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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086446
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】シート状緩衝構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/293 20210101AFI20240620BHJP
   B29C 65/56 20060101ALI20240620BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240620BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240620BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240620BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240620BHJP
【FI】
H01M50/293
B29C65/56
H01M50/291
H01M50/204 401F
H01M10/658
H01M10/625
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201574
(22)【出願日】2022-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】591276307
【氏名又は名称】東和化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】小松 嘉博
【テーマコード(参考)】
4F211
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4F211AA45
4F211AD05
4F211AF01
4F211AG01
4F211AG03
4F211AG28
4F211AH33
4F211TA06
4F211TC09
4F211TN78
5H031AA09
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA07
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY06
5H040CC14
5H040CC25
5H040CC30
5H040CC38
5H040JJ03
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】ゴム材料を節約して、省資源に貢献するシート状緩衝構造体を提供する。
【解決手段】多数の貫孔1を有するプラスチックプレートPと、この貫孔1に嵌着された弾性ゴム材から成る多数の栓体3と、から構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫孔(1)を有するプラスチックプレート(P)と、
上記プレート(P)の各貫孔(1)に嵌着された弾性ゴム材から成る多数の栓体(3)と、
から構成されていることを特徴とするシート状緩衝構造体。
【請求項2】
上記貫孔(1)は円形孔であり、
上記栓体(3)は、先端(4)から基端(5)にゆくに従って外径寸法(D6 )が増加するテーパ状外周面(6)を有するコップ形状部(8)と、該コップ形状部(8)の基端(5)に連設された外鍔部(10)と、を有し、さらに、上記コップ形状部(8)と上記外鍔部(10)との隅部(C)には、上記プラスチックプレート(P)の上記貫孔(1)への嵌着状態下での抜け止めのための凹周溝(11)が、形成されている請求項1記載のシート状緩衝構造体。
【請求項3】
上記栓体(3)が上記貫孔(1)に嵌着された嵌着状態において、上記プラスチックプレート(P)の一面(31)には多数の上記コップ形状部(8)が散点状に突出し、他面(32)には多数の上記外鍔部(10)が散点状に突出し、
隣り合ったバッテリーセル(50)(50)の間に配設された挾持状態下で、上記プラスチックプレート(P)の一面(31)側及び他面(32)側に空気流路(A31)(A32)が形成される
請求項2記載のシート状緩衝構造体。
【請求項4】
一枚の弾性シート体(21)に、多数の栓体形成用凸部(22)を、格子配列状で縦・横各方向に密集状態として、配設形成し、
上記格子配列状の上記凸部(22)を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して、
栓体嵌着用の多数の貫孔(1)を有する第1プラスチックプレート(P1 )の該貫孔(1)に、取出した上記凸部(22)を嵌着し、
次に、上記弾性シート体(21)に一つ飛び状態で残留している残留凸部(22Z)を取出して、
栓体嵌着用の多数の貫孔(2)を有する第2プラスチックプレート(P2 )の該貫孔(2)に、取出した上記残留凸部(22Z)を嵌着し、
一枚の上記弾性シート体(21)から取出した凸部(22)(22Z)を、二枚の上記第1プラスチックプレート(P1 )、第2プラスチックプレート(P2 )に、非密集の分散状態として、配設することを、
特徴とするシート状緩衝構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの内部の複数のバッテリーセルの相互間に介装されるシート状緩衝構造体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図15(B)に例示するように、バッテリー用のシート状緩衝構造体39としては、ゴムプレート(薄肉ゴムシート部)40と、このゴムプレート(薄肉ゴムシート部)40から表て面側へ突出状の多数の凸部41とを、一体成形したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
