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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086385
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ボード用スクリュードライバ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B25B21/00 510A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201484
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】故田 隆樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅也
(57)【要約】
【課題】摩擦クラッチを用いても伝達トルクを大きくする。
【解決手段】ボード用スクリュードライバは、モータと、モータの駆動により回転する駆動側クラッチ35と、駆動側クラッチ35と接触することにより回転が伝達される従動側クラッチ36と、従動側クラッチ36により回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドル37と、スピンドル37の軸線方向の後退に伴って動作し、従動側クラッチ36を駆動側クラッチ35に押圧させる倍力レバー82と、を含んでなる。そして、スピンドル37が最後方に位置した際、スピンドル37と倍力レバー82との当接位置P2を通る接平面TPと、スピンドル37の軸線とのなす角度が60°以上となる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
前記駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
前記従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
前記スピンドルの軸線方向の後退に伴って動作し、前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなり、
前記スピンドルが最後方に位置した際、前記スピンドルと前記倍力レバーとの接触点を通る接平面と、前記スピンドルの軸線とのなす角度が60°以上となることを特徴とするボード用スクリュードライバ。
【請求項2】
モータと、
前記モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
前記駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
前記従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
前記スピンドルの軸線方向の後退に伴って動作し、前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなり、
後退した前記スピンドルが前記倍力レバーに当接した第1の時点で前記倍力レバーが前記従動側クラッチを押圧する第1の倍力率と、前記スピンドルが最後方に位置した第2の時点で前記倍力レバーが前記従動側クラッチを押圧する第2の倍力率とが、以下の関係であることを特徴とするボード用スクリュードライバ。
第1の倍力率×0.5<第2の倍力率
【請求項3】
前記駆動側クラッチが前側、前記従動側クラッチが後側に配置され、前記駆動側クラッチの後面と前記従動側クラッチの前面とに互いに接触するクラッチ面がそれぞれ形成されていると共に、前記スピンドルは、前記駆動側クラッチと前記従動側クラッチとを貫通しており、
前記倍力レバーは、前記従動側クラッチの後方で前記スピンドルの径方向外側に配置されて、正面視で前記スピンドルの径方向に延びており、
前記スピンドルが軸線方向に後退して前記倍力レバーの前記スピンドル側の端部に当接して後方へ押圧することで、前記倍力レバーの前記径方向外側の端部が前記従動側クラッチに当接して前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させることを特徴とする請求項1又は2に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項4】
前記スピンドルが前記倍力レバーの前記スピンドル側の端部に当接して当該端部を押圧する力点の作用線と、前記倍力レバーの前記径方向外側の端部が前記従動側クラッチに当接して前記従動側クラッチを押圧する作用点の作用線とは、共に前記スピンドルの軸線と平行であることを特徴とする請求項3に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項5】
前記倍力レバーは、前記スピンドルの後退前では、前記スピンドル側の端部が、前記径方向外側の端部よりも前方に位置する傾斜姿勢となっていることを特徴とする請求項3又は4に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項6】
前記倍力レバーは、前記スピンドル側の端部の前面と前記径方向外側の端部の前面とが鈍角で繋がる屈曲形状であることを特徴とする請求項3乃至5の何れかに記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項7】
各前記クラッチ面は、前記スピンドルの軸線方向で前方へ向かうに従って小径となるテーパ形状であることを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項8】
前記倍力レバーの後方には、前記従動側クラッチとの間で前記倍力レバーを動作可能に支持するレバー支持部材が設けられており、
前記倍力レバーは、前記スピンドルが後退して前記スピンドル側の端部が後方へ押圧されると、前記レバー支持部材との第1の当接位置を支点として前記径方向外側の端部が前方へ移動して姿勢変更し、前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させることを特徴とする請求項3乃至7の何れかに記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項9】
前記スピンドルの径方向で、前記第1の当接位置と、前記スピンドル側の端部と前記スピンドルとの第2の当接位置との間の距離の方が、前記第1の当接位置と、前記径方向外側の端部と前記従動側クラッチとの第3の当接位置との間の距離よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項10】
モータと、
前記モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
前記駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
前記従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
前記スピンドルの径方向外側に配置され、前記スピンドルの軸線方向の何れか一方側への移動に伴って姿勢変更して前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなり、
前記スピンドルの移動前の前記倍力レバーは、前記スピンドル側の端部が、前記径方向外側の端部よりも前方に位置する傾斜姿勢となっていることを特徴とするボード用スクリュードライバ。
【請求項11】
モータと、
前記モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
前記駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
前記従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
