(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086523
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050449
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0176005
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ヒー スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェオン リェオル
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE00
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電率が向上した積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、複数の誘電体結晶粒20を含む誘電体層111及び誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む本体と、本体上に配置される外部電極とを含む。複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、内側のコア21とコアの少なくとも一部をカバーするシェル22とを含むコア-シェル構造を有し、上記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の平均大きさに対する上記コアの平均大きさの割合は、0.4以上0.8以下であり、誘電体層に含まれたスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計の割合((Dy+Tb)/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たし、誘電体層のうち少なくとも一つ以上は、第1方向に4個以上の誘電体結晶粒が存在する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体結晶粒を含む誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極とを含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、内側のコアと前記コアの少なくとも一部をカバーするシェルとを含むコア-シェル構造を有し、
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の平均大きさに対する前記コアの平均大きさの割合は、0.4以上0.8以下であり、
前記誘電体層に含まれたスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計の割合((Dy+Tb)/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たし、
前記誘電体層のうち少なくとも一つ以上は、前記第1方向に4個以上の誘電体結晶粒が存在する、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層において前記第1方向に直線Lを引いた時、前記直線L上に存在する前記誘電体結晶粒の数が4個以上7個以下の誘電体層を少なくとも一つ以上含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体結晶粒の平均大きさは、100nm以上300nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体結晶粒の平均大きさに対する大きさの標準偏差は、±100nm以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記ジスプロシウム(Dy)の含量は、前記コアより前記シェルでより高い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記コアの平均大きさは、50nm以上200nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記コアの平均大きさに対する大きさの標準偏差は、±75nm以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対する前記スズ(Sn)のモル数は、1.0モル以上2.0モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対する前記ジスプロシウム(Dy)のモル数は、0.7モル以上1.5モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対する前記テルビウム(Tb)のモル数は、0.2モル以上1.55モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対する前記ジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計は、1.1モル以上2.25モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記本体は、前記第1方向に互いに向かい合う第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面及び第4面、前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5面及び第6面を含み、前記誘電体層と前記内部電極を含む容量形成部及び前記容量形成部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記容量形成部の前記第3方向の両端面に配置されるサイドマージン部を含む、
請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層の前記第1方向の平均大きさは、0.6μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記積層型電子部品のサイズは、1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)以下である、請求項1から14のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
複数の誘電体結晶粒を含む誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極とを含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、内側のコアと前記コアの少なくとも一部をカバーするシェルとを含むコア-シェル構造を有し、