バッテリーの内部で隣り合ったバッテリーセルとバッテリーセルの間に緩衝材として、図15(B)に示したシート状緩衝構造体39を介装して使用される。充電時のバッテリーセルの膨張に伴って、隣接するバッテリーセル同士が接触しようとするが、介装されたシート状緩衝構造体39の凸部41が弾性変形(圧縮)されることにより、バッテリーセル相互の異常接近を防止し、かつ、バッテリーセルを弾性的に支持する。
従来の全体形状は、図15(B)の正方形以外に、長方形や、その他の形状が知られているが、凸部41とゴムシート部40とは一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-119556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15(B)に示すように、一体加工される薄肉ゴムシート部40と多数の凸部41には、次のような問題(欠点)がある。
即ち、 (i) 金型取り数が少ない。 (ii) ゴム材の使用量が多い。最近、ゴム材が著しく高騰しており、ゴム材の多量使用が問題である。(iii) 薄いゴムシート形状であるのでゴム成形時にゴム材料が流れにくく、高温となり、かつ、ハイサイクル化が困難である。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点 (i)(ii)(iii)を解決し、金型取り数を大幅に増加できて、かつ、ゴム材の使用量を低減し、省資源化に寄与し、しかも、能率良く安価に製造できるシート状緩衝構造体と、その製造方法を、提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係るシート状緩衝構造体は、多数の貫孔を有するプラスチックプレートと;上記プレートの各貫孔に嵌着された弾性ゴム材から成る多数の栓体と;から構成されている。
また、上記貫孔は円形孔であり;上記栓体は、先端から基端にゆくに従って外径寸法が増加するテーパ状外周面を有するコップ形状部と、該コップ形状部の基端に連設された外鍔部と、を有し、さらに、上記コップ形状部と上記外鍔部との隅部には、上記プラスチックプレートの上記貫孔への嵌着状態下での抜け止めのための凹周溝が、形成されている。
また、上記栓体が上記貫孔に嵌着された嵌着状態において、上記プラスチックプレートの一面には多数の上記コップ形状部が散点状に突出し、他面には多数の上記外鍔部が散点状に突出し;隣り合ったバッテリーセルの間に配設された挾持状態下で、上記プラスチックプレートの一面側及び他面側に空気流路が形成される。
【0007】
また、本発明に係るシート状緩衝構造体の製造方法は、一枚の弾性シート体に、多数の栓体形成用凸部を、格子配列状で縦・横各方向に密集状態として、配設形成し;上記格子配列状の上記凸部を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔を有する第1プラスチックプレートの該貫孔に、取出した上記凸部を嵌着し;次に、上記弾性シート体に一つ飛び状態で残留している残留凸部を取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔を有する第2プラスチックプレートの該貫孔に、取出した上記残留凸部を嵌着し;一枚の上記弾性シート体から取出した凸部を、二枚の上記第1プラスチックプレート、第2プラスチックプレートに、非密集の分散状態として、配設する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るシート状緩衝構造体によれば、プレートをプラスチックとして栓体のみを弾性ゴム材としたので、ゴムの使用量を著しく減少でき、安価なシート状緩衝構造体を提供できる。
さらに、所定の大きさの金型から成形される栓体の取り数は、倍増することが可能となる。即ち、金型取り数を著しく多くできる。
また、本発明の製造方法によれば、一枚の弾性シートから取出した凸部を二枚のプラスチックプレートに取着することによって、各プラスチックプレートには分散状態に凸部を形成できる。
しかも、弾性シート体に密集状態の凸部を配設形成することで、二枚分のシート状緩衝構造体に必要な数の凸部を、一枚の弾性シート体によって、提供可能となる。即ち、ゴム材の使用量は50%近くまで、節約でき、省資源化に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態を示す横断面図である。
図2図1の一部位の拡大断面図である。
図3】プラスチックプレートの平面図である。
図4図3のIV-IV拡大断面図である。
図5】3つの異なる実施例を示した栓体の拡大断面図である。
図6】本発明の使用状態を示し、非膨張状態のバッテリーセルとバッテリーセルの間に、シート状緩衝構造体が介装された状態を、模式的に示した説明図である。
図7】本発明の使用状態を示し、膨張状態のバッテリーセルとバッテリーセルの間に、シート状緩衝構造体が介装された状態を、模式的に示した説明図である。
図8】栓体形成用凸部が密集状態で配設された一枚の弾性シート体と、第1プラスチックプレートと、第2プラスチックプレートを、並べて図示すると共に、栓体形成用凸部を弾性シート体から取出す前の状態の製造方法説明図である。
図9】一枚の弾性シート体の栓体形成用凸部の半分を、第1プラスチックプレートへ取着した状態を示した第一工程の説明図である。
図10】一枚の弾性シート体の栓体形成用凸部の残り半分を、第2プラスチックプレートへ取着する状態を示した第二工程の説明図である。
図11】突き出し治具を使用して、弾性シート体から栓体形成用凸部を取出した状態を示すと共に、プラスチックプレートの貫孔に対して上記凸部を嵌合させる直前の状態を示した説明図である。
図12】凸部をプラスチックプレートの貫孔に挿入した状態を示す説明図である。
図13】突き出し治具を受け治具から分離した状態を示す説明図である。
図14】作業完了状態を示した説明図である。
