(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086380
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】発光装置の光出力推定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20240620BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20240620BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20240620BHJP
H01S 5/068 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L33/00 K
H01S5/343 610
H01L33/32
H01S5/068
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201476
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦 健太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直樹
【テーマコード(参考)】
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
5F173AH22
5F173SE01
5F173SF03
5F241AA46
5F241CA40
(57)【要約】
【課題】発光装置の光出力の推定精度を向上させることができる発光装置の光出力推定方法を提供する。
【解決手段】発光装置の光出力推定方法は、窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する方法である。発光装置の光出力推定方法は、所定の累積発光時間T
x以前の期間における発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、所定の累積発光時間T
x以降の期間における発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とを、異なる基準としている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、
所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準である、
発光装置の光出力推定方法。
【請求項2】
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記所定の累積発光時間Txの直前における前記第1推定基準の関数の傾きは、前記所定の累積発光時間Txの直後の前記第2推定基準の関数の傾きよりも大きい、
請求項1に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項3】
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の発光時間の経過とともに前記発光装置の劣化速度が低下するよう前記発光装置の光出力を推定する基準であり、
前記第2推定基準は、前記第1推定基準と比べ、前記発光装置の劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう前記発光装置の光出力を推定する基準である、
請求項1又は2に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項4】
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記第1推定基準の関数の係数を、前記発光装置の光出力のデータの少なくとも一部に基づいて決定する工程と、
係数が決定された前記第1推定基準を用いて前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxを算出する工程と、
前記第2推定基準の関数の係数を、係数が決定された前記第1推定基準を用いて算出された前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxに基づいて決定する工程と、を有する、
請求項1又は2に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項5】
前記第1推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxと、前記第2推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値とは、同じ値である、
請求項4に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項6】
前記所定の累積発光時間Tx以前の任意の累積発光時間をt1としたとき、前記第1推定基準は、t1
n1(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
請求項1又は2に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項7】
前記任意の累積発光時間t
1の前記発光装置の光出力の推定値をP
1とし、所定の係数をC
A,C
B,C
Cとしたとき、前記第1推定基準は、下記式(1)にて表される、
請求項6に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数1】
【請求項8】
前記所定の累積発光時間Tx以降の任意の累積発光時間をt2としたとき、前記第2推定基準は、exp(-n2×t2)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
請求項1又は2に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項9】
前記任意の累積発光時間t
2の前記発光装置の光出力の推定値をP
2とし、所定の係数をC
D,C
Eとしたとき、前記第2推定基準は、下記式(2)にて表される、
請求項8に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数2】
【請求項10】
前記発光装置は、深紫外光を発光する、
請求項1又は2に記載の発光装置の光出力推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の光出力推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光半導体素子の寿命予測方法が開示されている。特許文献1に記載の光半導体素子の寿命予測方法においては、光半導体素子の時間別の光出力のデータを取り、このデータに基づいて二次関数曲線の劣化曲線を算出し、当該劣化曲線に基づいて光半導体素子の光出力を予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の光半導体素子の寿命予測方法においては、光出力の推定精度を向上させる観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、発光装置の光出力の推定精度を向上させることができる発光装置の光出力推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準である、発光装置の光出力推定方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光装置の光出力の推定精度を向上させることができる発光装置の光出力推定方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態における、実装基板に実装された第1発光装置の断面図である。
