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特開2024-86419タイヤ貸し出し管理装置及びタイヤ貸し出し管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086419
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】タイヤ貸し出し管理装置及びタイヤ貸し出し管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0645 20230101AFI20240620BHJP
【FI】
G06Q30/0645
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201531
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕二郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB68
5L049BB68
(57)【要約】
【課題】多様な在庫タイヤの中から適切な貸し出しタイヤを選択できるタイヤ貸し出し管理装置及びタイヤ貸し出し管理方法が提供される。
【解決手段】タイヤ貸し出し管理装置(10)は、タイヤの貸し出しを希望する利用者に対して貸し出すタイヤである貸し出しタイヤを選択するタイヤ貸し出し管理装置であって、貸し出し用の複数のタイヤである在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得する取得部(131)と、履歴に基づき、在庫タイヤのそれぞれの残り寿命指標値を算出する算出部(132)と、利用者が使用しているタイヤである使用タイヤの状態及び利用者の利用条件の少なくとも1つに基づいて、耐用下限値を決定し、在庫タイヤから耐用下限値を超える残り寿命指標値を有する貸し出しタイヤを選択する選択部(133)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの貸し出しを希望する利用者に対して貸し出すタイヤである貸し出しタイヤを選択するタイヤ貸し出し管理装置であって、
貸し出し用の複数のタイヤである在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得する取得部と、
前記履歴に基づき、前記在庫タイヤのそれぞれの残り寿命指標値を算出する算出部と、
前記利用者の車両で使用されているタイヤである使用タイヤの状態及び前記利用者の利用条件の少なくとも1つに基づいて、耐用下限値を決定し、前記在庫タイヤから前記耐用下限値を超える残り寿命指標値を有する前記貸し出しタイヤを選択する選択部と、を備える、タイヤ貸し出し管理装置。
【請求項2】
前記選択部は、減価償却期間を含む前記利用者の利用条件に基づいて、前記耐用下限値を決定し、前記貸し出しタイヤを選択する、請求項1に記載のタイヤ貸し出し管理装置。
【請求項3】
前記選択部は、残り寿命指標値を含む前記使用タイヤの状態に基づいて、前記耐用下限値を決定し、前記貸し出しタイヤを選択する、請求項1に記載のタイヤ貸し出し管理装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記耐用下限値を超える前記貸し出しタイヤの候補が複数ある場合に、残り寿命指標値が前記耐用下限値に近いタイヤを選択する、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ貸し出し管理装置。
【請求項5】
前記履歴は、前記在庫タイヤのそれぞれのリトレッドの回数を含み、
前記選択部は、前記リトレッドの回数に基づいて、前記貸し出しタイヤの適切な装着位置を選択する、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ貸し出し管理装置。
【請求項6】
タイヤの貸し出しを希望する利用者に対して貸し出すタイヤである貸し出しタイヤを選択するタイヤ貸し出し管理装置が実行するタイヤ貸し出し管理方法であって、
貸し出し用の複数のタイヤである在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得することと、
前記履歴に基づき、前記在庫タイヤのそれぞれの残り寿命指標値を算出することと、
