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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086301
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】コイル基板及び誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H05B6/12 308
H05B6/12 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201364
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】錦織 信晴
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA03
3K151BA14
3K151BA17
(57)【要約】
【課題】コイル損失を低減しつつ、層間接続数を減らすことができる。
【解決手段】複数のコイルパターンが形成された6以上のパターン層を積層してなるコイル基板であって、4以上のコイルパターンを直列接続した直列パターン群を複数有するとともに、それら複数の直列パターン群が並列接続されており、少なくとも1つの直列パターン群は、4以上のパターン層に形成されたコイルパターンを直列接続したものであり、複数の直列パターン群は、並列接続されるコイルパターンが形成されたパターン層の組み合わせが異なるものを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルパターンが形成された6層以上のパターン層を積層してなるコイル基板であって、
前記コイルパターンを直列接続した直列パターン群を複数有するとともに、それら複数の直列パターン群が並列接続されており、
少なくとも1つの前記直列パターン群は、4層以上の前記パターン層に形成された前記コイルパターンを直列接続したものであり、
前記複数の直列パターン群は、並列接続される前記コイルパターンが形成された前記パターン層の組み合わせが異なるものを含む、コイル基板。
【請求項2】
4層以上の前記パターン層に形成された前記コイルパターンを直列接続した前記直列パターン群は、並列接続される前記コイルパターンが形成された前記パターン層の組み合わせが同じである、請求項1に記載のコイル基板。
【請求項3】
前記直列パターン群において最上層に形成された前記コイルパターンは、最下層以外のパターン層に形成された前記コイルパターンに直列接続される、請求項1に記載のコイル基板。
【請求項4】
前記複数の直列パターン群それぞれを構成する前記コイルパターンの合計長さのばらつきが10%以下である、請求項1に記載のコイル基板。
【請求項5】
前記複数の直列パターン群を並列接続した両端子は、前記コイルパターンの外周部に形成されており、
前記パターン層の間の電気的な接続は、全パターン層を貫通して形成された導電体により形成される、請求項1に記載のコイル基板。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のコイル基板を用いた誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル基板及び誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、誘導加熱調理器の薄型化や軽量化が望まれており、誘導加熱調理器に用いられる加熱コイルの薄型化が考えられている。
【0003】
そして、加熱コイルの薄型化を実現するためには、特許文献1、2に示すような非接触給電で用いられるプリント基板(PCB基板)タイプのコイル基板を用いることが考えられる。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に示すコイル基板は、コイルパターンを2層形成したものであり、この2層構成のコイル基板を用いて誘導加熱調理器の大火力(最大3kW超)を供給するには、1層の銅厚(コイルの厚み)を500μm程度にする必要がある。そうすると、表皮効果の影響が大きくなり、コイル損失が大きくなってしまう。
【0005】
ここで、表皮効果を低減しつつ大火力を供給するためには、銅厚とコイルパターン幅を小さくし、複数のコイルパターンを並列接続することで電流容量を確保することが考えられる。
【0006】
ところが、特許文献1、2の構成を用いて複数のコイルパターンを並列接続するためには、層間接続数が増加してしまい、また、配線長によるコイル損失も増大してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-186235号公報
