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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086310
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】自転車競技用発走機
(51)【国際特許分類】
   A63B 22/06 20060101AFI20240620BHJP
   A63B 69/16 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A63B22/06 G
A63B69/16
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201374
(22)【出願日】2022-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】508068021
【氏名又は名称】公益財団法人JKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 美陽兒
(57)【要約】
【課題】競技のスタート前に容易に競技用自転車のペダルの位置を調整することができるとともに、スタート時に補助員の支持を不要とすることができる自転車競技用発走機を提供する。
【解決手段】自転車競技の発走前に、競技者が競技用自転車に搭乗した状態でペダルの位置を調整するための自転車競技用発走機は、競技用自転車70の後輪71が配置される本体部11と、本体部11に連結され、競技者を支持するハンドル部と、を有する。本体部11は、上面に板部(板材13)を有する基台と、板部よりも下方に格納可能に取り付けられた第1ローラ14及び第2ローラ15と、これらを上下に駆動する上下駆動機構18と、第1ローラ14及び第2ローラ15の少なくとも一方を回転駆動する回転駆動機構19と、を有する。第1ローラ14及び第2ローラ15は、板部よりも上方にせり上げられた状態で、後輪71を下方から回転可能に支持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車競技の発走前に、競技者が競技用自転車に搭乗した状態でペダルの位置を調整するための自転車競技用発走機であって、
前記競技用自転車の後輪が配置される本体部と、
前記本体部に連結され、前記競技者を支持するハンドル部と、を有し、
前記本体部は、
上面に板部を有する基台と、
前記板部よりも下方に格納可能に取り付けられた第1ローラ及び第2ローラと、
前記第1ローラ及び前記第2ローラを上下に駆動する上下駆動機構と、
前記第1ローラ及び前記第2ローラの少なくとも一方を回転駆動する回転駆動機構と、を有し、
前記第1ローラ及び前記第2ローラは、前記上下駆動機構により前記板部よりも上方にせり上げられた状態で、前記後輪を下方から回転可能に支持することを特徴とする、自転車競技用発走機。
【請求項2】
前記本体部は、水平面に対して所定の角度で傾斜した傾斜面に配置されるものであり、
前記第1ローラ及び前記第2ローラは、前記上下駆動機構によりせり上げられた状態で、それぞれ略水平に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の自転車競技用発走機。
【請求項3】
前記第1ローラ及び前記第2ローラは、その軸方向の略中央部において内径側に湾曲状に凹んだ形状を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の自転車競技用発走機。
【請求項4】
前記板部は、前記第1ローラを格納する第1格納穴と、前記第2ローラを格納する第2格納穴と、を有し、
前記第1ローラ及び前記第2ローラが、それぞれ前記第1格納穴及び前記第2格納穴に格納された状態で、前記後輪が前記板部の上に載置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自転車競技用発走機。
【請求項5】
前記第1ローラ及び前記第2ローラは、互いに略平行に配置されるとともに、前記第1ローラは、前記第2ローラよりも前記競技用自転車の進行方向前方に配置されており、
前記回転駆動機構は、前記第1ローラを回転駆動することを特徴とする、請求項1又は2に記載の自転車競技用発走機。
【請求項6】
前記ハンドル部は、略鉛直方向に起立した位置で固定可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自転車競技用発走機。
【請求項7】
前記ハンドル部は、前記本体部に向けて折り畳み可能に構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の自転車競技用発走機。
【請求項8】
