(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086445
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】包装箱及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 5/52 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
B65D5/52 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201572
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水谷 吉和
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA04
3E060AB04
3E060AB05
3E060BA02
3E060BA08
3E060BA12
3E060CA02
3E060CA24
3E060CB06
3E060CD02
3E060CD20
3E060DA11
3E060DA30
(57)【要約】
【課題】開口が形成された包装箱を製造するにあたり、シート材が破れてしまうことを抑制するための技術を提供する。
【解決手段】包装箱は、シート材を折り曲げて形成されている。包装箱は、複数の側壁部が筒状に連接された本体部を備える。複数の側壁部は、第1の側壁部と、第2の側壁部と、を含む。第1の側壁部には、開口が形成されている。第2の側壁部は、折曲線を介して第1の側壁部と連続する。第1の側壁部は、第1の縁部と、第2の縁部と、を有する。第1の縁部は、開口を形成する縁部であって、折曲線に対向する縁部である。第2の縁部は、開口を形成する縁部であって、第1の縁部の一端から折曲線側と反対側へ延びる縁部である。第1の縁部と第2の縁部とが成す角部は、半径が8mm以上の円弧状に形成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を折り曲げて形成された包装箱であって、
複数の側壁部が筒状に連接された本体部を備え、
前記複数の側壁部は、
開口が形成された第1の側壁部と、
折曲線を介して前記第1の側壁部と連続する第2の側壁部と、
を含み、
前記第1の側壁部は、
前記開口を形成する第1の縁部であって、前記折曲線に対向する前記第1の縁部と、
前記開口を形成する第2の縁部であって、前記第1の縁部の一端から前記折曲線側と反対側へ延びる前記第2の縁部と、
を有し、
前記第1の縁部と前記第2の縁部とが成す角部は、半径が8mm以上の円弧状に形成されている、包装箱。
【請求項2】
請求項1に記載の包装箱であって、
前記第1の側壁部は、前記開口を形成する第3の縁部であって、前記第1の縁部の他端から前記折曲線側と反対側へ延びる前記第3の縁部を更に有し、
前記第1の縁部と前記第2の縁部とが成す角部は、前記第1の縁部と前記第3の縁部とが成す角部と比較して、前記折曲線までの最短距離が同一又は近い、包装箱。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の包装箱であって、
前記第1の縁部と前記第2の縁部とが成す角部から前記折曲線までの最短距離は、12mm以下である、包装箱。
【請求項4】
包装箱の製造方法であって、
帯状の本体部を備えるシート材を、前記本体部の端部同士が重なるように平面状に折り畳むことと、
前記本体部における重ね合わされた端部同士を接着することと、
端部同士が接着された状態の前記本体部を筒状に広げることと、
を備え、
前記本体部には、前記本体部を筒状に広げるための折曲線と、前記折曲線と隣り合う開口と、が形成され、
前記本体部は、
前記開口を形成する第1の縁部であって、前記折曲線に対向する前記第1の縁部と、
前記開口を形成する第2の縁部であって、前記第1の縁部の一端から前記折曲線側と反対側へ延びる前記第2の縁部と、
を有し、
前記第1の縁部と前記第2の縁部とが成す角部は、半径が8mm以上の円弧状に形成され、
