている。
【0035】
フロント用ブレーキ弁41bは、第1状態において第1ポートと第3ポートとを繋ぎ、作動油供給路44bとフロント用シャトル弁47bとを接続し、フロント用シャトル弁47bに作動油を供給する。フロント用ブレーキ弁41bは、第2状態において、全てのポートを閉じる。フロント用ブレーキ弁41bは、第3状態において第2ポートと第3ポートとを接続し、フロント用シャトル弁47bとフロント用ブレーキ弁41bとの間の作動油をタンク48に排出する。フロント用ブレーキ弁41bは、第2状態および第3状態において、フロント用シャトル弁47bへの作動油の供給を停止する。
【0036】
ブレーキペダル54の操作量に応じてリア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの開度が調整され、シャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が変更される。たとえばブレーキペダル54の操作量が大きい場合には、リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bからシャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が多くなる。
【0037】
ブレーキ回路42aは、リアのアクスル34(
図2)に設けられている。ブレーキ回路42aは、リア用シャトル弁47aに接続されている。ブレーキ回路42bは、フロントのアクスル34(
図2)に設けられている。ブレーキ回路42bは、フロント用シャトル弁47bに接続されている。
【0038】
ブレーキ回路42a、42bは、油圧式のブレーキである。ブレーキ回路42aは、リア用シャトル弁47aから供給される作動油の量が多いまたは圧が大きいほど制動力が強くなる。ブレーキ回路42bは、フロント用シャトル弁47bから供給される作動油の量が多いまたは圧が大きいほど制動力が強くなる。
【0039】
EPC弁46は、作動油供給路44bに接続されている。EPC弁46は、3つのポートを有するソレノイド弁である。EPC弁46の第1ポートは、作動油供給路44bに接続されている。EPC弁46の第2ポートは、タンク48に接続されている。EPC弁46の第3ポートは、シャトル弁ユニット47に接続されている。
【0040】
EPC弁46は、開状態において、第1ポートと第3ポートとを接続し、作動油供給路44bから供給される作動油をシャトル弁ユニット47に供給する。EPC弁46は、コントローラ26からの指示に基づいて開度が調整され、シャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が変更される。
【0041】
EPC弁46は、閉状態において、第1ポートが閉じられ、第2ポートと第3ポートとを接続し、EPC弁46からシャトル弁ユニット47までの流路の作動油をタンク48に排出する。これにより、EPC弁46は、閉状態において、作動油供給路44bからシャトル弁ユニット47への作動油の供給を停止する。
【0042】
本実施形態では、コントローラ26は、ホイールローダ100が所定方向(たとえば後方向Zb)に走行し、かつ走行方向の物体と衝突のリスクが高いと判定したときにEPC弁46を開状態に制御する。
【0043】
シャトル弁ユニット47は、リア用シャトル弁47aと、フロント用シャトル弁47bとを有している。リア用シャトル弁47aは、リア用ブレーキ弁41aを介して供給される作動油と、EPC弁46を介して供給される作動油のうち圧力が大きい方の作動油をブレーキ回路42aに供給する。フロント用シャトル弁47bは、フロント用ブレーキ弁41bを介して供給される作動油と、EPC弁46を介して供給される作動油とのうち圧力が大きい方の作動油をブレーキ回路42bに供給する。
【0044】
このような構成により、ブレーキペダル54が操作されずブレーキ弁ユニット41から作動油が供給されない場合でも、コントローラ26からの指示によってEPC弁46が開状態にされると、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bからブレーキ回路42a、42bに作動油が供給され、自動制動制御が実施される。
【0045】
