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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086405
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】電源回路及び駆動回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201514
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 康介
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB02
5H730BB57
5H730CC21
5H730DD04
5H730FD01
5H730FF01
5H730FG01
5H730XX03
5H730XX13
5H730XX23
5H730XX33
(57)【要約】
【課題】出力電圧生成回路によって入力電圧よりも高く生成される出力電圧が閾値電圧よりも上昇すると、出力信号を適切にアサート可能な電源回路の提供。
【解決手段】入力電圧よりも高い出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、前記入力電圧よりも低い閾値電圧を生成する閾値電圧生成回路と、前記出力電圧が前記閾値電圧よりも上昇すると、出力信号をアサートする比較回路と、前記入力電圧が基準電圧よりも上昇すると、前記閾値電圧を低下させる閾値電圧変更回路と、を備える、電源回路。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧よりも高い出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、
前記入力電圧よりも低い閾値電圧を生成する閾値電圧生成回路と、
前記出力電圧が前記閾値電圧よりも上昇すると、出力信号をアサートする比較回路と、
前記入力電圧が基準電圧よりも上昇すると、前記閾値電圧を低下させる閾値電圧変更回路と、を備える、電源回路。
【請求項2】
前記閾値電圧生成回路は、前記入力電圧を分圧することで前記閾値電圧を生成し、
前記閾値電圧変更回路は、前記入力電圧の分圧比を変更することで前記閾値電圧を低下させる、請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記閾値電圧生成回路は、第1入力ノードと第2入力ノードとの間の電位差である前記入力電圧を、前記第1入力ノードと生成ノードとの間の第1抵抗および前記第2入力ノードと前記生成ノードとの間の第2抵抗を用いて分圧することで、前記閾値電圧を前記生成ノードから出力し、
前記閾値電圧変更回路は、前記第2抵抗の抵抗値を変更することで前記分圧比を変更する、請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記入力電圧よりも低い定電圧を生成するレギュレータを備え、
前記出力電圧生成回路は、前記定電圧に前記入力電圧を加えることで前記出力電圧を生成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電源回路。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電源回路と、
前記出力電圧を使用する駆動源と、
前記出力信号がアサートされると、前記駆動源の動作を許可するロジック回路と、を備える、駆動回路。
【請求項6】
請求項4に記載の電源回路と、
前記出力電圧を使用する第1駆動源と、
前記定電圧を使用する第2駆動源と、
前記出力信号がアサートされると、前記第1駆動源の動作を許可するロジック回路と、を備える、駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源回路及び駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力電圧端子に印加された直流の入力電圧を昇圧し、得られた昇圧電圧を出力電圧端子に出力するチャージポンプ回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャージポンプ回路によって生成される昇圧電圧の検出電圧が閾値電圧よりも上昇すると、出力信号をアサートする構成を採用することで、昇圧電圧がある程度上昇したことを検知することができる。しかしながら、チャージポンプ回路は直流の入力電圧よりも高い昇圧電圧を生成するので、直流の入力電圧の変動に伴って昇圧電圧が変動することがある。このため、昇圧電圧の検出電圧を一つの閾値電圧と比較する構成では、昇圧電圧がある程度上昇しても、出力信号が適切にアサートされないおそれがある。