前記利用者の車両で使用されているタイヤである使用タイヤの状態及び前記利用者の利用条件の少なくとも1つに基づいて、耐用下限値を決定し、前記在庫タイヤから前記耐用下限値を超える残り寿命指標値を有する前記貸し出しタイヤを選択することと、を含む、タイヤ貸し出し管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ貸し出し管理装置及びタイヤ貸し出し管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者にタイヤの貸し出し(レンタル)を行うサービスが提供されている。このようなサービスにおいて、安全性の観点から、利用者がタイヤの貸し出しを希望する期間内は、所定以上のタイヤ性能が維持される必要がある。ここで、車両に装着されたタイヤは、例えば、車両の走行中の路面との摩擦により摩耗していく。タイヤの摩耗の程度は、タイヤの使われ方に依存し、操縦性、制動性などのタイヤ性能にも影響を及ぼす。例えば特許文献1は、タイヤのレンタルサービスにおいて、利用者が貸し出しを希望する期間内に所定以上のタイヤ性能を維持するタイヤ(残り寿命が尽きないタイヤ)を決定する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-101938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、タイヤのレンタルサービスにおいては、利用者の希望に応じてタイヤの交換も行われる。貸し出し期間中におけるタイヤ性能の維持だけを過剰に重視すると、例えば交換においても新品のタイヤだけを貸し出して、寿命が残っている新品でない在庫タイヤが使用されないおそれがある。また、近年、環境負荷低減の観点から、タイヤのトレッドゴムの表面を削って、新しいゴムを貼り付けて再利用(リユース)するリトレッドが行われている。リトレッドタイヤの使用は台タイヤを再利用するため省資源に貢献できる。タイヤのレンタルサービスにおいても、在庫としてリトレッドタイヤが含まれることがあり、適切な貸し出しタイヤを選択できる技術が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、多様な在庫タイヤの中から適切な貸し出しタイヤを選択できるタイヤ貸し出し管理装置及びタイヤ貸し出し管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係るタイヤ貸し出し管理装置は、
タイヤの貸し出しを希望する利用者に対して貸し出すタイヤである貸し出しタイヤを選択するタイヤ貸し出し管理装置であって、
貸し出し用の複数のタイヤである在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得する取得部と、
前記履歴に基づき、前記在庫タイヤのそれぞれの残り寿命指標値を算出する算出部と、
前記利用者の車両で使用されているタイヤである使用タイヤの状態及び前記利用者の利用条件の少なくとも1つに基づいて、耐用下限値を決定し、前記在庫タイヤから前記耐用下限値を超える残り寿命指標値を有する前記貸し出しタイヤを選択する選択部と、を備える。
この構成により、多様な在庫タイヤの中から適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記選択部は、減価償却期間を含む前記利用者の利用条件に基づいて、前記耐用下限値を決定し、前記貸し出しタイヤを選択する。
この構成により、レンタルサービスに特有の条件も考慮して、適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記選択部は、残り寿命指標値を含む前記使用タイヤの状態に基づいて、前記耐用下限値を決定し、前記貸し出しタイヤを選択する。
この構成により、車両に装着された場合のタイヤセットとしての性能を考慮して、適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記選択部は、前記耐用下限値を超える前記貸し出しタイヤの候補が複数ある場合に、残り寿命指標値が前記耐用下限値に近いタイヤを選択する。
この構成により、在庫タイヤの有効利用を促進して、環境負荷低減に貢献することができる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記履歴は、前記在庫タイヤのそれぞれのリトレッドの回数を含み、
前記選択部は、前記リトレッドの回数に基づいて、前記貸し出しタイヤの適切な装着位置を選択する。
この構成により、車両に装着された場合の摩耗の偏りを考慮して、適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態に係るタイヤ貸し出し管理方法は、
タイヤの貸し出しを希望する利用者に対して貸し出すタイヤである貸し出しタイヤを選択するタイヤ貸し出し管理装置が実行するタイヤ貸し出し管理方法であって、
貸し出し用の複数のタイヤである在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得することと、