【特許文献2】特開2019-41273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題を解決すべくなされたものであり、コイル損失を低減しつつ、層間接続数を減らすことを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係るコイル基板は、コイルパターンが形成された6層以上のパターン層を積層してなるコイル基板であって、前記コイルパターンを直列接続した直列パターン群を複数有するとともに、それら複数の直列パターン群が並列接続されており、少なくとも1つの前記直列パターン群は、4層以上の前記パターン層に形成された前記コイルパターンを直列接続したものであり、前記複数の直列パターン群は、並列接続される前記コイルパターンが形成された前記パターン層の組み合わせが異なるものを含むことを特徴とする。
【0010】
このように構成されたコイル基板によれば、6層以上の積層基板から構成しているので、1層の銅厚を薄くすることができ、表皮効果の影響を小さくしてコイル損失を低減することができる。また、複数の直列パターン群は、4層以上のパターン層に形成されたコイルパターンを直列接続したものを有し、かつ、並列接続されるコイルパターンが形成されたパターン層の組み合わせが異なるものを含んでいるので、層間接続数を減らすことができ、これによっても、損失を低減することができる。
【0011】
層間接続数を減らすための具体的な実施の態様としては、4以上の前記パターン層に形成された前記コイルパターンを直列接続した前記直列パターン群は、並列接続される前記コイルパターンが形成された前記パターン層の組み合わせが同じであることが望ましい。
【0012】
並列接続された直列パターン群の近接効果によるインピーダンスのばらつきを低減するためには、前記直列パターン群において最上層に形成された前記コイルパターンは、最下層以外のパターン層に形成された前記コイルパターンに直列接続されることが望ましい。
【0013】
直列接続されたコイルパターンの合計長さのばらつきが大きいほど、並列接続された複数の直列パターン群における電流のばらつきが大きくなり損失が大きくなる。この問題を好適に解決するためには、前記複数の直列パターン群それぞれを構成する前記コイルパターンの合計長さのばらつきが10%以下であることが望ましい。ここで、コイルパターンの合計長さのばらつきを10%以下にしているので、kHzオーダー以上の交流電流で電流のバランスを取ることができる。
【0014】
コイル基板の製造コストを削減するためには、前記複数の直列パターン群を並列接続した両端子は、前記コイルパターンの外周部に形成されており、前記パターン層の間の電気的な接続は、全パターン層を貫通して形成された導電体により形成されることが望ましい。
【0015】
また、上述したコイル基板を用いた誘導加熱調理器も本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、コイル損失を低減しつつ、層間接続数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る誘導加熱調理器の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態におけるコイル基板(16層)の構成を模式的に示す平面図である。
図3】同実施形態におけるコイル基板(16層)の構成を模式的に示す断面図である。
図4】同実施形態におけるコイル基板(6層構成)の第1層目及び第2層目のコイルパターンを模式的に示す平面図である。
図5】同実施形態におけるコイル基板(6層構成)の配線を示す模式図である。
図6】同実施形態におけるコイル基板(6層構成)の配線の変形例を示す模式図である。
図7】同実施形態におけるコイル基板(12層構成)の配線を示す模式図である。
図8】同実施形態におけるコイル基板(12層構成)の配線の変形例を示す模式図である。
図9】同実施形態におけるコイル基板(12層構成)の各配線におけるコイル損失を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る誘導加熱調理器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
<誘導加熱調理器の構成>
本実施形態に係る誘導加熱調理器は、トッププレートに載置された調理用鍋などの調理器具たる被加熱物を誘導加熱するものであり、被加熱物をトッププレートのどこにでも自由に置いて加熱できるように構成されている。
【0020】
具体的に誘導加熱調理器100は、図1に示すように、被加熱物が載置されるトッププレート1と、被加熱物を加熱するための複数の加熱コイル2と、加熱コイル2に交流電流を供給するインバータ回路3と、インバータ回路3を制御する制御機器4とを備えている。なお、誘導加熱調理器100には、図示しないが、被加熱物の位置を検出するためのセンサコイルが設けられている。
【0021】
トッププレート1は、表側に被加熱物が置かれる平坦な載置面を有するものであり、例えばガラスやセラミックなどの電気絶縁材料からなる平板状のものである。
【0022】
加熱コイル2は、トッププレート1の裏側に設けられており、ここでは図1に示すように、複数の加熱コイル2が、平面視において二次元アレイ状(縦横マトリクス状)をなすように配置されている。
【0023】
