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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008634
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
F02M25/08 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110656
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多湖 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆史
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA10
3G144CA02
3G144CA03
3G144CA05
3G144DA02
3G144EA03
3G144FA05
3G144FA06
3G144GA02
3G144GA30
(57)【要約】
【課題】内燃機関の始動時に過リッチ状態となることを抑制し得る蒸発燃料処理装置を提供する。
【解決手段】蒸発燃料処理装置は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を内燃機関に接続されている吸気管に供給する。蒸発燃料処理装置は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、キャニスタと吸気管を接続するパージ通路と、パージ通路上に設けられており、吸気管内の圧力に応じてパージガスの流量を変更することができるとともに、パージ通路を閉じることができるメカニカルバルブを備えている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内で発生した蒸発燃料を内燃機関に接続されている吸気管に供給する蒸発燃料処理装置であって、
燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
キャニスタと吸気管を接続するパージ通路と、
パージ通路上に設けられており、吸気管内の圧力に応じてパージガスの流量を変更することができるとともに、パージ通路を閉じることができるメカニカルバルブと、
を備えている蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸発燃料処理装置であって、
メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が第1所定値未満になったときにパージ通路を閉じる蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸発燃料処理装置であって、
メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が小さくなるに従って、パージガスの流量を増大させる蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置であって、
メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が第1所定値未満であるとともに、メカニカルバルブの上流側の圧力と大気圧との差圧が第2所定値未満のときに、パージ通路を閉じている蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸発燃料処理装置であって、
メカニカルバルブは、ばねを用いてバルブ体をバージガス導入口に付勢し、パージ通路を閉じている蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、蒸発燃料処理装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、燃料タンクで蒸発した蒸発燃料を吸気管に供給する蒸発燃料処理装置が開示されている。特許文献1の蒸発燃料処理装置は、キャニスタで吸着した蒸発燃料を吸気管に供給するために、2個のパージ通路(第1燃料蒸気通路、第2燃料蒸気通路)を備えている。第1燃料蒸気通路及び第2燃料蒸気通路は、キャニスタと吸気管を連通している。また、第2燃料蒸気通路上には、電子制御バルブが配置されている。電子制御バルブは、キャニスタと吸気管を、連通状態と遮断状態に切換える。電子制御バルブは、内燃機関の温度が所定値未満(内燃機関の始動時)のとき、及び、内燃機関が停止状態のときに開放する(キャニスタと吸気管を連通する)ように制御される。