前記履歴に基づき、前記在庫タイヤのそれぞれの残り寿命指標値を算出することと、
前記利用者の車両で使用されているタイヤである使用タイヤの状態及び前記利用者の利用条件の少なくとも1つに基づいて、耐用下限値を決定し、前記在庫タイヤから前記耐用下限値を超える残り寿命指標値を有する前記貸し出しタイヤを選択することと、を含む。
この構成により、多様な在庫タイヤの中から適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、多様な在庫タイヤの中から適切な貸し出しタイヤを選択できるタイヤ貸し出し管理装置及びタイヤ貸し出し管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ貸し出し管理装置の構成例を示す図である。
図2図2は、図1のタイヤ貸し出し管理装置を備えるタイヤ貸し出し管理システムの構成例を示す図である。
図3図3は、在庫タイヤの履歴を含むタイヤ管理データを説明するための図である。
図4図4は、タイヤ貸し出し管理装置が実行するタイヤ貸し出し管理方法の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るタイヤ貸し出し管理装置及びタイヤ貸し出し管理方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るタイヤ貸し出し管理装置10の構成例を示す。図2は、図1のタイヤ貸し出し管理装置10を備えるタイヤ貸し出し管理システムの構成例を示す。タイヤ貸し出し管理装置10は、利用者にタイヤの貸し出し(レンタル)を行うサービスにおいて、貸し出し用の複数のタイヤである「在庫タイヤ」を管理する。また、タイヤ貸し出し管理装置10は、タイヤの貸し出しを希望する利用者に対して貸し出すタイヤを選択する。利用者に対して貸し出すタイヤは、以下において「貸し出しタイヤ」と称されることがある。ここで、タイヤの貸し出しは、新規の貸し出しだけでなく、現在の貸し出し中のタイヤの一部又は全部を新たな貸し出しタイヤに交換することを含む。また、本実施形態において、タイヤは乗用自動車、トラック、バス、建設車両などの車両用であるが、航空機用などであってよい。
【0016】
本実施形態において、タイヤのレンタルサービスの在庫タイヤは、利用者に直ちにタイヤを貸し出せるように多数のタイヤを含む。また、在庫タイヤは、新品のタイヤだけでなく、使用されたタイヤ、リトレッドタイヤなど多様なタイヤを含む。例えば利用者の希望によって交換されたタイヤは、そのまま在庫タイヤに含められるか、リトレッドが行われてリトレッドタイヤとして在庫タイヤに含められる。リトレッドは、上記のように、タイヤのトレッドゴムの表面を削って、新しいゴムを貼り付けて再利用することである。
【0017】
タイヤ貸し出し管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、取得部131と、算出部132と、選択部133と、出力部134と、を備える。タイヤ貸し出し管理装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。タイヤ貸し出し管理装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0018】
ここで、読取部70は、在庫タイヤのそれぞれに取り付けられた発信器31からタイヤID情報を読み取る装置である。タイヤID情報は、個々のタイヤに固有の識別情報である。タイヤ貸し出し管理装置10は、少なくとも読取部70とともにタイヤ貸し出し管理システムを構成する。タイヤ貸し出し管理装置10は、さらにネットワーク40で接続される第1サーバ50及び第2サーバ60の少なくとも1つとともに、タイヤ貸し出し管理システムを構成してよい。ネットワーク40は、例えばインターネットである。また、ネットワーク40は、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。
【0019】
発信器31はタイヤに内蔵されている。タイヤへの内蔵は、例えばタイヤの内部に埋め込まれていること、及び、タイヤの内面の表面に貼付されていることを含む。発信器31は、タイヤから取り外しが困難であり、タイヤと路面との接触による影響を受けない位置であれば、タイヤの内面以外の表面に貼り付けられてよい。発信器31は、所定の信号を発信する。所定の信号は、少なくとも発信器31が取り付けられたタイヤのタイヤID情報を含む。所定の信号は、さらに、製造年月及び製造場所などのタイヤの製造情報を含んでよい。発信器31は、本実施形態のようにRFIDタグであってよいが、所定の信号を発信するものであれば特定種類の機器に限定されない。RFIDタグは、リーダ装置との間で、電磁界、電波などを用いて近距離(数cm~数m程度)の無線通信を行い、情報のやり取りを行う。本実施形態において、読取部70はRFIDタグのリーダ装置である。ここで、発信器31からタイヤID情報が読み取られる態様は、発信器31から直接的にタイヤID情報が得られることに限定されない。例えば発信器31が個々の発信器31に固有の識別情報を発信し、その識別情報が特定のタイヤID情報と紐づけられており、読取部70又は制御部13においてタイヤID情報に置換される場合も、発信器31からタイヤID情報が読み取られることに含まれる。