前記スピンドルの径方向外側に配置され、前記スピンドルの軸線方向の何れか一方側への移動に伴って姿勢変更して前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなり、
前記スピンドルの移動前の前記倍力レバーは、前記径方向に対して前後何れか一方側へ傾斜する姿勢となっていることを特徴とするボード用スクリュードライバ。
【請求項12】
前記スピンドルの移動後の前記倍力レバーは、前記スピンドルの径方向に近づく起立姿勢となることを特徴とする請求項10又は11に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項13】
前記起立姿勢は、前記スピンドルの軸線に対して60°以上となる角度であることを特徴とする請求項12に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項14】
前記倍力レバーは、移動した前記スピンドルが当接して姿勢変更するものであり、
前記スピンドルが前記倍力レバーに当接した第1の時点で前記倍力レバーが前記従動側クラッチを押圧する第1の倍力率と、前記スピンドルが移動を終了した第2の時点で前記倍力レバーが前記従動側クラッチを押圧する第2の倍力率とが、以下の関係であることを特徴とする請求項10乃至13の何れかに記載のボード用スクリュードライバ。
第1の倍力率×0.5<第2の倍力率
【請求項15】
前記駆動側クラッチが前側、前記従動側クラッチが後側に配置されて、前記駆動側クラッチの後面と前記従動側クラッチの前面とに互いに接触するクラッチ面がそれぞれ形成されていると共に、前記スピンドルは、前記駆動側クラッチと前記従動側クラッチとを貫通しており、
前記倍力レバーは、前記従動側クラッチの後方で前記スピンドルの径方向外側に配置されて、正面視で前記スピンドルの径方向に延びており、
前記スピンドルが軸線方向に後退して前記倍力レバーの前記スピンドル側の端部に当接して後方へ押圧することで、前記倍力レバーの前記径方向外側の端部が前記従動側クラッチに当接して前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させることを特徴とする請求項10乃至14の何れかに記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項16】
前記スピンドルが前記倍力レバーの前記スピンドル側の端部に当接して当該端部を押圧する力点の作用線と、前記倍力レバーの前記径方向外側の端部が前記従動側クラッチに当接して前記従動側クラッチを押圧する作用点の作用線とは、共に前記スピンドルの軸線と平行であることを特徴とする請求項15に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項17】
各前記クラッチ面は、前記スピンドルの軸線方向で前記何れか一方側へ向かうに従って小径となるテーパ形状であることを特徴とする請求項15又は16に記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項18】
前記倍力レバーの後方には、前記従動側クラッチとの間で前記倍力レバーを動作可能に支持するレバー支持部材が設けられており、
前記倍力レバーは、前記スピンドルが後退して前記スピンドル側の端部が後方へ押圧されると、前記レバー支持部材との第1の当接位置を支点として前記径方向外側の端部が前方へ移動して姿勢変更し、前記従動側クラッチを前記駆動側クラッチに押圧させることを特徴とする請求項15乃至17の何れかに記載のボード用スクリュードライバ。
【請求項19】
前記スピンドルの径方向で、前記第1の当接位置と、前記スピンドル側の端部と前記スピンドルとの第2の当接位置との間の距離の方が、前記第1の当接位置と、前記径方向外側の端部と前記従動側クラッチとの第3の当接位置との間の距離よりも大きいことを特徴とする請求項18に記載のボード用スクリュードライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボード用スクリュードライバに関する。
【背景技術】
【0002】
ボード用スクリュードライバは、石膏ボード等の被加工材にネジ締めを行うために用いられる。このボード用スクリュードライバとして、特許文献1には、モータの回転が伝達される駆動側のギヤと、ネジを締め付ける従動側の主軸との間に偏心摩擦クラッチを採用した構造が開示されている。この偏心摩擦クラッチは、ギヤの前端面に形成された偏心凹所と、主軸の後部に形成された偏心軸部とから形成されている。モータの回転がギヤに伝わっている状態で主軸に装着したドライバビットをネジに押し付けると、主軸が後退して偏心軸部が偏心凹所に嵌合する。すると、両者の偏心位置が一致した位相で摩擦係合(互いの接触面間に生じる摩擦力により係合される状態)されてギヤのトルクが主軸に伝達される。ネジ締めが進んで主軸が前進すると、偏心軸部が偏心凹所から離れてトルク伝達が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-318331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ボード用スクリュードライバのような摩擦クラッチは、押し付ける力が小さい時に伝達できるトルクが比較的小さい。よって、ネジ締め負荷が大きい場合でもネジ締めが行えるように伝達トルクを大きくしたい要望があった。
【0005】
そこで、本開示は、摩擦クラッチを用いても伝達トルクを大きくすることができるボード用スクリュードライバを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、ボード用スクリュードライバであって、
モータと、
モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
スピンドルの軸線方向の後退に伴って動作し、従動側クラッチを駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなるものであってもよい。
そして、スピンドルが最後方に位置した際、スピンドルと倍力レバーとの接触点を通る接平面と、スピンドルの軸線とのなす角度が60°以上となるものであってもよい。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、ボード用スクリュードライバであって、
モータと、
モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
スピンドルの軸線方向の後退に伴って動作し、従動側クラッチを駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなるものであってもよい。
そして、後退したスピンドルが倍力レバーに当接した第1の時点で倍力レバーが従動側クラッチを押圧する第1の倍力率と、スピンドルが最後方に位置した第2の時点で倍力レバーが従動側クラッチを押圧する第2の倍力率とが、以下の関係となるものであってもよい。
第1の倍力率×0.5<第2の倍力率
上記目的を達成するために、本開示の第3の構成は、ボード用スクリュードライバであって、
モータと、
モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
スピンドルの径方向外側に配置され、スピンドルの軸線方向の何れか一方側への移動に伴って姿勢変更して従動側クラッチを駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなるものであってもよい。
そして、スピンドルの移動前の倍力レバーは、スピンドル側の端部が、径方向外側の端部よりも前方に位置する傾斜姿勢となっているものであってもよい。
上記目的を達成するために、本開示の第4の構成は、ボード用スクリュードライバであって、
