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特開2024-86396メタンの製造方法及びメタンの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086396
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】メタンの製造方法及びメタンの製造装置
(51)【国際特許分類】
   C12P 5/02 20060101AFI20240620BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240620BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240620BHJP
   C12M 1/107 20060101ALI20240620BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20240620BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C12P5/02
C25B1/04 ZAB
C25B9/00 A
C12M1/107
C02F11/04 A
C10L3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201503
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
(72)【発明者】
【氏名】築井 良治
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
【テーマコード(参考)】
4B064
4D059
4K021
【Fターム(参考)】
4B064AB03
4B064CA01
4B064CE20
4B064DA16
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA03
4D059BA15
4D059BA18
4D059BA27
4D059BA44
4D059CA11
4D059CA14
4K021AA01
4K021BA02
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】バイオガスからエネルギーとして利用可能なメタンを安定的に得ることが可能なメタンの製造方法及びメタンの製造装置を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物を嫌気性消化槽5内で嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる嫌気性処理工程と、バイオガス中の二酸化炭素を分離装置2内でバイオガスから分離し、バイオガス中のメタン濃度を高める分離工程と、バイオガス中の二酸化炭素をバイオメタネーションリアクタ1内に導入し、微生物の存在下で水素と反応させ、二酸化炭素をメタンに変換し、バイオガス中のメタン濃度を高めるバイオメタネーション工程とを備え、嫌気性消化槽5の後段に分離装置2とバイオメタネーションリアクタと1を並列に接続し、分離工程又はバイオメタネーション工程によって、バイオガスからメタンを主成分とする処理ガスを製造するメタンの製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を嫌気性消化槽内で嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる嫌気性処理工程と、
前記バイオガス中の前記二酸化炭素を分離装置内で前記バイオガスから分離し、前記バイオガス中のメタン濃度を高める分離工程と、
前記バイオガスをバイオメタネーションリアクタ内に導入し、前記バイオガス中の前記二酸化炭素を微生物の存在下で水素と反応させ、前記二酸化炭素をメタンに変換し、前記バイオガス中のメタン濃度を高めるバイオメタネーション工程と
を備え、
前記嫌気性消化槽の後段に前記分離装置と前記バイオメタネーションリアクタとを並列に接続し、前記分離工程又は前記バイオメタネーション工程の少なくともいずれかによって、前記バイオガスからメタンを主成分とする処理ガスを製造することを特徴とするメタンの製造方法。
【請求項2】
前記バイオメタネーション工程で得られるメタン含有ガス中に残留する前記水素及び前記二酸化炭素からメタンを生成させる仕上げメタネーション工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載のメタンの製造方法。
【請求項3】
前記バイオメタネーション工程で得られるメタン含有ガスを前記分離装置へ供給し、前記メタン含有ガス中の前記二酸化炭素を分離する仕上げ分離工程を更に有することを特徴とする請求項1に記載のメタンの製造方法。
【請求項4】
前記バイオメタネーションリアクタ内に、再生可能エネルギーから得られる電力を用いた水の電気分解により得られる水素を導入する工程を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のメタンの製造方法。
【請求項5】
前記再生可能エネルギーから得られる電力又は前記水素の価格に基づいて、前記バイオメタネーションリアクタ又は前記分離装置への前記バイオガスの供給を切り替えることを特徴とする請求項4に記載のメタンの製造方法。
【請求項6】
有機性廃棄物を嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる嫌気性消化槽と、
前記嫌気性消化槽の後段に接続され、前記バイオガス中の前記二酸化炭素を微生物の存在下で水素と反応させ、前記二酸化炭素をメタンに変換し、前記バイオガス中のメタン濃度を高めるバイオメタネーションリアクタと、
