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特開2024-86463情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086463
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240620BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201601
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】王 亜成
(72)【発明者】
【氏名】國信 茂太
(72)【発明者】
【氏名】愛須 英之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 琢史
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】取引市場への商品の入札を支援する情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】本開示の情報処理装置は、商品の取引市場の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた市場価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記取引可能期間のうち前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定する処理部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引市場で商品の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた市場価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記取引可能期間のうち前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定する処理部
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記価格変動モデルに基づき前記入札タイミングにおける前記市場価格を予測し、
前記処理部は、前記1つ以上の入札タイミングで入札する入札量の合計に関する制約条件と、前記入札量と前記市場価格とに基づく総取引額の最適化基準とに基づき、前記1つ以上の入札タイミングと、前記入札量とを決定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、予測した前記市場価格に基づき、前記取引市場に入札する入札価格をさらに決定する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記商品は電力であり、
前記制約条件は、前記入札量の合計が、発電事業者における発電装置の発電予測量と、前記発電事業者の電力供給計画量との差分に一致する、又は前記合計と前記差分との差が前記入札量の最小入札単位以下であることである
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記最適化基準は、前記入札が売り入札の場合に前記総取引額を最大にすること又は前記入札が買い入札の場合に前記総取引額を最小にすることである
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記入札タイミングと前記入札量とを、前記取引市場に入札する入札タイミング及び入札量としてユーザに推奨する出力データを生成する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記価格変動モデルに基づき前記入札タイミングにおける前記市場価格を予測し、予測した前記市場価格を、前記取引市場への入札を推奨する入札価格として前記出力データに含める
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記処理部は、予測した前記市場価格が上限価格を超える場合は、前記取引市場への入札を推奨する入札価格として前記上限価格を前記出力データに含め、予測した前記市場価格が下限価格を下回る場合は、前記取引市場への入札を推奨する入札価格として前記下限価格を前記出力データに含める
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記取引市場における取引の処理を行う取引市場装置から前記取引の実績データを取得する市場データ取得部を備え、
前記処理部は、前記取引市場に対し、前記出力データに基づき行われた入札のうち約定した入札量を前記実績データに基づき算出し、算出した入札量を前記入札量の合計から減算し、
前記処理部は、前記対象時刻を更新し、更新後の前記対象時刻に基づき、減算後の入札量を入札する1つ以上の入札タイミングと、入札量とを決定する
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記取引可能期間は、複数の入札時間枠を含み、
前記処理部は、前記複数の入札時間枠のうち最初の時間枠の開始時刻又は前記開始時刻以前の時刻を前記対象時刻に設定し、前記複数の入札時間枠をそれぞれ前記入札タイミングとして、各前記入札時間枠に対して前記入札量を決定する
請求項2~9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記価格変動モデルは、第1~第Nの入札時間枠ごとに複数の入札量に対応する複数の係数を含み、
前記取引市場における取引の処理を行う取引市場装置から前記取引の実績データを取得する市場データ取得部を備え、
前記処理部は、第Y(Yは1以上の整数)の入札時間枠における複数の入札量に関連する複数のノードを生成し、前記ノードの子ノードとして、第Y+1の入札時間枠における複数の入札量に関連する複数のノードを生成することにより、複数のノードが階層的に接続された木構造を生成し、
前記第1の入札時間枠に対して前記複数の入札量に応じた市場価格を、前記実績データの市場価格と、前記入札量に対応する前記係数とに基づき予測し、予測した前記市場価格を前記複数の入札量に関連する前記複数のノードに関連付け、
第X(Xは2以上N以下の整数)の入札時間枠に対して複数の入札量に応じた市場価格を、前記複数のノードの親ノードに関連する市場価格と、前記入札量に対応する前記係数とに基づき予測し、予測した前記市場価格を前記複数の入札量に関連する前記複数のノードに関連付け、
前記木構造の根ノードから葉ノードへ至る複数のパスごとに前記パスに含まれるノードに関連する前記入札量と前記市場価格とに基づき総取引額を計算し、計算した前記総取引額に基づき前記複数のパスからパスを選択し、選択した前記パスに含まれる各ノードに関連する入札量を、前記第1~第Nの入札時間枠ごとの前記入札量に決定する
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第Y+1の入札時間枠に対して生成した前記複数のノードのそれぞれへの前記根ノードからの部分パスを特定し、前記部分パスに基づき前記複数のノードのそれぞれにおける部分取引額を計算し、前記複数のノードにおける前記部分取引額と前記市場価格とを比較して、前記複数のノードからノードを選択し、選択したノードについては子ノードを生成しない
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記市場価格に前記係数を乗算し、乗算結果を前記市場価格に加算することにより、前記市場価格を予測する
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記入札時間枠が時間的により遅いほど、かつ前記入札量が大きいほど、より大きい又は小さい値を係数として算出する