モータと、
モータの駆動により回転する駆動側クラッチと、
駆動側クラッチと接触することにより回転が伝達される従動側クラッチと、
従動側クラッチにより回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットを前端に保持可能なスピンドルと、
スピンドルの径方向外側に配置され、スピンドルの軸線方向の何れか一方側への移動に伴って姿勢変更して従動側クラッチを駆動側クラッチに押圧させる倍力レバーと、を含んでなり、
スピンドルの移動前の倍力レバーは、径方向に対して前後何れか一方側へ傾斜する姿勢となっているものであってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、駆動側クラッチと従動側クラッチとからなる摩擦クラッチを用いても、駆動側クラッチと従動側クラッチとの押し付け力を倍力機構によって上げることにより、伝達トルクを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ボード用スクリュードライバの斜視図である。
図2】ボード用スクリュードライバの中央縦断面図である(クラッチOFF状態)。
図3図2の前側部分の拡大図である。
図4】出力部の前方からの分解斜視図である。
図5】駆動側クラッチ及び従動側クラッチ、倍力機構の後方からの分解斜視図である。
図6図3のA-A線断面図である。
図7図3のB-B線断面図で、図7Aは正転時、図7Bは逆転時をそれぞれ示す。
図8】ボード用スクリュードライバの前側部分の拡大図である(クラッチON状態)。
図9図3における倍力機構部分の拡大図である。
図10図8における倍力機構部分の拡大図である。
図11】比較例の倍力機構の説明図で、図11AはクラッチOFF状態、図11BはクラッチON状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、駆動側クラッチが前側、従動側クラッチが後側に配置され、駆動側クラッチの後面と従動側クラッチの前面とに互いに接触するクラッチ面がそれぞれ形成されていると共に、スピンドルは、駆動側クラッチと従動側クラッチとを貫通していてもよい。
そして、倍力レバーは、従動側クラッチの後方でスピンドルの径方向外側に配置されて、正面視でスピンドルの径方向に延びており、スピンドルが軸線方向に後退して倍力レバーのスピンドル側の端部に当接して後方へ押圧することで、倍力レバーの径方向外側の端部が従動側クラッチに当接して従動側クラッチを駆動側クラッチに押圧させるものであってもよい。
この構成によれば、スピンドルの後退の際の力を従動側クラッチの押圧力に効率よく変換することができる。
【0010】
本開示の一実施形態において、スピンドルが倍力レバーのスピンドル側の端部に当接して当該端部を押圧する力点の作用線と、倍力レバーの径方向外側の端部が従動側クラッチに当接して従動側クラッチを押圧する作用点の作用線とは、共にスピンドルの軸線と平行であってもよい。
この構成によれば、作用線の傾きによる分力が発生せず、力点の作用線に沿って発生する力がロスなく増大され、増大された力は従動側クラッチへダイレクトに伝わる。
本開示の一実施形態において、倍力レバーは、スピンドルの後退前では、スピンドル側の端部が、径方向外側の端部よりも前方に位置する傾斜姿勢となっていてもよい。
この構成によれば、倍力レバーの後側に倍力レバーを傾動させるスペースを確保する必要がなくなる。このため倍力機構が前後方向にコンパクト化し、ボード用スクリュードライバ自体の全長の短縮化に繋がる。
本開示の一実施形態において、倍力レバーは、スピンドル側の端部の前面と径方向外側の端部の前面とが鈍角で繋がる屈曲形状であってもよい。
この構成によれば、倍力レバーの姿勢変更に伴う従動側クラッチとの当接を確実に行うことができる。
【0011】
本開示の一実施形態において、各クラッチ面は、スピンドルの軸線方向で前方へ向かうに従って小径となるテーパ形状であってもよい。
この構成によれば、摩擦整合が容易に行える。
本開示の一実施形態において、倍力レバーの後方には、従動側クラッチとの間で倍力レバーを動作可能に支持するレバー支持部材が設けられており、倍力レバーは、スピンドルが後退してスピンドル側の端部が後方へ押圧されると、レバー支持部材との第1の当接位置を支点として径方向外側の端部が前方へ移動して姿勢変更し、従動側クラッチを駆動側クラッチに押圧させるものであってもよい。
この構成によれば、倍力レバーを安定して姿勢変更させることができる。
本開示の一実施形態において、スピンドルの径方向で、第1の当接位置と、スピンドル側の端部とスピンドルとの第2の当接位置との間の距離の方が、第1の当接位置と、径方向外側の端部と従動側クラッチとの第3の当接位置との間の距離よりも大きいものであってもよい。
この構成によれば、スピンドルの後退の際の力を従動側クラッチの押圧力に効率よく変換できる倍力レバーが得られる。
【0012】
本開示の一実施形態において、スピンドルの移動後の倍力レバーは、スピンドルの径方向に近づく起立姿勢となるものであってもよい。
この構成によれば、倍力レバーにより増大される力に分力が生じることがなく、当該力が従動側クラッチへダイレクトに伝わる。
【実施例0013】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、充電式のボード用スクリュードライバ(以下、単に「スクリュードライバ」という。)1の斜視図、図2は、中央縦断面図である。
スクリュードライバ1は、後側の本体ハウジング2と、前側のギヤハウジング3とを有する。ギヤハウジング3内に出力部4が設けられる。
本体ハウジング2は、モータハウジング5とグリップハウジング6とを一体に備えている。モータハウジング5は、前後方向に延びる筒状である。グリップハウジング6は、モータハウジング5の後部に繋がるループ状となっている。本体ハウジング2は、左右一対の半割ハウジング2a,2bをネジ止めして組み付けられる。
ギヤハウジング3は、後ハウジング7と前ハウジング8とに2分割される。後ハウジング7は、前方を開口し、モータハウジング5の前部に保持される。前ハウジング8は、後ハウジング7に嵌合する筒状で、モータハウジング5の前方に露出している。ギヤハウジング3は、前ハウジング8の前方から両ハウジング7,8を貫通させた3本のネジ9,9・・を、上を2本、下を1本としてモータハウジング5の前端にねじ込むことで組み付けられる。
【0014】
モータハウジング5内には、モータ10が収容される。モータ10は、筒状のステータ11と、ステータ11の内側に配置されるロータ12とを有するインナロータ型のブラシレスモータである。モータ10は、ロータ12に設けた回転軸13が前後方向に延びる向きでモータハウジング5内に支持されている。回転軸13の前部は、後ハウジング7を貫通して後ハウジング7内に突出し、軸受14に支持されている。回転軸13の前端にはピニオン15が形成されている。
軸受14の後方で回転軸13には、ファン16が設けられている。ファン16は、モータハウジング5内でリブ17によって区画されるファン収容室18内に配置されている。モータ10の下側でモータハウジング5の左右の側面には、複数の吸気口19,19・・が前後方向に並べて形成されている。ファン収容室18の下側でモータハウジング5の下面には、複数の排気口20,20・・が左右方向に並べて形成されている。
【0015】
グリップハウジング6の後部には、上下方向にグリップ部21が形成されている。グリップ部21内の上部には、スイッチ22が設けられている。スイッチ22は、トリガ23を前方へ突出させている。スイッチ22の上側には、モータ10の正逆切替レバー24が設けられている。
グリップハウジング6の下部には、バッテリ装着部25が形成されている。バッテリ装着部25には、バッテリパック26が前方からスライド装着される。バッテリ装着部25内には、端子台27とコントローラ28とが収容されている。端子台27は、バッテリパック26と電気的に接続される。コントローラ28は、制御回路基板29を備えている。
