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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086489
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】データ処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240620BHJP
   G01C 7/04 20060101ALI20240620BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G06T7/00 640
G01C7/04
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201646
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】516356402
【氏名又は名称】株式会社スカイマティクス
(71)【出願人】
【識別番号】520320446
【氏名又は名称】中部電力パワーグリッド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉本 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】波多野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】福井 博道
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA08
5L096DA01
5L096EA05
5L096FA66
(57)【要約】
【課題】航空レーザ測量により得られた点群データからノイズの除去を自動的に行い、精度の良い地上の3次元座標の点群データを得ることができるデータ処理システムを提供する。
【解決手段】航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理するデータ処理システムにおいて、点群データから、地物および地面に該当しない可能性のある点群をノイズ点群として点群データから除去するノイズ除去手段を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理するデータ処理システムにおいて、
前記点群データから、前記地物および前記地面に該当しない可能性のある点群をノイズ点群として前記点群データから除去するノイズ除去手段を有する、データ処理システム。
【請求項2】
前記ノイズ除去手段は、前記点群データの標高値のヒストグラムを用いて、前記ノイズ点群を検出し、前記点群データから除去する、請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項3】
前記ノイズ除去手段は、前記点群データから除去した前記ノイズ点群のうち、前記地物に該当する可能性のある点群を前記点群データに回復させる、請求項2に記載のデータ処理システム。
【請求項4】
前記ノイズ除去手段は、数値標高モデルにより測量領域の地面に属する点群を推定し、前記地面に属する点群からの距離に基づき、前記ノイズ点群を検出し、前記点群データから除去する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデータ処理システム。
【請求項5】
異なる複数の飛行コースにおける航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理し、前記点群データは、各飛行コースで計測された3次元座標をもった点の集合であるコース点群からなるデータ処理システムにおいて、
異なる飛行コースの前記コース点群間で、水平座標が互いに重なる領域内の標高値の鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記コース点群の標高値を補正するコース間ずれ補正手段を有する、データ処理システム。
【請求項6】
航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理するデータ処理システムにおいて、
前記点群データの点群の領域に含まれる正確な3次元座標を有する複数の基準点について、各基準点近傍の点群の平均標高値を算出し、各基準点の標高値と各平均標高値との鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記点群データの標高値を補正する基準点ずれ補正手段を有する、データ処理システム。
【請求項7】
前記基準点ずれ補正手段は、前記基準点を中心とする所定範囲を複数の区画に分割し、前記標高値が補正された前記点群データに基づき、各区画内の点群の標高値の平均値を算出し、前記基準点の標高値と各区画の平均値との高度差を算出し、前記基準点を中心とする前記高度差の分布図を作成する、請求項6に記載のデータ処理システム。
【請求項8】
