(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086505
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】微細藻類増殖システム及びこれを用いた微細藻類増殖方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240620BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201667
(22)【出願日】2022-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】522491889
【氏名又は名称】株式会社グリシード
(74)【代理人】
【識別番号】100140006
【弁理士】
【氏名又は名称】渕上 宏二
(72)【発明者】
【氏名】益田 俊信
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DA04
4B029DB00
4B029DF07
4B029DG06
4B029DG08
4B029GB09
4B065AA83X
4B065AC09
4B065BC07
4B065BC48
4B065CA03
(57)【要約】
【課題】他の構造物による支持がなくても自立することが可能であり、地盤改良を施さなくても設置が可能となる微細藻類増殖システムを提供する。
【解決手段】微細藻類増殖システムは、微細藻類の培養環境を形成する袋状体と、袋状体に微細藻類を含む培養液を注入するための注入口と、袋状体から前記培養液を排出するための排出口と、袋状体に外気を供給する手段と、袋状体の内気を放出する手段と、袋状体に炭酸ガスを供給する手段と、培養液を循環させるための循環経路と、培養液からバイオマスを収穫するための収穫経路を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類の培養環境を形成する袋状体と、
前記袋状体に微細藻類を含む培養液を注入するための注入口と、
前記袋状体から前記培養液を排出するための排出口と、
前記袋状体の内圧を調節する手段と、
前記袋状体に炭酸ガスを供給する手段と、
前記培養液を循環させるための循環経路と、
前記培養液からバイオマスを収穫するための収穫経路、
を備えることを特徴とする、
微細藻類増殖システム。
【請求項2】
前記袋状体は、外気を供給する手段と内気を放出する手段によって内圧を調節することを特徴とする、
請求項1に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項3】
前記循環経路は、前記排出口から排出された前記培養液を前記注入口から注入するための経路であることを特徴とする、
請求項1または2に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項4】
前記収穫経路は、前記循環経路から分岐していることを特徴とする、
請求項3に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項5】
前記袋状体は、可撓性を有するシート状体で構成され、前記袋状体の内圧を調節することにより膨れた状態を保持することを特徴とする、
請求項1に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項6】
前記袋状体は、一端もしくは両端が開口した筒状のシート状体の開口部を水密に接合することにより形成されることを特徴とする、
請求項5に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項7】
前記袋状体は、1枚のシート状体を二つ折りにして周端部を水密に接合することにより形成されることを特徴とする、
請求項5に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項8】
前記袋状体は、2枚のシート状体を重ね合わせて周縁部を水密に接合することにより形成され、少なくとも一方のシート状体は透光性を有する樹脂により構成されることを特徴とする、
請求項5に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項9】
前記袋状体は、着脱式の固定具を備え、
前記固定具に前記排出口および前記注入口が形成されていることを特徴とする、
請求項5乃至8の何れかに記載の微細藻類増殖システム。
【請求項10】
前記袋状体の内部に前記注入口と接続された循環ホースが設置されていることを特徴とする、