ブレーキ回路42a、42bにより制動状態と非制動状態とを切り替えられるブレーキは、たとえば湿式多板ディスクブレーキである。湿式多板ディスクブレーキは、複数のディスクと、プレートと、ピストンと、スプリングとを主に有している。複数のディスクの各々は、フロントタイヤ4またはリアタイヤ7への出力軸と一体となっている。プレートは、ディスクと交互に配置され、固定部材に取り付けられ、回転しない。ピストンは、ブレーキ回路42a、42bに供給される作動油の油圧により作動する。ピストンが作動することにより、プレートが複数のディスクの間で挟み込まれて押圧される。これにより湿式多板ディスクブレーキは作動し、制動状態となる。またブレーキ回路42a、42bへの作動油の供給が停止されると、スプリングの反発力(復元力)でピストンは元の位置に復帰し、プレートとディスクとの押圧状態が解除される。これにより湿式多板ディスクブレーキは非制動状態となる。
【0046】
図2に示されるように、パーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられている。パーキングブレーキ43としては、たとえば、制動状態と非制動状態とを切り替え可能な湿式多段式のブレーキ、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0047】
(操作装置23)
図2に示されるように、操作装置23は、キャブ5(
図1)内に搭乗したオペレータにより操作される。操作装置23は、開始装置51と、解除装置52と、走行方向切替装置53と、ブレーキペダル54と、アクセル55と、パーキングスイッチ56とを有している。
【0048】
開始装置51は、キャブ5内に設けられている。開始装置51は、たとえばキースイッチである。オペレータは、キースイッチ51にキーを挿し込むなどの操作によりOFF状態からON状態への切り替えが可能となる。これによりキースイッチ51からON状態またはOFF状態を示す操作信号がコントローラ26に送信される。コントローラ26は、ON状態の操作信号を取得すると、エンジン31が始動するよう制御するとともに、自動制動制御を開始する。またコントローラ26は、OFF状態の操作信号を取得すると、エンジン31を停止する。
【0049】
解除装置52は、キャブ5内に設けられている。解除装置52は、
図4に示されるように運転席5sの側方に配置されたコンソール61に配置されていてもよい。たとえばコンソール61に配置された複数のスイッチ63のいずれか1つが解除装置52に設定されてもよい。運転席5sとコンソール61との間にはアームレスト62が配置されていてもよい。
【0050】
図2に示されるように、オペレータは、解除装置52を操作して自動制動制御を解除する。オペレータの操作により解除装置52から解除信号がコントローラ26に送信される。コントローラ26は、解除信号を取得すると、EPC弁46を閉状態として自動制動制御を解除する。
【0051】
走行方向切替装置53は、キャブ5内に設けられている。走行方向切替装置53は、
図4に示されるように、ステアリングコラムから突き出すタイプのレバー64であってもよく、またキャブ5の床から突き出すタイプのレバーであってもよい。
【0052】
図2に示されるように、オペレータは、走行方向切替装置53を操作してホイールローダ100の走行方向を設定する。走行方向切替装置53はたとえばFNRレバーである。FNRレバー53は、前進(F)、中立(N)、または後進(R)のレバー位置をとることができる。FNRレバー53のレバー位置を示す操作信号がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、ソレノイド32dを制御することにより走行方向を前進、中立、または後進に切り替える。
【0053】
FNRレバー53のレバー位置を検出する位置検出センサとして、ポテンショメータが用いられてもよいし、前進位置、後進位置および中立位置ごとにスイッチが設けられていてもよい。また、ポテンショメータとスイッチのうち一方が誤操作しても検出可能なように双方が設けられていてもよい。
【0054】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられている。ブレーキペダル54は、ブレーキ弁ユニット41のリア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの開度を調整する。
【0055】
アクセル55は、キャブ5内に設けられている。オペレータは、アクセル55を操作してスロットル開度を設定する。アクセル55は、アクセル操作量を示す開度信号を生成してコントローラ26へ送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてエンジン31の回転速度を制御する。
【0056】
パーキングスイッチ56は、キャブ5内に設けられており、オン・オフに状態を切り替え可能なスイッチであり、その状態を示す信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてパーキングブレーキ43を制動状態または非制動状態にする。