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記処理部は、前記取引市場における過去の取引の実績データに基づき市場価格の変動情報を算出し、前記変動情報に基づき乱数を生成し、前記乱数を用いて前記係数を算出する
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記変動情報は、前記市場価格の変動率を表し、
前記処理部は、前記変動率と、前記第1~第Nの入札時間枠の個数と、前記複数の入札量の個数とに基づき、前記乱数の値の範囲を決定し、前記範囲から前記乱数を生成する
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記乱数の値の範囲は、前記予測した市場価格の変動率が前記変動率以下となる範囲である
請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記市場データ取得部は、前記取引市場装置から更新された取引の実績データを取得し、
前記処理部は、前記更新された取引の実績データに基づき前記変動率を更新し、更新後の変動率に基づいて、前記価格変動モデルを更新する
請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記取引市場は、前記電力の時間前市場であり、
前記電力供給計画量は、前記発電事業者が1日前市場で約定した売り入札の電力量である
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記商品は、電力である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項21】
前記処理部は、前記取引市場に入札する入札価格をさらに決定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項22】
取引市場での商品の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた前記商品の価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定する
情報処理方法。
【請求項23】
取引市場での商品の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた前記商品の価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定するステップ
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
JEPX(日本卸電力取引所)では、第一主要取引市場としてスポット市場(1日前市場)が開設されている。スポット市場では翌日に受渡する電力の取引がなされる。また、JEPXでは、スポット市場で取引された後の電力の過不足に対応する調整市場として時間前市場が開設されている。
【0003】
相対取引および市場での約定量と、発電量の実績値との差分はインバランスとして、発電事業者にペナルティが課せられる。一般的に、発電量の計画値と相対取引量との差分をスポット市場で入札しておく。スポット市場閉場後に発生する発電量変化に起因するインバランスの発生は、直接に発電事業者の利益に影響を与えるため、発電事業者は、時間前市場を利用してインバランスの発生を回避し、併せて収益確保することが望ましい。
【0004】
しかしながら、現在の時間前市場では取引の流動性が低いため、発電事業者自身の売買が市場価格へ大きく影響する。また取引可能期間において取引終了時刻に近くなるほど入札が不成立となるリスクある。また、現時刻から入札時刻までの期間が長いほど価格変動リスクが上昇する傾向がある。自身の売買による影響、入札不成立リスク及び価格変動リスクを考慮しないで時間前市場でインバランスの解消のための電力の取引を行うと、発電事業者の利益が下がる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-215693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、取引市場への商品の入札を支援する情報処理装置、情報処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の情報処理装置は、取引市場での商品の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた市場価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記取引可能期間のうち前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定する処理部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る情報処理装置である取引戦略算出装置の一例のブロック図。
図2】48個の商品の例を示す。
図3】取引可能期間の説明図。
図4A】予測インバランスの例を示す図。
図4B】予測インバランスの他の例を示す図。
図5】予測インバランスに対して全入札パターンを表す木構造の例を示す図。
図6】最適取引戦略算出部の処理の具体例を説明する図。
図7】最適取引戦略算出部により推奨された入札内容に基づく推奨結果データの例を示す図。
図8】本実施形態に係る取引戦略算出装置の処理の一例のフローチャート。
図9】枝刈り探索の説明図。
図10図1又は図13の装置のハードウェア構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置である取引戦略算出装置1の一例のブロック図である。取引戦略算出装置1は、市場データ取得部11、価格インパクト表生成部12、価格インパクト表入力部13、発電事業者データベース14、発電量予測部15、予測インバランス算出部16、入力データ取得部17、最適取引戦略算出部18、出力データ取得部19、出力部20、インバランス料金予測値取得部10を備えている。各部10~13、15~20のうちの少なくとも一部は本実施形態に係る処理を行う処理部に対応する。
【0011】
取引戦略算出装置1は、時間前市場取引装置21、発電装置31、気象サーバ41及びユーザ装置51に、通信ネットワークを介して接続されている。通信ネットワークは、例えばインターネットであり、有線ネットワーク、無線ネットワーク又はこれらのハイブリッドのネットワークを含む。
【0012】
発電装置31は例えば、太陽光発電装置又は風力発電装置など再生可能エネルギー発電装置を含む。発電装置31は、発電事業者により用いられる。発電事業者は発電装置31により発電した電力を需要者に供給(売却等)する。
【0013】
気象サーバ41は過去の気象情報を記憶及び管理するとともに、数値気象計算により将来の気象予測を行うサーバである。
【0014】
時間前市場取引装置21は、電力取引市場の一例としてJEPX(日本卸電力取引所)に設置された時間前市場における取引の処理を行う装置である。本実施形態では商品として電力を取引する場合を想定するが、商品は、ガス、水素、コーヒー豆、トウモロコシなど市場で取引されるものであれば、取引される対象は電力に限定されない。
【0015】
ユーザ装置51は、取引戦略算出装置1に対して各種指示またはデータを入力するユーザにより使用される装置である。ユーザ装置51は時間前市場取引装置21に入札の指示を送信することができてもよい。ユーザは、例えば発電事業者又はその委託を受けた事業者に属する。
【0016】
(市場データ取得部11)
市場データ取得部11は、通信ネットワークを介して時間前市場取引装置21と接続されており、時間前市場取引装置21から時間前市場(電力取引市場)に関するデータを取得する。
【0017】
