(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086521
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】高耐熱性透明ポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20240620BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20240620BHJP
C08G 63/189 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C08G63/78
C08G63/183
C08G63/189
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023044795
(22)【出願日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】111148311
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】許 漢卿
(72)【発明者】
【氏名】張 振偉
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB04
4J029AC02
4J029AE01
4J029BA03
4J029CB06A
4J029CC06A
4J029HA02
4J029HB02
4J029JA283
4J029JF133
4J029KA04
4J029KD01
4J029KD07
4J029KD17
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
【目的】高耐熱性透明ポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルの製造方法は、以下のステップを含む。タルカムパウダーを含む分散スラリーを作製する。テレフタル酸とエチレングリコールを混合して、分散スラリーおよび側基エステル化合物を導入し、エステル交換反応を行って、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを形成する。その後、予備重合反応および縮合重合反応を行って、ポリエチレンテレフタレート共重合ポリエステルを形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タルカムパウダーを含む分散スラリーを作製するステップと、
テレフタル酸とエチレングリコールを混合して、前記分散スラリーおよび側基エステル化合物を導入し、エステル交換反応を行って、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを形成するステップと、
予備重合反応および縮合重合反応を行って、前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートがポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルを形成するステップと、
を含むポリエチレンテレフタレート共重合ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記タルカムパウダーが、1.0μm~5.0μmの平均粒度および20m2/g~12m2/gの平均比表面積を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記側基エステル化合物が、2,6-ナフタレンジカルボキシレートを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記分散スラリーの総重量に対し、前記タルカムパウダーの含有量が、1wt%~8wt%の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記分散スラリーが、さらに、分散剤およびエチレングリコールを含み、前記分散スラリーの総重量に対し、前記分散剤の含有量が、99wt%~1wt%の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、前記分散スラリーの添加量が、1wt%~6wt%の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記エステル交換反応の間、前記テレフタル酸対前記エチレングリコールの当量比が、1:1.2~1:1.8の範囲であり、反応温度が、200℃~230℃の範囲であり、反応時間が、2時間~4時間の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、前記側基エステル化合物の添加量が、1wt%~5wt%の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記予備重合反応の間、反応物質が、前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートおよびポリエチレングリコールを含み、前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、前記ポリエチレングリコールの含有量が、0.5wt%~4wt%の範囲であり、反応温度が、230℃~270℃の範囲であり、真空度が、760mmHg~10mmHgであり、反応時間が、1時間~2時間の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記予備重合反応の後に前記縮合重合反応を行い、前記縮合重合反応の間、反応温度が、260℃~280℃の範囲であり、真空度が、1mmHg~3mmHgの範囲であり、反応時間が、2時間~4時間の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の前記製造方法で作られたポリエチレンテレフタレート共重合ポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate, PET)共重合ポリエステルおよびその製造方法に関するものであり、特に、高耐熱性透明ポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の結晶化速度は、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate, PBT)樹脂より遅いため、PET樹脂を射出加工する時に比較的高い成形温度および比較的長い冷却時間を必要とする。したがって、PET樹脂のエンジニアリングプラスチックへの応用が制限される。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂は、剛構造(rigid structure)により融点が高いため、製品のヘイズ(haze)が高い。