前記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の平均大きさに対する前記コアの平均大きさの割合は、0.4以上0.8以下であり、
前記誘電体層に含まれたスズ(Sn)のモル数に対する希土類元素(RE)モル数の割合(RE/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たし、
前記誘電体層のうち少なくとも一つ以上は、前記第1方向に4個以上の誘電体結晶粒が存在する、積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を達成するチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器など各種の電子機器が小型化、高出力化されることにより、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求も増大している。
【0004】
最近開発された超小型製品の場合、薄層設計適用が限界に近づいており、基本的な製品の信頼性を確保するための最小設計厚さの条件下で製品のさらなる特性を極大化することが要求されている。そこで、材料的な観点における設計変更に対する研究が活発に進行されており、従来の場合、薄層設計機種で微粒母材を活用して製品の特性を安定化させようとしたが、粒成長速度の制御が難しく、高誘電率を出すために粒子を過粒成長させる工程が適用されていた。
【0005】
そこで、上記問題点を解決するために、誘電体の誘電特性を向上させて一定の電圧印加条件下で実現可能な有効誘電率を増加(誘電率の減少率を低下)させることが必要であり、誘電体物質内の誘電率の向上に大きな寄与度を有する格子点欠陥のないコアの特性を向上させることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2022-0088099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、誘電体結晶粒の大きさは小さく、誘電体結晶粒のコアの割合を向上させて誘電率が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、誘電体粉末製造工程の最適化及び多様な組成成分を限定し誘電体結晶粒のコア割合を向上させて、誘電体粒子の粒成長速度、大きさ及び散布を制御して積層型電子部品の特性を極大化させることである。
【0009】
但し、本発明が解決しようとする様々な課題は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体結晶粒を含む誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極とを含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、内側のコアと上記コアの少なくとも一部をカバーするシェルとを含むコア-シェル構造を有し、上記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の平均大きさに対する上記コアの平均大きさの割合は、0.4以上0.8以下であり、上記誘電体層に含まれたスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計の割合((Dy+Tb)/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たし、上記誘電体層のうち少なくとも一つ以上は、上記第1方向に4個以上の誘電体結晶粒が存在することができる。
【0011】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体結晶粒を含む誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極とを含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、内側のコアと上記コアの少なくとも一部をカバーするシェルとを含むコア-シェル構造を有し、上記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の平均大きさに対する上記コアの平均大きさの割合は、0.4以上0.8以下であり、上記誘電体層に含まれたスズ(Sn)のモル数に対する希土類元素(RE)モル数の割合(RE/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たし、上記誘電体層のうち少なくとも一つ以上は、上記第1方向に4個以上の誘電体結晶粒が存在することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果のうち一つは、誘電体結晶粒の大きさは小さく、誘電体結晶粒のコアの割合を向上させて誘電率が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0013】
本発明の様々な効果のうち一つは、電圧印加時に発生し得る有効容量の減少率を最小化して積層型電子部品の電圧印加条件における有効誘電率を向上させることである。
【0014】
但し、本発明の多様かつ有益な長所と効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図4】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図5】
図3のP領域の拡大図を概略的に示したものである。
【
図6】本発明の一実施形態の容量形成部Acを走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0017】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面で示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のため任意に示したため、本発明が必ずしも図示されたものに限定されるものではない。また、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
図面において、第1方向は積層方向または厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義されることができる。
【0019】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものであり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図5は、