【0005】
本開示は、出力電圧生成回路によって入力電圧よりも高く生成される出力電圧が閾値電圧よりも上昇すると、出力信号を適切にアサート可能な電源回路及び駆動回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様として、
入力電圧よりも高い出力電圧を生成する出力電圧生成回路と、
前記入力電圧よりも低い閾値電圧を生成する閾値電圧生成回路と、
前記出力電圧が前記閾値電圧よりも上昇すると、出力信号をアサートする比較回路と、
前記入力電圧が基準電圧よりも上昇すると、前記閾値電圧を低下させる閾値電圧変更回路と、を備える、電源回路が提供される。
【0007】
本開示の第2態様として、
前記電源回路と、
前記出力電圧を使用する駆動源と、
前記出力信号がアサートされると、前記駆動源の動作を許可するロジック回路と、を備える、駆動回路が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、出力電圧生成回路によって入力電圧よりも高く生成される出力電圧が閾値電圧よりも上昇すると、出力信号を適切にアサート可能な電源回路及び駆動回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の電源回路を備える駆動回路の第1構成例を示す図である。
図2】一実施形態の電源回路における電圧監視回路の一構成例を示す図である。
図3】電圧監視回路における各数値の具体例を示す表である。
図4】直流の入力電圧(直流電圧VDD)と、チャージポンプにより生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)の昇圧目標電圧値VCPHgを100としたときの、出力信号RDYがアサートになる時の電源電圧VCPHの割合との関係を示す一比較例である。
図5】直流の入力電圧(直流電圧VDD)と、チャージポンプにより生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)の昇圧目標電圧値VCPHgを100としたときの、出力信号RDYがアサートになる時の電源電圧VCPHの割合との関係を示す一実施例である。
図6】一実施形態の電源回路の一構成例を示す図である。
図7】一実施形態の電源回路におけるチャージポンプの一構成例を示す図である。
図8】チャージポンプの制御タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図9】一実施形態の駆動回路を備える電力変換装置の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に従って説明する。
【0011】
図1は、一実施形態の電源回路を備える駆動回路の第1構成例を示す図である。駆動回路100は、電源回路400によって生成される電源電圧VCPHを用いて動作する駆動源10によって駆動対象300を駆動する。駆動回路100は、例えは、集積回路によって形成される。駆動回路100は、電源回路400、駆動源10及びロジック回路31を備える。
【0012】
電源回路400は、直流の入力電圧(直流電圧VDD)を用いて電源電圧VCPHを生成する。電源回路400は、チャージポンプ90及び電圧監視回路23を備える。
【0013】
チャージポンプ90は、直流の入力電圧(直流電圧VDD)よりも高い昇圧電圧(電源電圧VCPH)を生成する回路である。チャージポンプ90は、入力される直流電圧VDDを昇圧し、得られた昇圧電圧である電源電圧VCPHを出力する。
【0014】
電圧監視回路23は、チャージポンプ90によって直流電圧VDDよりも高く生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)を監視する。電圧監視回路23は、電源電圧VCPHの検出電圧が後述の閾値電圧Vthよりも上昇すると、出力信号RDYをアサートする構成を有する。電圧監視回路23は、出力信号RDYをアサートすることで、チャージポンプ90の昇圧動作により生成された電源電圧VCPHが、閾値電圧Vthに対応する電圧よりも超えたことをロジック回路31に通知できる。出力信号RDYは、電源電圧VCPHが安定した電圧まで上昇したことを知らせる準備信号として使用されてもよい。
【0015】
ロジック回路31は、出力信号RDYがアサートされると、電源電圧VCPHを使用する駆動源10の動作の許否を表すイネーブル信号DRENをアサートする。駆動源10は、イネーブル信号DRENがアサートされると、電源電圧VCPHを使用して駆動対象300の駆動を開始する。このように、出力信号RDYがアサートされることで、駆動源10は、チャージポンプ90の昇圧動作により生成された電源電圧VCPHが十分に上昇していない状態で駆動対象300を駆動することを防止できる。
