(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086430
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】タイヤ管理装置及びタイヤ管理方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B60C19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201546
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕二郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BB05
3D131LA20
3D131LA24
(57)【要約】
【課題】発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定できるタイヤ管理装置及びタイヤ管理方法が提供される。
【解決手段】タイヤ管理装置(10)は、発信器(31)が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置であって、タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された発信器から読み取られた発信器ID情報と、発信器ID情報と紐づけられたタイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得する取得部(131)と、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の一部が一致していない場合に混同が有ると判定する判定部(132)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得する取得部と、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない場合に前記混同が有ると判定する判定部と、を備える、タイヤ管理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記タイヤの種類に応じた発信器数のデータを取得し、
前記判定部は、取得された前記発信器ID情報の数が、前記作業対象タイヤの種類に応じた発信器数を超える場合に前記混同が有ると判定する、請求項1に記載のタイヤ管理装置。
【請求項3】
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得する取得部と、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多い前記タイヤID情報がない場合に前記混同が有ると判定する判定部と、を備える、タイヤ管理装置。
【請求項4】
前記判定部は、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多い前記タイヤID情報がある場合に、前記作業対象タイヤが、検出数が多い前記タイヤID情報を有する前記タイヤであると判定する、請求項3に記載のタイヤ管理装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記タイヤの種類に応じた発信器数のデータを取得し、
前記判定部は、取得された前記発信器ID情報の数が、前記作業対象タイヤの種類に応じた発信器数を超える場合に前記混同が有ると判定する、請求項3又は4に記載のタイヤ管理装置。
【請求項6】
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置が実行するタイヤ管理方法であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得することと、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない場合に前記混同が有ると判定することと、を含む、タイヤ管理方法。
【請求項7】
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置が実行するタイヤ管理方法であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得することと、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多い前記タイヤID情報がない場合に前記混同が有ると判定することと、を含む、タイヤ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ管理装置及びタイヤ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの個体識別などのために、タイヤに発信器などの電子装置が取り付けられることがある。個々のタイヤが識別可能になることによって、タイヤの在庫管理及び監視を正確に行うことができる。例えば特許文献1は、タイヤが破損した場合においてもトレーサビリティを行うことを可能にする、ビードコアの周辺領域にRFIDタグが配置されたタイヤを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、RFIDタグはリーダ装置と近距離の無線通信によって情報が読み取られる。そのため、例えば建設車両で用いられるOR(Off the Road)タイヤなどの大型のタイヤでは、例えば設備に固定されたリーダ装置でも情報を読み取ることができるように、複数のRFIDタグを内蔵することがある。情報の読み取り易さが向上する一方で、リーダ装置が複数のRFIDタグの情報を取得して、混同が生じることがある。つまり、従来の技術では、複数のRFIDタグの情報が1つのタイヤのものであるか、他のタイヤからの情報を含むかを判定することが困難であった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定できるタイヤ管理装置及びタイヤ管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係るタイヤ管理装置は、
