(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086309
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】表面材
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4382 20120101AFI20240620BHJP
【FI】
D04H1/4382
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201373
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八木 雅史
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA03
4L047CC09
(57)【要約】
【課題】
熱と圧力を受けた表面材である場合、あるいは、熱と圧力を受けた不織布を備えている表面材である場合であっても、優れた触感を有している、内装材として好適に使用可能な表面材の提供を課題とする。
【解決手段】
本発明にかかる表面材を構成する不織布は、加熱されると、その主面に第一繊維と第二繊維とが絡み合い生じた、縮緬のような細かなシボを発生し易い。そして、発生した当該シボの存在によって、圧力を受けた際にもその主面のMIUが低くなることが防止されており、熱と圧力を受けた表面材、あるいは、熱と圧力を受けた不織布を備える表面材であっても、MIUの低下が防止されていることでMIUが大きい主面を有する不織布を備えた表面材を提供できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を備えた表面材であって、
前記不織布は、第一繊維と第二繊維が混在している不織布であり、
前記第一繊維の構成樹脂は、第一有機樹脂であり、
前記第二繊維の構成樹脂は、前記第一有機樹脂と前記第一有機樹脂以外の別の有機樹脂とが混合してなる第二有機樹脂である、
表面材。
【請求項2】
前記第二繊維において、
前記第二繊維の構成樹脂の質量に占める、前記第一有機樹脂の質量の割合が、
前記第二繊維の構成樹脂の質量に占める、前記別の有機樹脂の質量の割合よりも多い、
請求項1に記載の表面材。
【請求項3】
前記第一繊維の平均繊維径および平均繊維長と、前記第二繊維の平均繊維径および平均繊維長とが、同じである、
請求項1または請求項2に記載の表面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車などの内装を構成可能な、表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車などの内装を構成可能な表面材として、不織布を備えた表面材が使用されている。そして、当該表面材を意図した形状に成形(例えば、熱と圧力を加え意図した形状に成形)して、内装材を製造することが行われている。
【0003】
更に、近年では自動車などの内装にも触感の向上が求められている。これまで本願出願人は、触感に優れる内装材を調製可能な表面材を提供するための検討を通し、特開2017-144803(特許文献1)に記載したように、表面試験機(KES-FB4)で測定した平均動摩擦係数(以降、MIUと称することがある)が大きい主面を備える不織布は、触感に優れているという知見を得た。具体例として、MIUが0.30以上の主面を備える不織布は柔軟性に富み、手にまとわり付くような感覚を覚えるビロードのような優れた触感を有しているものであった。
そのため、当該不織布を備えた表面材もまた、ビロードのような優れた触感を有するものとなり、内装材として好適に使用できるものであった。
【0004】
なお、特許文献1にかかる発明は、表面材が備える不織布の構成繊維について、その樹脂組成や平均繊維長あるいは平均繊維径などの詳細な構成を特に限定していない。そのため、特許文献1の実施例には、一種類の繊維を用いて製造された不織布を備えた表面材のみが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように不織布を備えた表面材によって、優れた触感を有しており、内装材として好適に使用可能な表面材を提供可能なものである。しかし、内装材へ求められる物性や用途によっては、その製造工程において、表面材あるいは表面材を構成する不織布へ熱と圧力を作用させ、その厚さや見掛け密度などを調整することがある。
【0007】
しかし、熱と圧力を受けた表面材、あるいは、熱と圧力を受けた不織布を備える表面材は、その主面のMIUが0.30未満になるなど低下して柔軟性に劣ることがあり、つるりとした触感を感じさせるものとなった。その結果、前述したような優れた触感を有する表面材を提供できないことがあった。
【0008】
以上のことから、熱と圧力を受けた表面材である場合、あるいは、熱と圧力を受けた不織布を備えている表面材である場合であっても、優れた触感を有している、内装材として好適に使用可能な表面材の実現が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は「不織布を備えた表面材であって、