【
図2】実施の形態における、実装基板に実装された第2発光装置の断面図である。
【
図3】実施の形態における、発光装置の累積発光時間と光出力との関係を示すグラフである。
【
図4】実施の形態における、光出力推定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
本第1の発明の実施の形態について、
図1乃至
図4を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0010】
本形態の発光装置の光出力推定方法は、窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定するものである。まず、光出力推定方法による光出力の推定の対象となる発光装置の例について説明する。
【0011】
本形態においては、光出力推定方法による光出力の推定対象となり得る発光装置を、2種類例示する。便宜上、この2種類の発光装置を、第1発光装置及び第2発光装置という。なお、光出力の推定対象となる発光装置は、以後説明する第1発光装置及び第2発光装置の2種類に限られず、窒化物半導体発光素子を有する発光装置であれば他の種類の発光装置を採用可能である。
【0012】
図1は、実装基板9に実装された第1発光装置1Aの断面図である。第1発光装置1Aは、気密封止タイプの発光装置である。第1発光装置1Aは、窒化物半導体発光素子2と、パッケージ3と、窓部材4とを有する。
【0013】
窒化物半導体発光素子2は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)を構成するものである。本形態において、窒化物半導体発光素子2は、深紫外光を発する深紫外LEDを構成するものである。窒化物半導体発光素子2は、成長基板21と、成長基板21の一方側に成長された、窒化物半導体からなる半導体積層構造22と、p側素子電極23と、n側素子電極24とを有する。
【0014】
成長基板21は、その主面に窒化物半導体を成長させるための基板である。成長基板21は、活性層223が発する光(本形態においては深紫外光)を透過する性質を有する基板であり、例えばサファイア(Al2O3)基板とすることができる。また、成長基板21として、例えば窒化アルミニウム(AlN)基板又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)基板等を用いてもよい。
【0015】
本形態において、半導体積層構造22は、AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)にて表される2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。深紫外LEDにおいては、インジウムを含まないAlzGa1-zN系(0≦z≦1)の半導体が用いられることが多く、本形態においてもAlzGa1-zN系の半導体が用いられている。半導体積層構造22は、成長基板21上にエピタキシャル成長されてなる。エピタキシャル成長法としては、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)、分子線エピタキシ法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)、ハライド気相エピタキシ法(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)等の周知のエピタキシャル成長法を用いることができる。半導体積層構造22は、成長基板21側から順に、バッファ層221、n型半導体層222、活性層223、電子ブロック層224、及びp型半導体層225を有する。
【0016】
バッファ層221は、アンドープのAlaGa1-aN(0≦a≦1)からなる。一例として、バッファ層221は、基板上に形成された窒化アルミニウム(すなわちa=1)からなるAlN層と、AlN層上に形成されたアンドープの窒化アルミニウムガリウム(すなわち0<a<1)からなるAlGaN層とを有する。なお、これに限られず、バッファ層221は単層とすることも可能である。また、基板が窒化アルミニウム基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層221は必ずしも設けなくてもよい。
【0017】
n型半導体層222は、n型不純物がドープされたAlbGa1-bN(0≦b≦1)からなる。n型半導体層222は、単層構造でも複数層構造でもよい。
【0018】
活性層223は、AlcGa1-cN(0≦c≦1)からなり、例えば井戸層を1つ有する単一量子井戸構造、又は井戸層を複数有する多重量子井戸構造とすることができる。活性層223においては、n型半導体層222から供給される電子と、p型半導体層225から供給される正孔とが再結合し、発光する。活性層223は、中心波長が280nm以下の深紫外光を発生する。
【0019】
電子ブロック層224は、活性層223からp型半導体層225側へ電子がリークするオーバーフロー現象の発生を抑制すること(以後、電子ブロック効果ともいう。)によって活性層223への電子注入効率を向上させる役割を有する。電子ブロック層224は、Al組成比が高いほどバンドギャップが大きくなって電子ブロック効果が得やすいため、比較的高いAl組成比のAldGa1-dN(0≦d≦1)からなる。一例として、電子ブロック層224は、活性層223側に形成されたAlN層と、p型半導体層225側に形成された高Al組成のAlGaN層とによって構成することが可能である。なお、これに限られず、電子ブロック層224を1層又は3層以上にて構成してもよい。また、電子ブロック層224を省略することも可能である。
【0020】
p型半導体層225は、p型不純物がドープされたAleGa1-eN(0≦e≦1)からなる。p型半導体層225は、単層構造でも複数層構造でもよい。
【0021】
p側素子電極23は、p型半導体層225における成長基板21と反対側の面に形成されている。また、n側素子電極24は、n型半導体層222において活性層223から露出するよう形成された露出面222aに形成されている。p側素子電極23は、p型半導体層225にオーミック接触しており、n側素子電極24は、n型半導体層222にオーミック接触している。p側素子電極23及びn側素子電極24のそれぞれは、単層又は複数層の金属膜にて形成され得る。そして、窒化物半導体発光素子2は、p側素子電極23がパッケージ3のp側パッケージ電極32に接続され、n側素子電極24がパッケージ3のn側パッケージ電極33に接続される。
【0022】
パッケージ3は、一方側に開放された箱型形状を有する。パッケージ3は、箱型のパッケージ基材31と、p側パッケージ電極32及びn側パッケージ電極33とを有する。
