(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008649
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】燃料電池システム、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20240112BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/065 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240112BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240112BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240112BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/0438
H01M8/04313
H01M8/04746
H01M8/04694
H01M8/065
H01M8/0432
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110683
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】菊地 敦
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA23
5H127BA28
5H127BA46
5H127BA57
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC06
5H127DB03
5H127DB09
5H127DB82
5H127DC02
5H127DC99
(57)【要約】
【課題】水素ガスの圧力を正しく検出することで、水素ガスの供給に関する異常を検知できる燃料電池システム、制御方法、及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】燃料電池システムにおいて、CPUは、1次遮断弁を開放し(S2)、2次遮断弁を開放する(S3)。CPUは、1次遮断弁を閉鎖する(S4)。CPUは、排出弁を開放する(S5)。CPUは、排出弁を閉鎖する(S6)。CPUは、2次圧力センサが検出した水素ガスの圧力P1を取得する(S7)。CPUは、1次遮断弁を開放する(S8)。CPUは、2次圧力センサが検出した水素ガスの圧力P2を取得する(S10)。CPUは、圧力の差分ΔPが閾値ΔPB以上であるか否かを判定する(S11)。CPUは、差分ΔPが閾値ΔPB未満であると判定した場合、水素ガスの供給に関する異常を検知したと判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池による発電を行う発電部と、
水素ガスを貯蔵する貯蔵部と、
前記発電部に前記水素ガスを供給する供給流路を開閉する供給開閉部と、
前記発電部から前記水素ガスを排出する排出流路を開閉する排出開閉部と、
前記供給流路における前記水素ガスの圧力を検出する圧力検出部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記供給開閉部を閉鎖された状態から開放する第一供給処理と、
前記第一供給処理により前記供給開閉部が開放された後、前記供給開閉部を閉鎖する供給停止処理と、
前記供給停止処理により前記供給開閉部が閉鎖された後、前記排出開閉部を開放する排出処理と、
前記排出処理により前記排出開閉部が開放された後、前記排出開閉部を閉鎖する排出停止処理と、
前記排出停止処理により前記排出開閉部が閉鎖された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第一取得処理と、
前記第一取得処理により前記圧力が取得された後、前記供給開閉部を開放する第二供給処理と、
前記第二供給処理により前記供給開閉部が開放された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第二取得処理と、
前記第二取得処理において取得された前記圧力と、前記第一取得処理において取得された前記圧力との圧力差分に基づき、前記水素ガスの供給に関する異常を検知する検知処理と
を実行することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記供給流路と前記貯蔵部とを着脱可能に接続する水素接続部を備え、
前記検知処理は、前記水素ガスの供給に関する異常として、前記水素接続部の接続が不十分であることを検出すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記排出流路と前記供給流路とに接続し、前記排出流路に排出された前記水素ガスの少なくとも一部を前記供給流路に戻す水素接続流路を備え、
前記圧力検出部は、前記供給流路における前記水素接続流路との接続部よりも上流の前記圧力を検出すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記貯蔵部を着脱可能に装着する装着部と、
前記装着部に前記貯蔵部が装着されていることを検出する装着検出部と
を備え、
前記第一供給処理は、前記装着検出部により前記貯蔵部が装着されていることが検出された場合、前記供給開閉部を閉鎖された状態から開放すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記検知処理は、前記圧力差分が所定閾値以下である場合に、前記水素ガスの供給に関する異常を検知することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
報知部を備え、
前記制御部は、前記検知処理により前記水素ガスの供給に関する異常が検知された場合に、前記報知部を介して報知を行う報知処理を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第二取得処理は、前記第二供給処理により前記供給開閉部が開放されてから所定時間を経過した後に、前記圧力を取得することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
熱媒体が流れる熱媒体流路と、
前記熱媒体流路の内側で前記熱媒体を送り出すポンプと、
前記熱媒体流路を流れる前記熱媒体を加熱するヒータと、
前記熱媒体流路を流れる前記熱媒体の温度を検出する温度検出部と
を備え、
前記貯蔵部は、
水素吸蔵合金ボンベと、
前記熱媒体流路と接続することで、前記熱媒体の循環経路を形成する温度接続流路と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記ポンプにより前記循環経路における前記熱媒体の循環を開始する循環開始処理と、