前記不織布は、第一繊維と第二繊維が混在している不織布であり、
前記第一繊維の構成樹脂は、第一有機樹脂であり、
前記第二繊維の構成樹脂は、前記第一有機樹脂と前記第一有機樹脂以外の別の有機樹脂とが混合してなる第二有機樹脂である、
表面材。」である。
【0010】
また、別の本発明は「前記第二繊維において、
前記第二繊維の構成樹脂の質量に占める、前記第一有機樹脂の質量の割合が、
前記第二繊維の構成樹脂の質量に占める、前記別の有機樹脂の質量の割合よりも多い、
請求項1に記載の表面材。」である。
【0011】
更に、別の本発明は「前記第一繊維の平均繊維径および平均繊維長と、前記第二繊維の平均繊維径および平均繊維長とが、同じである、
請求項1または請求項2に記載の表面材。」である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる表面材を構成する不織布は、加熱されると、その主面に第一繊維と第二繊維とが絡み合い生じた、縮緬のような細かなシボを発生し易い。そして、発生した当該シボの存在によって、圧力を受けた際にもその主面のMIUが低くなることが防止されており、柔軟性に富み触感に優れている主面となる。
【0013】
そのため、本発明によって、熱と圧力を受けた表面材、あるいは、熱と圧力を受けた不織布を備える表面材であっても、MIUの低下が防止されていることでMIUが大きい主面を有する不織布を備えた表面材を実現でき、当該表面材によって優れた触感を有する内装材を製造できる。
【0014】
この効果が発揮される理由は、完全に明らかにできたものではないが、本願出願人は検討を通し、次の知見を得た。
【0015】
本願出願人は、第一有機樹脂で構成された繊維と、前記第一有機樹脂と別の有機樹脂とが混合してなる第二有機樹脂で構成された繊維との組み合わせは、熱収縮性がわずかに異なる二種類の繊維として適する組み合わせであるという知見を見出した。
【0016】
そして、このような熱収縮性がわずかに異なる二種類の繊維が混在している不織布へ熱を作用させると、不織布が適度に縮み主面に細かなシボが発生することを見出した。それに対し、一種類の構成繊維からなる不織布へ熱を作用させた場合や、互いに熱収縮率が大きく異なる繊維が混在している不織布へ熱を作用させた場合(例えば、潜在捲縮繊維などの複合繊維と単繊維が混在している不織布へ熱を作用させた場合)には、不織布は全体的に大きく収縮し主面に細かなシボが発生しない、あるいは、発生し難い。
【0017】
更に、第二繊維の構成樹脂の質量に占める第一有機樹脂の質量の割合が、前記第二繊維の構成樹脂の質量に占める別の有機樹脂の質量の割合よりも多い場合には、上述した熱収縮性がわずかに異なる二種類の繊維として、更に適する組み合わせであるという知見も見出した。
【0018】
そして、第一繊維の平均繊維径および平均繊維長と、第二繊維の平均繊維径および平均繊維長とが、同じである場合には、第一繊維と第二繊維がより均一に絡み合った不織布を実現できる。その結果、加熱された際に適度に縮み主面に細かなシボが発生し易いという知見も見出した。
【0019】
以上より、熱と圧力の作用を受けた場合、あるいは、熱と圧力の作用を受けた不織布を備えている場合であっても、本発明にかかる表面材は優れた触感を有するものである。そのため、内装材として好適に使用可能な表面材である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行う。また、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、25℃温度条件下で測定を行う。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出する。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とする。
【0021】
本発明の表面材は、不織布を備えているため追従性に富み成形性に優れる。
【0022】
そして、本発明にかかる不織布では、第一繊維と第二繊維が混在している。当該構成を有する不織布は、後述する不織布の製造方法によって実現できるものであり詳細は後述するが、具体例として、第一繊維と第二繊維を混綿し開繊した後に繊維絡合手段を作用させて、第一繊維と第二繊維が混在している不織布を調製できる。なお、不織布は第一繊維と第二繊維以外にも、他の繊維が混在してなる不織布であってもよい。以降、不織布を構成する繊維を総称して構成繊維と略すことがある。
【0023】
構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。特に、優れた触感を有しており、内装材として好適に使用可能な表面材を提供し易いことから、構成繊維はポリエステル系樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0024】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。また、構成繊維は、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。