【0023】
パッケージ基材31は、電気的絶縁性を有する材料からなる。パッケージ基材31は、窒化物半導体発光素子2を実装する四角形状の底部311と、底部311の周縁から底部311の厚み方向に立設された四角形筒状の側部312とを有する。そして、パッケージ基材31は、側部312における底部311と反対側が開放されている。
【0024】
底部311に、p側パッケージ電極32とn側パッケージ電極33とが形成されている。p側パッケージ電極32は、底部311におけるパッケージ基材31の開放側の面に形成されるとともにp側素子電極23に接続される第1p側パッケージ電極321と、底部311における第1p側パッケージ電極321が形成された側と反対側の面に形成された第2p側パッケージ電極322とを有する。第1p側パッケージ電極321と第2p側パッケージ電極322とは、底部311を貫通するよう形成された図示しないビア等を介して互いに電気的に接続されている。n側パッケージ電極33は、底部311におけるパッケージ基材31の開放側の面に形成されるとともにn側素子電極24に接続される第1n側パッケージ電極331と、底部311における第1n側パッケージ電極331が形成された側と反対側の面に形成された第2n側パッケージ電極332とを有する。第1n側パッケージ電極331と第2n側パッケージ電極332とは、底部311を貫通するよう形成された図示しないビア等を介して互いに電気的に接続されている。
【0025】
第1p側パッケージ電極321とp側素子電極23とは、例えば図示しないバンプを介して接続されている。第2p側パッケージ電極322と第2n側パッケージ電極332とは、外部のプリント基板(PCB:Printed Circuit Board)等からなる実装基板9に接続される。パッケージ基材31の開口は、窓部材4によって閉塞されている。
【0026】
窓部材4は、窒化物半導体発光素子2が発する光(本形態においては深紫外光)を透過する材料で構成され、例えば、ガラス、石英、石英ガラス、水晶、サファイア等から形成することができる。窒化物半導体発光素子2が発する紫外光は、窓部材4を介して窓部材4の外面から第1発光装置1Aの外部へと出力される。
【0027】
窓部材4とパッケージ3の側部312におけるパッケージ基材31の開放側の端面とは、AuSn共晶半田等にて全周にわたって接合されており、これにより、窓部材4とパッケージ3とに囲まれた空間は封止されている。本形態において、窓部材4とパッケージ3とに囲まれた空間には、例えば窒素ガス、ドライエア等が封止されている。
【0028】
(第2発光装置1B)
次に、
図2を参照しつつ、本形態の光出力推定方法による光出力の推定対象となり得る第2発光装置1Bにつき説明する。
図2は、実装基板9に実装された第2発光装置1Bの断面図である。第2発光装置1Bは、COS(Chip On Submount)タイプの発光装置である。第2発光装置1Bは、窒化物半導体発光素子2と、サブマウント5とを有する。窒化物半導体発光素子2の構成は、
図1に示す第1発光装置1Aにおける窒化物半導体発光素子2の構成と同様であるため、第1発光装置1Aと共通する構成については同符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
サブマウント5は、四角形板状のサブマウント基材51と、p側サブマウント電極52とn側サブマウント電極53とを有する。
【0030】
サブマウント基材51は、電気的絶縁性を有する材料からなる。p側サブマウント電極52は、サブマウント基材51の一方面に形成されるとともにp側素子電極23に接続される第1p側サブマウント電極521と、サブマウント基材51の他方面に形成された第2p側サブマウント電極522とを有する。第1p側サブマウント電極521と第2p側サブマウント電極522とは、サブマウント基材51を貫通するよう形成された図示しないビア等を介して互いに電気的に接続されている。n側サブマウント電極53は、サブマウント基材51の一方面に形成されるとともにn側素子電極24に接続される第1n側サブマウント電極531と、サブマウント基材51の他方面に形成された第2n側サブマウント電極532とを有する。第1n側サブマウント電極531と第2n側サブマウント電極532とは、サブマウント基材51を貫通するよう形成された図示しないビア等を介して互いに電気的に接続されている。
【0031】
第1p側サブマウント電極521とp側素子電極23とは、例えば図示しないバンプを介して接続されている。第2p側サブマウント電極522と第2n側サブマウント電極532とは、外部の実装基板9に接続される。第2発光装置1Bにおいては、窒化物半導体発光素子2が露出しており、使用時において空気等に曝される。
【0032】
(発光装置の光出力推定理論)
次に、本形態の発光装置の光出力推定理論につき、説明する。
図3は、発光装置の累積発光時間と光出力との関係を示すグラフであり、丸記号のプロットが発光装置の光出力の測定点を意味している。
図3の丸プロットの結果から分かるように、窒化物半導体発光素子を有する発光装置においては、所定の累積発光時間T
xの前後において劣化モードが変わる。本形態において、発光装置は、累積発光時間T
xまでの初期段階において劣化(すなわち光出力の経時的な低下)が急激に進む一方、累積発光時間T
x以降においては劣化が比較的緩やかになる。このように、劣化モードが、累積発光時間T
xの前後において変動することは新たな知見の一つである。そこで、本形態においては、累積発光時間T
x以前の期間における発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、累積発光時間T
x以降における発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とを異ならせることで、発光装置の光出力の推定精度を高めようとしたものである。
【0033】
第1推定基準は、発光装置の発光時間の経過とともに発光装置の劣化速度(すなわち時間経過に対する光出力の低下度合い)が低下するよう発光装置の光出力を推定する基準である。累積発光時間T
x以前の任意の累積発光時間をt
1としたとき、第1推定基準は、t
1
n1(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含む関数にて表される。本形態において、第1推定基準は、次の式(1)に従う。
【数1】
【0034】
式(1)において、記号P
1は、累積発光時間T
x以前の任意の累積発光時間t
1における発光装置の光出力の推定値であり、記号C
A,C
B,C
Cのそれぞれは係数である。係数C
Cは、発光装置の種類に固有の係数であり、前述のn1である(すなわち0超過1未満の値)。ここで、同種類の発光装置とは、例えば品番が同じ発光装置であり、同じ製造方法にて製造された発光装置を意味する。例えば、第1発光装置のような気密封止タイプの発光装置の中にも複数種類の発光装置(例えば品番が異なる発光装置)が存在する。気密封止タイプの発光装置であっても種類が異なれば、窒化物半導体発光素子の詳細な製造方法、窒化物半導体発光素子の出力波長帯、パッケージと窓部材とに囲まれた空間への封入ガス(すなわち窒化物半導体発光素子が触れているガス)の種類等が異なり得、これに伴って発光特性が変わり得る。係数C