端部同士が接着された状態の前記本体部は、前記第1の縁部に前記開口側から荷重が加えられることにより前記折曲線で外面側へ折り曲げられ、筒状に広げられる、包装箱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、シート材を折り曲げて形成された筒状の包装箱が記載されている。特許文献1に記載の包装箱には、筒状を形成する側壁部に開口が形成されている。この側壁部における開口を形成する縁部の内形、つまり開口面の外形は、長方形状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の包装箱の製造においては、例えば、開口が形成されたシート材が、平面状に折り畳まれて端部同士が接着された後、折曲線で外面側へ折り曲げられることにより、筒状に広げられる。これにより、開口が形成された包装箱が得られる。
【0005】
しかしながら、本発明者の詳細な検討の結果、特許文献1に記載のように開口を形成する縁部が角部を有する形状である場合、平面状に折り畳まれたシート材を筒状に広げるときに、この角部からシート材が破れてしまうおそれがあることが判明した。
【0006】
本開示の一局面は、開口が形成された包装箱を製造するにあたり、シート材が破れてしまうことを抑制するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シート材を折り曲げて形成された包装箱である。包装箱は、複数の側壁部が筒状に連接された本体部を備える。複数の側壁部は、第1の側壁部と、第2の側壁部と、を含む。第1の側壁部には、開口が形成されている。第2の側壁部は、折曲線を介して第1の側壁部と連続する。第1の側壁部は、第1の縁部と、第2の縁部と、を有する。第1の縁部は、開口を形成する縁部であって、折曲線に対向する縁部である。第2の縁部は、開口を形成する縁部であって、第1の縁部の一端から折曲線側と反対側へ延びる縁部である。第1の縁部と第2の縁部とが成す角部は、半径が8mm以上の円弧状に形成されている。
【0008】
このような構成によれば、包装箱の製造において平面状に折り畳まれた本体部が筒状に広げられる場合に、シート材が破れてしまうことを抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様は、第1の側壁部が、第3の縁部を更に有してもよい。第3の縁部は、開口を形成する縁部であって、第1の縁部の他端から折曲線側と反対側へ延びる縁部である。第1の縁部と第2の縁部とが成す角部は、第1の縁部と第3の縁部とが成す角部と比較して、折曲線までの最短距離が同一又は近くてもよい。
【0010】
このような構成によれば、包装箱の製造において平面状に折り畳まれた本体部が筒状に広げられる場合に、シート材が破れてしまうことを一層抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様では、第1の縁部と第2の縁部とが成す角部から折曲線までの最短距離は、12mm以下であってもよい。
【0012】
このような構成では、包装箱の製造において平面状に折り畳まれた本体部が筒状に広げられる場合にシート材が破れやすいことが考えられる。このような構成において、第1の縁部と第2の縁部とが成す角部を半径が8mm以上の円弧状に形成することにより、包装箱の製造において平面状に折り畳まれた本体部が筒状に広げられる場合に、シート材が破れてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0013】
本開示の別の一態様は、包装箱の製造方法であって、以下の(i)~(iii)を備える。
(i)帯状の本体部を備えるシート材を、本体部の端部同士が重なるように平面状に折り畳むこと。
(ii)本体部における重ね合わされた端部同士を接着すること。
(iii)端部同士が接着された状態の本体部を筒状に広げること。
【0014】
本開示の別の一態様では、本体部には、本体部を筒状に広げるための折曲線と、折曲線と隣り合う開口と、が形成されている。本体部は、第1の縁部と、第2の縁部と、を有する。第1の縁部は、開口を形成する縁部であって、折曲線に対向する縁部である。第2の縁部は、開口を形成する縁部であって、第1の縁部の一端から折曲線側と反対側へ延びる縁部である。第1の縁部と第2の縁部とが成す角部は、半径が8mm以上の円弧状に形成されている。そして、上記(iii)では、端部同士が接着された状態の本体部が、第1の縁部に開口側から荷重が加えられることにより折曲線で外面側へ折り曲げられ、筒状に広げられる。
【0015】
このような構成によれば、包装箱の製造において平面状に折り畳まれた本体部が筒状に広げられる場合に、シート材が破れてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】閉塞状態における包装箱を斜め前方から見た模式的な斜視図である。