前記嫌気性消化槽の後段に前記バイオメタネーションリアクタと並列に接続され、前記バイオガス中の前記二酸化炭素を前記バイオガスから分離し、前記バイオガス中のメタン濃度を高める分離装置と、
前記分離装置及び前記バイオメタネーションリアクタで処理されたメタンを主成分とする処理ガスを貯蔵可能な処理ガスホルダと
を備えることを特徴とするメタンの製造装置。
【請求項7】
前記バイオメタネーションリアクタ又は前記分離装置への前記バイオガスの供給を切り替える切替手段を備える請求項6に記載のメタンの製造装置。
【請求項8】
前記バイオメタネーションリアクタに接続され、前記バイオメタネーションリアクタで得られるメタン含有ガス中に残留する前記水素及び前記二酸化炭素からメタンを生成させる仕上げメタネーションリアクタを更に備えることを特徴とする請求項6又は7に記載のメタンの製造装置。
【請求項9】
前記バイオメタネーションリアクタで得られるメタン含有ガスを前記分離装置へ供給する供給手段を更に備えることを特徴とする請求項6又は7に記載のメタンの製造装置。
【請求項10】
前記バイオメタネーションリアクタに供給する前記水素が、再生可能エネルギーから得られる電力を用いた水の電気分解により得られる水素を含み、前記水素の価格に基づいて、前記バイオガスの前記バイオメタネーションリアクタ又は前記分離装置への供給を制御する制御手段を備える請求項6又は7に記載のメタンの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンの製造方法及びメタンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥、食品廃棄物、生ごみ、紙ごみ、家畜ふん尿、草木等のバイオマスを原料として嫌気性消化処理を行い、メタンと二酸化炭素とを含有するバイオガスを生成し、廃棄物量を削減するとともに、メタンの形態でエネルギーを回収できる技術が知られている。バイオマスから回収したメタンは、化石燃料に由来しないカーボンニュートラルなエネルギー源であるため、地球温暖化を防止する観点からもバイオマスの嫌気性消化処理は重要な技術の一つである。
【0003】
嫌気性消化処理によって生成するバイオガスにはメタンと二酸化炭素とが含まれるが、バイオガス中のメタンは、発電やボイラの燃料成分として活用されている。また、バイオガス中のメタンを精製することにより、都市ガスの原料、都市ガス導管への直接注入、天然ガス自動車の燃料などに活用される。
【0004】
そのような背景もあり、近年、バイオガス中の二酸化炭素と水素とからメタンを製造するメタネーション技術が注目されている。メタネーションで使用される水素は、再生可能エネルギー由来の余剰電力を使い、水の電気分解によって製造することが多い。
【0005】
例えば、特開2020-33284号公報(特許文献1)には、再生可能エネルギー設備で生成した電気を利用し、水電解装置により生成したH2と、火力発電や製鉄プラント等から排出・回収されたCO2とを用いて、メタンを製造するメタネーション反応装置の例が記載されている。特表2022-506756号公報(特許文献2)には、二酸化炭素含有排出物及び/または排ガスを利用して、生物起源メタンを生成する方法に関する発明が記載されている。
【0006】
特開2016-108382号公報(特許文献3)には、メタン発酵によりバイオガスを発生するメタン発酵槽と、メタン発酵槽に接続され、メタン発酵槽で発生したバイオガスに含まれる二酸化炭素をメタンに変換する第1のメタネーション反応器とを備えるバイオガス製造システムの例が記載されている。特開2020-045430号公報(特許文献4)には、再生可能エネルギー発電装置の余剰電力を用いて、水素と酸素とを製造する水電解装置と、水電解装置にて製造した水素とシステム内で生成する二酸化炭素とを合成して、メタン等の炭化水素燃料を製造するメタネーション設備とを備えた再生可能エネルギー利用システムの例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-33284号公報
【特許文献2】特表2022-506756号公報
【特許文献3】特開2016-108382号公報
【特許文献4】特開2020-045430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メタネーション技術は、触媒を用いた化学的メタネーション反応を利用したものと、微生物を利用した生物的メタネーション(以下「バイオメタネーション」という)とに分類される。化学的メタネーションは、硫化水素、シロキサン等の不純物を含むバイオガスを処理する場合には、その不純物の濃度が低い場合であってもメタン化触媒が劣化し、処理性能が低下することがある。一方、バイオメタネーションは、バイオメタネーションに用いられる微生物がバイオガス中の不純物に対して耐性を有するため、バイオガスをそのまま原料として使用することができる。そのため、バイオメタネーションは、化学的メタネーションに比べて、バイオガスを原料としたメタネーションに適している。さらに、化学的メタネーションは、高温条件下(300~550℃)の反応であるのに対し、バイオメタネーションは低温条件下(30~70℃)での反応であるため設備を簡略化できる点で有利である。
【0009】
しかしながら、バイオガスを原料としたバイオメタネーションにおいては、以下のような課題を有する。
【0010】
バイオメタネーションで使用する水素は、典型的には、再生可能エネルギーの余剰電力を使い、水の電気分解によって製造される。しかしながら、再生可能エネルギーの余剰電力及び供給量は、季節や時間帯によって変動する。そのため、バイオメタネーションを実施することが効率的ではない季節や時間帯も存在する。
【0011】
バイオガスは、原料とするバイオマスの種類、有機物濃度、供給量及びバイオマスを処理する嫌気性消化処理装置の運転状態によってガス中の成分濃度が変化する。そのような原料を用いてバイオメタネーションを実施することによりバイオメタネーションで得られるガスの成分濃度も変動する。
