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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008651
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】照明装置および照明制御システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/165 20200101AFI20240112BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240112BHJP
   F21S 9/02 20060101ALI20240112BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240112BHJP
   H05B 47/105 20200101ALI20240112BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240112BHJP
   F21Y 113/13 20160101ALN20240112BHJP
【FI】
H05B47/165
H02J7/34 G
F21S9/02 213
F21V23/00 140
F21V23/00 117
H05B47/105
F21Y115:10
F21Y113:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110689
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今▲吉▼ ちづる
(72)【発明者】
【氏名】江口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健吾
【テーマコード(参考)】
3K014
3K273
5G503
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K273PA08
3K273QA33
3K273QA38
3K273RA13
3K273SA08
3K273SA22
3K273SA33
3K273SA35
3K273SA46
3K273SA48
3K273TA08
3K273TA13
3K273TA15
3K273TA28
3K273TA41
3K273UA27
3K273UA29
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】電池の劣化を抑制することが可能な照明装置および照明制御システムを得ることを目的とする。
【解決手段】本開示に係る照明装置は、光源と、前記光源を点灯させる電池と、前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、点検信号の受信または停電の検出に応じて前記電池を放電させ、前記放電後に前記電池の充電を再開する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記充電の再開の直後は前記充電電流を第1電流に制御し、次に前記充電電流を前記第1電流よりも大きい第2電流に制御する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源を点灯させる電池と、
前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、
点検信号の受信または停電の検出に応じて前記電池を放電させ、前記放電後に前記電池の充電を再開する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記充電の再開の直後は前記充電電流を第1電流に制御し、次に前記充電電流を前記第1電流よりも大きい第2電流に制御することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1電流は、前記充電回路が前記電池をトリクル充電するときの前記充電電流よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1電流は、1/50It~1/60Itであることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第2電流は、1/20It~1/35Itであることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記点検信号を受信すると前記電池を予め定められた判定電圧まで放電させることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