【0025】
なお、表面材に難燃性が求められる場合には、構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。
【0026】
本発明では、第一繊維の構成樹脂は第一有機樹脂であり、前記第二繊維の構成樹脂は前記第一有機樹脂と前記第一有機樹脂以外の別の有機樹脂とが混合してなる第二有機樹脂であることを特徴としている。本発明でいう混合とは、複数種類の有機樹脂が互いに混ざり合い存在している態様を指すものであって、例えば芯鞘型複合繊維などのように、異なる種類の有機樹脂同士が顕微鏡写真などを用いて目視可能な界面を有し、分離し存在している態様を含むものではない。
【0027】
第一有機樹脂の種類と第二有機樹脂との組み合わせは、不織布へ熱を作用させた際に、不織布の構成繊維である第一繊維と第二繊維の熱収縮率がわずかに異なることで不織布が適度に縮み、主面に縮緬のような細かなシボが現れる不織布を実現できるのであれば、適宜調整できる。
【0028】
一例として、第一有機樹脂はポリエチレンテレフタレートであって、第二有機樹脂はポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンが混合してなる有機樹脂である組み合わせ、第一有機樹脂はポリプロピレンであって、第二有機樹脂はポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートが混合してなる有機樹脂である組み合わせ、第一有機樹脂はポリアミドであって、第二有機樹脂はポリアミドとポリプロピレンが混合してなる有機樹脂である組み合わせなどを例示できる。
【0029】
なお、第一有機樹脂は複数種類の有機樹脂が混合してなる有機樹脂であってもよい。このとき本発明にかかる第二有機樹脂は、前述した複数種類の有機樹脂が混合してなる有機樹脂と、更に別の有機樹脂とが混在してなる有機樹脂であることができる。
【0030】
第二繊維の構成樹脂質量に占める、第一有機樹脂の質量の割合(A質量%)と、別の有機樹脂の質量の割合(B質量%)は、不織布へ熱を作用させた際に、不織布の構成繊維である第一繊維と第二繊維の熱収縮率がわずかに異なることで不織布が適度に縮み、主面に縮緬のような細かなシボが発生する不織布を実現できるのであればよく、適宜調整できる。
【0031】
一例としてA質量%:B質量%は、99.95質量%:0.05質量%~0.05質量%:99.95質量%であることができ、99.5質量%:0.5質量%~0.5質量%:99.5質量%であることができ、99質量%:1質量%~1質量%:99質量%であることができ、97質量%:3質量%~3質量%:97質量%であることができ、95質量%:5質量%~5質量%:95質量%であることができ、90質量%:10質量%~10質量%:90質量%であることができ、80質量%:20質量%~20質量%:80質量%であることができ、70質量%:30質量%~30質量%:70質量%であることができ、60質量%:40質量%~40質量%:60質量%であることができ、55質量%:45質量%~45質量%:55質量%であることができ、50質量%:50質量%であることができる。
【0032】
特に、第二繊維の構成樹脂の質量に占める、第一有機樹脂の質量の割合(A質量%)が、別の有機樹脂の質量の割合(B質量%)よりも多い場合には、熱収縮性がわずかに異なる二種類の繊維として、更に適する第一繊維と第二繊維の組み合わせとなり好ましい。
【0033】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0034】
また、構成繊維は、円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維は、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0035】
特に、第一繊維と第二繊維がより均一に絡み合うことで、主面に縮緬のような細かなシボが発生する不織布を効率良く実現できるよう、第一繊維と第二繊維はともに円形の繊維断面を有するのが好ましい。
【0036】
不織布は、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法などによって得られる繊維ウェブ、あるいは、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集し得られる繊維ウェブから調製できる。
【0037】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、加熱処理へ供しバインダあるいは構成繊維による接着一体化によって繊維ウェブの構成繊維同士を接着一体化させる方法などを挙げることができる。加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して加熱する方法などを用いることができる。
【0038】