【0012】
バイオメタネーションは、メタン生成菌を含む微生物群によって二酸化炭素と水素とをメタンに変換するが、メタン生成菌の活性は、水素負荷、pH、ORP、窒素濃度、リン濃度、微量元素等の運転条件によって影響を受けやすい。そのため、バイオメタネーションは、化学的メタネーションに比べると、得られるガスの成分変動が生じやすい。
【0013】
バイオメタネーションで製造した処理ガスを都市ガス導管等に注入する場合、処理ガスのメタン濃度及び水素濃度等のガス性状の要求水準が高いため、処理ガスのガス性状がこの要求水準に満たない場合がある。
【0014】
上記課題を鑑み、本発明は、バイオガスからエネルギーとして利用可能なメタンを安定的に得ることが可能なメタンの製造方法及びメタンの製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、バイオガスから二酸化炭素を分離する分離工程と、バイオガスのバイオメタネーション工程とを並列処理することが可能なメタンの製造装置を用いて、分離工程又はバイオメタネーション工程によってメタンを製造することが有用であるとの知見を得た。
【0016】
以上の知見に基づき、本発明は一側面において、有機性廃棄物を嫌気性消化槽内で嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる嫌気性処理工程と、バイオガス中の二酸化炭素を分離装置内でバイオガスから分離し、バイオガス中のメタン濃度を高める分離工程と、バイオガスをバイオメタネーションリアクタ内に導入し、バイオガス中の二酸化炭素を、微生物の存在下で水素と反応させ、二酸化炭素をメタンに変換し、バイオガス中のメタン濃度を高めるバイオメタネーション工程とを備え、嫌気性消化槽の後段に分離装置とバイオメタネーションリアクタとを並列に接続し、分離工程又はバイオメタネーション工程の少なくともいずれかによって、バイオガスからメタンを主成分とする処理ガスを製造するメタンの製造方法である。
【0017】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造方法は一実施態様において、バイオメタネーション工程で得られるメタン含有ガス中に残留する水素及び二酸化炭素からメタンを生成させる仕上げメタネーション工程を更に有する。
【0018】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造方法は別の一実施態様において、バイオメタネーション工程で得られるメタン含有ガスを分離装置へ供給し、メタン含有ガス中の二酸化炭素を分離する仕上げ分離工程を更に有する。
【0019】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造方法は更に別の一実施態様において、バイオメタネーションリアクタ内に、再生可能エネルギーから得られる電力を用いた水の電気分解により得られる水素を導入する工程を有する。
【0020】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造方法は更に別の一実施態様において、再生可能エネルギーから得られる電力又は水素の価格に基づいて、バイオメタネーションリアクタ又は分離装置へのバイオガスの供給を切り替える。
【0021】
本発明は別の一側面において、有機性廃棄物を嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる嫌気性消化槽と、嫌気性消化槽の後段に接続され、バイオガス中の二酸化炭素を微生物の存在下で水素と反応させ、二酸化炭素をメタンに変換し、バイオガス中のメタン濃度を高めるバイオメタネーションリアクタと、嫌気性消化槽の後段にバイオメタネーションリアクタと並列に接続され、バイオガス中の二酸化炭素をバイオガスから分離し、バイオガス中のメタン濃度を高める分離装置と、分離装置及びバイオメタネーションリアクタで処理されたメタンを主成分とする処理ガスを貯蔵可能な処理ガスホルダとを備えるメタンの製造装置である。
【0022】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造装置は一実施態様において、バイオメタネーションリアクタ又は分離装置へのバイオガスの供給を切り替える切替手段を備える。
【0023】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造装置は別の一実施態様において、バイオメタネーションリアクタに接続され、バイオメタネーションリアクタで得られるメタン含有ガス中に残留する水素及び二酸化炭素からメタンを生成させる仕上げメタネーションリアクタを更に備える。
【0024】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造装置は更に別の一実施態様において、バイオメタネーションリアクタで得られるメタン含有ガスを分離装置へ供給する供給手段を更に備える。
【0025】
本発明の実施の形態に係るメタンの製造装置は更に別の一実施態様において、バイオメタネーションリアクタに供給する水素が、再生可能エネルギーから得られる電力を用いた水の電気分解により得られる水素を含み、水素の価格に基づいて、バイオガスのバイオメタネーションリアクタ又は分離装置への供給を制御する制御手段を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、バイオガスからエネルギーとして利用可能なメタンを安定的に得ることが可能なメタンの製造方法及びメタンの製造装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るメタンの製造装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施の形態の変形例に係るメタンの製造装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係るメタンの製造装置の一例を示す概略図である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係るメタンの製造装置の一例を示す概略図である。