前記循環開始処理により前記熱媒体の循環を開始された後、前記温度検出部により検出された前記温度を取得する第三取得処理と、
前記第三取得処理により前記温度が取得された後、前記熱媒体流路を流れる前記熱媒体を前記ヒータにより加熱する加熱処理と、
前記加熱処理により前記熱媒体が加熱された後、前記温度検出部により検出された前記温度を取得する第四取得処理と、
前記第四取得処理において取得された前記温度と、前記第三取得処理において取得された前記温度との温度差分に基づき、前記熱媒体の循環に関する異常を検知する第二検知処理と
を実行することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記第二検知処理は、前記温度差分が第二所定閾値以下である場合に、前記熱媒体の循環に関する異常を検知することを特徴とする請求項9に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
報知部を備え、
前記制御部は、
前記第二検知処理により前記熱媒体の循環に関する異常が検知された場合に、前記報知部を介して報知を行う第二報知処理を備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
水素ガスを貯蔵する貯蔵部から発電部に前記水素ガスを供給する供給流路を開閉する供給開閉部と、前記発電部から前記水素ガスを排出する排出流路を開閉する排出開閉部と、前記供給流路における前記水素ガスの圧力を検出する圧力検出部とを制御する燃料電池システムの制御方法であって、
前記供給開閉部を閉鎖された状態から開放する第一供給工程と、
前記第一供給工程により前記供給開閉部が開放された後、前記供給開閉部を閉鎖する供給停止工程と、
前記供給停止工程により前記供給開閉部が閉鎖された後、前記排出開閉部を開放する排出工程と、
前記排出工程により前記排出開閉部が開放された後、前記排出開閉部を閉鎖する排出停止工程と、
前記排出停止工程により前記排出開閉部が閉鎖された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第一取得工程と、
前記第一取得工程により前記圧力が取得された後、前記供給開閉部を開放する第二供給工程と、
前記第二供給工程により前記供給開閉部が開放された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第二取得工程と、
前記第二取得工程において取得された前記圧力と、前記第一取得工程において取得された前記圧力との圧力差分に基づき、前記水素ガスの供給に関する異常を検知する検知工程と
を実行することを特徴とする制御方法。
【請求項13】
燃料電池システムの情報を管理するコンピュータにより、水素ガスを貯蔵する貯蔵部から発電部に前記水素ガスを供給する供給流路を開閉する供給開閉部と、前記発電部から前記水素ガスを排出する排出流路を開閉する排出開閉部と、前記供給流路における前記水素ガスの圧力を検出する圧力検出部とを制御するためのプログラムであって、
前記供給開閉部を閉鎖された状態から開放する第一供給ステップと、
前記第一供給ステップにより前記供給開閉部が開放された後、前記供給開閉部を閉鎖する供給停止ステップと、
前記供給停止ステップにより前記供給開閉部が閉鎖された後、前記排出開閉部を開放する排出ステップと、
前記排出ステップにより前記排出開閉部が開放された後、前記排出開閉部を閉鎖する排出停止ステップと、
前記排出停止ステップにより前記排出開閉部が閉鎖された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第一取得ステップと、
前記第一取得ステップにより前記圧力が取得された後、前記供給開閉部を開放する第二供給ステップと、
前記第二供給ステップにより前記供給開閉部が開放された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第二取得ステップと、
前記第二取得ステップにおいて取得された前記圧力と前記第一取得ステップにおいて取得された前記圧力との圧力差分に基づき、前記水素ガスの供給に関する異常を検知する検知ステップと
を前記コンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス貯蔵供給システムが開示されている。燃料ガス貯蔵供給システムは、燃料ガス配管と、制御装置とを備える。燃料ガス配管は、燃料ガスの充填口とガスタンクとを接続する。燃料ガス配管には、上流側シャットバルブ、圧力センサが設けられる。上流側シャットバルブは、燃料ガス配管における燃料ガスの供給を開閉する。圧力センサは、燃料ガス配管を流れる燃料ガスの圧力を測定する。制御装置は、燃料ガスをガスタンクに充填する際、圧力センサにより測定された燃料ガスの圧力測定値の上昇率が所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。制御装置は、圧力測定値の上昇率が所定の閾値よりも小さい場合、上流側シャットバルブを閉鎖する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料ガス貯蔵供給システムにおいて、燃料ガスを貯蔵する外部容器と供給元との接続が十分ではない、燃料ガス配管が詰まる等によって燃料ガスの供給に関する異常が生じる場合がある。この場合、燃料ガス貯蔵供給システムは、燃料ガスの供給に関する異常が生じた状態で燃料ガスの圧力を測定するので、燃料ガスの圧力を正しく把握できず、燃料ガスの供給に問題が生じる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、水素ガスの圧力を正しく検出することで、水素ガスの供給に関する異常を検知できる燃料電池システム、制御方法、及び制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る燃料電池システムは、燃料電池による発電を行う発電部と、水素ガスを貯蔵する貯蔵部と、前記発電部に前記水素ガスを供給する供給流路を開閉する供給開閉部と、前記発電部から前記水素ガスを排出する排出流路を開閉する排出開閉部と、前記供給流路における前記水素ガスの圧力を検出する圧力検出部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記供給開閉部を閉鎖された状態から開放する第一供給処理と、前記第一供給処理により前記供給開閉部が開放された後、前記供給開閉部を閉鎖する供給停止処理と、前記供給停止処理により前記供給開閉部が閉鎖された後、前記排出開閉部を開放する排出処理と、前記排出処理により前記排出開閉部が開放された後、前記排出開閉部を閉鎖する排出停止処理と、前記排出停止処理により前記排出開閉部が閉鎖された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第一取得処理と、前記第一取得処理により前記圧力が取得された後、前記供給開閉部を開放する第二供給処理と、前記第二供給処理により前記供給開閉部が開放された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第二取得処理と、前記第二取得処理において取得された前記圧力と、前記第一取得処理において取得された前記圧力との圧力差分に基づき、前記水素ガスの供給に関する異常を検知する検知処理とを実行することを特徴とする。