異なる複数の飛行コースにおける航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理し、前記点群データは、前記複数の飛行コースで計測された3次元座標をもった点の集合である複数のコース点群からなる、データ処理システムにおいて、
前記複数のコース点群から、前記地物および前記地面に該当しない可能性のある点群をノイズ点群として除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ点群が除去された前記複数のコース点群間で、水平座標が互いに重なる領域内の標高値の鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記ノイズ点群が除去された前記複数のコース点群の標高値を補正するコース間ずれ補正手段と、
前記ノイズ点群の除去と標高値の補正がなされた前記複数のコース点群の点群の領域に含まれる正確な3次元座標を有する複数の基準点について、各基準点近傍の点群の平均標高値を算出し、各基準点の標高値と各平均標高値との鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記複数の点群データの標高値を補正する基準点ずれ補正手段と、を有する、データ処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空レーザ測量により得られた点群データを処理するデータ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、航空レーザ測量の一例として、航空機上のレーザ計測装置によって計測された測距データ等に基づいて3次元計測データを生成するレーザ計測システムが開示されている。このレーザ計測システムでは、地上に水平に設置した複数の反射ターゲット体に反射したレーザ光の3次元位置座標データを用いることで、レーザ計測における水平位置の計測誤差を、計測位置の環境に依存することなく算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-156676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、航空レーザ測量において、送電線およびその障害となる樹木等が含まれる領域の測量を行った場合、得られた点群データにはノイズおよび標高の誤差が含まれる。この点群データからノイズを除去し標高の誤差を補正する処理は、自動化されておらず、この処理に非常に多くの労力・期間を要している。
【0005】
上記したことに鑑み、本発明の一つの目的は、航空レーザ測量により得られた点群データからノイズの除去を自動的に行い、精度の良い地上の3次元座標の点群データを得ることができるデータ処理システムを提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、航空レーザ測量により得られた点群データの標高の誤差の補正を自動的に行い、精度の良い地上の3次元座標の点群データを得ることができるデータ処理システムを提供すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示された一つの実施形態に従えば、航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理するデータ処理システムにおいて、前記点群データから、前記地物および前記地面に該当しない可能性のある点群をノイズ点群として前記点群データから除去するノイズ除去手段を有する。
【0008】
前記ノイズ除去手段は、前記点群データの標高値のヒストグラムを用いて、前記ノイズ点群を検出し、前記点群データから除去してもよい。
【0009】
前記ノイズ除去手段は、前記点群データから除去した前記ノイズ点群のうち、前記地物に該当する可能性のある点群を前記点群データに回復させてもよい。
【0010】
前記ノイズ除去手段は、数値標高モデルにより測量領域の地面に属する点群を推定し、前記地面に属する点群からの距離に基づき、前記ノイズ点群を検出し、前記点群データから除去してもよい。
【0011】
開示された他の実施形態に従えば、異なる複数の飛行コースにおける航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理し、前記点群データは、各飛行コースで計測された3次元座標をもった点の集合であるコース点群からなるデータ処理システムにおいて、異なる飛行コースの前記コース点群間で、水平座標が互いに重なる領域内の標高値の鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記コース点群の標高値を補正するコース間ずれ補正手段を有する。
【0012】
開示された他の実施形態に従えば、航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理するデータ処理システムにおいて、前記点群データの点群の領域に含まれる正確な3次元座標を有する複数の基準点について、各基準点近傍の点群の平均標高値を算出し、各基準点の標高値と各平均標高値との鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記点群データの標高値を補正する基準点ずれ補正手段を有する。