【0016】
次に、電圧監視回路23の構成例について説明する。
【0017】
図2は、電圧監視回路の一構成例を示す図である。電圧監視回路23は、上述のチャージポンプ90によって生成される電源電圧VCPHの検出電圧VCPHdが閾値電圧Vthよりも上昇すると、出力信号RDYをアサートする。電圧監視回路23は、閾値電圧生成回路24、比較回路25及び閾値電圧変更回路26を備える。
【0018】
閾値電圧生成回路24は、直流の入力電圧(直流電圧VDD)よりも低い閾値電圧Vthを生成する。閾値電圧Vthは、直流の入力電圧よりも低い閾値電圧の一例である。閾値電圧生成回路24は、この例では、直流電圧VDDを分圧するための抵抗R3,R4,R5を含む。閾値電圧生成回路24は、第1入力ノード24aと第2入力ノード24bとの間の電位差である直流電圧VDDを抵抗R3,R4,R5を用いて分圧することで、閾値電圧Vthを生成ノード24cから出力する。第1入力ノード24aは、直流電圧VDDの電源入力端子に接続され、第2入力ノード24bは、アナロググランド端子AGNDに接続され、生成ノード24cは、比較器25aの反転入力端子に接続される。
【0019】
閾値電圧生成回路24は、第1入力ノード24aと生成ノード24cとの間に接続される第1抵抗として抵抗R3を有し、第2入力ノード24bと生成ノード24cとの間に接続される第2抵抗として抵抗R4,R5を有する。抵抗R4と抵抗R5は、接続ノード24dで接続される。
【0020】
比較回路25は、電源電圧VCPHの検出電圧VCPHdが閾値電圧Vthよりも上昇すると、出力信号RDYをアサートする。この例では、比較回路25は、ハイアクティブの出力信号RDYをアサートすることで、出力信号RDYのレベルをローレベルからハイレベルに切り替える。
【0021】
比較回路25は、この例では、チャージポンプ90により生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)を抵抗R6,R7により検出する昇圧電圧検出回路25bと、電源電圧VCPHの検出電圧VCPHdを閾値電圧Vth1と比較する比較器25aと、を有する。
【0022】
昇圧電圧検出回路25bは、電源電圧VCPHを抵抗R6,R7により検出し、電源電圧VCPHを抵抗R6,R7により分圧することで、検出電圧VCPHdを生成する。
【0023】
比較器25aは、検出電圧VCPHdを閾値電圧Vthと比較し、その比較結果を表す出力信号RDYを出力する。比較器25aは、検出電圧VCPHdが閾値電圧Vthよりも高い場合、出力信号RDYをアサートし、出力信号RDYのレベルをハイレベルとする。一方、比較器25aは、検出電圧VCPHdが閾値電圧Vthよりも低い場合、出力信号RDYをネゲートし、出力信号RDYのレベルをローレベルとする。比較器25aは、直流電圧VDDよりも低い電源電圧V5で動作する。
【0024】
閾値電圧変更回路26は、直流電圧VDDの検出電圧VDDdが基準電圧VREFよりも上昇すると、閾値電圧Vthを低下させる。この例では、閾値電圧変更回路26は、閾値電圧生成回路24によって直流電圧VDDが分圧されるときの直流電圧VDDの分圧比を変更することで、閾値電圧Vthを低下させる。
【0025】
閾値電圧変更回路26は、この例では、直流の入力電圧(直流電圧VDD)を抵抗R1,R2により検出する入力電圧検出回路26cと、直流電圧VDDの検出電圧VDDdを基準電圧VREFと比較する比較器26aと、閾値電圧Vthを低下させるスイッチ26bと、を有する。
【0026】
入力電圧検出回路26cは、直流の入力電圧(直流電圧VDD)を抵抗R1,R2により検出し、直流電圧VDDを抵抗R1,R2により分圧することで、検出電圧VDDdを生成する。
【0027】
比較器26aは、検出電圧VDDdを基準電圧VREFと比較し、その比較結果を表す出力信号Sを出力する。比較器26aは、検出電圧VDDdが基準電圧VREFよりも高い場合、出力信号Sをアサートし、出力信号Sのレベルをハイレベルとする。一方、比較器26aは、検出電圧VDDdが基準電圧VREFよりも低い場合、出力信号Sをネゲートし、出力信号Sのレベルをローレベルとする。比較器26aは、直流電圧VDDよりも低い電源電圧V5で動作する。
【0028】
スイッチ26bは、出力信号Sに応じてオン又はオフとなる半導体スイッチであり、この例では、Nチャネル型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。出力信号Sのアサートにより、スイッチ26bはオンし、出力信号Sのネゲートにより、スイッチ26bはオフする。スイッチ26bのオンにより、抵抗R5は短絡され、スイッチ26bのオフにより、抵抗R5の短絡は解除される。
