(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086418
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】部品実装機および個片基板吸引制御方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H05K13/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201530
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝広
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353GG33
5E353GG43
5E353LL06
5E353NN12
5E353QQ05
(57)【要約】
【課題】搬送治具の装着箇所に装着された個片基板を吸引によって固定するにあたり、搬送治具の全ての装着箇所への個片基板の装着を不要とする。
【解決手段】複数の装着孔22のそれぞれにおける個片基板Bの有無を示す基板装着情報が取得されて(ステップS102)、この基板装着情報に基づき吸引部76による吸引が制御される。つまり、複数の吸引部76のうち、対応する装着孔22に個片基板Bがある吸引部76に吸引を実行させるとともに、対応する装着孔22に個片基板Bがない吸引部76に吸引を実行させない吸引制御が、基板装着情報に基づき実行される(ステップS103、S104)。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに個片基板を装着可能な複数の装着箇所を有する搬送治具を所定の搬入位置に搬入する治具搬入部と、
前記搬入位置の前記搬送治具の前記複数の装着箇所にそれぞれ対応する複数の吸引部を有し、前記吸引部が対応する前記装着箇所を吸引する個片基板吸引部と、
前記複数の装着箇所のそれぞれにおける前記個片基板の有無を示す基板装着情報を取得する情報取得部と、
前記複数の吸引部のうち、対応する前記装着箇所に前記個片基板がある前記吸引部に吸引を実行させるとともに、対応する前記装着箇所に前記個片基板がない前記吸引部に吸引を実行させない吸引制御を、前記情報取得部が取得した前記基板装着情報に基づき実行する吸引制御部と
を備える部品実装機。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記装着箇所における前記個片基板の有無を検出するセンサを前記複数の装着箇所のそれぞれに有し、前記センサが前記個片基板を検出した結果を前記基板装着情報として取得する請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記搬送治具のうち部品を実装する位置を示す基板データに基づき、前記複数の装着箇所それぞれでの前記個片基板の有無を確認した結果を前記基板装着情報として取得する請求項1に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記個片基板吸引部は、前記搬入位置に下側から対向する吸引テーブルと、吸引ポンプとを有し、
前記吸引部は、対応する前記装着箇所に向かって前記吸引テーブルの上面で開口する吸引口と、前記吸引口と前記吸引ポンプとの間に設けられたバルブとを有し、前記バルブを開くことで前記吸引口と前記吸引ポンプとを連通させて前記吸引ポンプにより前記吸引口を吸引する一方、前記バルブを閉じることで前記吸引口と前記吸引ポンプとを遮断して前記吸引ポンプによる前記吸引口の吸引を制限し、
前記吸引制御部は、前記複数の吸引部のうち、対応する前記装着箇所に前記個片基板がある前記吸引部の前記バルブを開く一方、対応する前記装着箇所に前記個片基板がない前記吸引部の前記バルブを閉じる請求項1ないし3のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項5】
それぞれに個片基板を装着可能な複数の装着箇所を有する搬送治具を所定の搬入位置に搬入する工程と、
前記搬入位置の前記搬送治具の前記複数の装着箇所にそれぞれ対応する複数の吸引部を有し、前記吸引部が対応する前記装着箇所を吸引する個片基板吸引部の前記複数の装着箇所のそれぞれにおける前記個片基板の有無を示す基板装着情報を取得する工程と、
