(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086519
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】血液容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 31/08 20060101AFI20240620BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20240620BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61L31/08
C08J7/04 U CER
C08J7/04 CEZ
A61J3/00 300A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030971
(22)【出願日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】111148144
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】鐘 ▲敏▼帆
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲敬▼堯
(72)【発明者】
【氏名】張 嘉融
【テーマコード(参考)】
4C047
4C081
4F006
【Fターム(参考)】
4C047AA02
4C047AA05
4C047BB17
4C047BB20
4C047BB36
4C047CC01
4C081AC11
4C081AC12
4C081BB09
4C081CA082
4C081CA292
4C081CB042
4C081DC03
4C081EA01
4F006AA35
4F006AB24
4F006BA11
4F006CA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、血液容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】血液容器は、容器本体と水和性付着防止層とを備える。前記容器本体は内面を有し、前記水和性付着防止層は、前記内面に覆うと共に、水和性高分子を含む。前記水和性高分子は、前記内面での被覆率は50%~100%である。それによって、血液が容器本体の内面に残留することを回避すると共に、生物分子(例えば、タンパク質分子)がアプローチして容器本体の内面に付着することを防止することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面を有する容器本体と、水和性付着防止層とを備える、血液容器であって、
前記水和性付着防止層は、前記内面に覆うと共に、水和性高分子を含み、
前記水和性高分子は、前記内面での被覆率は50%~100%であることを特徴とする、血液容器。
【請求項2】
前記水和性付着防止層の厚みは5μm~100μmである、請求項1に記載の血液容器。
【請求項3】
前記水和性高分子は両性イオンポリマーであり、前記両性イオンポリマーの一つの分子末端にアクリレート基を有すると共に、前記両性イオンポリマーのもう一つの分子末端にアニオン基又はカチオン基を有する、請求項2に記載の血液容器。
【請求項4】
前記水和性付着防止層に水和層が形成される、請求項3に記載の血液容器。
【請求項5】
前記両性イオンポリマーの数量平均分子量は、5000g/mol~10000g/molである、請求項3に記載の血液容器。
【請求項6】
前記両性イオンポリマーにおけるアニオンは、リン酸基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群から選択され、前記両性イオンポリマーにおけるカチオンは、第四アンモニウム基である、請求項3に記載の血液容器。
【請求項7】
前記両性イオンポリマーは、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、スルホベタインメタクリレート、カルボキシベタインメタクリレート又はそれらの組み合わせである、請求項3に記載の血液容器。
【請求項8】
内面を有する容器本体を提供する工程と、
水和性高分子を含む処理液で前記容器本体を処理することによって、前記水和性高分子を含む水和性付着防止層を前記内面に被覆させる工程と、を含み、
前記水和性高分子の前記内面での被覆率は50%~100%であることを特徴とする、血液容器の製造方法。
【請求項9】
前記水和性高分子を含む処理液は、前記水和性高分子及び水を含み、前記水和性高分子を含む処理液の総重量を100wt%として、前記水和性高分子の含有量は0.5wt%~5wt%である、請求項8に記載の血液容器の製造方法。
【請求項10】
前記水和性高分子を含む処理液は高揮発性溶剤を更に含み、前記水和性高分子を含む処理液の総重量を100wt%として、前記高揮発性溶剤の含有量は、50wt%~99wt%である、請求項9に記載の血液容器の製造方法。
【請求項11】
前記水和性高分子を含む処理液で前記容器本体を処理する工程において、前記容器本体を前記水和性高分子を含む処理液に浸し、浸す時間は10秒~60秒である、請求項9に記載の血液容器の製造方法。