【0003】
そのため、結晶化速度が速く、ヘイズが低い透明PET樹脂を開発し、それにより、射出成形時間を短縮して透明度と耐熱性を高め、製品の応用を拡大することが、本業界における重要な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、PETポリマーが高速結晶化速度および高結晶度の利点を有し、それにより、射出成形時間を有効に短縮して、透明度および耐熱性を高めることのできるポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のステップを含むポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルの製造方法を提供する。タルカムパウダーを含む分散スラリーを作製する。テレフタル酸とエチレングリコールを混合して、分散スラリーおよび側基エステル化合物を導入し、エステル交換反応を行って、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを形成する。その後、予備重合反応および縮合重合反応を行って、ポリエチレンテレフタレート共重合ポリエステルを形成する。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、タルカムパウダーは、1.0μm~5.0μmの平均粒度および20m2/g~12m2/gの平均比表面積を有する。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、側基エステル化合物は、2,6-ナフタレンジカルボキシレートを含む。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、分散スラリーの総重量に対し、タルカムパウダーの含有量は、1wt%~8wt%の範囲である。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、分散スラリーは、さらに、分散剤およびエチレングリコールを含み、分散スラリーの総重量に対し、分散剤の含有量は、99wt%~1wt%の範囲である。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、分散スラリーの添加量は、1wt%~6wt%の範囲である。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、エステル交換反応の間、テレフタル酸対エチレングリコールの当量比は、1:1.2~1:1.8の範囲であり、反応温度は、200℃~230℃の範囲であり、反応時間は、2時間~4時間の範囲である。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、側基エステル化合物の添加量は、1wt%~5wt%の範囲である。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、予備重合反応の間、反応物質は、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートおよびポリエチレングリコールを含み、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、ポリエチレングリコールの含有量は、0.5wt%~4wt%の範囲であり、反応温度は、230℃~270℃の範囲であり、真空度は、760mmHg~10mmHgであり、反応時間は、1時間~2時間の範囲である。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、予備重合反応の後に縮合重合反応を行い、縮合重合反応の間、反応温度は、260℃~280℃の範囲であり、真空度は、1mmHg~3mmHgの範囲であり、反応時間は、2時間~4時間の範囲である。
【0015】
本発明は、上記の製造方法で作られたポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルを提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明は、PET共重合ポリエステルを製造する反応プロセスにタルク含有分散スラリーおよび側基エステル化合物を導入する。粒度が小さく、比表面積が大きいタルカムパウダーは、PET核生成を起こすのに役立つため、結晶化速度を向上させることができる。また、側基エステル化合物は、透明度および耐熱性を高め、ヘイズを下げることができる。上記の方法で製造されたPET共重合ポリエステルは、結晶化が速く、結晶度が高いため、射出成形の加工時間を有効に減らし、その応用性を拡大することができる。また、上記の製造方法により、透明度が高く、ヘイズが低く、且つ耐熱性に優れたPET共重合ポリエステルを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。
【0018】
ここで、「ある数値から別の数値」で表示した範囲は、明細書において当該範囲内の全ての数値を1つ1つ挙げることを回避するための概要的表示方法である。したがって、ある特定数値範囲についての描写は、当該数値範囲内の任意の数値および当該数値範囲内の任意の数値により限定される比較的小さな数値範囲を含み、明細書において当該任意の数値および当該比較的小さな数値範囲が明記されていることと同じである。
【0019】
本発明は、以下のステップを含むポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルを提供する。タルカムパウダーを含む分散スラリーを作製する。テレフタル酸とエチレングリコールを混合して、分散スラリーおよび側基エステル化合物を導入し、エステル交換反応を行って、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを形成する。その後、予備重合反応および縮合重合反応を行って、ポリエチレンテレフタレート共重合ポリエステルを形成する。以下、各ステップについて詳しく説明する。
【0020】
分散スラリーの作製
【0021】
本実施形態において、分散スラリーを作製し、分散スラリーは、タルカムパウダーを含み、さらに、分散剤およびエチレングリコール(ethylene glycol, EG)を含むが、本発明はこれに限定されない。ここで、分散スラリーの作製方法は、例えば、タルカムパウダー、分散剤、およびエチレングリコールを混合することと、超音波振動を与えながら混合物を室温で1時間混合することを含むが、本発明はこれに限定されない。
【0022】