前記複数の吸引部のうち、対応する前記装着箇所に前記個片基板がある前記吸引部に吸引を実行させるとともに、対応する前記装着箇所に前記個片基板がない前記吸引部に吸引を実行させない吸引制御を、前記基板装着情報に基づき実行する工程と
を備える個片基板吸引制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品実装機に搬入された基板を、当該基板への部品実装のために固定する技術に関し、特に複数の装着箇所を有する搬送治具の装着箇所に装着された個片基板を固定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、フレキシブル基板等のフィルム状の基板に対して部品実装を行うために、下側から基板に接触するバックアップ部材によって基板を吸引することで、基板を固定する部品実装機が開示されている。また、このような部品実装機では、個片基板が部品実装の対象となる場合がある。具体的には、複数の装着箇所を有する搬送治具が用意され、個片基板は搬送治具の装着箇所に装着されて当該搬送治具とともに部品実装機に搬入される。また、部品実装機では、複数の装着箇所を吸引する吸引機構が具備されており、複数の装着箇所のそれぞれに装着された個片基板が吸引機構によって吸引されることで、個片基板が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法では、搬送治具に設けられた複数の装着箇所のうちに、個片基板が装着されていない装着箇所があると、各装着箇所に十分な吸引力を発生させることができず、個片基板をしっかりと固定できない場合があった。そのため、搬送治具の全ての装着箇所に個片基板を装着する必要があるといった不便があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、それぞれに個片基板を装着可能な複数の装着箇所を有する搬送治具の装着箇所に装着された個片基板を吸引によって固定するにあたり、搬送治具の全ての装着箇所への個片基板の装着を不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る部品実装機は、それぞれに個片基板を装着可能な複数の装着箇所を有する搬送治具を所定の搬入位置に搬入する治具搬入部と、搬入位置の搬送治具の複数の装着箇所にそれぞれ対応する複数の吸引部を有し、吸引部が対応する装着箇所を吸引する個片基板吸引部と、複数の装着箇所のそれぞれにおける個片基板の有無を示す基板装着情報を取得する情報取得部と、複数の吸引部のうち、対応する装着箇所に個片基板がある吸引部に吸引を実行させるとともに、対応する装着箇所に個片基板がない吸引部に吸引を実行させない吸引制御を、情報取得部が取得した基板装着情報に基づき実行する吸引制御部とを備える。
【0007】
本発明に係る個片基板吸引制御方法は、それぞれに個片基板を装着可能な複数の装着箇所を有する搬送治具を所定の搬入位置に搬入する工程と、搬入位置の搬送治具の複数の装着箇所にそれぞれ対応する複数の吸引部を有し、吸引部が対応する装着箇所を吸引する個片基板吸引部の複数の装着箇所のそれぞれにおける個片基板の有無を示す基板装着情報を取得する工程と、複数の吸引部のうち、対応する装着箇所に個片基板がある吸引部に吸引を実行させるとともに、対応する装着箇所に個片基板がない吸引部に吸引を実行させない吸引制御を、基板装着情報に基づき実行する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(部品実装機および個片基板吸引制御方法)では、搬入位置に搬入された搬送治具の複数の装着箇所にそれぞれ対応して複数の吸引部が設けられ、各吸引部は対応する装着箇所を吸引する。この際、複数の装着箇所のそれぞれにおける個片基板の有無を示す基板装着情報が取得されて、この基板装着情報に基づき吸引部による吸引が制御される。つまり、複数の吸引部のうち、対応する装着箇所に個片基板がある吸引部に吸引を実行させるとともに、対応する装着箇所に個片基板がない吸引部に吸引を実行させない吸引制御が、基板装着情報に基づき実行される。このように、複数の装着箇所のうち、個片基板がある装着箇所に対して選択的に吸引が実行される。したがって、個片基板がない装着箇所を吸引することで、個片基板がある装着箇所に対する吸引力が不足するのが防止される。その結果、それぞれに個片基板を装着可能な複数の装着箇所を有する搬送治具の装着箇所に装着された個片基板を吸引によって固定するにあたり、搬送治具の全ての装着箇所への個片基板の装着が不要となっている。
【0009】