請求項9に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項11】
複数の前記袋状体を備え、
前記袋状体の前記固定具同士を循環パイプを用いて接続することにより前記複数の袋状体を経由して培養液が循環する環境を形成することを特徴とする、
請求項9に記載の微細藻類増殖システム。
【請求項12】
請求項2乃至11の何かに記載の微細藻類増殖システムを用いた微細藻類培養方法であって、
前記袋状体に外気を供給する工程と、
前記注入口から微細藻類を含む培養液を注入する工程と、
前記袋状体に炭酸ガスを供給する工程と、
前記袋状体から内気を放出する工程と、
前記培養液を循環させる工程と、
前記袋状体から前記培養液を取り出す工程と、
前記培養液を濾してバイオマスを収穫する工程と、
前記培養液の残滓を前記注入口から注入する工程、
を含むことを特徴とする、
微細藻類培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトバイオリアクターを用いた微細藻類の増殖技術に関する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は光合成によって光エネルギーと二酸化炭素からバイオマスを生成する。微細藻類によるバイオマスの生成活動の場を人工的に形成したものがフォトバイオリアクターである。フォトバイオリアクターによって最適な環境を創出することにより、自然界では達成できない速い培養速度と高い培養濃度の実現が可能となる。
【0003】
従来、フォトバイオリアクターは、特に閉鎖系の場合、ガラスやプラスチックを素材とする管状のものが用いられることが多い。管状のフォトバイオリアクターは自立できないため、受枠や支持枠などの他の構造物による支えを必要としていた。また構造物の重量に加えて管自体の重量や管に充填される培養液の重量も嵩むため、設置箇所となる地盤の改良も必要となるなど初期投資額が高騰する原因の一つとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製造コストおよび管理コストを安価に抑えることを目的として創作されたものであり、他の構造物による支持がなくても自立することが可能であり、地盤改良を施さなくても設置が可能となる微細藻類増殖システム及びこれを用いた微細藻類増殖方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の微細藻類増殖システムは、微細藻類の培養環境を形成する袋状体と、前記袋状体に微細藻類を含む培養液を注入するための注入口と、前記袋状体から前記培養液を排出するための排出口と、前記袋状体の内圧を調節する手段と、前記袋状体に炭酸ガスを供給する手段と、前記培養液を循環させるための循環経路と、前記培養液からバイオマスを収穫するための収穫経路、を備えることを特徴とする。
【0007】
袋状体の内圧を高めることにより、袋状体は所定の形状を保持することができるため、外部の構造体の支持がなくても自立することが可能となる。また点ではなく面で接地するため、通常の地耐力のある地盤であれば改良を施すことなく設置することが可能となる。また炭酸ガスは圧力が高いほど溶解度も高くなるため、内圧を高めることにより培養液中の炭酸ガスの溶存量が増加するため、微細藻類の光合成が促進される。
【0008】
前記袋状体は、外気を供給する手段と内気を放出する手段によって内圧を調節することが好ましい。
【0009】
外気を供給することにより簡単かつ安価に袋状体の内圧を高めることができる。また袋状体の内気は光合成の進行に伴って酸素濃度が上昇するため、これを放出することで内圧を下げることができる。内気を放出するための手段としてはリリーフバルブや手動バルブ等を袋状体に装着しておくことにより、自動または任意のタイミングで袋状体の内圧を定圧側に調節することができる。
【0010】
前記循環経路は、前記排出口から排出された前記培養液を前記注入口から注入するための経路であることが好ましい。
【0011】
排出口から注入口に向かう外部の循環経路を設けることにより、袋状体の内部では注入口から排出口に向かう培養液の流れが確立し、外部の循環経路と併せて周回する循環路を形成することが可能となる。
【0012】
前記袋状体に炭酸ガスを供給する手段は、前記注入口から注入される前記培養液に含ませた炭酸ガスを前記袋状体に供給することが好ましい。
【0013】
前記注入口から注入される前記培養液に炭酸ガスを含ませることにより、炭酸ガスの供給のための経路を独立して設ける必要がなくなるため、製造コストや管理コストを安価に抑えることが可能となる。また、循環経路を移動する微細藻類に直接炭酸ガスを接触させることが可能となるため、微細藻類の光合成が促進される。なお、注入口とは独立した経路によって袋状体に炭酸ガスを供給してもよい。