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得する取得部と、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない場合に前記混同が有ると判定する判定部と、を備える。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定することができる。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記取得部は、前記タイヤの種類に応じた発信器数のデータを取得し、
前記判定部は、取得された前記発信器ID情報の数が、前記作業対象タイヤの種類に応じた発信器数を超える場合に前記混同が有ると判定する。
この構成により、さらに確実に、混同が有ることを判定することができる。
【0008】
(3)本開示の一実施形態に係るタイヤ管理装置は、
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得する取得部と、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多い前記タイヤID情報がない場合に前記混同が有ると判定する判定部と、を備える。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定することができる。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(3)において、
前記判定部は、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多い前記タイヤID情報がある場合に、前記作業対象タイヤが、検出数が多い前記タイヤID情報を有する前記タイヤであると判定する。
この構成により、混同が発生している場合であっても、適切に作業対象タイヤを特定することができる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(3)又は(4)において、
前記取得部は、前記タイヤの種類に応じた発信器数のデータを取得し、
前記判定部は、取得された前記発信器ID情報の数が、前記作業対象タイヤの種類に応じた発信器数を超える場合に前記混同が有ると判定する。
この構成により、さらに確実に、混同が有ることを判定することができる。
【0011】
(6)本開示の一実施形態に係るタイヤ管理方法は、
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置が実行するタイヤ管理方法であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得することと、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない場合に前記混同が有ると判定することと、を含む。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定することができる。
【0012】
(7)本開示の一実施形態に係るタイヤ管理方法は、
発信器が内蔵されたタイヤを管理するタイヤ管理装置が実行するタイヤ管理方法であって、
前記タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された前記発信器から読み取られた発信器ID情報と、前記発信器ID情報と紐づけられた前記タイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データと、を取得することと、
取得された前記発信器ID情報が複数であって、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定し、複数の前記発信器ID情報に紐づけられる前記タイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多い前記タイヤID情報がない場合に前記混同が有ると判定することと、を含む。
この構成により、発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定できるタイヤ管理装置及びタイヤ管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るタイヤ管理装置を備えるタイヤ管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、タイヤ管理データを説明するための図である。
【
図3】
図3は、タイヤの種類に応じた発信器数のデータを例示する図である。
【
図4】
図4は、混同による不整合を説明するための図である。
【
図5】
図5は、タイヤ管理装置が実行するタイヤ管理方法の処理を例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、タイヤ管理装置が実行するタイヤ管理方法の別の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係るタイヤ管理装置及びタイヤ管理方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るタイヤ管理装置10を備えるタイヤ管理システムの構成例を示す。タイヤ管理装置10はタイヤを管理する。具体的に述べると、タイヤ管理装置10は個々のタイヤの状態及び流通に関する情報を管理する。タイヤ管理装置10が管理するタイヤは特定のものに限定されないが、本実施形態において大型のORタイヤを含む。また、タイヤは乗用自動車、トラック、バス、建設車両などの車両用であるが、航空機用などであってよい。
【0017】
タイヤ管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、取得部131と、判定部132と、出力部133と、を備える。タイヤ管理装置10は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータであってよい。タイヤ管理装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0018】