A,C
Bは、個々の発光装置に固有の係数である。第1推定基準を式(1)に従う基準とすることで、累積発光時間T
x以前の累積発光時間における発光装置の光出力を高精度に推定可能である。
図3において、式(1)の曲線の一例を細線L1にて表している。
【0035】
また、第2推定基準は、第1推定基準と同様に、発光装置の発光時間の経過とともに発光装置の劣化速度が低下するよう発光装置の光出力を推定する基準であるが、第1推定基準と比べ、発光装置の劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう発光装置の光出力を推定する基準である。累積発光時間T
x以降の任意の累積発光時間をt
2としたとき、第2推定基準は、exp(-n2×t
2)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含む関数にて表される。本形態において、第2推定基準は、次の式(2)に従う。
【数2】
【0036】
式(2)において、記号t
2は、累積発光時間T
x以降の任意の累積発光時間であり、記号P
2は、任意の累積発光時間t
2における発光装置の光出力の推定値であり、記号C
D,C
Eのそれぞれは係数である。係数C
Eは、発光装置の種類に固有の係数であり、前述のn2である(すなわち0超過0.001未満)。係数C
Dは、個々の発光装置に固有の係数である。第2推定基準を式(2)に従う基準とすることで、累積発光時間T
x以降の発光装置の光出力を高精度に推定可能である。
図3において、式(2)の曲線の一例を太線L2にて表している。
【0037】
本形態においては、累積発光時間Txの直前における第1推定基準の式(1)の傾きは、累積発光時間Txの直後の第2推定基準の後述の式(2)の傾きよりも大きくなる。つまり、第1推定基準から第2推定基準に変わった後は、変わる前に比べ、発光装置の劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう発光装置の光出力が推定される。例えば、累積発光時間Txの直前における第1推定基準の式(1)の傾きは、累積発光時間Txから所定時間(例えば数分、数時間等)前から累積発光時間Txまでの期間を見たときの式(1)の傾きとし、累積発光時間Txの直後の第2推定基準の後述の式(2)の傾きは、累積発光時間Txから前記所定時間と同一時間(例えば数分、数時間等)の期間を見たときの式(2)の傾きとしてもよい。前記所定時間は、発光装置の光出力の測定データのうち最も累積発光時間Txに近いデータと、累積発光時間Txとの間の期間としてもよい。
【0038】
(発光装置の光出力推定方法)
次に、
図4を参照しつつ、本形態における発光装置の光出力推定方法の一例につき説明する。
図4は、本形態における発光装置の光出力推定方法のフローチャートである。
【0039】
発光装置の光出力推定方法は、例えば発光装置の寿命を推定する際に使用され得る。
図3に示すごとく、発光装置としての発光ダイオードは、光出力が初期値からその70%まで低下したときが寿命であると一般的に定義される。発光ダイオードの寿命は、市場では40000時間が要求される。40000時間は約4年6ヵ月に相当するところ、1つ1つの発光ダイオードについて4年6ヵ月の評価をしてから製品化するのは現実的でない。本形態の発光装置の光出力推定方法は、発光ダイオードの寿命よりも短い時間(例えば数千時間等)の発光ダイオードの光出力のデータから寿命を推定可能なものである。
【0040】
発光装置の光出力推定方法は、例えばプロセッサ及びプロセッサ動作時の演算領域となるRAMを含む制御部と、ROM、ハードディスク等を有し、CPUが実行するプログラム等を記憶する記憶部とを備えるコンピュータを用いて実現することができる。
【0041】
本形態の発光装置の光出力推定方法においては、発光装置の光出力の測定データを取得するデータ取得工程S1と、累積発光時間Tx、並びに式(1)及び式(2)の各種係数を決定する決定工程S2とが実施される。
【0042】
データ取得工程S1において取得される測定データは、発光装置の要求寿命(例えば40000時間)未満の所定の累積発光時間T
A(例えば1000時間以上、5000時間、10000時間、20000時間等)までの発光装置の光出力の測定データとすることができる。便宜上、データ取得工程S1にて取得する発光装置の光出力の測定データを、「測定データA」と呼ぶこととする。例えば、
図3の丸プロットのデータが測定データAとなり得る。測定データAは、光出力の推定対象となる発光装置と同種の発光装置に係る光出力のデータ(すなわち光出力の推定対象となる発光装置とは別の発光装置に係る光出力のデータ)とすることができ、式(1)及び式(2)を決定するために用いるデータである。
【0043】
図3に示すごとく、測定データAは、累積発光時間T
Aまでの所定の複数のタイミングで測定された発光装置の光出力のデータとすることができる。発光装置の光出力の測定頻度は、発光装置の光出力の劣化の傾向が把握可能な頻度とすることができる。高頻度で発光装置の光出力を測定すれば、発光装置の光出力の劣化の傾向を把握しやすいものの、光出力の測定回数が過剰となり手間が増えるおそれがある。そのため、発光装置の光出力の測定頻度は、発光装置の光出力の劣化の傾向を十分に把握可能であるとともに無用に高過ぎない頻度に調整することが好ましい。このような測定頻度は、発光装置の種類毎の劣化特性に応じて種々調整すればよい。後述するように、窒化物半導体発光素子を有する発光装置においては、所定の累積発光時間T
xまでの初期段階において劣化(すなわち光出力の経時的な低下)が急激に進む一方、その後の劣化は緩やかとなるため、例えば光出力の変動が激しい累積発光時間T
xまでにおいては、累積発光時間T
x以降よりも高い頻度で発光装置の光出力を測定してもよい。
【0044】
また、データ取得工程S1において取得する測定データAは、1つの発光装置を用いて測定した光出力の測定データであってもよいし、複数の発光装置のそれぞれの測定データを基に各時間の光出力の値を平均化して得られたデータであってもよいし、複数の発光装置のそれぞれの測定データを含むデータであってもよい。
【0045】
データ取得工程S1に次いで決定工程S2が行われる。決定工程S2は、累積発光時間Tx、式(1)の係数CA~CC、及び式(2)の係数CD,CEを、測定データAに基づき決定する工程である。
【0046】
決定工程S2は、複数回の仮決定工程S21と、本決定工程S22とを有する。仮決定工程S21は、累積発光時間Tx並びに式(1)及び式(2)の各種係数を仮決定する工程である。本決定工程S22は、複数回の仮決定工程S21にて得られた複数組の累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)のうち、測定データAの少なくとも一部にフィッティングする累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)の組を選出する工程である。
【0047】