図5】本発明の第4の実施の形態に係るメタンの製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0029】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係るメタンの製造装置は、図1に示すように、有機性廃棄物を嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる嫌気性消化槽5と、バイオガス中の二酸化炭素をバイオガスから分離し、バイオガス中のメタン濃度を高める分離装置2と、バイオガスを導入し、バイオガス中の二酸化炭素を微生物の存在下で水素と反応させ、二酸化炭素をメタンに変換し、バイオガス中のメタン濃度を高めるバイオメタネーションリアクタ1とを備え、嫌気性消化槽5の後段に、分離装置2とバイオメタネーションリアクタ1とが並列に接続されている。
【0030】
嫌気性消化槽5は、下水汚泥、浄化槽汚泥、し尿、食品廃棄物、生ごみ、紙ごみ、家畜ふん尿、草木等の有機物を含む物質(以下「有機性廃棄物」という)を微生物の働きによって嫌気性消化処理することにより、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる。嫌気性消化槽5における具体的な処理は特に限定されず、一般的な嫌気性消化槽を用いることができる。例えば、嫌気性消化槽5への投入汚泥濃度を例えば4wt%以上、典型的には6~10wt%程度の高濃度とすることによって、嫌気性消化処理の効率化を図るとともに、嫌気性消化槽5の装置の小型化を図り、装置の小型化により加温に必要なエネルギーを小さくすることができる。
【0031】
嫌気性消化槽5で発生したバイオガスには、メタン及び二酸化炭素の他に、硫化水素等の硫黄系ガス成分が微量に含まれている。嫌気性消化槽5には脱硫装置53が接続されている。脱硫装置53は、バイオガス中の硫黄系ガス成分を除去する。硫黄系ガス成分を除去した後のバイオガスは、脱硫装置53に接続されたガスホルダ54に貯留される。
【0032】
分離装置2としては、バイオガスから二酸化炭素を選択的に除去できる装置であれば特に限定されない。このような分離装置2としては、例えば、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、物理吸着法、深冷分離法等を利用した二酸化炭素除去のためのガス分離装置が利用できる。中でも、気体分子径の調整により複数のガス成分の分離が可能な分離膜を備え、分離膜を用いてバイオガス中の二酸化炭素を選択的に分離する膜分離装置は、装置を簡略化できる点で好ましい。
【0033】
分離膜としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ等の無機材料膜、或いは、過フッ素化ポリマーや芳香族ポリイミド等の高分子膜が用いられる。そして、これら分離膜を、中空糸膜状または平膜状として充填した膜モジュール等を使用することによって、取り扱いが簡易でコンパクトな装置が得られる。
【0034】
分離装置2で分離された二酸化炭素は、分離装置2の分離ガス側の配管に接続され、分離装置2とバイオメタネーションリアクタ1との間を接続する循環手段3によって、バイオメタネーションリアクタ1内に供給されるように構成されていてもよい。バイオガスから分離された二酸化炭素を循環手段3を介してバイオメタネーションリアクタ1内へ循環することにより、バイオガス中の二酸化炭素を利用してメタンが合成できる。これにより、二酸化炭素の大気への排出量を低減し、脱炭素化が促進できる。
【0035】
分離装置2の前段、即ち、ガスホルダ54と分離装置2との間には、ガス精製装置27が設けられている。ガス精製装置27は、分離装置2内でバイオガスから二酸化炭素を分離する際に問題となる種々の不純物を除去する装置である。例えば、バイオガスに含まれるシロキサンは、分離装置2として分離膜を使用した際に分離膜の劣化を生じさせる恐れがある。分離装置2の前段にガス精製装置27が配置されることにより、分離装置2の劣化を抑制しながら分離装置2を長期間安定的に使用できる。
【0036】
ガス精製装置27の詳細は特に制限されないが、典型的には、活性炭、ゼオライト、モレキュラーシービングカーボン(機能性活性炭)等の吸着剤を用いた物理吸着法を利用した吸着装置が用いられる。或いは、バイオガスに含まれる微量成分を補足するための有機膜、無機膜、金属膜、又はこれらを組み合わせたフィルタ等を用いてもよい。分離装置2で不純物が除去されたメタン含有ガスは処理ガス精製装置7へ供給される。
【0037】
バイオメタネーションリアクタ1は、バイオガスに含まれる二酸化炭素を水素と反応させて、以下の式(1)に示すメタネーション反応によってメタンを得る。
CO2+4H2→CH4+2H2O ・・・(1)
【0038】
バイオメタネーションリアクタ1に供給される水素源は、典型的には、再生可能エネルギーで得られる電力によって水を電気分解することによって得られる水素(以下「グリーン水素」ともいう)等を用いることができる。バイオメタネーションリアクタ1に、再生可能エネルギーから得られる電力を用いた水の電気分解により得られるグリーン水素を導入し、バイオガスに含まれる二酸化炭素と反応させることにより、メタンが合成できる。
【0039】