【請求項12】
前記水和性高分子は両性イオンポリマーであり、前記両性イオンポリマーの一つの分子末端にアクリレート基を有すると共に、前記両性イオンポリマーのもう一つの分子末端にアニオン基又はカチオン基を有する、請求項9に記載の血液容器の製造方法。
【請求項13】
前記両性イオンポリマーの数量平均分子量は、5000g/mol~10000g/molである、請求項11に記載の血液容器の製造方法。
【請求項14】
前記両性イオンポリマーにおけるアニオンは、リン酸基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群から選択され、前記両性イオンポリマーにおけるカチオンは、第四アンモニウム基である、請求項11に記載の血液容器の製造方法。
【請求項15】
前記両性イオンポリマーは、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、スルホベタインメタクリレート、カルボキシベタインメタクリレート又はそれらの組み合わせである、請求項11に記載の血液容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液容器及びその製造方法に関し、例えば、採血管、遠沈管、分注管、注射管が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
高濃度の多血小板血漿(platelet-rich plasma、PRP)の主な有効成分は血小板であり、採血後に全血を遠心分離することによって得たものである。活性化した後に、高濃度の血小板血漿はさまざまな顆粒(granules)をリリースする。顆粒は、細胞分化または細胞増殖を刺激できる成長因子が含まれており、細胞組織を効果的に修復したり、炎症を緩和する効果を達成したりできる。また、高濃度の血小板血漿は通常、患者自身の血液から製造されるため、非自己免疫拒絶のリスクがなく、高濃度血小板血漿増殖療法は、近年の再生医療の主な応用分野になりつつある。
【0003】
高濃度の多血小板血漿療法が主流になったが、PRPの製造にはコストの低いプラスチック遠沈管(通常、PETやPP製)が使われ、プラスチック表面の疎水性が悪く、表面粗さが大きいため、チューブ壁に血液が残りやすく、PRPの収量が低下する。遠沈管に血液が残ることを避けるために、当業者はプラスチック遠沈管のチューブ壁にシリコンオイルを塗布して、チューブ壁の滑らかさを改善し、チューブ壁に血液が残る可能性を低減させる。しかしながら、最近の研究では、シリコンオイル成分が血液中のタンパク質と結合してシリコン含有微小球を形成し、PRP療法が投与された患部に炎症反応を引き起こし、全身の炎症を引き起こす可能性がある。
【0004】
故に、血液容器の設計を改良することにより、高い収率のPRPを得ると共に、シリコンオイルが人体に混入することによる炎症を回避することは、本事業にとって重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、表面に高い水和性を有し、且つ良好な生体分子に対する抗接着特性を有する、血液容器及びその製造方法を提供することによって、先行技術の問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、容器本体と水和性付着防止層とを備える、血液容器を提供する。前記容器本体は内面を有し、前記水和性付着防止層は、前記内面に覆うと共に、水和性高分子を含む。又、前記水和性高分子は、前記内面での被覆率は50%~100%である。
【0007】
本発明の一つの実施形態において、前記水和性付着防止層の厚みは5μm~100μmである。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記水和性高分子は両性イオンポリマー(zwitterionic polymer)であり、前記両性イオンポリマーの一つの分子末端にアクリレート基を有すると共に、前記両性イオンポリマーのもう一つの分子末端にアニオン基又はカチオン基を有する。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記水和性付着防止層に水和層を形成する。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記両性イオンポリマーの数量平均分子量は、5000g/mol~10000g/molである。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記両性イオンポリマーにおけるアニオンは、リン酸基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群から選択され、前記両性イオンポリマーにおけるカチオンは、第四アンモニウム基である。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記両性イオンポリマーは、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、スルホベタインメタクリレート、カルボキシベタインメタクリレート又はそれらの組み合わせである。