【0013】
前記基準点ずれ補正手段は、前記基準点を中心とする所定範囲を複数の区画に分割し、前記標高値が補正された前記点群データに基づき、各区画内の点群の標高値の平均値を算出し、前記基準点の標高値と各区画の平均値との高度差を算出し、前記基準点を中心とする前記高度差の分布図を作成してもよい。
【0014】
開示された他の実施形態に従えば、異なる複数の飛行コースにおける航空レーザ測量により得られた地物および地面の3次元座標の点群データを処理し、前記点群データは、前記複数の飛行コースで計測された3次元座標をもった点の集合である複数のコース点群からなる、データ処理システムにおいて、前記複数のコース点群から、前記地物および前記地面に該当しない可能性のある点群をノイズ点群として除去するノイズ除去手段と、前記ノイズ点群が除去された前記複数のコース点群間で、水平座標が互いに重なる領域内の標高値の鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記ノイズ点群が除去された前記複数のコース点群の標高値を補正するコース間ずれ補正手段と、前記ノイズ点群の除去と標高値の補正がなされた前記複数のコース点群の点群の領域に含まれる正確な3次元座標を有する複数の基準点について、各基準点近傍の点群の平均標高値を算出し、各基準点の標高値と各平均標高値との鉛直ずれ量を算出し、前記鉛直ずれ量が小さくなるように、前記複数の点群データの標高値を補正する基準点ずれ補正手段と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態にかかる航空レーザ測量により得られた点群データを処理するデータ処理システムの全体的なハードウェア構成を示す図である。
図2】複数の飛行コースで計測した3次元座標の点群(コース点群)の平面図である。
図3】データ処理システムが実行する処理の全体のフローを示す図である。
図4】ノイズ除去処理のフローを示す図である。
図5】上空ノイズおよび地下ノイズの除去の説明図である。
図6】ケーブル回復処理のフローを示す図である。
図7】コース間ずれ検出処理のフローを示す図である。
図8】コース点群間の重複領域を小区画に分割した一例を示す図である。
図9】小区画ごとのコース点群間の鉛直ずれ量の算出方法の説明図である。
図10】コース間ずれ補正処理のフローを示す図である。
図11】基準点ずれ補正処理のフローを示す図である。
図12】基準点を中心とする標高値の鉛直ずれ量の分布図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、一実施形態にかかる航空レーザ測量により得られた点群データを処理するデータ処理システムの全体的なハードウェア構成を示す図である。
【0018】
データ処理システム1は、図示せぬ通信ネットワークを介して図示せぬユーザ端末に接続されており、図示せぬユーザ端末から、航空レーザ測量により得られたコース点群ファイル15、複数のDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)ファイル16、および基準点ファイル17を受信する。コース点群ファイル15、DEMファイル16、および基準点ファイル17の詳細については後述する。
【0019】
データ処理システム1は、CPU(Central Processing Unit)2と、メモリ3と、通信装置4と、入力装置5と、表示装置6と、ストレージ10とを有する。CPU2は、ストレージ10内の後述のプロフラムをメモリ3にロードして実行することにより、ストレージ10に格納された各種のデータを操作及び加工する。CPU2は、ノイズ除去手段、コース間ずれ補正手段、および基準点ずれ補正手段に相当する。通信装置4は、図示せぬ通信ネットワークを介して、図示せぬユーザ端末との間でデータの送受信を行う。入力装置5は、データ処理システム1を操作するための指示を入力するための入力装置である。表示装置6は、後述の基準点ずれ補正プログラム14による処理に基づく画像等を表示する。
【0020】
ストレージ10は、ノイズ除去プログラム11と、コース間ずれ検出プログラム12と、コース間ずれ補正プログラム13と、基準点ずれ補正プログラム14と、を格納している。ノイズ除去プログラム11は、航空レーザ測量によって得られた3次元座標点群データ(以下、単に点群データという。)からノイズ点群を除去するためのプロフラムである。コース間ずれ検出プログラム12は、コース間の鉛直ずれ量を検出するプログラムである。コース間ずれ補正プログラム13は、検出したコース間の鉛直ずれ量が許容値より大きい場合に、鉛直ずれ量が許容値内となるように補正するプログラムである。基準点ずれ補正プログラム14は、基準点の標高値と基準点周りの平均標高値との鉛直ずれ量を検出し、鉛直ずれ量が所定値より大きい場合に、鉛直ずれ量が所定値内となるように補正するプログラムである。
【0021】
ストレージ10は、図示せぬユーザ端末から受信した、コース点群ファイル15と、DEMファイル16と、基準点ファイル17とを格納している。
【0022】