記停電の検出に応じて前記電池を放電させて前記光源を点灯させ、復電時まで前記光源が点灯を継続していた場合、前記充電の再開の直後に前記充電電流を前記第1電流に制御し、復電前に前記光源が消灯した場合、前記充電の再開の直後から前記充電電流を前記第2電流に制御することを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記光源の点灯時間に応じて、前記第1電流を供給する期間または前記第1電流の大きさを調整することを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記電池の温度に応じて前記第1電流を供給する期間または前記第1電流の大きさを調整することを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の照明装置と、
前記照明装置と通信する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記電池の温度のデータと前記電池の電圧のデータとを蓄積し、前記蓄積されたデータに基づいて前記第1電流を供給する期間または前記第1電流の大きさを算出することを特徴とする照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置および照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ニッケル水素電池を備えた照明装置が開示されている。この照明装置では、ニッケル水素電池をトリクル充電により充電するトリクル充電制御と、トリクル充電より大充電電流値により充電する大電流充電制御を適宜切り替える。これにより、ニッケル水素電池の充電受入性の低下による放電容量の減少を抑制するとともに、ニッケル水素電池の充電効率の改善が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-171161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
停電時に明るさを提供し避難経路を示すための防災用照明装置として、非常灯および誘導灯がある。これらの照明装置は電池を搭載しており、常用時は停電時に備えて電池を充電している。近年、このような電池にはニッケル水素電池が用いられることが多い。防災用照明装置は、例えば非常灯では6か月~1年に1回、誘導灯では1年に1回程度の法令で定められた頻度で機能点検が行われる。機能点検で電池が放電されることで、電池を活性化することもできる。
【0005】
放電により光源が発熱すると、電池の周囲温度が上昇することがある。また、電池は内部抵抗と放電電流を積算した電力を消費するため、電池自体の温度も高くなるおそれがある。停電により電池の放電が実施される場合、停電が長引いた時などは、電池の電力を使いきって光源が消灯してから復電することになる。この場合、復電後に電池の充電を開始する時には、電池の温度が下がっていることが想定される。しかし、防災用照明装置の自動点検機能などによれば、規定時間の非常点灯で電池を放電した後に、自動で充電状態に戻ることがある。また、停電が例えば数分で復旧することもある。このような場合には、電池の温度が高い状態で、充電が開始されるおそれがある。
【0006】
電池が高温で充電されると、電池の充電効率の低下と短寿命化が生じる可能性がある。また、防災用照明装置では、通常、バックアップ電源である電池をトリクル充電するが、急速充電を行う機種もある。急速充電の充電電流はトリクル充電の充電電流より多い。このため、電池の温度に充電回路の発熱も加わり、照明装置がさらに高温となり充電効率が低下するおそれがある。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、電池の劣化を抑制することが可能な照明装置および照明制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る照明装置は、光源と、前記光源を点灯させる電池と、前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、点検信号の受信または停電の検出に応じて前記電池を放電させ、前記放電後に前記電池の充電を再開する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記充電の再開の直後は前記充電電流を第1電流に制御し、次に前記充電電流を前記第1電流よりも大きい第2電流に制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る照明装置では、充電の再開の直後は充電電流を第1電流に制御し、次に充電電流を第1電流よりも大きい第2電流に制御する。このため、充電時の電池の温度を抑制でき、電池の劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る非常灯の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る非常灯の側面図である。