本発明にかかる構成繊維の繊度は適宜調整できるが、優れた触感を有しており、内装材として好適に使用可能な表面材を提供できるよう、50dtex以下であるのが好ましく、30dtex以下であるのが好ましく、10dtex以下であるのが好ましく、5dtex以下であるのが好ましく、3dtex以下であるのが好ましく、2.5dtex以下であるのが好ましく、2.2dtex以下であるのが好ましく、2dtex以下であるのが好ましく、1.5dtex以下であるのが好ましく、1.3dtex以下であるのが好ましい。一方、下限値は適宜調整できるが、外観が優れる内装材を実現できるように、0.1dtex以上であるのが現実的であり、0.5dtex以上であるのが現実的であり、1dtex以上であるのが現実的である。
【0039】
本発明にかかる構成繊維の平均繊維径は、優れた触感を有しており、内装材として好適に使用可能な表面材を提供できるよう適宜調整でき、平均繊維径が50μm以下であるのが好ましく、30μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのが好ましい。一方、下限値は適宜調整できるが、併せて外観が優れる内装材を実現できるように、0.1μm以上であるのが現実的であり、1μm以上であるのが現実的である。なお、不織布の主面を撮影した電子顕微鏡写真に写る100本の繊維の繊維直径の算術平均値を求め、これを測定対象となる構成繊維の平均繊維径とする。なお、繊維の繊維直径は、電子顕微鏡写真において確認できる繊維における、繊維が伸びる方向に対して直交する方向の長さを意味する。
【0040】
また、本発明にかかる構成繊維の繊維長は、優れた触感を有しており、内装材として好適に使用可能な表面材を提供できるよう適宜調整でき、20mm以上であることができ、25mm以上であることができ、30mm以上であることができる。他方、繊維長が110mmを超えると、不織布の調製時に繊維塊が形成される傾向があり、優れた触感を有する内装材として好適に使用可能な表面材を提供するのが困難となる恐れがあることから、110mm以下であるのが好ましく、80mm以下であることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0041】
特に、第一繊維と第二繊維が均一に絡み合った不織布を実現できることで、加熱された際に適度に縮み主面に細かなシボが発生し易い不織布を実現できるよう、第一繊維と第二繊維の平均繊維径、および、第一繊維と第二繊維の平均繊維長は同じであるのが好ましい。
【0042】
本発明にかかる検討を通し本願出願人は、不織布の構成繊維である第一繊維と第二繊維の熱収縮率がわずかに異なることで、不織布へ熱を作用させた場合に不織布が適度に縮み、不織布の主面に縮緬のような細かなシボが発生することを見出した。このような不織布を調製できるよう、第一繊維と第二繊維の熱収縮率の差は適宜調整する。具体的には、JIS L1015(2010)、8.15b)「乾熱寸法変化率」(ただし、測定に際し使用する乾燥機の温度は160℃、放置時間は10分に変更、乾燥機内に平置きにて測定)に則って測定した第一繊維の熱収縮率と第二繊維の熱収縮率との差は0%よりも大きく、2%以内であるのが好ましく、1%以内であるのがより好ましい。
【0043】
不織布の構成繊維の質量に占める、第一繊維の質量の割合(質量%)と第二繊維の質量の割合(質量%)とは、加熱された際に適度に縮み主面に細かなシボが発生し易い不織布を実現できるよう適宜調整でき、99.95質量%:0.05質量%~0.05質量%:99.95質量%であることができ、99.5質量%:0.5質量%~0.5質量%:99.5質量%であることができ、99質量%:1質量%~1質量%:99質量%であることができ、97質量%:3質量%~3質量%:97質量%であることができ、95質量%:5質量%~5質量%:95質量%であることができ、90質量%:10質量%~10質量%:90質量%であることができ、80質量%:20質量%~20質量%:80質量%であることができ、70質量%:30質量%~30質量%:70質量%であることができ、60質量%:40質量%~40質量%:60質量%であることができ、55質量%:45質量%~45質量%:55質量%であることができ、50質量%:50質量%であることができる。
【0044】
なお、前述した通り、不織布は構成繊維として第一繊維と第二繊維以外の他の繊維を含んでいても良い。このとき、加熱された際に適度に縮み主面に細かなシボが現れ易い不織布を実現できるよう、当該他の繊維の熱収縮率と第一繊維の熱収縮率との差、および、当該他の繊維の熱収縮率と第二繊維の熱収縮率との差もまた、0%よりも大きく、2%以内であるのが好ましく、1%以内であるのがより好ましい。しかし、加熱された際により適度に縮み主面に細かなシボが発生し易い不織布を実現できるよう、不織布の構成繊維は第一繊維と第二繊維のみであるのが好ましい。
【0045】
本発明にかかる不織布では、構成繊維同士が有機樹脂を含むバインダによって接着一体化していてもよい。当該バインダを構成する有機樹脂の種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(例えば、バーサチック酸ビニルエステル共重合アクリル系樹脂)などを使用できる。
