(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086427
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】放熱構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/22 20060101AFI20240620BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240620BHJP
【FI】
F28F1/22 Z
B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201541
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山内 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 優佑
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA04
4E168BA87
4E168CB03
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA28
(57)【要約】
【課題】新規な構造を備える放熱構造体を提供すること。
【解決手段】
放熱構造体は、表面に第1の溝部および第2の溝部を含むベース部材と、表面から離れる方向に延在する第1のフィンおよび第2のフィンと、を含み、第1のフィンの第1の端部および第2のフィンの第2の端部は、それぞれ、第1の溝部および第2の溝部に挿入されている。第1のフィンと第2のフィンとの間に溶接ビード領域を含んでいてもよい。第1のフィンと第2のフィンとは、溶接ビード領域を介して接続されていてもよい。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1の溝部および第2の溝部を含むベース部材と、
前記表面から離れる方向に延在する第1のフィンおよび第2のフィンと、を含み、
前記第1のフィンの第1の端部および前記第2のフィンの第2の端部は、それぞれ、前記第1の溝部および前記第2の溝部に挿入されている、放熱構造体。
【請求項2】
前記第1のフィンと前記第2のフィンとの間に溶接ビード領域を含む、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
前記第1のフィンと前記第2のフィンとは、前記溶接ビード領域を介して接続されている、請求項2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
前記第1のフィンと前記第2のフィンとの間隔は、2mm以下である、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項5】
前記第1の溝部および前記第2の溝部の少なくとも1つは、前記ベース部材の一端から他端まで貫通して延在している、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項6】
前記第1の溝部および前記第2の溝部の少なくとも1つは、前記ベース部材の一端および他端の一方のみを貫通して延在している、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項7】
前記第1の溝部および前記第2の溝部の少なくとも1つは、前記ベース部材の一端から他端に向かって延在し、
前記少なくとも1つの延在する方向における両端部は、前記ベース部材に設けられている、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項8】
前記第1の溝部および前記第2の溝部の少なくとも1つの側面は、テーパを有する、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項9】
前記第1のフィンの厚さに対する前記第1の溝部の深さの比、または前記第2のフィンの厚さに対する前記第2の溝部の深さの比は、0.5以上5以下である、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項10】
前記第1のフィンおよび前記第2のフィンの少なくとも1つの表面は、溝部、凹部、および凸部から選ばれる少なくとも1つの形状部を含む、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項11】
前記表面は、湾曲している、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項12】
前記ベース部材は、筒状体であり、
前記表面は、前記筒状体の外周面である、請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項13】
前記外周面は、湾曲している、請求項12に記載の放熱構造体。
【請求項14】
ベース部材の表面に形成された第1の溝部および前記第1の溝部と隣接する第2の溝部のそれぞれに第1のフィンの第1の端部および第2のフィンの第2の端部を挿入し、
前記第1のフィンと前記第2のフィンとの間にレーザ光を照射して、前記第1の端部および前記第2の端部を、それぞれ、前記第1の溝部および前記第2の溝部に接合する、放熱構造体の製造方法。
【請求項15】