図2及び図3を用いて時間前市場について説明する。電力の計量単位(30分)で1日が48個の時間コマ(商品コマ)に分割され、時間コマ別に電力(商品)が取引される。各時間コマは互いに商品として独立している。時間コマ別に1時間前市場が存在する。
【0018】
図2は、48個の商品の例を示す。例えば一番上の商品は、ある日の“00:00-00:30”の時間コマで取引対象となる電力である。各時間コマに対し、入札可能期間(取引可能期間)の間、取引(入札と約定)がリアルタイムに繰り返される。この取引の方式は、いわゆるザラバ方式と呼ばれる。
【0019】
図3は、取引可能期間の説明図である。取引可能期間は、商品ごとに、市場開場時刻から、商品の受渡の1時間前の市場閉場時刻までである。例えばある日の“02:00~02:30”の商品の取引可能期間は、前日の17:00~当日の01:00であり、また、ある日の“04:00~04:30”の商品の取引可能期間は、前日の17:00~当日の03:00である。
【0020】
図3の例では、ある日の“04:00~04:30”の商品の取引可能期間の例が示されている。取引可能期間の開始時刻(開場時刻)は17:00である。開始時刻はすべての商品で同一でもよい。終了時刻(閉場時刻)は、商品の受渡時刻である04:00の1時間前である03:00である。図3の例では、現在時刻は19:30であり、これから閉場時刻までの残り時間の間に、ユーザが任意の1以上のタイミングで入札を行うことができる。本実施形態に係る電力取引市場は時間前市場に限定されず、取引可能期間の間、取引(入札と約定)がリアルタイムに繰り返される市場であれば、他の市場でもよい。
【0021】
時間前市場取引装置21は、時間前市場における市場参加者間の取引をザラバ方式に従って処理するとともに、取引のルール及び市場取引実績データ等を保管及び管理している。市場データ取得部11が取得する時間前市場のデータは、時間前市場における取引のルール、及び市場参加者間の市場取引実績データを含む。取引のルールは、商品コマごとの取引可能期間の情報、最小入札単位[kWh]((JEPXでは、最小入札単位は50[kWh])などを含む。市場取引実績データの例として、商品(電力)の約定価格と約定数量と約定時刻などがある。市場取引実績データは過去の取引結果の平均値等の統計量を含んでいてもよい。
【0022】
本実施形態では、時間前市場で発電事業者が発電電力を売却する場合に発電事業者の利益を最適化するように、取引可能期間(入札可能期間)において入札する入札タイミング(入札時間枠)、入札内容(入札量及び入札価格)を決定し、ユーザに推奨する。但し、発電事業者は電力を売却する場合のみならず、時間前市場で電力を購入する場合も可能である。また本実施形態に係る取引の利益を最適化する対象となる主体は発電事業者に限定されず、電力需要者(例えばアグリゲータ)でもよい。この場合、電力需要者の利益を最適化するように、当該電力需要者が入札する入札タイミング(入札時間枠)、入札内容(入札量及び入札価格)を決定し、ユーザに決定内容を推奨する。なお、ユーザに対する入札価格の推奨を省略してもよい。この場合、いわゆる成行注文(リアルタイム注文)などの形式で、時間前市場で実際に入札時にリアルタイムに取引可能な時価(時価)で取引を行ってもよい。
【0023】
(発電事業者データベース14)
発電事業者データベース14は、発電事業者の将来の各日の発電計画値を含む発電計画データを記憶している。1日を分割した時間帯ごとに発電計画値が記憶されている。例えば、発電計画値の時間の単位は、時間前市場の商品コマと同じ時間単位(本例では30分)でもよいし、商品コマとは異なる時間単位でもよい。
【0024】
発電計画値は、発電事業者が他の事業者(アグリゲータ等)に供給を約束した電力量を示す。発電計画値は、例えば時間前市場より前に開かれるスポット市場(1日前市場)において約定した商品コマごとの電力量でもよい。スポット市場について簡単に説明する。
【0025】
スポット市場では、1日前市場と同様に、1日を電力の計量単位(30分)で48個の時間コマ(商品コマ)に分割し、時間コマ別に電力が取引される。スポット市場では、毎日、朝に翌日分の時間コマへの入札が締め切られる。それぞれの時間コマに対しブラインド・シングルプライスオークション方式で、約定価格(取引価格)及び約定量が決定される。上記翌日分の電力に関して、時間前市場はスポット市場が閉場した後に開かれ、時間前市場で上記翌日分の電力の過不足分を取引できる。
【0026】
発電計画値は、発電事業者がスポット市場で約定した電力量(発電量)に限定されず、発電事業者が他の事業者と相対の取引で決定した発電量などでもよい。発電計画が、例えば商品コマの取引可能期間において、入札時間枠ごと(本例では30分ごと)に行われ、発電計画値が更新されてもよい。
【0027】
(発電量予測部15)
発電量予測部15は、将来の各日の発電量を予測し、発電量の予測値を含む発電予測データを算出する。1日を分割した時間帯ごとに発電量の予測値を算出してもよい。この場合、予測の時間単位は、時間前市場の商品コマと同じ時間単位でもよいし、商品コマとは異なる時間単位でもよい。商品コマに対する発電量の予測は、例えば商品コマの取引可能期間において、入札時間枠ごと(本例では30分ごと)に行われ、予測値が更新されてもよい。
【0028】
発電量を予測する方法は特に限定されない。単純な予測方法の例として、発電装置の過去の発電履歴データから過去の同じ時間帯ごとの発電量を複数日分特定し、特定した発電量を平均してもよい。平均する対象となる日は、過去の同じ曜日に限定してもよい。あるいは、過去の連続する複数日(例えば過去1週間)で平均してもよい。
【0029】
あるいは、発電履歴データに加えて気象情報を用いて発電量を予測してもよい。例えば、過去の気象情報を用いて、対象日の時間帯ごとの発電量を予測するモデルを生成し、生成したモデルと、対象日の時間帯ごとの気象予測値とから対象日の時間帯ごとの発電量を予測する。商品コマの取引可能期間において、入札時間枠ごと(本例では30分ごと)に気象予測を行い、発電量の予測値を更新してもよい。過去の気象情報及び気象予測値は気象サーバ41から取得する。なお、気象サーバ41の気象予測機能を発電量予測部15が備えていてもよい。
【0030】
(予測インバランス算出部16)
予測インバランス算出部16は、発電事業者データベース14から発電計画データを取得し、また発電量予測部15から発電予測データを取得する。予測インバランス算出部16は、発電量計画値から発電量予測値を減算することにより、商品コマ(時間コマ)ごとの予測インバランスを算出する。
【0031】
図4A及び図4Bは、予測インバランスの説明図である。図4Aは、発電量計画値が発電量予測値より大きい場合の予測インバランスの例を示す。図4Bは、発電量予測値が発電量計画値より大きい場合の予測インバランスの例を示す。このように、予測インバランスは、発電量計画値と発電量予測値との差である。予測インバランスの計算を、取引可能期間において、例えば入札時間枠ごと(本例では30分ごと)に行って、予測インバランスを更新してもよい。予測インバランスを解消するために、図4Aの場合、時間前市場で予測インバランス分、電力を購入する必要がある。図4Bの場合、時間前市場で、予測インバランス分、電力を売却する必要がある。
【0032】
(価格インパクト表生成部12)
価格インパクト表生成部12は、時間前市場の取引可能期間における対象時刻(計算開始時刻)から閉場時刻までの残り時間(すなわち対象時刻からの経過時間)と、入札する入札量と、に応じた市場価格の変動を表す表を生成する。この表を、価格インパクト表と呼ぶ。価格インパクト表は、残り時間と入札量とが市場価格に与える影響を表している。価格インパクト表は、残り時間と入札量とに応じた市場価格の変動をモデル化した価格変動モデルの一例である。価格変動モデルは、表形式に限定されず、関数などで表されてもよい。
【0033】
価格変動モデルは、入札者自身の入札(売り入札又は買い入札)が、売り値の下落や買い値の上昇をもたらすことと、閉場時刻に近づくほど(残り時間が短くなるほど)価格の変動リスクが上昇することを同時に表現する。以下の説明では、入札者が発電時事業者であり、入札が売り入札の場合を想定する。