【0007】
第一態様によれば、燃料電池システムは、供給開閉部が常時解放された状態で水素ガスの圧力を検出するのではなく、水素ガスの圧力を検出する際に供給開閉部を閉鎖された状態から開放し、水素ガスの圧力を検出する。よって、燃料電池システムは、水素ガスの圧力を正しく検出することで、水素ガスの供給に関する異常を検知できる。
【0008】
本発明の第二態様に係る制御方法は、水素ガスを貯蔵する貯蔵部から発電部に前記水素ガスを供給する供給流路を開閉する供給開閉部と、前記発電部から前記水素ガスを排出する排出流路を開閉する排出開閉部と、前記供給流路における前記水素ガスの圧力を検出する圧力検出部とを制御する燃料電池システムの制御方法であって、前記供給開閉部を閉鎖された状態から開放する第一供給工程と、前記第一供給工程により前記供給開閉部が開放された後、前記供給開閉部を閉鎖する供給停止工程と、前記供給停止工程により前記供給開閉部が閉鎖された後、前記排出開閉部を開放する排出工程と、前記排出工程により前記排出開閉部が開放された後、前記排出開閉部を閉鎖する排出停止工程と、前記排出停止工程により前記排出開閉部が閉鎖された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第一取得工程と、前記第一取得工程により前記圧力が取得された後、前記供給開閉部を開放する第二供給工程と、前記第二供給工程により前記供給開閉部が開放された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第二取得工程と、前記第二取得工程において取得された前記圧力と、前記第一取得工程において取得された前記圧力との圧力差分に基づき、前記水素ガスの供給に関する異常を検知する検知工程とを実行することを特徴とする。
【0009】
本発明の第三態様に係る制御プログラムは、燃料電池システムの情報を管理するコンピュータにより、水素ガスを貯蔵する貯蔵部から発電部に前記水素ガスを供給する供給流路を開閉する供給開閉部と、前記発電部から前記水素ガスを排出する排出流路を開閉する排出開閉部と、前記供給流路における前記水素ガスの圧力を検出する圧力検出部とを制御するためのプログラムであって、前記供給開閉部を閉鎖された状態から開放する第一供給ステップと、前記第一供給ステップにより前記供給開閉部が開放された後、前記供給開閉部を閉鎖する供給停止ステップと、前記供給停止ステップにより前記供給開閉部が閉鎖された後、前記排出開閉部を開放する排出ステップと、前記排出ステップにより前記排出開閉部が開放された後、前記排出開閉部を閉鎖する排出停止ステップと、前記排出停止ステップにより前記排出開閉部が閉鎖された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第一取得ステップと、前記第一取得ステップにより前記圧力が取得された後、前記供給開閉部を開放する第二供給ステップと、前記第二供給ステップにより前記供給開閉部が開放された後、前記圧力検出部により検出された前記圧力を取得する第二取得ステップと、前記第二取得ステップにおいて取得された前記圧力と前記第一取得ステップにおいて取得された前記圧力との圧力差分に基づき、前記水素ガスの供給に関する異常を検知する検知ステップとを前記コンピュータに実行させる。
【0010】
第二態様及び第三態様は、第一態様と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】制御装置6の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】第1処理における圧力P1との差分ΔPの経時変化を示すグラフである。
【
図8】第2処理における熱媒体の温度T1との差分ΔTの経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る燃料電池システム1の一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0013】
<燃料電池システム1の概要>
図1を参照し、燃料電池システム1の概要について説明する。燃料電池システム1は、発電ユニット2、燃料ユニット3、空気流路(非図示)、水素ライン10、排出流路21、循環流路22、温調ライン30、及び制御装置6を有する。
【0014】
<発電ユニット2の概要>
発電ユニット2は、発電部9を有する。発電部9は、後述する水素ライン10を介して供給される水素ガスと、空気流路を介して供給される酸素との化学反応によって発電する燃料電池である。発電部9は、例えば複数積層されたセルがパッケージ化されている。セルにおいては、アノード、固体高分子膜、及びカソードが一体化され、導電板で挟み込まれている。発電部9は、パッケージ化されていない単独のセルであってもよい。また、発電部9は、固体高分子型燃料電池でなく、固体高分子膜の代わりにセラミックの隔膜を使用した固体酸化物型燃料電池であってもよい。
【0015】
<燃料ユニット3の概要>
燃料ユニット3には、装着部5が設けられる。装着部5には、水素ガスを貯蔵する燃料ケース7が着脱可能に装着される。燃料ケース7は、水素吸蔵合金ボンベ8、供給流路11、及び温調流路31を有する。水素吸蔵合金ボンベ8は、可逆的に水素ガスを吸放出可能な水素吸蔵合金を充填したMH(Metal Hydride)ボンベである。供給流路11は、水素ガスの流路である。供給流路11の一端は、水素吸蔵合金ボンベ8に接続される。供給流路11の他端には、カプラ11Aが設けられる。
【0016】
温調流路31は、水素吸蔵合金ボンベ8を加熱する熱媒体の流路である。水素吸蔵合金ボンベ8において、水素ガスが水素吸蔵合金から放出される際の反応は吸熱反応である。このため、水素吸蔵合金ボンベ8から水素ガスが放出されると、水素吸蔵合金ボンベ8の温度が低下する。水素吸蔵合金ボンベ8の温度が低下すると、水素吸蔵合金ボンベ8から水素ガスが放出される速度が低減する。燃料電池システム1では、熱媒体が温調流路31を通流し、水素吸蔵合金ボンベ8を加熱する。これにより、水素吸蔵合金ボンベ8は安定的に水素ガスを放出できる。熱媒体は、例えばエチレングリコールを主成分とする不凍液である。温調流路31の一端には、カプラ31Aが設けられる。温調流路31の他端には、カプラ31Bが設けられる。温調流路31における熱媒体の流れの説明は後述する。
【0017】
<空気流路の概要>