特許文献1では、内燃機関が停止状態のときに吸気管内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させることを目的として、内燃機関が停止状態のときに電子制御バルブを開放させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-57869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1では、内燃機関が停止状態のときにバルブを開放し、キャニスタと吸気管を連通させている。しかしながら、内燃機関が停止状態のときにキャニスタと吸気管を連通させると、内燃機関の停止中に蒸発燃料が吸気管内に移動することが起こり得る。すなわち、特許文献1では、内燃機関を始動させたときに、吸気管内に蒸発燃料が存在することが起こり得る。内燃機関の始動時に吸気管内に蒸発燃料が存在すると、内燃機関の始動時に過リッチ状態となり、内燃機関の始動不良が起こり得る。本明細書は、内燃機関の始動時に過リッチ状態となることを抑制し得る蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を内燃機関に接続されている吸気管に供給する蒸発燃料処理装置であって、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタと、キャニスタと吸気管を接続するパージ通路と、パージ通路上に設けられており、吸気管内の圧力に応じてパージガスの流量を変更することができるとともに、パージ通路を閉じることができるメカニカルバルブを備えていてよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術の蒸発燃料処理装置であって、メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が第1所定値未満になったときにパージ通路を閉じてよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第2技術の蒸発燃料処理装置であって、メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が小さくなるに従って、パージガスの流量を増大させてよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、上記第1から第3技術のいずれかの蒸発燃料処理装置であって、メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が第1所定値未満であるとともに、メカニカルバルブの上流側の圧力と大気圧との差圧が第2所定値未満のときに、パージ通路を閉じてよい。
【0009】
本明細書で開示する第5技術は、上記第4技術の蒸発燃料処理装置であって、メカニカルバルブは、ばねを用いてバルブ体をバージガス導入口に付勢し、パージ通路を閉じてよい。
【発明の効果】
【0010】
第1技術によると、吸気管内の圧力に応じて、メカニカルバルブ自体がパージ通路を閉じるように動作する。内燃機関が停止しているときにパージ通路を閉じるようにメカニカルバルブの開閉を調整することにより、内燃機関が停止しているときにキャニスタと吸気管が連通することを防止することができる。その結果、内燃機関の停止中にキャニスタから吸気管に蒸発燃料が侵入することが防止され、内燃機関の始動時に内燃機関に供給される混合気が過リッチ状態になることを抑制することができる。
【0011】
また、第1技術によると、メカニカルバルブを駆動させるための装置を省略することができる。例えば、パージ通路を開閉するために電子制御式バルブを用いた場合、バルブを駆動するタイミングを決定するための装置(圧力計等)、バルブを駆動するための装置(コントローラ、モータ等)が必要となり、蒸発燃料処理装置を構成するための装置が増大する。メカニカルバルブを用いてパージ通路を開閉することにより、電子制御式バルブを用いた場合に必要とされる種々の装置を省略することができる。なお、第1技術のメカニカルバルブは、吸気管内の圧力に応じてパージ通路の流路面積を変更することができる。そのため、第1技術によると、例えば、内燃機関が低負荷状態で運転している(吸気管内の負圧が大きい)ときにパージ流量を少なくし、内燃機関が高負荷状態で運転している(吸気管内の負圧が小さい)ときにパージ流量を増大させることもできるといった利点も得られる。
【0012】