【0034】
取引可能期間を一定の時間単位で複数の入札時間枠に分割した場合に、売り入札においては、対象時刻(計算開始時刻)から閉場時刻までの入札時間枠数が多いほど、また入札時間枠への入札量が多くなるほど、価格が下落するリスクがある。逆に、買い入札においては、計算開始時刻から入札時間枠までの時間枠数が多いほど、もしくは入札時間枠への入札量が多いほど、価格が上昇するリスクがある。価格インパクト表は、このような価格の振る舞いを、残りの入札時間枠のそれぞれごとに複数の入札量に対応する複数の係数(インパクト係数)として保持する。
【0035】
本実施形態では、説明の簡単のため、計算開始時刻は各入札時間枠の開始時刻を想定するが、計算開始時刻は、他の時刻、例えば、各入札時間枠内の時間の途中、又は、取引可能期間の開始前に計算開始時刻も可能である。実際の入札は各入札時間枠内の任意のタイミングで行うことができる。
以下に、価格インパクト表の例を表1として示す。表1の詳細は後述する。
【表1】
【0036】
以下、対象とする商品コマの価格インパクト表を生成する例を示す。価格インパクト表は商品コマごとに生成される。生成された価格インパクト表は定期的(例えば1日ごと)又は不定期に更新又は再生成されてもよい。
【0037】
(ステップ1)
価格インパクト表生成部12は、市場データ取得部11を介して、市場データを取得する。対象とする商品コマの取引可能期間を複数の入札時間枠(第1~第Nの入札時間枠)に分割する。複数の入札時間枠のそれぞれの開始時刻が計算開始時刻(対象時刻)となり得る。
【0038】
価格インパクト表生成部12は、計算開始時刻から閉場時刻までに存在する最大の入札時間枠数を最大時間枠数(Tmaxとする)とする。つまり、一番先頭の入札時間枠の開始時刻から閉場時刻までの入札時間枠数が最大時間枠数に相当する。
【0039】
また、価格インパクト表生成部12は、最小入札単位(u[kWh]とする)、及び入札量の上限値(Qmax [kWh]とする)を決定する。本例では、JEPXと同様、最小入札単位が50[kWh]の場合を想定する。入札量の上限値は、例えば、商品コマの取引可能期間内で入札可能な入札量の総和の上限を意味する。入札量の上限値は、商品コマの時間で発電装置が発電可能な最大の発電量(定格の発電量)でもよいし、過去の日の同じ商品コマに対して実際に発電事業者が入札した入札量の最大値でもよい。あるいは、ユーザがユーザ装置51を介して、入札量の最大値を任意に指定してもよい。
【0040】
入札量の上限値Qmaxを最小入札単位uで除算することにより最大の入札数(Nとする)を計算する。Qmaxをuで除算した値が小数の場合は、小数点以下を切り捨てる。
【0041】
価格インパクト表生成部12は(N+1)行、Tmax列のサイズの表を、価格インパクト表Iimを生成する元となる表として生成する。i行目、j列目のセルに入力する値
を、以下に説明する方法で算出する。この値は、計算開始時刻から入札タイミング(入札時間枠)までの入札時間枠数がjで、(i-1)u[kWh]の電力量を入札する場合の係数(価格インパクト係数)を表す。
【0042】
(ステップ2)
価格インパクト表生成部12は、対象とする商品コマについて過去の日の市場取引実績データから価格の最大変動率[%]をパラメータαとして算出する。例えば、過去の市場取引実績データから価格の最大値と最小値とを特定し、(最大値-最小値)/最大値またはその平均によってαを算出する。すなわち最大値から最小値を引いた結果を、最大値で除算することで、または除算により得られた値の平均をとることで、αを算出する。
【0043】
さらに価格インパクト表生成部12は、算出したαを用いて、
を計算する。すなわちαを、Nと、Tmaxの2乗との和で除算することでβを計算する。
【0044】
(ステップ3)
【0045】
(ステップ4)
【0046】
このようにして上述した表1の価格インパクト表が生成される。価格インパクト表は、計算開始時刻以降の複数(第1~第N)の入札時間枠ごとに複数の入札量に対応する複数の係数を含む。
【0047】
(ステップ5)
価格インパクト表生成部12は、一定又は任意の時間間隔で、ステップ2~ステップ4の手順で価格インパクト表を更新又は再生成する。例えば、時間前市場が閉場した後に市場取引実績データを取得し、価格インパクト表を更新してもよい。なお、取引可能期間中の市場取引実績データをリアルタイムに受信して(例えば入札時間枠の終了ごとに市場取引実績データを受信して)、パラメータα及びβを更新し、価格インパクト表を更新してもよい。
【0048】
価格インパクト表入力部13は、価格インパクト表生成部12により生成された価格インパクト表を取得し、取得した価格インパクト表を入力データ取得部17に送る。価格インパクト表入力部13は、入力データ取得部17から取得要求を受けたタイミングで、価格インパクト表を送ってもよい。価格インパクト表入力部13は、対象となる商品コマに関する演算が行われる前に、最新の価格インパクト表を入力データ取得部17に送る。
【0049】
(インバランス料金予測値取得部10)
インバランス料金予測値取得部10は、インバランス料金予測値(売却の場合は余剰インバランス予測値(下限価格)、買取の場合は不足インバランス料金予測値(上限価格))を取得する。取得先は外部のサーバでもよいし、予め内部のメモリ等の記憶部でもよい。インバランス料金予測値は、入札価格の上限価格又は下限価格として機能する。インバランス料金予測値は商品コマごとに異なってもよいし、全ての商品コマで共通でもよい。
【0050】
(入力データ取得部17)
入力データ取得部17は、予測インバランス算出部16から対象とする商品コマの予測インバランス(対象となる商品コマにおける発電事業者の発電量計画値と発電予測値との差分)の情報を取得する。一定又は任意の時間間隔で発電量計画値と発電予測値との少なくとも一方が更新される場合に、入力データ取得部17は、商品コマの取引可能期間の間、入札時間枠の時間ごとに、更新された予測インバランスを取得してもよい。
【0051】
入力データ取得部17は、市場データ取得部11から一定又は任意の時間間隔で(例えば入札時間枠の時間ごとに)最新の市場取引実績データを取得し、取得した市場取引実績データから最新の約定価格等を特定する。特定した最新の約定価格は、最適取引戦略算出部18での計算開始時刻の直前の最新の約定価格として扱われる。計算開始時刻が一番先頭の入札時間枠の開始時刻の場合は、前日の同じ商品コマの取引可能期間における最後の約定価格を用いてもよい。あるいは、入札が実際に開始された後に最初に約定した価格を用いることも可能である。
【0052】
入力データ取得部17は、入札時間枠の到来ごとに計算開始時刻(本例では各入札時間枠の開始時刻)から市場閉場時刻までの残り時間を計算する。例えば時計から時刻を取得し、取得した時刻から市場閉場時刻までの時間長を計算することで、残り時間を得る。
【0053】
入力データ取得部17は、インバランス料金予測値取得部10からインバランス料金予測値を取得する。
【0054】
また入力データ取得部17は、価格インパクト表入力部13から対象となる商品コマの価格インパクト表を取得する。
【0055】
(最適取引戦略算出部18)
最適取引戦略算出部18は、対象となる商品コマの価格インパクト表を用いて、計算開始時刻から市場閉場時刻までの各入札時間枠(本例では30分単位時間枠)の入札量と入札価格とを最適化演算により算出する。そして、これら入札時間枠のうち計算開始時刻を含む入札時間枠(対象時間枠)の入札量と入札価格を、当該対象時間枠でユーザに推奨する入札量及び入札価格としてユーザに提示される。最適化演算は、すべての入札時間枠における入札量の総和を、予測インバランスに一致させる、又は近づけることを制約として、発電事業者の総取引額(約定価格*約定量の総和。売りの場合は収益に相当。)を最適化させる最適化基準に基づき行う。これにより、対象時間枠以降の入札時間枠ごとの入札量及び入札価格を決定する。最適化基準は、売り入札の場合は、総取引額(収益)を最大化することに相当し、買い入札の場合は、総取引額を最小化することに相当する。取引可能時間において上記対象時間枠の時間が経過したら、対象時間枠を次の入札時間枠に変更し(計算開始時刻を30分後に変更して)、同様の処理を繰り返し行う。このようにして入札時間枠の個数分だけ最適化演算が繰り返し行われる。最後の入札時間枠に対する処理が完了したら、処理が終了する。
