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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086491
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】雌ねじ体
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/34 20060101AFI20240620BHJP
   F16B 39/18 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
F16B39/34 A
F16B39/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201649
(22)【出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】511025411
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
(57)【要約】
【課題】簡易な構造によって、雌ねじ体に着脱可能な緩み止め機構を設け、雌ねじ体の緩み止め効果を発揮して長期的に締結状態を維持するための手段を提供する。
【解決手段】雄ねじに螺合する雌ねじ部と、該雌ねじ部が形成された面に沿って回転防止部材を挿脱可能に案内する案内部と、を有し、上記回転防止部材は、上記案内部に装着されたとき、上記雌ねじ部と連通する貫通孔と、該貫通孔の周縁部に形成され、上記雄ねじ部に螺合し得る一つ以上の板片を有することを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじに螺合する雌ねじ部と、
該雌ねじ部が形成された面に沿って回転防止部材を挿脱可能に案内する案内部と、を有し、
上記回転防止部材は、上記案内部に装着されたとき、上記雌ねじ部と連通する貫通孔と、該貫通孔の周縁部に形成され、上記雄ねじ部に螺合し得る一つ以上の板片を有することを特徴とする雌ねじ体。
【請求項2】
前記板片は、その先端部が前記貫通孔の軸心に向かって突出し、
上記先端部が、断続的又は連続的な螺旋条を成すことを特徴とする、請求項1記載の雌ねじ体。
【請求項3】
前記雌ねじ部の内周面には、所定のリード角及び/又はリード方向に設定された螺旋条が形成され、
前記板片は、その先端部が上記所定のリード角及び/又はリード方向と相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された仮想的な螺旋条を成すことを特徴とする請求項1記載の雌ねじ体。
【請求項4】
前記案内部は、前記回転防止部材の軸方向回りの回転を規制することを特徴とする請求項1記載の雌ねじ体。
【請求項5】
前記案内部は、前記回転防止部材の軸方向の変位を記載することを特徴とする請求項1記載の雌ねじ体。
【請求項6】
前記案内部は、所定方向に延在する一対の凹溝を有し、
該凹溝には、前記回転防止部材の一部がスライド移動可能に嵌ることを特徴とする請求項1記載の雌ねじ体。
【請求項7】
前記回転防止部材は、前記案内部に外装又は内装されることを特徴とする請求項1記載の雌ねじ体。
【請求項8】
前記回転防止部材は、前記案内部の外側に位置する取出し部を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の雌ねじ体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌ねじ体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトに螺合されたナットが緩むのを抑制する緩み止めナットが用いられいる。このような緩み止めナットとしては、ナット本体の上端面に平板状弾性ワッシャがカシメ固定されてなる(例えば、特許文献1参照)。この平板状弾性ワッシャは、一対の凸状係合部片を有しており、緩み止めナットをボルトに螺合させることで、一対の凸状係合部片のうちの一方の凸状係合部片を弾性変形させながらボルトのねじ山を強圧する。これにより、摩擦トルク(プリベリングトルク)を発生させてナットの緩み止めがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-90214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、緩み止めナットの摩擦トルクによる緩み止め効果は、凸状係合部片の弾性による摩擦力のみに頼るものであり、条件によっては、長期間の使用において緩み止めナットが緩んでしまうことがある。