コース点群ファイル15は、異なる複数の飛行コースで、航空機等の飛行体を飛行させて、各飛行コースで計測されたコース点群の点群データからなる複数のファイルである。コース点群とは、各飛行コースで計測された3次元座標をもった点(計測点)の集合を指す。各計測点の3次元座標は、飛行体に設けられたレーザ測距装置、GNSS測量機、およびIMU(慣性計測装置:Inertial Measurement Unit)により計測される。レーザ測距装置は、地上に向けてレーザ光を照射し、そのレーザ光の地上からの反射光を受光し、レーザ光および反射光の往復時間により地上までの距離を計測する。GNSS測量機は、飛行体の三次元位置を計測する。IMUは、飛行体の姿勢(回転角度)を計測する。レーザ測距装置、GNSS測量機、およびIMUにより計測されたデータに基づき、地上の計測点(レーザ光が反射した位置)の3次元座標(水平座標値(x,y)及び標高値(z))が算出され、点群データが生成される。点群データは、十分に広い領域の地面および地物(植生(樹木、水田、畑)、河川、道路、建物、鉄塔、および送電ケーブル)を計測した3次元座標の点データにより構成される。
【0023】
図2は、複数の飛行コースで計測した3次元座標の点群(コース点群)の平面図である。
【0024】
図2には、3つの飛行コースでの計測した3次元座標に基づくコース点群A~Cを示している。各コース点群A~Cは、3つの飛行コースでの計測した3次元座標の点群を含む領域である。コース点群Aとコース点群Bは、第1重複領域Dで重なっており、コース点群Bとコース点群Cは、第2重複領域Eで重なっている。
【0025】
図1のDEMファイル16は、地域ごとのDEMデータにより構成された複数のファイルである。基準点ファイルは、複数の飛行コースで計測した地域に含まれる複数の基準点の3次元座標(水平座標値(x,y)及び標高値(z))データからなるファイルである。基準点とは、地球上の位置や海面からの高さが正確に測定された電子基準点、三角点、水準点等から構成され、地図作成や各種測量の基準となるものである。
【0026】
ストレージ10は、さらに、ノイズ除去コース点群ファイル20と、コース間重複領域ファイル21と、コース間ずれ量ファイル22と、コース間ずれ補正値ファイル23と、コース間ずれ補正コース点群ファイル24と、基準点ずれ補正値ファイル25と、基準点ずれ補正コース点群ファイル26と、精度管理値ファイル27とを保存する。これらのファイルは、後述の処理を行う際に作成または使用されるファイルであり、各処理の説明において詳細に説明する。
【0027】
次に、データ処理システム1が実行する処理の全体のフローについて説明する。
図3は、データ処理システム1が実行する処理の全体のフローを示す図である。
【0028】
ユーザが、データ処理システム1に対し当該処理の実行の開始の指示をすると、図3のフローが開始される。CPU2は、ノイズ除去処理(S1)と、コース間ずれ検出処理(S2)と、コース間ずれ補正処理(S3)と、基準点ずれ補正処理(S4)とを順に実行する。ノイズ除去処理はノイズ除去プログラム11に基づき実行され、コース間ずれ検出処理はコース間ずれ検出プログラム12に基づき実行され、コース間ずれ補正処理はコース間ずれ補正プログラム13に基づき実行され、基準点ずれ補正処理は基準点ずれ補正プログラム14に基づき実行される。
【0029】
図4は、ノイズ除去処理(S1)のフローを示す図である。
【0030】
CPU2は、コース点群ファイル15を読み込み(S10)、読み込んだ点群データから、上空ノイズを除去し(S11)、地下ノイズを除去する(S12)。航空レーザ測量によって得られた点群データにはノイズが混在している。ノイズの主な原因として、空気中の煙や粉塵、水面や黒色物体に対するレーザの反射率・吸収率の変化がある。ノイズを大別すると、空気中に点在するスパイクノイズ、比較的高い上空に存在する大規模な点群、地表面下に存在するノイズの3種類がある。ステップS11、S12の処理は、これらのノイズを除去するために行われる。このように、航空レーザ測量により得られた点群データからノイズの除去が自動的行われ、精度の良い地上の3次元座標の点群データを得ることができる。
【0031】
ステップS11では、比較的高い上空に存在する大規模なノイズクラスターを除去する前に、空気中に点在するスパイクノイズを除去する。点群の各点を中心として、所定半径内に含まれる点が所定数以下の点をスパイクノイズに分類する。
【0032】
図5は、上空ノイズおよび地下ノイズの除去の説明図である。
【0033】
図5では、右側に、点群データの3次元座標に基づき点群をプロットして表した図を示し、左側に、点群の標高値の分布をヒストグラムで表したグラフを示している。図5の左図では、縦軸を標高値、横軸を点個数(点頻度)としている。例えば、全点群において、標高値が上位から所定割合のグループG1を上空ノイズ(ノイズ点群)として除去する。標高値が上位から所定割合かつ標高値が所定の高さ以上のものを上空ノイズ(ノイズ点群)として除去してもよい。また、例えば、全点群において、標高値が下位から所定割合のグループG2を地下ノイズ(ノイズ点群)として除去する。対象領域のDEMから地面に属するグループを推定して、地面に属するグループからの距離が所定の距離以上のグループを地下ノイズ(ノイズ点群)として除去してもよい。また、地面以下の点群をグループ分けして、グループの点の数が所定数未満のグループを地下ノイズ(ノイズ点群)として除去してもよい。