空気流路は、エアポンプ(非図示)により送出された空気の流路である。空気流路は、発電部9を通流し、発電ユニット2の外部に排出されるように形成される。
【0018】
<水素ライン10による水素ガスの供給>
水素ライン10は、水素吸蔵合金ボンベ8が貯蔵する水素ガスを発電部9に供給する流路である。水素ライン10は、燃料ケース7の供給流路11と、供給流路12とで構成される。供給流路12は、発電ユニット2と燃料ユニット3とに跨って設けられる。供給流路12の一端は、発電部9に接続される。供給流路12の他端には、カプラ12Aが設けられる。カプラ12Aは、供給流路11のカプラ11Aと着脱可能に接続される。カプラ11Aとカプラ12Aとが装着された状態で、水素ガスは、供給流路12を介して、水素吸蔵合金ボンベ8から発電部9に向けて流れる。
【0019】
供給流路12には、1次圧力センサ14、1次遮断弁15、減圧弁16、2次圧力センサ17、2次遮断弁18、及び逆止弁19が設けられる。1次圧力センサ14、1次遮断弁15、及び減圧弁16は燃料ユニット3に設けられる。2次圧力センサ17、2次遮断弁18、及び逆止弁19は、発電ユニット2に設けられる。
【0020】
1次圧力センサ14は、水素ガスの圧力を検出する。1次遮断弁15は、供給流路12における1次圧力センサ14よりも下流に設けられる。1次遮断弁15は、供給流路12を開閉可能な電磁開閉弁である。
【0021】
減圧弁16は、供給流路12における1次遮断弁15よりも下流に設けられる。減圧弁16は、燃料ケース7から供給された高圧の水素ガスの圧力を低圧に調整する。減圧弁16が水素ガスの圧力を低圧に調整することで、高圧の水素ガスが発電部9に流れることが抑制される。これにより、発電部9は安全に発電できる。
【0022】
2次圧力センサ17は、水素ガスの圧力を検出する。2次遮断弁18は、供給流路12における2次圧力センサ17よりも下流に設けられる。2次遮断弁18は、供給流路12を開閉可能な電磁開閉弁である。
【0023】
逆止弁19は、供給流路12における2次遮断弁18よりも下流に設けられる。逆止弁19は、供給流路12における逆止弁19よりも下流を流れる水素ガス、及び発電部9の発電により生じた水または水蒸気が燃料ケース7に逆流することを防止する弁である。
【0024】
逆止弁19を通過した水素ガスは、発電部9に供給される。発電部9に供給された水素ガスは、発電部9のアノードにおいて、水素イオンと電子とが生じる。水素イオンは、発電部9のカソードにおいて、発電部9に接続される外部回路(不図示)を経由してカソードに到達する電子、及び空気流路を介して供給された空気中の酸素分子と結合し、水が発生する。
【0025】
<水素ガスの排出と循環>
発電部9で発生した水、及び発電部9で未反応の水素ガスは、排出流路21に流れる。排出流路21の一端は、発電部9に接続される。排出流路21の他端は、排出弁23に接続されている。排出弁23は、排出流路21を開閉可能な電磁開閉弁である。排出弁23が開放している状態で、発電部9で発生した水または水蒸気、及び発電部9で未反応の水素ガスは、排出流路21を介して排出される。
【0026】
供給流路12及び排出流路21には、循環流路22が接続される。循環流路22の一端は、排出流路21の接続点Mで排出流路21に接続される。接続点Mは、排出流路21における排出弁23よりも上流に位置する。循環流路22の他端は、供給流路12の接続点Nで供給流路12に接続される。接続点Nは、供給流路12における逆止弁19よりも下流に位置する。
【0027】
循環流路22には、ポンプ24が設けられる。ポンプ24は、接続点Mから接続点Nに向かって水素ガスを送出する。発電部9で未反応の水素ガスは、排出流路21から循環流路22を介して供給流路12に戻り、循環する。ポンプ24が水素ガスを循環する際、発電部9で発生した水または水蒸気の一部もポンプ24により循環する場合がある。接続点Nが供給流路12における逆止弁19よりも下流に位置するので、循環した水または水蒸気が供給流路12における逆止弁19よりも上流に流入することが防止される。
【0028】
<温調ライン30の概要>
温調ライン30は、熱媒体が循環する流路である。温調ライン30は、燃料ケース7の温調流路31と、温調流路32とで構成される。温調流路32は、発電ユニット2と燃料ユニット3とに跨って設けられる。
【0029】
温調流路32の一端には、カプラ32Aが設けられる。温調流路32の他端には、カプラ32Bが設けられる。カプラ32A、32Bは、それぞれ、温調流路31のカプラ31A、31Bと着脱可能に接続される。カプラ31A、31Bとカプラ32A、32Bとが接続された状態で、温調流路31、32により熱媒体が循環する温調ライン30が形成される。熱媒体は、カプラ31A、32Aを基点として、発電ユニット2、カプラ31B、32B、燃料ケース7の順に温調ライン30を循環する。
【0030】
温調流路32には、入温度センサ34、タンク35、ポンプ36、ヒータ37、出温度センサ38、及び温調遮断弁39が設けられる。入温度センサ34、タンク35、ポンプ36、ヒータ37、出温度センサ38は、発電ユニット2に設けられる。温調遮断弁39は、燃料ユニット3に設けられる。
【0031】
入温度センサ34は、燃料ケース7から発電ユニット2に流入する熱媒体の温度を検出する。タンク35は、温調流路32における入温度センサ34よりも下流に設けられる。タンク35は、熱媒体を貯蔵する。ポンプ36は、温調流路32におけるタンク35よりも下流に設けられる。ポンプ36は、熱媒体を送出し、温調ライン30で熱媒体を循環する。
【0032】
ヒータ37は、温調流路32におけるポンプ36よりも下流に設けられる。ヒータ37は、熱媒体を加熱する。出温度センサ38は、温調流路32におけるヒータ37よりも下流に設けられる。出温度センサ38は、発電ユニット2から燃料ケース7に流出する熱媒体の温度を検出する。温調遮断弁39は、温調流路32における出温度センサ38よりも下流に設けられる。温調遮断弁39は、温調流路32を開閉可能な電磁開閉弁である。
【0033】
<制御装置6の電気的構成>
図2を参照し、制御装置6の電気的構成について説明する。制御装置6は周知のPCであり、燃料電池システム1の全体の制御を司る。制御装置6は、CPU61、記憶装置62、入力部63、及び表示部64を含む。CPU61は、記憶装置62、入力部63、表示部64、1次遮断弁15、2次遮断弁18、排出弁23、温調遮断弁39、ポンプ24、36、ヒータ37、1次圧力センサ14、2次圧力センサ17、入温度センサ34、出温度センサ38、及び磁気センサ25と電気的に接続する。
【0034】
CPU61は、制御装置6を含む燃料電池システム1の全体を制御する。記憶装置62は、CPU61が後述する第1処理(
図3参照)及び第2処理(
図6参照)を実行する為のプログラムを記憶する。入力部63はキーボードであり、燃料電池システム1に対する入力操作を受け付ける。表示部64はディスプレイであり、燃料電池システム1の状態等を表示する。
【0035】