また、情報取得部は、装着箇所における個片基板の有無を検出するセンサを複数の装着箇所のそれぞれに有し、センサが個片基板を検出した結果を基板装着情報として取得するように、部品実装機を構成してもよい。かかる構成では、複数の装着箇所のそれぞれに対して設けられたセンサによって各装着箇所での個片基板の有無を検出した結果に基づき、基板装着情報を的確に取得することができる。
【0010】
また、情報取得部は、搬送治具のうち部品を実装する位置を示す基板データに基づき、複数の装着箇所それぞれでの個片基板の有無を確認した結果を基板装着情報として取得するように、部品実装機を構成してもよい。かかる構成では、複数の装着箇所それぞれでの個片基板の有無を基板データに基づき確認することで基板装着情報を取得できるため、個片基板を検出するセンサが不要となる。
【0011】
また、個片基板吸引部は、搬入位置に下側から対向する吸引テーブルと、吸引ポンプとを有し、吸引部は、対応する装着箇所に向かって吸引テーブルの上面で開口する吸引口と、吸引口と吸引ポンプとの間に設けられたバルブとを有し、バルブを開くことで吸引口と吸引ポンプとを連通させて吸引ポンプにより吸引口を吸引する一方、バルブを閉じることで吸引口と吸引ポンプとを遮断して吸引ポンプによる吸引口の吸引を制限し、吸引制御部は、複数の吸引部のうち、対応する装着箇所に個片基板がある吸引部のバルブを開く一方、対応する装着箇所に個片基板がない吸引部のバルブを閉じるように、部品実装機を構成してもよい。かかる構成では、複数の吸引部のそれぞれに設けられたバルブの開閉によって、複数の装着箇所のうち、個片基板がある装着箇所に対して選択的に吸引を実行することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、それぞれに個片基板を装着可能な複数の装着箇所を有する搬送治具の装着箇所に装着された個片基板を吸引によって固定するにあたり、搬送治具の全ての装着箇所への個片基板の装着が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1の部品実装機に搬入される搬送治具と部品実装機の吸着バックアップとの関係を模式的に示す斜視図。
【
図3】吸着バックアップを昇降させる昇降機構の構成および動作を模式的に示す図。
【
図4】上昇位置に位置する吸着バックアップと搬送治具との関係を模式的に示す斜視図。
【
図5】吸着バックアップの吸引口を吸引する吸引機構の構成を模式的に示す図。
【
図6】
図1の部品実装機が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図7】部品実装機で実行される基板固定の一例を示すフローチャート。
【
図8】部品実装機で実行される基板固定の変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は部品実装機を模式的に示す平面図であり、
図2は
図1の部品実装機に搬入される搬送治具と部品実装機の吸着バックアップとの関係を模式的に示す斜視図である。
図1、
図2および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示す。
【0015】
図2に示すように、搬送治具2は、治具プレート21と、治具プレート21をZ方向に貫通する複数の装着孔22とを有する。治具プレート21は、Z方向からの平面視においてX方向に平行な辺およびY方向に平行な辺で規定される矩形を有する。これら複数の装着孔22は、治具プレート21においてX方向およびY方向にマトリックス状に配列されている。ただし、治具プレート21の形状や、装着孔22の配列態様は
図2の例に限られない。装着孔22に対しては、個片基板Bを着脱可能に装着することができる。つまり、装着孔22は、個片基板Bに対応した形状を有し、装着孔22に個片基板Bを上側から嵌め込むことができる。装着孔22に嵌め込まれた個片基板Bは、装着孔22の内壁に係止することで、装着孔22に装着される。例えば、装着孔22の内壁に設けられた突起によって、装着孔22の内壁に個片基板Bを係止させることができる。
【0016】
一方、
図1に示すように、部品実装機4では、搬送治具2を所定の治具搬入位置Ljに搬入する一対の搬送コンベア41が具備されている。これら搬送コンベア41は、Y方向に平行にそれぞれ延設されるとともに、X方向において搬送治具2の幅に応じた間隔を空けて配置されており、X方向における搬送治具2の両端を下側から支持しつつ、搬送治具2をY方向(搬送方向)に搬送する。これら搬送コンベア41は、治具搬入位置Ljに搬入した搬送治具2を水平に保持する。