【
図2】開放状態における包装箱を斜め後方から見た模式的な斜視図である。
【
図4】折り畳み工程を説明するための模式図である。
【
図6】筒状形成工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、説明の便宜上、前後、左右、上下の方向が用いられているが、これらの方向は本開示の実施の態様について何ら限定するものではない。
【0018】
[1.包装箱の構成]
図1及び
図2に示す包装箱1は、
図3に示す1枚のシート材1Aを折り曲げて形成された箱である。シート材1Aは、可撓性を有するシート状の部材である。
図3には、シート材1Aをおもて面側から見た模式的な平面図が示されている。シート材1Aのおもて面とは、包装箱1の外面を構成する面である。本実施形態のシート材1Aは、紙製である。
【0019】
包装箱1は、図示しない商品の流通時及び販売時において、商品を収容するために用いられる。
図1及び
図2に示すように、包装箱1は、本体部2と、蓋部3と、底部4と、を備える。
【0020】
本体部2は、商品を収容するための収容空間を形成する筒状の部分である。本体部2の軸方向における一方の開口(
図1及び
図2でいう上側の開口)が、包装箱1に収容された商品を外部に取り出すための取出口10として用いられる。
【0021】
本体部2は、
図3に示すように展開された状態において、言い換えればシート材1Aの状態において、前側壁部21と、右側壁部22と、左側壁部23と、後側壁部24と、糊代部25と、を備える。
【0022】
前側壁部21は、開閉折曲線31を介して蓋部3と連続するシート状の部分である。開閉折曲線31は、本体部2に対して蓋部3が回動する回動軸として機能する折曲線である。本実施形態の前側壁部21の外形は、長方形状である。前側壁部21における具体的には上端が、蓋部3と連続している。また、前側壁部21には開口211が形成されている。開口211については後に詳述する。
【0023】
右側壁部22及び左側壁部23は、前側壁部21における左右の外縁からそれぞれ延びるシート状の部分である。右側壁部22は、第1の側壁折曲線20aを介して前側壁部21と連続している。左側壁部23は、第2の側壁折曲線20bを介して前側壁部21と連続している。第1,第2の側壁折曲線20a,20bは、互いに平行である。右側壁部22及び左側壁部23は、前側壁部21を挟んで左右対称の形状である。本実施形態の右側壁部22及び左側壁部23は、それぞれの上部に形成された内折曲線221,231で折り曲げられていない状態において、長方形状である。内折曲線221,231は、右側壁部22及び左側壁部23をそれぞれ本体部2の内面側へ折り曲げるための折曲線である。本実施形態の右側壁部22及び左側壁部23は、上下方向の長さ、すなわち第1,第2の側壁折曲線20a,20bに沿った長さが、前側壁部21と同一である。
【0024】
後側壁部24は、左側壁部23における前側壁部21側と反対側の外縁から延びるシート状の部分である。後側壁部24は、第3の側壁折曲線20cを介して左側壁部23と連続している。本実施形態の後側壁部24の外形は、前側壁部21と同一の形状及び大きさである。つまり、本実施形態の後側壁部24の外形は、長方形状である。後側壁部24には、スリット241が形成されている。スリット241は、後述する差込片35を差し込み可能な切り込みである。
【0025】
糊代部25は、後側壁部24における左側壁部23側と反対側の外縁から延びるシート状の部分である。糊代部25は、第4の側壁折曲線20dを介して後側壁部24と連続している。第4の側壁折曲線20dは、前述した第3の側壁折曲線20cと平行である。本実施形態では、糊代部25は、概ね台形状である。糊代部25の上下方向の長さは、後側壁部24から離れるにつれて短くなる。また、糊代部25は、右側壁部22と比較して、上下方向の長さが概ね同一、左右方向の長さが概ね半分である。なお、糊代部25における上下方向の長さは、第4の側壁折曲線20dに沿った長さとも言い換えられる。また、糊代部25における左右方向の長さは、第4の側壁折曲線20dと垂直な方向に沿った長さとも言い換えられる。
【0026】
包装箱1では、本体部2が、第1~第4の側壁折曲線20a~20dのそれぞれにおいて外面側へ折り曲げられている。つまり、第1~第4の側壁折曲線20a~20dは、本体部2を外面側へ折り曲げるための折曲線である。そして、包装箱1では、上記のように本体部2が外面側へ折り曲げられた状態において、右側壁部22と糊代部25とが重ね合わされて接着されている。これにより、