【0020】
第1サーバ50及び第2サーバ60のそれぞれは、例えばタイヤ貸し出し管理装置10とは別のコンピュータである。本実施形態において、第1サーバ50は利用者にタイヤを貸し出す場所(以下、貸し出し場所)のコンピュータである。貸し出し場所は複数であってよく、第1サーバ50も1つに限定されず、複数であってよい。貸し出し場所において利用者からの貸し出しの希望が受け付けられて、第1サーバ50が貸し出しタイヤの種別、貸し出し履歴及び走行履歴の情報を蓄積してよい。また、第1サーバ50が利用者の利用条件などの情報を管理してよい。これらの情報は、タイヤが貸し出される際に、貸し出し場所のオペレータが第1サーバ50の入力装置(例えばキーボード及びマウスなど)を用いて入力してよい。貸し出し履歴及び走行履歴の詳細については後述する。第2サーバ60はタイヤのリトレッド及び修理を行う場所(以下、修理場所)のコンピュータである。修理場所は複数であってよく、第2サーバ60も1つに限定されず、複数であってよい。修理場所において、例えば交換されたタイヤが修理又はリトレッドされて、第2サーバ60が修理履歴の情報を蓄積してよい。修理履歴の情報は、タイヤが修理される際に、修理場所のオペレータが第2サーバ60の入力装置を用いて入力してよい。修理履歴の詳細については後述する。
【0021】
ここで、タイヤ貸し出し管理システムは図2に示される構成に限定されない。例えば、タイヤ貸し出し管理システムは、タイヤ貸し出し管理装置10、第1サーバ50及び第2サーバ60のうちの1つが、他の1つと統合(一体化)された構成であってよい。例えばタイヤ貸し出し管理装置10が、第1サーバ50及び第2サーバ60の機能を兼ねており、必要な全ての情報の取得及び管理を行ってよい。つまり、タイヤ貸し出し管理システムは、タイヤ貸し出し管理装置10と読取部70だけで構成されてよい。また、第1サーバ50及び第2サーバ60の機能は、小型のコンピュータ装置で実現されてよい。小型のコンピュータ装置は、例えばスマートフォン又はタブレット端末などの移動端末を含んでよい。利用者からの貸し出しの希望を受け付ける処理は、第1サーバ50に代えて、スマートフォンのアプリで実行されてよい。
【0022】
以下、タイヤ貸し出し管理装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。また、通信部11は、例えば有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0023】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリなどであるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えばタイヤ貸し出し管理装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介してタイヤ貸し出し管理装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0024】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0025】
本実施形態において、記憶部12は、在庫タイヤの履歴を含むタイヤ管理データを記憶する。図3に示すように、タイヤ管理データは、通信部11を介して取得されたタイヤの種別及び履歴の情報を含む。本実施形態において、履歴は、貸し出し履歴、走行履歴及び修理履歴を含む。タイヤ管理データにおいて、タイヤの種別及び履歴の情報が、個々のタイヤに固有の識別情報であるタイヤID情報に対応付けられている。本実施形態において、通信部11を介して、タイヤの修理履歴が第2サーバ60から得られ、タイヤの種別及びその他の履歴が第1サーバ50から得られる。制御部13によって、これらの情報がタイヤID情報を用いて関連付けられて、タイヤ管理データとして記憶部12に記憶される。タイヤ管理データは、例えば定期的に、第1サーバ50及び第2サーバ60から得られる新たな情報を用いて更新されてよい。
【0026】