【0029】
閾値電圧変更回路26は、検出電圧VDDdが基準電圧VREFよりも高い場合、スイッチ26bをオンすることで、第2抵抗の一部(この例では、抵抗R5)を短絡し、第1入力ノード24aと第2入力ノード24bとの間の抵抗値を小さくする。これにより、閾値電圧Vthが下がるように直流電圧VDDの分圧比は変更される。一方、閾値電圧変更回路26は、検出電圧VDDdが基準電圧VREFよりも低い場合、スイッチ26bをオフすることで、第2抵抗の一部(この例では、抵抗R5)の短絡を解除し、第1入力ノード24aと第2入力ノード24bとの間の抵抗値を大きくする。これにより、閾値電圧Vthが上がるように直流電圧VDDの分圧比は変更される。
【0030】
次に、電圧監視回路23における閾値電圧変更回路26の効果について、図3図4及び図5を参照して説明する。
【0031】
図3は、図2に示す電圧監視回路23における基準電圧VREFと各抵抗のティピカル値の具体例を示す表である。図4は、直流の入力電圧(直流電圧VDD)と、チャージポンプ90により生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)の昇圧目標電圧値VCPHgを100としたときの、出力信号RDYがアサートになる時の電源電圧VCPHの割合との関係を示す一比較例である。図4は、図2に示す電圧監視回路23のうち閾値電圧変更回路26を除いた構成で測定されたデータを示す。図5は、直流の入力電圧(直流電圧VDD)と、チャージポンプ90により生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)の昇圧目標電圧値VCPHgを100としたときの、出力信号RDYがアサートになる時の電源電圧VCPHの割合との関係を示す一実施例である。図5は、図2に示す電圧監視回路23の構成で測定されたデータを示す。
【0032】
図4及び図5の凡例において、「Typ」は、図3に示す数値の場合を示し、「Max」は、チャージポンプ90により生成される電源電圧VCPHの誤差によって昇圧率Bが最大になる場合を示し、「Min」は、チャージポンプ90により生成される電源電圧VCPHの誤差によって昇圧率Bが最小になる場合を示す。
【0033】
閾値電圧変更回路26が無い図4の"Max"によると、直流電圧VDDが例えば15[V]のとき、チャージポンプ90により生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)が、昇圧目標電圧値VCPHgの約91%まで上昇すると、出力信号RDYがアサートになる。しかしながら、直流電圧VDDが約20[V]よりも高い領域では、出力信号RDYがアサートになる時の電源電圧VCPHの割合は100%を超えている。これは、チャージポンプ90により生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)が昇圧目標電圧値VCPHgまで上昇しても、出力信号RDYがアサートされないことを意味する。
【0034】
このように、閾値電圧変更回路26が無い場合(閾値電圧Vthが直流電圧VDDの上昇によって低下しない場合)、チャージポンプ90により生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)が十分に上昇しても、出力信号RDYが適切にアサートされないことがある。
【0035】
これに対し、閾値電圧変更回路26が存在する図5によると、直流電圧VDDが20[V]よりも高い領域でも、出力信号RDYがアサートになる時の昇圧電圧(電源電圧VCPH)の割合は100%を超えない。この例では、閾値電圧変更回路26は、直流電圧VDDの検出電圧VDDdが基準電圧VREFよりも上昇すると(直流電圧VDDが約13[V]よりも上昇すると)、閾値電圧Vthを低下させる。これにより、直流電圧VDDが広く変動しても、チャージポンプ90により生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)が、昇圧目標電圧値VCPHgの約65%~95%の範囲内で、出力信号RDYがアサートされる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、チャージポンプ90によって生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)の検出電圧VCHPdが閾値電圧Vthよりも上昇すると、出力信号RDYを適切にアサートできる。出力信号RDYが適切にアサートされることで、例えば、駆動源10(図1参照)は、チャージポンプ90の昇圧動作により生成された電源電圧VCPHが十分に上昇していない状態で駆動対象300を駆動することを防止できる。