図15】シート状緩衝構造体について本発明と従来例を比較するための図であって、(A)の(イ)は本発明の一実施例の平面図、(A)の(ロ)はその横断面図であり、(B)の(イ)は従来例を示す平面図、(B)の(ロ)は従来例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1図4に於て、Pは多数の貫孔1を有するプラスチックプレートである。3は上記プレートPの多数の貫孔1に嵌着された弾性ゴム材から成る栓体である。プラスチックプレートPの肉厚寸法は、例えば、0.12mm~0.7 mmとする。好ましくは、0.15mm~0.4 mmが良い。その材質は、例えば、(難燃性及び自己消化性の)ポリカーボネイトが望ましいが、PET等の他のプラスチックとすることもできる。
上記貫孔1は円形孔とする。また、栓体3は、先端4から基端5にゆくに従って、外径寸法D6 がしだいに増加するテーパ状外周面6を有するコップ形状部8を、備えている。
【0011】
また、図2図5に(上下反転姿勢で)示す如く、コップ形状部8の上記基端5には外鍔部10が連設されている。さらに、コップ形状部8と外鍔部10との隅部Cには、小さな断面積の凹周溝11が形成されている。
具体的には、図5(A)では凹周溝11の断面形状は三角形状の場合を例示すると共に、図5(B)では小さな矩形状の場合を示す。また、図5(C)に示すように、凹周溝11の断面形状は奥部が小アール状の深溝型とすることも、自由である。
【0012】
図5(A)(B)(C)のいずれの断面形状の凹周溝11であっても、比較的肉厚の小さなプラスチックプレートPの貫孔1の内周端縁1Aが、スムーズに係合し、係止状態を安定維持できる。
なお、図5に示したように、先端4を閉鎖する、軸心と直交方向の先端壁部12は薄肉膜状とするのが、望ましい。また、上記先端壁部12によって閉鎖された中心孔部14は、開放端側に切欠部15を有する。
【0013】
プラスチックプレートPの形状は、図3に示すような長方形(矩形)、あるいは、図8図10に示す正方形等である。電気自動車等に搭載したバッテリー20に、本発明に係るシート状緩衝構造体Zを用いた状態を、模式的に図6図7に示す。
そして、図2、及び、図6図7に示すように、プラスチックプレートPの一面31には、多数のコップ形状部8が、散点状に突出し、しかも、他面32には多数の外鍔部10が、散点状として、突出している。
【0014】
従って、隣り合ったバッテリーセル50,50の間にシート状構造体Zを配設した挾持状態下で、プラスチックプレートPの一面31側と他面32側の両側に、各々、空気が流れるための空気流路A31,A32が形成される。
なお、図2に於ては、図6の使用状態を示すために、2点鎖線をもってバッテリーセル50,50を図示して、各プラスチックプレートPの両側に、空気流路A31,A32が形成されていることを、図示する。
【0015】
ところで、コップ形状部8(栓体3)の材質は、耐熱、耐寒性、難燃性を考慮して、シリコンゴムが好適である。なお、使用条件等によって、他の種類のゴムであってもよい場合もある。また、コップ形状部8(栓体3)は、肉厚を変えることで、バッテリーセル50の充放電によって生ずる圧力を、吸収して、応力調整機能を発揮することとなる。
【0016】
次に、図8図14に基づき本発明のシート状緩衝構造体の製造方法を、以下、説明する。
図8は、一枚の弾性シート体21と、2枚のプラスチックプレートP1 ,P2 とを示し、本発明にあっては、一枚の弾性シート体21には、本来必要な個数の2倍もの(多数の)栓体形成用凸部22を、縦・横各方向に密集状態として、形成する。
【0017】
ここで、「密集状態」について定義すると、縦方向と横方向の各々に隣り合った2個の凸部22と凸部22について言えば、図8に示したように、凸部22,22の外鍔部10,10の相互間隙寸法ΔGが、凸部22の外鍔部10の外径D22図5参照)の5%~25%に設定して、配設したことを言う。
数式で表記すれば、
0.05・D22≦ΔG≦0.25・D22・・・数式(1)
となるように、配設する。
【0018】
図8図9図10に於て、図の右側の上のプラスチックプレートを第1プラスチックプレートP1 と呼び、下のものを第2プラスチックプレートP2 と呼ぶこととする。第1プラスチックプレートP1 と第2プラスチックプレートP2 は、同一形状である。
しかも、図8図9図10から明らかなように、弾性シート体21にあっては、栓体形成用凸部22及び栓体打抜後の打抜孔23(図10参照)は、縦・横各方向に密集状態に配設されているのに対して、第1プラスチックプレートP1 と第2プラスチックプレートP2 の貫孔1は、非密集の分散状態に配設されている。即ち、具体的には、分散状態とは、密度が約半分である。
【0019】
そして、図8から図9に示すように、上記非密集の分散状態に配設された多数の貫孔1を有する第1プラスチックプレートP1 に対し、格子配列状に密集状の凸部22を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して、上記第1プラスチックプレートP1 の貫孔1に嵌着する(図9の矢印M1 参照)。
言い換えれば、密集状態に配設された弾性シート体21の多数の栓体形成用凸部22の半分の個数のみを、矢印M1 の如く、第1プラスチックプレートP1 に移しかえる(貫孔1に嵌着する)。
【0020】
多数の栓体形成用凸部22の内の約半数が(矢印M1 で示したように)第1プラスチックプレートP1 に移しかえられたために、図9に示す如く、打抜孔23と栓体形成用凸部22が交互に混在した状態となっている。
ここで、弾性シート体21に一つ飛び状態で残留している凸部22を(特に)残留凸部22Zと呼ぶこととする(図9参照)。
次工程においては、図9に示した残留凸部22Zを取出して、図10の矢印M2 に示す如く、第2プラスチックプレートP2 の貫孔2(図9参照)に、残留凸部22Zを、嵌着する。
【0021】