タイヤ管理データにおいて、種別はタイヤの種類による区分を示す情報である。種別は例えばタイヤのサイズ、冬用であるか否か、などの情報であってよい。種別は、図3において空欄で示されているが、上記の情報が実際にはタイヤID情報と紐づけられて記憶される。
【0027】
タイヤ管理データにおいて、貸し出し履歴は、交換などによって返却されたタイヤの貸し出しの条件についての情報である。貸し出し履歴は、例えば貸し出し期間、地域、車両などの情報を含んでよい。貸し出し期間は貸し出されていた期間の情報である。地域は、タイヤが装着された車両が主に走行した地域の情報である。地域として、例えば降雪地帯か否かなどの情報が含まれてよい。車両は、タイヤが装着された車両に関する情報である。車両は、例えば乗用車又はトラックなどの種類の情報であってよい。貸し出し履歴は、図3において空欄で示されているが、上記の情報が実際にはタイヤID情報と紐づけられて記憶される。
【0028】
タイヤ管理データにおいて、走行履歴は、交換などによって返却されたタイヤの貸し出し中のおける車両の走行状況についての情報である。走行履歴は、例えば走行距離、走行速度、加減速度、ペダルの踏み込み状況などの情報を含んでよい。また、走行履歴は、例えば走行時の気温、タイヤ内圧などの情報も含んでよい。このような走行履歴の情報は、車両に搭載された各種センサ、車両の動作を制御するECU(Electronic Control Unit)などから推定したり、タイヤに搭載されたセンサから直接的に取得したりすることができる。例えばタイヤの返却時に、タイヤが装着されていた車両から走行履歴が取得されてよい。走行履歴は、図3において空欄で示されているが、上記の情報が実際にはタイヤID情報と紐づけられて記憶される。
【0029】
タイヤ管理データにおいて、修理履歴は、タイヤの過去の修理又はリトレッドなどの情報である。リトレッドの情報は、過去のリトレッド回数を含んでよい。また、修理履歴は、補修用のパッチの使用の有無、使用した場合の場所などの情報を含んでよい。修理履歴は、図3においてリトレッド回数だけが例示されているが、上記の情報が実際にはタイヤID情報と紐づけられて記憶される。
【0030】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、タイヤ貸し出し管理装置10の全体の動作を制御する。
【0031】
ここで、タイヤ貸し出し管理装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。タイヤ貸し出し管理装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、プロセッサを取得部131、算出部132、選択部133及び出力部134として機能させる。
【0032】
取得部131は在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得する。本実施形態において、取得部131は、在庫タイヤの履歴を含むタイヤ管理データを記憶部12から取得する。また、取得部131は、読取部70によって読み取られた在庫タイヤのタイヤID情報を取得する。そして、取得部131は、タイヤ管理データからタイヤID情報を用いた選択を実行することで、在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得することができる。ここで、貸し出しタイヤについて、さらに限定可能な条件(以下、「限定条件」と称される)があれば、限定条件を用いて履歴を取得する在庫タイヤの範囲を狭めてよい。つまり、貸し出しタイヤの候補の対象とする在庫タイヤは、在庫タイヤの全てでなくてよい。例えば貸し出しタイヤが冬用であるとの限定条件がある場合に、取得部131は、種別が冬用である在庫タイヤについてだけ履歴を取得してよい。
【0033】
算出部132は、取得部131によって取得された履歴に基づき、貸し出しタイヤの候補の対象とする在庫タイヤのそれぞれの残り寿命指標値を算出する。残り寿命指標値は、所定以上のタイヤ性能が得られなくなると推定されるタイミングまでの期間である。算出部132は、少なくとも走行履歴を用いて、タイヤの残り寿命指標値を算出(推定)する。残り寿命指標値は、残り寿命そのものであってよいし、残り寿命に関する指数などであってよい。指数の一例として、新品タイヤを100などの所定数として、使用されて摩耗が進むにつれて、新品に対する劣化の割合に応じて数値が減少又は増加するものが使われてよい。また、残り寿命指標値は、タイヤケース全体を対象とする耐久値で示されてよいし、タイヤにおける特定箇所又は部材の耐久値で示されてよい。ここで、走行履歴から貸し出し期間中にタイヤがどのように使われたかを推定することができる。そのため、タイヤの走行履歴を用いて、高精度に残り寿命指標値を推定することができる。例えば特開平11-326143号公報に記載される摩擦エネルギーに基づいてタイヤの摩耗速度を算出し、摩耗速度を用いて残溝が棄却限界となるまでの期間を算出することで残り寿命指標値を推定することができる。摩擦エネルギーは、タイヤの摩耗し易さを示すパラメータであって、車両の走行によってタイヤにかかる力に影響される。また、算出部132は、貸し出し履歴に基づいて、推定したタイヤの残り寿命指標値を調整してよい。算出部132は、例えば高温の地域で長期間使用されていたタイヤについて、タイヤへの負荷が通常より大きいとして、残り寿命指標値を短くするように調整してよい。算出部132は、算出した在庫タイヤの残り寿命指標値を記憶部12に記憶させてよい。