CPU61は、1次遮断弁15及び2次遮断弁18の開閉を制御することで、発電部9への水素ガスの供給を制御する。CPU61は、排出弁23の開閉を制御することで、発電部9からの水素ガスの排出を制御する。CPU61は、温調遮断弁39の開閉、及びポンプ36の駆動を制御することで、温調ライン30での熱媒体の循環を制御する。CPU61は、ポンプ24の駆動を制御することで、発電部9を介しての水素ガスの循環を制御する。CPU61は、ヒータ37の駆動を制御することで、熱媒体の加熱を制御する。
【0036】
1次圧力センサ14及び2次圧力センサ17は、検出した水素ガスの圧力をCPU61に入力する。入温度センサ34、出温度センサ38は、検出した熱媒体の温度をCPU61に入力する。磁気センサ25は、装着部5に設けられる。磁気センサ25は、装着部5に燃料ケース7の着脱を検出し、其の検出結果をCPU61に入力する。
【0037】
<第1処理>
図3、
図4を参照し、第1処理について説明する。第1処理は、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検知する処理である。水素ガスの供給に関する異常は、例えば、カプラ11Aとカプラ12Aとの接続が不十分である、減圧弁16に異常がある、供給流路12で詰まりがある等によって生じる。
【0038】
第1処理は、記憶装置62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することにより開始される。このとき、供給流路12は1次遮断弁15及び2次遮断弁18により閉塞され、排出流路21は排出弁23により閉塞されている。第1処理が開始した時刻をt0とする(
図4参照)。
【0039】
図3に示すように、CPU61は、燃料ケース7が装着されているか否かを判定する(S1)。CPU61は、S1の処理において、磁気センサ25から入力される情報に基づき判定する。CPU61は、燃料ケース7が装着されていないと判定した場合(S1:NO)、処理をS1に戻す。
【0040】
CPU61は、燃料ケース7が装着されていると判定した場合(S1:YES)、1次遮断弁15を開放する(S2)。CPU61は、時刻t1(t1>t0)でS2の処理を実行する(
図4参照)。水素ライン10において、燃料ケース7から2次遮断弁18まで水素ガスが充填される。
【0041】
CPU61は、時刻t2(t2>t1、
図4参照)で2次遮断弁18を開放する(S3)。水素ライン10において、水素ガスが燃料ケース7から発電部9に供給される。CPU61は、時刻t3(t3>t2、
図4参照)で1次遮断弁15を閉鎖する(S4)。水素ライン10において、燃料ケース7から発電部9への水素ガスの供給が停止される。
【0042】
CPU61は、時刻t4(t4>t3、
図4参照)で排出弁23を開放する(S5)。排出流路21を介して水素ガスが排出される。CPU61は、時刻t5(t5>t4、
図4参照)で排出弁23を閉鎖する(S6)。排出流路21を介しての水素ガスの排出が停止される。CPU61は、時刻t6(t6>t5、
図4参照)で2次圧力センサ17が検出した水素ガスの圧力P1を取得する(S7)。
【0043】
CPU61は、時刻t7(t7>t6、
図4参照)で1次遮断弁15を開放する(S8)。水素ライン10において、水素ガスが発電部9に供給される。CPU61は、1次遮断弁15を開放してから所定時間t8-t7(t8>t7、
図4参照)が経過したか否かを判定する(S9)。
【0044】
CPU61は、1次遮断弁15を開放してから所定時間t8-t7が経過していないと判定した場合(S9:NO)、処理をS9に戻す。CPU61は、1次遮断弁15を開放してから所定時間t8-t7が経過したと判定した場合(S9:YES)、2次圧力センサ17が検出した水素ガスの圧力P2を取得する(S10、時刻t8)。
【0045】
CPU61は、S10で取得した圧力P2と、S7で取得した圧力P1との差分ΔPが閾値ΔPB以上であるか否かを判定する(S11)。ここで、ΔP=P2-P1である。閾値ΔPBは、予め記憶装置62に記憶される所定値である。
【0046】
CPU61は、圧力の差分ΔPが閾値ΔPB未満であると判定した場合(S11:NO)、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検知したとして、水素報知処理を実行する(S12)。CPU61は、S12の水素報知処理において、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検知した旨を表示部64に表示して報知する。CPU61は、処理をS13に移行する。
【0047】
CPU61は、時刻t9(t9>t8、
図4参照)で1次遮断弁15を閉鎖する(S13)。CPU61は、時刻t10(t10>t9、
図4参照)で2次遮断弁18を閉鎖する(S14)。水素ライン10において、燃料ケース7から発電部9への水素ガスの供給が停止される。CPU61は、第1処理を終了する。
【0048】
<第1処理の結果>
図5に示すように、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常がない場合、時刻t8での圧力の差分ΔPが閾値ΔPB以上である。一方、カプラ11Aとカプラ12Aとの接続が不十分である等によって、水素ガスの供給に関する異常がある場合、圧力の差分ΔPが閾値ΔPB未満となった。このように、本実施形態の方法により、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検出できることが分かった。
【0049】
<第2処理>
図6、
図7を参照し、第2処理について説明する。第2処理は、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検知する処理である。熱媒体の循環に関する異常は、例えば、カプラ31Aとカプラ32Aとの接続が不十分である、カプラ31Bとカプラ32Bとの接続が不十分である、温調流路32で詰まりがある等によって生じる。
【0050】
第2処理は、記憶装置62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することにより開始される。このとき、温調ライン30は、温調遮断弁39により閉塞されている。第2処理が開始した時刻をt20とする(
図7参照)。
【0051】
図6に示すように、CPU61は、燃料ケース7が装着されているか否かを判定する(S21)。S21は、第1処理のS1と同様の処理である。CPU61は、燃料ケース7が装着されていないと判定した場合(S21:NO)、処理をS21に戻す。
【0052】
CPU61は、燃料ケース7が装着されていると判定した場合(S21:YES)、温調遮断弁39を開放する(S22)。CPU61は、時刻t21(t21>t20)でS22の処理を実行する(
図7参照)。CPU61は、時刻t22(t22>t21、