【0056】
具体的には、最適取引戦略算出部18は、以下の数理計画モデルを最適化問題として生成する。この最適化問題は、式(2)及び式(3)で示す制約条件の下、式(1)の目的関数を最大化(又は準最大化)することで、ut(t=1…T)と、pt(t=1…T)とを算出する。
【0057】
以下の通り記号を定義する。
【0058】
各入札時間枠t(t=1…T)における入札電力量qt[kWh]は、最小入札単位uと入札数utとを掛け合わせることによって得られる(qt=ut・u)。
入札電力量qtは、最小入札単位uで離散化されているため、入札時間枠tにおいて可能な入札数(htとする)は(4)で示す範囲内である。
【0059】
式(1)の目的関数に含まれるΣの項は、計算開始時刻以降の各入札時間枠t(t=1…T)に対して市場予測価格ptで入札数utだけ入札して、入札がすべて約定したと仮定した場合に得られる収益(合計約定額又は総取引額)を表す。t=1の入札時間枠の開始時刻が計算開始時刻に対応する。但し、t=1の入札時間枠の時間内の任意の時刻を計算開始時刻としてもよいし、t=1の入札時間枠より前の時刻を計算開始時刻とすることも排除されない。市場予測価格は市場で取引が成立する(入札が約定する)と見込まれる価格であり、該当する入札時間枠における平均価格(例えば売買高加重平均価格)の予測値でもよい。
【0060】
(2)の制約条件は、入札量の合計が、予測インバランス(発電事業者における発電装置の発電予測量と、前記発電事業者の電力供給計画量との差分)に一致する、又は入札料の合計と予測インバランスとの差が入札量の最小入札単位以下であるとの制約に相当する。
【0061】
目的関数を制約条件の下で最大化することで、収益を最大にする入札数(入札推奨数)utと入札価格(入札推奨価格)ptを、最適化問題の解として算出することができる。なお、買い入札の場合は、目的関数に含まれるΣの式を最小化すればよい。入札時間枠の単位時間である30分ごとに対象時間枠を1つずつ進め、上記の最適化問題の演算を行う。このため演算を行うごとに、式(1)及び式(2)におけるTの値が1つずつ減少することとなる。
【0062】
つまり、複数の入札時間枠のうち最初の入札時間枠(t=1の入力時間枠)の開始時刻又は開始時刻以前の時刻を計算開始時刻(対象時刻)に設定し、複数の入札時間枠をそれぞれ入札タイミングとする。各入札時間枠に対する入札数(入札量)と入札価格とを、最適化問題の解として算出する。対象時刻を含む入札時間枠(対象時間枠)が終了すると、計算開始時刻(対象時刻)を次の入札時間枠の開始時刻に更新し、更新後の計算開始時刻に基づき、以降の各入札時間枠に対する入札数(入札量)と入札価格とを、最適化問題の解として算出する。
【0063】
式(3)に関して、第1の入札時間枠(t=1)での入札量に応じた市場価格p1は、第1の入札時間枠の開始前の実績データが示す市場価格p0と、該当する係数とに基づき予測する。第X(Xは2以上N以下の整数)の入札時間枠での入札量に応じた市場価格は、第X-1の入札時間枠に対して予測した市場価格px-1と該当する係数とに基づき予測する。
【0064】
最適化問題は数理計画モデルを解くための様々な方法を用いて解くことができる。一例として、枝刈り探索に基づいたアルゴリズムを用いることができる。以下、枝刈り探索に基づいたアルゴリズムについて説明する。
【0065】
探索とは、解の組み合わせの全パターンを列挙し、その中から制約条件と目的関数とに合致するパターンを見付け出す方法である。
【0066】
入札時間枠t(t=1…T)に対する全入札パターンを木構造で表現することができる。
図5は、予測インバランスXに対して全入札パターンを表す木構造の例を示す。
【0067】
木の根から各葉までの全てのパスは全入札パターンに対応し、各パターンが一つの実行可能解になっている。各パスは、計算開始時刻から市場閉場時刻までの各入札時間枠に対する入札数を含む。つまり、第Y(Yは1以上の整数)の入札時間枠における複数の入札量に関連する複数のノードを生成し、当該ノードの子ノードとして、第Y+1の入札時間枠における複数の入札量を表す複数のノードを生成する。これを再帰的に繰り返すことで、複数のノードが階層的に接続された木構造が生成される。
【0068】
パスに対応する収益を(1)式~(3)式に基づき計算できる。市場予測価格ptは、入札数utと、入札時間枠t及び入札数utの組に対応する価格インパクト係数とを用いて計算できる。全てのパスの中に総収益が最大になるパス(入札パターン)が必ず存在するため、全パスを探索することで最適な入札パターンを求めることができる。
【0069】
つまり、根ノードから葉ノードへ至る複数のパスのうちから総収益が最大にパスを選択し、選択したパスに含まれる入札量を、第1~第Nの入札時間枠ごとの入札量に決定する。ここで各ノードに関連する市場価格は、式(3)に基づき以下のように予測される。例えば、第1の入札時間枠に対して複数の入札量に応じた市場価格を、実績データの市場価格と、入札量に対応する係数とに基づき予測する。予測した市場価格を、入札量に関連するノードに関連付ける。第X(Xは2以上N以下の整数)の入札時間枠に対して複数の入札量に応じた市場価格を、複数のノードの親ノードに関連する市場価格と、入札量に対応する係数とに基づき予測する。予測した市場価格を、入札量に関連するノードに関連付ける。
【0070】
(出力データ取得部19)
出力データ取得部19は、最適取引戦略算出部18が算出した各入札時間枠の入札数と入札価格(予測市場価格)のうち、対象時間枠(t=1とした入札時間枠、計算開始時刻を開始時刻とする入札時間枠)の入札数と入札価格とを、ユーザに推奨する入札数及び入札価格として含む出力データを取得する。出力データに、対象時間枠より時間的に後の各入札時間枠(t=2以降の入札時間枠)について計算された入札数と入力価格とを含めてもよい。ただし、出力データ取得部19は、最適取引戦略算出部18により算出された市場予測価格が下限価格を下回る場合(売却の場合)、あるいは上限価格を上回る場合(買取の場合)、算出された価格(市場予測価格)の代わりに、下限価格(売却の場合)、あるいは、上限価格(買取の場合)をユーザに推奨する入札価格とする。ユーザに推奨する入札量は、算出された入札量でよい。入札価格に下限又は上限を設けることで、約定できる可能性は低減し得るが、発電事業者の損失を低減できる。よって、発電事業者の安定収益に繋がる。また、出力データ取得部19は、入札数に最小入札単位を乗じた入札電力量を出力データに含めてもよい。入札数又は入札電力量は、入札量の一例である。
【0071】
(出力部20)
出力部20は、出力データ取得部19によって得られた出力データをユーザに視認可能に出力する。出力部20は、データを表示するディスプレイでもよいし、ユーザ端末にデータを送信する通信装置でもよいし、これらの両方を含んでもよい。
【0072】
ユーザは、出力部20によって提示された出力データに基づき、対象時間枠(t=1の入札時間枠)で入札する入札数と価格とを決定する。例えばユーザは、出力データに示される入札数及び入力価格で入札を行うことを決定する。ユーザは当該対象時間枠内で入札数及び入札価格を含む入札データをユーザ装置51から入力し、出力部20は、入札データを時間前市場取引装置21に送信する。あるいは、入札データをユーザ装置51から時間前市場取引装置21に送信してもよい。時間前市場取引装置21は、入札データに基づき対象となる商品コマの時間前市場に入札データを入力する。時間前市場取引装置21は、本ユーザ及び他の様々なユーザからの入札のうち価格がマッチングした入札同士(売り入札と買い入札)を約定させる。ユーザの入札は約定する場合、約定しない場合のいずれもあり得る。ユーザは、入札価格を指定せずに、入札数のみ指定して入札を行ってもよい(成行注文)。これにより入札を時価で即時に約定させることができるため約定しないリスクを低減できる。