前記レーザ光の照射において、前記レーザ光を前記第1の端部に照射し、前記レーザ光を前記第1の溝部の延在する方向に走査して前記第1の端部を前記第1の溝部に接合した後、前記レーザ光を前記第2の端部に照射し、前記レーザ光を前記第2の溝部の延在する方向に走査して前記第2の端部を前記第2の溝部に接合する、請求項14に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項16】
前記レーザ光が前記第1のフィンと前記第2のフィンとの間でウォブリング走査される、請求項14に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項17】
さらに、前記レーザ光を、前記第1の溝部および前記第2の溝部の延在する方向における前記ベース部材の一端側および他端側の少なくとも1つから前記第1の端部および前記第2の端部に照射する、請求項14に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項18】
前記表面は、湾曲している、請求項14に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項19】
前記ベース部材は、筒状体であり、
前記表面は、前記筒状体の外周面である、請求項14に記載の放熱構造体の製造方法。
【請求項20】
前記外周面は、湾曲している、請求項19に記載の放熱構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、冷却機能を有する放熱構造体に関する。また、本発明の一実施形態は、冷却機能を有する放熱構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータやインバータ、ポンプ、コンプレッサなどの電動機は、駆動時に発熱するため、電動機を収容するケースに放熱用のフィンが取り付けられることがある。例えば特許文献1には、複数のフィンが設けられた円筒状の電動機用ケースが開示されている。この電動機用ケースは、アルミニウムを押出成形することによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、放熱構造体の放熱性を向上させ、機械的強度を維持しつつ、放熱構造体の製造コストのさらなる削減が要望されている。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、新規な構造を備える放熱構造体を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、新規な構造を有する放熱構造体の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る放熱構造体は、表面に第1の溝部および第2の溝部を含むベース部材と、表面から離れる方向に延在する第1のフィンおよび第2のフィンと、を含み、第1のフィンの第1の端部および第2のフィンの第2の端部は、それぞれ、第1の溝部および第2の溝部に挿入されている。
【0007】
第1のフィンと第2のフィンとの間に溶接ビード領域を含んでいてもよい。
【0008】
第1のフィンと第2のフィンとは、溶接ビード領域を介して接続されていてもよい。
【0009】
第1のフィンと第2のフィンとの間隔は、2mm以下であってもよい。
【0010】
第1の溝部および第2の溝部の少なくとも1つは、ベース部材の一端から他端まで貫通して延在していてもよい。
【0011】
第1の溝部および第2の溝部の少なくとも1つは、ベース部材の一端および他端の一方のみを貫通して延在していてもよい。
【0012】
第1の溝部および第2の溝部の少なくとも1つは、ベース部材の一端から他端に向かって延在し、少なくとも1つの延在する方向における両端部は、ベース部材に設けられていてもよい。
【0013】
第1の溝部および第2の溝部の少なくとも1つの側面は、テーパを有していてもよい。
【0014】
第1のフィンの厚さに対する第1の溝部の深さの比、または第2のフィンの厚さに対する第2の溝部の深さの比は、0.5以上5以下であってもよい。
【0015】
第1のフィンおよび第2のフィンの少なくとも1つの表面は、溝部、凹部、および凸部から選ばれる少なくとも1つの形状部を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る放熱構造体の製造方法は、ベース部材の表面に形成された第1の溝部および第1の溝部と隣接する第2の溝部のそれぞれに第1のフィンの第1の端部および第2のフィンの第2の端部を挿入し、第1のフィンと第2のフィンとの間にレーザ光を照射して、第1の端部および第2の端部を、それぞれ、第1の溝部および第2の溝部に接合する。
【0017】
レーザ光の照射において、レーザ光を第1の端部に照射し、レーザ光を第1の溝部の延在する方向に走査して第1の端部を第1の溝部に接合した後、レーザ光を第2の端部に照射し、レーザ光を第2の溝部の延在する方向に走査して第2の端部を第2の溝部に接合してもよい。
【0018】
レーザ光が第1のフィンと第2のフィンとの間でウォブリング走査されてもよい。
【0019】
放熱構造体の製造方法は、さらに、レーザ光を、第1の溝部および第2の溝部の延在する方向におけるベース部材の一端側および他端側の少なくとも1つから第1の端部および第2の端部に照射してもよい。
【0020】
表面は、湾曲していてもよい。
【0021】
ベース部材は、筒状体であり、表面は、筒状体の外周面であってもよい。外周面は、湾曲していてもよい。
【0022】