図1及び
図2に示すような筒状の本体部2が形成されている。言い換えれば、本体部2は、前側壁部21、右側壁部22、左側壁部23及び後側壁部24が筒状に連接されて構成されている。
【0027】
本体部2が筒状に形成された状態において、第1の側壁折曲線20aは、前側壁部21と右側壁部22との稜線を構成する。第2の側壁折曲線20bは、前側壁部21と左側壁部23との稜線を構成する。第3の側壁折曲線20cは、後側壁部24と左側壁部23との稜線を構成する。第4の側壁折曲線20dは、後側壁部24と右側壁部22との稜線を構成する。
【0028】
前側壁部21、右側壁部22、左側壁部23及び後側壁部24は、軸方向と垂直な断面が長方形状である四角筒を形成する。ただし、これらの上部は、右側壁部22及び左側壁部23が内折曲線221,231で本体部2の内面側へ折り曲げられた状態においては、軸方向と垂直な断面形状が砂時計型である変形六角筒を形成する。ここでいう砂時計型とは、短辺同士を共有する2つの台形により形成される形状を指す。
【0029】
図2に示すように、蓋部3は、取出口10を閉塞するように構成されたシート状の部分である。蓋部3は、前側壁部21の上縁から延びるように形成されている。前側壁部21と蓋部3との境界線に、前述した開閉折曲線31が形成されている。また、蓋部3には、開閉折曲線31と平行な2本の折曲線として、中央折曲線32と、中央折曲線32よりも先端側の先端折曲線33と、が形成されている。先端折曲線33の中央位置には、先端折曲線33から中央折曲線32側に湾曲したU字状の切り込み34が形成されている。先端折曲線33と切り込み34とにより囲まれた部分が、差込片35として機能する。差込片35は、前述したスリット241に差し込み可能に構成されている。差込片35がスリット241に差し込まれることにより、蓋部3が本体部2に対して固定され、
図1に示す、蓋部3により取出口10が閉塞された閉塞状態になる。差込片35がスリット241から抜かれることにより、
図2に示す、取出口10が開放された開放状態になる。
【0030】
底部4は、本体部2の軸方向における取出口10側と反対側の開口(
図1及び
図2でいう下側の開口)を閉塞するように構成された部分である。
図3に示すように、底部4は、2つの内フラップ41,42と、1つの外フラップ43と、を有する。
【0031】
2つの内フラップ41,42は、右側壁部22及び左側壁部23の下縁からそれぞれ延びるシート状の部分である。右側壁部22と内フラップ41との境界線には、開閉折曲線411が形成されている。左側壁部23と内フラップ42との境界線には、開閉折曲線421が形成されている。これら開閉折曲線411,421は、本体部2に対して2つの内フラップ41,42のそれぞれが回動する回動軸として機能する折曲線である。2つの内フラップ41,42は、前側壁部21を挟んで左右対称の形状である。2つの内フラップ41,42の幅は、右側壁部22及び左側壁部23の幅よりも狭い。ここでいう幅とは、開閉折曲線411,421に沿った長さを指す。また、2つの内フラップ41,42は、本体部2の取出口10側と反対側の開口の開口面よりも小さい。2つの内フラップ41,42が開閉折曲線411,421で本体部2の内面側へ折り曲げられた場合、少なくとも、2つの内フラップ41,42と後側壁部24との間には、隙間が形成される。
【0032】
外フラップ43は、前側壁部21の下縁から延びるシート状の部分である。前側壁部21と外フラップ43との境界線には、開閉折曲線431が形成されている。開閉折曲線431は、本体部2に対して外フラップ43が回動する回動軸として機能する折曲線である。また、外フラップ43には、開閉折曲線431と平行な折曲線として、先端折曲線432が形成されている。外フラップ43は、先端折曲線432により、前側壁部21側の閉塞フラップ部43aと、先端側の差込フラップ部43bと、に区分されている。閉塞フラップ部43aは、本体部2の取出口10側と反対側の開口の開口面と同一の形状及び大きさである。閉塞フラップ部43aは、当該開口を閉塞する。本実施形態の閉塞フラップ部43aは、長方形状である。
【0033】