図10から明らかなように、上述の方法によれば、一枚の弾性シート体21から取出した凸部22を、第1プラスチックプレートP1 ・第2プラスチックプレートP2 に非密集の分散状態として、配設する。
図10に示した第1プラスチックプレートP1 と第2プラスチックプレートP2 には、同一の配置模様をもって、凸部22が配設され、図2に例示したように、栓体3が多数突出状として、形成できる。
【0022】
次に、図11図14は、上述の製造方法を、さらに具体的に追加説明する図である。かつ、製造装置についても追加説明する。
図11に於て、多数のピン25を有する突き出し治具24によって、(図8に示した)弾性シート体21から左右上下に一ピッチ飛びで凸部22を突き出して、ピン25の先端に栓体3を保持させる。
なお、下方にはプラスチックプレートP1 又はP2 と受け治具26が対応する。
【0023】
次工程では、図12に示すように、突き出し治具24を下降させる。この下降によって、プラスチックプレートP1 (P2 )及び受け治具26の貫孔に対して、栓体3が挿し込まれる(嵌合する)。
その後、図13に示すように、突き出し治具24を矢印U24のように上昇させると、受け治具26の貫孔に、栓体3が嵌合状態を保ち、かつ、プラスチックプレートP1 ,P2 が受け治具26の上面に残る。
【0024】
その次には、図14に示すように、プラスチックプレートP1 ,P2 と栓体3が一体に結合状態で受け治具26から分離できる。
この図14の状態とすることで、図9の右上に示した緩衝構造体Z、又は、図10に示した緩衝構造体Z,Zを作製できる。
この図11図14と、既に説明した図8図10とを、合わせて見れば、本発明に係るゴムとプラスチックから成る「シート状緩衝構造体Z」が、能率良く大量生産が可能であって、高品質のものを安定供給でき、ゴム材料の無駄が著しく低減できて、省資源に貢献できることが明らかとなる。
【0025】
本発明は、以上詳述したように、多数の貫孔1を有するプラスチックプレートPと;上記プレートPの各貫孔1に嵌着された弾性ゴム材から成る多数の栓体3と;から構成されているので、従来のようにゴムプレート40と(ゴムから成る)凸部41をもって一体形成されたシート状緩衝構造体39(図15(B)参照)にあっては、多量のゴム材を必要としていたが、本発明では、薄肉でかつ剛性の高いプラスチックプレートPを活用し、栓体3のみにゴム材を使用することで、最近の高騰している資源(ゴム)の使用量(使用比率)を、著しく低減できる。(言い換えると、)材料ロスの低減が図られて、生産上、製品取り数も倍増する。さらに、図6図7に示した使用状態下で、バッテリーセル50,50相互間に、常に安定した姿勢を維持できる。しかも、図6図7に示すように空気流路A31,A32も十分に大きく形成できて、空気断熱効果も優れる。従来の図15(B)に示した面積の大きいシート状緩衝構造体39は、ゴム材料の使用量も多く、かつ、生産において取り数も制約され、コスト高となり、生産効率も低いという問題点があったが、このような従来の問題点を、打抜き加工により簡単かつ安価に製作できるプラスチックプレートPの活用により、全て解決でき、実用上も優れたものと言える。
【0026】
また、本発明は、上記貫孔1は円形孔であり;上記栓体3は、先端4から基端5にゆくに従って外径寸法D6 が増加するテーパ状外周面6を有するコップ形状部8と、該コップ形状部8の基端5に連設された外鍔部10と、を有し、さらに、上記コップ形状部8と上記外鍔部10との隅部Cには、上記プラスチックプレートPの上記貫孔1への嵌着状態下での抜け止めのための凹周溝11が、形成されている構成であるので、テーパ状外周面6を有するコップ形状部8…を、貫孔1に容易かつ確実に挿入(嵌着)させることができる(図11図14の嵌着方法を参照)。さらに、図7に例示したような使用状況については、種々の使用条件の要望があるが、栓体3の外周面6の形状と寸法をそのまま保ちつつ、中心孔部14の寸法・形状(さらには先端壁部12の肉厚寸法)を、増減変更させることで、上記要望に柔軟に対応できる。
さらに、凹周溝11に対して、貫孔1の内周端縁が嵌着されて、確実に保持され、栓体3はプラスチックプレートPから不意に離脱することを、防止できる。
【0027】
また、上記栓体3が上記貫孔1に嵌着された嵌着状態において、上記プラスチックプレートPの一面31には多数の上記コップ形状部8が散点状に突出し、他面32には多数の上記外鍔部10が散点状に突出し;隣り合ったバッテリーセル50,50の間に配設された挾持状態下で、上記プラスチックプレートPの一面31側及び他面32側に空気流路A31,A32が形成される構成であるので、(図2及び図6図7に示したように、)空気流路A31,A32により大きな断熱効果が得られる。また、プラスチックプレートPはバッテリーセル50に接触することも防止している。要するに、このような構成によって、(車載)バッテリーセル50の充放電に伴ってのバッテリーセル50の膨張(図7参照)と収縮(図6参照)を吸収でき、緩衝作用と絶縁作用と難燃機能を十分に発揮できる。
【0028】
また、本発明に係るシート状緩衝構造体の製造方法によれば、一枚の弾性シート体21に、多数の栓体形成用凸部22を、格子配列状で縦・横各方向に密集状態として、配設形成し;上記格子配列状の上記凸部22を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔1を有する第1プラスチックプレートP1 の該貫孔1に、取出した上記凸部22を嵌着し;次に、上記弾性シート体21に一つ飛び状態で残留している残留凸部22Zを取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔2を有する第2プラスチックプレートP2 の該貫孔2に、取出した上記残留凸部22Zを嵌着し;一枚の上記弾性シート体21から取出した凸部22,22Zを、二枚の上記第1プラスチックプレートP1 、第2プラスチックプレートP2 に、非密集の分散状態として、配設するので、一枚の弾性シート体21から二枚のシート状緩衝構造体Z,Zが得られる(図10参照)。言い換えると、図15(B)に示した従来のシート状緩衝構造体39と同一外形寸法の弾性シート体21を用いて、同一外形寸法の二枚のシート状緩衝構造体Z,Zが得られる(図10参照)。