前記本体部は、前記競技用自転車の進行方向前方及び後方に、それぞれ、前記本体部が載置される載置面と前記板部との段差を解消する第1傾斜板及び第2傾斜板を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の自転車競技用発走機。
【請求項9】
前記第1傾斜板及び前記第2傾斜板は、前記本体部に向けて折り畳み可能に構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の自転車競技用発走機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車競技の発走前に、競技者が競技用自転車に搭乗した状態でペダルの位置を調整するために用いられる自転車競技用発走機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オリンピックの競技としてKEIRIN(ケイリン)とよばれる種目が採用され、これに伴い、日本国内においても、ケイリンと同一のルールで250競走という競技が実施されている。250競走は、1周が250mである屋内のバンクを競技用自転車で6周走行する競技であり、1周目は予め決定された並び順でバンクを走行することが決められている。したがって、250競走は、スタートの号砲と同時に一斉にスタートする必要がある従来の競輪と異なり、スタート時の瞬発力に左右されない競技である。
【0003】
250競走において、従来のスタート方法で競技をスタートする場合に、競技者は自転車に搭乗したままスタート位置まで移動する。このとき、競技者の足はすでに自転車のペダルに固定されており、スタート位置で足をついて自転車を停止させることができないため、補助員が競技者を支えた状態でスタートが行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、競技者がスタート位置まで移動した際に、自転車のペダルの位置が競技者にとって適切な位置ではない場合があり、ペダルの位置を調整することが必要である。このような場合に、自転車の後輪を地面から持ち上げつつペダルを回転させる必要があるため、補助員の協力が必要であるとともに、厳密な位置調整が困難である。また、250競走は、バンクにスタート位置が設定されているため、傾斜面からのスタートとなり、補助員が安定して競技者を支持することが難しく、転倒の危険も伴う。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、競技のスタート前に容易に競技用自転車のペダルの位置を調整することができるとともに、スタート時に補助員の支持を不要とすることができる自転車競技用発走機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 自転車競技の発走前に、競技者が競技用自転車に搭乗した状態でペダルの位置を調整するための自転車競技用発走機であって、
上記競技用自転車の後輪が配置される本体部と、
上記本体部に連結され、上記競技者を支持するハンドル部と、を有し、
上記本体部は、
上面に板部を有する基台と、
上記板部よりも下方に格納可能に取り付けられた第1ローラ及び第2ローラと、
上記第1ローラ及び上記第2ローラを上下に駆動する上下駆動機構と、
上記第1ローラ及び上記第2ローラの少なくとも一方を回転駆動する回転駆動機構と、を有し、
上記第1ローラ及び上記第2ローラは、上記上下駆動機構により上記板部よりも上方にせり上げられた状態で、上記後輪を下方から回転可能に支持することを特徴とする、自転車競技用発走機。
【0007】
(2) 上記本体部は、水平面に対して所定の角度で傾斜した傾斜面に配置されるものであり、
上記第1ローラ及び上記第2ローラは、上記上下駆動機構によりせり上げられた状態で、それぞれ略水平に配置されることを特徴とする、(1)に記載の自転車競技用発走機。
【0008】
(3) 上記第1ローラ及び上記第2ローラは、その軸方向の略中央部において内径側に湾曲状に凹んだ形状を有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の自転車競技用発走機。
【0009】
(4) 上記板部は、上記第1ローラを格納する第1格納穴と、上記第2ローラを格納する第2格納穴と、を有し、
上記第1ローラ及び上記第2ローラが、それぞれ上記第1格納穴及び上記第2格納穴に格納された状態で、上記後輪が上記板部の上に載置されることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1つに記載の自転車競技用発走機。
【0010】
(5) 上記第1ローラ及び上記第2ローラは、互いに略平行に配置されるとともに、上記第1ローラは、上記第2ローラよりも上記競技用自転車の進行方向前方に配置されており、