本実施形態において、タイヤ管理装置10は発信器31が内蔵されたタイヤに対して所定の作業を行う場所(以下、作業場所)のコンピュータである。以下の説明において、所定の作業はタイヤの出荷作業であるとするが、これに限定されない。例えば所定の作業は、販売店などがタイヤを受け入れる作業であってよいし、タイヤの損傷を修理する作業であってよいし、検査のために検査場に発送する作業であってよい。タイヤ管理装置10は、所定の作業が行われた後で、タイヤの状態を示す情報を更新することによって管理する。本実施形態において、タイヤ管理装置10は、正しく出荷作業が完了した場合に、後述するタイヤ管理データにおける状態の項目を「出荷」に設定する。ここで、発信器31に情報の書き込みが可能であれば、タイヤ管理装置10は、発信器31が有するタイヤの状態が「出荷」となるように書き込みを実行させてよい。ここで、作業場所で所定の作業が行われる対象のタイヤは、以下において「作業対象タイヤ」と称される。
【0019】
ここで、読取部70は、タイヤのそれぞれに取り付けられた発信器31から発信器ID情報を読み取る装置である。発信器ID情報は、個々の発信器31に固有の識別情報である。タイヤ管理装置10は、少なくとも読取部70とともにタイヤ管理システムを構成する。作業場所には、タイヤ管理装置10以外の装置(以下、「外部装置」)が設置されていてよい。タイヤ管理装置10は、さらにネットワークで接続される外部装置とともに、タイヤ管理システムを構成してよい。ネットワークは、例えばインターネットである。また、ネットワークは、例えば一部においてLAN(Local Area Network)を含んで構成されてよい。外部装置は、例えば発信器31に情報の書き込みを行う装置を含んでよい。また、外部装置は、例えば複数のタイヤを所定の作業を行う場所にまとめて搬送するベルトコンベアなどを含んでよい。
【0020】
発信器31はタイヤに内蔵されている。タイヤへの内蔵は、例えばタイヤの内部に埋め込まれていること、及び、タイヤの内面の表面に貼付されていることを含む。発信器31は、タイヤから取り外しが困難であり、タイヤと路面との接触による影響を受けない位置であれば、タイヤの内面以外の表面に貼り付けられてよい。発信器31は、所定の信号を発信する。所定の信号は、少なくとも発信器ID情報を含む。所定の信号は、さらに、発信器31が取り付けられたタイヤの製造年月及び製造場所などのタイヤの製造情報を含んでよい。発信器31は、本実施形態のようにRFIDタグであってよいが、所定の信号を発信するものであれば特定種類の機器に限定されない。RFIDタグは、リーダ装置との間で、電磁界、電波などを用いて近距離(数cm~数m程度)の無線通信を行い、情報のやり取りを行う。本実施形態において、読取部70はRFIDタグのリーダ装置である。ここで、タイヤに内蔵されている発信器31は1つであってよいし、複数であってよい。上記のように、作業対象タイヤにはORタイヤが含まれる。ORタイヤなどの大型のタイヤでは、設備に固定されたリーダ装置でも情報を読み取ることができるように、複数のRFIDタグを内蔵している。
【0021】
ここで、タイヤ管理システムにおいて、タイヤ管理装置10は外部装置と統合(一体化)された構成であってよい。また、例えばタイヤ管理装置10が、読取部70だけでなく、発信器31に情報の書き込みを行う装置を制御する構成であってよい。また、タイヤ管理装置10は、ネットワーク経由で小型のコンピュータ装置などと通信可能であって、例えば作業対象タイヤに対する出荷作業が完了したことを小型のコンピュータ装置のディスプレイに表示させてよい。小型のコンピュータ装置は、例えばスマートフォン又はタブレット端末などの移動端末を含んでよい。
【0022】
以下、タイヤ管理装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワークに接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。また、通信部11は、例えば有線のLAN規格に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0023】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリなどであるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えばタイヤ管理装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介してタイヤ管理装置10によって外部からアクセスされる構成も可能である。
【0024】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0025】
本実施形態において、記憶部12は発信器ID情報と紐づけられたタイヤのタイヤID情報を含むタイヤ管理データを記憶する。タイヤID情報は、個々のタイヤに固有の識別情報である。
図2はタイヤ管理データの例を示す。
図2の例において、タイヤ管理データは、発信器ID情報とタイヤID情報との対応を示すテーブルである。
図2の例では、タイヤID情報がT001~T005であるタイヤが存在している。そして、例えばタイヤID情報がT005のタイヤは、発信器ID情報が0005である1つのRFIDタグを内蔵している。また、例えばタイヤID情報がT001のタイヤは、発信器ID情報が0001、0004及び0009である3つのRFIDタグを内蔵している。また、発信器ID情報が0002、及び0011であるRFIDタグは、未使用又は使用不可能となっており、紐づけられたタイヤID情報が無いため空欄となっている。
【0026】
ここで、製造又は修理などによってタイヤに新たな発信器31が内蔵される場合に、新たな発信器ID情報にタイヤID情報が紐づけられる。タイヤ管理データは、例えば定期的に、又は、定期的でないタイミングで更新されてよい。例えばタイヤ管理装置10は、ネットワーク経由で、タイヤに発信器31を内蔵させる製造工程を管理するコンピュータにアクセスして、発信器ID情報とタイヤID情報との紐づけの情報を取得してよい。
【0027】
また、タイヤ管理データは状態の項目を有していてよい。タイヤ管理装置10は、正しく出荷作業が完了した場合に状態の項目を「出荷」に設定する。
図2の例において、作業対象タイヤのタイヤID情報がT001であって、出荷作業が完了した場合に、対応する状態の欄の全てに「出荷」が設定される。タイヤ管理データは、
図2の形式等に限定されるものでなく、例えばさらに別の項目(一例としてタイヤの種類)が追加されてよい。
【0028】
また、記憶部12はタイヤの種類に応じた発信器数のデータを記憶してよい。