得られた(図10に示した)二枚のシート状緩衝構造体Z,Zの各々に突設されている凸部22の個数と配置は、図15(B)に示した従来例のシート状緩衝構造体39と、同一である。
従って、ゴム材の使用量は、従来の約半分にまで節約可能となって、(ゴム材に関しての)省資源にも大きく貢献できる。
【符号の説明】
【0029】
1 貫孔
2 貫孔
3 栓体
4 先端
5 基端
6 外周面
8 コップ形状部
10 外鍔部
11 凹周溝
20 バッテリー
21 弾性シート体
22 栓体形成用凸部
22Z 残留凸部
31 一面
32 他面
50 バッテリーセル
31 空気流路
32 空気流路
C 隅部
6 外径寸法
P プラスチックプレート
1 第1プラスチックプレート
2 第2プラスチックプレート
Z シート状緩衝構造体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー(20)の内部の複数のバッテリーセル(50)の相互間に介装されるシート状緩衝構造体であって、
多数の貫孔(1)が非密集の分散状態として配設されているプラスチックプレート(P)と、
上記プレート(P)の各貫孔(1)に嵌着された弾性ゴム材から成る多数の栓体(3)と、
から構成され
多数の上記栓体(3)が非密集の分散状態として配設されていることを特徴とするシート状緩衝構造体。
【請求項2】
上記貫孔(1)は円形孔であり、
上記栓体(3)は、先端(4)から基端(5)にゆくに従って外径寸法(D6 )が増加するテーパ状外周面(6)を有するコップ形状部(8)と、該コップ形状部(8)の基端(5)に連設された外鍔部(10)と、を有し、さらに、上記コップ形状部(8)と上記外鍔部(10)との隅部(C)には、上記プラスチックプレート(P)の上記貫孔(1)への嵌着状態下での抜け止めのための凹周溝(11)が、形成されている請求項1記載のシート状緩衝構造体。
【請求項3】
上記栓体(3)が上記貫孔(1)に嵌着された嵌着状態において、上記プラスチックプレート(P)の一面(31)には多数の上記コップ形状部(8)が散点状に突出し、他面(32)には多数の上記外鍔部(10)が散点状に突出し、
隣り合ったバッテリーセル(50)(50)の間に配設された挾持状態下で、上記プラスチックプレート(P)の一面(31)側及び他面(32)側に空気流路(A31)(A32)が形成される
請求項2記載のシート状緩衝構造体。
【請求項4】
バッテリー(20)の内部の複数のバッテリーセル(50)の相互間に介装されるシート状緩衝構造体の製造方法であって、
一枚の弾性シート体(21)に、多数の栓体形成用凸部(22)を、格子配列状で縦・横各方向に密集状態として、配設形成し、
上記格子配列状の上記凸部(22)を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して、
栓体嵌着用の多数の貫孔(1)を有する第1プラスチックプレート(P1 )の該貫孔(1)に、取出した上記凸部(22)を嵌着し、
次に、上記弾性シート体(21)に一つ飛び状態で残留している残留凸部(22Z)を取出して、
栓体嵌着用の多数の貫孔(2)を有する第2プラスチックプレート(P2 )の該貫孔(2)に、取出した上記残留凸部(22Z)を嵌着し、
一枚の上記弾性シート体(21)から取出した凸部(22)(22Z)を、二枚の上記第1プラスチックプレート(P1 )、第2プラスチックプレート(P2 )に、非密集の分散状態として、配設することを、
特徴とするシート状緩衝構造体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの内部の複数のバッテリーセルの相互間に介装されるシート状緩衝構造体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図15(B)に例示するように、バッテリー用のシート状緩衝構造体39としては、ゴムプレート(薄肉ゴムシート部)40と、このゴムプレート(薄肉ゴムシート部)40から表て面側へ突出状の多数の凸部41とを、一体成形したものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
バッテリーの内部で隣り合ったバッテリーセルとバッテリーセルの間に緩衝材として、図15(B)に示したシート状緩衝構造体39を介装して使用される。充電時のバッテリーセルの膨張に伴って、隣接するバッテリーセル同士が接触しようとするが、介装されたシート状緩衝構造体39の凸部41が弾性変形(圧縮)されることにより、バッテリーセル相互の異常接近を防止し、かつ、バッテリーセルを弾性的に支持する。
従来の全体形状は、図15(B)の正方形以外に、長方形や、その他の形状が知られているが、凸部41とゴムシート部40とは一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-119556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15(B)に示すように、一体加工される薄肉ゴムシート部40と多数の凸部41には、次のような問題(欠点)がある。
即ち、 (i) 金型取り数が少ない。 (ii) ゴム材の使用量が多い。最近、ゴム材が著しく高騰しており、ゴム材の多量使用が問題である。(iii) 薄いゴムシート形状であるのでゴム成形時にゴム材料が流れにくく、高温となり、かつ、ハイサイクル化が困難である。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点 (i)(ii)(iii)を解決し、金型取り数を大幅に増加できて、かつ、ゴム材の使用量を低減し、省資源化に寄与し、しかも、能率良く安価に製造できるシート状緩衝構造体と、その製造方法を、提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係るシート状緩衝構造体は、バッテリーの内部の複数のバッテリーセルの相互間に介装されるシート状緩衝構造体であって;多数の貫孔が非密集の分散状態として配設されているプラスチックプレートと;上記プレートの各貫孔に嵌着された弾性ゴム材から成る多数の栓体と;から構成され;多数の上記栓体が非密集の分散状態として配設されている