【0046】
不織布に含まれているバインダの目付は、本発明の構成を満足する表面材を提供できるよう適宜選択する。具体的には2.5~100g/m2であることができ、5~50g/m2であることができ、10~30g/m2であることができる。
【0047】
また、第一繊維と第二繊維以外の他の繊維が、第一繊維ならびに第二繊維を構成する有機樹脂よりも、低い融点を有する有機樹脂を含んでいる場合には、当該他の繊維が含む有機樹脂によって、不織布の構成繊維同士を接着一体化してもよい。
【0048】
不織布の、例えば、目付、厚みなどの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。
【0049】
不織布の目付は、例えば、50~500g/m2であることができ、80~300g/m2であることができ、100~250g/m2であることができる。なお、本発明において目付とは、測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。
【0050】
また、不織布の厚みは、0.5~5mmであることができ、0.7~3mmであることができ、0.8~1.9mmであることができる。なお、本発明における「厚み」は、100g/5cm2荷重時の不織布における両主面間の長さの値を測定し、無作為に選んだ10点における当該長さの値の算術平均値を意味する。
【0051】
また、不織布の見掛け密度は特に限定されるべきものではなく適宜調整するが、0.05~0.4g/cm3であることができ、0.07~0.25g/cm3であることができ、0.1~0.15g/cm3であることができる。なお、不織布の見かけ密度は、不織布の目付をその厚みで割り算出できる。
【0052】
不織布の主面の表面粗さ(SMD)や平均摩擦係数(MIU)ならびに平均摩擦係数の変動(MMD)は、優れた触感を有しており、内装材として好適に使用可能な表面材を提供できるよう、適宜調整する。
【0053】
表面粗さ(SMD;surface roughness)は、表面試験機(KES-FB4、カトーテック株式会社製)を用いて測定される値であり、不織布から採取した試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、粗さ接触子(0.5mmワイヤー、接触面幅:5mm)に10.0gの加重をかけて試料の主面に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定された主面の凹凸データの平均偏差(average deviation of surface roughness data)を意味し、単位はμmである。なお、SMDが小さい主面を備えるほど、主面を触った際に感じる凹凸感が小さく、滑らかで優れた触感を有する表面材であることを意味する。具体的には、SMDの値は3.0以下であることができ、2.7以下であることができ、2.4以下であることができる。
【0054】
平均摩擦係数(MIU)は、主面の柔軟性を示す指標である。なお、平均摩擦係数(MIU;frictional coefficient)は、表面試験機(KES-FB4)を用いて測定されるμ(摩擦係数)の20mm間の平均値(average value of μ in a distance of 20mm)であり、不織布から採取した試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、摩擦子(5mm×5mm)に50gの加重をかけて試料の主面に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定された平均値を意味する。なお、MIUが大きい主面を備えるほど、柔軟性に富み触感に優れた主面を有していることを意味する。
【0055】
MIUは0.10以上であることができ、0.20以上であることができる。特に、MIUが0.30以上の主面を有する不織布を備えた表面材は、より柔軟性に富み触感に優れており好ましい。
【0056】
平均摩擦係数の変動(MMD)は主面の均一性を示す指標である。なお、平均摩擦係数の変動(MMD;fluctuations of average frictional coefficient)は、平均摩擦係数(MIU)の測定における平均偏差を意味する。なお、MMDが小さい主面は、主面を触った際に感じる凹凸感が小さく、滑らかで優れた触感を有する表面材であることを意味する。具体的には、MMDの値は0.025以下であることができ、0.020以下であることができ、0.015以下であることができる。
【0057】
不織布の通気度は適宜調整するが、吸音効果が期待される周波数領域の範囲が広い表面材を提供できるように、通気度は5cc/cm2/sec以上であることができ、10cc/cm2/sec以上であることができ、30cc/cm2/sec以上であることができ、50cc/cm2/sec以上であることができる。上限値は適宜選択できるが、吸音効果に富むよう、通気度は1000cc/cm2/sec以下であることができ、500cc/cm2/sec以下であることができ、300cc/cm2/sec以下であることができ、100cc/cm2/sec以下であることができる。なお、この「通気度」はJIS L1913:2010「一般不織布試験方法」に規定される6.8.1(フラジール形法)によって測定される値をいう。