例えば、緩み止めナットは、水分を多く含んだ軟弱地、乾燥した岩盤地など様々な条件下で使用され得るため、土砂の衝突や機械の振動等によって平板状弾性ワッシャがボルトの径方向外側に塑性変形し得、摩擦トルクを作用させることができず、緩み止めが有効に機能しなくなるという問題がある。また、平板状弾性ワッシャをナット本体にカシメ固定する場合には、固定工程が必要となってしまうという問題もある。更には、平板状弾性ワッシャがカシメ固定されているので、交換することが出来ないという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、雌ねじ体に着脱可能な緩み止め機構を設け、雌ねじ体の緩み止め効果を発揮して長期的に締結状態を維持するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の雌ねじ体は、雄ねじに螺合する雌ねじ部と、該雌ねじ部が形成された面に沿って回転防止部材を挿脱可能に案内する案内部と、を有し、上記回転防止部材は、上記案内部に装着されたとき、上記雌ねじ部と連通する貫通孔と、該貫通孔の周縁部に形成され、上記雄ねじ部に螺合し得る一つ以上の板片を有することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の雌ねじ体は、前記板片がその先端部が前記貫通孔の軸心に向かって突出し、上記先端部が、断続的又は連続的な螺旋条を成すことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の雌ねじ体は、前記雌ねじ部の内周面には、所定のリード角及び/又はリード方向に設定された螺旋条が形成され、前記板片は、その先端部が上記所定のリード角及び/又はリード方向と相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された仮想的な螺旋条を成すことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の雌ねじ体は、前記案内部が前記回転防止部材の軸方向回りの回転を規制することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の雌ねじ体は、前記案内部が前記回転防止部材の軸方向の変位を記載することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の雌ねじ体は、前記案内部が所定方向に延在する一対の凹溝を有し、該凹溝には、前記回転防止部材の一部がスライド移動可能に嵌ることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の雌ねじ体は、前記回転防止部材が前記案内部に外装又は内装されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の雌ねじ体は、前記回転防止部材が前記案内部の外側に位置する取出し部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の雌ねじ体によれば、簡易な構造によって、雌ねじ体に着脱可能な緩み止め機構を設け、雌ねじ体の緩み止め効果を発揮して長期的に締結状態を維持することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る雌ねじ体を含む締結構造を示す正面図である。
図2】本実施形態に係る雄ねじ体を示す正面図である。
図3】本実施形態の雌ねじ体を示し、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は平面図である。
図4】本実施形態に係る回転防止部材を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図5】雌ねじ体に回転防止部材を装着する手順を示す図である。
図6】雌ねじ体の他の例を示す図である。
図7】回転防止部材の他の例を示す図である。
図8】雌ねじ体に回転防止部材を装着する手順を示す図である。