【0017】
また、部品実装機4では、X方向に平行な一対のX軸レール421と、X方向に平行なX軸ボールネジ422と、X軸ボールネジ422を回転駆動するX軸モータ423(サーボモータ)とが設けられ、Y方向に平行なY軸レール424が一対のX軸レール421にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ422のナットに固定されている。Y軸レール424には、Y方向に平行なY軸ボールネジ425と、Y軸ボールネジ425を回転駆動するY軸モータ426(サーボモータ)とが取り付けられており、ヘッドユニット43がY軸レール424にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ425のナットに固定されている。したがって、X軸モータ423によりX軸ボールネジ422を回転させてヘッドユニット43をX方向に移動させ、Y軸モータ426によりY軸ボールネジ425を回転させてヘッドユニット43をY方向に移動させることができる。
【0018】
ヘッドユニット43は、いわゆるロータリ型の実装ヘッド431を有する。つまり、実装ヘッド431は、回転軸を中心に円周状に等角度間隔で配列された複数(8個)のノズル432を有し、複数のノズル432は回転軸を中心に回転可能である。ただし、ヘッドユニット43が具備する具体的構成はロータリ型に限られず、複数の実装ヘッド431を列状に配列したインライン型でもよい。
【0019】
図1に示すように、一対のコンベア41のY方向の両側それぞれでは、2つの部品供給部44がX方向に並んでいる。各部品供給部44に対しては、複数のテープフィーダ441がY方向に並んで着脱可能に装着されている。テープフィーダ441はX方向に延設されており、X方向におけるコンベア41側の先端部に部品供給箇所442を有する。そして、集積回路、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品Pを所定間隔おきに収納したテープが巻き付けられた部品供給リールが各テープフィーダ441に対して配置され、テープフィーダ441には、部品供給リールから引き出されたテープが装填されている。そして、テープフィーダ441は、テープをコンベア41側へ向けてX方向に間欠的に送り出す。これによって、テープ内の部品PがX方向(フィード方向)に送り出されて、テープフィーダ441の部品供給箇所442に順番に供給される。
【0020】
そして、実装ヘッド431は、各ノズル432により部品Pの吸着・載置を行う。具体的には、実装ヘッド431はテープフィーダ441の上方へ移動して、テープフィーダ441により部品供給箇所442に供給された部品Pにノズル432を当接させる。そして、実装ヘッド431は、所定の負圧を実装ヘッド431に発生させることで、ノズル432により部品Pを吸着(ピックアップ)する。実装ヘッド431はこうして部品Pを保持した状態で、治具搬入位置Ljの搬送治具2に装着された個片基板Bの上方に移動して当該個片基板Bに部品Pを載置する。こうして部品Pを吸着して個片基板Bに載置する実装処理が、搬送治具2に装着された各個片基板Bに実行される。
【0021】
また、部品実装機4は、部品Pが実装される個片基板Bを固定するための吸着バックアップ6を備える。
図2に示すように、吸着バックアップ6は、一対の搬送コンベア41が搬送治具2を搬入する治具搬入位置Ljに下側から対向する。X方向において、吸着バックアップ6の幅はこれら搬送コンベア41の間の間隔より狭く、Z方向からの平面視において、吸着バックアップ6はこれら搬送コンベア41の内側に位置する。この吸着バックアップ6は、直方体形状のバックアッププレート61を有し、バックアッププレート61は、Z方向からの平面視においてX方向に平行な辺およびY方向に平行な辺で規定される矩形を有する。このバックアッププレート61の上面611は、治具搬入位置Ljの搬送治具2に下側から対向する水平な平面である。さらに、吸着バックアップ6は、バックアッププレート61の上面611で開口する複数の吸引口62を有する。バックアッププレート61で開口する複数の吸引口62は、治具プレート21を貫通する複数の装着孔22にそれぞれ対応して設けられ、各吸引口62は対応する装着孔22に下側から対向する。なお、
図2の例では、吸引口62は矩形を有するが、吸引口62の形状は矩形に限られず、例えば円形でも良い。