コントローラ28の上側には、スイッチプレート30が設けられている。スイッチプレート30は、グリップハウジング6の内周下面に露出する。スイッチプレート30には、モード切替ボタンとモードインジケータとが設けられている。バッテリ装着部25の前面には、ライト31が設けられている。ライト31は、出力部4の前方を照射する。
【0016】
出力部4は、図3にも示すように、駆動側クラッチ35と、従動側クラッチ36と、スピンドル37と、倍力機構38と、ロックスリーブ39と、コイルバネ40とを含んでなる。
まず、駆動側クラッチ35は、図4及び図5にも示すように、前スリーブ41と、後スリーブ42とを備えている。前スリーブ41は、前端に小径部43を有している。小径部43は、前ハウジング8の内側に保持される軸受44によって回転可能に支持されている。小径部43の後端には、径方向へ拡開する円板部45が形成されている。円板部45の外周には、小径部43よりも大径で後方に延びる中径部46が形成されている。中径部46の後端には、後方へ向かうに従って拡径するテーパ部47が形成されている。テーパ部47の内面が駆動クラッチ面48となる。テーパ部47の後端には、中径部46よりも大径で後方に延びる大径部49が形成されている。大径部49の外周には、ギヤ50が形成されている。ギヤ50は、回転軸13のピニオン15と噛合している。
後スリーブ42は、後ハウジング7の内側に保持される軸受51によって回転可能に支持されている。後スリーブ42の前端には、前スリーブ41の大径部49の後方で径方向に拡開するフランジ52が形成されている。フランジ52の前面には、大径部49の内径よりも小径の結合筒部53が形成されている。後スリーブ42は、結合筒部53が大径部49に後方からねじ込まれることで前スリーブ41へ一体に結合される。
【0017】
従動側クラッチ36は、前スリーブ41内に収容されている。従動側クラッチ36は、従動クラッチ面55を外周に備えるリング体である。従動クラッチ面55は、前スリーブ41のテーパ部47の駆動クラッチ面48と同じ先細りテーパ形状となっている。但し、従動クラッチ面55を含む従動側クラッチ36の外周面には、前後方向に延びる3つの溝56,56・・が形成されている。溝56は、従動側クラッチ36の周方向に等間隔で配置されている。
従動側クラッチ36の後面には、径方向に延びる3つの嵌合凹部57,57・・が形成されている。嵌合凹部57は、径方向外側が頭部となる背面視T字状で、溝56と異なる位相で周方向に等間隔をおいて配置されている。各嵌合凹部57の前側の底面において、T字の頭部となる径方向外側は、従動側クラッチ36の軸線と直交する平面部58となっている。当該底面において、平面部58の径方向内側は、平面部58との境から径方向内側へ向かうに従って前方へ移動する傾斜面部59となっている。
従動側クラッチ36の中心には、各傾斜面部59の終端で各嵌合凹部57と連通する貫通孔60が形成されている。貫通孔60は、各溝56と対向する位相で径方向に突出する3つの突出部61,61・・を有する三つ叉形状となっている。
【0018】
スピンドル37は、前軸部65と、中間軸部66と、後軸部67とを同軸で備えている。中間軸部66と後軸部67とが一体形成されて、中間軸部66の前端が前軸部65に圧入されることで同軸で結合されている。
前軸部65は、横断面が円形で、軸心には、前方へ開口するビット挿入孔68が形成されている。前軸部65の前端内には、ビット挿入孔68に挿入されたドライバビットBを抜け止めする一対のボール69,69が設けられている。前軸部65の前端外周には、ボール69,69を軸心側へ付勢する横断面C字状の板バネ70が外装されている。前軸部65の後端には、フランジ部71が形成されている。
中間軸部66は、横断面が略六角形で、外接円が前軸部65よりも小径となっている。中間軸部66の外面で、周方向に1面置きとなる3面には、前後方向に延びる連結溝72,72・・が形成されている。コイルバネ40は、中間軸部66に外装されて、前端を前軸部65の後面に当接させている。
後軸部67は、横断面が円形で、中間軸部66の外接円よりも小径となっている。後軸部67の後端には、後方へ向けてロッド73が同軸で挿入されている。
【0019】
スピンドル37は、駆動側クラッチ35及び従動側クラッチ36の軸心を貫通している。この状態で前軸部65が、フランジ部71の前側で軸受74を介して前ハウジング8へ回転可能に支持される。この軸受74は、駆動側クラッチ35の前スリーブ41よりも前方に配置されている。軸受74は、小径部43を支持する軸受44の前側にワッシャ75を介して隣接している。軸受74は、前ハウジング8の内周に形成した位置決めリブ76に当接して前方への移動が規制される。スピンドル37は、軸線方向で前後移動可能であるが、フランジ部71が軸受74に当接する図3の位置で前進が規制される。位置決めリブ76の前側で前ハウジング8と前軸部65との間には、オイルシール77が設けられている。オイルシール77は、前軸部65の前後でのシールと、非使用状態でのスピンドル37の回転抑制とを行う。
スピンドル37の後軸部67は、駆動側クラッチ35の後スリーブ42に軸受78を介して支持されている。軸受78は、後スリーブ42内で係止リング79により後方への移動が規制されている。この状態でロッド73は、後ハウジング7に設けた透孔7aを貫通して後方へ突出している。
【0020】
倍力機構38は、テコベース81と、3つの倍力レバー82,82・・とを備えている。
テコベース81は、円盤状で、後スリーブ42の結合筒部53の内側に配置されている。テコベース81の中心には、後方へ突出する筒状段部83が設けられている。筒状段部83に、スピンドル37の後軸部67が貫通している。
テコベース81の後面で筒状段部83の周囲には、スラストベアリング84が設けられている。スラストベアリング84の後側には、ワッシャ85が配置されている。スラストベアリング84は、ワッシャ85に当接している。ワッシャ85は、後スリーブ42のフランジ52に当接している。筒状段部83は、ワッシャ85を貫通している。
よって、テコベース81は、スラストベアリング84を介して、駆動側クラッチ35の後スリーブ42に対して相対回転可能となる。
【0021】
テコベース81の前面には、3つの中心板部90,90・・と、3つの受け板部91,91・・とが形成されている。各中心板部90は、筒状段部83よりも大径の同心円上に配置される正面視円弧状で、前方へ突出している。
各受け板部91は、各中心板部90の円の中心と同心円上で、テコベース81の周方向に等間隔をおいて配置されている。各受け板部91は、周方向に隣接する中心板部90,90と繋がる一対の側板部92,92を備えて径方向外側へ逆U字状に突出している。各受け板部91は、中心板部90よりも低い高さで前方へ突出している。
各受け板部91において、周方向に延びる端縁の径方向内側には、曲面となる受け面93がそれぞれ形成されている。
【0022】
各倍力レバー82は、作用部95と平板部96とを備えた正面視T字状の板体である。3つの倍力レバー82は、テコベース81の各受け板部91と同じ位置でスピンドル37の軸線回りに配置されている。各作用部95は、側面視三角形状の棒体で、図9にも示すように、平板部96の前後厚み方向の中心面上でなく、当該中心面よりも前側へずれた位置に配置されている。各作用部95は、前面が平板部96の前面と同一平面上に連続する向きで形成されておらず、平板部96に対して前側且つ径方向外側へ所定角度傾いている。よって、倍力レバー82は、平板部96に対して作用部95が、図9において前方上側へ屈曲する形状となっている。この屈曲形状による作用部95と平板部96との前面同士の角度は、従動側クラッチ36における嵌合凹部57の平面部58と傾斜面部59との間の角度と略等しくなっている。