図3のP領域の拡大図を概略的に示したものである。
【0020】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳しく説明する。但し、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を用いる多様な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0021】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、複数の誘電体結晶粒を含む誘電体層111及び上記誘電体層111と第1方向に交互に配置される内部電極131、132を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132とを含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、内側のコア21と上記コア21の少なくとも一部をカバーするシェル22とを含むコア-シェル構造を有し、上記コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の平均大きさに対する上記コア21の平均大きさの割合は、0.4以上0.8以下であり、上記誘電体層に含まれたスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計の割合((Dy+Tb)/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たし、上記誘電体層111のうち少なくとも一つ以上は、上記第1方向に4個以上の誘電体結晶粒が存在することができる。
【0022】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0023】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに向かい合うように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0024】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0025】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面3及び第4面4、第1面1、第2面2、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5面5及び第6面6を有することができる。
【0026】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認し難いほど一体化されることができる。
【0027】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り、制限されない。一般的にペロブスカイト(ABO3)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1等が挙げられる。
【0028】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に本発明の目的に応じて多様なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0029】
一方、最近開発された超小型製品の場合、薄層設計の適用が限界に近づいており、基本的な製品の信頼性を確保するための最小設計厚さの条件下で製品の追加的な特性を極大化することが要求されている。そこで、材料的な観点からの設計変更に対する研究が活発に進行されており、従来の場合、薄層設計機種で微粒母材を活用して製品の特性を安定化させようとしたが、粒成長速度の制御が難しく、高誘電率を出すために粒子を過粒成長させる工程が適用されていた。
【0030】
そこで、上記問題点を解決するために、誘電体の誘電特性を向上させて一定の電圧印加条件下で実現可能な有効誘電率を増加(誘電率の減少率を低下)させることが必要であり、誘電体物質内の誘電率の向上に大きな寄与度を有する格子点欠陥のないコアの特性を向上させることが必要である。
【0031】
そこで、本発明の一実施形態は、誘電特性を極大化するために、誘電体物質のコア特性を向上させることができるように、焼成前の誘電体粒子を含む母材の大きさを微粒ではなく組立母材を利用し、多様な焼成条件または工程条件を制御するために最適な組成で設計した。
【0032】
より具体的に、BaTiO3系誘電体は、一般的に常温で正方晶系構造(tetragonal structure)を有するが、添加剤などの一部元素が置換された領域、例えばシェル(shell)領域は、立方晶系構造(cubic structure)の格子構造に変形されることができ、このように格子構造を変形させることで双極子(dipole)モーメントのある相(phase)に転換することができる。
【0033】
一般的に、焼成後に誘電体結晶粒で観察されるコア(core)領域の大きさは、焼成前の誘電体粒子母材の大きさにより決定され、誘電体粒子を焼結するか粒成長する段階ではコアの大きさに影響をほとんど及ぼさないため、焼成後の誘電体結晶粒のコアの大きさで焼成前の誘電体粒子母材の大きさ及び粒成長率を予測することができる。
【0034】
一方、誘電体の有効容量は、誘電体結晶粒内で、立方晶系構造(cubic structure)を有する領域の大きさに対して正方晶系構造(tetragonal structure)を有する領域の大きさが大きい場合に向上すると知られている。換言すると、同一の大きさを有する誘電体結晶粒中(tetragonal structure size/cubic structure size)の割合が大きい誘電体粒子であるほど、誘電率が向上することができる。
【0035】
また、添加剤などの一部元素が置換されたシェル領域は、格子(lattice)大きさの単位で酸素空孔(oxygen vacancy)や欠陥双極子(defect dipole)などのイオン欠陥により格子内の欠陥が発生したドメインウォール(domain wall)が生成し得て、このような欠陥格子は、電界(electric field)印加時に、非可逆的なドメインウォールモーション(motion)を発生させるようになり、電圧印加時に実現可能な有効容量の減少を起こし得る。即ち、誘電体結晶粒の大きさに対してコアの大きさが増加する場合、DC-bias電圧印加時に有効容量が向上することができる。
【0036】
そこで、本発明では、電圧印加時に有効容量を極大化するために誘電体結晶粒内のコアの大きさ割合を向上させられるように、組立母材を使用するものの、粒成長率を最小化することができるように制御可能な組成系の適用及び非可逆ドメインウォールモーションによる誘電率損失分を最小化するために格子欠陥濃度を最小化した組成の設計により、有効容量の確保及び誘電率の減少率の改善効果を実現することができる。