【0034】
測量の対象領域に鉄塔および送電ケーブルが含まれている場合には、上空ノイズを除去した際に、送電ケーブルに対応する点群を除去している可能性がある。そこで、送電ケーブルに対応する点群を非ノイズとして回復するケーブル回復処理(S13)が行われる。
【0035】
図6は、ケーブル回復処理(S13)のフローを示す図である。
【0036】
CPU2は、上位ノイズとして除去した点群のうち、未チェック点を一つ抽出する(S15)。CPU2は、抽出した点に対する近傍点があるか否かを判断する(S16)。例えば、抽出した点を中心として、所定半径内に点群があるか否かを判断する。所定半径内に点群がなければ(S16:NO)、CPU2は、ステップS15に戻る。一方、所定半径内に点群が検出できれば(S16:YES)、CPU2は、送電ケーブルに相当する点群があるか否かを判断する(S17)。例えば、ステップS16で検出された点群に対し、半径0.2mの円筒を当てはめ、傾斜角度が45°未満の円筒内に入る3点以上の点があるか否かを判断する。
【0037】
3点以上の点がなければ(S17:NO)、CPU2は、ステップS15に戻る。一方、3点以上の点が検出できれば(S17:YES)、CPU2は、検出された3点以上の点を送電ケーブルの一部とみなして、上位ノイズとして除去した点群から除外する(S18)。すなわち、検出された3点以上の点を、送電ケーブルとして回復させる。
【0038】
CPU2は、上位ノイズとして除去した点群のうち、全ての点についてチェックしたか否かを判断する(S19)。全ての点についてチェックしていない場合、CPU2は、ステップS15からステップS18の処理を繰り返す。一方、全ての点についてチェックが完了した場合(S19:YES)、CPU2は、ケーブル回復処理(S13)を終了し、図4に示すように、コース点群ファイル10からノイズ点群を除去した点群データをノイズ除去コース点群ファイル20としてストレージ10に保存して、ノイズ除去処理(S1)を終了する(S14)。
【0039】
図7は、コース間ずれ検出処理(S2)のフローを示す図である。
【0040】
CPU2は、ノイズ除去コース点群ファイル20を読み込み(S20)、読み込んだ各コースの点群データの3次元座標に基づき、各コース点群が平面視で互いに重複している領域を検出する(S21)。例えば、各コース点群の点群全体を含む外周ポリゴンを作成し、水平座標が互いに重複している領域を検出し、重複領域をコース間重複領域ファイル21として保存する(S22)。CPU2は、重複領域におけるコース点群間の鉛直ずれ量を算出する(S23)。
【0041】
図8は、コース点群間の重複領域を複数の区画に分割した一例を示す図である。
図9は、区画ごとのコース点群間の鉛直ずれ量の算出方法の説明図である。
【0042】
図8では、コース点群Aとコース点群Bの第1重複領域Dを示し、第1重複領域Dを含む領域Wが、所定の区画Mに分割されている。図9に示すように、CPU2は、各区画M内に含まれる点群の標高値について、異常値を除去してから、平均値A1、B1を算出する。各コース点群A、Bにおいて、互いに対応する各区画M間の標高値の平均値A1、B1の差を鉛直ずれ量D1として算出する。コース点群Bとコース点群Cの第2重複領域Eについても、同様に鉛直ずれ量を算出する。
【0043】
CPU2は、算出した全ての鉛直ずれ量をコース間ずれ量ファイル22として、ストレージ10に保存する(S24)。なお、コース間における標高値の平均値の差を鉛直ずれ量としたが、コース間における標高値のメジアンまたはモード(25mm間隔)の差を鉛直ずれ量として算出し、保存してもよい。
【0044】
図10は、コース間ずれ補正処理(S3)のフローを示す図である。
【0045】
CPU2は、コース間ずれ量ファイル22を読み込み(S30)、補正が必要か否かを判断する(S31)。すなわち、第1、2重複領域D、Eにおける全ての鉛直ずれ量が許容値(例えば、25mm)以内であるか否かを判断する。いずれかの鉛直ずれ量が許容値以内でない場合(S31:YES)、CPU2は、鉛直ずれ量の補正値を算出し、この補正値に基づき鉛直ずれ量を補正する(S32)。例えば、第1重複領域Dにおける鉛直ずれ量が、全ての鉛直ずれ量の中で許容値より大きい最大値(例えば、30mm)を含む場合に、最大値である鉛直ずれ量の所定割合(例えば、10%)を補正値として算出する。CPU2は、算出した補正値に基づき、第1、2重複領域D、Eにおける全ての鉛直ずれ量または第1重複領域Dにおける全ての鉛直ずれ量を小さくなるように補正し、補正値および補正後の鉛直ずれ量をコース間ずれ補正値ファイル23に保存し、ステップS31に戻る。
【0046】