図9】回転防止部材の着脱を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の締結構造について、図面を参照して説明する。尚、実施形態として記載され又は図面に示された構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲を前述した内容に限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「ある方向に向かって」「平行」、「直交」、「垂直」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは一義的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度及び距離をもって相対的に変位した状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」、「均等」及び「等密度」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差、又は、比率が存在した状態も表すものとする。例えば、三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部及び面取り部、湾曲部、R形状部等を含む形状も表すものとする。一方、一の構成要素を「備える」、「形成される」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0016】
尚、本明細書において、延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、即ち、X軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0017】
本実施形態の締結構造1は、雄ねじ体10に雌ねじ体20を締結するものである。雌ねじ体20は、筒状部材22と、雄ねじ体10の緩み方向の相対回転を防止する回転防止部材30によって、雄ねじ体10の締結方向の相対回転を許容し、緩み方向の相対回転を規制する。
【0018】
図2は雄ねじ体10を示す説明図であり、雄ねじ体10は、基部側から軸端に向かって雄ねじ螺旋溝構造が形成された雄ねじ部11が設けられる。本実施形態では、この雄ねじ部11に、対応した右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される右ねじと成る第一雄ねじ螺旋溝構造11aと、対応した左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される左ねじと成る第二雄ねじ螺旋溝構造11bとの二種類の雄ねじ螺旋溝構造が同一領域上に重複して形成される。
【0019】
本実施形態では、このようにすることで、第一雄ねじ螺旋溝構造11a及び第二雄ねじ螺旋溝構造11bの二種類の雄ねじ螺旋溝構造を、雄ねじ部11に形成している。従って、雄ねじ部11は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となる。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝構造が形成された雄ねじ部13の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0020】
尚、雄ねじ部11は、必ずしも右ねじと左ねじとを形成することに限定するものではなく、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一雄ねじ螺旋溝構造と、第一雄ねじ螺旋溝構造とは相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二雄ねじ螺旋溝構造であればよい。例えば、リード方向が同じで、リード角が異なる第一雄ねじ螺旋溝構造及び第二雄ねじ螺旋溝構造を採用することもできる。
【0021】
図3は本実施形態の雌ねじ体20を示し、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は平面図である。雌ねじ体20の筒状部材22は、略四角ナット状を成し、中央部に貫通孔24を有する。また筒状部材22は、貫通孔24の軸直交方向に沿う面に回転防止部材30を装着させる案内部26を有する。なお、筒状部材22の概形は、四角形状に限定するものではなく、円筒状、周面にローレットを有する形状、六角形状、星型形状など任意に適宜設定可能である。
【0022】
貫通孔24には、右ねじである第一螺旋条を設けて成る第一雌ねじ部28が形成される。即ち、雌ねじ体20は、第一雌ねじ部28によって雄ねじ体10の雄ねじ部11における第一雄ねじ螺旋溝構造11aに螺合する。
【0023】