【0037】
本発明の一実施形態において、誘電体層111は、第1方向に4個以上の誘電体結晶粒が存在する誘電体層を少なくとも一つ以上含むことができ、誘電体層111に含まれたスズ(Sn)のモル数に対する希土類元素(RE)のモル数の割合(RE/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たすことができ、ここで希土類元素(RE)は、好ましくジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を含むことができる。
【0038】
誘電体結晶粒は、複数の誘電体結晶粒を含むことができ、複数の誘電体結晶粒20のうち少なくとも一つ以上は、内側のコア21と上記コア21の少なくとも一部をカバーするシェル22とを含むコア-シェル構造を有することができる。
【0039】
コア21とシェル22を区分する基準は、走査電子顕微鏡-エネルギー分散分光法(SEM-EDS:Scanning Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)または透過電子顕微鏡-エネルギー分散分光法(TEM-EDS:Transmission Electron Microscopy- Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析を通じて進行することができ、コア-シェル構造の誘電体結晶粒に含まれた希土類元素の含量を基準として区分することができる。例えば、希土類元素の一種類であるジスプロシウム(Dy)の場合、コア内部への拡散が難しいため、誘電体結晶粒のEDS分析時にDyが拡散しない原型の領域をコアと定義し、コアをカバーするか取り囲んでいる領域をシェルと定義することができる。換言すると、コアから誘電体結晶粒までの領域をシェルと定義することができる。
【0040】
より好ましくは、コア-シェル構造を有する一つの誘電体結晶粒において、ラインプロファイル(line-profile)を利用して分析した時、Dyの含量が急激に変化する地点を基準として、Dyの含量が少ない領域をコアと定義し、Dyの含量が高い領域をシェルと定義することができる。
【0041】
また、誘電体層111は、第1方向に4個以上の誘電体結晶粒を含むことができ、誘電体結晶粒の上限は特に限定する必要はないが、好ましくは7個以下の誘電体結晶粒を含むことができる。
【0042】
すなわち、第1方向に4個以上7個以下の誘電体結晶粒が存在する誘電体層111が少なくとも一つ以上存在することができる。
【0043】
ここで、第1方向に存在する4個以上の誘電体結晶粒は、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒だけを意味するものではなく、コア-シェル構造を有しない誘電体結晶粒を含むことができる。
【0044】
より具体的に、
図5を参照して説明すると、本発明の一実施形態において、誘電体層111は、複数の誘電体層111を含むことができ、複数の誘電体層111のうち誘電体結晶粒を含む任意の一誘電体層111で第1方向に直線Lを引いた時、直線L上に存在する誘電体結晶粒の数が4個以上存在する誘電体層111を少なくとも一つ以上含むことができ、より好ましく、直線L上に存在する誘電体結晶粒の数が4個以上7個以下で存在する誘電体層111を少なくとも一つ以上含むことができる。
【0045】
ここで、直線Lは、任意の一誘電体層111内で第1方向に引いた直線Lを意味することができ、より具体的に、第1内部電極121と隣接した第2内部電極122に実質的に垂直な方向に引いた直線Lを意味することができ、このような直線L上に存在する誘電体結晶粒の数が4個以上であることができる。
【0046】
直線L上に存在する誘電体結晶粒をカウントする方法は、直線Lが誘電体結晶粒を貫通する誘電体結晶粒をカウントするか、誘電体結晶粒を取り囲んでいる結晶粒界(grain boundary)を貫通する場合、誘電体結晶粒をカウントし、直線L上に存在する誘電体の数でカウントすることができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0047】
誘電体層111に含まれたスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計の割合((Dy+Tb)/Sn)は、0.7以上1.5以下を満たすことができる。
【0048】
誘電体層111に含まれたスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計の割合((Dy+Tb)/Sn)が0.7以上1.5以下を満たす場合、有効容量が向上し、誘電体粒子の粒成長をより容易に制御して電圧印加時の有効容量減少率を改善することができる。
【0049】
誘電体層111に含まれたスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計の割合((Dy+Tb)/Sn)が0.7未満であるか1.5超の場合、容量減少率の改善が足りないおそれがある。
【0050】
誘電体層111は、スズ(Sn)を含むことができ、誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するスズ(Sn)のモル数は、1.0モル以上2.0モル以下であることができる。
【0051】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するスズ(Sn)のモル数は、1.0モル以上2.0モル以下である場合に、誘電体粒子の粒成長をより容易に制御することができ、有効容量を向上させることができる。
【0052】
スズ(Sn)のモル数が1.0モル未満の場合、誘電体粒子の粒成長制御が容易でなく、誘電体結晶粒の大きさが大きくなり結晶粒界の数が少なくなり、格子点欠陥のないコアの特性を弱化させて電界集中現象により有効率が低下し得る。スズ(Sn)のモル数が2.0モル超の場合、誘電体粒子の粒成長制御は容易であるが、過度な粒成長抑制により高誘電率の実現に困難があるおそれがある。
【0053】
誘電体層111は、希土類元素(RE:rare earth elements)を含むことができ、誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対する希土類元素(RE)のモル数は、1.1モル以上2.25モル以下であることができる。
【0054】
稀土類元素(RE)は、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、トリウム(Tm)、ランタン(La)及びイッテルビウム(Yb)のうち一つ以上を含むことができる。