CPU2は、ステップS31、S32の処理を、第1、2重複領域D、Eにおける全ての鉛直ずれ量が許容値以内となるまで繰り返す。なお、ステップS31、S32の処理を所定回数繰り返しても、全ての鉛直ずれ量が許容値以内とならない場合には、コース間ずれ補正処理(S3)を終了してもよい。全ての鉛直ずれ量が許容値以内である場合(S31:NO)、CPU2はステップS32に進む。CPU2は、コース間ずれ補正値ファイル23の補正値に基づき、ノイズ除去コース点群ファイル20の各コース点群の標高値を補正する(S33)。CPU2は、標高値を補正した各コース点群の点群データをコース間ずれ補正コース点群ファイル24として保存し(S34)、コース間ずれ補正処理(S3)を終了する。このように、航空レーザ測量により得られた点群データの標高の誤差の補正が自動的に行われ、精度の良い地上の3次元座標の点群データを得ることができる。
【0047】
図11は、基準点ずれ補正処理(S4)のフローを示す図である。
【0048】
CPU2は、コース間ずれ補正コース点群ファイル24および基準点ファイル17を読み込む(S40)。CPU2は、各コース点群の領域に含まれる複数の基準点において、各基準点近傍の点群の平均標高値を求める(S41)。なお、異常値は標準偏差を用いて除去する。CPU2は、各基準点の標高値と各平均標高値との差(鉛直ずれ量)を算出する(S42)。ここで、鉛直ずれ量の検証のために基準点中心の5m×5m領域の1mメッシュ領域内の点群の標高値の平均値と基準点の標高値との差のヒートマップを作成し、コース点群と同じ座標系で出力してもよい。
【0049】
CPU2は、コース点群ごとに、全ての鉛直ずれ量に基づき平均値および標準偏差を算出し、算出した平均値および標準偏差を基準点ずれ補正値ファイル25として保存する(S43)。CPU2は、ステップS43で算出した平均値および標準偏差に基づき、コース間ずれ補正コース点群ファイル24の各コース点群の標高値を補正し、標高値を補正した各コース点群の点群データを基準点ずれ補正コース点群ファイル26として保存する(S44)。例えば、コース点群ごとにステップS43で算出した標準偏差が25cm以上のコース点群において、鉛直ずれ量の平均値が所定値以下になるようにコース点群の標高値を補正する。当該補正は、国土地理院技術資料A1-No310 航空レーザ測量による数値標高モデル(DEM)作成マニュアルの第31条運用基準に基づき行われる。このように、航空レーザ測量により得られた点群データの標高の誤差の補正が自動的に行われ、精度の良い地上の3次元座標の点群データを得ることができる。
【0050】
CPU2は、基準点ずれ補正コース点群ファイル26の点群データの標高値に基づき、各コース点群の領域に含まれる各基準点近傍の点群の平均標高値を算出し、各基準点の標高値と各平均標高値との差(鉛直ずれ量)を算出し、コース点群ごとに、全ての鉛直ずれ量に基づき平均値および標準偏差を算出する(S45)。当該平均値および標準偏差は、精度管理値にとして、精度管理ファイル27に保存される(S45)。精度管理ファイル27では、例えば、コース点群、基準点の点数、および、鉛直ずれ量の平均値および標準偏差が対応付けられている。また、ステップS45において、CPU2は、基準点を中心とする標高値の鉛直ずれ量の分布図(ヒートマップ)を作成し、コース点群と同じ座標系で出力する。
【0051】
図12は、基準点を中心とする標高値の鉛直ずれ量の分布図の一例を示す図である。
【0052】
図12において、(a)に示すように、コース点群Aの一部の領域内には、基準点X1~X3が含まれている。例えば、基準点X1に対し、(b)に示すような、基準点X1を中心とする5m×5m領域(所定範囲)R1を1m区画R2に分割する。各区画R2内の点群の標高値の平均値と基準点の標高値との高度差(鉛直ずれ量)を算出する。(c)に示すような、高度差のヒートマップHMを作成し、コース点群と同じ座標系で出力する。これにより、全ての基準点に対するコース点群との高度差を視覚的に確認することができる。
【0053】
以上、一つの実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、この実施形態にのみ本発明を限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で他の様々な形態で実施可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態のデータ処理システム1は、ノイズ除去処理(S1)と、コース間ずれ検出処理(S2)と、コース間ずれ補正処理(S3)と、基準点ずれ補正処理(S4)とを順に実行した。しかし、データ処理システム1は、ノイズ除去処理(S1)と、コース間ずれ検出処理(S2)およびコース間ずれ補正処理(S3)と、基準点ずれ補正処理(S4)とのうち、少なくともいずれか1つを行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1: データ処理システム、 2:CPU、 11:ノイズ除去プログラム、 12:コース間ずれ検出プログラム、 13:コース間ずれ補正プログラム、 14:基準点ずれ補正プログラム、 A~C:コース点群、 D:第1重複領域、 E:第2重複領域、 R1:所定領域、 R2:区画、 HM:分布図

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