図7参照)でポンプ36を駆動し、熱媒体の循環を開始する(S23)。CPU61は、時刻t23(t23>t22、
図7参照)で出温度センサ38が検出した熱媒体の温度T1を取得する(S24)。
【0053】
CPU61は、時刻t24(t24>t23、
図7参照)でヒータ37による熱媒体の加熱を開始する(S25)。CPU61は、熱媒体の加熱を開始してから所定時間t25-t24(t25>t24、
図7参照)が経過したか否かを判定する(S26)。
【0054】
CPU61は、熱媒体の加熱を開始してから所定時間t25-t24が経過していないと判定した場合(S26:NO)、処理をS26に戻す。CPU61は、熱媒体の加熱を開始してから所定時間t25-t24が経過したと判定した場合(S26:YES)、出温度センサ38が検出した熱媒体の温度T2を取得する(S27、時刻t25)。CPU61は、時刻t26(t26>t25、
図7参照)でヒータ37による熱媒体の加熱を停止する(S28)。
【0055】
CPU61は、S28で取得した温度T2と、S24で取得した温度T1との差分ΔTが閾値ΔTB以上であるか否かを判定する(S29)。ここで、ΔT=T2-T1である。閾値ΔTBは、予め記憶装置62に記憶される所定値である。
【0056】
CPU61は、温度の差分ΔTが閾値ΔTB未満であると判定した場合(S29:NO)、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検知したとして、温調報知処理を実行する(S30)。CPU61は、S30の温調報知処理において、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検知した旨を表示部に表示して報知する。CPU61は、処理をS31に移行する。
【0057】
CPU61は、温度の差分ΔTが閾値ΔTB以上であると判定した場合(S29:YES)、時刻t27(t27>t26、
図7参照)でポンプ36の駆動を停止し、熱媒体の循環を停止する(S31)。CPU61は、時刻t28(t28>t27、
図7参照)で温調遮断弁39を閉鎖する(S32)。CPU61は、第2処理を終了する。
【0058】
<第2処理の結果>
図8に示すように、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常がない場合、時刻t25での温度の差分ΔTが閾値ΔTB以上である。一方、カプラ31Aとカプラ32Aとの接続が不十分である等によって、熱媒体の循環に関する異常がある場合、温度の差分ΔTが閾値ΔTB未満となった。このように、本実施形態の方法により、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検出できることが分かった。
【0059】
<本実施形態の作用、効果>
以上説明したように、燃料電池システム1において、CPU61は、水素ガスの圧力P1、P2を検出する際に、1次遮断弁15と2次遮断弁18とを開放する。仮に、1次遮断弁15と2次遮断弁18とが常時開放された状態で、水素ガスの圧力P1、P2を検出する際に、例えば、供給流路12に詰まりがあると、供給流路12が破裂する可能性がある。又、仮に、水素ガスの供給に関する異常が生じた状態で、水素ガスを供給しながら水素ガスの圧力P1、P2を検出する場合、水素ガスの圧力を正しく検出できない可能性がある。燃料電池システム1は、水素ガスの圧力P1、P2を検出する際に、1次遮断弁15と2次遮断弁18とが開放されるので、水素ガスの圧力P1、P2を正しく検出でき、水素ガスの供給に関する異常を検知できる。水素ガスの供給に関する異常を安全に検知できる。又、水素ガスの供給に関する異常がある状態で、発電部9が発電を行った場合、発電部9による発電に不具合が生じる可能性がある。燃料電池システム1は、水素ガスの供給に関する異常を検知することによって、発電部9による発電に不具合が生じることを未然に防ぐことができる。
【0060】
CPU61は、圧力の差分ΔPに基づき、水素ライン10におけるカプラ11Aとカプラ12Aとの接続が不十分であることによって生じる異常を検知できる。
【0061】
発電部9で発生した水蒸気が循環流路22に流れることがある。この際、接続点Nから発電部9までの供給流路12において、水蒸気が混入した水素ガスが流れる。仮に、2次圧力センサ17が供給流路12の接続点Nよりも下流側に設けられた場合、水素ガス単体の圧力を精度よく検出できない可能性がある。燃料電池システム1において、2次圧力センサ17が供給流路12の接続点Nよりも上流側に設けられるので、2次圧力センサ17が供給流路12の接続点Nよりも下流側に設けられる場合と比較して、精度よく水素ガス単体の圧力を検出できる。又、逆止弁19が2次圧力センサ17と接続点Nの間に設けられるので、より精度よく水素ガス単体の圧力を検出できる。
【0062】
燃料ユニット3において、燃料ケース7を交換する際、燃料ケース7のカプラ11Aと供給流路12のカプラ12Aとの接続、及び接続の解除が行われる。CPU61は、燃料ケース7が装着されていると判定した場合(S1:YES)、1次遮断弁15を開放する(S2)。これにより、燃料電池システム1は、燃料ケース7を交換する際に、カプラ11Aとカプラ12Aとの接続が十分でない場合にも、カプラ11Aとカプラ12Aとの接続が不十分であることによって生じる異常を検知できる。
【0063】
水素ライン10において、カプラ11Aとカプラ12Aとの接続が不十分である場合、十分な水素ガスが供給流路12を流れず、2次圧力センサ17が検出する圧力(P1、P2)が小さくなるので、圧力の差分ΔPは閾値ΔPB未満になる。又、水素ライン10において、供給流路12の2次圧力センサ17よりも上流側で詰りがある場合、2次圧力センサ17が検出する圧力が小さくなるので、圧力の差分ΔPは閾値ΔPB未満になる。CPU61は、差分ΔPが閾値ΔPB未満であると判定した場合(S11:NO)、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検知したと判定する。よって、燃料電池システム1は、水素ガスの供給に関する異常を検知できる。
【0064】
CPU61は、差分ΔPが閾値ΔPB未満であると判定した場合(S11:NO)、水素報知処理を実行し(S12)、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検知した旨を表示部に表示して報知する。これにより、燃料電池システム1のユーザは、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を容易に把握できる。
【0065】