【0014】
前記収穫経路は、前記循環経路から分岐していることが好ましい。
【0015】
収穫経路が循環経路から分岐することにより、収穫経路と袋状体の取り付け部を独立して設ける必要がなくなるため、製造コストや管理コストを安価に抑えることが可能となる。
【0016】
前記袋状体は、可撓性を有するシート状体で構成され、前記袋状体の内圧を調節することにより膨れた状態を保持することが好ましい。
【0017】
袋状体を可撓性を有するシート状体で構成することにより、小さく折り畳んだ状態にしておくことが可能となるため、保管時や運搬時にかかるコストを安価に抑えることができる。
【0018】
前記袋状体は、一端もしくは両端が開口した筒状のシート状体の開口部を水密に接合することにより形成されることが好ましい。
【0019】
一端もしくは両端が開口した筒状のシート状体を用いて袋状体を形成することにより、接合部の面積を最小限に抑えることが可能となり、気密性や水密性が損なわれない。シート状体の接合には例えば直管パイプとパッカーの組み合わせを用いることができる。シート状体の端部同士を重ね合った部分を直管パイプに巻き付け、その上からパッカーで固定する。
【0020】
前記袋状体は、1枚のシート状体を二つ折りにして周端部を水密に接合することにより形成してもよい。
【0021】
1枚のシート状体から袋状体を形成することにより、製造コストを安価に抑えることができる。
【0022】
前記袋状体は、2枚のシート状体を重ね合わせて周縁部を水密に接合することにより形成してもよい。
【0023】
2枚のシート状体を重ね合わせるように構成することにより、各シートに要求される機能に応じた素材を選択することが可能となる。袋状体は一方が地面等に接触した状態で設置されることが多いため、設置側となる面には耐久性や耐衝撃性、耐摩耗性等を有する樹脂シートを使用することが好ましい。反対側の面には透光性の高い樹脂シートを使用することにより、太陽光の透過率を高めて微細藻類の光合成を促進することが好ましい。
【0024】
前記袋状体は、着脱式の固定具を備え、前記固定具に前記排出口および前記注入口が形成されていることが好ましい。
【0025】
袋状体と排出口、注入口との接続部に固定具を備えることにより、接続部に集中する応力からシート状体を保護することができるため、シート状体の破損等による不具合の発生を未然に防止することができる。
【0026】
前記袋状体の内部に前記注入口と接続された循環ホースが設置されていることが好ましい。
【0027】
注入口から注入された培養液が循環ホースを経由して袋状体の内部に広く行き渡るため、循環効率を高めることができる。
【0028】
複数の前記袋状体を備え、前記袋状体の前記固定具同士を循環パイプを用いて接続することにより前記複数の袋状体を経由して培養液が循環する環境を形成することが好ましい。
【0029】
複数の袋状体を経由して培養液が循環することが可能となるため、循環効率をさらに高めることができる。
【0030】
本発明の微細藻類増殖方法は、前述した微細藻類増殖システムを用いた微細藻類培養方法であって、前記袋状体に外気を供給する工程と、前記注入口から微細藻類を含む培養液を注入する工程と、前記袋状体に炭酸ガスを供給する工程と、前記袋状体から内気を放出する工程と、前記培養液を循環させる工程と、前記袋状体から前記培養液を取り出す工程と、前記培養液を濾してバイオマスを収穫する工程と、前記培養液の残滓を前記注入口から注入する工程、を含むことを特徴とする。
【0031】
袋状体に供給する外気、炭酸ガス、袋状体から放出する内気のバランスを調整することにより、袋状体が形状を保持して自立した状態を維持するとともに微細藻類の光合成を促進させることが可能となる。培養液は循環している状態を基本とするが、バイオマスを収穫する際には循環を一時停止し、袋状体から取り出した一部の培養液を濾してバイオマスを収穫する。残滓(バイオマスを収穫、分離回収した後の培養液)は補充用の培養液とともに袋状体に戻して再使用する。この内圧の調節からバイオマスの収穫のサイクルを繰り返し行うことにより、安価で安定したバイオマスの収穫を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の微細藻類増殖システムによれば、袋状体は所定の形状を保持することができるため、外部の構造体の支持がなくても自立することが可能となる。また点ではなく面で接地するため、通常の地耐力のある地盤であれば改良を施すことなく設置することが可能となる。さらに本発明の微細藻類増殖方法によれば、安価で安定したバイオマスの収穫を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。最初に