案内部26は、雌ねじ体20の外側に回転防止部材30を装着し得るように、図3に示す筒状部材22に形成された貫通孔24を挟んだ軸直交方向の両端面に一対の凹溝26aを有する。凹溝26aは、後述する回転防止部材30の係止部40をスライド移動可能に案内するための断面凹状の溝である。また凹溝26aは、所定方向に延在しており、当該所定方向の一端部が係止部40を進入させるための開放口26bとなっている。また凹溝26aは、溝の深さ方向において、貫通孔24に対して外向きに開口するように溝形状が設定される。
【0024】
図4は、本実施形態に係る回転防止部材30を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。回転防止部材30は、図4(A)に示すように、平面視において、短辺部分30aと長辺部分30bとを有する略長方形状の板状部材32からなり、その略中央には貫通孔34が形成されている。貫通孔34の端縁部には、雄ねじ体10の雄ねじ部11の第二雄ねじ螺旋溝構造11bに螺合し得る第二雌ねじ部36が形成される。
【0025】
板状部材32は、第二雌ねじ部36が形成された側とは逆側に向けて、断面略U字状に係止部40を形成している(図4(B)参照)。回転防止部材30は、係止部40を凹溝26aに嵌入させることで、案内部26を抱持するように配設できる。従って回転防止部材30は、係止部40が案内部26に嵌ることで、その嵌入方向に対する直交方向の変位が規制される。
【0026】
板状部材32の貫通孔34の全周を縁取る貫通孔周縁には、略円弧状の先端部42aを有する六枚の弾性を有する板片42が配設され、これらの板片42の先端部42aは、それぞれ貫通孔34の軸心に向かって傾斜して突き出ており、全体として仮想的な左螺旋状に列設されている。
尚、本実施形態においては、板片42の配設枚数は、六枚に設定したが、一枚以上であればよい。
【0027】
板片42は、貫通孔34の軸心に対する半径方向外側部分が貫通孔周縁に固設され、半径方向内側部分が自由端とされ、この自由端側が定常位置から雄ねじ体10を締め付ける方向に向かって一方向にのみ撓むように構成される。
【0028】
六枚の板片42は、雄ねじ体10の左ねじである第二雄ねじ螺旋溝構造11bのピッチ、外径、谷の径に整合するように、板片42の幅、配設傾斜角、配設位置が設定され、板片42の先端形状が左回転の螺旋状を成す弧状に形成されることが好ましい。即ち、回転防止部材30の第二雌ねじ部36は、雄ねじ体10の第二雄ねじ螺旋溝構造11bに螺合し得る断続的な螺旋状の左ねじの第二螺旋条を形成する。
尚、本実施形態においては、六枚の板片42により、断続的な螺旋状の左ねじの螺旋条を形成したが、これに限定するものではなく、六枚未満の板片42或いは六枚を超える板片42により、断続的な螺旋条を形成することもでき、例えば、一枚の板片42により、連続的な螺旋状の螺旋条を形成してもよい。
【0029】
板片42の幅は、雄ねじ体10の第二雄ねじ螺旋溝構造11bの外径と谷の径との差程に設定される。そして、配設傾斜角は、第二雄ねじ螺旋溝構造11bにおける外径に対するピッチの比に対応して設定することが出来る。
ここで、雄ねじ体10の第一雄ねじ螺旋溝構造11aの外径と第二雄ねじ螺旋溝構造11bの外径、及び、第一雄ねじ螺旋溝構造11aの谷の径と第二雄ねじ螺旋溝構造11bの谷の径とは、それぞれ同等に設定されているが、異なるものに設定することも可能である。
【0030】
第一雌ねじ部28の軸に垂直に配された板状部材32の貫通孔34からの板片42の動径方向の傾きは、第一雌ねじ部28の軸に対する垂直面からの傾斜角をθ、雄ねじ体10の第二雄ねじ螺旋溝構造11bにおける外径に対するピッチPLの比をTとするとき、T≒tanθとなるように設定される。
つまり、第一雌ねじ部28の内周面の第一螺旋条のリード角をαとするとき、θ=(180-2α)°±15°程度に設定する。また、各板片42の配設位置は、雄ねじ体10の第二雄ねじ螺旋溝構造11bのピッチPLに対応して、それぞれの板片42が第二雄ねじ螺旋溝構造11bに噛み合う位置関係と成るように設定される。
【0031】
尚、板片42を複数枚配設する場合には、互いに段違いと成るように配設することが出来る。このようにすれば、断続的な螺旋条を成す板片42を増やすことができ、結果第二雌ねじ部36による左ねじの第二螺旋条の螺旋長さを延長することが出来る。また板片42を第一雌ねじ部28の軸方向に沿って複数設けてもよい。板片42を増やすことで、第二雌ねじ部36による雄ねじ体10との螺合長さが増加するので、後述する雄ねじ体10の緩み方向の回転を強固に規制することができる。
【0032】