各加熱コイル2は、基板に設けられたシート状をなすものであり、具体的にはフォトレジスト等により作成されたプリント基板(コイル基板20)として形成されたものである。ここでは、複数の加熱コイル2それぞれが、同じ形状及び大きさのものであるが、形状及び大きさは適宜変更して構わない。なお、コイル基板20の具体的構成は後述する。
【0024】
インバータ回路4は、電源から供給される交流電圧を任意の駆動周波数に変換して加熱コイル2に出力するものである。ここでのインバータ回路4は、スイッチング素子を用いたハーフブリッジ方式のものであるが、フルブリッジ方式のものを用いても構わない。
【0025】
制御機器4は、物理的にはCPU、メモリ、入力手段などを備えるものであり、機能的には、前記メモリの記憶されたプログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することにより、インバータ回路4を制御する。
【0026】
本実施形態の制御機器4は、トッププレート1に載置された被加熱物の下方又はその近傍に位置する加熱コイル2にのみ選択的に通電できるように構成されている。なお、トッププレートに載置された被加熱物の位置は、トッププレート1の裏側に設けられた、例えば誘導近接コイル等の位置センサにより検出される。また、インバータ回路3において各加熱コイル2に対応して設けられた電流センサ(不図示)の検出値に基づいて、各コイル2に供給する電力を制御する。
【0027】
<コイル基板20の具体的構成1>
そして、本実施形態のコイル基板20は、図2及び図3に示すように、コイルパターンCPが形成された6層以上のパターン層PLを積層してなるプリント基板である。なお、パターン層PLの間には絶縁材が設けられている。なお、図2及び図3では、16層のパターン層を積層してなるコイル基板20を模式的に示している。
【0028】
このコイル基板20においては、各パターン層において1つのコイルパターンCPが形成されている。コイルパターンCPは、スパイラル状のものである。なお、コイルパターンCPとしては、図2に示すように、平面視概略矩形状をなす複数のコイル要素からなるもののほか、平面視円形状をなす複数のコイル要素からなるものであっても良いし、コイル要素の形状は、これらに限定されない。
【0029】
そして、コイル基板20は、4つのコイルパターンCPを直列接続した4つの直列パターン群21~24を有するとともに、それら4つの直列パターン群21~24が並列接続されている。ここで、複数の直列パターン群21~24それぞれを構成するコイルパターンCPの合計長さのばらつきは10%以下とすることが望ましい。
【0030】
より詳細には、4つの直列パターン群21~24は、第1層、第8層、第9層及び第16層に形成されたコイルパターンを直列接続したもの(直列パターン群21)と、第2層、第7層、第10層及び第15層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したもの(直列パターン群22)と、第3層、第6層、第11層及び第14層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したもの(直列パターン群23)と、第4層、第5層、第12層及び第13層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したもの(直列パターン群24)である。
【0031】
このように図2及ぶ図3に示す直列パターン群21~24は、直列接続されるコイルパターンCPが形成されたパターン層の組み合わせが互いに異なるように構成されている。この構成により、4つの直列パターン群21~24を並列接続した場合に、互いに異なるパターン層に形成されたコイルパターンCPを並列接続した構成となる。
【0032】
さらに、図2に示すように、コイル基板20において、複数の直列パターン群21~24を並列接続した両端子(入力端子2a、出力端子2b)は、コイルパターンCPの外周部に形成されている。そして、図3に示すように、パターン層PLの間の電気的な接続は、全パターン層を貫通して形成された導電体(スルーホールTH)により形成される。ここでは、コイルパターンCPの外周部に設けられた導電体からなる1つの中間端子2cと、コイルパターンCPの内周部に設けられた導電体からなる複数の接続端子2dとにより、各直列パターン群21~24となるように接続されている。
【0033】
その上、このコイル基板20の例では、入力端子2a側を最上層、出力端子2b側が最下層となるように接続されている。この構成であれば、多層構成時において、上部に弱電のセンサを実装する場合に薄膜構成にしやすくなる。
【0034】
<コイル基板20の具体的構成2>
次にコイル基板20の具体的構成2について図4図6を参照して説明する。
【0035】