仮決定工程S21においては、第1推定基準を表す関数の係数を、測定データAの少なくとも一部に基づいて決定する。具体的には、まず、累積発光時間Tx、式(1)の係数のうち発光装置の種類に固有の係数CCを任意の値に設定する。そして、式(1)の未定の係数CA,CBを、式(1)が、測定データAのうちの後述の累積発光時間TBまでのデータの少なくとも一部にフィッティングするよう決定する。累積発光時間TBは、光出力の推定対象となる発光装置に係る光出力の測定データBのうちの最長の累積発光時間である。詳細は後述するが、測定データBは、式(1)及び式(2)の係数CA,CB,CDを、推定対象となる個々の発光装置毎に最終調整する際に使用するデータであり、累積発光時間TBは、測定データAのうちの最長の累積発光時間TAよりも短い時間(例えば1000時間以下(より具体的には500時間以上1000時間以下等))とすることができる。累積発光時間TBは、個々の発光装置毎に異なり得、累積発光時間Txよりも短くてもよいし長くてもよいし、累積発光時間Txと同じであってもよい。
【0048】
ここで、測定データAのうちの累積発光時間T
Bまでのデータには、発光装置の大まかな劣化パターンから局所的に外れるような外れ値も含まれ得る。例えば、発光装置の開始数時間以内においては、時間経過に応じて光出力が向上するような発光パターンもあり得、このような測定データが外れ値となり得る。前述のフィッティングにおいては、第1推定基準が、測定データAのうちの累積発光時間T
Bまでのデータのうち、外れ値を除いたデータにフィッティングするよう実施されてもよい。また、測定データA内に外れ値が含まれていなければ、測定データAのうちの累積発光時間T
B以前の全てのデータを使用してフィッティングを実施してもよい。
図3においては、測定データAに外れ値がない場合を図示している。
【0049】
前述のフィッティングの手法としては、特に限られないが、例えば式(1)と測定データAとの間の差に応じた値の合計値が小さくなるよう式(1)を決定する手法を採用可能である。この一例として、式(1)と測定データAとの差の二乗の合計値が最小となるよう式(1)を決定する最小二乗法を採用してもよい。
【0050】
次に、係数が仮決定された第1推定基準を用いて、累積発光時間Txでの発光装置の光出力の推定値Px(以後、単に「累積発光時間Txの光出力の推定値Px」ともいう。)を算出する。
【0051】
次に、第2推定基準を表す関数の係数を、累積発光時間Txの光出力の推定値Pxに基づいて仮決定する。具体的には、まず、式(2)の係数のうち発光装置の種類に固有の係数CEを任意の値に設定する。そして、式(2)の未定の係数CDを、式(2)の曲線が累積発光時間Txの光出力の推定値Pxを通る値に決定する。すなわち、第1推定基準を用いて算出される累積発光時間Txの光出力の推定値Pxと、第2推定基準を用いて算出される累積発光時間Txの光出力の推定値とを同じ値とする。なお、第2推定基準の式(2)の仮決定方法はこれに限られず、例えば測定データAのうちの累積発光時間Tx後のデータの少なくとも一部と累積発光時間Txの光出力の推定値Pxとを含むデータにフィッティングするよう決定してもよい。また、必ずしも第2推定基準を表す式(2)の曲線が、累積発光時間Txの光出力の推定値Pxを通らなくてもよい。
【0052】
以上により、1組の累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)が仮決定される。
【0053】
そして、前述の仮決定工程S21を、複数回、累積発光時間Tx、係数CC,CEのそれぞれを種々変更して行う。これにより、複数組の累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)が仮決定される。複数回の仮決定工程S21の終了後、本決定工程S22に移る。
【0054】
本決定工程S22においては、複数回の仮決定工程S21にて得られた複数組の累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)から、測定データAの少なくとも一部にフィッティングする累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)の組を決定する。フィッティング手法としては、例えば累積発光時間Txまでの発光装置の光出力を推定する式(1)及び累積発光時間Tx以降の発光装置の光出力を推定する式(2)と、測定データAとの間の差に応じた値の合計値が小さくなるよう、累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)の組を決定する手法を採用可能である。この一例として、最小二乗法を採用してもよい。以上により、累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)が本決定される。
【0055】
なお、本形態においては、複数回の仮決定工程S21を実施し、その後本決定工程S22を実施したが、これに限られず、例えば前述した仮決定工程S21を1回行って得られた累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)をそのまま発光装置の光出力推定に使用することも可能である。ただし、発光装置の光出力の推定精度を高めるためには、複数の仮決定工程S21の実施、及びその後の本決定工程S22を実施することが好ましい。
【0056】
本決定された累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)は次のようにして使用され得る。
【0057】
まず、測定データAの測定に使用した発光装置の各時の光出力を推定する際には、前述のように本決定された累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)をそのまま用いて発光装置の光出力が推定可能である。これにより、既にある測定データAの範囲外の発光装置の光出力が予測可能となり、発光装置の寿命推定等が可能となる。
【0058】
次に、測定データAの測定に使用した発光装置とは異なるものの、当該発光装置と同種類の発光装置(すなわち品番が同一の発光装置であり、以後、同種発光装置という。)の光出力を推定する場合について説明する。この場合、まず、前述のように本決定された累積発光時間Tx、式(1)及び式(2)のうちの係数CA,CB,CD(すなわち、個々の発光装置に固有の係数)を再決定する。この再決定は、式(1)が、同種発光装置に係る光出力のデータである前述の測定データBにフィッティングするよう係数CA,CBを決定し、次いで、式(2)を用いて算出される累積発光時間Txの光出力の推定値が、式(1)を用いて算出される累積発光時間Txの光出力の推定値と一致するよう係数CDを決定することで行われる。前述のごとく、測定データBのうちの最終の累積発光時間TBは、測定データAのうちの最終の累積発光時間TAよりも短い期間(例えば1000時間以下(より具体的には500時間以上1000時間以下等))とすることができる。前述のごとく、測定データBの測定期間が予め分かっている場合、仮決定工程S21の段階において、測定データAのうちの測定データBの測定期間と同期間のデータのみを用いて第1推定基準の関数の係数を仮決定することが、同種発光装置の光出力の推定精度を向上する観点から好ましい。
【0059】
(実施の形態の作用及び効果)