【0034】
選択部133は、利用者の使用タイヤの状態及び利用者の利用条件の少なくとも1つに基づいて、耐用下限値を決定し、在庫タイヤから耐用下限値を超える残り寿命指標値を有する貸し出しタイヤを選択する。ここで、使用タイヤとは、利用者の車両で使用されているタイヤである。耐用下限値は、貸し出しタイヤに要求される残り寿命指標値の下限を示す。耐用下限値は、残り寿命指標値と比較可能であるように、残り寿命指標値の内容に合わせて設定されればよい。例えば残り寿命指標値として残り寿命そのものが用いられる場合に、耐用下限値は時間を単位とする値であってよい。また、例えば残り寿命指標値が指標であって、特定の単位を有していない場合には、耐用下限値も無単位の数値であってよい。また、利用条件は利用者毎にあらかじめ設定した指標に基づく値である。利用条件は、例えば減価償却期間を含んでよいが、これに限らず、利用者属性、推定走行条件などを含んでよい。利用者属性は、具体例として、走行地域、車両種、用途などを含み得る。また、推定走行条件は、利用者属性などから推定される利用者毎の走行条件である。推定走行条件は、例えば車両種がバスである利用者について、「サイドウォールの耐久下限を大きくしたい」との内容を含んでよい。
【0035】
例えば利用者の希望だけに基づいて貸し出しタイヤを決定するような従来手法では、新品のタイヤだけを貸し出す傾向が強くなり、多様な在庫タイヤにおいて、新品でないタイヤが使われないことがあった。以下に説明するように、本実施形態に係るタイヤ貸し出し管理装置10は、耐用下限値を用いることによって、多様な在庫タイヤの中から適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【0036】
選択部133は、減価償却期間を含む利用者の利用条件に基づいて、耐用下限値を決定し、貸し出しタイヤを選択してよい。このように耐用下限値を決定することによって、レンタルサービスに特有の条件も考慮して、適切な貸し出しタイヤを選択することができる。利用者の利用条件は、通信部11及び取得部131を介して得られてよい。例えば利用者の減価償却期間まで3年が残っている場合に、選択部133は耐用下限値を3年として、在庫タイヤの中から残り寿命指標値が3年を超える貸し出しタイヤを選択してよい。特に減価償却期間が考慮されることによって、利用者は除却損を回避して、事業の業績予見性を向上させることができる。
【0037】
選択部133は残り寿命指標値を含む使用タイヤの状態に基づいて、耐用下限値を決定し、貸し出しタイヤを選択してよい。例えば乗用車用の4本のタイヤのうち1本を交換する場合に、残り3本の使用タイヤの残り寿命指標値を考慮して耐用下限値が決定される。例えば残り3本の使用タイヤの残り寿命指標値が5年である場合に、選択部133は耐用下限値を5年として、在庫タイヤの中から残り寿命指標値が5年を超える貸し出しタイヤを選択してよい。このように耐用下限値を決定することによって、車両に装着された場合のタイヤセットとしての性能を考慮して、適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【0038】
ここで、選択部133は利用者の使用タイヤの状態及び利用者の利用条件の両方に基づいて耐用下限値を決定する場合に、長い方の耐用下限値を採用すればよい。例えば選択部133は、利用者の利用条件に基づく耐用下限値が3年であると計算し、利用者の使用タイヤの状態に基づく耐用下限値が5年であると計算した場合に、耐用下限値を長い方の5年と決定してよい。
【0039】
また、選択部133は、耐用下限値を超える貸し出しタイヤの候補が複数ある場合に、残り寿命指標値が耐用下限値に近いタイヤを選択してよい。例えば耐用下限値が3年で、貸し出しタイヤの候補として推定される残り寿命指標値が4年のタイヤと、5年のタイヤとがある場合に、残り寿命指標値が4年のタイヤが選択されてよい。このような選択により、在庫タイヤの有効利用を促進して、環境負荷低減に貢献することができる。
【0040】