回転防止部材30を雌ねじ体20に装着する手順は、先ず図5(A)に示すように回転防止部材30の係止部40を案内部26の開放口26bに対向させる。係止部40を案内部26内に嵌め込むことで、回転防止部材30を雌ねじ体20に装着する。即ち、図5(B)に示すように開放口26bを介して係止部40を案内部26に進入させることで、回転防止部材30が凹溝26aに沿ってスライドし得る。回転防止部材30が図5(C)に示すように凹溝26aの最奥までスライド移動したとき、雌ねじ体20への回転防止部材30の装着が完了する。
なお、雌ねじ体20からの回転防止部材30の取り外しは、装着時と逆向きに回転防止部材30をスライド移動させることで行うことができる。
【0033】
回転防止部材30は、雌ねじ体20に装着されたとき、貫通孔34の軸心の位置が雌ねじ体20の貫通孔24の軸心の略延長線上に位置する。従って、回転防止部材30の第二雌ねじ部36は、雌ねじ体20に螺合する雄ねじ体10に螺合し得る。なお、回転防止部材30は、係止部40が案内部26に係合し軸心回りの回転が規制される為、第一雌ねじ部28に対して螺進する雄ねじ体10に供回りしてしまうことを防止することができる。
【0034】
本発明の締結構造1においては、雄ねじ体10を貫通孔24に挿通させて締め込み方向(右回転方向)のトルクを印加すると、第一雄ねじ螺旋溝構造11aが第一雌ねじ部28に螺合する。また、雄ねじ体10の締め込みに伴い、回転防止部材30の板片42が雄ねじ体10のねじ山に係合しつつ、雄ねじ体10の螺進を許容するように弾性的に変形する。即ち、各板片42は、仮想的な左螺旋状に列設されているため、雄ねじ体10を第一雌ねじ部28に対する締付方向に回転させると、それぞれの半径方向中心側の自由端が、雄ねじ体10の進行方向に向かって撓んで拡開したり、弾性的な復元力によって縮閉したりする。
【0035】
また各板片42は、雄ねじ体10の雄ねじ部30bにおける所要の位置まで螺合されると、その弾性的な復元力によって元の位置に戻り、雄ねじ体10の第二雄ねじ螺旋溝構造11bに噛み合って、各板片42と第二雄ねじ螺旋溝構造11bとが互いに整合する。尚、雄ねじ体10の第二雄ねじ螺旋溝構造11bに整合した各板片42は、雄ねじ体10の締め込み方向とは逆方向(雄ねじ体10を緩ませるときの進行方向)には撓まない。或いは極めて撓み難く設けられる。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態の締結構造1によれば、雄ねじ体10が緩み方向に回転するのを回転防止部材30の各板片42によって規制することが出来る。例えば、締結構造1全体が振動した場合、この振動により、締結構造1の雌ねじ体20に左回転向きのトルクも加わる虞がある。雌ねじ体20に左回転向きのトルクが作用した場合、雌ねじ体20には螺合時の進行方向と逆向きの力が作用することに成るが、板片42が雄ねじ体10の第二雄ねじ螺旋溝構造11bに整合され、且つ板片42が逆向きには撓まない為に、左回転向きのトルクが作用した各板片42を介して回転防止部材30には左ねじの締付け方向に進行しようとする力が働くことになる。
【0037】
つまり、雌ねじ体20の貫通孔24の内周面に形成された右回転の第一雌ねじ部28に働く後退しようとする力と回転防止部材30の各板片42に働く前進しようとする力とが拮抗して、結果的に、雌ねじ体20及び回転防止部材30は雄ねじ体10対して一定の位置に止まることに成る。
即ち、本実施態様の雄ねじ体10と雌ねじ体20との螺合の組み合わせにおいては、回転防止部材30によって雌ねじ体20は、締付方向に沿って進行するか止まるかの何れかであり、後退することはない。従って、雄ねじ体10の緩み方向の回転が規制される。このように、回転防止部材によって雌ねじ体の緩み止め効果を発揮して長期的に締結状態を維持することが出来る。
また、雌ねじ体からは回転防止部材を取り外し可能であるため、回転防止部材の交換を行うことも可能である。
【0038】
尚、案内部26の開放口26bは、好ましくは上向きに設けた方がよいが、これに限定されない。例えば、回転防止部材30を鉛直直交方向にスライド移動可能に配設し得るように、案内部26の延在方向を鉛直直交方向とし、それに対応するように開放口26bの向き等を設定してもよい。
【0039】
なお、上述した実施形態においては、回転防止部材30を案内部26の外側に装着(外装)するように設定したが、これに限定するものでは無い。例えば、回転防止部材が案内部に抱持されるように、回転防止部材を案内部によって囲われた内側に装着(内装)させる構造とすることも出来る。
【0040】