【0055】
稀土類元素(RE)が二種類以上添加される場合、稀土類元素(RE)のモル数は、添加された希土類元素の合計のモル数を意味することができる。
【0056】
誘電体粒子の粒成長を制御することができる希土類元素であればいずれも使用することができ、好ましくは、ジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)を使用することができる。
【0057】
換言すると、誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計は、1.1モル以上2.25モル以下であることができる。
【0058】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計が1.1モル以上2.25モル以下の場合、誘電体粒子の粒成長をより容易に制御することができ、有効容量を向上させることができる。
【0059】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計が1.1モル未満であるか、2.25モル超の場合、誘電体粒子の粒成長制御が容易でなく、誘電体結晶粒の大きさが大きくなり結晶粒界の数が少なくなり、電界集中現象により有効率が低下するか、誘電体結晶粒が形成されないことがある。また、後述するコア-シェル構造の誘電体結晶粒内のシェル領域に含まれた希土類元素の固溶含量が減少することにより、酸素欠陥の制御が容易でなく、信頼性が大きく低下するという問題を引き起こし得る。
【0060】
この時、誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するジスプロシウム(Dy)のモル数は、0.7モル以上1.5モル以下であることができる。
【0061】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するジスプロシウム(Dy)のモル数は、0.7モル以上1.5モル以下の場合、誘電体粒子の粒成長をより容易に制御することができ、有効容量を向上させることができる。
【0062】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するジスプロシウム(Dy)のモル数が0.7モル未満の場合、酸素欠陥の制御に十分でなく、酸素空孔の発生による信頼性の低下が発生し得る。ジスプロシウム(Dy)のモル数が1.5モル超の場合、信頼性の改善には効果的であるものの焼成温度が大きく増加するか誘電体結晶粒が形成されないことがある。
【0063】
また、誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するテルビウム(Tb)のモル数は、0.2モル以上1.55モル以下であることができる。
【0064】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するテルビウム(Tb)のモル数は、0.2モル以上1.55モル以下の場合、誘電体粒子の粒成長をより容易に制御することができ、有効容量を向上させることができる。
【0065】
誘電体層111に含まれたチタン(Ti)100モルに対するテルビウム(Tb)のモル数が0.2モル未満の場合、高温耐電圧特性が劣るおそれがある。テルビウム(Tb)のモル数が1.55モル超の場合、有効率が低下する恐れがある。
【0066】
本発明の一実施形態において、誘電体層111に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさは、100nm以上300nm以下であることができ、より好ましくは、130nm以上230nm以下であることができる。
【0067】
誘電体結晶粒の大きさは、誘電体結晶粒の中心点を通る最小直線大きさ及び最大直線大きさを平均した値であることができ、誘電体結晶粒の平均大きさは、上記のような方法で計算した複数の誘電体結晶粒の大きさを平均した値であることができる。
【0068】
換言すると、誘電体結晶粒の大きさは、一つの誘電体結晶粒の平均大きさを意味することができ、誘電体結晶粒の平均大きさは、誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒の平均大きさを意味することができる。
【0069】
ここで、誘電体結晶粒の平均大きさは、誘電体層を含む容量形成部Acにおいて、1μm×1μmの範囲内で走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した画像イメージの中で、観察される誘電体結晶粒の大きさを測定して平均した値であることができる。但し、特にこれに制限されるものではなく、一つの誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒の大きさを平均した値であることができ、容量形成部Acに含まれた複数の誘電体結晶粒の大きさを平均した値であることができる。
【0070】
この時、誘電体結晶粒の平均大きさに対する誘電体結晶粒大きさの標準偏差は、±100nm以下、より好ましくは±50nm以下であることができる。
【0071】
例えば、大きさの標準偏差が±50nm以下の場合、複数の誘電体結晶粒の平均大きさが180nmであると、誘電体結晶粒の大きさは、最小大きさが130nmであり、最大大きさは180nmであり、誘電体結晶粒の大きさは最小・最大範囲内に存在することを意味することができる。
【0072】
誘電体結晶粒大きさの標準偏差が±100nm以下を満たす場合、均一な大きさの誘電体結晶粒を形成することができ、信頼性の制御がより容易であることができる。
【0073】
一方、コア21-シェル22構造を有する誘電体結晶粒20において、誘電体結晶粒の平均大きさに対するコアの平均大きさは、0.4以上0.8以下であることができ、百分率で表現する場合、40%以上80%以下であることができる。
【0074】
ここで、誘電体結晶粒の平均大きさは、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の大きさを平均した値であることができる。コアの大きさは、コアの中心点を通る最小直線大きさ及び最大直線大きさを平均した値を意味することができ、コアの平均大きさは、上記のような方法で計算した複数のコアの大きさを平均した値であることができる。
【0075】
誘電体結晶粒の大きさを計算するための直線と、コアの大きさを計算するための直線は異なることができる。
【0076】
誘電体結晶粒の平均大きさに対するコアの平均大きさが0.4以上0.8以下を満たすことで、有効容量が向上することができ、電圧印加時に有効容量の減少が改善することができる。
【0077】