【0058】
上述した不織布単体を表面材として用いても良い。あるいは、内装材へ求められる物性や用途によっては、不織布へ熱と圧力を作用させ、主面に縮緬のような細かなシボを発生させた表面材であっても良い。また、表面材に対し寄せられる様々な要望に応えることができるよう、第1繊維と第2繊維とが混在した不織布に別途用意した部材(例えば、布帛(繊維ウェブ、不織布、織物、編み物)、発泡体、無孔/多孔フィルムなど)を積層して表面材としてもよく、表面材に別途用意した部材を積層してもよい。このとき、積層態様は適宜調整できるが、ただ重ねただけの積層態様であっても、バインダや構成繊維による接着一体化によって積層一体化した積層態様であってもよい。
【0059】
表面材の目付、厚みなどの諸物性は、本発明の目的が達成できるよう適宜調整でき、例えば、目付は140~300g/m2であることができ、150~260g/m2であることができ、160~250g/m2であることができる。また、厚みは、0.5~5mmであることができ、0.7~3mmであることができ、0.8~1.9mmであることができる。
【0060】
また、表面材の見掛け密度は特に限定されるべきものではなく適宜調整するが、0.05~0.4g/cm3であることができ、0.07~0.25g/cm3であることができ、0.1~0.15g/cm3であることができる。
【0061】
次に、本発明の表面材の製造方法について説明する。なお、上述の表面材について説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
【0062】
本発明にかかる表面材の製造方法は適宜選択することができるが、一例として、
工程1.構成樹脂が第一有機樹脂である第一繊維を用意する工程、
工程2.構成樹脂が第二有機樹脂である第二繊維を用意する工程、なお、第二有機樹脂は当該第一有機樹脂と当該第一有機樹脂以外の別の有機樹脂とが混合してなる有機樹脂である、
工程3.第一繊維と第二繊維を混綿して不織布を調製する工程、
を備える、不織布を備えた表面材の製造方法を挙げることができる。
【0063】
工程3について説明する。
【0064】
第一繊維と第二繊維を混綿して不織布を調製する方法は適宜調整できるが、第一繊維と第二繊維を混綿しカード機へ供することで開繊して繊維ウェブを形成し、次いで、調製した繊維ウェブへ繊維絡合手段を作用させて不織布を調製するのが好ましい。繊維絡合手段は適宜選択できるが、ニードルパンチ処理あるいは水流絡合処理を採用できる。
【0065】
また、工程3を経た不織布へ熱および/または圧力を作用させる工程を有していてもよい。不織布へ熱を作用させる方法は適宜選択でき、上述した加熱処理へ供する方法を採用できる。また、不織布へ圧力を作用させる方法は適宜選択でき、不織布の厚みよりも狭いクリアランスを有するロール間へ不織布を供する方法を採用できる。あるいは、不織布の厚みよりも狭いクリアランスを有するヒートロール間へ不織布を供することで、不織布へ熱を作用させると同時に圧力を作用させる方法を採用できる。なお、加熱温度は適宜調整するが、第一繊維および/または第二繊維が熱収縮を生じる温度以上であると共に、第一有機樹脂ならびに第二繊維を構成する有機樹脂の融点よりも低い温度に調整するのが好ましい。
【0066】
また、工程3を経た不織布へバインダを付与することで、構成繊維同士をバインダによって接着一体化してもよい。
【0067】
不織布へバインダを付与する方法は適宜選択できる。一例として、構成繊維同士を接着一体化できる有機樹脂を分散媒へ分散させてなるバインダエマルジョンや、当該有機樹脂を溶解させたバインダ溶液(以降、併せてバインダ液と総称する)を、繊維ウェブへ付与する方法を挙げることができる。バインダ液の付与方法は適宜選択できるが、バインダ液中への浸漬、泡立て含浸、コーティング、又はスプレー等の方法を用いることができる。なお、バインダ液は、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、シリカなど無機粒子、加熱され発泡する粒子あるいは既発泡粒子など中空粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、撥水撥油剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0068】
そして、バインダ液に含まれる分散媒あるいは溶媒を除去するため、バインダ液を付与した不織布を加熱処理へ供してもよい。加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して加熱する方法などを用いることができる。なお、加熱温度は適宜調整するが、分散媒あるいは溶媒を除去できると共に、第一繊維ならびに第二繊維を構成する有機樹脂の融点よりも低い温度に調整するのが好ましい。本加熱処理によって、バインダ液に含まれる有機樹脂によって、不織布の構成繊維同士を接着一体化できる。