バイオメタネーションリアクタ1内には、微生物として古細菌である水素資化メタン生成菌(以下「メタン生成菌」ともいう)等を収容する。処理温度は、30~80℃とし、圧力条件は、大気圧下~1.0MPa程度とし、バイオガスと水素とを、バイオメタネーションリアクタ1内へ注入する。メタネーション反応後のメタンを主成分とするメタン含有ガスは、バイオメタネーションリアクタ1の上部から出口ガスとして排出させる。バイオメタネーションリアクタ1内でのガス滞留時間を調整することにより、出口ガスのメタン濃度が目標値になるように調整できる。バイオメタネーションリアクタ1内へ収容する微生物としては、微生物を担体上に固定化した固定化担体等を用いてもよいし、下水処理場等で発生する汚泥等を一部使用してもよい。
【0040】
バイオメタネーションリアクタ1のリアクタ方式には、完全混合型、気泡塔型、固定床型、散水ろ床型等を用いることができる。完全混合型のリアクタは、リアクタ下部にバイオガスと水素を供給する散気装置、リアクタ内部を混合する撹拌機等を備える。完全混合型のリアクタでは、固定化担体を用いてもよい。気泡塔型のリアクタは、上に長い気泡塔、気泡塔底部にバイオガスと水素を供給する散気装置を備える。気泡塔型のリアクタでは、固定化担体を用いてもよいし、気泡を分散させる撹拌翼や多孔板を備えてもよい。固定床型のリアクタでは、リアクタ内部に微生物が固定化される充填床を備え、リアクタ下部からバイオガスと水素を供給する。散水ろ床型のリアクタでは、微生物が固定化される充填床を備え、リアクタ上部からリアクタ内部液(メタン生成菌や栄養源を含む汚泥)を散水して、リアクタ下部からバイオガスと水素を供給する。散水ろ床型のリアクタでは、リアクタ上部からバイオガスと水素を供給する場合もある。
【0041】
バイオメタネーションリアクタ1には、メタン生成菌の増殖・活性を増強・維持するため、窒素源(各種窒素化合物)、リン源(各種リン化合物)、ミネラル成分(カルシウム、マグネシウム等を含む化合物)、金属成分(鉄、亜鉛、コバルト、マンガン、ニッケル等を含む化合物)を供給してもよい。窒素源、リン源、ミネラル成分、金属成分の代替として、下水処理で発生する排水・汚泥等を用いてもよい。
【0042】
バイオメタネーションリアクタ1にバイオガスと水素を供給すると、メタン生成菌を含む汚泥の状態や運転条件によってはリアクタ内部液が発泡する場合がある。リアクタ内部液が発泡すると、リアクタの圧力上昇や、リアクタ後段の装置類にリアクタ内部液がオーバーフローするなどのトラブルが生じる。これらのトラブルを防ぐため、バイオメタネーションリアクタ1に消泡剤を注入することが好ましい。
【0043】
バイオメタネーションリアクタ1の内部液の濃度は、蒸発残留物(TS)濃度を5g/:L~50g/Lに維持することがより好ましい。TS濃度を適正な範囲に維持して内部液の濃度を高くすることにより、メタン生成菌の濃度を高く保持しながらバイオメタネーションリアクタ1の容積を小さくできる。一方で、バイオメタネーションリアクタ1内の内部液の濃度が過度に高くなると、内部液の混合不良、撹拌動力の増加、バイオガス・水素の分散不良による反応速度の低下等の問題が生じることがある。これらの問題を回避しながら、リアクタ容積を削減するためには、TS濃度を5g/L~50g/L、より好ましくは10g/L~50g/L、更に好ましくは10g/L~40g/Lとする。
【0044】
バイオメタネーションリアクタ1の内部液の濃度を高く維持するために、バイオメタネーションリアクタ1に内部液を濃縮する濃縮装置を設けてもよい。濃縮装置としては、遠心濃縮機、ベルト濃縮機、スクリュー濃縮機、膜分離装置等を使用することができる。濃縮時には高分子凝集剤を使用してもよい。
【0045】
バイオメタネーションリアクタ1内で得られるメタン含有ガス中のメタン濃度は90wt%以上となるように調整されることが好ましく、より好ましくは95wt%以上、更に好ましくは96wt%以上、より更に好ましくは97wt%以上となるように調整される。メタン含有ガス中のメタン濃度の調整のために、バイオメタネーションリアクタ1は、1又は複数段並列又は直列に接続してもよい。バイオメタネーションリアクタ1内で得られるメタン含有ガスは処理ガス精製装置7へ供給される。バイオメタネーションリアクタ1で得られるメタン含有ガス中のメタン、残留水素、残留二酸化炭素等の気体成分の濃度を測定可能な計測器11の測定結果に基づいて、バイオメタネーションリアクタ1で得られるメタン含有ガス中の濃度を調整できる。
【0046】
処理ガス精製装置7は、処理ガスに含まれるシロキサン、アンモニア、硫化水素等の副生成物、水分、異物等を取り除くための精製装置である。処理ガス精製装置7の具体例は特に限定されないが、例えば、不純物(副生成物)を吸着除去するための活性炭等を備えた吸着装置、硫化水素等を除去する脱硫装置、ガス中の異物を取り除くためのフィルタ、水分を取り除くための除湿装置等を備えることができる。処理ガス精製装置7は、複数段並列又は直列に接続されていてもよい。
【0047】
処理ガス精製装置7で得られた処理ガス及び分離装置2から得られるメタン含有ガスは、処理ガスホルダ8へ貯留される。処理ガスホルダ8に貯留された処理ガスは、例えば、都市ガス原料として使用される。或いは、処理ガスは、都市ガス導管へ注入されてもよいし、天然ガス車燃料として使用されてもよいし、その他種々の目的に利用可能である。
【0048】
制御手段30は、ガスホルダ54内に貯留されるバイオガスの分離装置2又はバイオメタネーションリアクタ1への供給を制御する。水電解装置6で水から生成されるグリーン水素は、再生可能エネルギーの余剰電力から得られるため、季節や時間帯によって価格が変化する場合がある。そのため、グリーン水素の価格が高い場合においては、グリーン水素を用いて、バイオメタネーションリアクタ1内でメタネーションを行うことが経済的に不利となる場合がある。
【0049】