図4~6に示すコイル基板20は、6層のパターン層を積層してなるプリント基板である。このコイル基板20においては、各パターン層にはスパイラル状又は同心円状のコイルパターンCPが形成されている。図4に示すように、第1層のコイルパターンCPは、2つのスパイラル状のコイルパターンCPが並列となるように接続した構成であり、第2層のコイルパターンCPは、1つのスパイラル状のコイルパターンCPとなるように接続した構成である。なお、第3層及び第4層のコイルパターンCPは、2つのスパイラル状のコイルパターンCPが独立した構成であり、並列となるように接続した構成である。第5層のコイルパターンCPは、第2層と同様に、1つのスパイラル状のコイルパターンとなるように接続した構成である。第6層のコイルパターンCPは、第1層と同様に、2つのスパイラル状のコイルパターンが並列となるように接続した構成である。
【0036】
そして、コイル基板20は、4つのコイルパターンCPを直列接続した3つの直列パターン群21~23を有するとともに、それら3つの直列パターン群21~23が並列接続されている。ここで、複数の直列パターン群21~23それぞれを構成するコイルパターンCPの合計長さのばらつきは10%以下とすることが望ましい。
【0037】
より詳細には、3つの直列パターン群21~23において、2つの直列パターン群21、22は、4層のパターン層それぞれに形成された1つのコイルパターンCPを直列接続したものである。また、残り1つの直列パターン群23は、2層のパターン層それぞれに形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。
【0038】
上記のように4層のパターン層に形成されたコイルパターンCPを直列接続した直列パターン群21、22は、直列接続されるコイルパターンCPが形成されたパターン層の組み合わせが同じである。つまり、これら2つの直列パターン群21、22は、図5示すように、第1層、第3層、第4層及び第6層に形成された1つのコイルパターンCPを直列接続したものである。
【0039】
また、残りの1つの直列パターン群23は、図5に示すように、上記2つの直列パターン群21、22のパターン層の組み合わせとは異なる。つまり、残り1つの直列パターン群23は、第2層及び第5層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。この構成により、3つの直列パターン群21~23を並列接続した場合に、互いに異なるパターン層に形成されたコイルパターンCPを並列接続した構成となる。
【0040】
さらに、コイル基板20において、複数の直列パターン群21~23を並列接続した両端子(入力端子2a、出力端子2b)は、コイルパターンCPの外周部に形成されている。そして、パターン層の間の電気的な接続は、全パターン層を貫通して形成された導電体(スルーホールTH)により形成される。ここでは、コイルパターンCPの外周部に設けられた導電体からなる接続端子2cと、コイルパターンCPの内周部に設けられた導電体からなる接続端子2dとにより、各直列パターン群21~23となるように接続されている。
【0041】
ここで、第1層、第3層、第4層及び第6層を直列接続した直列パターン群のインピーダンスは、最外周の並列分岐点Xを起点として、外側パターンにおける端子2dまでのインピーダンスをZ1とし、並列分岐点Xを起点として、内側パターンにおける端子2dまでのインピーダンスをZ2とすると、Z1(第1層外側パターン)+Z2(第3層内側パターン)+Z1(第4層外側パターン)+Z2(第6層内側パターン)=2Z1+2Z2となる。
【0042】
また、第2層及び第5層を直列接続した直列パターン群のインピーダンスは、Z1(第2層外側パターン)+Z2(第2層内側パターン)+Z2(第5層内側パターン)+Z1(第5層外側パターン)=2Z1+2Z2となる。
【0043】
つまり、3つの直列パターン群21~23のインピーダンスは計算上同じであり、インピーダンスのばらつきを小さく設計でき、各パターンの電流ばらつきを低減できるため、コイル損失を低減することができる。
【0044】
なお、並列接続した場合に3つの直列パターン群21~23のインピーダンスのばらつきを小さくすれば良いので、図6(a)の中間端子を図6(b)のようにまとめても良い。ただし、図6(c)のようにインピーダンスが各々ばらついた場合(Z1≠Z2≠Z3≠Z4)は、中間端子を分ける必要がある。
【0045】
<コイル基板20の具体的構成3>
次にコイル基板20の具体的構成3について図7を参照して説明する。
【0046】
図7に示すコイル基板20は、12層のパターン層を積層してなるプリント基板である。このコイル基板20においては、各パターン層にはスパイラル状又は同心円状のコイルパターンCPが形成されている。具体的に第1層及び第12層のコイルパターンCPは、2つのスパイラル状のコイルパターンCPが並列となるように接続した構成であり、第2~第11層のコイルパターンCPは、2つのスパイラル状のコイルパターンCPが独立した構成である。
【0047】
そして、コイル基板20は、4つのコイルパターンCPを直列接続した6つの直列パターン群21~26を有するとともに、それら6つの直列パターン群21~26が並列接続されている。ここで、複数の直列パターン群21~26それぞれを構成するコイルパターンCPの合計長さのばらつきは10%以下とすることが望ましい。
【0048】