第2技術によると、内燃機関が停止したときに、確実にパージ通路を閉じることができる。内燃機関が作動している間、吸気管内の圧力は負圧である。そして、内燃機関が停止すると、吸気管内の圧力はほぼ大気圧となる。そのため、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が第1所定値未満になったときにパージ通路を閉じることにより、吸気管内の圧力が大気圧となったときには確実にパージ通路を閉じられており、内燃機関の停止中にキャニスタから吸気管に蒸発燃料が侵入することを確実に防止することができる。
【0013】
第3技術によると、内燃機関が高負荷状態になるに従って、吸気管に供給されるパージ流量を増大させることができる。すなわち、内燃機関の始動直後(アイドリング時等)はパージ流量を少なくし、内燃機関の負荷状態が高くなるに従ってパージ流量を増大させることができる。
【0014】
第4技術によると、内燃機関の停止中にキャニスタの圧力(あるいは、燃料タンク内の圧力)が大気圧より高くなった場合であっても、パージ通路が開くことを防止することができる。その結果、内燃機関の停止中にキャニスタから吸気管に蒸発燃料が侵入することを、より確実に防止することができる。
【0015】
第5技術によると、内燃機関の停止中にパージ通路が開くことをより確実に防止することができる。例えば、蒸発燃料処理装置に振動が加わった場合であっても、ばねの付勢力により、パージ通路が開くことを防止することができる。あるいは、蒸発燃料処理装置の姿勢(重力方向に対するメカニカルバルブの配置姿勢)に依らず、内燃機関の停止中にパージ通路が開くことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】蒸発燃料処理装置の概略図を示す。
図2】第1実施例のメカニカルバルブの概略図を示す。
図3】差圧とパージ流量の関係を示す。
図4】差圧とパージ流量の関係を示す。
図5】第2実施例のメカニカルバルブの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(蒸発燃料処理装置)
図1を参照し、蒸発燃料処理装置100について説明する。蒸発燃料処理装置100は、自動車等の車両に搭載される。蒸発燃料処理装置100は、特に、自動二輪車に好適に用いられる。蒸発燃料処理装置100は、燃料タンク10で発生した蒸発燃料を、吸気管6を介してエンジン2に供給する。エンジン2は、内燃機関の一例である。吸気管6は、エンジン2に接続されており、エンジン2に空気を供給するための配管である。吸気管6には、スロットルバルブ4が設けられている。スロットルバルブ4の開度を調整することによって、エンジン2に流入する空気量が制御される。スロットルバルブ4は、ECU(図示省略)によって、開度が制御される。エアクリーナ8が、スロットルバルブ4より上流で吸気管6に接続されている。エアクリーナ8は、吸気管6に流入する空気から異物を除去するフィルタを有する。スロットルバルブ4が開くと、エアクリーナ8を通過した空気が、吸気管6を通ってエンジン2に吸気される。エンジン2は、燃料と空気と内部で燃焼し、燃焼後に排気管(図示省略)に排気する。
【0018】
パージ通路22が、スロットルバルブ4の下流で、吸気管6に接続されている。パージ通路22は、キャニスタ20と吸気管6を接続している。パージ通路22は、キャニスタ20に吸着されている蒸発燃料を、パージガスとして吸気管6に供給する配管である。なお、パージ通路22の端部にメカニカルバルブ30が設けられており、パージ通路22は、メカニカルバルブ30を介して吸気管6に接続されている。メカニカルバルブ30は、パージ通路22の開閉、及び、パージ通路22を移動するパージガスの流量(パージ流量)を制御することができる。メカニカルバルブ30の詳細については後述する。
【0019】
キャニスタ20は、タンク配管12を介して燃料タンク10に接続されている。キャニスタ20の内部には活性炭(図示省略)が配置されており、燃料タンク10内で発生した蒸発燃料は、活性炭に吸着される。これにより、燃料タンク10内で発生した蒸発燃料が大気に放出されることが防止される。また、キャニスタ20には大気配管24も接続されている。大気配管24の一端に、エアフィルタ28が設けられている。パージガスを吸気管6に供給する際、エアフィルタ28を通過した清浄な空気が、大気配管24を通じてキャニスタ20に導入される。そして、キャニスタ20に導入された空気と、キャニスタ20に吸着されている蒸発燃料との混合ガス(パージガス)が、パージ通路22を通じて吸気管6に供給される。なお、大気配管24上に、チェックバルブ26が設けられている。チェックバルブ26は、キャニスタ20に吸着されている蒸発燃料が大気に放出されることを防止している。