【0013】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、血液容器の製造方法を提供する。血液容器の製造方法は、内面を有する容器本体を提供する工程と、水和性高分子を含む処理液で前記容器本体を処理することによって、前記内面に水和性付着防止層を被覆させる工程と、を含む。前記水和性付着防止層は前記水和性高分子を含み、前記水和性高分子の前記内面での被覆率は50%~100%である。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、前記水和性高分子を含む処理液は、前記水和性高分子及び水を含み、前記水和性高分子を含む処理液の総重量を100wt%として、前記水和性高分子の含有量は0.5wt%~5wt%である。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記水和性高分子を含む処理液は高揮発性溶剤を更に含み、好ましくは、高揮発性溶剤はエタノールであり、前記水和性高分子を含む処理液の総重量を100wt%として、前記高揮発性溶剤の含有量は、50wt%~99wt%である。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、前記水和性高分子を含む処理液で前記容器本体を処理する工程において、前記容器本体を前記水和性高分子を含む処理液に浸し、浸す時間は10秒~60秒である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有利な効果として、本発明に係る血液容器は、「水和性付着防止層で容器本体の内面に被覆する」及び「水和性高分子の、前記内面での被覆率は50%~100%である」ことによって、血液が容器本体の内面に残留することを回避すると共に、生物分子(例えば、タンパク質分子)がアプローチして容器本体の内面に付着することを防止することができる。
【0018】
又、本発明に係る血液容器の製造方法は、常用の血液を収容又は処理するための容器に適用することができると共に、数十秒~数分にこれらの容器の表面に高い水和性及び良好な生体分子に対する抗接着特性を与える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る血液容器の構造を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る血液容器の使用状況を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る血液容器のもう一つの構造を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る血液容器の部分拡大図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る血液容器の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態に係る「血液容器及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0022】
別段の定めがない限り、本発明で使用される用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の実施形態で使用されている材料は、特に明記されていない限り、市販の材料である。以下の例で使用される操作または器具は、特に明記されていない限り、当技術分野における一般的な操作または器具である。
【0023】
理解すべきことは、本明細書において、特定の順番に基づいて方法のフローチャートにおける複数の工程を説明するが、このような特定の順番に基づいてこれらの工程を行うことが要求又は示唆することがない。また、全ての工程を行うことのみで所望の結果を果たせるわけでもない。複数の工程を一つの工程に合わせて実行するか、若しくは、一つの工程を複数の工程を分解して実行してもよい。
【0024】
[第一実施形態]
図1~
図4に示すように、本発明の実施形態において、容器本体1と、水和性付着防止層2とを含む血液容器Zを提供する。容器本体1は、内面101を有し、水和性付着防止層2で内面をする。又、水和性付着防止層2は、高水和力(水分子に対する吸引力が強い)を有する水和性高分子を含むと共に、水和性高分子の内面101での被覆率は50%~100%である。よって、
図2に示すように、本発明の血液容器Zを用いる際に、水和性付着防止層2の界面に一定の数量の水分子と結合して水和層3(例えば、水膜)を形成することができる。それによって、血液Bの雫が容器本体1の内面101に残留することを避けると同時に、生物分子(例えば、タンパク質分子)がアプローチして容器本体1の内面101に付着することを防止することができる。
【0025】
説明すべきことは、本発明の実施形態において、管状容器(例えば、採血管、遠沈管、分注管、注射管)を例として本発明の特性を説明するが、本発明において、容器本体1の形状、構造について特別の制限を有しない。即ち、容器本体1は、血液を収容又は処理するための他の容器本体であってもよい。また、水和性付着防止層2の全体は、実質的に一致する厚み及び化学組成を有してもよい。
【0026】