図3】実施の形態1に係る非常灯の下面図である。
図4】実施の形態1の変形例に係る非常灯の斜視図である。
図5】実施の形態1の変形例に係る非常灯から常用光源部を取り外した状態を示す斜視図である。
図6】実施の形態1の変形例に係る非常灯構成部分の拡大図である。
図7】実施の形態1の変形例に係る各種スイッチおよびモニタ類の配置領域を説明する図である。
図8】実施の形態1に係る非常灯の回路ブロック図である。
図9】非常灯の放電波形の例を示す図である。
図10】非常灯の点検時の放電波形の例を示す図である。
図11】停電時の電池電圧と電池温度の関係を示す図である。
図12】自動点検時、または停電で消灯前に復電した時の電池電圧と電池温度の関係を示す図である。
図13】一般的なNi-MH電池における急速充電時の電池電圧と電池温度の関係を示す図である。
図14】実施の形態1に係る放電後の電池電圧と電池温度と充電電流の関係を示す図である。
図15】実施の形態1に係る非常灯の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態に係る照明装置および照明制御システムについて図面を参照して説明する。同じまたは対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る非常灯1の斜視図である。図2は、実施の形態1に係る非常灯1の側面図である。図3は、実施の形態1に係る非常灯1の下面図である。以下では主に非常灯を例に説明するが、本実施の形態の照明装置は非常時に非常点灯する防災用照明装置であれば良く、誘導灯であっても良い。また、非常灯は非常用照明器具とも呼ばれる。なお、非常時は、商用電源からの給電がなく停電している状態を指し、常用時は停電していない状態を指す。
【0013】
非常灯1は、本体4、非常灯1を天井に取り付けるためのバネ7、非常時に点灯する光源であるランプ6、本体4にランプ6を取り付けるための枠5を備える。本体4には、点灯ユニット2、電池3、電源を受ける端子台8が内蔵されている。枠5には、自動点検スイッチ9、点検スイッチ10、非常灯1の動作状態を表示するモニタ類11およびリモコン受光部12が配置されている。モニタ類11は、充電モニタ11a、ランプモニタ11b、点検モニタ11cを含む。充電モニタ11a、ランプモニタ11b、点検モニタ11cは例えばそれぞれ緑色、赤色、橙色のLEDである。
【0014】
図4は、実施の形態1の変形例に係る非常灯201の斜視図である。図5は、実施の形態1の変形例に係る非常灯201から常用光源部219を取り外した状態を示す斜視図である。本実施の形態の照明装置は、ベース照明である常用光源部219が組み合わされた非常灯201であっても良い。常用光源部219は常用時に点灯する。非常灯201の器具本体205には非常灯構成部分218が設けられている。
【0015】
図6は、実施の形態1の変形例に係る非常灯構成部分218の拡大図である。非常灯構成部分218には、本体204、非常時に点灯するランプ6、カバー17および各種スイッチおよびモニタ類11の配置領域50が設けられる。点灯ユニット2、電池3は本体204の中に配置され、カバー17で覆われる。図7は、実施の形態1の変形例に係る各種スイッチおよびモニタ類11の配置領域50を説明する図である。配置領域50には、非常灯1と同様に、自動点検スイッチ9、点検スイッチ10、モニタ類11およびリモコン受光部12が配置されている。
【0016】
図8は、実施の形態1に係る非常灯1の回路ブロック図である。以下では非常灯1の回路構成について説明するが、非常灯201の回路構成も非常灯構成部分218については同様である。非常灯1は点灯ユニット2と電池3とランプ6を備える。点灯ユニット2において整流回路22は商用電源21を整流する。DC-DCコンバータ23は整流された商用電源の電圧を変換する。充電回路25は、DC-DCコンバータ23から電力を供給され、電池3に充電電流を供給して電池3を充電する。制御回路27は、点灯ユニット2の制御を行なう。制御電源生成回路26は、DC-DCコンバータ23の出力側または電池3から、制御回路27の電源Vccを生成する。電源Vccの生成手段は限定されず、停電時にはDC-DCコンバータ29の出力側から生成しても良い。DC-DCコンバータ29は電池3の電圧を昇圧してランプ6を点灯させる。
【0017】