【0022】
さらに、部品実装機4は、複数の装着孔22のそれぞれにおける個片基板Bの有無を検出する基板センサSb(例えば、近接センサあるいは距離センサ)を備える。つまり、複数の基板センサSbがそれぞれ複数の装着孔22に対応して設けられ、各基板センサSbは対応する装着孔22における個片基板Bの有無を検出する。複数の基板センサSbは、バックアッププレート61の上面611に配列されており、各基板センサSbは、同一の装着孔22に対応する吸引口62に隣接して配置される。
【0023】
この部品実装機4は、
図3に示すように、吸着バックアップ6を昇降させる昇降機構71を備える。ここで、
図3は吸着バックアップを昇降させる昇降機構の構成および動作を模式的に示す図である。昇降機構71は、水平に保持されたプッシュアッププレート711と、プッシュアッププレート711をZ方向に駆動する駆動部712とを有する。駆動部712は、例えばソレノイドあるいはシリンダといったアクチュエータである。吸着バックアップ6は、プッシュアッププレート711の上面に水平に保持され、駆動部712は、下降位置Ldと、当該下降位置Ldより上側の上昇位置Luとの間で、プッシュアッププレート711上の吸着バックアップ6をZ方向に移動させる。
【0024】
図3の「下降位置Ld」の欄に示すように、下降位置Ldの吸着バックアップ6は、搬送コンベア41によって治具搬入位置Ljに支持される搬送治具2に下側から対向する。また、駆動部712が吸着バックアップ6を下降位置Ldから上昇位置Luに向けて上昇させると、吸着バックアップ6の上面611が搬送治具2の下面に当接して、搬送治具2を搬送コンベア41から持ち上げる(
図3の「途中」の欄)。また、一対の搬送コンベア41の上側には、X方向に間隔を空けて配置された一対のクランププレート73が配置されている。吸着バックアップ6が上昇位置Luまで上昇して、吸着バックアップ6の上面611に載置された搬送治具2の上面が一対のクランププレート73に下側から当接すると、駆動部712による吸着バックアップ6の上昇が停止する(
図3の「上昇位置Lu」の欄)。
【0025】
図4は上昇位置に位置する吸着バックアップと搬送治具との関係を模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、吸着バックアップ6が上昇位置Luに位置する状態において、複数の吸引口62のそれぞれは、対応する装着孔22に連通する。また、複数の基板センサSbのそれぞれは、対応する装着孔22に近接して、当該装着孔22に装着された個片基板Bの有無を検出する。
【0026】
また、
図5に示すように、部品実装機4は、吸着バックアップ6の吸引口62に負圧を発生させて当該吸引口62を吸引する吸引機構75を有する。ここで、
図5は吸着バックアップの吸引口を吸引する吸引機構の構成を模式的に示す図である。吸引機構75は、排気ポンプ751と、排気ポンプ751に接続された排気配管752とを有する。また、吸引機構75は、複数の吸引口62にそれぞれ対応する複数の吸引部76を有する。各吸引部76は、対応する吸引口62に接続された吸引配管761と、吸引配管761に取り付けられたバルブ762とを有する。吸引配管761の一端は排気配管752に接続されて排気ポンプ751に連通し、吸引配管761の他端が吸引口62に接続される。バルブ762は、吸引口62と排気配管752との間で吸引配管761に取り付けられる。
【0027】
かかる吸引機構75では、排気ポンプ751は、排気配管752を介して各吸引部76の吸引配管761を排気する。また、バルブ762を開くことで、当該バルブ762が取り付けられた吸引配管761の両端の排気配管752と吸引口62とを吸引配管761を介して連通させて、排気ポンプ751により吸引口62を吸引することができる。一方、バルブ762が閉じることで、当該バルブ762が取り付けられた吸引配管761の両端の吸引口62と排気配管752とを遮断して、排気ポンプ751による吸引口62の吸引を制限することができる。
【0028】
さらに、吸引機構75は、排気ポンプ751が排気配管752に発生させる負圧を測定する圧力計753を有する。この圧力計753は、複数の吸引部76と排気ポンプ751との間で排気配管752に取り付けられ、排気ポンプ751の吸気ポートでの負圧を測定する。
【0029】