包装箱1では、先に2つの内フラップ41,42が開閉折曲線411,421で本体部2の内面側へ折り曲げられた状態において、外フラップ43が開閉折曲線431及び先端折曲線432で本体部2の内面側へ折り曲げられている。そして、2つの内フラップ41,42と後側壁部24との隙間に、差込フラップ部43bが差し込まれている。これにより、底部4が本体部2に対して固定され、本体部2の取出口10側と反対側の開口が閉塞された状態になっている。
【0034】
図1に戻り、前側壁部21には、本体部2に収容された商品を外部から視認するための開口211が形成されている。開口211は、第1の側壁折曲線20aと第2の側壁折曲線20bとの中間位置に形成されている。言い換えれば、開口211は、第1,第2の側壁折曲線20a,20bの双方と隣り合うように形成されている。本実施形態の開口211の開口面は、概ね長方形状である。本実施形態の前側壁部21は、4つの縁部と、4つの角部と、を有する。
【0035】
4つの縁部のそれぞれは、開口211を形成する直線状の部分である。4つの縁部は、開口211の開口面における外周辺の一部をそれぞれ構成する。以下では、4つの縁部のそれぞれを、右縁部212a、左縁部212b、上縁部212c及び下縁部212dという。
【0036】
右縁部212a及び左縁部212bは、開口211の開口面の外周辺のうち、左右の長辺をそれぞれ構成する。右縁部212aは、前述した第1の側壁折曲線20aに対向している。右縁部212aは、第1の側壁折曲線20aと平行である。左縁部212bは、前述した第2の側壁折曲線20bに対向している。左縁部212bは、第2の側壁折曲線20bと平行である。なお、縁部が対向する折曲線と平行であることとは、当該縁部により構成される開口面の外周辺が当該折曲線と平行であることをいう。
【0037】
上縁部212c及び下縁部212dは、開口211の開口面の外周辺のうち、上下の短辺をそれぞれ構成する。上縁部212cは、左縁部212bの上端から第2の側壁折曲線20b側と反対側(つまり第1の側壁折曲線20a側)へ延び、右縁部212aの上端に到達している。すなわち、上縁部212cは、右縁部212a及び左縁部212bの上端同士を連結している。下縁部212dは、左縁部212bの下端から第2の側壁折曲線20b側と反対側へ延び、右縁部212aの下端に到達している。すなわち、下縁部212dは、右縁部212a及び左縁部212bの下端同士を連結している。
【0038】
4つの角部のそれぞれは、隣り合う縁部同士が成す角部である。以下では、右縁部212aと上縁部212c及び下縁部212dのそれぞれとが成す角部を、右上角部213a及び右下角部213bという。また、左縁部212bと上縁部212c及び下縁部212dのそれぞれとが成す角部を、左上角部213c及び左下角部213dという。
【0039】
4つの角部のうち、右下角部213b及び左上角部213cには、丸みが付けられている。具体的には、右下角部213b及び左上角部213cは、開口211側から見て凹んだ円弧状に形成されている。右下角部213b及び左上角部213cは、半径R1,R2が8mm以上の円弧状に形成されている。右下角部213b及び左上角部213cは、例えば、半径R1,R2が10mm以上の円弧状に形成されてもよい。本実施形態の右下角部213b及び左上角部213cは、いずれも、半径R1,R2が約12mmの円弧状に形成されている。
【0040】
本実施形態では、前述したように、右縁部212aが第1の側壁折曲線20aと平行であるため、右上角部213a及び右下角部213bのそれぞれから第1の側壁折曲線20aまでの最短距離L1は同一である。また、左縁部212bが第2の側壁折曲線20bと平行であるため、左上角部213c及び左下角部213dのそれぞれから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2は同一である。
【0041】
なお、本実施形態の右下角部213b及び左上角部213cのように丸みが付けられた角部の場合、対向する折曲線までの最短距離とは、丸みが付けられていない場合における角部から当該折曲線までの最短距離をいう。例えば、左上角部213cの場合、
図1に示すように、以下の交点Pから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2が、丸みが付けられていない場合における左上角部213cから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2に該当する。交点Pは、左縁部212bにより構成される開口面の外周辺を含む直線と、上縁部212cにより構成される開口面の外周辺を含む直線と、の交点である。