本形態の光出力推定方法は、発光装置の所定の累積発光時間Tx以前の期間における発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、所定の累積発光時間Tx以降における発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とを、異なる基準としている。これにより、劣化モードが所定の累積発光時間Txの前後で変化するような、窒化物半導体発光素子を備えた発光装置であっても、高精度に発光装置の光出力を推定することが可能となる。
【0060】
所定の累積発光時間Txの直前における第1推定基準の関数の傾きは、所定の累積発光時間Txの直後の第2推定基準の関数の傾きよりも大きい。これにより、所定の累積発光時間Tx前後の発光装置の光出力の傾向を反映した高精度な発光装置の光出力の推定が可能となる。
【0061】
また、第1推定基準及び第2推定基準のそれぞれは、発光装置の発光時間の経過とともに発光装置の劣化速度が低下するよう発光装置の光出力を推定する基準であり、第2推定基準は、第1推定基準と比べ、発光装置の劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう発光装置の光出力を推定する基準である。これにより、所定の累積発光時間Tx前後における発光装置の光出力の推定をより高精度に行うことができる。
【0062】
また、本形態の発光装置の光出力推定方法は、第1推定基準を表す関数の係数を、発光装置の光出力の測定データAの少なくとも一部に基づいて決定(本形態においては仮決定)する工程と、係数が決定された第1推定基準を用いて累積発光時間Txの光出力の推定値Pxを算出する工程と、第2推定基準の関数の係数を、累積発光時間Txの光出力の推定値Pxに基づいて決定する工程とを有する。それゆえ、累積発光時間Txの前後において、光出力の推定値が急変することが抑制される。本形態においては、第1推定基準を用いた累積発光時間Txの光出力の推定値Pxと、第2推定基準を用いた累積発光時間Txの光出力の推定値とは同じ値であるため、累積発光時間Txの前後において発光装置の光出力の推定値が急変することが防止される。
【0063】
また、第1推定基準は、t1
n1(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含み、具体的には上記式(1)に従う。第2推定基準は、exp(-n2×t2)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含み、具体的には上記式(2)に従う。これにより、所定の累積発光時間Tx前後における発光装置の光出力の推定をより一層高精度に行うことができる。
【0064】
また、発光装置は、深紫外光を発光するものである。本形態の光出力推定方法においては、特に深紫外光を発する発光装置において光出力の推定を高精度に実現できることを確認している。
【0065】
以上のごとく、本形態によれば、発光装置の光出力の推定精度を向上させることができる発光装置の光出力推定方法を提供することができる。
【0066】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0067】
[1]本発明の第1の実施態様は、窒化物半導体発光素子2を有する発光装置1A,1Bの光出力を推定する発光装置1A,1Bの光出力推定方法であって、所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置1A,1Bの光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置1A,1Bの光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準である、発光装置1A,1Bの光出力推定方法である。
これにより、発光装置1A,1Bの光出力の推定精度を向上させることができる。
【0068】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれが、前記発光装置1A,1Bの累積発光時間の関数にて表され、前記所定の累積発光時間Txの直前における前記第1推定基準の関数の傾きが、前記所定の累積発光時間Txの直後の前記第2推定基準の関数の傾きよりも大きいことである。
これにより、所定の累積発光時間Tx前後の発光装置1A,1Bの光出力の傾向を反映した高精度な発光装置1A,1Bの光出力の推定が可能となる。
【0069】
[3]本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様において、前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれが、前記発光装置1A,1Bの発光時間の経過とともに前記発光装置1A,1Bの劣化速度が低下するよう前記発光装置1A,1Bの光出力を推定する基準であり、前記第2推定基準が、前記第1推定基準と比べ、前記発光装置1A,1Bの劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう前記発光装置1A,1Bの光出力を推定する基準であることである。
これにより、発光装置1A,1Bの光出力の推定精度をより向上させることができる。
【0070】
[4]本発明の第4の実施態様は、第1乃至第3のいずれか1つの実施態様において、前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれが、前記発光装置1A,1Bの累積発光時間の関数にて表され、前記第1推定基準の関数の係数を、前記発光装置1A,1Bの光出力のデータの少なくとも一部に基づいて決定する工程と、係数が決定された前記第1推定基準を用いて前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxを算出する工程と、前記第2推定基準の関数の係数を、係数が決定された前記第1推定基準を用いて算出された前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxに基づいて決定する工程と、を有することである。
これにより、累積発光時間Txの前後において、推定値が急変することが抑制される。
【0071】
[5]本発明の第5の実施態様は、第4の実施態様において、前記第1推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxと、前記第2推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値とが、同じ値であることである。
これにより、累積発光時間Txの前後において発光装置1A,1Bの光出力の推定値が急変することが防止される。
【0072】
[6]本発明の第6の実施態様は、第1乃至第5のいずれか1つの実施態様において、前記所定の累積発光時間Tx以前の任意の累積発光時間をt1としたとき、前記第1推定基準が、t1
n1(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含む関数にて表されることである。
これにより、所定の累積発光時間Tx前後における発光装置1A,1Bの光出力の推定をより一層高精度に行うことができる。
【0073】
[7]本発明の第7の実施態様は、第6の実施態様において、前記任意の累積発光時間t
1の前記発光装置1A,1Bの光出力の推定値をP
1とし、所定の係数をC
A,C
B,C
Cとしたとき、前記第1推定基準が、下記式(1)にて表されることである。
【数3】