【0037】
次に、電源回路の他の構成例について説明する。
【0038】
図6は、一実施形態の電源回路の一構成例を示す図である。電源回路401は、チャージポンプ90及び電圧監視回路23の他に、レギュレータ95を備える。レギュレータ95は、直流の入力電圧(直流電圧VDD)よりも低いレギュレータ電圧VCPLを生成する回路である。レギュレータ95は、直流の入力電圧(直流電圧VDD)を所定の目標電圧まで降圧するレギュレート動作を行うことで、レギュレートされた定電圧(レギュレータ電圧VCPL)を生成する。レギュレータ95の回路構成は、公知の構成でよい。
【0039】
チャージポンプ90は、レギュレータ電圧VCPLに直流の入力電圧(直流電圧VDD)を加えることで、昇圧電圧(電源電圧VCPH)を生成する。これにより、昇圧電圧(電源電圧VCPH)は、レギュレータ電圧VCPLと直流電圧VDDの和に等しくなる(VCPH=VCPL+VDD)。
【0040】
例えば、電源回路401に入力される直流電圧VDDが6.5[V]~24[V]の範囲で変化し、レギュレータ電圧VCPLが5.0[V]~5.5[V]の範囲でレギュレートされると、チャージポンプ90により生成される電源電圧VCPHは、11.5[V]~29.5[V]の範囲で変化する。このように、電源回路401は、広い入力電圧範囲に対応可能である。
【0041】
図7は、一実施形態の電源回路におけるチャージポンプの一構成例を示す図である。チャージポンプ90は、レギュレータ95により生成されたレギュレータ電圧VCPLに、コンデンサCpに充電された直流電圧VDDを加えることで、昇圧電圧(電源電圧VCPH)をコンデンサCphに発生させる。
【0042】
図7において、チャージポンプ90は、複数のスイッチ91,92,93,94、コンデンサCp,Cph及びポンプ制御回路96を備える。
【0043】
スイッチ91とスイッチ92は、直流電圧VDDの電源ノードと電源電圧VCPHの電源ノードとの間に直列に接続されている。スイッチ91は、制御電圧HPINに応じてオン又はオフとなる半導体スイッチである。スイッチ92は、制御電圧HNINに応じてオン又はオフとなる半導体スイッチである。スイッチ93とスイッチ94は、レギュレータ電圧VCPLの電源ノードとパワーグランドPGNDとの間に直列に接続されている。スイッチ93は、制御電圧LPINに応じてオン又はオフとなる半導体スイッチである。スイッチ94は、制御電圧LNINに応じてオン又はオフとなる半導体スイッチである。この例では、スイッチ91,93は、Pチャネル型のMOSFETであり、スイッチ92,94は、Nチャネル型のMOSFETである。
【0044】
コンデンサCphは、スイッチ91とスイッチ92との直列回路の両端に接続されている。コンデンサCpは、スイッチ91とスイッチ92との間の接続ノードCP1と、スイッチ93とスイッチ94との間の接続ノードCP2との間に接続されている。
【0045】
ポンプ制御回路96は、ポンプイネーブル信号CPENがアサートされると、クロックCPCLKに同期して、図8に例示する制御タイミングに従って制御電圧HPIN,HNIN,LPIN,LNINを生成する。これにより、チャージポンプ90は、レギュレータ電圧VCPLに直流の入力電圧(直流電圧VDD)が重畳した昇圧電圧(電源電圧VCPH)を生成できる。
【0046】
図9は、一実施形態の駆動回路を備える電力変換回路の一構成例を示す図である。電力変換回路201は、直流電源から供給される直流電圧VDDを、モータM等の負荷301に供給する交流電圧に変換する。電力変換回路201は、ハイサイドのトランジスタM1、ローサイドのトランジスタM2、及びトランジスタM1,M2を駆動する駆動回路101を備える。
【0047】
電力変換回路201が例えばU,V,W相の三相の交流電力を生成するインバータの場合、トランジスタM1,M2及び駆動回路101をそれぞれ有する同一構成の3つのスイッチング回路を備える。図10は、電力変換回路201が備える複数のスイッチング回路(例えば、U,V,W相の3つのスイッチング回路)のうちの一つのスイッチング回路を示している。
【0048】
電力変換回路201は、直流を交流に変換するインバータに限られず、直流を直流に変換するコンバータでもよい。電力変換回路201は、電源回路として使用されてもよい。負荷301は、例えば、冷却用のファン等を回転させるモータであるが、負荷301の種類は、これに限られない。
【0049】