第1のフィンおよび第2のフィンの各々の材料は、筒状体の材料と同一であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施形態に係る放熱構造体は、別々の部品として形成される筒状体およびフィンを、レーザ溶接を用いて接合し、製造される。筒状体およびフィンのそれぞれの形状は複雑でなく、形成が容易である。そのため、これらを組み合わせた放熱構造体は、製造コストを削減することができる。また、フィンの長さを長くすること、および狭い間隔で配置することが可能となるため、表面積が増加し、放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の構成を示す模式的な上面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の筒状体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の板状体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る放熱構造体のブロック体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す模式的な断面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す模式的な断面図である。
【
図6C】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す模式的な断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す模式的な断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の製造方法を示す模式的な断面図である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の筒状体の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の筒状体の別の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る放熱構造体の筒状体の構成を示す模式的な断面図である。
【
図12A】本発明の一実施形態に係る放熱構造体のフィンの構成を示す模式的な斜視図である。
【
図12B】本発明の一実施形態に係る放熱構造体のフィンの構成を示す模式的な斜視図である。
【
図12C】本発明の一実施形態に係る放熱構造体のフィンの構成を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本出願で開示される発明の各実施形態について、図面を参照し説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0027】
本明細書および図面において、同一または類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、さらに大文字のアルファベットを添えて表記する。一つの構成のうちの複数の部分をそれぞれ区別して表記する際には、同一の符号を用い、さらにハイフンと自然数を用いる。
【0028】
[1.放熱構造体の構成]
図1A~
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10の構成について説明する。
【0029】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10の構成を示す模式的な斜視図および上面図である。
【0030】
図1Aおよび
図1Bに示すように、放熱構造体10は、筒状体102および複数のフィン200を含む。複数のフィン200は、筒状体102の湾曲する外周面側に配置され、外周面から離れる方向に延在している。図示しないが、放熱構造体10の内部(すなわち、筒状体102の内周面側)または外部(すなわち、複数のフィン200の外側)に放熱構造体10を冷却するための冷媒を冷却するための冷媒を還流するための流路を設けてもよい。以下では、筒状体102の筒状の軸が延伸している方向をz方向とし、z方向に垂直であり、互いに直交する方向をx方向およびy方向として説明する。したがって、複数のフィン200の各々は、筒状体102の外周面においてz方向に平行に配置され、筒状体102の外周面からxy面内の所定の方向に放射状に延在している。
【0031】
筒状体102の表面は、内周面および外周面以外に、内周面と外周面とを接続する上面および下面を含む。上面と下面とは同じ構成であるため、以下では、上面と下面とを特に区別しない場合には、上面または下面を単に側面という場合がある。また、上面および下面は、筒状体102の端面という場合がある。筒状体102の内周面側には、様々な電動機が収容される。そのため、筒状体102は、電動機を保護するハウジングとして機能する。また、筒状体102は、筒状体102の内周面側に収容された電動機から放熱される熱を吸収することができる。詳細は後述するが、z方向からの断面視において、筒状体102は、略円環形状を有する(ここで、筒状体102の断面図は
図1Bに示す上面図と同様であるため、筒状体102の断面図は省略する。)。但し、筒状体102の断面形状は、これに限られない。筒状体102の断面形状は、筒状体102の内周面側に収容される電動機の種類または大きさに応じて適宜選択される。また、筒状体102の大きさ(外径およびz方向の長さ)も、電動機の種類または大きさによって適宜選択される。例えば、外径は200mm以上500mm以下でもよく、z方向の長さは30mm以上90mm以下でもよい。筒状体102のアスペクト比(外径/長さ)は、例えば、1以上20以下でもよい。また、筒状体102の厚さ(内周面と外周面との間の距離)も放熱構造体10に要求される強度によって適宜選択され、例えば、1mm以上5mm以下の範囲であるが、これに限られない。