各作用部95の径方向外側の先端は、R形状の外角部97となっている。各作用部95及び各平板部96の後面(径方向外側の端面)は、外角部97から連続し、後方へ向かうに従って径方向内側へ円弧状にカーブする曲面部98となっている。
【0023】
各平板部96は、各作用部95からスピンドル37に向かって延びている。正面視での平板部96の幅は、受け板部91の側板部92,92の間隔よりも小さくなっている。
各平板部96は、後面よりも前面の方が径方向に長く形成されて、スピンドル37側の端部における前面側の角部には、R形状の内角部99が形成されている。
各倍力レバー82は、図6にも示すように、従動側クラッチ36の各嵌合凹部57に後方から嵌合している。
テコベース81は、各中心板部90を、従動側クラッチ36の貫通孔60の各突出部61の後部分にそれぞれ後方から差し込み嵌合させることで、従動側クラッチ36と回転方向で一体に連結される。この状態で各受け板部91は、倍力レバー82を嵌合させた各嵌合凹部57にそれぞれ後方から対向する。よって、各倍力レバー82は、従動側クラッチ36とテコベース81とに挟持されて平板部96が側板部92,92の間に嵌合し、正面視でスピンドル37の軸線を中心として放射状に拡がる姿勢で保持される。
【0024】
ロックスリーブ39は、前スリーブ41の中径部46内に配置されている。ロックスリーブ39には、スピンドル37の中間軸部66が直交状に貫通する中心孔100が形成されている。中心孔100の前側には、リング状のバネ受け部101が形成されている。バネ受け部101は、ロックスリーブ39の前面よりも後側に凹設されている。バネ受け部101には、中間軸部66に外装されたコイルバネ40の後端が当接している。
中心孔100には、3つの凹部102,102・・が、ロックスリーブ39の周方向に等間隔をおいて形成されている。各凹部102は、バネ受け部101から後方へ向けて形成されている。各凹部102と、中間軸部66の各連結溝72とに跨がって、ボール103がそれぞれ嵌合している。ボール103は、図3に示すスピンドル37の前進位置では、コイルバネ40によって凹部102の後部に位置決めされている。よって、スピンドル37とロックスリーブ39とは、3つのボール103,103・・を介して回転方向で一体に連結される。但し、スピンドル37は、ボール103,103・・が連結溝72,72・・内を前後移動するストロークでボール103,103・・に対して相対移動可能である。
【0025】
ロックスリーブ39の外周には、図7にも示すように、3つの面取部104,104・・が形成されている。面取部104,104・・は、ロックスリーブ39の周方向に等間隔で配置されている。各面取部104は、ロックスリーブ39の外周面との接線方向と平行に形成され、各面取部104の終端は、径方向外側へ立ち上がり形成されている。各面取部104と中径部46との間には、楔ピン105が、スピンドル37の軸線方向と平行に配置されている。駆動側クラッチ35の右回転時には、各楔ピン105は、図7Aに示すように、中径部46の径方向で面取部104との間隔が最大となる面取部104の終端寄りに位置する。この間隔は、楔ピン105の直径よりもやや大きいため、楔ピン105は空転し、中径部46の回転はロックスリーブ39に伝達されない。一方、駆動側クラッチ35の左回転時には、各楔ピン105は、図7Bに示すように、面取部104の始端寄りに移動する。すると、各楔ピン105が中径部46と面取部104との間に食い込んで駆動側クラッチ35とロックスリーブ39とを回転方向で一体に結合する。すなわち、ロックスリーブ39は、逆転時にのみスピンドル37にトルク伝達を行うワンウエイクラッチとなる。
【0026】
ロックスリーブ39の後端面には、3つの係止突起106,106・・が形成されている。係止突起106,106・・は、ロックスリーブ39の周方向に等間隔で配置されている。係止突起106,106・・は、従動側クラッチ36の貫通孔60の突出部61,61・・の前部分に前方から嵌合している。よって、ロックスリーブ39は、回転方向で従動側クラッチ36と一体に連結される。
ロックスリーブ39は、コイルバネ40によって後方へ付勢され、従動側クラッチ36も後方へ付勢される。よって、従動側クラッチ36は、後退位置に付勢される。この後退位置は、ワッシャ85に当接して後退が規制されるテコベース81に当接する位置となる。従動側クラッチ36の後退位置で従動クラッチ面55は、図3に示すように、駆動側クラッチ35の駆動クラッチ面48に当接しない。ロックスリーブ39は、後退位置の従動側クラッチ36に当接する。
よって、テコベース81とロックスリーブ39とは、後退位置の従動側クラッチ36と回転方向で連結した状態となる。
一方、スピンドル37は、コイルバネ40により、中間軸部66のフランジ部71が軸受74に当接する前進位置に付勢される。
【0027】
このとき、倍力機構38において、各倍力レバー82は、図9にも示すように、後退位置の従動側クラッチ36の嵌合凹部57に嵌合する。この嵌合状態で各倍力レバー82は、作用部95が嵌合凹部57の平面部58に当接する。同時に作用部95の曲面部98に、テコベース81の受け板部91の受け面93が当接する。よって、各倍力レバー82は、従動側クラッチ36とテコベース81との間で、作用部95よりも平板部96の端部の方が前方に位置する傾斜姿勢で保持される。このとき平板部96の当該端部は、スピンドル37の後軸部67に近接して内角部99を中間軸部66の後方に位置させている。
【0028】
図3に示すように、本体ハウジング2内で後ハウジング7の後方には、レバー110と、センサ基板111とが設けられている。
レバー110は、スピンドル37の軸線の後方延長線よりも上方に位置する左右方向の支軸112によって回転可能に支持されている。レバー110は、スピンドル37の後端に設けたロッド73の後方で下向きに突出する押圧片113を備えている。レバー110は、押圧片113の後側で上向きに突出する検出片114を備えている。検出片114には、磁石115が設けられている。
センサ基板111は、リブ17の上側で且つ検出片114の後方に配置されている。センサ基板111は、ホール素子等の磁気センサを備えて、検出片114の回転による磁石115の磁界の変化を検出可能となっている。レバー110は、トーションバネ116の付勢により、常態では検出片114がセンサ基板111の前面に当接する第1の回転位置(図2及び図3)にある。
ロッド73は、前進位置となるスピンドル37と共に前進位置にあり、後端を押圧片113の前面に近接させている。
【0029】
ここからスピンドル37と共にロッド73が後退すると、ロッド73の後端がレバー110の押圧片113を後方へ押圧してレバー110を図3で右回転させる。すると、レバー110は、検出片114が前方へ回転してセンサ基板111から前方へ離間する第2の回転位置となる。よって、磁石115の移動による磁界の変化を検出したセンサ基板111は、ON信号を出力することになる。
制御回路基板29には、スイッチ22、正逆切替レバー24の切替に伴う正逆レバースイッチ、センサ基板111、スイッチプレート30のボタンスイッチの動作信号がそれぞれ入力される。制御回路基板29は、正逆レバースイッチからの信号に基づいてモータ10の回転方向を設定し、モータ10を駆動させる。制御回路基板29は、ボタンスイッチの操作信号に基づいて動作モード(通常モードとプッシュドライブモード)を設定する。
【0030】
前ハウジング8の前部外周には、ロックリング117が螺合されている。ロックリング117の前端には、前方へ先細り状となるアジャストスリーブ118が着脱可能に取り付けられている。アジャストスリーブ118の前端には、キャップ119が嵌着されている。
ビット挿入孔68に装着されたドライバビットBは、アジャストスリーブ118及びキャップ119を貫通して前端を突出させる。ネジの締め付け深さを調整する際は、ロックリング117を回転操作して前後方向へねじ送りし、アジャストスリーブ118を前後移動させる。すると、キャップ119からのドライバビットBの突出量が変化する。よって、任意の締め付け深さを選択できる。