本発明の一実施形態において、コア21の平均大きさは50nm以上200nm以下であることができ、より好ましくは80nm以上140nm以下であることができる。
【0078】
コア21の平均大きさが50nm以上200nm以下を満たすことで、高誘電特性を表すことができ、特に誘電体結晶粒の平均大きさが300nm以下の小さい大きさの場合に、高誘電特性をより容易に実現することができる。
【0079】
コア21の平均大きさが50nm未満の場合、目標とする誘電特性を達成し難く、コア21の平均大きさが200nm超の場合、誘電体結晶粒の大きさが大きくなりDC-bias特性や信頼性が低下する恐れがある。
【0080】
コア21の平均大きさに対するコア大きさの標準偏差は±75nm以下であることができ、より好ましくは±30nm以下であることができる。
【0081】
例えば、大きさの標準偏差が±30nm以下の場合、複数のコアの平均大きさが110nmであると、コアの大きさは、最小大きさが80nmであり、最大大きさは140nmであり、コアの大きさは最小・最大範囲内に存在することを意味することができる。
【0082】
コア21の大きさの標準偏差が±75nm以下を満たす場合、均一な大きさのコアを形成することができ、高誘電特性を確保しながら電圧印加時に容量減少率を改善することができる。また、均一な大きさの組立母材を適用したことを類推することができる。
【0083】
図6は、本発明の一実施形態の容量形成部Acを走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像イメージである。
【0084】
より具体的に、
図6は、組立母材を適用して適正水準の粒成長と緻密度をなした状態であり、これを確認してみると、多様な大きさの結晶粒が観察されることが見出される。これは、微粒母材の使用時に発見される一つの誘電体層当たり一つの誘電体結晶粒を含む水準から、微粒母材を非粒成長する場合、発見される一つの誘電体層当たり4個以上の誘電体結晶粒を含む水準まで多様な大きさで存在することを確認することができる。
【0085】
誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。
【0086】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0087】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0088】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向大きさを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0089】
誘電体層111の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて一つの誘電体層111を第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0090】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層されることができる。
【0091】
内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに向い合うように交互に配置され、本体110の第3面及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0092】
より具体的に、第1内部電極121は、第4面4と離隔し第3面3を通じて露出することができ、第2内部電極122は、第3面3と離隔し第4面4を通じて露出することができる。本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置され第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置され第2内部電極122と連結されることができる。
【0093】
すなわち、第1内部電極121は、第2外部電極132とは連結されず第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は、第1外部電極131とは連結されず第2外部電極132と連結されることができる。この時、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0094】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
【0095】
内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0096】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0097】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0098】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向大きさを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0099】
内部電極121、122の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極121、122を第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0100】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されたカバー部112、113を含むことができる。
【0101】
より具体的に、容量形成部Acの第1方向上部に配置される上部カバー部112及び容量形成部Acの第1方向下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0102】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層111又は2個以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0103】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。即ち、上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0104】
一方、カバー部112、113の厚さtcは、特に限定する必要はない。
【0105】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましく20μm以下であることができる。