より詳細には、6つの直列パターン群21~26において、2つの直列パターン群21、22は、第1層、第6層、第7層及び第12層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。また、2つの直列パターン群23、24は、第2層、第5層、第8層及び第11層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。さらに、2つの直列パターン群25、26は、第3層、第4層、第9層及び第10層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。
【0049】
さらに、コイル基板20において、複数の直列パターン群21~26を並列接続した両端子(入力端子2a、出力端子2b)は、コイルパターンCP1、CP2の外周部に形成されている。そして、パターン層PLの間の電気的な接続は、全パターン層を貫通して形成された導電体により形成される。ここでは、コイルパターンCP1、CP2の外周部に設けられた導電体(スルーホールTH)からなる接続端子2cと、コイルパターンCP1、CP2の内周部に設けられた導電体からなる接続端子2dとにより、各直列パターン群21~26となるように接続されている。
【0050】
この構成においても、6つの直列パターン群21~26のインピーダンスは計算上同じであり、インピーダンスのばらつきを小さく設計でき、コイル損失を低減することができる。また、この構成における層間接続数は18である。
【0051】
<コイル基板20の具体的構成4>
次にコイル基板20の具体的構成4について図8を参照して説明する。
【0052】
図8に示すコイル基板20は、図7と同様に、12層のパターン層を積層してなるプリント基板であるが、その接続方法が異なる。図7に示すコイル基板20では、層の中心(第6層及び第7層の間)に対して対称となるように接続していたが、図8に示すコイル基板20では、非対称に接続している。
【0053】
具体的には、このコイル基板20では、直列パターン群21~26において最上層に形成されたコイルパターンCPは、最下層以外のパターン層に形成されたコイルパターンCPに直列接続されるように構成されている。
【0054】
より詳細には、6つの直列パターン群21~26において、2つの直列パターン群21、22は、第1層、第6層、第9層及び第10層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。また、2つの直列パターン群23、24は、第2層、第5層、第8層及び第11層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。さらに、2つの直列パターン群25、26は、第3層、第4層、第7層及び第12層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものである。
【0055】
図9に示すように、各直列パターン群の自己インピーダンスを同じに設計しても実駆動では、特に表層(12層ならば1層及び12層)側が相互インピーダンスの影響が小さくなり、電流が大きくなり、コイル損失が大きくなる。このように、相互インピーダンスの影響が小さいコイルパターン同士を直列接続するよりも、図8に示すように、相互インピーダンスの影響が小さいコイルパターン同士を直列接続しない方が、並列接続された直列パターン群の近接効果によるインピーダンスのばらつきを低減することができる。
【0056】
<本実施形態の効果>
このように構成された誘導加熱調理器100によれば、コイル基板20を6層以上の積層基板から構成しているので、1層の銅厚を薄くすることができ、表皮効果の影響を小さくしてコイル損失を低減することができる。また、複数の直列パターン群は、4層以上のパターン層に形成されたコイルパターンCPを直列接続したものを有し、かつ、直列接続されるコイルパターンCPが形成されたパターン層の組み合わせが異なるものを含んでいるので、層間接続数を減らすことができ、これによっても、損失を低減することができる。つまり、各層での相互インダクタンスによる並列接続間のばらつきを下げることで、理論上全層直列接続と同等の効率特性を維持することができ、さらに、全層直列接続より層間接続数を減らして層間回りの配線抵抗を下げることで、全層直列より低損失設計が可能となる。
【0057】
<変形実施形態>
例えば、コイル基板の層数は6層、12層、16層の他に、例えば10層等の他の層数であっても良い。
【0058】
また、直列パターン群は、4つのコイルパターンを直列接続する以外に、5つ以上のコイルパターンを直列接続しても良い。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
100・・・誘導加熱調理器
W ・・・被加熱物
2 ・・・加熱コイル
3 ・・・インバータ回路
4 ・・・制御機器
CP・・・コイルパターン
20・・・コイル基板
21~26・・・直列パターン群
2a、2b・・・両端子
TH・・・導電体(スルーホール)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9