【0031】
以上の如く構成されたスクリュードライバ1において、まず通常モードを説明する。
スピンドル37のビット挿入孔68にドライバビットBを差し込み装着して正逆切替レバー24を正転位置にする。次に、作業者は、グリップ部21を把持してドライバビットBの先端を、石膏ボード等の被加工材の表面に当接させたネジの頭に係止させる。次に、作業者は、トリガ23を押し操作する。すると、スイッチ22がONして、バッテリパック26から電源が制御回路基板29を介してモータ10に供給される。よって、ロータ12が正回転して回転軸13の回転がピニオン15からギヤ50を介して駆動側クラッチ35に伝わる。しかし、後退位置にある従動側クラッチ36の従動クラッチ面55は、駆動側クラッチ35の駆動クラッチ面48に当接していない(図2,3のクラッチOFF状態)。よって、従動側クラッチ36及びロックスリーブ39は回転せず、スピンドル37も回転しないため、ネジ締めは行われない。
【0032】
このとき倍力機構38では、図9に示すように、各倍力レバー82は、従動側クラッチ36とテコベース81との間で傾斜姿勢のままとなる。ここで、曲面部98への受け面93の当接位置をP1、平板部96の内角部99における中間軸部66との当接位置(最前方位置)をP2、作用部95の外角部97における嵌合凹部57の平面部58との当接位置をP3とする。すると、スピンドル37の径方向で当接位置P1から当接位置P2までの距離L1は、当接位置P1から当接位置P3までの距離L2よりも大きくなっている。
【0033】
次に、作業者がグリップ部21を押し込んでスクリュードライバ1を前進させる。すると、ドライバビットBと共にスピンドル37が、コイルバネ40の付勢に抗して後退する。よって、後退した中間軸部66が、各倍力レバー82の平板部96の内角部99に当接して内角部99を、力点となる当接位置P2を通ってスピンドル37の軸線方向と平行な作用線D1に沿って後方へ押圧する。すると、図8及び図10に示すように、各倍力レバー82が、テコベース81の受け板部91の受け面93との当接位置P1を支点として、図9の傾斜姿勢から右回転する。このとき、当接位置P1は、倍力レバー82の右回転に伴い曲面部98に沿って径方向内側へ相対移動する。
スピンドル37が図8及び図10の後退位置に達すると、中間軸部66と各倍力レバー82との当接位置P2を通る接平面TPと、作用線D1とがなす角度αは、90°となる。すなわち、各倍力レバー82は、スピンドル37の径方向に沿った起立姿勢となる。
【0034】
こうして各倍力レバー82が起立姿勢に姿勢変更すると、作用部95の外角部97が前方へ移動して、当接位置P3で、嵌合凹部57の平面部58を、作用点となる当接位置P3を通ってスピンドル37の軸線方向と平行な作用線D2に沿って前方へ押圧する。このときのスピンドル37の径方向での当接位置P1から当接位置P2までの距離L1’は、当該径方向での当接位置P1から当接位置P3までの距離L2’よりも大きくなっている。
特に、スピンドル37が前進位置である図9と比較すると、後退位置の図10では、当接位置P1が径方向外側へ移動し、当接位置P2が径方向内側へ移動して、L1’>L1となっている。また、当接位置P3が径方向内側へ移動して、L2’<L2となっている。
この距離L1,L2の比と、距離L1’,L2’の比とをそれぞれ倍力率とすると、本実施例のモデルでは、中間軸部66が各倍力レバー82に当接した第1の時点で、距離L1とL2との比が10.1となっている。これに対し、スピンドル37が後退位置に達した第2の時点では、距離L1’とL2’との比が10.7となっている。すなわち、第1の時点で発生する第1の倍力率よりも、第2の時点で発生する第2の倍力率の方が大きく(約1.06倍)となっている。
【0035】
図11は、比較例の倍力機構を示している。図11AがクラッチOFF状態、図11BがクラッチON状態を示している。
この比較例では、倍力レバー82aは、作用部95aが横断面が略円形の軸状となっている。
図11Aに示すように、スピンドル37の中間軸部66が、倍力レバー82aの平板部96aに当接した第1の時点では、倍力レバー82aは、スピンドル37の径方向に沿った起立姿勢となっている。このモデルでは、力点となる当接位置P1と、支点となる当接位置P2との間の径方向の距離L1と、当接位置P2と、作用点となる当接位置P3との間の径方向の距離L2との比は、12.0となっている。
ここから図11Bに示すように、スピンドル37が後退位置に達すると、倍力レバー82aは、作用部95aが平板部96aよりも前方に位置する傾斜姿勢となる。このため、力F1,F2が発生する作用線D1,D2も傾くと共に、当接位置P1が当接位置P2側に移動する。よって、当接位置P3では、力F2に分力f1,f2が発生して従動側クラッチ36を前方へ押す力f2が小さくなる。また、作用線D1,D2との直交方向で、当接位置P1と当接位置P2との間の距離L1’は、距離L1よりも小さくなり、当接位置P2と当接位置P3との間の距離L2’は、距離L2よりも大きくなる。
このため、距離L1’と距離L2’との比は、3.2と大幅に低下し、第1の倍力率よりも第2の倍力率の方が小さくなっている(約0.17倍)。
従って、第1の倍力率よりも第2の倍力率の方が大きくなる本実施例は、比較例よりも優位であることが分かる。
但し、第2の倍力率は、必ずしも第1の倍力率よりも大きくなる必要はなく、少なくとも第1の倍力率×0.5より大きければ、比較例よりも優位となるため、第1の倍力率×0.5<第2の倍力率の関係を維持すればよい。
【0036】
このように本実施例では、各倍力レバー82が傾斜姿勢から起立姿勢へ姿勢変更することで、スピンドル37の後退の際の力F1が増大されて従動側クラッチ36を押圧する力F2に変換される。特に起立姿勢によって力点側の作用線D1と作用点側の作用線D2とが共にスピンドル37の軸線と平行になることで、作用線D1,D2の傾きによる分力が発生しない。よって、力F1がロスなく増大され、増大された力F2は従動側クラッチ36へダイレクトに伝わる。このため従動クラッチ面55は駆動クラッチ面48に強く押し当てられる。
すると、従動側クラッチ36は、駆動側クラッチ35と摩擦係合されて駆動側クラッチ35と一体に回転する(クラッチON状態)。よって、ロックスリーブ39を介してスピンドル37が正回転し、ネジが被加工材へねじ込まれる。倍力機構38による従動側クラッチ36への押圧力は、ドライバビットBが押し込まれてスピンドル37が後退している間は発生するため、大きな伝達トルクでネジ締めが行えることになる。
なお、スピンドル37と共にロッド73が後退することで、レバー110は第2の回転位置へ回転するが、モータ10は起動しているため、センサ基板111の検出信号は無効となる。
【0037】
ネジ締めが進むにつれてスクリュードライバ1が前進し、キャップ119の前端が被加工材に当接する。すると、その後はねじ込みに従ってスピンドル37のみが前進する。よって、各倍力レバー82による従動側クラッチ36への押圧力が低下し、従動クラッチ面55と駆動クラッチ面48との間の摩擦力が低減する。このため、駆動側クラッチ35から従動側クラッチ36への回転伝達が遮断されてネジ締めが終了する。作業者がトリガ23の押し操作を解除するとスイッチ22がOFFしてモータ10のロータ12の回転が停止する。ドライバビットBをネジから離すと、スピンドル37は、コイルバネ40の付勢によって前進位置へ復帰する。
【0038】
一方、スイッチプレート30のモード切替ボタンを操作すれば、プッシュドライブモードを選択することができる。プッシュドライブモードでは、トリガ23を押し込んでもモータ10は駆動しない。そのままドライバビットBをネジに押し当ててスピンドル37が後退すると、後退したロッド73がレバー110を第2の回転位置に回転させる。よって、センサ基板111からON信号が出力され、このON信号に応じて制御回路基板29がモータ10を駆動させる。その後、スピンドル37の後退に伴って各倍力レバー82が従動側クラッチ36を前方へ押圧し、駆動側クラッチ35に摩擦係合させる。よって、駆動側クラッチ35の回転が従動側クラッチ36及びロックスリーブ39を介してスピンドル37に伝達される。こうしてスピンドル37と共にドライバビットBが正回転してネジ締めが可能となる。