【0106】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向大きさを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0107】
カバー部112、113の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて一つのカバー部を第2方向に等間隔の30個の地点で厚さを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30個の地点は、上部カバー部112で指定されることができる。また、このような平均値の測定を下部カバー部113に拡張して平均値を測定すると、カバー部112、113の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0108】
一方、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上には、サイドマージン部114、115が配置されることができる。
【0109】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。すなわち、サイドマージン部114、115は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)に配置されることができる。
【0110】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1方向断面及び第3方向断面(cross-section)を基準として、第1内部電極121及び第2内部電極122の第3方向両末端と本体110の境界面間の領域を意味することができる。
【0111】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0112】
サイドマージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される所を除いて導電性ペーストを塗布し内部電極121、122を形成して、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層111または2個以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)に第3方向に積層して形成することもできる。
【0113】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、セラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0114】
一方、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0115】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましく20μm以下であることができる。
【0116】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向大きさを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向平均大きさを意味することができる。
【0117】
サイドマージン部114、115の第3方向平均大きさは、本体110の第1方向断面及び第3方向断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて一つのサイドマージン部を第1方向に等間隔の30個の地点で第3方向大きさを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30個の地点は、第1サイドマージン部114で指定されることができる。また、このような平均値の測定を第2サイドマージン部115に拡張して平均値を測定すると、サイドマージン部114、115の第3方向平均大きさをさらに一般化することができる。
【0118】
本発明の一実施形態においては、セラミック電子部品100が2個の外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0119】
外部電極131、132は、本体110上に配置されて内部電極121、122と連結されることができる。
【0120】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は、本体の第3面3に配置され、第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は、本体の第4面4に配置され、第2内部電極122と連結されることができる。
【0121】
外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用しても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0122】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。
【0123】
電極層131a、132aについてより具体的に例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0124】
また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であることができる。
【0125】
また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0126】
電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群より選択された一つ以上を含むことができる。電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することで形成されることができる。
【0127】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。
【0128】
めっき層131b、132bの種類は特に限定せず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131b、132bであってよく、複数の層で形成されてよい。
【0129】
めっき層131b、132bについてより具体的に例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であってよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0130】
一方、積層型電子部品100のサイズは、特に限定する必要はない。
【0131】