駆動回路101は、駆動回路101に外付けされたトランジスタM1,M2を駆動する。トランジスタM1,M2は、第1主電極、第2主電極及びゲート電極を有するゲート駆動型のスイッチング素子である。その具体例として、ドレイン、ソース及びゲートを有するNチャネル型の電界効果トランジスタ(FET)、コレクタ、エミッタ及びゲートを有する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などがある。FETの具体例として、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などがある。ドレイン又はコレクタは、第1主電極の一例である。ソース又はエミッタは、第2主電極の一例である。図9は、トランジスタM1,M2がNチャネル型のFETの場合を例示する。
【0050】
駆動回路101は、モータM等の負荷301を駆動するトランジスタM1,M2を駆動するプリドライバである。駆動回路101は、例えは、集積回路によって形成される。
【0051】
駆動回路101は、不図示のコントローラから供給される信号(クロックCLK、ハイサイド指令信号HIN及びローサイド指令信号LIN)に従って、トランジスタM1,M2を駆動することで、トランジスタM1,M2をスイッチング(オン又はオフ)させる。ハイサイド指令信号HIN及びローサイド指令信号LINは、クロックCLKと同期して変化する。ハイサイド指令信号HINは、ハイサイドのトランジスタM1のオンを指令するオン指令、及び、ハイサイドのトランジスタM1のオフを指令するオフ指令を含む。ローサイド指令信号LINは、ローサイドのトランジスタM2のオンを指令するオン指令、及び、ローサイドのトランジスタM2のオフを指令するオフ指令を含む。駆動回路101は、ハイサイド指令信号HIN及びローサイド指令信号LINに従って、トランジスタM1,M2をオフさせるデッドタイムを挟んでトランジスタM1,M2を交互にオンさせる。
【0052】
駆動回路101は、制御回路30、ハイサイドのソース電流源40H、ハイサイドのシンク電流源50H、ローサイドのソース電流源40L及びローサイドのシンク電流源50Lを備える。また、駆動回路101は、ハイサイドの駆動端子OUTH、中間端子OUTM、ローサイドの駆動端子OUTL及びグランド端子PGNDを備える。さらに、駆動回路101は、上述の電源回路401(図6)を備える。
【0053】
制御回路30は、トランジスタM1をオンさせるソース電流源40Hを制御し、且つ、トランジスタM1をオフさせるシンク電流源50Hを制御する。制御回路30は、トランジスタM2をオンさせるソース電流源40Lを制御し、且つ、トランジスタM2をオフさせるシンク電流源50Lを制御する。制御回路30は、ロジック回路31、ハイサイド制御回路32及びローサイド制御回路33を備える。
【0054】
ロジック回路31は、ハイサイド指令信号HIN及びローサイド指令信号LINに基づいて、ソース制御の駆動指令HHINとシンク制御の駆動指令HLINを生成する。ロジック回路31は、ハイサイド指令信号HIN及びローサイド指令信号LINに基づいて、ソース制御の駆動指令LHINとシンク制御の駆動指令LLINを生成する。ロジック回路31は、制御回路30又は駆動回路101の外部にあってもよい。駆動指令HHINは、ソース駆動指令の一例である。駆動指令HLINは、シンク駆動指令の一例である。
【0055】
ハイサイド制御回路32は、ソース制御の駆動指令HHINに従って、ハイサイドのソース電流源40Hにより生成されるソース電流を制御する。ハイサイド制御回路32は、シンク制御の駆動指令HLINに従って、ハイサイドのシンク電流源50Hにより生成されるシンク電流を制御する。ハイサイド制御回路32は、駆動指令HHIN及び駆動指令HLINに従って、電流源40H,50Hの出力トランジスタをオフさせるデッドタイムを挟んで電流源40H,50Hの出力トランジスタを交互にオンさせる。
【0056】
ローサイド制御回路33は、ソース制御の駆動指令LHINに従って、ローサイドのソース電流源40Lにより生成されるソース電流を制御する。ローサイド制御回路33は、シンク制御の駆動指令LLINに従って、ローサイドのシンク電流源50Lにより生成されるシンク電流を制御する。ローサイド制御回路33は、駆動指令LHIN及び駆動指令LLINに従って、電流源40L,50Lの出力トランジスタをオフさせるデッドタイムを挟んで電流源40L,50Lの出力トランジスタを交互にオンさせる。
【0057】
ソース電流源40Hは、Pチャネル型のMOSFETにより形成された出力トランジスタを含み、トランジスタM1のゲートに流し込むソース電流を生成する。ソース電流源40Hは、トランジスタM1のゲートに接続される駆動端子OUTHと、ハイサイドの電源電圧VCPHの電源ノードとの間に接続されている。
【0058】
電源電圧VCPHは、直流電圧VDDとローサイドの電源電圧(レギュレータ電圧VCPL)との和に等しい。電源電圧VCPHは、例えば、直流電圧VDDとレギュレータ電圧VCPLを用いて、電源回路401内の上述のチャージポンプ90により生成される。