【0073】
対象時間枠が終了し、次の30分の入札時間枠を対象時間枠として、対象時間枠の開始時刻を計算開始時刻として上述の最適化演算を行う。すなわち、前回の最適化演算でt=2とした入札時間枠を今回の演算ではt=1の入札時間枠(対象時間枠)とする。演算を行う前に、最適取引戦略算出部18は、最新の予測インバランス及び最新の市場取引データを受信して、実績の市場価格p0を更新するとともに、約定済みの入札数に応じた電力量を予測インバランスに反映させる。最適取引戦略算出部18は最適化演算を行い、当該対象時間枠以降の各入札時間枠に対する入札数及び入札価格(市場予測価格)を決定する。出力データ取得部19は、最適取引戦略算出部18が算出した各入札時間枠の入札数と入札価格のうち、少なくとも対象時間枠の入札数と入札価格とを入札推奨数及び入札推奨価格とする出力データを取得する。今回の対象時間枠が終了すると、次の入札時間枠を対象時間枠に設定し、以降、同様の処理を繰り返し行う。
【0074】
図6は、最適取引戦略算出部18の処理の具体例を説明する図である。図3と同じ図において現在時刻以降の各入札時間枠に符号F1~F15が付与されている。開場から19:30前ではユーザは入札を行っておらず、入札時間枠F1以降で入札を行う状況を想定する。最初、入札時間枠F1が対象時間枠に設定され、対象時間枠以降の入札時間枠数は15のため、T=15である。入札時間枠F1がt=1、入札時間枠F2がt=2、・・・、入札時間枠F15がt=15に対応する。現在時刻が計算開始時刻として最適化演算が行われ、入札時間枠F1に対して推奨される入札数及び入札価格を含む出力データが提示され、ユーザは、入札時間枠F1で入札を行う。なお、ユーザは出力データに示される入札数及び価格で入札を行う他、自己の裁量で、異なる入札数及び異なる入札価格で入札を行う場合もあり得る。
【0075】
入札時間枠F1が終了すると、次に入札時間枠F2が対象時間枠に設定される。対象時間枠以降の入札時間枠数は14のため、T=14である。入札時間枠F2がt=1、入札時間枠F3がt=2、・・・、入札時間枠F15がt=14に対応する。入札時間枠F2の開始時刻が計算開始時刻として最適化演算が行われる。この際、上述したように、最新の予測インバランス及び最新の市場取引データを受信して、市場価格p0を更新し、また、約定済みの入札数の電力量を予測インバランスXに反映させる。演算の結果、入札時間枠F2に対して推奨される入札数及び入札価格を含む出力データが提示され、ユーザは、入札時間枠F2で入札を行う。
【0076】
以降同様にして、対象時間枠として入札時間枠F15に対する演算が終わるまで処理が繰り返される。予測インバランスが最小入札単位未満になった時点で処理を終了してもよい。あるいは、予測インバランスが最小入札単位未満になっても、その後最小入札単位以上に更新される可能性もあるため、入札時間枠F15の演算が終わるまで処理を継続してもよい。予測インバランスが最小入札単位未満の間は、最適化結果の入札数はゼロとなってもよい。
【0077】
図7は、最適取引戦略算出部18により推奨された各入札時間枠F1~F15の入札推奨価格と入札推奨電力量(入札推奨数×最小入札単位)とを示した推奨結果データの例を示す。最適取引戦略算出部18は最後の入札時間枠F15が終わった後、推奨結果データを生成して、推奨結果データを出力データ取得部19及び出力部20を介して、ユーザに提示してもよい。入札時間枠が進むごとに推奨結果データを更新して、逐次ユーザに提示してもよい。ユーザは推奨結果データを、自己が実際に行った取引結果履歴と比較することで、推奨された入札内容に従って実際に正しく入札を行ったかを検証してもよい。
【0078】
図8は、本実施形態に係る取引戦略算出装置1の処理の一例のフローチャートである。本処理では、時間前市場において対象日におけるある時間帯の商品コマについて取引戦略(入札時間枠ごとの入札数及び入札価格)を算出する。
【0079】
価格インパクト表生成部12が、過去の市場取引実績データに基づき価格インパクト表を生成し、生成した価格インパクト表を、価格インパクト表入力部13、入力データ取得部17を介して、最適取引戦略算出部18に送る(S101)。価格インパクト表生成部12は、予め作成しておいた価格インパクト表を読み出して、最適取引戦略算出部18に送ってもよい。
【0080】
予測インバランス算出部16が、商品コマの時間帯における発電量予測データと発電量計画データとに基づき、予測インバランスを算出する(S102)。
【0081】
入力データ取得部17又は最適取引戦略算出部18は、計算開始時刻から閉場時刻までの残り時間に基づき、市場閉場までの入札時間枠数を算出する(S103)。ここでは説明の簡単のため、計算開始時刻は、最初の取引を開始する入札時間枠の開始時刻であるとする。入力データ取得部17又は最適取引戦略算出部18は、決定した計算開始時刻から閉場時刻までの残り時間に基づき、市場閉場までの入札時間枠数を算出する。
【0082】
最適取引戦略算出部18は、計算開始時刻における直前の最新の市場価格を市場取引実績データに基づき取得する。最適取引戦略算出部18は、最新の市場価格と、価格インパクト表と、予測インバランスと、インバランス料金予測値と、入札時間枠数とに基づき、制約条件と最適化基準との元、計算開始時刻以降の各入札時間枠における最適な入力数及び入札価格とを算出する(S104)。計算開始時刻を含む入札時間枠は対象時間枠に対応する。
【0083】
最適取引戦略算出部18は、各入札時間枠のうち少なくとも対象時間枠の入札数及び入札価格を、ユーザに推奨する入札数及び入札価格として含む出力データを生成する。最適取引戦略算出部18は、出力データを、出力データ取得部19及び出力部20を介してユーザに提示する(S105)。
【0084】
最適取引戦略算出部18は、最後の入札時間枠に対する演算が終了したかを判断し(S106)、終了した場合は、本処理を終了する。最後の入札時間枠に対する演算が終了していない場合は、最適取引戦略算出部18、次の入札時間枠の計算開始時刻になるのを待機する(S107)。次の入札時間枠の計算開始時刻になったらステップS102~S105の処理を行う。
【0085】
以上、本実施形態では、発電事業者の自己売買による市場価格への影響と将来の価格変動リスクとが反映した価格インパクト表を定義する。そして、価格インパクト表に基づき取引可能期間の終了までの残りの入札時間枠数(残り時間)に応じて、最適化基準及び制約条件の元、対象時間枠で入札する入札数及び入札価格を決定する。これにより、発電量計画値と発電量予測値の差分である予測インバランスを市場閉場までにゼロ又は低減できる。このようにして、発電事業者のインバランスペナルティを低減するとともに収益を最大化する最適な取引計画(入札時間枠毎に推奨する入札数及び入札価格)を提供することができる。
【0086】
(変形例1)
上述した実施形態では木構造において全てのパスに対する収益を計算し、最大の収益が得られるパスを探索により決定した。この全探索は最適解を求めることができるが、予測インバランスが大きい場合、あるいは入札時間枠数が大きい場合、入札パターン数が膨大になる。すなわち、探索空間のサイズが大きくなるため、最適解を得るまでに時間を要する。
【0087】
本変形例では、探索空間のサイズを削減するために、最適取引戦略算出部18のアルゴリズムとして枝刈り探索を用いる。枝刈り探索では、木構造において最適解になる見込みの無い節点とその子孫を無視する。これにより、全探索より小さい探索空間の中から最適解を算出できるため、計算量を低減できる。