制御回路27にはモニタ類11が接続されている。点検スイッチ10は電池3の点検を行うための信号を発する。自動点検スイッチ9は、電池3の点検を自動的に行うための自動点検信号を発する。リモコン信号受信回路35は、上述のリモコン受光部12に接続され、図示しないリモコンからの信号を受信する。
【0018】
制御回路27は、例えばマイクロコンピュータで構成される。制御回路27において、充電電流設定出力24は充電回路25の充電電流を制御する。DC-DCコンバータ制御回路部30は、例えばDC-DCコンバータ29の動作開始、停止を行う動作信号、或いはDC-DCコンバータ29が出力する出力電圧値、出力電流値などの指令値信号などを出力し、DC-DCコンバータ29の動作を制御する。リモコン信号受信部36はリモコン信号受信回路35からの信号を処理する。自動点検スイッチ信号入力部37は、自動点検スイッチ9からの自動点検信号を処理する。点検スイッチ信号入力部38は、点検スイッチ10からの信号を処理する。出力電圧検出部41は、非常点灯時のDC-DCコンバータ29の出力を検出する。
【0019】
電池電圧検出部42は電池電圧を検出する。電池モニタ信号出力部43は、充電モニタ11aに電池充電検出信号を出力して点灯、点滅または消灯させ、電池3が正常に充電されているか否かを外部に通知する。ランプモニタ信号出力部44は、ランプ6の異常を検出した時に、ランプモニタ11bを点灯または消灯させて外部に通知を行う。点検モニタ出力信号部45は、点検モニタ11cを点灯または消灯させて、点検中であるか否かを外部に通知する。遮断回路制御部46は、DC-DCコンバータ23の出力をオン/オフする遮断回路47を制御する信号を出力する。停電検出部48は、DC-DCコンバータ23の出力を監視し、商用電源21が供給されているか否かを検出する。
【0020】
なお、制御回路27に通信部51を設けて、外部の制御装置60と通信を行っても良い。この場合、非常灯1と制御装置60は照明制御システムを構成する。
【0021】
次に非常灯1の動作を説明する。商用電源21が供給されているときDC-DCコンバータ23は、整流回路22で整流された電圧を、電池3を充電するに足りる電圧に変換する。DC-DCコンバータ23の出力電圧は、制御電源生成回路26でさらに制御電源として適切な電圧に変換され、制御回路27の電源Vccとして供給される。この時、遮断回路制御部46からは遮断回路47を接続状態とする信号が出力されている。DC-DCコンバータ23の出力電圧は、充電回路25に入力され、電池3が充電される。なお、遮断回路47の常用時のデフォルト状態は接続状態である。このとき、停電検出部48では電圧が検出されるため、停電検出部48は停電ではないと判別している。また、電池3を充電しているので、充電モニタ11aは点灯している。以下では、この状態を充電状態という。なお充電回路25は、充電電流設定出力24により任意の充電電流を出力できる。
【0022】
停電などにより商用電源21の供給が停止すると、DC-DCコンバータ23の出力は無くなる。このため、停電検出部48は停電と判別する。また、電池3は充電中ではないため、充電モニタ11aは消灯する。電池3は、制御回路27に電力を供給するとともに、DC-DCコンバータ29に電力を供給する。DC-DCコンバータ29は、電池電圧を昇圧してランプ6に電力を供給し、あらかじめ設定された電流でランプ6を点灯させる。電池3でランプ6を点灯させることを非常点灯と呼ぶ。ランプ電流検出回路34は、ランプ6に流れる電流をDC-DCコンバータ29に帰還させる。DC-DCコンバータ29は、帰還された電流に基づき、ランプ6の出力が予め定められた目標値になるようにランプ電流を制御している。
【0023】
なお、非常時には遮断回路47が遮断状態となる。周辺の回路動作に支障がない場合、DC-DCコンバータ23の動作を止める等の手段により遮断回路47で遮断しないで非常点灯動作に移行することもできる。
【0024】
図9は、非常灯1の放電波形の例を示す図である。図9は、電池電圧が低下してランプ6が消灯するまで、停電が長時間継続した場合の例を示している。電池3の過放電防止および点灯ユニット2の部品の過熱防止のため、DC-DCコンバータ29は電池電圧が予め定められた消灯電圧未満になると、動作を停止し、ランプ6を消灯させる。図9に示される放電基準電圧は、非常用の照明装置として要求される性能を保証するための、電池により供給される非常用電源装置の入力端子電圧を指す。電池電圧が放電基準電圧以上であれば、ランプ6の明るさを確保できる。ランプ6を消灯させる電池電圧である消灯電圧は、放電基準電圧より低い電圧に設定される。
【0025】