【0069】
特に、熱および/または圧力を受け第一繊維および/または第二繊維が熱収縮を生じることで、その主面(好ましくは両主面)に、第一繊維と第二繊維とが絡み合い生じた縮緬のような細かなシボが存在している不織布に対し、バインダを付与するのが好ましい。バインダによって第一繊維と第二繊維とが絡み合い生じた縮緬のような細かなシボを固定して、当該縮緬のような細かなシボの態様が変化し難い触感に優れる表面材を提供できる。このような態様の表面材へ熱と圧力を加え意図した形状に成形することで、優れた触感を有する内装材を更に容易に製造できる。
【0070】
表面材をそのまま成形工程へ供し内装材を調製できるが、上述の表面材の製造方法では、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程などの、各種二次工程を備えた表面材の製造方法であってもよい。
【0071】
上述のようにして調製された表面材を意図した形状に成形して、内装材を製造できる。なお、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程や、リライアントプレス処理などの厚みや表面の平滑性といった諸物性を調整する工程などの、各種二次工程へ供してから前述の成形する工程へ供してもよい。
【実施例0072】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
なお、調製した表面材の「触感」は以下に説明する方法で評価を行った。
(触感の評価方法)
表面材を構成する不織布における、ニードルパンチ処理を行った側の主面を人が触った際に感じられた触感を評価した。手にまとわり付くような感覚を覚えるビロードのような触感を感じられたものを「〇」と評価した。一方、つるりとした触感を感じてしまい、手にまとわり付くような感覚を覚えるビロードのような触感を感じられなかったものを「×」と評価した。
【0074】
(繊維の用意)
顔料を配合したポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)を融解させ、ノズルから押し出し放冷することで連続長を有する繊維を紡糸した。次いで、紡糸した繊維を加熱し延伸した後に放冷することで、連続長を有する繊維aを得た。
そして、得られた連続長を有する繊維aを特定の長さにカットすることで、第一繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)を調製した。なお、第一繊維の構成樹脂はポリエチレンテレフタレートのみであった。
【0075】
ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)とポリプロピレン(融点:168℃)の混合樹脂中に顔料が配合されたマスターバッチを用意した。次いで、ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)と、マスターバッチとを融解させ混合し、ノズルから押し出し放冷することで連続長を有する繊維を紡糸した。次いで、紡糸した繊維を加熱し延伸した後に放冷することで、連続長を有する繊維bを得た。
そして、得られた連続長を有する繊維bを特定の長さにカットすることで、第二繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)を調製した。なお、第二繊維の構成樹脂は、ポリエチレンテレフタレート99.0質量%とポリプロピレン1.0質量%の混合樹脂であった。
【0076】
なお、第一繊維および第二繊維は、160℃以上の温度で熱収縮を生じる繊維であった。なお、第一繊維の熱収縮率は1.19%であり、第二繊維の熱収縮率は1.68%であった。
【0077】
(バインダ液の用意)
アクリル酸エステル樹脂(ガラス転移温度:-40°、アスカーC硬度:38)を水中に分散させてなるエマルジョンを用意し、バインダ液とした。
【0078】
(実施例1)
第一繊維40質量%と第二繊維60質量%を混綿し、カード機へ供することで開繊して繊維ウェブを形成した。そして、その片面側からニードルパンチ処理を施して、ニードルパンチ不織布(第一繊維40質量%と第二繊維60質量%が混在)を調製した。
このようして得られたニードルパンチ不織布を表面材とした。なお、得られた表面材の両主面には、第一繊維と第二繊維とが絡み合い生じた、縮緬のような細かなシボは存在していなかった。
【0079】
(実施例2)
実施例1で調製したニードルパンチ不織布における、ニードリングを施した面とは反対の面に加熱したロール(加熱温度180℃)を接触させ加熱した後、ロール表面の温度を室温と同温度に調整したロールの間(ギャップ間隔:0.4mm)へ供することで圧力を作用させた。