【0088】
図9は、枝刈り探索の説明図である。木構造の各節点において、根から当該節点までのパスに含まれる各節点の入札数utから、残り入札可能数ltを下記の式(5)により計算する。
【0089】
【0090】
最適取引戦略算出部18は、最初の入札時間枠(最初の計算開始時刻)から入札時間枠tまでの各入札時間枠に対する入札内容から下記の式(6)により入札時間枠tまでの入札による部分収益(部分取引額)Rt[円]を計算する。
【0091】
式(6)により、木構造における任意の節点で部分収益を計算できる。各節点の部分収益の大小関係から最適解になる見込みの有無を判断し、探索を継続する節点と、探索打ち切る節点とを決定する。
【0092】
【0093】
このように同じ入札時間枠tにおいて、同じ残り入札可能数の節点が複数存在する場合、部分収益と市場予測価格の両方とも低い節点は、両方とも高い節点と比べて市場閉場までの総収益が低くなると見込まれる。そこで、部分収益と市場予測価格の両方とも低い節点の方の子孫を探索しないことを決定する。
【0094】
例えばA円がB円より大きく、a円がb円より大きいとする。この場合、節点N2以降の節点を探索の対象から除外する。図では、探索の対象から除外すること、すなわち枝刈りを“×”で表している。これにより探索空間を小さくし、解の探索を効率化できる。
【0095】
(変形例2)
上述した実施形態では入札数と入札価格とを最適化したが、入札電力量(入札数×最小入札単位)と入札価格とを最適化してもよい。この場合、最適化問題における式(1)~式(3)を以下の式(1A)~式(3A)のように変更してもよい。この場合、価格インパクト表の行をutからqtに変更する。
最適化問題の解として得られた入札電力量が最小入札単位の倍数でない場合は、最小入札単位の倍数になるように、入札電力量の端数を切り捨ててもよい。ユーザに提示する出力データには、少なくとも対象時間枠で入札することを推奨する入札電力量と入札価格とを含める。ユーザは、入札電力量を入札数に換算し、実際に入札する入札数を決定してもよい。あるいは、本装置が入札電力量を入札数に換算し、換算後の入札数を出力データに含めてもよい。このように入札数の代わりに入札電力量を最適化することで、目的関数及び制約条件のパラメータ数を低減でき、よって演算量を低減できる。
【0096】
(変形例3)
上述した実施形態において、対象時間枠でユーザが入札を行った後、入札が約定していない間に、他のユーザの入札が約定するなどして市場取引実績データが新たに取得された場合は、価格インパクト表を更新し、入札数及び入力価格の再決定を行ってもよい。本装置は、再決定された入札数及び入札価格を含む出力データをユーザに提示してもよい。ユーザは、入札をキャンセルし、再決定された入札数及び入力価格で新たな入札を行ってもよい。これにより最新の市場取引実績データを反映させた入札が可能になるため、収益をより高めることが期待できる。
【0097】
(変形例4)
最後の入札時間枠(図6の例では入札時間枠F15)の開始時刻から所定時間経過した時点において、約定していない入札がある場合は、入札価格を変更して、すべての入札を即座に約定させてもよい。例えばユーザの入札が売り入札の場合、時間前市場にあるすべての買い入札の中で最も高い価格の買い入札から順に売り入札をマッチングさせる。これにより収益は減少する可能性があるものの、入札が約定しない場合に比べて予測インバランスが低減される。よって、発電事業者が実際に受けるペナルティを低減することができる。
【0098】
(ハードウェア構成)
図10は、図1の情報処理装置(取引戦略算出装置)のハードウェア構成を示す。図1の装置は、コンピュータ装置600により構成される。コンピュータ装置600は、CPU601と、入力インタフェース602と、表示装置603と、通信装置604と、主記憶装置605と、外部記憶装置606とを備え、これらはバス607により相互に接続されている。
【0099】
CPU(中央演算装置)601は、主記憶装置605上で、コンピュータプログラムである情報処理プログラムを実行する。情報処理プログラムは、本装置の上述の各機能構成を実現するプログラムのことである。情報処理プログラムは、1つのプログラムではなく、複数のプログラムやスクリプトの組み合わせにより実現されていてもよい。CPU601が、情報処理プログラムを実行することにより、各機能構成は実現される。
【0100】
入力インタフェース602は、キーボード、マウス、およびタッチパネルなどの入力装置からの操作信号を、本装置に入力するための回路である。入力インタフェース602はユーザ装置51に対応する。
【0101】
表示装置603は、本装置から出力されるデータを表示する。表示装置603は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、CRT(ブラウン管)、またはPDP(プラズマディスプレイ)であるが、これに限られない。コンピュータ装置600から出力されたデータは、この表示装置603に表示することができる。表示装置603は出力部20に対応する。
【0102】
通信装置604は、本装置が外部装置と無線または有線で通信するための回路である。データは、通信装置604を介して外部装置から入力することができる。外部装置から入力したデータを、主記憶装置605や外部記憶装置606に格納することができる。
【0103】
主記憶装置605は、情報処理プログラム、情報処理プログラムの実行に必要なデータ、および情報処理プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。情報処理プログラムは、主記憶装置605上で展開され、実行される。主記憶装置605は、例えば、RAM、DRAM、SRAMであるが、これに限られない。図1の各記憶部又はデータベースは、主記憶装置605上に構築されてもよい。
【0104】
外部記憶装置606は、情報処理プログラム、情報処理プログラムの実行に必要なデータ、および情報処理プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。これらの情報処理プログラムやデータは、情報処理プログラムの実行の際に、主記憶装置605に読み出される。外部記憶装置606は、例えば、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、及び磁気テープであるが、これに限られない。図1の各記憶部又はデータベースは、外部記憶装置606上に構築されてもよい。
【0105】
なお、情報処理プログラムは、コンピュータ装置600に予めインストールされていてもよいし、CD-ROMなどの記憶媒体に記憶されていてもよい。また、情報処理プログラムは、インターネット上にアップロードされていてもよい。
【0106】
また、本装置は、単一のコンピュータ装置600により構成されてもよいし、相互に接続された複数のコンピュータ装置600からなるシステムとして構成されてもよい。
【0107】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0108】
本実施形態は以下のような構成をとることもできる。
[項目1]
取引市場で商品の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた市場価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記取引可能期間のうち前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定する処理部
を備えた情報処理装置。
[項目2]
前記処理部は、前記価格変動モデルに基づき前記入札タイミングにおける前記市場価格を予測し、
前記処理部は、前記1つ以上の入札タイミングで入札する入札量の合計に関する制約条件と、前記入札量と前記市場価格とに基づく総取引額の最適化基準とに基づき、前記1つ以上の入札タイミングと、前記入札量とを決定する