上記回転駆動機構は、上記第1ローラを回転駆動することを特徴とする、(1)~(4)のいずれか1つに記載の自転車競技用発走機。
【0011】
(6) 上記ハンドル部は、略鉛直方向に起立した位置で固定可能であることを特徴とする、(1)~(5)のいずれか1つに記載の自転車競技用発走機。
【0012】
(7) 上記ハンドル部は、上記本体部に向けて折り畳み可能に構成されていることを特徴とする、(6)に記載の自転車競技用発走機。
【0013】
(8) 上記本体部は、上記競技用自転車の進行方向前方及び後方に、それぞれ、上記本体部が載置される載置面と上記板部との段差を解消する第1傾斜板及び第2傾斜板を有することを特徴とする、(1)~(7)のいずれか1つに記載の自転車競技用発走機。
【0014】
(9) 上記第1傾斜板及び上記第2傾斜板は、上記本体部に向けて折り畳み可能に構成されていることを特徴とする、(8)に記載の自転車競技用発走機。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、競技のスタート前に容易に競技用自転車のペダルの位置を調整することができるとともに、スタート時に補助員の支持を不要とすることができる発走機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自転車競技用発走機を示す斜視図である。
図2図2は、第1ローラ及び第2ローラがせり上げられた状態を示す斜視図である。
図3図3は、ハンドル部が本体部に向けて折り畳まれた状態を示す斜視図である。
図4図4は、図1に示す自転車競技用発走機の本体部を示す裏面図である。
図5図5は、ローラの上下駆動機構を説明するための図であり、(a)はローラが格納された状態のリンク機構を示し、(b)はローラがせり上げられた状態のリンク機構を示す図である。
図6図6は、自転車競技用発走機の使用時の動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る自転車競技用発走機の一例を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。また、本願明細書において、前後方向とは、本実施形態に係る自転車競技用発走機を用いて発走する競技用自転車の進行方向及びその反対側の方向を表し、左右方向とは、該競技用自転車に搭乗する競技者の左手方向、右手方向を表す。さらに、本願明細書中において、略中央部、略水平、略平行、略鉛直方向とは、正確に中央部、水平、平行、鉛直方向である必要がないことを表し、必要とされる効果が得られる程度にずれている場合も含むものとする。
【0018】
[自転車競技用発走機]
図1は、本発明の実施形態に係る自転車競技用発走機を示す斜視図である。図2は、第1ローラ及び第2ローラがせり上げられた状態を示す斜視図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、自転車競技用発走機10は、本体部11と、本体部11に連結されたハンドル部12とを有する。本体部11は、矩形状の台枠20と台枠20の一方の辺に近接して固定された板材(板部)13とにより構成される基台50と、台枠20に取り付けられた第1ローラ14及び第2ローラ15と、を有する。また、本体部11は、その前方及び後方のそれぞれに、本体部11が載置される地面(載置面)と板材13の上面とを繋ぐ第1傾斜板23と、第2傾斜板24とを有する。
【0020】
さらに、本体部11は、第1ローラ14及び第2ローラ15を上下に駆動する上下駆動機構18と、第1ローラ14を回転駆動する回転駆動機構19とを有する。第1ローラ14及び第2ローラ15は、それぞれ、軸26、27の方向の略中央部において、内径側に湾曲状に凹んだ形状を有している。
【0021】
矩形の台枠20は、左右方向に延びる一対の本体側前枠部材20a及び本体側後枠部材20bと、これらの両端同士を連結し、前後方向に延びる本体側左枠部材20c及び本体側右枠部材20dと、を有する。また、本体側前枠部材20a及び本体側後枠部材20bは、補強部材21a、21b、21c(図4参照)で互いに連結されている。補強部材21aには、断面がコの字状で穴を有するフック22が取り付けられている。
【0022】
板材13には、第1格納穴16及び第2格納穴17が形成されており、第1ローラ14及び第2ローラ15は、それぞれ第1格納穴16及び第2格納穴17を介して板材13の下方に格納可能に構成されている。また、板材13には、上下駆動機構18を保護するカバー35が形成されており、カバー35には、上下駆動機構18による第1ローラ14及び第2ローラ15の上昇及び下降を切り替える上下駆動スイッチ29が取り付けられている。
【0023】