かかる吸引機構75によれば、対応するバルブ762が開いている吸引口62に対向する装着孔22に装着された個片基板Bは、排気ポンプ751が当該吸引口62に発生させる吸引力によって当該装着孔22に対して固定される。また、対応するバルブ762が開いている吸引口62に対向する装着孔22のうち、全てに個片基板Bが装着されている場合には圧力計753は閾負圧未満の圧力を測定する一方、一部に個片基板Bが装着されていない場合には、当該一部の装着孔22が大気に開放されるために、圧力計753は閾負圧以上の圧力を測定することとなる。
【0030】
図6は
図1の部品実装機が備える電気的構成を示すブロック図である。部品実装機4は、演算部91および記憶部92を備える。演算部91は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部92はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。演算部91は、主制御部910、UI制御部911、昇降制御部912、ポンプ制御部913、圧力取得部914、バルブ制御部915、情報取得部916およびヘッド制御部917を有する。
【0031】
主制御部910は、部品実装機4の全体を統括的に制御する。UI制御部911は、部品実装機4が備えるUI(User Interface)49を制御する。UI49は、例えばディスプレイ等の出力機器と、マウスやキーボード等の入力機器とを有する。ただし、UI49の出力機器および入力機器を別体で構成する必要はなく、タッチパネルディスプレイによってこれらを一体的に構成してもよい。
【0032】
昇降制御部912は、吸着バックアップ6を昇降させる駆動部712を制御することで、吸着バックアップ6を下降位置Ldと上昇位置Luとの間で移動させる。ポンプ制御部913は、排気ポンプ751による排気を制御する。圧力取得部914は、圧力計753によって測定される排気配管752内の圧力を取得する。バルブ制御部915は、複数の吸引部76それぞれのバルブ762の開閉を制御する。情報取得部916は、基板センサSbによる個片基板Bの検出結果を複数の基板センサSbそれぞれから受信することで、装着孔22における個片基板Bの有無を複数の装着孔22のそれぞれについて示す基板装着情報を取得する。
【0033】
ヘッド制御部917は、記憶部92に記憶された基板データDbに基づき、X軸モータ423、Y軸モータ426およびヘッドユニット43を制御することで、個片基板Bへの部品実装を実行する。つまり、基板データDbは、治具搬入位置Ljに搬入された搬送治具2に対して設定された実装位置(換言すれば、ランドの位置)と、当該実装位置へ実装する部品Pとを示す。部品Pの実装対象は個片基板Bであるため、実装位置は、搬送治具2の複数の装着孔22のうち、個片基板Bが装着される装着孔22に重複して設定される。
【0034】
上述の通り、個片基板Bに部品Pを実装するにあたっては、個片基板Bが固定される。
図7は部品実装機で実行される基板固定の一例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、主制御部910の制御によって実行される。ステップS101では、昇降制御部912は、駆動部712によって吸着バックアップ6を下降位置Ldから上昇位置Luに上昇させる。吸着バックアップ6が上昇位置Luに位置すると、情報取得部916は、複数の基板センサSbのそれぞれの検出結果を、複数の装着孔22それぞれにおける個片基板Bの有無を示す基板装着情報として取得する(ステップS102)。
【0035】
ステップS103では、バルブ制御部915は、搬送治具2の複数の装着孔22のうち、個片基板Bが装着された装着孔22である基板装着孔22と、個片基板Bが装着されていない装着孔22である基板未装着孔22とを、基板装着情報に基づき確認する。そして、バルブ制御部915は、基板装着孔22に対応する吸引部76のバルブ762(換言すれば、基板装着孔22に接続された吸引配管761に取り付けられたバルブ762)を開く一方、基板未装着孔22に対応する吸引部76のバルブ762(換言すれば、基板装着孔22に接続された吸引配管761に取り付けられたバルブ762)を閉じる。
【0036】
ステップS104では、ポンプ制御部913が排気ポンプ751を始動させて、排気ポンプ751による排気を開始する。これによって、開いたバルブ762に連通する吸引口62が吸引されて、当該吸引口62が対向する装着孔22に装着された個片基板Bが当該装着孔22に対して固定される。一方、閉じたバルブ762に連通する吸引口62は吸引されない。
【0037】