【0057】
(物体センサ25)
図2に示されるように、物体センサ25は、車両本体1の周囲の物体を検出する。物体センサ25は、ホイールローダ100の走行方向に位置する物体を検出する。具体的には物体センサ25は、ホイールローダ100が後方向Zbに走行する場合には車両本体1の後方向Zbの物体を検出する後方検出部である。また物体センサ25は、ホイールローダ100が前方向Zfに走行する場合には車両本体1の前方向Zfの物体を検出する前方検出部である。
【0058】
物体センサ25が後方検出部である場合、後方検出部25は、たとえば、
図1に示すように車両本体1の後端に取り付けられるが、後端以外に取り付けられてもよい。物体センサ25が前方検出部である場合、前方検出部25は、たとえばキャブ5に取り付けられてもよく、フロントフレーム11に取り付けられてもよく、またこれら以外に取り付けられてもよい。
【0059】
物体センサ25は、たとえばレーザ光を射出して対象物の情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)である。物体センサ25は、電波を射出することにより対象物の情報を取得するRadar(Radio Detection and Ranging)であってもよい。Radarは、たとえば送信アンテナから発したミリ波帯の電波が物体の表面で反射して戻ってくる様子を受信アンテナで検出するミリ波レーダであってもよい。物体センサ25は、カメラを含む視覚センサであってもよい。物体センサ25は、赤外線センサであってもよい。
【0060】
物体センサ25によって検出された情報がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、車両本体1の走行方向に物体が存在するか否かを判定する。またコントローラ26は、検出した物体までの距離を算出する。コントローラ26は、検出した物体までの距離などに基づいて、車両本体1がその物体に衝突するリスクが高いか否かを判定してもよい。
【0061】
(コントローラ26)
コントローラ26は、プロセッサと、メインメモリと、ストレージとを含む。プロセッサはたとえばCPU(Central Processing Unit)などである。メインメモリは、たとえばROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。
【0062】
コントローラ26は、ホイールローダ100に搭載されていてもよく、ホイールローダ100の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ26がホイールローダ100の外部に離れて配置されている場合、コントローラ26は、駆動装置21、制動装置22、操作装置23、物体センサ25などと無線により接続されていてもよい。
【0063】
コントローラ26は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。コントローラ26は、衝突検出用コントローラとHST用コントローラとに分かれていてもよい。衝突検出用コントローラとHST用コントローラとは別々のCPUを有していてもよい。またプログラムは、ネットワークを介してコントローラ26に配信されてもよい。
【0064】
図5に示されるように、コントローラ26は、開始情報取得部26Aと、解除情報取得部26Bと、自動制動制御部27とを有している。自動制動制御部27は、走行方向情報取得部27Aと、走行方向判定部27Bと、物体情報取得部27Cと、物体判定部27Dと、EPC弁制御部27Eとを有している。
【0065】
開始情報取得部26Aは、開始装置51からON状態またはOFF状態を示す操作信号を取得する。開始情報取得部26Aは、開始装置51からON状態を示す操作信号を取得すると、取得した信号を自動制動制御部27へ出力する。
【0066】
自動制動制御部27は、開始情報取得部26AからON状態を示す操作信号を取得すると自動制動制御を開始する。自動制動制御が開始された状態(ON状態)とは、コントローラ26が走行方向切替装置53の検出結果および物体センサ25の検出結果に基づいてEPC弁46の開閉動作を自動で制御できる状態を意味する。自動制動制御が開始された状態においては、EPC弁46は閉状態と開状態との間で開閉状態を制御可能である。
【0067】
自動制動制御部27が自動制動制御を開始すると、走行方向情報取得部27Aは走行方向切替装置53の切替信号を取得する。走行方向情報取得部27Aは、取得した走行方向切替装置53の切替信号を走行方向判定部27Bへ出力する。