ハンドル部12は、競技者が把持するグリップ部31と、このグリップ部31を競技者が把持しやすい位置に支持する枠部30と、を有する。枠部30は、競技者がグリップ部31を把持する状態において、上下方向に延びる前後一対のハンドル側前枠部材30a及びハンドル側後枠部材30bと、これらの上下両端同士を連結し、前後方向に延びる一対のハンドル側下枠部材30c及びハンドル側上枠部材30dを有する。グリップ部31は、ハンドル側上枠部材30dに連続して、前方に延出するように形成されている。また、グリップ部31には、回転駆動機構19による第1ローラ14の回転及び停止を切り替える回転駆動スイッチ32が取り付けられている。
【0024】
ハンドル側前枠部材30aと本体側前枠部材20aとは、補助部材34aで連結され、ハンドル側後枠部材30bと本体側後枠部材20bとは、補助部材34bで連結されている。また、ハンドル側下枠部材30cは、台枠20の補強部材21aに取り付けられたフック22に係止され、フック22の穴と、ハンドル側下枠部材30cにおける、フック22の穴に整合する位置に設けられた不図示の穴に、固定ピン33が挿入される。これにより、ハンドル部12は、起立した状態で固定可能に構成されている。
【0025】
図3は、ハンドル部が本体部に向けて折り畳まれた状態を示す斜視図である。自転車競技用発走機10の使用時には、ハンドル部12は起立した状態で固定される。一方、使用後においては、図3に示すように、固定ピン33が抜き取られ、ハンドル部12と本体部11とが重ね合わされるようにして折り畳まれる。また、本実施形態において、第1傾斜板23及び第2傾斜板24は、蝶番25により板材13に取り付けられており、本体部11に向けて折り畳み可能に構成されている。
【0026】
図4は、図1に示す自転車競技用発走機の本体部を示す裏面図である。図5(a)及び図5(b)は、ローラの上下駆動機構を説明するための図である。図4及び図5(a)、図5(b)を用いて、本実施形態における上下駆動機構18及び回転駆動機構19について、詳細に説明する。
【0027】
(上下駆動機構)
上下駆動機構18は、バッテリ49と、バッテリ49に接続されたリニアアクチュエータ28と、四節リンク機構37を介してリニアアクチュエータ28に接続された第1シャフト44及び第2シャフト45と、を有する。リニアアクチュエータ28は、モータ42の軸の回転により、シリンダ41内のピストン43を直線的に往復運動させるものである。ピストン43の先端は、四節リンク機構を構成する駆動リンク46の一端部に連結され、支点53aを中心として両者は回転可能に接続されており、駆動リンク46の他端部は、第1シャフト44に固定されている。
【0028】
駆動リンク46の一端部と、従動リンク47の一端部とは、連結リンク48により連結されている。なお、連結リンク48と駆動リンク46の一端部、及び連結リンク48と従動リンク47の一端部とは、それぞれ支点53a、支点53bを中心として回転可能に構成されている。また、従動リンク47の他端部は、第2シャフト45に固定されている。
【0029】
第1シャフト44及び第2シャフト45は、補強部材21b、21cにより回転可能に支持されている。第1シャフト44には、第1ローラ14の軸26を支持する右側第1ローラ支持プレート51a及び左側第1ローラ支持プレート51bが所定の間隔を開けて固定されている。第2シャフト45にも同様に、第2ローラ15の軸27を支持する右側第2ローラ支持プレート52a及び左側第2ローラ支持プレート52bが所定の間隔を開けて固定されている。
【0030】
板材13の上に競技用自転車の後輪を載置するまでの間、及び板材13の上から競技用自転車を発走させる際には、図5(a)に示すように、ピストン43がシリンダ41内に収容されている。このとき、ピストン43の先端に接続された駆動リンク46と、この駆動リンク46に連結リンク48を介して接続された従動リンク47は、上端側がリニアアクチュエータ28の方向に向かって倒れた状態となっている。そして、第1シャフト44及び第2シャフト45に固定された全てのローラ支持プレート51a、51b、52a、52bも倒れており、第1ローラ14及び第2ローラ15は、板材13の下方に格納されている。
【0031】
上下駆動スイッチ29が操作されると、図5(b)に示すように、シリンダ41内から伸長したピストン43が、駆動リンク46を起立させるとともに、従動リンク47も起立させる。これにより、第1シャフト44及び第2シャフト45は、これらの軸を中心として約90°回転し、第1シャフト44及び第2シャフト45の回転に伴って、全てのローラ支持プレート51a、51b、52a、52bが起立し、第1ローラ14及び第2ローラ15がせり上げられる。
【0032】