次に、自動点検スイッチ信号入力部37が自動点検スイッチ9から自動点検信号を受信した場合の動作を説明する。制御回路27は、自動点検信号を受信すると電池3を予め定められた判定電圧まで放電させる。この動作についてさらに詳細に説明する。制御回路27は自動点検信号を受信すると、予め定められた時間以上、例えば48時間以上の連続充電がされているかを確認する。48時間以上の連続充電がされていない場合は、自動点検に移行せずに充電を継続する。48時間以上の連続充電がされている場合、自動点検に移行する。このとき制御回路27は、電池3を点検するための擬似停電モードに移行し、規定の時間が経ったら元の充電状態に戻り、充電を開始して充電モニタ11aを点灯させる。
【0026】
図10は、非常灯1の点検時の放電波形の例を示す図である。擬似停電モードでは、遮断回路47が遮断状態に設定され、電池3の放電を行う。これによりランプ6が非常点灯する。制御回路27は、図10に実線81に示されるように、放電開始から既定時間が経過した後に電池電圧が判定電圧よりも低くなった場合、電池3の状態が問題ないと判別し、充電状態に戻る。これにより、実線83に示されるようにランプ6は消灯する。さらに制御回路27は、充電モニタ11aを点灯させることで点検結果が問題なかったことを周知する。
【0027】
図10の破線82に示されるように、放電開始から既定時間が経過する前に電池電圧が判定電圧よりも低くなった場合、制御回路27は電池3の寿命と判別し、その時点で擬似停電モードを解除して充電状態に戻る。これにより、破線84に示されるようにランプ6は消灯する。さらに制御回路27は、充電モニタ11aを点滅させることで電池3が寿命であることを周知する。
【0028】
自動点検信号の出力方法は限定されない。例えば自動点検スイッチ9の長押しにより自動点検信号が出力されても良い。また、自動点検スイッチ9を一度押下することで自動点検移行待機状態となり、自動点検移行待機状態の間に再度、自動点検スイッチ9を押下することで自動点検信号を出力できても良い。
【0029】
図11は、停電時の電池電圧と電池温度の関係を示す図である。図11は、例えば図1の形状の非常灯1において、停電後、消灯電圧まで放電した時の電池電圧と電池温度の関係を示している。充電時において、電池電圧および電池温度は一定である。放電時間の経過に伴い、電池電圧は低下し、電池温度は上昇する。
【0030】
LED光源を使用した非常灯では、一般に定電力または定電流制御が行われる。このため、電池電圧が急激に下がる領域では、放電電流および回路の発熱が増加して、電池温度が急に上がる。電池温度は消灯直前がピークとなる。消灯により放電が停止し、電池温度が低下する。電池温度が十分に低下してから復電した場合、電池温度がほぼ非常灯1の周囲温度と同じ状態から充電が開始されることとなる。
【0031】
図12は、自動点検時、または停電で消灯前に復電した時の電池電圧と電池温度の関係を示す図である。図11に示される長時間の停電時とは異なり、一般に自動点検時には電池温度が低下する前に、次の充電が開始される。このため、電池温度が高い状態から再充電が開始されることになる。高温で充電されることで電池3の寿命が短くなるおそれがある。また、通常の使用温度範囲を超えた温度で充電が行われるおそれがある。同様に、停電時により放電が行われた場合にも、電池電圧が消灯電圧に到達する前に復電すると、電池温度が高い状態から再充電が開始される可能性がある。
【0032】
また、非常灯1および非常灯201では、電池3とランプ6が隣接しており、電池3はランプ6の熱を受けやすい。また非常灯201では、自動点検時に常用光源部219が点灯している場合などには、常用光源部219の発する熱も電池3に影響を与える可能性がある。このように電池3の周囲温度を上昇させる要素は、器具の種類、機種によって様々である。
【0033】
図13は、一般的なNi-MH電池における急速充電時の電池電圧と電池温度の関係を示す図である。図13には、非常灯のようなバックアップ用の機器ではなく、一般的な電動アシスト自転車またはシェーバーなどに搭載されたNi-MH電池の電池電圧と電池温度の関係が示されている。図13の例では、急速充電を実施する前の期間T11において、急速充電電流より少ない電流で充電を開始する。期間T11の充電を、初期充電、電圧復帰充電などと呼ぶ。電池電圧が予め定められた電圧に達すると、期間T12において急速充電が行われる。急速充電の充電電流は例えば1/2~1/5Itである。その後の期間T13ではトリクル充電が実施される。トリクル充電の充電電流は例えば1/50It以下である。
【0034】