具体的に説明すると、タルカムパウダーは、超微粉タルカムパウダーであってもよく、核剤として使用することができる。いくつかの実施形態において、タルカムパウダーの形状は、不規則または丸い粒状構造を有してもよく、平均粒度は、1μm~5μmの範囲であってもよく、平均比表面積は、20m2/g~12m2/gの範囲であってもよい。いくつかの好適な実施形態において、タルカムパウダーの平均粒度は、1μm~2μmの範囲であってもよく、平均比表面積は、20m2/g~16m2/gの範囲であってもよい。タルカムパウダーは、粒度が小さく、比表面積が高いため、PETの核生成を加速させることができ、それにより、PETの結晶化速度を速めることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、分散スラリーの総重量に対し、タルカムパウダーの含有量は、1wt%~8wt%の範囲であってもよい。いくつかの好適な実施形態において、タルカムパウダーの含有量は、1wt%~6wt%の範囲であってもよい。いくつかのさらに好適な実施形態において、タルカムパウダーの含有量は、1wt%~5wt%の範囲であってもよい。分散スラリー中のタルカムパウダーの含有量が8wt%より多い時、余剰のタルカムパウダーによって、タルクの蓄積が生じやすい。分散スラリー中のタルカムパウダーの含有量が1wt%より少ない時、タルカムパウダーの含有量が少なすぎるため、PETの結晶化が困難になる。タルカムパウダーの含有量が1wt%~5wt%の間の時、PETの結晶化速度を大幅に向上させることができる。
【0024】
分散剤は、分散液(すなわち、分散スラリー)中の成分を分散させるためのヒドロキシル官能基を含むカップリング剤、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、ビス(ピロホスフェート)グリコール酸チタネート(bis(octyl pyrophosphate)glycolic acid titanate)等のキレートチタンカップリング剤等を含んでもよい。いくつかの実施形態において、分散スラリーの総重量に対し、分散剤の含有量は、0.2wt%~2wt%の範囲であってもよい。いくつかの好適な実施形態において、分散剤の含有量は、0.3wt%~1.5wt%の範囲であってもよい。いくつかのさらに好適な実施形態において、分散剤の含有量は、0.5wt%~1.0wt%の範囲であってもよい。分散スラリー中の分散剤の含有量が2wt%より多い時、分散均一性が悪くなり、共重合ポリエステルの縮合重合反応の反応性が低下する。分散スラリー中の分散剤の含有量が0.2wt%より少ない時、分散剤の含有量が少ないため、溶液中の成分が有効に分散されず、その結果、蓄積の現象が生じる。分散剤の含有量が0.5wt%~1.0wt%の間の時、優れた分散効果を達成することができる。
【0025】
エステル交換反応
【0026】
本実施形態において、テレフタル酸(terephthalic acid, PTA)とエチレングリコール(EG)を混合して、分散スラリーおよび側基エステル化合物を導入し、エステル交換反応を行って、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(bis-2-hydroxylethyl terephthalate, BHET)を形成する。エステル交換反応の主な反応物質(つまり、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを合成する原材料)は、テレフタル酸およびエチレングリコールを含み、テレフタル酸対エチレングリコールの当量比は、1:1.2~1:1.8の範囲であってもよく、反応温度は、200℃~230℃の範囲であってもよく、反応時間は、2時間~4時間の範囲であってもよい。反応条件を上記の設定にした時、エステル化率が約90%~96%になるが、本発明はこれに限定されない。側基エステル化合物は、2,6-ナフタレンジカルボキシレートを含む。側基エステル化合物は、透明度および耐熱性を向上させ、ヘイズを下げることができるため、透明度が高く、ヘイズが低く、且つ耐熱性に優れたPET共重合ポリエステルを製造することができる。
【0027】
具体的に説明すると、このステップにおいて、分散スラリーおよび側基エステル化合物をさらに添加することにより、PETを形成する時、核生成および結晶化段階を助けることができる。ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)の総重量に対し、分散スラリーの添加量は、2wt%~20wt%の範囲であってもよい。つまり、タルカムパウダーの添加量は、0.1wt%~1wt%の範囲であってもよく、好ましくは、0.2wt%~0.8wt%の範囲であってもよく、さらに好ましくは、0.3wt%~0.6wt%の範囲であってもよい。タルカムパウダーの添加量が0.1wt%より少ない時、添加量が少なすぎるため、タルカムパウダーは、効果を有さない。タルカムパウダーの添加量が1.0wt%より多い時、核生成速度があまり向上せず、余剰のタルカムパウダーが反応速度に影響を与える。タルカムパウダー(または分散スラリー)の添加量が上記の範囲内にある時、PETの結晶化時間を有効に短縮させ、結晶化速度を速めることができる。
【0028】
本実施形態において、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)の総重量に対し、側基エステル化合物の添加量は、1wt%~5wt%の範囲であってもよい。側基エステル化合物の添加量が1wt%より少ない時、完成品の射出外観がくもり、耐熱性の向上が不明瞭である。側基エステル化合物の添加量が5wt%より多い時、改質されたポリエステルの熱変形温度が低下する。側基エステル化合物の添加量が上記の範囲内にある時、透明度および耐熱性を向上させ、ヘイズを下げることができるため、透明度が高く、ヘイズが低く、且つ耐熱性に優れたPET共重合ポリエステルを製造することができる。
【0029】
予備重合反応および縮合重合反応
【0030】
具体的に説明すると、予備重合反応の間、反応物質は、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)およびポリエチレングリコール(PEG)を含むことができる。ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)の総重量に対し、ポリエチレングリコール(PEG)の含有量は、0.5wt%~4wt%(好ましくは、1wt%~4wt%)の範囲であってもよく、反応温度は、230℃~270℃の範囲であってもよく、真空度は、20Torr~10Torr(すなわち、mmHg)までゆっくり下げられ、反応時間は、1時間~2時間の範囲であってもよい。
【0031】