【0032】
ここで、
図2を参照して、筒状体102の構成についてさらに説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10の筒状体102の構成を示す模式的な斜視図である。
【0033】
図2に示すように、筒状体102の外周面には、z方向に延在する複数の溝部102aが設けられている。換言すると、溝部102aは、筒状体102の外周面において、筒状体102の上面および下面を貫通するように(または、筒状体102の外周面の一端から他端までを貫通するように)z方向に延在して設けられている。複数の溝部102aは、筒状体102の外周面の湾曲形状に合わせて放射状に設けられている。
【0034】
筒状体102の溝部102aには、フィン200の端部が挿入される(
図1Aおよび
図1B参照)。そのため、溝部102aの形状または大きさは、フィン200の端部の形状または大きさに応じて適宜選択される。溝部102aの幅はフィン200の厚さとほぼ一致している。溝部102aの深さは筒状体102の厚さより小さければよい。具体的には、フィン200の厚さに対する溝部102aの深さの比は、0.5以上5以下である。詳細は後述するが、フィン200の端部が溝部102aに挿入されたフィン200は、レーザ溶接を用いて端部が溝部102aと接合され、接続される。
【0035】
フィン200は、筒状体102と接続され、筒状体102から伝導された熱を外部に放出することができる。すなわち、フィン200は、放熱板として機能する。フィン200の厚さおよび高さ(筒状体102の外周面からフィン200が延在する方向における長さ)、フィン200の数、ならびにフィン200の間隔は、放熱構造体10に要求される冷却効率に応じて適宜選択される。例えば、厚さは0.5mm以上5mm以下の範囲でもよく、高さは30mm以上90mm以下でもよい。また、フィン200の間隔は、例えば、1mm以上20mm以下であるが、これに限られない。フィン200の間隔は、好ましくは2mm以下である。
【0036】
複数のフィン200は、筒状体102の外周面の上の全体にわたって等間隔に配置されている。但し、複数のフィン200の配置構成は、これに限られない。図示しないが、複数のフィン200は、筒状体102の外周面に不規則な間隔で配置されてもよく、筒状体102の外周面の一部に配置されてもよい。
【0037】
フィン200のz方向における長さは、筒状体102のz方向における長さと同一である。但し、フィン200の長さは、これに限られない。図示しないが、フィン200のz方向における長さは、筒状体102のz方向における長さよりも大きくてもよく、小さくてもよい。なお、フィン200のz方向における長さが筒状体102のz方向における長さよりも小さい場合、溝部102aは、筒状体102の外周面において、上面および下面を貫通することなく、z方向に一部延在して設けられていてもよい。
【0038】
フィン200の材料は、筒状体102の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。筒状体102およびフィン200の各々の材料として、アルミニウム合金を用いることができる。例えば、アルミニウム合金は、A7072、A7050、A7075、A7003、およびA7N01などと称されるアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、および銅を含む合金、またはA6061、A6063、およびA6N01などと称されるケイ素を含むアルミニウムおよびマグネシウムの合金、またはA5052、A5082、A5083、A5182などと称されるアルミニウムおよびマグネシウムの合金である。また、フィン200の材料として、A1050、A1100などと称される純アルミニウムも用いることができる。アルミニウム合金または純アルミニウムを筒状体102およびフィン200に用いることで、アルミニウムの高い熱伝導率に起因し、放熱構造体10は高い放熱特性を示すことができる。
【0039】
以上、放熱構造体10の構成について説明したが、放熱構造体10の筒状体102は、フィン200が挿入されるベース部材100の一例である。本実施形態に係る放熱構造体のベース部材100は筒状体102に限られない。本実施形態に係る放熱構造体のベース部材100として、様々な構成を適用することができる。
図1A~
図2では、筒状体102が、断面視において、略円環形状である構成を説明したが、筒状体102の断面形状は、略矩形環形状であってもよく、断面視における環形状は特に限定されない。また、本実施形態に係る放熱構造体のベース部材100は、内部に空間を有する筒形状でなくてもよい。そこで、
図3A~
図4Bを参照して、筒状体102とは形状の異なるベース部材100を含む本実施形態に係る放熱構造体について説明する。
【0040】
図3Aは、本発明の一実施形態に係る放熱構造体11の構成を示す模式的な斜視図である。また、
図3Bは、本発明の一実施形態に係る放熱構造体11の板状体104の構成を示す模式的な斜視図である。
【0041】
図3Aに示すように、放熱構造体11は、板状体104および複数のフィン200を含む。放熱構造体11のベース部材100は、板状体104である。