図1乃至
図2を参照してフォトバイオリアクターの構成を説明する。
〔フォトバイオリアクターの構成〕
図1において、フォトバイオリアクターは、微細藻類の培養環境を形成する培養槽と培養槽の槽内環境を制御する周辺機材によって構成されている。
【0035】
培養槽10は中空の袋状体によって構成されている。袋状体上部が透明な樹脂シート12によって構成され、下部が樹脂シート14によって構成されている。樹脂シート12と樹脂シート14は接合部16において溶着されている。
【0036】
培養槽10には、槽の内圧を調整するための排気弁18と送気口20が設けられている。また培養液を槽に注入するための注入口22と、培養液を槽から排出するための排出口24が設けられている。排気弁18は、槽内部のガスを自動または手動にて放出することにより槽の内圧を低圧側に調節する。送気口20は、コンプレッサーのエアを槽内部に送り込むことにより槽の内圧を高圧側に調節する。培養槽10は内圧を調節することにより風船状に膨れた状態を維持することができる。
【0037】
図2に示すように周囲を盛土するか中央を掘削した箇所に培養槽10を設置する場合、内圧により形状を保持することが可能となるため、他の構造体による支持を受けることなく自立することができる。また地面と接触したり摩擦が生じたりする箇所には耐衝撃性、耐摩耗性なに優れた素材の樹脂シート14が使用されているため、損傷を受けにくく漏水等の不具合が生じにくい。天井面は透明な樹脂シート12が使用されているため、太陽光が内部の微細藻類まで届きやすく光合成が促進される。
【0038】
注入口22と排出口24は循環経路26によって接続されている。循環経路26は培養槽10の内部の培養液に動きを与え、炭酸ガスの吸収を促進させる循環システムを形成する。循環経路26には循環ポンプ28が接続されている。循環ポンプ28の稼働により槽内の培養液が排出口24から循環経路26に流入し、循環経路26を経由して注入口22から再び槽内に送られる。
【0039】
排出口24には循環経路26の他に収穫経路30が接続されている。収穫経路30の先にはフィルター32が設けられている。収穫経路30にはバルブ34が接続されており、バルブ34を開くと、排出口24より培養液(図中の高さhに相当する量)が収穫経路30を経由してフィルター32に供給される。フィルター32は培養液を濾してバイオマスだけを残し、フィルター32を通過した残滓や残液は回収タンク36に回収される。回収タンク36に回収された残液は、回収ポンプ38の稼働により回収経路40を経由して培養液タンク42に送られ、培養液タンク42に一時的に貯蔵される。なお、バイオマスの収穫方法としてフィルター32による濾過を例に挙げて説明しているが、その他の収穫方法、例えば遠心分離機を用いた固液分離によりバイオマスを収穫することもできる。
【0040】
培養液タンク42には供給経路44が接続されている。供給経路44は循環ポンプ28の手前で循環経路26に合流する。供給経路44にはバルブ46が接続されており、バルブ46を開くと、培養液タンク42に貯蔵された培養液が供給経路44と循環経路26を経由して注入口22に送られる。さらに培養液タンク42に栄養塩を投入することにより、培養槽10内の微細藻類の増殖に必要な栄養分を補充することができる。
【0041】
循環経路26/供給経路44には炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給経路48が接続されている。炭酸ガス供給経路48のバルブ50を開くと循環経路26/供給経路44に炭酸ガスが供給される。循環経路26/供給経路44に供給された炭酸ガスは培養液に溶解しながら注入口22を経由して培養槽10に注入される。なお培養液の循環速度によっては循環経路26/供給経路44に供給された炭酸ガスが逆流するおそれがあるため、そのような場合には炭酸ガスの注入口を注入口22とは別に独立して設けてもよい。
【0042】
〔フォトバイオリアクターを用いた微細藻類の培養方法〕
次にフォトバイオリアクターを用いた微細藻類の培養方法について説明する。
【0043】
〔準備工程〕
最初に、フォトバイオリアクターを設置する(S1工程)。培養槽を樹脂シートが下側となる状態で拡げ、所定の設置箇所に置く。次に、培養槽に排気弁や循環経路、フィルター、ポンプ、エアコンプレッサー等の周辺機器を装着する(S2工程)。次に、コンプレッサーを作動させて培養槽にエアを導入し、培養槽が所定の形状に膨らんだ状態を保持できるように内圧を調節する(S3工程)。最後に試運転を行い、各所が正常に作動することを確認する。
【0044】
〔増殖工程〕