これにより、発光装置1A,1Bの光出力の推定精度をより一層向上させることができる。
【0074】
[8]本発明の第8の実施態様は、第1乃至第7のいずれか1つの実施態様において、前記所定の累積発光時間Tx以降の任意の累積発光時間をt2としたとき、前記第2推定基準は、exp(-n2×t2)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含む関数にて表されることである。
これにより、所定の累積発光時間Tx前後における発光装置1A,1Bの光出力の推定をより一層高精度に行うことができる。
【0075】
[9]本発明の第9の実施態様は、第8の実施態様において、前記任意の累積発光時間t
2の前記発光装置1A,1Bの光出力の推定値をP
2とし、所定の係数をC
D,C
Eとしたとき、前記第2推定基準は、下記式(2)にて表されることである。
【数4】
これにより、発光装置1A,1Bの光出力の推定精度をより一層向上させることができる。
【0076】
[10]本発明の第10の実施態様は、第1乃至第9のいずれか1つの実施態様において、前記発光装置1A,1Bが、深紫外光を発光することである。
これにより、発光装置1A,1Bの光出力の推定精度を向上させることができる。
【0077】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1A,1B…発光装置
2…窒化物半導体発光素子
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、
所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準であり、
時間経過に対する前記発光装置の光出力の低下度合いを劣化速度と定義したとき、前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の発光時間の経過とともに前記発光装置の前記劣化速度が低下するよう前記発光装置の光出力を推定する基準であり、
前記第2推定基準は、前記第1推定基準と比べ、前記発光装置の前記劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう前記発光装置の光出力を推定する基準である、
発光装置の光出力推定方法。
【請求項2】
窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、
所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準であり、
前記所定の累積発光時間T
x
以前の任意の累積発光時間をt
1
としたとき、前記第1推定基準は、t
1
n1
(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
発光装置の光出力推定方法。
【請求項3】
前記任意の累積発光時間t
1の前記発光装置の光出力の推定値をP
1とし、所定の係数をC
A,C
B,C
Cとしたとき、前記第1推定基準は、下記式(1)にて表される、
請求項
2に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数1】
【請求項4】
窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、
所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準であり、
前記所定の累積発光時間T
x
以降の任意の累積発光時間をt
2
としたとき、前記第2推定基準は、exp(-n2×t
2
)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
発光装置の光出力推定方法。
【請求項5】
前記任意の累積発光時間t
2の前記発光装置の光出力の推定値をP
2とし、所定の係数をC
D,C
Eとしたとき、前記第2推定基準は、下記式(2)にて表される、
請求項
4に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数2】
【請求項6】
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記所定の累積発光時間Txの直前における前記第1推定基準の関数の傾きは、前記所定の累積発光時間Txの直後の前記第2推定基準の関数の傾きよりも大きい、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項7】
時間経過に対する前記発光装置の光出力の低下度合いを劣化速度と定義したとき、前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の発光時間の経過とともに前記発光装置の前記劣化速度が低下するよう前記発光装置の光出力を推定する基準であり、
前記第2推定基準は、前記第1推定基準と比べ、前記発光装置の前記劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう前記発光装置の光出力を推定する基準である、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項8】
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記第1推定基準の関数の係数を、前記発光装置の光出力のデータの少なくとも一部に基づいて決定する工程と、
係数が決定された前記第1推定基準を用いて前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxを算出する工程と、
前記第2推定基準の関数の係数を、係数が決定された前記第1推定基準を用いて算出された前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxに基づいて決定する工程と、を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項9】
前記第1推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxと、前記第2推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値とは、同じ値である、
請求項8に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項10】
前記所定の累積発光時間Tx以前の任意の累積発光時間をt1としたとき、前記第1推定基準は、t1
n1(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項11】
前記任意の累積発光時間t
1の前記発光装置の光出力の推定値をP
1とし、所定の係数をC
A,C
B,C
Cとしたとき、前記第1推定基準は、下記式(1)にて表される、
請求項
10に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数1】
【請求項12】
前記所定の累積発光時間Tx以降の任意の累積発光時間をt2としたとき、前記第2推定基準は、exp(-n2×t2)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項13】
前記任意の累積発光時間t