制御手段30は、再生可能エネルギーの発電状況又はグリーン水素の価格に応じて、バイオガスのバイオメタネーションリアクタ1への供給量を少なくするか、或いは供給を停止させて、ガスホルダ54内に貯留されたバイオガスを優先的に分離装置2へ供給するように、バイオガスの供給量を制御する。即ち、再生可能エネルギーで得られる余剰電力が設定値よりも小さい場合、或いは、グリーン水素の価格が設定値よりも高い場合、或いはグリーン水素の生成量が設定値よりも少ない場合には、制御手段30が、バイオガスを分離装置2へ送ってバイオガス中のメタン濃度を高濃度化し、高濃度化したメタン含有ガスから所定のメタン濃度の処理ガスを生成させる。
【0050】
一方、再生可能エネルギーで得られる余剰電力が設定値以上である場合、或いは、グリーン水素の価格が設定値以下である場合、或いはグリーン水素の生成量が設定値以上の場合には、制御手段30が、バイオガスをバイオメタネーションリアクタ1へ送ってバイオガス中のメタン濃度を高濃度化し、高濃度化したメタン含有ガスから所定のメタン濃度の処理ガスを生成させる。これにより、バイオガスから再生化エネルギーの電力で得られたグリーン水素を用いてエネルギーとして利用可能なメタンを安定的に得ることができる。
【0051】
制御手段30は、目的に応じて、バイオメタネーションリアクタ1及び分離装置2の両方に対し、再生可能エネルギーの発電状況又はグリーン水素の価格に応じて、所定の供給量比を定めて同時にバイオガスを供給してもよいし、バイオメタネーションリアクタ1又は分離装置2の一方のみにバイオガスを供給してもよい。
【0052】
例えば、再生可能エネルギーの発電状況やグリーン水素の価格に関わらず、処理ガス供給量を増加させる必要がある場合、或いは、嫌気性消化槽5でのバイオガス発生量が増加した場合等には、制御手段30が、バイオメタネーションリアクタ1及び分離装置2の両方に対して所定の流量比で同時にバイオガスを供給することで、システム全体としてのバイオガスの処理量を増大させてより効率のよい処理が行える。その際のバイオガスの供給量比は、再生可能エネルギーの発電状況やグリーン水素の価格とともに、バイオメタネーションリアクタ1の処理性能と分離装置2の処理性能を加味して決定することが好ましい。
【0053】
また、制御手段30は、嫌気性消化槽5からのバイオガスの性状に基づいて、ガスホルダ54から供給するバイオガスをバイオメタネーションリアクタ1に供給するか、分離装置2に供給するかを決定してもよい。
【0054】
図2に示すように、水電解装置6の後段に水素貯蔵器61が更に接続されていてもよい。水素貯蔵器61は、水電解装置6によって生成されたグリーン水素を貯留しておくための容器である。例えば、再生可能エネルギーで得られる余剰電力量が多く、グリーン水素が安価に生成できる時間帯に水電解装置6によりグリーン水素を多量に生成させておき、水素貯蔵器61へ貯蔵し、バイオメタネーションリアクタ1へ供給することで、バイオメタネーションリアクタ1を経済的に利用できる。また、水電解装置6で得られるグリーン水素の発生量が少ない場合でも、水素貯蔵器61内にグリーン水素を貯蔵しておくことで、バイオメタネーションリアクタ1へ一定流量の水素を常時安定して供給できる。
【0055】
図1及び図2に示すメタンの製造装置を用いて第1の実施の形態に係るメタンの製造方法が実施できる。即ち、第1の実施の形態に係るメタンの製造方法は、有機性廃棄物を嫌気性消化槽5内で嫌気性処理し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる嫌気性処理工程と、バイオガス中の二酸化炭素を分離装置2内でバイオガスから分離し、バイオガス中のメタン濃度を高める分離工程と、バイオガス中の二酸化炭素をバイオメタネーションリアクタ1内に導入し、微生物の存在下で水素と反応させ、二酸化炭素をメタンに変換し、バイオガス中のメタン濃度を高めるバイオメタネーション工程とを備え、嫌気性消化槽5の後段に分離装置2とバイオメタネーションリアクタ1とを並列に接続し、分離工程又はバイオメタネーション工程の少なくともいずれかによって、バイオガスからメタンを主成分とする処理ガスを製造することを含む。
【0056】
第1の実施の形態に係るメタンの製造装置及びメタンの製造方法によれば、嫌気性消化槽5の後段に、分離装置2とバイオメタネーションリアクタ1とが並列に接続されているため、再生可能エネルギーの電力の供給量・価格に応じて、複数のメタン製造方法を使い分けることができる。再生可能エネルギーの電力の供給量が多い、または価格が低い場合は、水電解装置6によってグリーン水素を製造し、このグリーン水素とバイオガス中の二酸化炭素からバイオメタネーションによってメタンを主成分とする処理ガスを製造する。一方、再生可能エネルギーの電力の供給量が少ない、または再生可能エネルギーの電力価格が高い場合は、バイオガス中の二酸化炭素を分離して、メタンを主成分とする処理ガスを製造できる。これにより、バイオガスからエネルギーとして利用可能なメタンを安定的に得ることが可能となる。
【0057】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るメタンの製造装置は、図3に示すように、バイオメタネーションリアクタ1に接続され、バイオメタネーションリアクタ1で得られるメタン含有ガス中に残留する水素及び二酸化炭素からメタンを生成させる仕上げメタネーションリアクタ4を更に備える点が図1に示すメタンの製造装置と異なる。
【0058】
仕上げメタネーションリアクタ4は、メタン含有ガス中のメタン濃度を更に高める処理を行うことが可能な装置であれば特に限定されない。仕上げメタネーションリアクタ4では、バイオメタネーションリアクタ1と同様に、メタン生成菌等の微生物の存在下で二酸化炭素をメタンに変換する処理を行ってもよいし、触媒法を用いた化学的メタネーションを行ってもよい。
【0059】