【0042】
角部から対向する折曲線までの最短距離は、特に限定されないが、例えば12mm以下であってもよい。また例えば、当該最短距離は、10mm以下であってもよい。本実施形態では、右上角部213a及び右下角部213bのそれぞれから第1の側壁折曲線20aまでの最短距離L1、及び、左上角部213c及び左下角部213dのそれぞれから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2は、いずれも約8mmである。
【0043】
[2.包装箱の製造方法]
次に、包装箱1の製造方法について説明する。具体的には、包装箱1の製造方法に含まれる、包装箱1の形成方法について説明する。包装箱1は、前述したように
図3に示すシート材1Aから形成される。シート材1Aは、前述した本体部2、蓋部3及び底部4を有する平面状の部材である。包装箱1の製造方法は、折り畳み工程と、接着工程と、筒状形成工程と、閉塞工程と、を備える。
【0044】
図4は、シート材1Aをうら面側から見た模式図である。シート材1Aのうら面とは、包装箱1の内面を構成する面である。折り畳み工程は、
図4に示すように、シート材1Aにおける本体部2の端部同士が重なるように、シート材1Aを平面状に折り畳む工程である。具体的には、シート材1Aにおける本体部2が、第1,第3の側壁折曲線20a,20cでシート材1Aのうら面側、つまり本体部2の内面側へ折り曲げられる。
図5に示すように本体部2の両端にそれぞれ位置する右側壁部22と糊代部25とが重なるまで、本体部2は折り曲げられる。これにより、本体部2、延いてはシート材1Aが、平面状に折り畳まれる。本体部2は、第1~第4の側壁折曲線20a~20dのうち、第1,第3の側壁折曲線20a,20cで既に折り曲げられ、第2,第4の側壁折曲線20b,20dでは未だ折り曲げられていない状態になる。また、糊代部25は、右側壁部22により覆われた状態になる。このとき、右側壁部22における第1の側壁折曲線20a側と反対側の外縁は、第4の側壁折曲線20dと略一致している。
【0045】
接着工程は、重ね合わされた糊代部25と右側壁部22とを接着する工程である。糊代部25及び右側壁部22は、例えば両面テープや接着剤等により互いに接着される。なお、接着工程は、折り畳み工程の後に独立して行われてもよいし、折り畳み工程と1つの工程として行われてもよい。
【0046】
続く筒状形成工程は、
図6に示すように、平面状に折り畳まれ、糊代部25と右側壁部22とが接着された状態の本体部2を、筒状に広げる工程である。具体的には、本体部2における左縁部212bに、開口211側から荷重Fが加えられる。より具体的には、左縁部212bに、開口211側から、前側壁部21が後側壁部24から離れる方向(
図6でいう手前側)へ、荷重Fが加えられる。これにより、本体部2は、第2,第4の側壁折曲線20b,20dで外面側に折り曲げられ、筒状に広げられる。第2,第4の側壁折曲線20b,20dは、平面状に折り畳まれた状態の本体部2を筒状に広げるための折曲線とも言い換えられる。本体部2が筒状に広げられることにより、商品を収容するための収容空間が形成される。
【0047】
なお、左縁部212bに荷重Fを加える手段は特に限定されず、例えば、人が左縁部212bを開口211側から押してもよいし、専用の装置を用いて左縁部212bが開口211側から押されてもよい。
【0048】
続く閉塞工程は、収容空間に商品が収容された状態において、本体部2の軸方向における両開口、つまり取出口10及びこれと反対側の開口を、蓋部3及び底部4によりそれぞれ閉塞する工程である。具体的には、蓋部3が開閉折曲線31及び中央折曲線32で本体部2の内面側へ折り曲げられ、差込片35がスリット241に差し込まれる。これにより、取出口10が閉塞される。また、2つの内フラップ41,42が開閉折曲線411,421でそれぞれ本体部2の内面側へ折り曲げられる。そして、外フラップ43が開閉折曲線431及び先端折曲線432で本体部2の内面側へ折り曲げられ、外フラップ43における差込フラップ部43bが、2つの内フラップ41,42と後側壁部24との隙間に差し込まれる。これにより、取出口10側と反対側の開口が閉塞される。
【0049】
なお、取出口10及びこれと反対側の開口のそれぞれを閉塞する順序は、特に限定されない。また例えば、先に取出口10及びこれと反対側の開口のうちの一方が閉塞されてから、収容空間に商品が収容され、その後に他方が閉塞されてもよい。