2の前記発光装置の光出力の推定値をP
2とし、所定の係数をC
D,C
Eとしたとき、前記第2推定基準は、下記式(2)にて表される、
請求項
12に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数2】
【請求項14】
前記発光装置は、深紫外光を発光する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、
所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準であり、
時間経過に対する前記発光装置の光出力の低下度合いを劣化速度と定義したとき、前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の発光時間の経過とともに前記発光装置の前記劣化速度が低下するよう前記発光装置の光出力を推定する基準であり、
前記第2推定基準は、前記第1推定基準と比べ、前記発光装置の前記劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう前記発光装置の光出力を推定する基準であり、
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記所定の累積発光時間T
x
の直前における前記第1推定基準の関数の傾きの絶対値は、前記所定の累積発光時間T
x
の直後の前記第2推定基準の関数の傾きの絶対値よりも大きい、
発光装置の光出力推定方法。
【請求項2】
窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、
所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準であり、
前記所定の累積発光時間Tx以前の任意の累積発光時間をt1としたとき、前記第1推定基準は、t1
n1(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含む関数にて表され、
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記所定の累積発光時間T
x
の直前における前記第1推定基準の関数の傾きの絶対値は、前記所定の累積発光時間T
x
の直後の前記第2推定基準の関数の傾きの絶対値よりも大きい、
発光装置の光出力推定方法。
【請求項3】
前記任意の累積発光時間t
1の前記発光装置の光出力の推定値をP
1とし、所定の係数をC
A,C
B,C
Cとしたとき、前記第1推定基準は、下記式(1)にて表される、
請求項2に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数1】
【請求項4】
窒化物半導体発光素子を有する発光装置の光出力を推定する発光装置の光出力推定方法であって、
所定の累積発光時間Tx以前の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第1推定基準と、前記所定の累積発光時間Tx以降の期間における前記発光装置の光出力の推定基準である第2推定基準とは、異なる基準であり、
前記所定の累積発光時間Tx以降の任意の累積発光時間をt2としたとき、前記第2推定基準は、exp(-n2×t2)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含む関数にて表され、
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記所定の累積発光時間T
x
の直前における前記第1推定基準の関数の傾きの絶対値は、前記所定の累積発光時間T
x
の直後の前記第2推定基準の関数の傾きの絶対値よりも大きい、
発光装置の光出力推定方法。
【請求項5】
前記任意の累積発光時間t
2の前記発光装置の光出力の推定値をP
2とし、所定の係数をC
D,C
Eとしたとき、前記第2推定基準は、下記式(2)にて表される、
請求項4に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数2】
【請求項6】
時間経過に対する前記発光装置の光出力の低下度合いを劣化速度と定義したとき、前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の発光時間の経過とともに前記発光装置の前記劣化速度が低下するよう前記発光装置の光出力を推定する基準であり、
前記第2推定基準は、前記第1推定基準と比べ、前記発光装置の前記劣化速度の経時変化が緩やかとなるよう前記発光装置の光出力を推定する基準である、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項7】
前記第1推定基準及び前記第2推定基準のそれぞれは、前記発光装置の累積発光時間の関数にて表され、
前記第1推定基準の関数の係数を、前記発光装置の光出力のデータの少なくとも一部に基づいて決定する工程と、
係数が決定された前記第1推定基準を用いて前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxを算出する工程と、
前記第2推定基準の関数の係数を、係数が決定された前記第1推定基準を用いて算出された前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxに基づいて決定する工程と、を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項8】
前記第1推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値Pxと、前記第2推定基準を用いて算出される前記所定の累積発光時間Txの光出力の推定値とは、同じ値である、
請求項7に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項9】
前記所定の累積発光時間Tx以前の任意の累積発光時間をt1としたとき、前記第1推定基準は、t1
n1(n1は0超過1未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項10】
前記任意の累積発光時間t
1の前記発光装置の光出力の推定値をP
1とし、所定の係数をC
A,C
B,C
Cとしたとき、前記第1推定基準は、下記式(1)にて表される、
請求項9に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数1】
【請求項11】
前記所定の累積発光時間Tx以降の任意の累積発光時間をt2としたとき、前記第2推定基準は、exp(-n2×t2)(n2は0超過0.001未満の値)に比例する項を含む関数にて表される、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。
【請求項12】
前記任意の累積発光時間t
2の前記発光装置の光出力の推定値をP
2とし、所定の係数をC
D,C
Eとしたとき、前記第2推定基準は、下記式(2)にて表される、
請求項11に記載の発光装置の光出力推定方法。
【数2】
【請求項13】
前記発光装置は、深紫外光を発光する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置の光出力推定方法。