本発明の実施形態において、水和性高分子は両性イオンポリマーであることが好ましい。両性イオンポリマーの分子構造において、一つの分子末端にアクリレート基を有すると共に、もう一つの分子末端にアニオン基を有するし、また、カチオン基がアクリレート基とアニオン基との間にある。若しくは、両性イオンポリマーの分子構造において、一つの分子末端にアクリレート基を有すると共に、もう一つの分子末端にカチオン基を有するし、また、アニオン基がアクリレート基とカチオン基との間にある。好ましくは、アニオン基の中心原子及びカチオン基の中心原子との距離は、1個~20個の炭素原子であり、それによって、両性イオンポリマーの容器本体1の内面101での化学構造は、水和層3の形成に有利となる。
図4に示すように、容器本体1の内面101には、複数個の両性イオンポリマーで構成されると共に十分な長さ及び十分な鎖柔軟性(chain flexibility)を有する分子鎖21と結合することができ、それらの間には水和反応を起こして水の構造化を起こすことができる。本発明の両性イオンポリマーとして、アニオン基は、リン酸基、スルホン酸基及びカルボン酸基からなる群から選択されてもよい。カチオンは、第四アンモニウム基であってもよい。
【0027】
又、水和性付着防止層2に水和層3をより容易に形成するために、両性イオンポリマーの数量平均分子量は、5000g/mol~10000g/molであってもよく、水和性付着防止層2の厚みは、5μm~100μmであってもよい。
【0028】
実施に応用する際に、両性イオンポリマーの数量平均分子量は、5500g/mol、6000g/mol、6500g/mol、7000g/mol、7500g/mol、8000g/mol、8500g/mol、9000g/mol、9500g/mol又は10000g/molであってもよい。水和性付着防止層2の厚みは、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm又は100μmであってもよい。
【0029】
本発明の両性イオンポリマーとして、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine,MPC)、スルホベタインメタクリレート(sulfobetaine methacrylate,SBMA)、カルボキシベタインメタクリレート(carboxybetaine methacrylate,CBMA)又はそれらの組み合わせであってもよい。2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、スルホベタインメタクリレート及びカルボキシベタインメタクリレートの具体的な構造式は、以下の通りである。その中、m及びnは独立に1~20の整数である。
【0030】
【0031】
更に説明すると、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、スルホベタインメタクリレート又はカルボキシベタインメタクリレートの一つの分子末端にアクリレート基を有する。2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリンのもう一つの分子末端にカチオン基(アンモニウム基)を有する。スルホベタインメタクリレート又はカルボキシベタインメタクリレートのもう一つの分子末端にアニオン基(スルホン酸基又はカルボン酸基)を有する。又、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン、スルホベタインメタクリレート又はカルボキシベタインメタクリレートの分子構造において、アニオン基の中心原子とカチオン基の中心原子との距離は、3つの原子である。
【0032】
本発明の実施形態において、水和性付着防止層2は、水和性高分子を含む処理液で容器本体1を処理することによって形成される。処理の過程において、水和性高分子(両性イオンポリマー)が容器本体1の内面101に付着するか、若しくは、水和性高分子(両性イオンポリマー)が容器本体1の内面101に付着するだけでなく、容器本体1の外面102にも付着している。即ち、水和性付着防止層2は、
図1に示すように、容器本体1の内面101のみに付着してもよく、
図3に示すように、容器本体1の内面101及び外面102に同時に付着してもよい。水和性高分子を含む処理液は水和性高分子及び水を含み、コスト及び人体に対する細胞毒性などの面から考量すると、水和性高分子を含む処理液の総重量を100wt%として、水和性高分子の含有量は、0.5wt%~5wt%であることが好ましい。
【0033】
更に説明すると、上記の処理において、先に容器本体1を水和性高分子を含む処理液に10秒~60秒に浸して、浸した容器本体1を乾燥し、又、好ましくは、水和性高分子(両性イオンポリマー)として、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン(分子量5000~10000)であり、浸す時間は30秒であるが、本発明はこれに制限されるものではない。又、実際の必要、例えば、水分の揮発速度を加速することに応じて、水和性高分子を含む処理液は、高揮発性溶剤を更に含んでもよい。高揮発性溶剤は、エタノールであることが好ましい。又、高揮発性溶剤の含有量は、水和性高分子を含む処理液を100wt%として、50wt%~99wt%であってもよい。説明すべきことは、本発明において、高揮発性溶剤の種類として特に限られず、揮発する際に水を連れると同時に、両性イオンポリマーを溶解することがないものであればよい。