このようして得られた、熱と圧力を作用させた後のニードルパンチ不織布を表面材(構成繊維は、第一繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)40質量%と、第二繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)60質量%が混在)とした。なお、得られた表面材の両主面には、第一繊維と第二繊維とが絡み合い生じた、縮緬のような細かなシボが存在していた。
【0080】
(実施例3)
実施例2で調製した、熱と圧力を作用させた後のニードルパンチ不織布における、ニードリングを施した面とは反対の面から、泡立てたバインダ液を塗布した後、バインダ液を塗布したニードルパンチウェブを、ロール表面温度を室温と同温度に調整したロールの間(ギャップ間隔:0.25mm)へ供した。このようにして、ニードルパンチ不織布の全体にわたり、バインダ液が均一に行き渡るようにした。
最後に、キャンドライヤーで乾燥することで、バインダ液に含まれる分散媒を除去すると共にアクリル酸エステル樹脂によって構成繊維同士を接着一体化して、表面材(構成繊維は、第一繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)40質量%と、第二繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)60質量%が混在)を調製した。
なお、得られた表面材の両主面には、第一繊維と第二繊維とが絡み合い生じた、縮緬のような細かなシボが存在していた。
【0081】
(比較例1)
第二繊維のみをカード機へ供することで開繊して繊維ウェブを形成した。そして、その片面側からニードルパンチ処理を施して、ニードルパンチ不織布(目付:168g/m2)を調製した。
このようして得られたニードルパンチ不織布を表面材とした。なお、得られた表面材(不織布)の両主面には、縮緬のような細かなシボは存在していなかった。
【0082】
(比較例2)
実施例1で調製したニードルパンチ不織布の替わりに、比較例1で調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、熱と圧力を作用させた後のニードルパンチ不織布を調製し、これを表面材(構成繊維は、第二繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)のみ)とした。
なお、得られた表面材の両主面には、縮緬のような細かなシボは存在していなかった。
【0083】
(比較例3)
実施例2で調製した、熱と圧力を作用させた後のニードルパンチ不織布の替わりに、比較例2で調製した熱と圧力を作用させた後のニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、表面材(構成繊維は、第二繊維(原着繊維、平均繊維径:14.5μm、平均繊維長:38mm、繊維断面:円形)のみ)を調製した。
なお、得られた表面材の両主面には、縮緬のような細かなシボは存在していなかった。
【0084】
実施例および比較例で調製した各表面材の諸物性を、表1にまとめた。なお、(触感の評価方法)で下された評価結果は、表中の「触感」欄に記載した。
【0085】
【0086】
比較例1の表面材(不織布)における主面のMIUと、比較例1で調製した表面材(不織布)へ熱と圧力を作用させて調製した比較例2の表面材における主面のMIUを比較した結果、本発明の構成を備えていない比較例1の表面材(不織布)は、熱と圧力を受けた場合に、そのMIUが0.30未満まで低くなり触感に劣るものとなった。
【0087】
それに比べ、実施例1の表面材(不織布)における主面のMIUと、実施例1で調製した表面材(不織布)へ熱と圧力を作用させて調製した実施例2の表面材における主面のMIUを比較した結果、本発明の構成を備える実施例1の表面材(不織布)は、熱と圧力を受けた場合であっても、比較例1と比較例2で生じたMIUの低下よりも、そのMIUの低下が防止されており(MIUが0.30未満まで低くなることが防止されており)触感に優れるものであった。
【0088】
また、実施例で調製した表面材へ熱と圧力を加え意図した形状に成形することを試みたところ、実施例いずれの表面材においても、優れた触感を有する内装材を容易に製造できるものであった。それに比べ、比較例で調製した表面材へ熱と圧力を加え意図した形状に成形することを試みたところ、成形時に熱を受けて表面材が備える不織布における主面のMIUが低下することから、また、当該MIUが低下した主面を有する不織布を備えた表面材であることから、比較例いずれの表面材においても、優れた触感を有する内装材を製造することが困難なものであった。
【0089】
以上から、本発明によって、熱と圧力を受けた表面材である場合、あるいは、熱と圧力を受けた不織布を備えている表面材である場合であっても、優れた触感を有する、内装材として好適に使用可能な表面材を提供できることが判明した。
本発明により、各種内装材を調製可能な表面材を提供できる。特に、車両の天井、ピラーガーニッシュ、ドア、インストルメントパネル、ステアリングホイール、シフトレバー、コンソールボックス、トノカバー、ラゲッジフロア、ラゲッジサイドなどの内装材を調製可能な、表面材を提供できる。