【0020】
(メカニカルバルブ30:第1実施例)
図2を参照し、メカニカルバルブ30について説明する。なお、状態(a)はメカニカルバルブ30が閉じている状態、状態(b)はメカニカルバルブ30の開度が小さい状態、状態(c)はメカニカルバルブ30の開度が大きい状態を示している。状態(a)の場合、パージ通路22は閉じており、キャニスタ20から吸気管6にパージガスは供給されない。状態(b)及び(c)の場合、パージ通路22が開き、キャニスタ20から吸気管6にパージガスが供給される。まず、状態(a)を参照し、メカニカルバルブ30の構造について説明する。
【0021】
メカニカルバルブ30は、一端にガス導入口38が設けられている第1筒部34と、第1筒部34内に配置されているコイルばね42と、一端が第1筒部34の他端に連通しているとともに他端にガス流出口36が設けられている第2筒部32と、筒部32,34内を進退可能な弁棒50を備えている。弁棒50の一端(ガス導入口38側の端部)には、弁体52が設けられている。ガス導入口38はパージ通路22に接続され、ガス流出口36は吸気管6に接続される。コイルばね42は、弁棒50をガス導入口38側に付勢している。また、コイルばね42は、弁棒50のガス導入口38側への移動量を調整する。なお、第2筒部32内には、ストッパ40が設けられている。ストッパ40は、第2筒部32の内壁に設けられた突出部である。ストッパ40は、弁棒50がガス流出口36側に移動したときに弁棒50に接触し、弁棒50の移動量を規制する。状態(a)では、弁体52が、ガス導入口38の表面に設けられている弁座38aに接触している。そのため、状態(a)では、メカニカルバルブ30が閉じており、キャニスタ20から吸気管6にパージガスが供給されない。
【0022】
吸気管6内の圧力が負圧のとき(エンジン2の作動中)は、状態(b)又は(c)に示すように、弁体52が弁座38aから離れ、弁棒50がガス流出口36に移動する。弁棒50の外径50Rは、第1筒部34の内径34R及び第2筒部32の内径32Rよりも小さい。よって、弁棒50と第1筒部34の間、及び、弁棒50と第2筒部32の間には、隙間が形成される。そのため、吸気管6内の圧力が負圧のときは、弁棒50と第1筒部34の隙間、及び、弁棒50と第2筒部32の隙間60を、パージガスが通過する。なお、第2筒部32の内径32Rは、第1筒部34の内径34Rよりも小さい。そのため、弁棒50のガス流出口36への移動量が大きくなる程(隙間60の長さ60Lが長くなる程)、パージガスの移動抵抗が大きくなり、吸気管6内へのパージガスの供給量が減少する。すなわち、状態(b)よりも状態(c)の方が、吸気管6内へのパージガスの供給量が少ない。
【0023】
ここで、図2及び図3を参照し、エンジン2の作動状態(負荷状態)と、吸気管6へのパージガスの供給量の関係について説明する。エンジン2が停止している場合、吸気管6内の圧力が大気圧とほぼ等しい。すなわち、エンジン2が停止している場合、大気圧と吸気管6内の差圧は、ほぼ「0」である。この場合、メカニカルバルブ30は、状態(a)のようにパージ通路22は閉じている。そのため、エンジン2が停止しているときに、吸気管6内にパージガスが侵入することが防止される。エンジン2が作動すると、吸気管6内が負圧となり、大気圧と吸気管6内に差圧が生じる。メカニカルバルブ30では、大気圧と吸気管6内の差圧が第1所定値Th1以上になると、弁体52が弁座38aから離れる。換言すると、メカニカルバルブ30では、大気圧と吸気管6内の差圧が第1所定値Th1未満になると、弁体52が弁座38aに着座し、パージ通路22が閉じられる。なお、第1所定値Th1は、例えば10~200Paに調整される。
【0024】
吸気管6内の負圧が大きくなる程(吸気管6内の圧力が低下する程)、弁棒50がガス流出口36に移動し、隙間60の長さ60Lの長さが長くなる。そのため、吸気管6内の負圧が大きくなる程、バージガスの流量は減少する。エンジン2の始動時は、エンジン2の負荷が小さいので、エンジン2に供給される空気量が少ない。そのため、エンジン2の始動時はスロットルバルブ4の開度が小さく、吸気管6内の負圧が大きくなる。すなわち、エンジン2の始動時は、状態(c)のように弁棒50がガス流出口36側へ大きく移動し、パージガスの流量を小さく制御する。上述したように、エンジン2が停止しているときは、吸気管6内にパージガスが侵入しない。エンジン2の始動前に吸気管6内にパージガスが存在しないので、エンジン2の始動時(パージガスの流量が小さく制御されるとき)に、エンジン2に多くの燃料が供給されることを防止することができる。すなわち、エンジン2の始動時に過リッチ状態となることが抑制され、エンジン2の始動不良を抑制することができる。