図6は、案内部50の他の例を示す図である。案内部50は、貫通孔24の軸方向の一端面において、雌ねじ体60(図7参照)を抱持し得る形状を有するように形成される。例えば、案内部50は、規制壁52と空間54とを有する。規制壁52は、回転防止部材60の進入を案内するように、鉛直方向上部が解放されており、雌ねじ体20の端面から軸方向に立ち上がる立ち上がり面52aと、該立ち上がり面52aの先端部で軸方向内側に延在して回転防止部材60の軸方向変位を規制する係止面52bとを有する。
従って、案内部50は、雌ねじ体20の外周部の三辺を覆い且つ雌ねじ体20の軸方向の変位を規制し得る。
【0041】
空間54は、規制壁52の係止面52bと雌ねじ体20との間に存し、少なくとも回転防止部材60を収容し得る大きさを有する。このような規制壁52及び空間54によって回転防止部材60の周面の一部を覆う凹溝、回転防止部材60を軸直交方向に沿う所定向きに変位させる開放口を形成している。
【0042】
図7は、回転防止部材60の他の例を示す図であり、回転防止部材60は、略長方形状の板状部材62、板状部材62の正面略中央部を穿孔させて成る貫通孔64、貫通孔64の端縁部に第二雌ねじ部66を有する。第二雌ねじ部66は、上記第二雌ねじ部36と同様に複数の板片70を有して成る。
板状部材62の厚みは、少なくとも空間54による規制壁52と雌ねじ体20との間隙の距離以下に設定される。
【0043】
このような。案内部50を設けた場合においても、上記実施形態と同様に回転防止部材60は、案内部50によって空間54内でスライド移動可能に案内され雌ねじ体20に装着される。即ち、回転防止部材60を図8(A)に示すように空間54内に進入させ、規制壁52に沿ってスライド移動させる。また、回転防止部材60を空間54の最奥までスライド移動させたとき、図8(B)に示すように回転防止部材60は、規制壁52と雌ねじ体20との間隙において保持される。また雌ねじ体20に装着された回転防止部材60は、貫通孔64の軸心が貫通孔24の軸心と略一致する所定位置で保持される。
【0044】
上記のような案内部50と回転防止部材60とを設け、案内部50によって回転防止部材60を抱持させる構造としても、雄ねじ体10が緩み方向に回転するのを回転防止部材60の各板片70によって規制することが出来る。
【0045】
また案内部50が回転防止部材60を抱持することによって、回転防止部材60が外部の部材と直接当接乃至接触することを防止することが出来る。即ち、案内部50の立ち上がり面52a、係止面52bによって回転防止部材60の周囲を保護することで、回転防止部材60が外部の部材との接触等によって破損してしまうことを防止することができる。
また、回転防止部材60を空間54内に嵌った状態とすれば、仮に回転防止部材60に雄ねじ体10を介して軸方向の外力等が作用しても、板状部材62自体が変形し得るのを規制でき、案内部50から外れて分離してしまうことを防止することができる。
【0046】
また、回転防止部材には案内部から引き出しを容易にするために、引出片を設けるようにしてもよい。例えば、図9に示すように回転防止部材60は、案内部50に装着されたときに、該案内部の外側に配され、且つ板状部材62の厚み方向に突出させた取出し部75を設けることも出来る。
なお、板状部材62の厚み方向に突出する取出し部75の長さは、特に限定するものではなく、案内部50よりも軸方向の前方に突出していてもよく、案内部50の前方に突出しない長さに設けるようにしてもよい。また取出し部75は、厚み方向と平行に延在させてもよく、また厚み方向に対して傾斜させた方向に延在させてもよい。
【0047】
このような取出し部75を介することで、回転防止部材60を雌ねじ体20から取り出すための向きの外力を付与し易くなって雌ねじ体20からの回転防止部材60の抜去が容易となる。例えば図9(A)に示すように回転防止部材60を雌ねじ体20に対して鉛直方向下向きに差し込み装着させた場合、取出し部75を回転防止部材60の上端部に配し、案内部50の上方に位置させる。このようにすれば、図9(B)に示すように取出し部75を介して回転防止部材60を容易に引上げ、雌ねじ体20から抜去することが出来る。
【符号の説明】
【0048】
1・・・締結構造、10・・・雄ねじ体、11・・・雄ねじ部、11a・・・第一雄ねじ螺旋溝構造、11b・・・第二雄ねじ螺旋溝構造、20・・・雌ねじ体、22・・・筒状部材、24・・・貫通孔、26,50・・・案内部、26a・・・凹溝、26b・・・開放口、28・・・第一雌ねじ部、30,60・・・回転防止部材、32・・・板状部材、34,64・・・貫通孔、36・・・第二雌ねじ部、40・・・係止部、42,70・・・板片、52・・・規制壁、54・・・空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9