自転車競技用発走機10を使用する際には、互いに略平行に配置された第1ローラ14及び第2ローラ15の軸26、27と、競技用自転車の後輪の回転軸とが、互いに略平行となるように、第1ローラ14及び第2ローラ15上に後輪が配置される。したがって、上下駆動機構18により第1ローラ14及び第2ローラ15が板材13よりも上方にせり上げられた場合に、後輪は、第1ローラ14及び第2ローラ15により下方から回転可能に支持される。
【0033】
なお、右側第1ローラ支持プレート51a及び右側第2ローラ支持プレート52aは、それぞれ左側第1ローラ支持プレート51b及び左側第2ローラ支持プレート52bよりも短く設計されている。したがって、水平な地面に本体部11が載置された場合に、第1ローラ14及び第2ローラ15が上下駆動機構によりせり上げられると、第1ローラ14及び第2ローラ15は、右側端部よりも左側端部の方が高い状態で配置される。一方、水平な地面に対して、右側の方が高くなっている傾斜面に本体部11が載置された場合に、第1ローラ14及び第2ローラ15が上下駆動機構によりせり上げられると、第1ローラ14の軸26、第2ローラ15の軸27は、いずれも略水平に配置される。
【0034】
(回転駆動機構)
回転駆動機構19は、バッテリ49と、バッテリ49に接続されたモータ60と、モータ60によって回転駆動するモータ側ギア61と、不図示のチェーンによってモータ側ギア61に連結されたローラ側ギア62とを有する。ローラ側ギア62は、第1ローラ14の軸26に固定されている。
【0035】
回転駆動スイッチ32が操作されると、モータ側ギア61の回転に伴って、ローラ側ギア62が回転し、これにより、第1ローラ14が回転する。なお、本実施形態において、回転駆動スイッチ32は、第1ローラ14の回転及び停止を切り替えるのみでなく、第1ローラ14の回転方向を切り替え可能に構成されている。
【0036】
図6は、自転車競技用発走機10の使用時の動作を示す斜視図である。図1及び図6を参照して、自転車競技用発走機10の使用方法について、以下に説明する。本実施形態に係る自転車競技用発走機10の使用の対象となる競技は、例えば250競走であり、水平面に対して例えば13°傾斜したバンク(傾斜面)からスタートされる。
【0037】
図1に示すように、まず、自転車競技の発走前に、スタート位置であるバンクに自転車競技用発走機10を設置する。このとき、第1ローラ14及び第2ローラ15は、板材13の下方に格納されている。また、ハンドル部12は起立した状態で固定されている。なお、本実施形態においては、自転車競技用発走機10をバンクに設置した状態で、ハンドル部12は、略鉛直方向に起立した位置で固定される。
【0038】
次に、不図示の競技者が競技用自転車70に搭乗し、足がペダル72に固定された状態で、板材13の上に競技用自転車70を移動させる。このとき、競技者はグリップ部31を把持しつつ、競技用自転車70の後輪71が、互いに平行に配置された第1ローラ14と第2ローラ15との間に載置されるように、競技用自転車70の位置を調整する。
【0039】
その後、図6に示すように、補助員が上下駆動スイッチ29を操作し、第1ローラ14及び第2ローラ15を上昇させる。これにより、後輪71は、板材13から離隔し、第1ローラ14及び第2ローラ15により下方から支持された状態となる。その後、競技者が回転駆動スイッチ32を操作し、第1ローラ14を回転させることにより、後輪71を回転させ、ペダル72を所望の位置となるように調整する。その後、再び補助員が上下駆動スイッチ29を操作し、第1ローラ14及び第2ローラ15を板材13の下方に格納し、後輪71を板材13の上に載置する。
【0040】
上記のように構成された本実施形態に係る自転車競技用発走機10においては、上下駆動スイッチ29の操作により、容易に後輪71を板材13から持ち上げることができ、後輪71は、第1ローラ14及び第2ローラ15により回転可能に支持される。そして、競技者が回転駆動スイッチ32を操作することにより、容易に第1ローラ14を回転させ、後輪71を回転させることができる。したがって、競技者は、所望の位置に容易にペダル72の位置を調整することができる。その後、再び上下駆動スイッチ29の操作により、容易に後輪71が板材13の上に載置されるため、競技者がペダル72を回転させる操作によって、所望のタイミングで競技用自転車70を発走させることができる。
【0041】
また、競技者は補助員によって支えられるのではなく、グリップ部31を把持することによって自身を支えるため、競技者を支えるための技術や力を有する補助員が不要になるとともに、安全性を向上させることができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、水平面に対して所定の角度で傾斜した傾斜面に本体部11が載置されることを考慮して、第1ローラ14及び第2ローラ15をせり上げた状態で、これらの軸が略水平となるように設計されている。また、第1ローラ14及び第2ローラ15は、軸方向中央部が湾曲状に凹んだ形状を有している。したがって、第1ローラ14及び第2ローラ15により、競技用自転車70を安定して鉛直方向に立てることができるとともに、後輪71を持ち上げる際の安定性をより一層向上させることができる。