【0050】
[3.筒状形成工程におけるシート材の破れにくさの評価]
筒状形成工程において左縁部212bに荷重Fが加えられた場合、左縁部212bの両端の角部、つまり左上角部213c及び左下角部213dに負荷がかかりやすいことが考えられる。そこで、本発明者は、
図1に示す、左上角部213cに付けられる丸みの程度(つまり左上角部213cが構成する円弧の半径R2の大きさ)、及び、左上角部213c及び左下角部213dから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2を変更した複数のサンプルを用いて、筒状形成工程におけるシート材1Aの破れにくさの評価を行った。その評価方法及び評価結果について、以下に説明する。
【0051】
[3-1.評価方法]
おもて面が白色、うら面が鼠色のコートボール紙(秤量350g/m2)を用いて、上記半径R2及び上記最短距離L2の組み合わせが異なる複数のシート材1Aを作成した。上記半径R2は、1mm、3mm、5mm、8mm、10mm及び12mmの6通りとした。上記最短距離L2は、5mm、8mm、10mm及び12mmの4通りとした。1つの上記半径R2及び上記最短距離L2の組み合わせにつき、複数のシート材1Aを作成した。
【0052】
それぞれのシート材1Aについて、前述した折り畳み工程及び接着工程を実施し、平面状に折り畳まれ、糊代部25と右側壁部22とが接着された状態とした。
【0053】
その後、それぞれのシート材1Aについて、筒状形成工程を実施した。人が左縁部212bに荷重Fを加えて本体部2を筒状に広げる操作を行った。そして、その際の左上角部213c及び左下角部213dからのシート材1Aの破れやすさの評価を行った。具体的には、1つの上記半径R2及び上記最短距離L2の組み合わせにつき複数のシート材1Aを用い、当該複数のシート材1Aのうち左上角部213c又は左下角部213dから破れたシート材1Aの割合に応じて、「A:ほとんど破れない」、「B:あまり破れない」、「C:やや破れやすい」の3段階で評価を下した。
【0054】
[3-2.評価結果]
本評価結果を以下の表1に示す。表1に示すとおり、左上角部213cに丸みを付けることによりシート材1Aを破れにくくすることができた。
【0055】
特に、左上角部213cの丸みの程度、つまり上記半径R2を、3mm以上とすることにより、上記最短距離L2が12mmと狭い場合でも、本体部2を筒状に広げる操作においてシート材1Aを破れにくくすることができた。
【0056】
上記半径R2を5mm以上とすることにより、上記最短距離L2が10mmと一層狭い場合でも、本体部2を筒状に広げる操作においてシート材1Aを破れにくくすることができた。
【0057】
上記半径R2を8mm以上とすることにより、上記最短距離L2が8mm、5mmとより一層狭い場合でも、本体部2を筒状に広げる操作においてシート材1Aを破れにくくすることができた。
【0058】
【0059】
なお、「C:やや破れやすい」の評価結果であっても、必ずシート材1Aが破れてしまう訳ではないため、包装箱1に用いることは可能である。
【0060】
[4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0061】
(4a)包装箱1において、前側壁部21は、左縁部212bと、上縁部212cと、を有する。左縁部212bと上縁部212cとの成す左上角部213cは、半径R2が8mm以上の円弧状に形成されている。
【0062】
包装箱1の製造においては、平面状に折り畳まれた本体部2が、左縁部212bに開口211側から荷重Fが加えられることによって筒状に広げられることが考えられる。この場合に、上記のような構成によれば、左上角部213cにかかる負荷を分散しやすくすることができる。したがって、シート材1Aが破れてしまうことを抑制することができる。
【0063】