【0039】
そして、ネジの緩め作業を行う場合、正逆切替レバー24を逆転位置にする。次に、作業者は、グリップ部21を把持してドライバビットBの先端をネジの頭に係止させ、トリガ23を押し操作する。すると、スイッチ22がONしてロータ12が逆回転し、回転軸13の回転が駆動側クラッチ35に伝わる。よって、ロックスリーブ39では、前述のように各楔ピン105が各面取部104内で始端寄りに転動し、ロックスリーブ39を駆動側クラッチ35に回転方向で係合させる。よって、駆動側クラッチ35の逆回転はロックスリーブ39を介してスピンドル37に伝わり、逆回転したドライバビットBによってネジを緩めることができる。
このように逆転時は、ロックスリーブ39によって駆動側クラッチ35とスピンドル37とが直結される。このため、スピンドル37を押し込まなくても起動時から大きな伝達トルクで緩め作業が行える。
【0040】
何れのモード及びネジの緩め作業においても、駆動側クラッチ35の駆動クラッチ面48と従動側クラッチ36の従動クラッチ面55との摩擦によって鉄粉等が発生することがある。しかし、発生した鉄粉等は、従動側クラッチ36の外面に設けた溝56を介して両クラッチ面48,55との接触領域から外部へ排出される。よって、摩擦係合の伝達トルクが不安定となりにくくなる。
トリガ23の押し込みによってスイッチ22がON動作すると、制御回路基板29からライト31に通電されてライト31が点灯する。よって、ドライバビットBの前方が下方から照射されるため、暗い場所でも作業が楽に行える。トリガ23の押し込みを解除してスイッチ22をOFFさせれば、ライト31は消灯する。
回転軸13の回転と共にファン16が回転すると、モータハウジング5の側面の吸気口19から外気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、モータ10を通過した後、排気口20から外部に排出される。よって、モータ10が冷却される。
【0041】
(本開示の第1の構成(接平面とスピンドル軸線との角度)に係る効果)
上記実施例のスクリュードライバ1は、モータ10と、モータ10の駆動により回転する駆動側クラッチ35と、駆動側クラッチ35と接触することにより回転が伝達される従動側クラッチ36と、従動側クラッチ36により回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットBを前端に保持可能なスピンドル37と、スピンドル37の軸線方向の後退に伴って動作し、従動側クラッチ36を駆動側クラッチ35に押圧させる倍力レバー82と、を含んでなる。
そして、スピンドル37が最後方に位置した際、スピンドル37と倍力レバー82との当接位置P2(接触点の一例)を通る接平面TP(中間軸部66の後端面)と、スピンドル37の軸線とのなす角度αが90°となる。
この構成によれば、倍力レバー82により増大される力F2に分力が生じることがなく、力F2が従動側クラッチ36へダイレクトに伝わる。よって、駆動側クラッチ35と従動側クラッチ36とからなる摩擦クラッチを用いても、駆動側クラッチ35と従動側クラッチ36との押し付け力を倍力機構38によって上げることにより、伝達トルクを大きくすることができる。
なお、角度αは、上記例の90°に限らない。例えばスピンドル37の後退位置で倍力レバー82が図10よりも前方へ傾く傾斜姿勢となる場合、接平面TPは、中間軸部66の外周のR面で形成されるため、90°を下回ることがある。しかし、角度αが60°以上であれば力F2に分力が発生しないか、或いは分力が発生しても小さくなることから、60°以上となるように設定すればよい。
【0042】
(本開示の第2の構成(第1の倍力率と第2の倍力率)に係る効果)
上記実施例のスクリュードライバ1は、モータ10と、モータ10の駆動により回転する駆動側クラッチ35と、駆動側クラッチ35と接触することにより回転が伝達される従動側クラッチ36と、従動側クラッチ36により回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットBを前端に保持可能なスピンドル37と、スピンドル37の軸線方向の後退に伴って動作し、従動側クラッチ36を駆動側クラッチ35に押圧させる倍力レバー82と、を含んでなる。
そして、後退したスピンドル37が倍力レバー82に当接した第1の時点で倍力レバー82が従動側クラッチ36を押圧する第1の倍力率と、スピンドルが最後方に位置した第2の時点で倍力レバー82が従動側クラッチ36を押圧する第2の倍力率とが、以下の関係となっている。
第1の倍力率×0.5<第2の倍力率
この構成によれば、駆動側クラッチ35と従動側クラッチ36とからなる摩擦クラッチを用いても、駆動側クラッチ35と従動側クラッチ36との押し付け力を倍力機構38によって上げることにより、伝達トルクを大きくすることができる。特に、スクリュードライバ1の押し込みによるスピンドル37の後退に伴って倍力率が大きくなるので、従動側クラッチ36と駆動側クラッチ35とを確実に摩擦係合させることができる。
【0043】
駆動側クラッチ35が前側、従動側クラッチ36が後側に配置され、駆動側クラッチ35の後面と従動側クラッチ36の前面とに互いに接触する駆動クラッチ面48及び従動クラッチ面55(クラッチ面の一例)がそれぞれ形成されていると共に、スピンドル37は、駆動側クラッチ35と従動側クラッチ36とを貫通している。
また、倍力レバー82は、従動側クラッチ36の後方でスピンドル37の径方向外側に配置されて、正面視でスピンドル37の径方向に延びている。
そして、スピンドル37が軸線方向に後退して倍力レバー82の内角部99(スピンドル側の端部の一例)に当接して後方へ押圧することで、倍力レバー82の外角部97(径方向外側の端部の一例)が従動側クラッチ36に当接して従動側クラッチ36を駆動側クラッチ35に押圧させる。
よって、スピンドル37の後退の際の力を従動側クラッチ36の押圧力に効率よく変換することができる。
【0044】
スピンドル37が倍力レバー82の内角部99に当接して内角部99を押圧する力点の作用線D1と、倍力レバー82の外角部97が従動側クラッチ36に当接して従動側クラッチ36を押圧する作用点の作用線D2とは、共にスピンドル37の軸線と平行である。
よって、作用線D1,D2の傾きによる分力が発生せず、作用線D1に沿って発生する力F1がロスなく増大され、増大された力F2は従動側クラッチ36へダイレクトに伝わる。
倍力レバー82は、スピンドル37の後退前では、内角部99が外角部97よりも前方に位置する傾斜姿勢となっている。
よって、倍力レバー82の後側に倍力レバー82を傾動させるスペースを確保する必要がなくなる。このため倍力機構38が前後方向にコンパクト化し、スクリュードライバ1自体の全長の短縮化に繋がる。
倍力レバー82は、内角部99に繋がる前面と外角部97に繋がる前面とが鈍角で繋がる屈曲形状である。
よって、倍力レバー82の姿勢変更に伴う従動側クラッチ36との当接を確実に行うことができる。
【0045】
駆動クラッチ面48及び従動クラッチ面55は、スピンドル37の軸線方向で前方へ向かうに従って小径となるテーパ形状である。
よって、摩擦整合が容易に行える。
倍力レバー82の後方には、従動側クラッチ36との間で倍力レバー82を動作可能に支持するテコベース81(レバー支持部材の一例)が設けられており、倍力レバー82は、スピンドル37が後退して内角部99が後方へ押圧されると、テコベース81との当接位置P1(第1の当接位置の一例)を支点として外角部97が前方へ移動して姿勢変更し、従動側クラッチ36を駆動側クラッチ35に押圧させる。