【0068】
走行方向判定部27Bは走行方向切替装置53の切替信号を取得すると、ホイールローダ100の走行方向が所定方向(たとえば後方向Zb)か否かを走行方向切替装置53の切替信号に基づいて判定する。走行方向判定部27Bは、判定結果をEPC弁制御部27Eへ出力する。
【0069】
なお走行方向判定部27Bは、車輪4、7が回転していない停止状態であっても、走行方向切替装置53のレバー位置が所定方向(たとえば後方向Zb)となっている場合、車両本体1が所定方向に走行している状態(後進状態)であると判定してもよい。
【0070】
また自動制動制御部27が自動制動制御を開始すると、物体情報取得部27Cは物体センサ25の検出結果を取得する。物体情報取得部27Cは、取得した物体センサ25の検出結果を物体判定部27Dへ出力する。物体判定部27Dは、車両本体1が物体に衝突するリスクが高いか否かを物体センサ25の検出結果などに基づいて判定し、判定結果をEPC弁制御部27Eへ出力する。
【0071】
EPC弁制御部27Eは、自動制動制御の実行中には走行方向判定部27Bの判定結果と物体判定部27Dの判定結果とに基づいてEPC弁46の開閉動作を制御する。具体的には、自動制動制御の実行中においてEPC弁制御部27Eが、たとえば走行方向が後方向Zbであるとの走行方向判定部27Bによる判定結果と、車両本体1が物体に衝突するリスクが高いとの物体判定部27Dの判定結果とを取得した場合には、EPC弁46が開状態となるようにEPC弁46に開指令(指令電流)を出力する。この指令電流に基づいてEPC弁46のソレノイドが操作され、EPC弁46は開状態となる。EPC弁46が開状態にされると、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bからブレーキ回路42a、42bに作動油が供給され、制動動作が実行される。
【0072】
制動動作が実行されている状態(ON状態)とは、ブレーキ回路42a、42bによる制動力が働いている状態を意味する。制動動作が実行されている場合の一例は、ブレーキが湿式多板ディスクブレーキである場合、プレートが複数のディスクの間で挟み込まれて押圧されることを意味する。一方、制動動作が実行されていない状態(OFF状態)とは、ブレーキ回路42a、42bによる制動力が働いていない状態を意味する。制動動作が実行されていない場合の一例は、ブレーキが湿式多板ディスクブレーキである場合、プレートが複数のディスクの間で挟み込まれて押圧されていないことを意味する。
【0073】
EPC弁46の開度は、EPC弁制御部27EからEPC弁46へ出力される指令電流により調整される。本例において指令電流は、予め所定の値となるように設定されている。なお指令電流は、検出された物体までの距離に基づいて調整されてもよい。たとえばEPC弁制御部27Eが、検出された物体までの距離から物体の手前で停止するための減速度を算出し、その減速度を発揮する開度になるようにEPC弁46に開指令(指令電流)を送信してもよい。
【0074】
このようにコントローラ26は、走行方向における物体の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を実行する。コントローラ26は、自動制動制御において、物体センサ25による物体の検出結果に基づいて制動装置22により走行を自動で制御する。これによりオペレータによってブレーキペダル54の操作が行われない場合であっても自動制動制御が実施されて制動力が発揮され、物体の手前で車両本体1を停止することができる。
【0075】
解除情報取得部26Bは、解除装置52から自動制動制御の解除信号を取得する。解除情報取得部26Bは、取得した解除信号をEPC弁制御部27Eへ出力する。EPC弁制御部27Eは、自動制動制御中に解除信号を取得すると、解除信号に基づいてEPC弁47aが閉状態となるように制御する。EPC弁制御部27Eは、解除信号に基づいてEPC弁47aを閉状態となるように制御する。EPC弁46が閉状態とされると、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bからブレーキ回路42a、42bへの作動油の供給が停止され、自動制動制御が解除される。
【0076】
このようにコントローラ26は、自動制動制御中において解除装置52の操作がなされたことを検出して、解除装置52からの解除信号に基づいて自動制動制御を解除する。自動制動制御が解除された状態(OFF状態)とは、コントローラ26が走行方向切替装置53の検出結果および物体センサ25の検出結果に基づいてEPC弁46の開閉動作を自動で制御できない状態を意味する。自動制動制御が解除された状態(OFF状態)においてはEPC弁47aを閉状態となっている。