【0025】
エンジン2の負荷が大きくなるに従い、スロットルバルブ4の開度が大きくなり、吸気管6内の負圧が小さくなる(吸気管6内の圧力が上昇する)。その結果、状態(b)のように弁棒50のガス流出口36側へ移動量が小さくなり、パージガスの流量が増大する。すなわち、メカニカルバルブ30は、吸気管6内の圧力と大気圧との差圧が小さくなるに従って(エンジン2の負荷が大きくなるに従って)、パージガスの流量を増大させることができる。キャニスタ20に吸着された蒸発燃料を、効果的に消費することができる。
【0026】
上記したように、メカニカルバルブ30では、コイルばね42が弁棒50をガス導入口38側に付勢している。そのため、メカニカルバルブ30の上流側の圧力(燃料タンク10、キャニスタ20又はパージ通路22内の圧力)が大気圧より高くなり、弁体52にガス流出口36側へ移動する力が加わっても、メカニカルバルブ30の上流側の圧力と大気圧の差圧が第2所定値Th2未満であれば、弁体52が弁座38aに着座し続ける。すなわち、メカニカルバルブ30は、メカニカルバルブ30の上流側の圧力と大気圧の差圧が第2所定値Th2未満のときに、パージ通路22を閉じている。そのため、図4に示すように、メカニカルバルブ30は、メカニカルバルブ30の上流側の圧力(例えば、キャニスタ20内の圧力)と大気圧の差圧が第2所定値Th2未満のときに、パージ流量を「0」に維持することができる。なお、第2所定値Th2は、例えば500~1000Paに調整される。
【0027】
(メカニカルバルブ130:第2実施例)
図5を参照し、メカニカルバルブ130について説明する。メカニカルバルブ130は、メカニカルバルブ30の変形例であり、コイルばね142の形態が、メカニカルバルブ30で用いられているコイルばね42の形態と異なる。メカニカルバルブ130について、メカニカルバルブ30と実質的に同じ構造については、メカニカルバルブ30に付した参照番号と同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0028】
メカニカルバルブ130では、エンジン2が停止している場合、コイルばね142は、弁棒50をガス導入口38側に付勢していない。コイルばね142は、弁棒50のガス導入口38側への移動量を調整するだけである。メカニカルバルブ130は、ガス流出口36が鉛直方向上側、ガス導入口38が鉛直方向下側になるように、車両内に配置される。そのため、エンジン2が停止している場合、弁棒50の自重によって弁体52が弁座38aに着座し、パージ通路22は閉じられる。また、メカニカルバルブ130の上流側の圧力が大気圧より高くなった場合でも、メカニカルバルブ30の上流側の圧力と大気圧の差圧が、弁棒50を押し上げる圧力未満(例えば、第2所定値Th2未満)であれば、弁体52が弁座38aに着座し続ける。
【0029】
(他の実施形態)
本明細書が開示する技術において重要なことは、パージ経路上に、吸気管内の圧力に応じてパージガスの流量を変更することができるとともに、パージ通路を閉じることができるメカニカルバルブを配置することである。そのため、メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧に依存することなく、パージ通路を閉じるように構成されていてもよい。例えば、メカニカルバルブは、内燃機関が停止しているときは吸気管内の圧力と大気圧との差圧が変動してもパージ通路を閉じ続けるように構成されていてもよい。
【0030】
また、メカニカルバルブは、吸気管内の圧力と大気圧との差圧が小さくなるに従って、パージガスの流量を減少させるように構成されていてもよい。すなわち、吸気管内の圧力に応じてパージガスの流量を変更することができれば、吸気管内の圧力と大気圧との差圧の変化に応じて、パージガスの流量を増大させてもよいし、減少させてもよい。
【0031】
なお、上記実施例ではメカニカルバルブの上流側の圧力と大気圧との差圧が第2所定値未満のときにパージ通路を閉じる構造について説明したが、メカニカルバルブは、第2所定値のことを考慮せずに設計されてもよい。すなわち、メカニカルバルブは、内燃機関が停止しているときにパージ通路を閉じていれば足り、メカニカルバルブの上流側の圧力に応じて駆動させなくてもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
2:内燃機関
6:吸気管
10:燃料タンク
20:キャニスタ
22:パージ通路
30:メカニカルバルブ
100:蒸発燃料処理装置
図1
図2
図3
図4
図5