【0034】
本発明の実施形態において、高揮発性溶剤の水和性高分子を含む処理液での含有量は、55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%又は95wt%であってもよい。
【0035】
図5に示すように、本発明の実施形態において、血液容器の製造方法を更に提供する。血液容器の製造方法は、容器本体を提供する工程S1と、水和性高分子を含む処理液で前記容器本体を処理することによって、少なくとも内面に水和性付着防止層を被覆させる工程S2と、を含む。以下にて、
図1~
図3に合わせて、各工程の詳細の内容を説明する。
【0036】
工程S1において、容器本体1は、収容又は血液を処理する機能を満たす形状、構造を有する。例えば、容器本体1は、管状且つ十分な血液の収容空間を有するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0037】
工程S2において、水和性付着防止層2は、水和性高分子を含む処理液で容器本体1を処理することによって形成される。処理過程において、
図1に示すように、水和性高分子(両性イオンポリマー)は、容器本体1の内面101に付着して、容器本体1の内面101を被覆する水和性付着防止層2を形成する。若しくは、
図3に示すように、水和性高分子(両性イオンポリマー)は、容器本体1の内面101に付着するだけでなく、容器本体1の外面102に付着することによって、容器本体1の内面101及び外面102を同時に被覆する水和性付着防止層2を形成する。
【0038】
更に説明すると、上記の処理において、先に容器本体1を水和性高分子を含む処理液に10秒~60秒に浸して、浸した容器本体1を乾燥し、好ましくは、水和性高分子(両性イオンポリマー)として、2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリン(分子量5000~10000)であり、浸す時間は30秒であるが、本発明はこれに制限されるものではない。水和性高分子を含む処理液は水和性高分子及び水を含み、コスト及び人体に対する細胞毒性などの面から考量すると、水和性高分子を含む処理液の総重量を100wt%として、水和性高分子の含有量は、0.5wt%~5wt%であることが好ましい。両性イオンポリマーの化学組成及び分子構造について、前文に関する部分の記載を参考することができるので、ここで重複に説明しない。又、実際の必要、例えば、水分の揮発速度を加速することに応じて、水和性高分子を含む処理液は、高揮発性溶剤を更に含んでもよい。高揮発性溶剤は、エタノールであることが好ましい。又、高揮発性溶剤の含有量は、水和性高分子を含む処理液を100wt%として、50wt%~99wt%であってもよい。
【0039】
[雫の残留試験]
測定方法は、PET管(13×75mm,7mL)を実施例及び比較例の処理液(両性イオンポリマーは2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリンであった)に30秒浸して、浸したPET管を取り出して、50℃のオーブンで30分乾燥した後に、生理食塩水又はウサギの血に浸し、そして、生理食塩水又はウサギの血を注ぎ出した後に、管壁の液体ビーズの残留状態を肉眼で観察した。その結果は、下表1に示すとおりである。雫の数が5を超える場合、「少量の雫が残留」と評価した。雫の数が5以下である場合、「雫の残留がない」と評価した。
【0040】
【0041】
[タンパク質の付着試験]
測定方法は、PET管(13×75mm,7mL)を実施例及び比較例の処理液(両性イオンポリマーは2-メタクリルオキシエチルホスホリルコリンであった)に30秒浸して、浸したPET管を取り出して、50℃のオーブンで30分乾燥した後に、10mg/mLのアルブミン水溶液に浸して、振った後に、顕微鏡で水溶液においてアルブミン粒子が形成されるか否かを観察した。その結果は、下表2に示す通りである。
【0042】
【0043】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る血液容器は、「水和性付着防止層で容器本体の内面に被覆する」及び「水和性高分子の、前記内面での被覆率は50%~100%である」ことによって、血液が容器本体の内面に残留することを回避すると共に、生物分子(例えば、タンパク質分子)がアプローチして容器本体の内面に付着することを防止することができる。
【0044】
又、本発明に係る血液容器の製造方法は、常用の血液を収容又は処理するための容器に適用することができると共に、数十秒~数分にこれらの容器の表面に高い水和性及び良好な生体分子に対する抗接着特性を与える。
【0045】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
Z…血液容器
1…容器本体
101…内面
102…外面
2…水和性付着防止層
21…分子鎖
3…水和層
B…血液
S1、S2…製造工程