【0077】
なお自動制動制御が解除された場合においても、EPC弁制御部27Eには、少なくとも走行方向判定部27Bによる判定結果が入力され続ける。ただし自動制動制御が解除された場合、EPC弁47aを閉状態となっているため、EPC弁制御部27Eに走行方向判定部27Bによる判定結果が入力されても、EPC弁46が開状態となることはない。このため自動制動制御が解除された場合に自動制動制御による制動力は発揮されない。
【0078】
このように自動制動制御による制動力が発揮されない場合でも、
図2に示されるようにオペレータがブレーキペダル54を操作した場合には、ブレーキ弁ユニット41から作動油がシャトル弁ユニット47に供給されてブレーキ回路42a、42bが作動する。
【0079】
図5に示されるように、自動制動制御の解除状態において走行方向切替装置53により走行方向が切り替えられた場合、走行方向が切り替えられたことを示す判定結果の信号が走行方向判定部27BからEPC弁制御部27Eへ出力される。EPC弁制御部27Eは、自動制動制御の解除状態において走行方向が切り替えられたことを示す判定結果の信号を取得した場合、自動制動制御を復帰(再開)させる。
【0080】
このようにコントローラ26は、解除装置52の操作により解除された自動制動制御を走行方向切替装置53における走行方向の切替信号に基づいて復帰させる。コントローラ26は、走行方向切替装置がたとえば後進から前進または中立に切り替えられた場合に自動制動制御を復帰させる。コントローラ26は、解除装置52により自動制動制御が解除された後は、走行方向の切替信号に基づいて自動制動制御を復帰させるまでは自動制動制御の解除状態を維持する。
【0081】
なお上記においてはホイールローダ100が後進する際に車両本体1の後方向に物体が存在する場合の自動制動制御の制動動作について説明したが、本開示における自動制動制御の制動動作はホイールローダ100が前進する際に車両本体1の前方向に物体が存在する場合にも同様に適用可能である。この場合には、ホイールローダ100が前進中でかつ前方向の物体との衝突リスクが大きい場合に自動制動制御による制動動作が実行される。また自動制動制御が解除装置52の操作により解除された後には、走行方向切替装置53を前進以外の後進または中立に切り替えた際に自動制動制御が復帰する。
【0082】
<ホイールローダ100の制御方法>
次に、本実施形態におけるホイールローダ100の制御方法について
図6~
図8を用いて説明する。
【0083】
図6および
図7は、それぞれ本開示の一実施形態におけるホイールローダの制御方法を示す第1フロー図および第2フロー図である。
図8は、自動制動制御と制動動作のON状態・OFF状態の遷移を示す図である。
【0084】
図5および
図6に示されるように、オペレータが開始装置51を開始操作する。たとえばオペレータは、開始装置51に対応するキースイッチにキーを挿し込んでホイールローダ100がOFF状態からON状態となるように操作する。これにより開始装置51からON状態を示す操作信号(開始情報)がコントローラ26の開始情報取得部26Aへ出力され、開始情報取得部26Aが開始情報を取得する(ステップS1:
図6)。
【0085】
開始情報取得部26Aが開始情報を取得すると、取得した信号を自動制動制御部27へ出力する。自動制動制御部27は、開始情報取得部26Aから開始情報を取得すると自動制動制御を開始する(ステップS2:
図6)。
【0086】
この状態は、
図8に示す状態SAに対応する。状態SAにおいては、自動制動制御は実行(ON)されている。しかしながら状態SAにおいては、自動制動制御における制動動作を実行するための条件(たとえば走行方向が後進であり、走行方向の物体と衝突の可能性が高い)を満たしていないため、制動動作は実行されていない。このためEPC弁46は閉じた状態にある。
【0087】
この状態SAからオペレータが解除装置52を操作して自動制動制御の解除操作をする。たとえばオペレータは、
図4に示されるように、解除装置52として設定されたスイッチ63を操作して解除操作をする。
【0088】
図5および
図6に示されるように、解除装置52の解除操作により、解除装置52から解除信号(解除情報)がコントローラ26の解除情報取得部26Bへ出力される。これにより解除情報取得部26Bが解除情報を取得する(ステップS3:
図6)。
【0089】