図3Bに示すように、板状体104は、第1の面104-1および第1の面104-1と反対の第2の面104-2を含む。複数のフィン200は、第1の面104-1に配置されている。板状体104の第1の面104-1には、一方向に延在する複数の溝部104aが設けられている。板状体104の溝部104aには、フィン200の端部が挿入され、フィン200は、板状体104の第1の面104-1から離れる方向に延在している。フィン200の端部は、溝部104aと接合され、接続されている。接合は、レーザ溶接を用いて行われるため、フィン200の端部と溝部104aとの間には、溶接ビード領域が形成される。
【0042】
板状体104の第1の面104-1および第2の面104-2の各々は、平面であってもよく、筒状体102と同様に、湾曲した曲面であってもよい。
【0043】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る放熱構造体12の構成を示す模式的な斜視図である。また、
図4Bは、本発明の一実施形態に係る放熱構造体12のブロック体106の構成を示す模式的な斜視図である。
【0044】
図4Aに示すように、放熱構造体12は、ブロック体106および複数のフィンを含む。放熱構造体12のベース部材100は、ブロック体106である。、
図4Bに示すように、ブロック体106は、第1の面106-1~第6の面106-6を含む。第1の面106-1が上面であるとすると、第1の面106-1と反対の第2の面106-2は下面であり、第3の面106-3~第6の面106-6は側面である。ブロック体106の第1の面106-1、第3の面106-3、および第4の面106-4の各々には、一方向に延在する複数の溝部106aが設けられている。ブロック体106の溝部106aには、フィン200の端部が挿入され、フィン200は、ブロック体106の第1の面106-1、第3の面106-3、または第4の面106-4から離れる方向に延在している。フィン200の端部は、溝部106aと接合され、接続されている。接合は、レーザ溶接を用いて行われるため、フィン200の端部と溝部106aとの間には、溶接ビードが形成される。
【0045】
図4Aおよび
図4Bでは、ブロック体106の3つの表面(第1の面106-1、第3の面106-3、および第4の面106-4)に溝部106aが設けられる構成を示したが、ブロック体106の構成はこれに限られない。溝部106aが設けられるブロック体106の表面は、1つの表面であってもよく、複数の表面であってもよい。また、ブロック体106の表面は、平面であってもよく、筒状体102と同様に、湾曲した曲面であってもよい。
【0046】
以上、放熱構造体10の筒状体102、放熱構造体11の板状体104、および放熱構造体12のブロック体106を例として説明したように、本実施形態に係る放熱構造体において、フィン200が挿入されるベース部材100は、様々な形状および大きさを有することができる。また、ベース部材100の表面に設ける溝部に応じて、ベース部材100の表面から離れるフィン200の延在方向を調整することができる。
【0047】
以下では、放熱構造体10の製造方法について説明するが、言うまでもなく、当該製造方法は、放熱構造体11および放熱構造体12に適用することができる。
【0048】
[2.放熱構造体の製造方法]
図5~
図6Cを参照して、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10の製造方法について説明する。
【0049】
図5は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10の製造方法を示すフローチャートである。また、
図6A~
図6Cの各々は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10製造方法を示す模式的な断面図である。以下では、
図6A~
図6Cの断面図を参照しながら、
図5のフローチャートのステップの順序に従って説明する。
図5には、ステップS100~ステップS120が示されているが、放熱構造体10の製造方法は、これに限られない。放熱構造体10は、さらなるステップを含む製造方法によって製造されてもよい。
【0050】
ステップS100では、筒状体102の外周面に設けられた溝部102aに、フィン200の端部を挿入する(
図6A参照)。フィン200の端部は、筒状体102の外周面の上方から差し込んで溝部102aに挿入されてもよく、筒状体102の上面または下面からスライドさせて溝部102aに挿入されてもよい。
【0051】
ステップS110では、筒状体102の位置を固定する。筒状体102は、後述するステップS120においてレーザ光を照射することができるように位置が固定されていればよい。例えば、筒状体102は、ステージ上に設置されて位置が固定される。筒状体102は、吸着によって固定されてもよく、磁力によって固定されてもよい。また、筒状体102は、把持されることによって固定されてもよい。筒状体102が把持されることによって固定される場合には、筒状体102はステージ上に設置されなくてもよい。
【0052】
ステップS120では、溝部102aに挿入されたフィン200の端部にレーザ光を照射しながら、レーザ光をz方向に走査(
図6Bおよび
図6C参照)。レーザ光は、隣接する2つのフィン200の間から照射される。ステップS120では、まず、隣接する2つのフィン200の一方の端部にレーザ光を照射し、レーザ光を溝部102aの延在する方向に走査して、隣接する2つのフィン200の一方の端部を溝部102aに接合する(
図6B参照)。次に、レーザ光の照射方向を変更し、隣接する2つのフィン200の他方の端部にレーザ光を照射し、レーザ光を溝部102aの延在する方向に走査して隣接する2つのフィン200の他方の端部を溝部102aに接合する(