図3は発信器数のデータを例示する図である。
図3の例において、発信器数のデータは、タイヤの種類と内蔵されている発信器31の数との対応を示すテーブルである。
図3の例において、種類がaであるタイヤは、製造時において1つの発信器31を内蔵する。また、種類がbであるタイヤは、製造時において3つの発信器31を内蔵する。また、種類がcであるタイヤは、製造時において4つの発信器31を内蔵する。種類がaであるタイヤは例えば乗用車用のタイヤであってよい。また、種類がbであるタイヤは例えば所定サイズ以下のORタイヤであってよい。また、種類がcであるタイヤは例えば所定サイズを超えるORタイヤであってよい。
【0029】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、タイヤ管理装置10の全体の動作を制御する。
【0030】
ここで、タイヤ管理装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。タイヤ管理装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、プロセッサを取得部131、判定部132及び出力部133として機能させる。
【0031】
取得部131は、タイヤのうち作業の対象である作業対象タイヤに内蔵された発信器31から読み取られた発信器ID情報を取得する。つまり、取得部131は、読取部70によって読み取られた作業対象タイヤに内蔵された発信器31の発信器ID情報を取得する。また、取得部131は、タイヤ管理データを取得する。また、取得部131は、タイヤの種類に応じた発信器数のデータを取得してよい。
【0032】
ここで、例えば作業対象タイヤがORタイヤなどの大型のタイヤである場合に、読取部70によって複数の発信器ID情報が読み取られることがある。このとき、例えば複数のタイヤがまとめて搬送されている途中で読取部70が発信器ID情報を読み取る場合などに、混同が生じることがある。混同は、作業対象タイヤからの発信器ID情報に、作業対象タイヤとは異なるタイヤに内蔵されているRFIDタグの発信器ID情報が含まれることである。混同が有ることを検出せずに出荷作業を完了すると、状態に不整合が生じて正しいタイヤの管理ができなくなる。
図4は混同による不整合を説明するための図である。
図4の各項目は
図2と同じである。
図4の例では、作業対象タイヤのタイヤID情報がT001である場合に、タイヤID情報がT002であるタイヤの一部の発信器ID情報も読み取られる混同が生じている。混同が有ることを検出せずに出荷作業を完了すると、タイヤID情報がT002であるタイヤについて、出荷作業が完了されたという情報と、出荷作業が完了されていないという情報が混在して、タイヤ管理上の不整合が生じる。本実施形態において、判定部132は、以下に説明する処理によって混同の有無を判定する。
【0033】
判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定する。例えば3つの発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報について、3つともタイヤID情報がT001であるケースでは、タイヤID情報の全てが一致している。例えば2つのタイヤID情報がT001で、1つのタイヤID情報がT002であるケースは、タイヤID情報の全てが一致する場合に該当しない。そして、判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の一部が一致していない場合に混同が有ると判定する。混同が有る場合に、後述するように警告が出力されてよい。この処理により、発信器31が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定することができる。
【0034】
ここで、混同が生じた場合に、得られるタイヤID情報の検出数に差が生じることがあり得る。通常、作業対象タイヤと異なるタイヤのタイヤID情報の検出数は、作業対象タイヤのタイヤID情報の検出数より少ないと考えられる。判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多いタイヤID情報がある場合に、作業対象タイヤが、検出数が多いタイヤID情報を有するタイヤであると判定してよい。例えば3つの発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報について、2つのタイヤID情報がT001で、1つのタイヤID情報がT002であるケースでは、作業対象タイヤのタイヤID情報がT001であると判定される。この処理により、混同が発生している場合であっても、適切に作業対象タイヤを特定することができる。
【0035】
上記のように、作業対象タイヤが、検出数が多いタイヤID情報を有するタイヤであると判定する場合において、検出数の多少がなければ、混同が有ると判定された上で、警告が出力されてよい。つまり、判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の一部が一致していない、かつ、検出数が多いタイヤID情報がない場合に混同が有ると判定する。そして、判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の全てが一致する場合に混同が無いと判定する。この処理により、発信器31が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定することができる。
【0036】
ここで、判定部132は、作業対象タイヤと発信器数とに基づく判定をさらに行ってよい。判定部132は、取得された発信器ID情報の数が、作業対象タイヤの種類に応じた発信器数を超える場合に混同が有ると判定してよい。例えば
図3の例を用いると、作業対象タイヤの種類が「b」であれば、判定部132は、取得された発信器ID情報の数が3を超えていれば、直ちに混同が有ると判定してよい。この処理により、さらに確実に、混同が有ることを判定することができる。
【0037】
出力部133は、判定部132によって判定された結果を、表示装置などに対して出力する。例えばタイヤ管理装置10に接続されているディスプレイなどが、判定結果を表示する表示装置として機能し得る。
【0038】