解除情報取得部26Bは解除情報を取得すると、取得した信号を自動制動制御部27へ出力する。自動制動制御部27は、解除情報取得部26Bから解除信号を取得すると自動制動制御を解除(停止)し、その解除状態を維持する(ステップS4:
図6)。
【0090】
具体的には解除情報取得部26Bが解除信号をEPC弁制御部27Eへ出力し、EPC弁制御部27Eは解除信号に基づいてEPC弁47aが閉状態を維持するように制御する。EPC弁46が閉状態を維持するように制御されるため、この状態で自動制動制御における制動動作を実行するための条件(たとえば走行方向が後進であり、走行方向の物体と衝突の可能性が高い)が満たされても、制動動作は実行されない。
【0091】
この状態は、
図8に示す状態SBに対応する。状態SBにおいては、自動制動制御が解除(OFF)されている。このため状態SBにおいて自動制動制御における制動動作を実行するための条件(たとえば走行方向が後進であり、走行方向の物体と衝突の可能性が高い)が満たされても、制動動作は実行されない。
【0092】
この状態SBからオペレータが走行方向切替装置53を操作して走行方向切替の操作をする。たとえばオペレータは、
図4に示されるように、走行方向切替装置53として設定されたレバー64を操作して走行方向切替の操作をする。
【0093】
図5および
図6に示されるように、走行方向切替装置53の走行方向切替操作により、走行方向切替装置53から走行方向切替信号がコントローラ26の走行方向情報取得部27Aへ出力される。これにより走行方向情報取得部27Aが走行方向切替信号を取得する(ステップS5:
図6)。
【0094】
走行方向情報取得部27Aは取得した走行方向切替信号を走行方向判定部27Bへ出力する。走行方向判定部27Bは、走行方向切替信号に基づいて走行方向が切り替わったか否かを判定する(ステップS6:
図6)。
【0095】
走行方向が切り替わっていないと走行方向判定部27Bが判定する場合には、走行方向情報取得部27Aにより走行方向情報の取得(ステップS5)と走行方向の判定(ステップS6)とが繰り返される。
【0096】
走行方向が切り替わったと走行方向判定部27Bが判定する場合には、自動制動制御が復帰(再開)される(ステップS7:
図6)。このように自動制動制御の解除状態は、走行方向が切り替わったと走行方向判定部27Bが判定するまで維持される。
【0097】
この状態は、
図8に示す状態SAに対応する。
なお上記においては
図8において状態SA→状態SB→状態SAの順で状態が遷移する場合について説明したが、状態SA→状態SC→状態SB→状態SAの順で状態が遷移する場合にも本開示は適用できる。以下、状態SA→状態SC→状態SB→状態SAの順で状態が遷移する場合の制御方法について説明する。
【0098】
状態SA→状態SC→状態SB→状態SAの順で状態が遷移する場合、
図6に示す点P1と点P2との間に
図7に示すステップが追加される。
【0099】
図6に示されるように、自動制動制御の開始(ステップS2)の後、オペレータが車両本体1を走行させる。この場合、
図2に示されるように、オペレータは、走行したい方向へ走行方向切替装置53の走行方向を設定し、アクセル55を操作する。これにより車両本体1は設定された走行方向へ走行する。この走行方向はたとえば後方向Zbであり、車両本体1は後進する。
【0100】
図5および
図7に示されるように、この際、コントローラ26の走行方向情報取得部27Aは走行方向切替装置53における走行方向の切替信号を取得する(ステップS11:
図7)。走行方向情報取得部27Aは、取得した走行方向の切替信号を走行方向判定部27Bへ出力する。
【0101】
走行方向判定部27Bは走行方向切替装置53の切替信号を取得すると、走行方向が所定方向(たとえば後方向Zb)であるか否かを走行方向切替装置53の切替信号に基づいて判定する(ステップS12:
図7)。
【0102】
車両本体1の走行方向が所定方向でないと走行方向判定部27Bが判定した場合には、走行方向情報の取得(ステップS11)と走行方向が所定方向か否かの判定(ステップS12)とが繰り返される。一方、車両本体1の走行方向が所定方向であると走行方向判定部27Bが判定した場合には、走行方向判定部27Bは判定結果をEPC弁制御部27Eへ出力する。
【0103】
また自動制動制御が開始(ステップS2)の後、コントローラ26の物体情報取得部27Cは物体センサ25の検出結果(物体情報)を取得する(ステップS13:
図7)。物体情報取得部27Cは、取得した物体センサ25の検出結果を物体判定部27Dへ出力する。物体判定部27Dは、車両本体1が物体に衝突するリスクが高いか否かを物体センサ25の検出結果などに基づいて判定する(ステップS14:
図7)。
【0104】
車両本体1が物体に衝突するリスクが高くないと物体判定部27Dが判定した場合、物体情報の取得(ステップS13)と物体衝突のリスクが高いか否かの判定(ステップS14)とが繰り返される。一方、車両本体1が物体に衝突するリスクが高いと物体判定部27Dが判定した場合、物体判定部27Dは判定結果をEPC弁制御部27Eへ出力する。
【0105】
EPC弁制御部27Eは、走行方向判定部27Bの判定結果と物体判定部27Dの判定結果とに基づいて制動動作を実行する(ステップS15:
図7)。EPC弁制御部27Eは、たとえば走行方向が所定方向(たとえば後方向Zb)であるとの判定結果と、車両本体1が物体に衝突するリスクが高いとの判定結果とを取得した場合には、EPC弁46が開状態となるようにEPC弁46に開指令(指令電流)を出力する。この指令電流に基づいてEPC弁46のソレノイドが操作され、EPC弁46は開状態となる。EPC弁46が開状態にされると、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bからブレーキ回路42a、42bに作動油が供給され、自動で制動動作が実行される。
【0106】
この状態は、
図8に示す状態SCに対応する。状態SCにおいては、自動制動制御は実行(ON)されており、制動動作も実行(ON)され車両本体1には制動力が働いている。
【0107】
しかしながら、たとえば2台の他の車両の間に駐車するような狭所での駐車の場合には、他の車両自体を障害物と誤検出してしまい、制動しないでよい状況であるにも関わらず意図せずに誤制動を起こす場合がある。このような場合には、自動制動制御を解除して駐車を続行する必要がある。
【0108】
そこで、このような場合には状態SCからオペレータが解除装置52を操作して自動制動制御の解除操作をする。たとえばオペレータは、
図4に示されるように、解除装置52として設定されたスイッチ63を操作して解除操作をする。
【0109】
この後の制御方法は、
図6に示されるステップS3~S7と同様であるため、その説明を繰り返さない。
【0110】
なお
図7におけるステップS11およびS12は、ステップS13およびS14の後であってもよく、またステップS13およびS14と同時であってもよい。
【0111】
図8における状態SA→状態SB→状態SAの遷移のように、コントローラ26は、走行方向における物体の検出前に、解除装置52の操作により自動制動制御を解除してもよい。また
図8における状態SA→状態SC→状態SB→状態SAの遷移のように、コントローラ26は、物体の検出結果に基づいて走行を制動した状態で、解除装置52の操作により自動制動制御を解除してもよい。
【0112】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0113】
本開示においては
図5に示されるように、解除装置52の操作により解除された自動制動制御が走行方向切替装置53における走行方向の切替信号に基づいて復帰される。これにより自動制動制御が解除された後は、走行方向の切替信号に基づいて自動制動制御が復帰するまでは自動制動制御の解除状態が維持される。このため自動制動制御を解除し続けるためにオペレータが解除装置52を操作し続ける必要がない。これによりオペレータが作業機械の走行および作業機の動作を操作する際に解除装置52を操作する必要がなくなるため運転操作に支障が生じにくくなる。
【0114】
また
図2に示されるように、上記自動制動制御において、物体センサ25による物体の検出結果に基づいて制動装置22により走行が自動で制動される。これにより車両本体1が物体と衝突するリスクを軽減することができる。
【0115】
また
図5および
図8に示されるように、コントローラ26は、物体の検出結果に基づいて走行を制動した状態SCで、解除装置52の操作により自動制動制御を解除して状態SBに遷移するよう制御してもよい。これによりたとえば2台の車両の間に駐車するような狭所での駐車において他の車両自体を障害物と誤検出して誤制動が生じた場合でも、自動制動制御を解除して駐車を続行することが可能となる。
【0116】
また
図5および
図8に示されるように、コントローラ26は、物体の検出前の状態SAにおいて、解除装置52の操作により自動制動制御を解除して状態SBに遷移するよう制御してもよい。これによりオペレータの操作の自由度が向上する。
【0117】
また
図5および
図8に示されるように、コントローラ26は、走行方向切替装置53が後進から前進または中立に切替えられた場合に自動制動制御を復帰させてもよい。これにより後進時に物体と衝突するリスクを軽減することができる。