図6C参照)。ステップS120は、フィン200を筒状体102に接合するレーザ溶接のステップであるが、ステップS120では、レーザ光の照射位置を大きく変更することなく、レーザ光の照射方向を変更することにより、隣接する2つのフィン200の端部の各々を溝部102aに接合することができる。レーザ光としては、例えば、1064nmの波長を有するイットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)レーザ、または1070nmの波長を有するファイバレーザなどを用いることができる。特に、シングルモードファイバレーザを用いることで、フィン200の間隔が狭い場合にも、高精度に接合を行うことが可能となる。また、光学素子を用いて線状パターンに加工されたレーザ光を用いてもよい。
【0053】
なお、ステップS120のレーザ溶接が行われた部分には、溶接ビードが形成されていてもよい。そのため、フィン200の端部と溝部102aとの間に溶接ビード領域が含まれていてもよい。本実施形態では、隣接する2つのフィン200の間に溶接ビード領域が形成される。隣接する2つのフィン200は、溶接ビード領域を介して接続されていてもよい。
【0054】
ステップS110およびステップS120が繰り返されることにより、筒状体102の複数の溝部102aに複数のフィン200の端部が接合され、放熱構造体10が製造される。
【0055】
本実施形態では、放熱構造体10の構成の様々な変形が可能である。以下では、
図7~
図12Cを参照して、放熱構造体10のいくつかの変形例について説明する。なお、以下では、上述した構成と同様の構成については説明を省略する。
【0056】
<変形例1>
図7は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10の製造方法を示す模式的な断面図である。
【0057】
図7には、
図5のステップS120におけるレーザ溶接の変形例が示されている。
図7に示すように、レーザ光は、隣接する2つのフィン200間でウォブリング走査される。すなわち、レーザ光は、隣接する2つのフィン200間で「の」の字または「8」の字を描くようにしてz方向に走査される。これにより、1回のz方向へレーザ光の走査によって、隣接する2つのフィン200の端部を溝部102aに接合することができる。また。レーザ光がウォブリング走査されることにより、フィン200の端部と溝部102aとの間の間隙が埋められるように接合されるため、フィン200の端部と溝部102aとの間の接合が安定するとともに、接合強度が向上する。
【0058】
<変形例2>
図8は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10の製造方法を示す模式的な断面図である。
図8は、フィン200の中心線を含み、z方向に平行な面で切断された放熱構造体10の部分断面図である。なお、
図8では、フィン200の端部および溝部102aの位置が明確になるように、溝部102aの上端が点線で示されている。また、
図8では、フィン200が外周面から離れるように延在する方向をy方向として説明する。
【0059】
図8には、レーザ溶接のステップが示されている。
図8に示すレーザ溶接では、z方向からレーザ光が照射される。具体的には、レーザ光は、筒状体102の上面側および下面側から、フィン200の端部に照射される。このようにレーザ光を照射することにより、筒状体102の上面および下面において、フィン200の端部を溝部102aに接合させることができる。レーザ光は、溝部102aの断面形状に沿って走査されてもよく、ウォブリング走査されてもよい。
【0060】
図8に示すレーザ溶接では、筒状体102の上面および下面にレーザ光が照射されているが、2つのレーザ光が筒状体102の上面および下面に同時に照射されてもよく、1つのレーザ光が筒状体102の上面に照射された後に筒状体102の下面に照射されてもよい。また、筒状体102の上面および下面の一方のみにレーザ光が照射され、筒状体102の上面および下面の一方のみにおいてレーザ溶接が行われてもよい。
【0061】
図8に示すレーザ溶接は、ステップS120のレーザ溶接の前に行われてもよく、ステップS120のレーザ溶接の後に行われてもよい。
図8に示すレーザ溶接がステップS120のレーザ溶接の前に行われる場合、フィン200の端部は、溝部102aの全体で接合されておらず、筒状体102の上面近傍および下面近傍においてのみ溝部102aに接合されている。この場合、フィン200の端部は、溝部102aに仮接合された状態であり、ステップS120のレーザ溶接を行うことにより、本接合される。一方、
図8に示すレーザ溶接がステップS120のレーザ溶接の後に行われる場合、筒状体102の上面近傍および下面近傍におけるフィン200の端部と溝部102aとの間の間隙を埋める接合が可能である。このように、ステップS120のレーザ溶接だけでなく、
図8に示すレーザ溶接を行うことにより、フィン200の端部と溝部102aとの間の接合強度が向上する。
【0062】
<変形例3>
図9Aは、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10Aの構成を示す模式的な斜視図である。また、
図9Bは、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10Aの筒状体102Aの構成を示す模式的な斜視図である。
【0063】