また、上記貫孔は円形孔であり;上記栓体は、先端から基端にゆくに従って外径寸法が増加するテーパ状外周面を有するコップ形状部と、該コップ形状部の基端に連設された外鍔部と、を有し、さらに、上記コップ形状部と上記外鍔部との隅部には、上記プラスチックプレートの上記貫孔への嵌着状態下での抜け止めのための凹周溝が、形成されている。
また、上記栓体が上記貫孔に嵌着された嵌着状態において、上記プラスチックプレートの一面には多数の上記コップ形状部が散点状に突出し、他面には多数の上記外鍔部が散点状に突出し;隣り合ったバッテリーセルの間に配設された挾持状態下で、上記プラスチックプレートの一面側及び他面側に空気流路が形成される。
【0007】
また、本発明に係るシート状緩衝構造体の製造方法は、バッテリーの内部の複数のバッテリーセルの相互間に介装されるシート状緩衝構造体の製造方法であって;一枚の弾性シート体に、多数の栓体形成用凸部を、格子配列状で縦・横各方向に密集状態として、配設形成し;上記格子配列状の上記凸部を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔を有する第1プラスチックプレートの該貫孔に、取出した上記凸部を嵌着し;次に、上記弾性シート体に一つ飛び状態で残留している残留凸部を取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔を有する第2プラスチックプレートの該貫孔に、取出した上記残留凸部を嵌着し;一枚の上記弾性シート体から取出した凸部を、二枚の上記第1プラスチックプレート、第2プラスチックプレートに、非密集の分散状態として、配設する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るシート状緩衝構造体によれば、プレートをプラスチックとして栓体のみを弾性ゴム材としたので、ゴムの使用量を著しく減少でき、安価なシート状緩衝構造体を提供できる。
さらに、所定の大きさの金型から成形される栓体の取り数は、倍増することが可能となる。即ち、金型取り数を著しく多くできる。
また、本発明の製造方法によれば、一枚の弾性シートから取出した凸部を二枚のプラスチックプレートに取着することによって、各プラスチックプレートには分散状態に凸部を形成できる。
しかも、弾性シート体に密集状態の凸部を配設形成することで、二枚分のシート状緩衝構造体に必要な数の凸部を、一枚の弾性シート体によって、提供可能となる。即ち、ゴム材の使用量は50%近くまで、節約でき、省資源化に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態を示す横断面図である。
図2図1の一部位の拡大断面図である。
図3】プラスチックプレートの平面図である。
図4図3のIV-IV拡大断面図である。
図5】3つの異なる実施例を示した栓体の拡大断面図である。
図6】本発明の使用状態を示し、非膨張状態のバッテリーセルとバッテリーセルの間に、シート状緩衝構造体が介装された状態を、模式的に示した説明図である。
図7】本発明の使用状態を示し、膨張状態のバッテリーセルとバッテリーセルの間に、シート状緩衝構造体が介装された状態を、模式的に示した説明図である。
図8】栓体形成用凸部が密集状態で配設された一枚の弾性シート体と、第1プラスチックプレートと、第2プラスチックプレートを、並べて図示すると共に、栓体形成用凸部を弾性シート体から取出す前の状態の製造方法説明図である。
図9】一枚の弾性シート体の栓体形成用凸部の半分を、第1プラスチックプレートへ取着した状態を示した第一工程の説明図である。
図10】一枚の弾性シート体の栓体形成用凸部の残り半分を、第2プラスチックプレートへ取着する状態を示した第二工程の説明図である。
図11】突き出し治具を使用して、弾性シート体から栓体形成用凸部を取出した状態を示すと共に、プラスチックプレートの貫孔に対して上記凸部を嵌合させる直前の状態を示した説明図である。
図12】凸部をプラスチックプレートの貫孔に挿入した状態を示す説明図である。
図13】突き出し治具を受け治具から分離した状態を示す説明図である。
図14】作業完了状態を示した説明図である。
図15】シート状緩衝構造体について本発明と従来例を比較するための図であって、(A)の(イ)は本発明の一実施例の平面図、(A)の(ロ)はその横断面図であり、(B)の(イ)は従来例を示す平面図、(B)の(ロ)は従来例の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1図4に於て、Pは多数の貫孔1を有するプラスチックプレートである。3は上記プレートPの多数の貫孔1に嵌着された弾性ゴム材から成る栓体である。プラスチックプレートPの肉厚寸法は、例えば、0.12mm~0.7 mmとする。好ましくは、0.15mm~0.4 mmが良い。その材質は、例えば、(難燃性及び自己消化性の)ポリカーボネイトが望ましいが、PET等の他のプラスチックとすることもできる。
上記貫孔1は円形孔とする。また、栓体3は、先端4から基端5にゆくに従って、外径寸法D6 がしだいに増加するテーパ状外周面6を有するコップ形状部8を、備えている。
【0011】
また、図2図5に(上下反転姿勢で)示す如く、コップ形状部8の上記基端5には外鍔部10が連設されている。さらに、コップ形状部8と外鍔部10との隅部Cには、小さな断面積の凹周溝11が形成されている。