CPU61は、1次遮断弁15を開放(S8)してから所定時間t8-t7が経過したか否かを判定する(S9)。CPU61は、1次遮断弁15を開放してから所定時間t8-t7が経過したと判定した場合、2次圧力センサ17が検出した水素ガスの圧力P2を取得する(S10)。燃料電池システム1において、CPU61は、供給流路12に十分に充填された状態の水素ガスの圧力P2を取得する。よって、燃料電池システム1は、S8にて1次遮断弁15が開放された直後に水素ガスの圧力を取得する場合と比較して、精度よく水素ガスの圧力P2を取得できる。
【0066】
燃料電池システム1において、燃料ケース7の水素吸蔵合金ボンベ8は水素ガスを貯蔵する。燃料電池システム1は、温調流路31、32とで構成される温調ライン30を有する。温調流路31、32には、熱媒体が通流する。温調流路32は、ポンプ36、ヒータ37、出温度センサ38を有する。温調流路31のカプラ31A、31Bと、温調流路32のカプラ32A、32Bとが接続されることで、熱媒体が水素吸蔵合金ボンベ8を介して循環する温調ライン30が形成される。燃料電池システム1は、温調ライン30で熱媒体を循環することで水素吸蔵合金ボンベ8を加熱し、水素吸蔵合金ボンベ8から安定的に水素ガスを放出できる。
【0067】
CPU61は、ポンプ36により温調ライン30で熱媒体を循環した状態で、ヒータ37による加熱前の熱媒体の温度T1と、ヒータ37による加熱後の熱媒体の温度T2との温度の差分ΔTに基づき、熱媒体の循環に関する異常を検知する(S29)。燃料電池システム1において、水素ガスの温度T1、T2を検出する際に、例えば、カプラ31Aとカプラ32Aとの接続が不十分である、カプラ31Bとカプラ32Bとの接続が不十分である、温調流路32で詰まりがある等によって熱媒体の循環に関する異常がある場合、熱媒体が温調ライン30を循環できない。この状態でヒータ37により熱媒体が加熱されると、温度の差分ΔTの大きさが変動する。よって、燃料電池システム1は、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検知できる。
【0068】
温調ライン30において、カプラ31Aとカプラ32Aとの接続が不十分である場合、カプラ31Bとカプラ32Bとの接続が不十分である場合、又は温調ライン30において詰りがある場合、熱媒体が循環しない。従って、出温度センサ38が検出する温度変化が小さくなり、温度の差分ΔTは閾値ΔTB未満になる。CPU61は、温度の差分ΔTが閾値ΔTB未満であると判定した場合(S29:NO)、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検知したと判定する。よって、燃料電池システム1は、熱媒体の循環に関する異常を検知できる。
【0069】
CPU61は、差分ΔTが閾値ΔTB未満であると判定した場合(S29:NO)、温調報知処理を実行し(S30)、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検知した旨を表示部64に表示して報知する。これにより、燃料電池システム1のユーザは、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を容易に把握できる。
【0070】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。燃料電池システム1の構成は適宜変更してもよい。上記実施形態で、CPU61が第1処理で検知した水素ガスの供給に関する異常は一例であり、例えば、CPU61は1次圧力センサ14が検出する水素ガスの圧力に基づき、水素吸蔵合金ボンベ8から水素ガスが十分放出されていない異常を検知してもよい。上記実施形態で、CPU61が第2処理で検知した熱媒体の循環に関する異常は一例であり、例えば、CPU61は入温度センサ34が検出する熱媒体の温度変化に基づき、燃料ケース7での熱媒体が凍結する異常を検知してもよい。
【0071】
<制御の変形例>
第1処理、第2処理の処理を実行させるための指令を含むプログラムは、CPU61が、対応するプログラムを実行するまでに、記憶装置62に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。CPU61が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、記憶装置62に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0072】
第1処理、第2処理は、制御装置6とは別体に設けられる、専用又は汎用の装置により実行されてもよい。第1処理、第2処理の各ステップは、CPU61によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。第1処理、第2処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。第1処理、第2処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。
【0073】
第1処理、第2処理が実行されるタイミングは適宜変更してもよい。例えば、第2処理は、第1処理の前に実行されてもよい。この場合、水素吸蔵合金ボンベ8を加熱する熱媒体の循環の異常の有無を確認した後、水素吸蔵合金ボンベ8からの水素ガスの供給の異常の有無を確認する。これにより、CPU61は、熱媒体が温調ライン30を正常に循環している状態で水素ガスの供給の異常の有無を確認するので、より精度よく水素ガスの供給の異常を検知できる。この場合、第1処理のS1を省略してもよい。
【0074】
<第1処理の変形例>
CPU61は、S7、S10において、1次圧力センサ14から水素ガスの圧力を取得してもよい。CPU61は、S11において、圧力の差分ΔPに加えて、他のパラメータ(例えば、圧力P1の大きさ)に基づき、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検知してもよい。
【0075】
CPU61は、S11において、圧力の差分ΔPが閾値ΔPB以上である場合に、水素ライン10における水素ガスの供給に関する異常を検出してもよい。CPU61は、水素ガスの供給に関する異常の種類に応じて、複数の閾値を記憶装置62に記憶してもよい。
【0076】
CPU61は、S12を省略してもよい。CPU61は、S12において、表示部64の表示以外の方法でユーザに報知してもよい。CPU61は、例えばスピーカが発する音声によりユーザに報知してもよい。
【0077】
CPU61は、S8で1次遮断弁15を開放してから所定時間t8-t7が経過せずに、S10で水素ガスの圧力P2を取得してもよい。この場合、S9を省略してもよい。
CPU61は、S6で排出弁23を閉鎖してから所定時間が経過した後、S7で水素ガスの圧力P1を取得してもよい。この場合、CPU61は、排出流路21から十分に水素ガスが排出された状態で水素ガスの圧力P1を取得するので、水素ガスの供給に関する異常を精度よく検出できる。
【0078】