ステップS105では、圧力取得部914が、圧力計753によって測定された測定圧力を取得して、当該測定圧力と閾負圧とを比較する。測定圧力が閾負圧未満である場合には、圧力取得部914は、個片基板Bの吸着が成功したと判定し(ステップS106で「YES」)、主制御部910は、個片基板Bの固定が完了したと判定する(ステップS107)。一方、測定圧力が閾負圧以上である場合には、圧力取得部914は、個片基板Bの吸着が失敗したと判定し(ステップS106で「NO」)、UI制御部911は、UI49によって個片基板Bの吸着エラーが発生した旨を作業者に報知する(ステップS108)。
【0038】
以上に示す実施形態では、治具搬入位置Lj(搬入位置)に搬入された搬送治具2の複数の装着孔22(装着箇所)にそれぞれ対応して複数の吸引部76が設けられ、各吸引部76は対応する装着孔22を吸引する。この際、複数の装着孔22のそれぞれにおける個片基板Bの有無を示す基板装着情報が取得されて(ステップS102)、この基板装着情報に基づき吸引部76による吸引が制御される。つまり、複数の吸引部76のうち、対応する装着孔22に個片基板Bがある吸引部76に吸引を実行させるとともに、対応する装着孔22に個片基板Bがない吸引部76に吸引を実行させない吸引制御が、基板装着情報に基づき実行される(ステップS103、S104)。このように、複数の装着孔22のうち、個片基板Bがある装着孔22に対して選択的に吸引が実行される。したがって、個片基板Bがない装着孔22を吸引しないことで、個片基板Bがある装着孔22に対する吸引力が不足するのが防止される。その結果、それぞれに個片基板Bを装着可能な複数の装着孔22を有する搬送治具2の装着孔22に装着された個片基板Bを吸引によって固定するにあたり、搬送治具2の全ての装着孔22への個片基板Bの装着が不要となっている。
【0039】
また、情報取得部916は、装着孔22における個片基板Bの有無を検出する基板センサSbを複数の装着孔22のそれぞれに有し、基板センサSbが個片基板Bを検出した結果を基板装着情報として取得する。かかる構成では、複数の装着孔22のそれぞれに対して設けられた基板センサSbによって各装着孔22での個片基板Bの有無を検出した結果に基づき、基板装着情報を的確に取得することができる。
【0040】
また、吸引機構75(個片基板吸引部)は、治具搬入位置Ljに下側から対向する吸着バックアップ6(吸引テーブル)と、排気ポンプ751(吸引ポンプ)とを有する。これに対して、吸引部76は、対応する装着孔22に向かって吸着バックアップ6の上面611で開口する吸引口62と、吸引口62と排気ポンプ751との間に設けられたバルブ762とを有する。したがって、バルブ762を開くことで吸引口62と排気ポンプ751とが連通して排気ポンプ751により吸引口62が吸引される一方、バルブ762を閉じることで吸引口62と排気ポンプ751とが遮断されて排気ポンプ751による吸引口62の吸引が制限される。これに対して、バルブ制御部915(吸引制御部)は、複数の吸引部76のうち、対応する装着孔22に個片基板Bがある吸引部76のバルブ762を開く一方、対応する装着孔22に個片基板Bがない吸引部76のバルブ762を閉じる(ステップS103)。かかる構成では、複数の吸引部76のそれぞれに設けられたバルブ762の開閉によって、複数の装着孔22のうち、個片基板Bがある装着孔22に対して選択的に吸引を実行することができる。
【0041】
以上に説明したように本実施形態では、搬送治具2が本発明の「搬送治具」の一例に相当し、装着孔22が本発明の「装着箇所」の一例に相当し、部品実装機4が本発明の「部品実装機」の一例に相当し、一対の搬送コンベア41が本発明の「治具搬入部」の一例に相当し、吸着バックアップ6が本発明の「吸引テーブル」の一例に相当し、吸引口62が本発明の「吸引口」の一例に相当し、吸引機構75が本発明の「個片基板吸引部」の一例に相当し、排気ポンプ751が本発明の「吸引ポンプ」の一例に相当し、吸引部76が本発明の「吸引部」の一例に相当し、バルブ762が本発明の「バルブ」の一例に相当し、バルブ制御部915が本発明の「吸引制御部」の一例に相当し、情報取得部916が本発明の「情報取得部」の一例に相当し、個片基板Bが本発明の「個片基板」の一例に相当し、治具搬入位置Ljが本発明の「搬入位置」の一例に相当し、基板センサSbが本発明の「センサ」の一例に相当する。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、基板固定を