【0118】
また
図4に示されるように、解除装置52は、オペレータが着座するための運転席5sの側方に配置されたコンソール61に配置されている。これによりオペレータにとって解除装置52の操作が容易となる。
【0119】
<付記>
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0120】
(付記1)
障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う作業機械であって、
オペレータの操作により前記自動制動制御を解除する解除装置と、
オペレータの操作により走行方向を切り替える走行方向切替装置と、
前記解除装置の操作により解除された前記自動制動制御を前記走行方向切替装置における走行方向の切替信号に基づいて復帰させるコントローラと、を備えた、作業機械。
【0121】
(付記2)
走行を制動する制動装置と、
前記作業機械の走行方向に位置する障害物を検出する物体センサと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記自動制動制御において、前記物体センサによる障害物の検出結果に基づいて前記制動装置により走行を自動で制動する、付記1に記載の作業機械。
【0122】
(付記3)
前記コントローラは、障害物の検出結果に基づいて走行を制動した状態で、前記解除装置の操作により前記自動制動制御を解除する、付記1または付記2に記載の作業機械。
【0123】
(付記4)
前記コントローラは、障害物の検出前に、前記解除装置の操作により前記自動制動制御を解除する、付記1または付記2に記載の作業機械。
【0124】
(付記5)
前記コントローラは、前記走行方向切替装置が後進から前進または中立に切替えられた場合に前記自動制動制御を復帰させる、付記1から付記4のいずれか1つに記載の作業機械。
【0125】
(付記6)
オペレータが着座するための運転席と、
前記運転席の側方に配置されたコンソールと、をさらに備え、
前記解除装置は、前記コンソールに配置されている、付記1から付記5のいずれか1つに記載の作業機械。
【0126】
(付記7)
障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う作業機械の制動システムであって、
オペレータの操作により前記自動制動制御を解除する解除装置と、
オペレータの操作により走行方向を切り替える走行方向切替装置と、
前記解除装置の操作により解除された前記自動制動制御を前記走行方向切替装置における走行方向の切替信号に基づいて復帰させるコントローラと、を備えた、作業機械の制動システム。
【0127】
(付記8)
障害物の検出結果に基づいて走行を自動で制動する自動制動制御を行う作業機械の制御方法であって、
前記自動制動制御を解除するステップと、
解除された前記自動制動制御を走行方向の切替信号に基づいて復帰させるステップと、を備えた、作業機械の制御方法。
【0128】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
1 車両本体、2 走行体、3 作業機、4 フロントタイヤ、5 キャブ、5s 運転席、6 エンジンルーム、7 リアタイヤ、9 ステアリングシリンダ、10 車体フレーム、11 フロントフレーム、12 リアフレーム、13 連結軸部、14 ブーム、15 バケット、16 リフトシリンダ、17 バケットシリンダ、18 ベルクランク、21 駆動装置、22 制動装置、23 操作装置、25 物体センサ、26 コントローラ、26A 開始情報取得部、26B 解除情報取得部、27 自動制動制御部、27A 走行方向情報取得部、27B 走行方向判定部、27C 物体情報取得部、27D 物体判定部、27E 弁制御部、31 エンジン、32a ポンプ、32b モータ、32c 油圧回路、32c1 第1駆動回路、32c2 第2駆動回路、32d,32e ソレノイド、33 トランスファ、34 アクスル、41 ブレーキ弁ユニット、41a リア用ブレーキ弁、41b フロント用ブレーキ弁、42a,42b ブレーキ回路、43 パーキングブレーキ、44a,44b 作動油供給路、46 EPC弁、47 シャトル弁ユニット、47a リア用シャトル弁、47b フロント用シャトル弁、48 タンク、49a,49b アキュームレータ、51 開始装置、52 解除装置、53 走行方向切替装置、54 ブレーキペダル、55 アクセル、56 パーキングスイッチ、61 コンソール、62 アームレスト、63 スイッチ、64 レバー、100 ホイールローダ。