仕上げメタネーションリアクタ4では、メタン含有ガス中に残存する二酸化炭素をメタンに変換する程度の処理を行えばよいため、バイオメタネーションリアクタ1よりも、滞留時間を短くでき、簡易な処理で済む。そのため、仕上げメタネーションリアクタ4としては、バイオメタネーションリアクタ1よりも簡易な処理を行うための小型のリアクタ等が利用できる。
【0060】
季節や供給する原料ガスの状況等により、バイオメタネーションリアクタ1内の微生物の状態によっては、メタネーションが十分に行われず、メタン含有ガス中のメタン濃度が向上しない場合もある。第2の実施の形態に係るメタンの製造装置によれば、バイオメタネーションリアクタ1内の処理効率が低下した場合においても、仕上げメタネーションリアクタ4において、バイオガスから高濃度のメタンを含むメタン含有ガスを生成させることができるため、バイオメタネーションリアクタ1内における微生物の活性状態に関わらず、メタン含有ガス中のメタン濃度が常に一定以上となるように、メタン濃度を安定的に供給できる。これにより、エネルギーとして利用可能な一定濃度以上のメタンを継続的且つ安定的に得ることが可能となる。
【0061】
仕上げメタネーションリアクタ4には、分離装置2で分離される二酸化炭素を仕上げメタネーションリアクタ4に循環させる循環手段3が接続されていてもよい。これにより、仕上げメタネーションリアクタ4内で生成されるメタンの生成量を増大できる。仕上げメタネーションリアクタ4で得られるメタン含有ガスのメタン濃度、残留水素や残留二酸化炭素等のメタン以外の不純物の濃度を計測するための計測器41が、仕上げメタネーションリアクタ4の出口ガスの配管等に接続されていてもよい。第2の実施の形態に係るメタンの製造装置が、計測器41を備えることにより、計測器41の測定結果に応じて、バイオメタネーションリアクタ1や仕上げメタネーションリアクタ4の負荷を調整することができる。その結果、常に一定濃度以上のメタン濃度を有する処理ガスを継続的に得ることができる。
【0062】
第2の実施の形態に係るメタンの製造方法は、図3に示すメタンの製造装置を用いて実施できる。即ち、第2の実施の形態に係るメタンの製造方法は、バイオメタネーション工程で得られるメタン含有ガス中に残留する水素及び二酸化炭素からメタンを生成させる仕上げメタネーション工程を更に有する。
【0063】
メタンを都市ガス導管に直接注入する場合、メタンの下限濃度、水素の上限濃度などの要求水準が厳しくメタンを高濃度化するとともに水素を所定値以上に低減させておく必要がある。第2の実施の形態に係るメタンの製造装置及びメタンの製造方法によれば、仕上げメタネーションリアクタ4において、バイオメタネーションリアクタ1の含有ガスに残留する二酸化炭素からメタンを合成できるため、得られるメタン含有ガス中のメタン濃度を高濃度に調整しやすくできる。また、仕上げメタネーション工程により、バイオメタネーションリアクタ1の含有ガスに残留する水素も処理できるため、濃度要求基準が厳しい都市ガス等にも供給できる。また、最初のバイオメタネーション工程が高温で実施される場合、処理ガスの冷却機能を担うことができる。
【0064】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係るメタンの製造装置は、図4に示すように、バイオメタネーションリアクタ1で得られるメタン含有ガスを分離装置2へ供給する供給手段20を更に備える。バイオメタネーションリアクタ1で得られるメタン含有ガスは、バイオメタネーションリアクタ1の後段に仕上げメタネーションリアクタ4と並列に接続された脱硫装置23に供給される。脱硫装置23は、メタン含有ガス中の硫化水素等の硫黄系ガス成分を除去する。硫黄系ガス成分が除去されたメタン含有ガスは、脱硫装置23に接続されたガス精製装置27を介して分離装置2に供給され、分離装置2内でメタン含有ガス中に残存する二酸化炭素及び水素が分離される。二酸化炭素及び水素が除去された後のメタン含有ガスは処理ガスホルダ8内に貯留される。
【0065】
第3の実施の形態に係るメタンの製造方法は、図4に示すメタンの製造装置を用いて実施できる。即ち、第3の実施の形態に係るメタンの製造方法は、バイオメタネーション工程で得られるメタン含有ガスを分離装置2へ供給し、メタン含有ガス中の二酸化炭素を分離する仕上げ分離工程を更に有する。
【0066】
上記の通り、バイオガスの性状やバイオメタネーション工程の運転条件によって、バイオメタネーション工程で得られるメタン含有ガスの性状は変動する。この変動が小幅であれば、図3の仕上げメタネーション工程で対応できる。しかしながら、仕上げメタネーション工程では対応できないほど、メタン含有ガスの性状が大幅に変動することがある。
【0067】
第3の実施の形態に係るメタンの製造装置及びメタンの製造方法によれば、バイオメタネーションリアクタ1で得られたメタン含有ガス中の硫黄化合物等を脱硫装置23で除去した後、分離装置2内で二酸化炭素及び水素等のバイオガス中のメタン以外の不純物を取り除く処理を行う。これにより、処理ガスホルダ8に収容される処理ガス中のメタン濃度を常時高濃度に維持できる。
【0068】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係るメタンの製造装置は、図5に示すように、ガスホルダ54内に収容されたバイオガスの、バイオメタネーションリアクタ1又は分離装置2へのバイオガスの供給を切り替える切替手段15と、バイオメタネーションリアクタ1で得られたメタン含有ガスの仕上げメタネーションリアクタ4又は分離装置2へのバイオガスの供給を切り替える切替手段25を備える。
【0069】
切替手段15、25としては、機械式切替弁、電磁式切替弁、空気式切替弁等の種々の切替装置を用いることができる。切替手段15、25は制御手段30に接続されている。制御手段30は、嫌気性消化槽5で発生するバイオガスのメタン濃度、二酸化炭素濃度、不純物濃度等を含むバイオガスの性状、ガスホルダ内のメタンの貯留量、再生可能エネルギーの電気代又は水電解装置6で得られるグリーン水素の価格、バイオメタネーションリアクタ1で得られるメタン含有ガスのメタン濃度、残存二酸化炭素の濃度、残存水素濃度等に基づいて、切替手段15、25による供給流路の切替を制御する。