CPU61は、S8で1次遮断弁15を開放してから所定時間t8-t7が経過した場合、1次遮断弁15を閉鎖してから、S10で水素ガスの圧力P2を取得してもよい。この場合、CPU61は、供給流路12に水素ガスが流れていない状態で水素ガスの圧力P2を取得する。よって、CPU61は、水素ガスの供給に関する異常を精度よく検出できる。
【0079】
<第2処理の変形例>
CPU61は、S24、S27において、入温度センサ34から熱媒体の温度を取得してもよい。CPU61は、S29において、圧力の差分ΔTに加えて、他のパラメータ、例えば、温度T1の大きさに基づき、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検知してもよい。
【0080】
CPU61は、S29において、温度の差分ΔTが閾値ΔTB以上である場合に、温調ライン30における熱媒体の循環に関する異常を検出してもよい。CPU61は、熱媒体の循環に関する異常の種類に応じて、複数の閾値を記憶装置62に記憶してもよい。
【0081】
CPU61は、S30を省略してもよい。CPU61は、S30において、表示部64の表示以外の方法でユーザに報知してもよい。CPU61は、例えばスピーカが発する音声によりユーザに報知してもよい。
【0082】
<燃料電池システム1の機械的構成の変形例>
燃料電池システム1の構成は適宜変更してもよい。例えば、燃料電池システム1は、発電ユニット2と燃料ユニット3とが、一体となった構成でもよい。
【0083】
供給流路12において、1次遮断弁15又は2次遮断弁18の少なくとも一方が設けられればよい。供給流路12において、1次圧力センサ14又は2次圧力センサ17の少なくとも一方が設けられればよい。供給流路12における、1次圧力センサ14、1次遮断弁15、減圧弁16、2次圧力センサ17、2次遮断弁18、逆止弁19が設けられる位置、順番は適宜変更してもよい。
【0084】
供給流路11、12はカプラ11A、12A以外の継手(例えば、フランジ)で接続されてもよい。温調流路31、32はカプラ31A、31B、32A、32B以外の継手(例えば、フランジ)で接続されてもよい。供給流路12、温調流路32は、発電ユニット2と燃料ユニット3とに跨って設けられなくてもよい。
【0085】
燃料電池システム1において、発電部9を介して水素ガスを循環しなくてもよい。この場合、循環流路22で、排出流路21と供給流路12とを接続しなくてもよい。排出流路21と循環流路22との接続点Mの位置は適宜変更してもよい。供給流路12と循環流路22との接続点Nの位置は適宜変更してもよい。2次圧力センサ17は、供給流路12における接続点Nの下流側に設けてもよい。
【0086】
燃料電池システム1において、燃料ケース7は、燃料ユニット3の装着部5に取り外し不可能に固定されてもよい。磁気センサ25は、燃料ケース7に設けられてもよい。燃料電池システム1は、磁気センサ25に代わり、リミットスイッチにより燃料ケース7の着脱を検出してもよい。
【0087】
水素ガスは水素吸蔵合金ボンベ8に代わり、例えば高圧ボンベにより貯蔵されてもよい。この場合、燃料電池システム1は、温調ライン30を有さなくてもよい。CPU61は、第2処理を省略してもよい。
【0088】
温調流路32において、入温度センサ34又は出温度センサ38の少なくとも一方が設けられればよい。温調流路32における、入温度センサ34、タンク35、ポンプ36、ヒータ37、出温度センサ38、温調遮断弁39が設けられる位置、順番は適宜変更してもよい。
【0089】
カプラ11Aとカプラ12A、カプラ31Aとカプラ32A、及びカプラ31Bとカプラ32Bは、発電ユニット2、又は発電ユニット2及び燃料ユニット3の外部で接続されてもよい。
【0090】
排出流路21の接続点Mに気液分離器を設けてもよい。これにより、発電部9で発生した水が、循環流路22を介して供給流路12に流れることが抑制される。供給流路12の接続点Nに水蒸気やその他の不純物(窒素ガス等)を除去するフィルタを設けてもよい。これにより、発電部9に純度の高い水素ガスが通流される。
【0091】
燃料ユニット3において、装着部5に装着する燃料ケース7の数量は適宜変更してもよい。燃料ケース7において、水素吸蔵合金ボンベ8の数量は適宜変更してもよい。
【0092】
CPU61は、水素ガスの供給に関する異常として、減圧弁16の異常を検知してもよい。CPU61は、S2の処理で1次遮断弁15を開放した後、S3の処理が開始される前に、2次圧力センサ17が検出した水素ガスの圧力を取得する。CPU61は、取得した水素ガスの圧力に基づき、減圧弁16の異常を検知する。CPU61は、1次遮断弁15が開放状態であり、且つ2次遮断弁18が閉鎖状態で、水素ガスの圧力を取得する。これにより、CPU61は、高圧の水素ガスが発電部9に流入することなく、減圧弁16の異常を検知できる。
【0093】
<その他>
上記実施形態において、燃料ケース7が本発明の「貯蔵部」に相当する。供給流路12が本発明の「供給流路」に相当する。1次遮断弁15及び2次遮断弁18が本発明の「供給開閉部」に相当する。排出弁23が本発明の「排出開閉部」に相当する。2次圧力センサ17が本発明の「圧力検出部」に相当する。制御装置6のCPU61が本発明の「制御部」に相当する。S2及びS3の処理が本発明の「第一供給処理」に相当する。S4の処理が本発明の「第一供給停止処理」に相当する。S5の処理が本発明の「排出処理」に相当する。S6の処理が本発明の「排出停止処理」に相当する。S7の処理が本発明の「第一取得処理」に相当する。S8の処理が本発明の「第二供給処理」に相当する。差分ΔPが本発明の「圧力差分」に相当する。S11の処理が本発明の「検知処理」に相当する。カプラ11A、12Aが本発明の「水素接続部」に相当する。循環流路22が本発明の「水素接続流路」に相当する。磁気センサ25が本発明の「装着検出部」に相当する。表示部64が本発明の「報知部」に相当する。S12の処理が本発明の「報知処理」に相当する。温調流路32が本発明の「熱媒体流路」に相当する。ポンプ36が本発明の「ポンプ」に相当する。出温度センサ38が本発明の「温度検出部」に相当する。温調ライン30が本発明の「循環経路」に相当する。温調流路31が本発明の「温度接続流路」に相当する。S23の処理が本発明の「循環開始処理」に相当する。S24の処理が本発明の「第三取得処理」に相当する。S25の処理が本発明の「加熱処理」に相当する。S27の処理が本発明の「第四取得処理」に相当する。差分ΔTが本発明の「温度差分」に相当する。S29の処理が本発明の「第二検知処理」に相当する。S30の処理が本発明の「第二報知処理」に相当する。閾値ΔPBが本発明の「所定閾値」に相当する。閾値ΔTBが本発明の「第二所定閾値」に相当する。
【符号の説明】
【0094】
1 燃料電池システム
2 発電ユニット
3 燃料ユニット
6 制御装置
7 燃料ケース
8 水素吸蔵合金ボンベ
9 発電部
10 水素ライン
15 1次遮断弁
17 2次圧力センサ
18 2次遮断弁
23 排出弁
30 温調ライン
61 CPU