項目1に記載の情報処理装置。
[項目3]
前記処理部は、予測した前記市場価格に基づき、前記取引市場に入札する入札価格をさらに決定する
項目2に記載の情報処理装置。
[項目4]
前記商品は電力であり、
前記制約条件は、前記入札量の合計が、発電事業者における発電装置の発電予測量と、前記発電事業者の電力供給計画量との差分に一致する、又は前記合計と前記差分との差が前記入札量の最小入札単位以下であることである
項目2又は3に記載の情報処理装置。
[項目5]
前記最適化基準は、前記入札が売り入札の場合に前記総取引額を最大にすること又は前記入札が買い入札の場合に前記総取引額を最小にすることである
項目2~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目6]
前記処理部は、前記入札タイミングと前記入札量とを、前記取引市場に入札する入札タイミング及び入札量としてユーザに推奨する出力データを生成する
項目2~5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目7]
前記処理部は、前記価格変動モデルに基づき前記入札タイミングにおける前記市場価格を予測し、予測した前記市場価格を、前記取引市場への入札を推奨する入札価格として前記出力データに含める
項目6に記載の情報処理装置。
[項目8]
前記処理部は、予測した前記市場価格が上限価格を超える場合は、前記取引市場への入札を推奨する入札価格として前記上限価格を前記出力データに含め、予測した前記市場価格が下限価格を下回る場合は、前記取引市場への入札を推奨する入札価格として前記下限価格を前記出力データに含める
項目7に記載の情報処理装置。
[項目9]
前記取引市場における取引の処理を行う取引市場装置から前記取引の実績データを取得する市場データ取得部を備え、
前記処理部は、前記取引市場に対し、前記出力データに基づき行われた入札のうち約定した入札量を前記実績データに基づき算出し、算出した入札量を前記入札量の合計から減算し、
前記処理部は、前記対象時刻を更新し、更新後の前記対象時刻に基づき、減算後の入札量を入札する1つ以上の入札タイミングと、入札量とを決定する
項目6~8のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目10]
前記取引可能期間は、複数の入札時間枠を含み、
前記処理部は、前記複数の入札時間枠のうち最初の時間枠の開始時刻又は前記開始時刻以前の時刻を前記対象時刻に設定し、前記複数の入札時間枠をそれぞれ前記入札タイミングとして、各前記入札時間枠に対して前記入札量を決定する
項目2~9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目11]
前記価格変動モデルは、第1~第Nの入札時間枠ごとに複数の入札量に対応する複数の係数を含み、
前記取引市場における取引の処理を行う取引市場装置から前記取引の実績データを取得する市場データ取得部を備え、
前記処理部は、第Y(Yは1以上の整数)の入札時間枠における複数の入札量に関連する複数のノードを生成し、前記ノードの子ノードとして、第Y+1の入札時間枠における複数の入札量に関連する複数のノードを生成することにより、複数のノードが階層的に接続された木構造を生成し、
前記第1の入札時間枠に対して前記複数の入札量に応じた市場価格を、前記実績データの市場価格と、前記入札量に対応する前記係数とに基づき予測し、予測した前記市場価格を前記複数の入札量に関連する前記複数のノードに関連付け、
第X(Xは2以上N以下の整数)の入札時間枠に対して複数の入札量に応じた市場価格を、前記複数のノードの親ノードに関連する市場価格と、前記入札量に対応する前記係数とに基づき予測し、予測した前記市場価格を前記複数の入札量に関連する前記複数のノードに関連付け、
前記木構造の根ノードから葉ノードへ至る複数のパスごとに前記パスに含まれるノードに関連する前記入札量と前記市場価格とに基づき総取引額を計算し、計算した前記総取引額に基づき前記複数のパスからパスを選択し、選択した前記パスに含まれる各ノードに関連する入札量を、前記第1~第Nの入札時間枠ごとの前記入札量に決定する
項目10に記載の情報処理装置。
[項目12]
前記第Y+1の入札時間枠に対して生成した前記複数のノードのそれぞれへの前記根ノードからの部分パスを特定し、前記部分パスに基づき前記複数のノードのそれぞれにおける部分取引額を計算し、前記複数のノードにおける前記部分取引額と前記市場価格とを比較して、前記複数のノードからノードを選択し、選択したノードについては子ノードを生成しない
項目11に記載の情報処理装置。
[項目13]
前記処理部は、前記市場価格に前記係数を乗算し、乗算結果を前記市場価格に加算することにより、前記市場価格を予測する
項目11又は12に記載の情報処理装置。
[項目14]
前記処理部は、前記入札時間枠が時間的により遅いほど、かつ前記入札量が大きいほど、より大きい又は小さい値を係数として算出する
請求項11に記載の情報処理装置。
[項目15]
前記処理部は、前記取引市場における過去の取引の実績データに基づき市場価格の変動情報を算出し、前記変動情報に基づき乱数を生成し、前記乱数を用いて前記係数を算出する
項目14に記載の情報処理装置。
[項目16]
前記変動情報は、前記市場価格の変動率を表し、
前記処理部は、前記変動率と、前記第1~第Nの入札時間枠の個数と、前記複数の入札量の個数とに基づき、前記乱数の値の範囲を決定し、前記範囲から前記乱数を生成する
項目15に記載の情報処理装置。
[項目17]
前記乱数の値の範囲は、前記予測した市場価格の変動率が前記変動率以下となる範囲である
項目16に記載の情報処理装置。
[項目18]
前記市場データ取得部は、前記取引市場装置から更新された取引の実績データを取得し、
前記処理部は、前記更新された取引の実績データに基づき前記変動率を更新し、更新後の変動率に基づいて、前記価格変動モデルを更新する
項目16又は17に記載の情報処理装置。
[項目19]
前記取引市場は、前記電力の時間前市場であり、
前記電力供給計画量は、前記発電事業者が1日前市場で約定した売り入札の電力量である
項目4に記載の情報処理装置。
[項目20]
前記商品は、電力である
項目1~19に記載の情報処理装置。
[項目21]
前記処理部は、前記取引市場に入札する入札価格をさらに決定する
項目1~20のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目22]
取引市場での商品の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた前記商品の価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定する
情報処理方法。
[項目23]
取引市場での商品の取引可能期間において対象時刻からの経過時間と入札量とに応じた前記商品の価格の変動を表す価格変動モデルに基づき、前記対象時刻以降の期間において入札する1つ以上の入札タイミングと、前記取引市場に入札する入札量とを決定するステップ
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0109】
11 市場データ取得部
12 価格インパクト表生成部(処理部)
13 価格インパクト表入力部
14 発電事業者データベース
15 発電量予測部(処理部)
16 予測インバランス算出部(処理部)
17 入力データ取得部
18 最適取引戦略算出部(処理部)
19 出力データ取得部
20 出力部
21 時間前市場取引装置
31 発電装置
41 気象サーバ
51 ユーザ装置
600 コンピュータ装置
602 入力インタフェース
603 表示装置
604 通信装置
605 主記憶装置
606 外部記憶装置
607 バス
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10