【0059】
シンク電流源50Hは、Nチャネル型のMOSFETにより形成された出力トランジスタを含み、トランジスタM1のゲートから引き込むシンク電流を生成する。シンク電流源50Hは、トランジスタM1のゲートに接続される駆動端子OUTHと、負荷301に接続される中間端子OUTMとの間に接続されている。
【0060】
ソース電流源40Lは、Pチャネル型のMOSFETにより形成された出力トランジスタを含み、トランジスタM2のゲートに流し込むソース電流を生成する。ソース電流源40Lは、トランジスタM2のゲートに接続される駆動端子OUTLと、ローサイドの電源電圧(レギュレータ電圧VCPL)の電源ノードとの間に接続されている。
【0061】
シンク電流源50Lは、Nチャネル型のMOSFETにより形成された出力トランジスタを含み、トランジスタM2のゲートから引き込むシンク電流を生成する。シンク電流源50Lは、トランジスタM2のゲートに接続される駆動端子OUTLと、グランドに接続されるグランド端子PGNDとの間に接続されている。
【0062】
駆動回路101は、トランジスタM1,M2を定電流駆動方式で駆動する。駆動回路101は、ソース電流源40HのPMOSの出力トランジスタから駆動端子OUTHにソース電流を流し込むことで、トランジスタM1のゲートを充電し、トランジスタM1をオンさせる。駆動回路101は、シンク電流源50HのNMOSの出力トランジスタに駆動端子OUTHからシンク電流を引き込むことで、トランジスタM1のゲートを放電させ、トランジスタM1をオフさせる。同様に、駆動回路101は、ソース電流源40LのPMOSの出力トランジスタから駆動端子OUTLにソース電流を流し込むことで、トランジスタM2のゲートを充電し、トランジスタM2をオンさせる。駆動回路101は、シンク電流源50LのNMOSの出力トランジスタに駆動端子OUTLからシンク電流を引き込むことで、トランジスタM2のゲートを放電させ、トランジスタM2をオフさせる。
【0063】
駆動回路101は、電源回路401内のチャージポンプ90によって生成される昇圧電圧(電源電圧VCPH)を使用する第1駆動源11として、ハイサイドのソース電流源40Hを備える。駆動回路101は、電源回路401内のレギュレータ95によって生成されるレギュレータ電圧VCPLを使用する第2駆動源12として、ローサイドのソース電流源40Lを備える。チャージポンプ90は、駆動端子OUTHにソース電流を流し込むソース電流源40Hを動作させるための電源電圧として、電源電圧VCPHを生成する。
【0064】
ロジック回路31は、電源回路401内の電圧監視回路23によって生成される出力信号RDYがアサートされると、ハイサイドのソース電流源40H及びローサイドのソース電流源40Lの動作を許可する。これにより、ロジック回路31は、ハイサイド指令信号HIN及びローサイド指令信号LINに基づいて、ソース制御の駆動指令HHINとシンク制御の駆動指令HLINの生成を開始する。ロジック回路31は、ハイサイド指令信号HIN及びローサイド指令信号LINに基づいて、ソース制御の駆動指令LHINとシンク制御の駆動指令LLINの生成を開始する。このように、出力信号RDYがアサートされることで、第1駆動源11及び第2駆動源12は、チャージポンプ90の昇圧動作により生成された電源電圧VCPHが十分に上昇していない状態で駆動対象(トランジスタM1,M2及び負荷301)を駆動することを防止できる。なお、トランジスタM1,M2及び負荷301は、駆動対象300(図1)の一例であり、第1駆動源11は、駆動源10(図1)の一例である。
【0065】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、上記実施形態におけるチャージポンプ90は、入力電圧よりも高い出力電圧を生成する出力電圧生成回路の一例である。出力電圧生成回路は、図7に示すチャージポンプ90の回路構成に限られない。
【符号の説明】
【0067】
10 駆動源
11 第1駆動源
12 第2駆動源
23 電圧監視回路
24 閾値電圧生成回路
25 比較回路
26 閾値電圧変更回路
30 制御回路
31 ロジック回路
32 ハイサイド制御回路
33 ローサイド制御回路
40H,40L ソース電流源
50H,50L シンク電流源
90 チャージポンプ
91、92,93,94 スイッチ
95 レギュレータ
96 ポンプ制御回路
100,101 駆動回路
201 電力変換回路
300 駆動対象
301 負荷
400,401 電源回路
M1,M2 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9