【0070】
第4の実施の形態に係るメタンの製造装置によれば、嫌気性消化槽5で発生するバイオガスの性状又はバイオメタネーションリアクタ1で得られるメタン含有ガスの性状に基づいて、処理ガス中のメタン濃度を高濃度化するために好適な処理を、切替手段15、25により切り替えることができる。これにより、処理ガス中のメタン濃度を目的に応じて高濃度化することが可能で、かつ、エネルギーとして利用可能なメタンを安定的且つ効率的に得ることができる。制御手段30は、嫌気性消化槽5からのバイオガスの性状及びバイオメタネーションリアクタ1からのメタン含有ガスの性状に基づいて、バイオガスの供給ルートを切替制御できるため、嫌気性消化槽5、バイオメタネーションリアクタ1のいずれかにおいて処理の不具合が生じた場合でも処理を効率化して高い濃度のメタンを得ることができる。
【0071】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【0072】
例えば、上述の実施の形態では、制御手段30が、再生可能エネルギーの発電状況又はグリーン水素の価格に応じて、バイオガスの供給量を制御する例を説明したが、制御手段30はシステム内の種々の状況に応じて、バイオガスの供給量を制御してもよい。例えば、制御手段30は、バイオメタネーションリアクタ1及びその周辺装置のメンテナンス期間中や故障中には、分離装置2側にバイオガスを供給するようにしてもよい。逆に、分離装置2及びその周辺装置のメンテナンス期間中や故障中においては、制御手段30が、バイオメタネーションリアクタ1側にバイオガスを供給するようにしてもよい。
【0073】
また、図1図5の例では、分離装置2で得られるメタン含有ガスを処理ガスホルダ8へ供給する例を示しているが、メタン含有ガス中に含まれる不純物濃度や求められるメタン含有ガスのメタン濃度に応じて、分離装置2から処理ガス精製装置7を経由させて処理ガス精製装置7で更に精製処理を行い、その後に処理ガスホルダ8へ供給することもまた可能である。
【0074】
更に、本実施形態では、バイオメタネーションリアクタ1と仕上げメタネーションリアクタ4とを備える図3に示すシステムにおいては、大部分のメタネーション反応は、バイオメタネーションリアクタ1で行うことを想定している。そのため、バイオメタネーションリアクタ1の内部液中のメタン生成菌の濃度を仕上げメタネーションリアクタ4の内部液中のメタン生成菌の濃度よりも高く(例えば、内部液のTS濃度として10~50g/L)維持することで、より効率のよい処理が行える。一方、仕上げメタネーションリアクタ4の内部液のメタン生成菌の濃度は、バイオメタネーションリアクタ1の内部液のメタン生成菌の濃度よりも低く維持する(例えば、内部液のTS濃度として5~20g/L)ことが好ましい。これによりメタン生成菌の濃度を各リアクタで好適な範囲に調整して効率のよい処理が行える。
【0075】
更に、図3に示すように、バイオメタネーションリアクタ1と仕上げメタネーションリアクタ4とを設けるシステムでは、バイオメタネーションリアクタ1を仕上げメタネーションリアクタ4よりも高温(例えば、50~80℃)に維持し、仕上げメタネーションリアクタ4を低温(例えば、30~50℃)に維持することが好ましい。これにより、処理ガスの冷却機能も兼ねることもできる。
【0076】
更に、制御手段30は、図3~5に示す計測器11、21、41の計測結果に基づいて、バイオガス及び水素の供給量、切替手段15、25を用いた供給流路の切替を行うことで、バイオガスから高濃度のメタンを効率的かつ安定的に得ることができる。例えば、計測器11は、バイオメタネーションリアクタ1から排出されるメタン含有ガス中のメタン、残留水素、及び残留二酸化炭素の少なくともいずれかの濃度を測定し、測定結果を制御手段30へ出力する。制御手段30は、計測器11の測定結果の出力に基づいて、バイオメタネーションリアクタ1に供給するバイオガスや水素の量を調整する。
【0077】
計測器21は、分離装置2で不純物が除去されたメタン含有ガス中のメタン、残留水素、及び残留二酸化炭素の少なくともいずれかの濃度を測定し、測定結果を制御手段30へ出力する。制御手段30は、計測器21の測定結果の出力に基づいて、分離装置2に供給するバイオガスの供給量又は分離装置2の運転条件を調整する。例えば、分離装置2が複数台又は複数種配置される場合には、計測器21の測定結果に応じて処置に適した装置及び処理条件が選択されるように、分離装置2の運転条件を調整することができる。
【0078】
計測器41は、仕上げメタネーションリアクタ4から排出されるメタン含有ガス中のメタン、残留水素、及び残留二酸化炭素の少なくともいずれかの濃度を測定し、測定結果を制御手段30へ出力する。制御手段30は、計測器11の測定結果の出力に基づいて、バイオメタネーションリアクタ1に供給するバイオガスや水素の量を調整する。図5に示す制御手段30は、計測器41の計測結果に応じて、切替手段15、25を制御し、分離装置2へのバイオガス又はメタン含有ガスの供給量を制御する。これにより、再生可能エネルギー電気を用いて得られた水素とバイオガスを有効に利用しながら、エネルギーとして利用可能なメタンを安定的に得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1…バイオメタネーションリアクタ
2…分離装置
3…循環手段
4…仕上げメタネーションリアクタ
5…嫌気性消化槽
6…水電解装置
7…処理ガス精製装置
8…処理ガスホルダ
11、21、41…計測器
15…切替手段
20…供給手段
23…脱硫装置
25…切替手段
27…ガス精製装置
30…制御手段
53…脱硫装置
54…ガスホルダ
61…水素貯蔵器
図1
図2
図3
図4
図5