具体的には、図5(A)では凹周溝11の断面形状は三角形状の場合を例示すると共に、図5(B)では小さな矩形状の場合を示す。また、図5(C)に示すように、凹周溝11の断面形状は奥部が小アール状の深溝型とすることも、自由である。
【0012】
図5(A)(B)(C)のいずれの断面形状の凹周溝11であっても、比較的肉厚の小さなプラスチックプレートPの貫孔1の内周端縁1Aが、スムーズに係合し、係止状態を安定維持できる。
なお、図5に示したように、先端4を閉鎖する、軸心と直交方向の先端壁部12は薄肉膜状とするのが、望ましい。また、上記先端壁部12によって閉鎖された中心孔部14は、開放端側に切欠部15を有する。
【0013】
プラスチックプレートPの形状は、図3に示すような長方形(矩形)、あるいは、図8図10に示す正方形等である。電気自動車等に搭載したバッテリー20に、本発明に係るシート状緩衝構造体Zを用いた状態を、模式的に図6図7に示す。
そして、図2、及び、図6図7に示すように、プラスチックプレートPの一面31には、多数のコップ形状部8が、散点状に突出し、しかも、他面32には多数の外鍔部10が、散点状として、突出している。
【0014】
従って、隣り合ったバッテリーセル50,50の間にシート状構造体Zを配設した挾持状態下で、プラスチックプレートPの一面31側と他面32側の両側に、各々、空気が流れるための空気流路A31,A32が形成される。
なお、図2に於ては、図6の使用状態を示すために、2点鎖線をもってバッテリーセル50,50を図示して、各プラスチックプレートPの両側に、空気流路A31,A32が形成されていることを、図示する。
【0015】
ところで、コップ形状部8(栓体3)の材質は、耐熱、耐寒性、難燃性を考慮して、シリコンゴムが好適である。なお、使用条件等によって、他の種類のゴムであってもよい場合もある。また、コップ形状部8(栓体3)は、肉厚を変えることで、バッテリーセル50の充放電によって生ずる圧力を、吸収して、応力調整機能を発揮することとなる。
【0016】
次に、図8図14に基づき本発明のシート状緩衝構造体の製造方法を、以下、説明する。
図8は、一枚の弾性シート体21と、2枚のプラスチックプレートP1 ,P2 とを示し、本発明にあっては、一枚の弾性シート体21には、本来必要な個数の2倍もの(多数の)栓体形成用凸部22を、縦・横各方向に密集状態として、形成する。
【0017】
ここで、「密集状態」について定義すると、縦方向と横方向の各々に隣り合った2個の凸部22と凸部22について言えば、図8に示したように、凸部22,22の外鍔部10,10の相互間隙寸法ΔGが、凸部22の外鍔部10の外径D22図5参照)の5%~25%に設定して、配設したことを言う。
数式で表記すれば、
0.05・D22≦ΔG≦0.25・D22・・・数式(1)
となるように、配設する。
【0018】
図8図9図10に於て、図の右側の上のプラスチックプレートを第1プラスチックプレートP1 と呼び、下のものを第2プラスチックプレートP2 と呼ぶこととする。第1プラスチックプレートP1 と第2プラスチックプレートP2 は、同一形状である。
しかも、図8図9図10から明らかなように、弾性シート体21にあっては、栓体形成用凸部22及び栓体打抜後の打抜孔23(図10参照)は、縦・横各方向に密集状態に配設されているのに対して、第1プラスチックプレートP1 と第2プラスチックプレートP2 の貫孔1は、非密集の分散状態に配設されている。即ち、具体的には、分散状態とは、密度が約半分である。
【0019】
そして、図8から図9に示すように、上記非密集の分散状態に配設された多数の貫孔1を有する第1プラスチックプレートP1 に対し、格子配列状に密集状の凸部22を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して、上記第1プラスチックプレートP1 の貫孔1に嵌着する(図9の矢印M1 参照)。
言い換えれば、密集状態に配設された弾性シート体21の多数の栓体形成用凸部22の半分の個数のみを、矢印M1 の如く、第1プラスチックプレートP1 に移しかえる(貫孔1に嵌着する)。
【0020】
多数の栓体形成用凸部22の内の約半数が(矢印M1 で示したように)第1プラスチックプレートP1 に移しかえられたために、図9に示す如く、打抜孔23と栓体形成用凸部22が交互に混在した状態となっている。
ここで、弾性シート体21に一つ飛び状態で残留している凸部22を(特に)残留凸部22Zと呼ぶこととする(図9参照)。
次工程においては、図9に示した残留凸部22Zを取出して、図10の矢印M2 に示す如く、第2プラスチックプレートP2 の貫孔2(図9参照)に、残留凸部22Zを、嵌着する。
【0021】
図10から明らかなように、上述の方法によれば、一枚の弾性シート体21から取出した凸部22を、第1プラスチックプレートP1 ・第2プラスチックプレートP2 に非密集の分散状態として、配設する。
図10に示した第1プラスチックプレートP1 と第2プラスチックプレートP2 には、同一の配置模様をもって、凸部22が配設され、図2に例示したように、栓体3が多数突出状として、形成できる。
【0022】
次に、図11図14は、上述の製造方法を、さらに具体的に追加説明する図である。かつ、製造装置についても追加説明する。
図11に於て、多数のピン25を有する突き出し治具24によって、(図8に示した)弾性シート体21から左右上下に一ピッチ飛びで凸部22を突き出して、ピン25の先端に栓体3を保持させる。
なお、下方にはプラスチックプレートP1 又はP2 と受け治具26が対応する。
【0023】
次工程では、図12に示すように、突き出し治具24を下降させる。この下降によって、プラスチックプレートP1 (P2 )及び受け治具26の貫孔に対して、栓体3が挿し込まれる(嵌合する)。
その後、図13に示すように、突き出し治具24を矢印U24のように上昇させると、受け治具26の貫孔に、栓体3が嵌合状態を保ち、かつ、プラスチックプレートP1 ,P2 が受け治具26の上面に残る。
【0024】