図8に示すように実行してもよい。
図8は部品実装機で実行される基板固定の変形例を示すフローチャートである。
図8のフローチャートは、搬送治具2の複数の装着孔22それぞれにおける個片基板Bの有無に応じて各バルブ762の開閉を設定する作業を作業者が予め実行している場合や、基板生産が中断してから再開する際に中断前の各バルブ762の開閉状態を維持して基板生産を再開する場合等を想定している。この
図8のフローチャートは、主制御部910の制御によって実行される。
【0043】
ステップS201では、昇降制御部912は、駆動部712によって吸着バックアップ6を下降位置Ldから上昇位置Luに上昇させる。吸着バックアップ6が上昇位置Luに位置すると、ポンプ制御部913が排気ポンプ751を始動させて、排気ポンプ751による排気を開始する(ステップS202)。これによって、開いたバルブ762に連通する吸引口62が吸引されて、当該吸引口62が対向する装着孔22に装着された個片基板Bが当該装着孔22に対して固定される。一方、閉じたバルブ762に連通する吸引口62は吸引されない。
【0044】
ステップS203では、圧力取得部914が、圧力計753によって測定された測定圧力を取得して、当該測定圧力と閾負圧とを比較する。測定圧力が閾負圧未満である場合には、圧力取得部914は、個片基板Bの吸着が成功したと判定し(ステップS204で「YES」)、主制御部910は、個片基板Bの固定が完了したと判定する(ステップS205)。一方、測定圧力が閾負圧以上である場合には、圧力取得部914は、個片基板Bの吸着が失敗したと判定して(ステップS204で「NO」)、ステップS206に進む。
【0045】
ステップS206では、情報取得部916は、複数の基板センサSbのそれぞれの検出結果を、複数の装着孔22それぞれにおける個片基板Bの有無を示す基板装着情報として取得する。ステップS207では、バルブ制御部915は、搬送治具2の複数の装着孔22のうち、個片基板Bが装着された装着孔22である基板装着孔22と、個片基板Bが装着されていない装着孔22である基板未装着孔22とを、基板装着情報に基づき確認する。そして、バルブ制御部915は、基板装着孔22に対応する吸引部76のバルブ762を開く一方、基板未装着孔22に対応する吸引部76のバルブ762を閉じる。そして、ステップS203に戻る。
【0046】
この変形例においても、複数の装着孔22のうち、個片基板Bがある装着孔22に対して選択的に吸引が実行される。したがって、個片基板Bがない装着孔22を吸引しないことで、個片基板Bがある装着孔22に対する吸引力が不足するのが防止される。その結果、それぞれに個片基板Bを装着可能な複数の装着孔22を有する搬送治具2の装着孔22に装着された個片基板Bを吸引によって固定するにあたり、搬送治具2の全ての装着孔22への個片基板Bの装着が不要となっている。
【0047】
また、搬送治具2の複数の装着孔22のそれぞれにおける個片基板Bの有無を示す基板装着情報を取得する方法は、上記の基板センサSbによる方法に限られない。つまり、ステップS102あるいはS206において、情報取得部916は、搬送治具2のうち部品Pを実装する位置(実装位置)を示す基板データDbに基づき、基板装着情報を取得してもよい。つまり、搬送治具2の複数の装着孔22のうち、基板データDbが示す実装位置と重複する装着孔22には個片基板Bが装着され、基板データDbが示す実装位置と重複しない装着孔22には個片基板Bが装着されないと判定できる。したがって、基板データDbに基づき基板装着情報を取得できる。かかる構成では、複数の装着孔22それぞれでの個片基板Bの有無を基板データDbに基づき確認することで基板装着情報を取得できるため、基板データDbを検出する基板センサSbが不要となる。
【0048】
また、治具搬入位置Ljに搬入された搬送治具2あるいは個片基板Bに付されたフィデューシャルマークを撮像するために搬送治具2を撮像するカメラを部品実装機4が備える場合がある。このような場合には、当該カメラによって搬送治具2を撮像した画像に基づき、基板装着情報を取得することができる。
【符号の説明】
【0049】
2…搬送治具
22…装着孔
4…部品実装機
41…搬送コンベア(治具搬入部)
6…吸着バックアップ
62…吸引口
75…吸引機構
751…排気ポンプ
76…吸引部
762…バルブ
915…バルブ制御部(吸引制御部)
916…情報取得部
B…個片基板
Lj…治具搬入位置(搬入位置)
Sb…基板センサ(センサ)