ここで、本実施形態において、タイヤ管理データから得られる修理履歴は、在庫タイヤのそれぞれのリトレッドの回数を含む。選択部133は、リトレッドの回数に基づいて、貸し出しタイヤの適切な装着位置を選択してよい。つまり、選択部133は、利用者に対してタイヤの装着位置のローテーションを提案してよい。例えば選択部133は、貸し出しタイヤにリトレッドの回数が1回以上のタイヤ(すなわちリトレッドタイヤ)が含まれる場合に、リトレッドタイヤの装着位置を駆動輪以外に指定してよい。例えば選択部133は、利用者の車両が前輪駆動である場合に、リトレッドタイヤの装着位置を後輪と指定してよい。さらに後輪が複輪の場合に、複輪の内側の方にリトレッドタイヤを装着させてよい。また、この場合に、左右で摩耗の偏りが生じないように、左右の後輪に装着される貸し出しタイヤとしてそれぞれリトレッドタイヤを選択してよい。また、選択部133は、貸し出しタイヤに新品のタイヤが含まれる場合に、新品のタイヤが優先的に駆動輪に装着されるようにしてよい。また、4本の貸し出しタイヤが全てリトレッドタイヤである場合に、選択部133は駆動輪の方にリトレッドの回数がより少ないタイヤを割り当ててよい。このような装着位置の選択によって、車両に装着された場合の摩耗の偏りを考慮して、適切な貸し出しタイヤを選択することができる。
【0041】
ここで、選択部133は、利用者の利用条件などに基づいて、貸し出しタイヤにリトレッドタイヤを含めるか否かを決定してよい。例えば環境負荷低減に賛同する利用者に対して、貸し出しタイヤとしてリトレッドタイヤが優先的に選択されるようにしてよい。
【0042】
出力部134は、選択部133によって選択された結果(すなわち貸し出しタイヤ及び装着位置などの貸し出しタイヤに関する情報)を、表示装置などに対して出力する。例えば第1サーバ50のディスプレイなどが、算出結果を表示する表示装置として機能し得る。
【0043】
図4は、タイヤ貸し出し管理装置10の制御部13が実行するタイヤ貸し出し管理方法の処理を例示するフローチャートである。タイヤ貸し出し管理方法の処理は、利用者からの貸し出しの希望があったタイミングで開始されてよい。
【0044】
取得部131は、貸し出しタイヤの候補の対象となる在庫タイヤのそれぞれの履歴を取得する(ステップS1)。
【0045】
算出部132は、取得部131によって取得された履歴に基づき、貸し出しタイヤの候補の対象となる在庫タイヤのそれぞれの残り寿命指標値を算出する(ステップS2)。
【0046】
選択部133は、利用者の使用タイヤの状態及び利用者の利用条件の少なくとも1つに基づいて、耐用下限値を決定する(ステップS3)。
【0047】
選択部133は、在庫タイヤから耐用下限値を超える残り寿命指標値を有する貸し出しタイヤを選択する(ステップS4)。ここで、選択部133は、上記のように減価償却期間、使用タイヤの残り寿命指標値などを考慮して、貸し出しタイヤを選択してよい。また、選択部133は、耐用下限値を超える貸し出しタイヤの候補が複数ある場合に、残り寿命指標値が耐用下限値に近いタイヤを選択してよい。
【0048】
選択部133は、リトレッドの回数に基づいて、貸し出しタイヤの適切な装着位置を選択してよい(ステップS5)。ここで、全ての貸し出しタイヤについてリトレッドの回数がゼロ(すなわち新品のタイヤ)である場合又はリトレッドの回数に差がない場合に、ステップS5は省略されてよい。
【0049】
出力部134は、選択部133によって選択された結果を、例えば第1サーバ50のディスプレイなどに対して出力する(ステップS6)。例えば利用者は、貸し出しタイヤ及び装着位置などの貸し出しタイヤに関する情報を確認することができる。また、表示された装着位置に基づいて、車両に装着されるタイヤのローテーションなどが実行されてよい。
【0050】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ貸し出し管理装置10及びタイヤ貸し出し管理方法は、上記の構成によって、多様な在庫タイヤの中から適切な貸し出しタイヤを選択できる。
【0051】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム及びプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0052】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0053】
10 タイヤ貸し出し管理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
31 発信器
40 ネットワーク
50 第1サーバ
60 第2サーバ
70 読取部
131 取得部
132 算出部
133 選択部
134 出力部
図1
図2
図3
図4