その次には、図14に示すように、プラスチックプレートP1 ,P2 と栓体3が一体に結合状態で受け治具26から分離できる。
この図14の状態とすることで、図9の右上に示した緩衝構造体Z、又は、図10に示した緩衝構造体Z,Zを作製できる。
この図11図14と、既に説明した図8図10とを、合わせて見れば、本発明に係るゴムとプラスチックから成る「シート状緩衝構造体Z」が、能率良く大量生産が可能であって、高品質のものを安定供給でき、ゴム材料の無駄が著しく低減できて、省資源に貢献できることが明らかとなる。
【0025】
本発明は、以上詳述したように、バッテリー20の内部の複数のバッテリーセル50の相互間に介装されるシート状緩衝構造体であって;多数の貫孔1が非密集の分散状態として配設されているプラスチックプレートPと;上記プレートPの各貫孔1に嵌着された弾性ゴム材から成る多数の栓体3と;から構成され;多数の上記栓体3が非密集の分散状態として配設されているので、従来のようにゴムプレート40と(ゴムから成る)凸部41をもって一体形成されたシート状緩衝構造体39(図15(B)参照)にあっては、多量のゴム材を必要としていたが、本発明では、薄肉でかつ剛性の高いプラスチックプレートPを活用し、栓体3のみにゴム材を使用することで、最近の高騰している資源(ゴム)の使用量(使用比率)を、著しく低減できる。(言い換えると、)材料ロスの低減が図られて、生産上、製品取り数も倍増する。さらに、図6図7に示した使用状態下で、バッテリーセル50,50相互間に、常に安定した姿勢を維持できる。しかも、図6図7に示すように空気流路A31,A32も十分に大きく形成できて、空気断熱効果も優れる。従来の図15(B)に示した面積の大きいシート状緩衝構造体39は、ゴム材料の使用量も多く、かつ、生産において取り数も制約され、コスト高となり、生産効率も低いという問題点があったが、このような従来の問題点を、打抜き加工により簡単かつ安価に製作できるプラスチックプレートPの活用により、全て解決でき、実用上も優れたものと言える。
【0026】
また、本発明は、上記貫孔1は円形孔であり;上記栓体3は、先端4から基端5にゆくに従って外径寸法D6 が増加するテーパ状外周面6を有するコップ形状部8と、該コップ形状部8の基端5に連設された外鍔部10と、を有し、さらに、上記コップ形状部8と上記外鍔部10との隅部Cには、上記プラスチックプレートPの上記貫孔1への嵌着状態下での抜け止めのための凹周溝11が、形成されている構成であるので、テーパ状外周面6を有するコップ形状部8…を、貫孔1に容易かつ確実に挿入(嵌着)させることができる(図11図14の嵌着方法を参照)。さらに、図7に例示したような使用状況については、種々の使用条件の要望があるが、栓体3の外周面6の形状と寸法をそのまま保ちつつ、中心孔部14の寸法・形状(さらには先端壁部12の肉厚寸法)を、増減変更させることで、上記要望に柔軟に対応できる。
さらに、凹周溝11に対して、貫孔1の内周端縁が嵌着されて、確実に保持され、栓体3はプラスチックプレートPから不意に離脱することを、防止できる。
【0027】
また、上記栓体3が上記貫孔1に嵌着された嵌着状態において、上記プラスチックプレートPの一面31には多数の上記コップ形状部8が散点状に突出し、他面32には多数の上記外鍔部10が散点状に突出し;隣り合ったバッテリーセル50,50の間に配設された挾持状態下で、上記プラスチックプレートPの一面31側及び他面32側に空気流路A31,A32が形成される構成であるので、(図2及び図6図7に示したように、)空気流路A31,A32により大きな断熱効果が得られる。また、プラスチックプレートPはバッテリーセル50に接触することも防止している。要するに、このような構成によって、(車載)バッテリーセル50の充放電に伴ってのバッテリーセル50の膨張(図7参照)と収縮(図6参照)を吸収でき、緩衝作用と絶縁作用と難燃機能を十分に発揮できる。
【0028】
また、本発明は、バッテリー20の内部の複数のバッテリーセル50の相互間に介装されるシート状緩衝構造体の製造方法であって、一枚の弾性シート体21に、多数の栓体形成用凸部22を、格子配列状で縦・横各方向に密集状態として、配設形成し;上記格子配列状の上記凸部22を、左右方向及び上下方向に一つ飛び状態で取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔1を有する第1プラスチックプレートP1 の該貫孔1に、取出した上記凸部22を嵌着し;次に、上記弾性シート体21に一つ飛び状態で残留している残留凸部22Zを取出して;栓体嵌着用の多数の貫孔2を有する第2プラスチックプレートP2 の該貫孔2に、取出した上記残留凸部22Zを嵌着し;一枚の上記弾性シート体21から取出した凸部22,22Zを、二枚の上記第1プラスチックプレートP1 ,第2プラスチックプレートP2 に、非密集の分散状態として、配設するので、一枚の弾性シート体21から二枚のシート状緩衝構造体Z,Zが得られる(図10参照)。言い換えると、図15(B)に示した従来のシート状緩衝構造体39と同一外形寸法の弾性シート体21を用いて、同一外形寸法の二枚のシート状緩衝構造体Z,Zが得られる(図10参照)。
得られた(図10に示した)二枚のシート状緩衝構造体Z,Zの各々に突設されている凸部22の個数と配置は、図15(B)に示した従来例のシート状緩衝構造体39と、同一である。
従って、ゴム材の使用量は、従来の約半分にまで節約可能となって、(ゴム材に関しての)省資源にも大きく貢献できる。
【符号の説明】
【0029】
1 貫孔
2 貫孔
3 栓体
4 先端
5 基端
6 外周面
8 コップ形状部
10 外鍔部
11 凹周溝
20 バッテリー
21 弾性シート体
22 栓体形成用凸部
22Z 残留凸部
31 一面
32 他面
50 バッテリーセル
31 空気流路
32 空気流路
C 隅部
6 外径寸法
P プラスチックプレート
1 第1プラスチックプレート
2 第2プラスチックプレート
Z シート状緩衝構造体