【0043】
また、本体部11が傾斜面に載置されることを考慮して、ハンドル部12は略鉛直方向に起立した状態で固定できるように設計されている。したがって、競技者は、安定して自身を支えることができる。さらに、ハンドル部12は、本体部11に向けて折り畳み可能に構成されているため、競技者の発走後に自転車競技用発走機10をコンパクトに変形させることができ、スタート位置から迅速に移動させることができる。また、本体部11の本体側左枠部材20cにはタイヤ36が取り付けられているため、ハンドル部12を折り畳んだ後に、より一層容易に自転車競技用発走機10を移動させることができる。さらに、タイヤ36の近傍に、不図示の転倒防止用ピンが取り付けられていると、自転車競技用発走機10を壁等に立てかけた場合に、タイヤ36の動きを抑制して、転倒を防止することができる
【0044】
なお、本体部11は、第1ローラ14及び第2ローラ15を板材13の下方に格納するように設計されているため、本体部11には、所定の厚さが必要となる。本実施形態においては、本体部11が載置される載置面と板材13の上面との間の段差を解消する第1傾斜板23及び第2傾斜板24を取り付けている。具体的に、第1傾斜板23は、本体部11の進行方向前方において、板材13の上面と載置面とをなだらかに結ぶ形状を有し、第2傾斜板24は、本体部11の後方において、板材13の上面と載置面とをなだらかに結ぶ形状を有する。したがって、競技用自転車70を板材13の上に移動させる動作をスムーズに実施することができる。なお、第1傾斜板23及び第2傾斜板24についても、本体部11に向けて折り畳み可能に構成されているため、第1傾斜板23及び第2傾斜板24を本体部11に重ね合わせるようにして折り畳んだ後に、ハンドル部12を折り畳むことができる。したがって、自転車競技用発走機10を一時的に保管するための広いスペースが不要である。
【0045】
本実施形態においては、第1ローラ14及び第2ローラ15のうち、進行方向前方に位置する第1ローラ14が回転駆動機構19により回転するように構成されているが、回転駆動機構19により回転させるローラは限定されない。例えば、後方に位置する第2ローラ15を回転させても、第1ローラ14及び第2ローラ15の両方を回転させてもよい。ただし、競技用自転車70に競技者が搭乗したときに、第1ローラ14の方により大きい荷重がかかるため、第1ローラ14を回転させると、よりスムーズに後輪71を回転させることができる。
【0046】
また、本発明において、上下駆動スイッチ29の位置は特に限定されず、グリップ部31に、回転駆動スイッチ32と上下駆動スイッチ29の両方が取り付けられていてもよい。このような構成とすると、スタート地点に自転車競技用発走機10を配置した後、競技者がスタートするまで全ての動作を競技者が操作することができ、後輪71の位置を調整するための一連の動作をより一層スムーズに実施することができる。
【0047】
ハンドル部12の位置についても限定されず、本体部11の右手側に配置されても、左手側に配置されてもよく、競技者が操作しやすい方向にハンドル部12が配置されるように設計すればよい。
【0048】
さらに、本実施形態に係る自転車競技用発走機10は、250競走の発走時にのみ利用されるものではなく、同様なスタート方法を用いる全ての競技において利用することができる。したがって、スタート位置のバンクの角度等は、種々に変更される可能性がある。このような場合に、第1ローラ14及び第2ローラ15の軸の角度が調整可能に構成されていると、種々のバンク角度に対応させることができる。第1ローラ14及び第2ローラ15の軸の角度を調整する方法としては、例えば第1ローラ14及び第2ローラ15を支持するローラ支持プレートの長さを変更する方法や、基台50の下面に傾斜調整用部材を取り付ける方法等が挙げられる。
【0049】
以上詳述したように、本発明に係る自転車競技用発走機によると、自転車競技のスタート前に容易に競技用自転車のペダルの位置を調整することができるとともに、スタート時に補助員の支持を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 自転車競技用発走機
11 本体部
12 ハンドル部
13 板材(板部)
14 第1ローラ
15 第2ローラ
16 第1格納穴
17 第2格納穴
18 上下駆動機構
19 回転駆動機構
20 台枠
23 第1傾斜板
24 第2傾斜板
28 リニアアクチュエータ
29 上下駆動スイッチ
30 枠部
31 グリップ部
32 回転駆動スイッチ
49 バッテリ
50 基台
図1
図2
図3
図4
図5
図6