図9Aに示すように、放熱構造体10Aは、筒状体102Aおよび複数のフィン200を含む。フィン200のz方向における長さは、筒状体102Aのz方向における長さよりも小さい。
図9Bに示すように、筒状体102Aの外周面には、z方向に延在する複数の溝部102A-aが設けられている。但し、溝部102A-aは、筒状体102Aの外周面において、上面および下面の一方のみを貫通するようにz方向に延在して設けられている。すなわち、溝部102A-aは、筒状体102Aの外周面上に端部を有する。この場合において、フィン200を溝部102A-aに挿入すると、溝部102A-aの端部がストッパとして機能する。そのため、レーザ溶接する場合において、筒状体102Aに対するフィン200の位置が安定する。
【0064】
図10は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10Aの筒状体100Aの別の構成を示す模式的な断面図である。
図9Bでは、溝部102A-aのz方向における端部の一方のみが筒状体102Aの外周面に設けられている。一方、
図10に示すように、溝部102A-aのz方向における両端部が筒状体102Aの外周面に設けられていてもよい。すなわち、
図10に示す溝部102A-aは、筒状体102Aの上面および下面を貫通していない。この場合であっても、フィン200を溝部102A-aに挿入すると、溝部102A-aの端部がストッパとして機能する。そのため、レーザ溶接する場合において、筒状体102Aに対するフィン200の位置が安定する。
【0065】
<変形例4>
図11は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10Bの筒状体102Bの構成を示す模式的な断面図である。
【0066】
図11に示すように、筒状体102Bは、溝部102B-aを含む。溝部102B-aは、側面にテーパが形成されている。すなわち、溝部102B-aは、筒状体102Bの外周面から内周面に向かう方向(深さ方向)において、溝部102B-aの幅が小さくなる。この場合、溝部102B-aにフィン200の端部が挿入されると、かしめられてフィン200の端部が溝部102B-a中で固定される。そのため、レーザ溶接する場合において、筒状体102Bに対するフィン200の位置が安定する。
【0067】
<変形例5>
図12A~
図12Cの各々は、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10Cのフィン200Cの構成を示す模式的な斜視図である。
図12A~
図12Cでは、フィン200Cが外周面から離れるように延在する方向をy方向として説明する。
【0068】
図12Aには、表面に溝部200C-aが形成されたフィン200Cが図示されている。
図12Bには、表面に凹部200C-bが形成されたフィン200Cが図示されている。
図12Cには、表面に凸部200C-cが形成されたフィン200Cが図示されている。溝部200C-a、凹部200C-b、および凸部200C-cの各々の数または大きさは適宜選択され、特に限定されない。また、溝部200C-a、凹部200C-b、および凸部200C-cの各々の断面形状は、例えば、矩形状、半円形状、または半楕円形状であるが、これらに限られない。また、溝部200C-a、凹部200C-b、および凸部200C-cは、フィン200Cの一表面だけでなく、フィン200Cの両表面に形成することもできる。さらに、フィン200Cは、溝部200C-a、凹部200C-b、および凸部200C-cから選ばれる複数の形状部が組み合わされた構成も可能である。このように、フィン200Cの表面に様々な凹凸を有する形状部を形成することにより、フィン200Cの表面積が増加する。そのため、フィン200Cの放熱特性が向上し、放熱構造体10Cの冷却効率が向上する。
【0069】
以上説明したように、変形例も含め、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10は、別々の部品として形成される筒状体102(ベース部材100)およびフィン200を、レーザ溶接を用いて接合し、製造される。筒状体102およびフィン200のそれぞれの形状は複雑でなく、形成が容易である。そのため、これらを組み合わせた放熱構造体10は、製造コストを削減することができる。
【0070】
また、本発明の一実施形態に係る放熱構造体10は、A7075やA6061などのアルミニウム合金を含む。このため、放熱構造体10は、アルミニウムの高い熱伝導率に起因する高い冷却効率が達成できるだけでなく、軽量でありかつ強度が高い。このことは、例えば航空機の推進力を生み出すためのモータなどの高い信頼性が要求される放熱構造体への応用を可能にする。また、軽量化が要求されるドローンなどの無人航空機や電気自動車などの各種車両の能熱構造体としても本発明の一実施形態に係る放熱構造体10を好適に利用することができる。
【0071】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0072】
また、上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0073】
10、10A、10B、10C、11、12:放熱構造体、
100:ベース部材、
102、102A、102B:筒状体、
102a、102A-a、102B-a:溝部、
104:板状体、
104a:溝部、
106:ブロック体、
106a:溝部、
200、200A、200C:フィン、
200C-a:溝部、
200C-b:凹部、
200C-c:凸部