(4b)左上角部213cから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2は、12mm以下である。このような構成では、当該最短距離L2が12mm超である構成と比較して、左縁部212bに開口211側から荷重Fが加えられることによって筒状に広げられる場合に、シート材1Aが破れやすいことが考えられる。このような構成において、上記(4a)でも述べたように左上角部213cを半径R2が8mm以上の円弧状に形成することにより、シート材1Aが破れてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、前側壁部21、右側壁部22、左側壁部23及び後側壁部24が、複数の側壁部の一例に相当する。このうち、前側壁部21が第1の側壁部の一例に相当し、左側壁部23が第2の側壁部の一例に相当する。また、左縁部212b、上縁部212c及び下縁部212dが、第1~第3の縁部それぞれの一例に相当する。
【0065】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0066】
(5a)上記実施形態では、左縁部212bは、第2の側壁折曲線20bと平行であるが、必ずしも第2の側壁折曲線20bと平行でなくてもよい。言い換えれば、上記実施形態では、左縁部212bの両端にそれぞれ位置する左上角部213c及び左下角部213dのそれぞれから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2が同一であるが、これらが互いに異なってもよい。
【0067】
例えば、左上角部213c及び左下角部213dそれぞれから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2が互いに異なる場合、包装箱1の製造過程において、平面状に折り畳まれた本体部2が、左縁部212bに開口211側から荷重Fが加えられることによって筒状に広げられるときには、シート材1Aは、当該最短距離L2が遠い方の角部よりも近い方の角部から破れやすいことが考えられる。このため、第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2同士が異なる場合、左上角部213c及び左下角部213dのうち、当該最短距離L2が近い方の角部に、丸みが付けられてもよい。このような構成によれば、シート材1Aが破れてしまうことを一層抑制することができる。
【0068】
(5b)また例えば、左上角部213c及び左下角部213dそれぞれから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2が同一である場合には、左上角部213c及び左下角部213dのうち、上記実施形態のように左上角部213cに丸みが付けられてもよいし、左下角部213dに丸みが付けられてもよい。
【0069】
(5c)上記実施形態では、左上角部213c及び左下角部213dのうち、左上角部213cのみに丸みが付けられている。しかし、例えば、左上角部213c及び左下角部213dの双方に丸みが付けられてもよい。これは、仮に左上角部213c及び左下角部213dそれぞれから第2の側壁折曲線20bまでの最短距離L2が互いに異なる場合でも、同様である。
【0070】
左上角部213c及び左下角部213dの双方に丸みが付けられることにより、これらの一方のみに丸みが付けられた構成と比較して、包装箱1の製造過程において、平面状に折り畳まれた本体部2が、左縁部212bに開口211側から荷重Fが加えられることによって筒状に広げられる場合に、シート材1Aが破れてしまうことを一層抑制することができる。
【0071】
(5d)右上角部213a及び右下角部213bについても、いずれか一方のみに丸みが付けられてもよいし、双方に丸みが付けられてもよい。また例えば、双方に丸みが付けられなくてもよい。
【0072】
(5e)上記実施形態では、開口211の開口面は概ね長方形状であるが、当該開口面の形状は特に限定されない。開口211の開口面は、例えば、長方形状以外の四角形状であってもよいし、四角形以外の多角形状であってもよい。
【0073】
(5f)包装箱1の形状も特に限定されない。本体部2は、例えば、上記実施形態のように全体として四角筒を形成してもよいし、三角筒や、五角筒以上の角筒を形成してもよい。
【0074】
(5g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…包装箱、1A…シート材、2…本体部、20a~20d…第1~第4の側壁折曲線、21…前側壁部、22…右側壁部、23…左側壁部、24…後側壁部、25…糊代部、211…開口、212a…右縁部、212b…左縁部、212c…上縁部、212d…下縁部、213a…右上角部、213b…右下角部、213c…左上角部、213d…左下角部、3…蓋部、4…底部、L1,L2…最短距離、R1,R2…半径。