ここで、出力部133によって出力される結果は、混同の有無に限定されない。本実施形態において、混同が有る場合の警告が出力される。例えば警告は、出荷作業のやり直しを求めるものであってよいし、状態について「出荷」と書き込むことの停止を求めるものであってよい。このような警告に従って、作業場所の作業者が素早く適切な対応を取ることができる。
【0039】
図5は、タイヤ管理装置10の制御部13が実行するタイヤ管理方法の処理を例示するフローチャートである。タイヤ管理方法の処理は、作業対象タイヤに対して出荷作業を行うタイミングで開始されてよい。
【0040】
取得部131は、作業対象タイヤに内蔵された発信器31から読み取られた発信器ID情報を取得する(ステップS11)。また、取得部131は、タイヤの種類に応じた発信器数のデータを取得してよい。
【0041】
判定部132は、取得された発信器ID情報が複数でなければ(ステップS12のNo)、混同の判定をせずに、処理がステップS16に進む。このとき、出力部133は警告を出力しないで、処理が終了する。判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であれば(ステップS12のYes)、ステップS13の処理に進む。
【0042】
判定部132は、取得された発信器ID情報の数が、作業対象タイヤの種類に応じた発信器数を超える場合に(ステップS13のNo)、混同が有ると判定する。そして、出力部133は警告を出力する(ステップS17)。判定部132は、取得された発信器ID情報の数が、作業対象タイヤの種類に応じた発信器数以下であれば(ステップS13のYes)、混同の判定を進めて、処理がステップS14に進む。ここで、判定部132が発信器数に基づく判定を行わない場合に、ステップS13の処理は省略されてよい。
【0043】
取得部131は、タイヤ管理データを取得する(ステップS14)。判定部132は、タイヤ管理データに基づいて、複数の発信器ID情報に紐づけられたタイヤID情報を得ることができる。
【0044】
判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の全てが一致する場合に(ステップS15のYes)、混同が無いと判定する。そして、出力部133は警告を出力しない(ステップS16)。判定部132は、例えばタイヤ管理データで状態の項目を「出荷」に設定し、作業対象タイヤの出荷作業を完了する。
【0045】
判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の一部が一致していない場合に(ステップS15のNo)、混同が有ると判定する。そして、出力部133は警告を出力する(ステップS17)。
【0046】
図6は、タイヤ管理装置10の制御部13が実行するタイヤ管理方法の別の処理を例示するフローチャートである。タイヤ管理装置10の制御部13は、
図5の処理に代えて、
図6の処理を実行してよい。ここで、
図6のステップS21~S24のそれぞれは、
図5のステップS11~S14のそれぞれと同じ処理であるため説明を省略する。ここで、判定部132が取得された発信器ID情報の数に基づいて混同が有ると判定した場合に(ステップS23のNo)、出力部133は警告を出力する(ステップS27)。
【0047】
判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の全てが一致する場合に(ステップS25のYes)、混同が無いと判定する。そして、出力部133は警告を出力しない(ステップS26)。判定部132は、例えばタイヤ管理データで状態の項目を「出荷」に設定し、作業対象タイヤの出荷作業を完了する。
【0048】
判定部132は、取得された発信器ID情報が複数であって、複数の発信器ID情報に紐づけられるタイヤID情報の一部が一致していない場合に(ステップS25のNo)、ステップS28の処理に進む。判定部132は、検出数が多いタイヤID情報がある場合に(ステップS28のYes)、作業対象タイヤが、検出数が多いタイヤID情報を有するタイヤであると判定する(ステップS29)。そして、出力部133は警告を出力しない(ステップS26)。判定部132は、例えばタイヤ管理データで状態の項目を「出荷」に設定し、作業対象タイヤの出荷作業を完了する。
【0049】
判定部132は、検出数が多いタイヤID情報がない場合に(ステップS28のNo)、作業対象タイヤを特定できない混同が有ると判定する。そして、出力部133は警告を出力する(ステップS27)。
【0050】
別の例として、タイヤ管理装置10の制御部13は、
図5のフローチャートの処理と、
図6のフローチャートの処理と、を選択的に実行してよい。ここで、
図6のフローチャートの処理では、得られるタイヤID情報の検出数に差が生じ得ることを前提とする。したがって、タイヤ管理装置10の制御部13は、取得された発信器ID情報の数が3つ以上であるかを判定してよい。一例として、取得された発信器ID情報の数が3つ以上であるかの判定は、タイヤ管理データを取得する処理(ステップS14又はS24)の直前に実行されてよい。取得された発信器ID情報の数が3つ以上であれば、
図6のフローチャートの処理(ステップS24~S27)が実行され、取得された発信器ID情報の数が2つであれば、
図5のフローチャートの処理(ステップS14~S17)が実行されてよい。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ管理装置10及びタイヤ管理方法は、上記の構成によって、タイヤに複数の発信器が内蔵される場合であっても、発信器が内蔵されたタイヤから得られる情報について混同の有無を判定できる。
【0052】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム及びプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0053】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9 産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0054】
10 タイヤ管理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
31 発信器
70 読取部
131 取得部
132 判定部
133 出力部