予備重合反応の後に、縮合重合反応を行う。本実施形態において、縮合重合反応の間、反応温度は、260℃~280℃の範囲であってもよく、真空度は、1Torr~3Torrの範囲であってもよく、反応時間は、2時間~4時間の範囲であってもよい。さらに具体的に説明すると、反応は、撹拌効率が80ワット(w)から110ワットに増加した時に終了する。このようにして、PET共重合ポリエステルの製造が完了する。
【0032】
一般的に、従来のPET射出加工は、以下の問題点を有する:(1)テレフタル酸およびエチレングリコールを原材料として使用するが、短鎖のエチレングリコールは、柔軟性を有さないため、PETの結晶化力が疎外される;(2)PETは、融解点が高い剛構造を有するため、射出成形加工の間、高い温度が必要になり、製品のヘイズが高くなる。そのため、従来のPETは、応用分野が制限される。本発明の実施形態において、重合中にタルク含有分散スラリーを添加するため、タルカムパウダーの小さい粒度と高い比表面積がPET核生成を起こすのに役立ち、それにより、結晶化速度を向上させることができる。また、重合中に側基エステル化合物をさらに添加するため、透明度および耐熱性を向上させ、ヘイズを下げることができ、それにより、透明度が高く、ヘイズが低く、且つ耐熱性に優れたPET共重合ポリエステルを製造することができる。上記の最適化されたプロセスで製造されたPET共重合ポリエステルは、高速結晶化、短縮された半結晶化時間、高い結晶度、高い透明度、低いヘイズ、より優れた耐熱性、および短縮された射出成形加工時間といった利点を有する。
【0033】
以下、本発明のPET共重合ポリエステルおよびその製造方法について、実験例を用いて詳しく説明する。しかしながら、下記の実験例は、本発明を限定する意図はない。
【0034】
実験例
【0035】
【0036】
表1に示すように、比較例は、本発明のナフタレン二酸エステルおよび超微粉タルカムパウダーを使用しないため、本発明のナフタレン二酸エステルおよび超微粉タルカムパウダーを使用する実例1~5と比較して、比較例は、結晶化速度および透明度が低く、ヘイズが高い。
【0037】
以上のように、本発明は、PET共重合ポリエステルを製造する反応プロセスにタルク含有分散スラリーおよび側基エステル化合物を導入し、比表面積が大きく、粒度が小さいタルカムパウダーにより、PET核生成を起こして、結晶化速度を向上させることができる。また、側基エステル化合物は、透明度および耐熱性を高め、ヘイズを下げることができる。上記の方法で製造されたPET共重合ポリエステルは、結晶化が速く、結晶度が高いため、射出成形の加工時間を有効に減らし、その応用性を拡大することができる。一方、上記の製造方法により、透明度が高く、ヘイズが低く、且つ耐熱性に優れたPET共重合ポリエステルを製造することができる。
【0038】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、この発明を限定する意図はない。当業者であれば容易に理解できるように、この発明の精神および範囲から逸脱しなければ、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、PETポリマーが高速結晶化速度および高結晶性の利点を有し、それにより、射出成形時間を有効に短縮して、透明度および耐熱性を高めることのできるポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルおよびその製造方法を提供する。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タルカムパウダーを含む分散スラリーを作製するステップと、
テレフタル酸とエチレングリコールを混合して、前記分散スラリーおよびエステル化合物を導入し、エステル交換反応を行って、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを形成するステップと、
予備重合反応および縮合重合反応を行って、前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートがポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリエステルを形成するステップと、
を含み、
前記エステル化合物が、2,6-ナフタレンジカルボキシレートを含み、
前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、前記エステル化合物の添加量が、1wt%~5wt%の範囲であるポリエチレンテレフタレート共重合ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記タルカムパウダーが、1.0μm~5.0μmの平均粒度および20m2/g~12m2/gの平均比表面積を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記分散スラリーの総重量に対し、前記タルカムパウダーの含有量が、1wt%~8wt%の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記分散スラリーが、さらに、分散剤およびエチレングリコールを含み、前記分散スラリーの総重量に対し、前記分散剤の含有量が、99wt%~1wt%の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、前記分散スラリーの添加量が、1wt%~6wt%の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記エステル交換反応の間、前記テレフタル酸対前記エチレングリコールの当量比が、1:1.2~1:1.8の範囲であり、反応温度が、200℃~230℃の範囲であり、反応時間が、2時間~4時間の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記予備重合反応の間、反応物質が、前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートおよびポリエチレングリコールを含み、前記ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートの総重量に対し、前記ポリエチレングリコールの含有量が、0.5wt%~4wt%の範囲であり、反応温度が、230℃~270℃の範囲であり、真空度が、760mmHg~10mmHgであり、反応時間が、1時間~2時間の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記予備重合反応の後に前記縮合重合反応を行い、前記縮合重合反応の間、反応温度が、260℃~280℃の範囲であり、真空度が、1mmHg~3mmHgの範囲であり、反応時間が、2時間~4時間の範囲である請求項1に記載の製造方法。
【外国語明細書】