よって、倍力レバー82を安定して姿勢変更させることができる。
スピンドル37の径方向で、当接位置P1と、内角部99とスピンドル37との当接位置P2(第2の当接位置の一例)との間の距離L2の方が、当接位置P1と、外角部97と従動側クラッチ36との当接位置P3(第3の当接位置の一例)との間の距離L1よりも大きい。
よって、スピンドル37の後退の際の力を従動側クラッチ36の押圧力に効率よく変換できる倍力レバー82が得られる。
【0046】
(本開示の第3、第4の構成(スピンドル移動前の倍力レバー傾斜姿勢)に係る効果)
上記実施例のスクリュードライバ1は、モータ10と、モータ10の駆動により回転する駆動側クラッチ35と、駆動側クラッチ35と接触することにより回転が伝達される従動側クラッチ36と、従動側クラッチ36により回転が伝達されて前後方向に延び、ドライバビットBを前端に保持可能なスピンドル37と、スピンドル37の径方向外側に配置され、スピンドル37の軸線方向の後方(何れか一方側の一例)への移動に伴って姿勢変更して従動側クラッチ36を駆動側クラッチ35に押圧させる倍力レバー82と、を含んでなる。
そして、スピンドル37の移動前の倍力レバー82は、内角部99が外角部97よりも前方に位置する傾斜姿勢となっている(第3の構成)。換言すると、スピンドル37の移動前の倍力レバー82は、径方向に対して後側(前後何れか一方側の一例)へ傾斜する姿勢となっている(第4の構成)。
この構成によれば、駆動側クラッチ35と従動側クラッチ36とからなる摩擦クラッチを用いても、駆動側クラッチ35と従動側クラッチ36との押し付け力を倍力機構38によって上げることにより、伝達トルクを大きくすることができる。特に、倍力レバー82の後側に倍力レバー82を傾動させるスペースを確保する必要がなくなるため、倍力機構38が前後方向にコンパクト化し、スクリュードライバ1自体の全長の短縮化に繋がる。
【0047】
スピンドル37の移動後の倍力レバー82は、スピンドル37の径方向に近づく起立姿勢となる。
よって、倍力レバー82により増大される力F2に分力が生じることがなく、力F2が従動側クラッチ36へダイレクトに伝わる。
従動側クラッチ36の後面には、倍力レバー82が嵌合して倍力レバー82を傾動可能に支持する嵌合凹部57が形成されている。よって、従動側クラッチ36に対して倍力レバー82を適正位置に位置決めできる。
倍力レバー82は、スピンドル37の軸線回りに複数設けられている。よって、倍力レバー82による押圧力を従動側クラッチ36へ均等に加えることができる。
倍力レバー82は、スピンドル37の軸線回りに3つ均等配置されている。よって、必要最小限の数で倍力レバー82による押圧力を従動側クラッチ36へ均等に加えることができる。
従動側クラッチ36の従動クラッチ面55には、駆動クラッチ面48との接触領域を当該接触領域の外部に連通させる溝56が形成されている。よって、摩擦により発生した鉄粉等を従動クラッチ面55と駆動クラッチ面48との接触領域から速やかに排出でき、摩擦力の低下を防止できる。
従動側クラッチ36には、スピンドル37と回転方向で一体に結合され、駆動側クラッチ35の逆回転時にのみ駆動側クラッチ35からのトルクが伝達されるロックスリーブ39(ワンウエイクラッチ)が一体回転可能に設けられている。よって、逆回転時にはドライバビットBを押し込んでスピンドル37を後退させなくても駆動側クラッチ35とスピンドル37とを直結でき、ネジの緩め作業等を容易に行うことができる。
【0048】
以下、本開示の変更例について説明する。
従動側クラッチは、筒状とした駆動側クラッチの内部に収容されているが、これに限らない。例えば、駆動側クラッチの後面にテーパ状の駆動クラッチ面を、従動側クラッチの前面にテーパ状の従動クラッチ面をそれぞれ設けて摩擦係合させてもよい。テーパ形状は上記実施例と逆の向きであってもよい。
上記実施例では、駆動側クラッチを前側、従動側クラッチを後側にそれぞれ配置しているが、両クラッチを前後逆に配置してもよい。
クラッチ面は、テーパ形状とする構造に限らない。例えば平面としたクラッチ面同士を接触させてもよい。但し、テーパ形状同士の摩擦係合の場合、楔効果によって摩擦係数が高くなり、伝達トルクが大きくなる利点がある。
クラッチ面に設ける溝の数や配置は適宜変更できる。溝は、従動側クラッチでなく駆動側クラッチのクラッチ面に設けてもよいし、両者のクラッチ面にそれぞれ設けてもよい。溝を省略することもできる。
駆動側クラッチは、後スリーブを省略して前スリーブのみで形成してもよいし、スリーブ形状でなくてもよい。従動側クラッチの形状も適宜変更できる。
駆動側クラッチと従動側クラッチとのクラッチ面には、摩擦抵抗を高くする表面処理(ショットブラストやローレット加工等)を行ったり、摩擦抵抗が高いシート状部材を固着したりすることもできる。
【0049】
倍力機構において、倍力レバー及びレバー支持部材の形状は、適宜変更できる。例えば倍力レバーは、作用部が平板部と同じ幅であってもよい。平板部は、直線状でなく屈曲形状や湾曲形状としてもよい。平板部は、丸棒部としてもよい。
倍力レバーの数は、3つに限らず、適宜増減できる。
倍力レバーは、軸や凹凸によってレバー支持部材に対して姿勢変更可能に連結されていてもよい。
レバー支持部材も、上記実施例のテコベースに限定されない。倍力レバーの形状に応じて受け板部や受け面の形状を変更すればよい。但し、受け面は、上記実施例のように曲面とすると、倍力レバーとの距離を近づけることができ、コンパクト化に繋がると共に、互いの摩耗防止にもなる。
レバー支持部材は、スラストベアリングと別体に形成してもよい。
ロックスリーブは、面取部及び楔ピンの数及び形状を適宜変更することができる。但し、このようなワンウエイクラッチを省略して、逆転時も摩擦係合を利用することもできる。
【0050】
モータとして、整流子モータ等の他のモータを使用してもよい。モータの向きも回転軸が前後方向となる向きに限定されない。
グリップハウジングとして、ループ状でなくモータハウジングの後端から下向きに突出する直線形状を採用してもよい。
ボード用スクリュードライバは、プッシュドライブモードを備えないものであってもよい。上記実施例では、プッシュドライブモードでのモータ駆動のタイミングを先に得るために、スピンドルの後退前の位置で倍力レバーとの間に前後方向の距離を確保している。プッシュドライブモードがない場合、このような距離の確保が不要となるため、スピンドルの後退前の位置で倍力レバーに当接或いは近接させることができる。
ボード用スクリュードライバは、電源としてバッテリパックを用いないAC機であってもよい。
ボード用スクリュードライバは、連結ネジを収容するマガジン及びフィーダを備えてネジ締め作業を連続して行えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・ボード用スクリュードライバ、2・・本体ハウジング、3・・ギヤハウジング、4・・出力部、5・・モータハウジング、6・・グリップハウジング、7・・後ハウジング、8・・前ハウジング、10・・モータ、13・・回転軸、22・・スイッチ、24・・正逆切替レバー、28・・コントローラ、29・・制御回路基板、35・・駆動側クラッチ、36・・従動側クラッチ、37・・スピンドル、38・・倍力機構、39・・ロックスリーブ、40・・コイルバネ、41・・前スリーブ、42・・後スリーブ、47・・テーパ部、48・・駆動クラッチ面、50・・ギヤ、55・・従動クラッチ面、57・・嵌合凹部、58・・平面部、59・・傾斜面部、65・・前軸部、66・・中間軸部、67・・後軸部、68・・ビット挿入孔、81・・テコベース、82・・倍力レバー、90・・中心板部、91・・受け板部、92・・側板部、93・・受け面、95・・作用部、96・・平板部、97・・外角部、98・・曲面部、99・・内角部、110・・レバー、111・・センサ基板、B・・ドライバビット。
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