このようにNi-MH電池、リチウムイオン電池等の充電時には、電池の内圧または温度を監視しながら微少な電流で充電を開始して電池のコンディションを確認し、コンディションに応じて急速充電に切り替えることがある。満充電後はトリクル充電または間欠充電に移行する。しかし、一般に電動アシスト自転車またはシェーバー等の電池は、充電時に非常灯のように熱の影響を受けやすい環境に置かれることが少ない。このため、非常灯のように高温で充電されるという状態が生じにくい。よって、図13に示される急速充電は、電池温度が常温であることを想定して開始されている。なお、車載用のNi-MH電池では、一般に高価な制御装置を備えることで、高温動作への対応が取られている。
【0035】
図14は、実施の形態1に係る放電後の電池電圧と電池温度と充電電流の関係を示す図である。上述の通り制御回路27は、自動点検信号の受信または停電の検出に応じて電池3を放電させ、放電後に電池3の充電を再開する。このとき制御回路27は、充電の再開の直後の期間T1において充電電流を第1電流に制御し、次に期間T2において充電電流を第1電流よりも大きい第2電流に制御する。
【0036】
予め定められた期間T1は、例えば充電の再開から0秒~90分である。期間T1は、例えばランプ6が消灯してから非常点灯時に動作していた回路部品の温度が下がるまでの期間である。図14に示されるように、期間T1はランプ6の消灯後、電池温度が低下して安定するのにかかる時間より長く設定されても良い。第1電流は、例えば1/50It~1/60Itである。第2電流は、例えば1/20It~1/35Itである。期間T2では例えばトリクル充電が行われる。第1電流は、充電回路25が電池3をトリクル充電するときの充電電流と比較して等しい、または小さい。
【0037】
図15は、実施の形態1に係る非常灯1の動作を示すフローチャートである。ステップ1において制御回路27は充電状態である。ステップ2で自動点検信号の受信または停電の検出があったとする。自動点検信号を受信した場合、制御回路27は電池3の放電を開始し、ランプ6を非常点灯させる(ステップ3)。ステップ4で自動点検が終了すると、ステップ5で制御回路27は充電を再開する。この際、制御回路27は充電電流を第1電流まで減らして充電を開始する(ステップ6)。制御回路27は設定された期間T1が経過したすると(ステップ7)、通常の充電つまり第2電流での充電に切り替える(ステップ8)。
【0038】
ステップ2で停電を検出した場合、制御回路27は停電の検出に応じて、電池3を放電させてランプ6を非常点灯させる(ステップ103)。ステップ104で復電したとする。制御回路27は、消灯電圧まで放電が行われたかを確認する(ステップ105)。制御回路27は、消灯電圧まで放電が行われなかった場合、つまり復電時までランプ6が点灯を継続していた場合は、充電の再開の直後に充電電流を第1電流に制御する(ステップ6)。期間T1の経過後(ステップ7)、制御回路27は第2電流での充電に切り替える(ステップ8)。ステップ105において消灯電圧まで放電が行われた場合、つまり復電前にランプ6が消灯していた場合、制御回路27は、充電の再開の直後から充電電流を第2電流に制御する(ステップ8)。
【0039】
このような制御によれば、自動点検後または停電後の電池温度が高い状態の時に、小さい充電電流で充電を開始し、電池温度が低下してから充電電流を大きくすることができる。従って、充電時の電池の温度を抑制でき、電池の劣化を抑制することが可能となる。具体的には、電池の寿命が短くなるのを抑制できるので、電池を長寿命化させることができる。
【0040】
また、電池温度を直接検出するのは一般に困難である。特に照明装置には様々な形状があり、器具形状、組電池形状ごとに電池温度を確認可能な回路を設けると、製造コストが上昇するおそれがある。これに対し本実施の形態では、電池温度が高いことが想定される自動点検後および停電後に充電電流を下げる制御を行う。本実施の形態では、器具形状、組電池形状ごとに電池温度を確認可能な回路を設ける必要が無く、製造コストを抑制できる。
【0041】
停電後に充電を再開する場合は、制御回路27はランプ6の非常点灯時間に応じて、第1電流を供給する期間T1または第1電流の大きさを調整しても良い。例えば、非常点灯時間が短く、電池温度が上昇していないと予測される場合には、第1電流を第2電流に対して減らさなくても良く、期間T1を0秒としても良い。また、自動点検または停電後において、電池温度が検出できる場合は、制御回路27は、電池温度に応じて第1電流を供給する期間T1または第1電流の大きさを調整しても良い。
【0042】
ここまでは個別制御方式について説明した。個別制御方式では、非常灯1の自動点検スイッチ9の操作により自動点検が実施され、点検結果は非常灯1で判別および表示される。つまり個々の非常灯1で自動点検が完結する。これに対し集中制御方式を採用しても良い。集中制御方式では、自動点検制御装置と各非常灯が通信線で接続され、照明制御システムが形成される。この自動点検制御装置は、図8の制御装置60に該当する。
【0043】