次に、培養液タンクに培養液と微細藻類を投入し、循環ポンプを作動させ、供給経路を経由させて培養液と微細藻類を注入口に送り、培養槽に注入する(S4工程)。培養槽に所定量の培養液が充填されると、バルブを切り替えて循環経路を開設し、槽内の培養液を排出口→循環経路→注入口→排出口の順に循環させる(S5工程)。この循環動作と並行して炭酸ガスを適宜供給する(S6工程)。また、槽内の圧力を大気圧より少し高めになるように調節し、微細藻類の光合成を促進する(S7工程)。以上の循環動作、炭酸ガス供給操作および内圧調節操作をバランスよく行いながらバイオマスの増殖を図る。
【0045】
〔収穫工程〕
培養槽からバイオマスの収穫を行う際には循環ポンプを停止させ、槽内の液面の動きが落ち着いたらバルブを切り替えて収穫経路を開設する(S8工程)。槽内の培養液は排出口より下位に貯留されている分は槽内に残留し、排出口より上位に貯留されている分だけが槽外に排出される。排出された培養液は収穫経路を経由してフィルターに供給される(S9工程)。培養液はフィルターで濾され、バイオマスだけを残して残滓や残液は回収タンクに回収される。次に、フィルター上のバイオマスを収穫する(S10工程)。次に、回収ポンプを作動させ、回収タンクの残滓や残液を回収経路を経由して培養液タンクに送る(S11工程)。次に、培養液タンクに培養液と微細藻類を補充し、循環ポンプを作動させ、供給経路を経由させて注入口に送り、培養槽に注入する(S12工程)。
【0046】
以上の増殖工程および収穫工程を1サイクルとして繰り返し行うことにより、バイオマスの収穫を継続して行うことができる。
【0047】
〔フォトバイオリアクターの他の構成〕
フォトバイオリアクターの他の構成について説明する。前述のフォトバイオリアクターは、
図1に示すように一方の端部に送気口20と注入口22が設けられ、他方の端部に排出口24が設けられている。このように注入口22と排出口24をそれぞれの端部に設けることにより培養槽10には注入口22から排出口24に向かう循環が自ずと形成される。しかしながら、注入口22、排出口24、送気口20を形成する管(樹脂製または金属製)と培養槽との接合部には応力が集中するため、樹脂フィルムを用いた培養槽には破損等の不具合が生じやすい。そこで耐久性を向上させる観点から、
図3に示すように送気口20、注入口22および排出口24の設置箇所を一方の端部に集約し、さらに培養槽10の端部に固定具60を設置する。固定具は培養槽10の端部に水密に固定される。送気口20、注入口22および排出口24は固定具60に形成され、固定具60と各経路等の周辺機材とが接続される。
【0048】
注入口22と排出口24が同じ場所に設けられていると槽内に循環が生じにくいという問題がある。そのため槽内には複数の吐出口を有する循環ホース62が敷設されている。循環ホース62は注入口22と接続されており、注入口22から注入された培養液を槽内の各所に行き渡らせることができる。
【0049】
循環効率をさらに高めるため、フォトバイオリアクターは次のように構成することもできる。
図4に示すように複数個(ここでは2個)の培養槽10a、10bを上下に並列させ、循環パイプ64、66を用いて培養槽10a、10bを接続する。循環パイプ64は固定具68a、68bを用いて培養槽10の右の端部に装着し、循環パイプ66は固定具70a、70bを用いて培養槽10の左の端部に装着する。循環パイプ64は循環ポンプ72の作動により培養槽10bから吸引した培養液を培養槽10aに圧入する。循環パイプ66は培養槽10aから流出した培養液を培養槽10bに流入させる。これにより培養槽10a、10bの内部には連続した循環経路を形成すされる。なお、培養槽10a、10bの形状や大きさ、個数、位置関係等に応じて循環ポンプ72の設置数、設置箇所等を適宜設定する。
【0050】
固定具68aには炭酸ガス供給口74が設けられている。また固定具70bには同じく炭酸ガス供給口76が形成されている。炭酸ガス供給口74、76を循環パイプ64、66の流入側(圧入側)に設けることにより炭酸ガスを培養液の循環経路に沿って培養槽10a、10bの全体に行き渡らせることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 培養槽
12 樹脂シート
14 樹脂シート
18 排気弁
20 送気口
22 注入口
24 排出口
26 循環経路
28 循環ポンプ
30 収穫経路
32 フィルター
36 回収タンク
38 回収ポンプ
40 回収経路
42 培養液タンク
44 供給経路
48 炭酸ガス供給経路
60 固定具
62 循環ホース
64 循環パイプ
66 循環パイプ
68 固定具
70 固定具
72 循環ポンプ
74 炭酸ガス供給口
76 炭酸ガス供給口