照明制御システムにおいて、各非常灯は、制御装置60からの点検指示に基づいて点検を行うことができる。照明制御システムに含まれる非常灯の数は限定されない。制御装置60は、システム内の非常灯の、電池温度のデータと電池電圧のデータを蓄積する。制御装置60は、蓄積されたデータに基づいて第1電流を供給する期間T1または第1電流の大きさを算出する。算出された期間T1または第1電流の大きさは、システム内の非常灯に反映される。
【0044】
制御装置60はクラウド上に設けられても良い。この場合、非常灯1は、電池温度、電池電圧等のデータを通信部51によりクラウドに送信する。電池電圧からは、電池電圧の低下、つまり電池3の劣化の程度が分かる。制御装置60により自動点検時の電池温度と電池電圧を監視し、データを蓄積することで、例えば電池寿命が短くなることを抑制可能な期間T1または第1電流の大きさを、適切に算出できる。この際、各非常灯もしくは電池3に温度センサを組み込んで、温度監視を行っても良い。
【0045】
なお、本実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【0046】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
光源と、
前記光源を点灯させる電池と、
前記電池に充電電流を供給して前記電池を充電する充電回路と、
点検信号の受信または停電の検出に応じて前記電池を放電させ、前記放電後に前記電池の充電を再開する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記充電の再開の直後は前記充電電流を第1電流に制御し、次に前記充電電流を前記第1電流よりも大きい第2電流に制御することを特徴とする照明装置。
(付記2)
前記第1電流は、前記充電回路が前記電池をトリクル充電するときの前記充電電流よりも小さいことを特徴とする付記1に記載の照明装置。
(付記3)
前記第1電流は、1/50It~1/60Itであることを特徴とする付記1または2に記載の照明装置。
(付記4)
前記第2電流は、1/20It~1/35Itであることを特徴とする付記1から3の何れか1項に記載の照明装置。
(付記5)
前記制御回路は、前記点検信号を受信すると前記電池を予め定められた判定電圧まで放電させることを特徴とする付記1から4の何れか1項に記載の照明装置。
(付記6)
前記制御回路は、前記停電の検出に応じて前記電池を放電させて前記光源を点灯させ、復電時まで前記光源が点灯を継続していた場合、前記充電の再開の直後に前記充電電流を前記第1電流に制御し、復電前に前記光源が消灯した場合、前記充電の再開の直後から前記充電電流を前記第2電流に制御することを特徴とする付記1から4の何れか1項に記載の照明装置。
(付記7)
前記制御回路は、前記光源の点灯時間に応じて、前記第1電流を供給する期間または前記第1電流の大きさを調整することを特徴とする付記6に記載の照明装置。
(付記8)
前記制御回路は、前記電池の温度に応じて前記第1電流を供給する期間または前記第1電流の大きさを調整することを特徴とする付記1から7の何れか1項に記載の照明装置。
(付記9)
付記1から8の何れか1項に記載の照明装置と、
前記照明装置と通信する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記電池の温度のデータと前記電池の電圧のデータとを蓄積し、前記蓄積されたデータに基づいて前記第1電流を供給する期間または前記第1電流の大きさを算出することを特徴とする照明制御システム。
【符号の説明】
【0047】
1 非常灯、2 点灯ユニット、3 電池、4 本体、5 枠、6 ランプ、7 バネ、8 端子台、9 自動点検スイッチ、10 点検スイッチ、11 モニタ類、11a 充電モニタ、11b ランプモニタ、11c 点検モニタ、12 リモコン受光部、17 カバー、21 商用電源、22 整流回路、23 DC-DCコンバータ、24 充電電流設定出力、25 充電回路、26 制御電源生成回路、27 制御回路、29 DC-DCコンバータ、30 DC-DCコンバータ制御回路部、34 ランプ電流検出回路、35 リモコン信号受信回路、36 リモコン信号受信部、37 自動点検スイッチ信号入力部、38 点検スイッチ信号入力部、41 出力電圧検出部、42 電池電圧検出部、43 電池モニタ信号出力部、44 ランプモニタ信号出力部、45 点検モニタ出力信号部、46 遮断回路制御部、47 遮断回路、48 停電検出部、50 配置領域、51 通信部、60 制御装置、201 非常灯、204 本体、205 器具本体、218 非常灯構成部分、219 常用光源部
図1
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