但し、超小型製品で本発明による効果がより良いことができ、例えば、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品の場合に、本発明による効果がより優れることができる。
【0132】
以上で本発明の実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定しようとする。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0133】
以下、試験例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、これは発明を具体的に理解するためのもので、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0134】
(試験例)
下記の表1~表8のサンプルチップは、チップサイズを1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)サイズで製作し、誘電体層の平均厚さは0.6μm以下で製作した。
【0135】
誘電体結晶粒数は、誘電体層において第1方向に直線Lを引いた時、直線L上に存在する誘電体結晶粒の数をカウントして記載した。
【0136】
コアの大きさは、ジスプロシウム(Dy)をTEM-EDSを通じてmappingした後、ジスプロシウム(Dy)がほぼ検出されない領域であるコアの大きさを測定した。前述したように、中心点を通る最小直線大きさ及び最大直線大きさを平均した値をコアの大きさとして記載した。
【0137】
誘電体層には、スズ(Sn)及び希土類元素ジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)が含まれ、チタン(Ti)100モルに対するスズ(Sn)のモル数、ジスプロシウム(Dy)及びテルビウム(Tb)のモル数を測定して記載した。また、上記測定したスズ(Sn)のモル数に対するジスプロシウム(Dy)のモル数とテルビウム(Tb)のモル数の合計に対する割合((Dy+Tb)/Sn)を計算して表に反映した。
【0138】
また、各サンプルチップ別に電圧を印加した時の有効容量(μF)を測定して表に反映し、基準有効容量C0に対して電圧を印加した時に測定した有効容量C値の割合である容量減少率(%)を計算して共に反映した。より具体的に、容量減少率(%)は、基準有効容量に対する電圧印加時の有効容量の差異値を意味するもので、{(C0-C)/C0}×100%の値を意味することができる。
【0139】
0Vは、電圧を印加しなかった時の有効容量(μF)であり基準となる有効容量に該当し、電圧をそれぞれ1V及び3V印加した時に有効容量(μF)及び容量減少率(%)を測定及び計算して表に反映した。
【0140】
この時、基準有効容量に対して1Vの電圧を印加した時の容量減少率が36%以内であり、3Vの電圧を印加した時に容量減少率が70%以内の場合を容量減少率が改善したと評価し、下記の表において〇と記載した。一方、1V及び3V電圧印加時の容量減少率が二つのうち一つでも満していなかった場合、×と記載した。
【0141】
【0142】
【0143】
表1及び表2は、誘電体層内の誘電体結晶粒の数が1個~3個である場合に該当する。また、コアの大きさが30nm以上60nm以下に該当する。これは、誘電体結晶粒の大きさが大きいもので、粒成長が制御できなかったことを意味し、シェルの大きさが大きくて電圧印加時に有効容量減少率が改善できなかったと評価することができる。
【0144】
【0145】
【0146】
表3及び表4は、誘電体層内の誘電体結晶粒の数が4個である場合に該当する。一方、コアの大きさが30nm以上60nm以下に該当するサンプルチップ4-1~4-5は、1Vまたは3Vの電圧印加時に有効容量減少率が改善できないことを確認することができる。これは、コアの大きさが小さくシェルの大きさが大きくて電圧印加時に電界集中現象による有効容量の減少が大きくなったと予測することができる。
【0147】
一方、コアの大きさが80nm以上120nm以下に該当するサンプルチップ4-6~4-9及びサンプルチップ4-11~4-26は、容量減少率が改善したことを確認することができる。サンプルチップ4-10の場合、コアの大きさが90nmに該当し十分なコアの大きさを有することが確認されるが、(Dy+Tb)/Snの値が0.65に該当する。これは、希土類元素が相対的に足りなく粒成長が充分に制御できないことでシェル領域が大きくなって電界集中現象が発生し、容量減少率が劣ったと評価することができる。
【0148】
【0149】
【0150】
表5及び表6は、誘電体層内の誘電体結晶粒の数が5個である場合に該当する。一方、コアの大きさが80nm以上120nm以下に該当するサンプルチップ5-1~5-9及びサンプルチップ5-11~5-18は、1V及び3Vの電圧印加時に有効容量減少率が改善したことを確認することができる。
【0151】
一方、サンプルチップ5-10の場合、コアの大きさが90nmに該当し十分なコア大きさを有すると確認されるが、(Dy+Tb)/Snの値が1.62に該当する。これは、希土類元素が相対的に多く添加され、これにより、粒成長が充分に制御できなかったことでシェル領域が大きくなり電界集中現象が発生し、容量減少率が劣ったと評価することができる。
【0152】
【0153】
【0154】
表7及び表8は、誘電体層内の誘電体結晶粒の数が6個及び7個である場合に該当する。一方、コアの大きさが90nm以上110nm以下に該当するサンプルチップ6-1~6-3及びサンプルチップ7-1~7-2は、1V及び3Vの電圧印加時に有効容量減少率が改善したことを確認することができる。
【0155】
一方、サンプルチップ6-4の場合、コアの大きさが90nmに該当し十分なコア大きさを有すると確認されるが、(Dy+Tb)/Snの値が1.62に該当する。これは、希土類元素が相対的に多く添加され、これにより、粒成長が充分に制御できなかったことでシェル領域が大きくなり電界集中現象が発生し、容量減少率が劣ったと評価することができる。
【0156】
以下の表9は、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒の大きさ及び測定した誘電体結晶粒のコア大きさを測定したデータである。
【0157】
より具体的に、積層型電子部品の第3方向の1/2地点における第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)を基準として、容量形成部Ac中に隣接した内部電極間の誘電体層を含んで(1μm×1μm)大きさの画像イメージ内に存在する誘電体結晶粒及びコアの大きさを測定した。
【0158】
この時、誘電体結晶粒の大きさを測定した誘電体結晶粒とコアの大きさを測定した誘電体結晶粒は同一である。
【0159】
誘電体結晶粒の大きさ測定は、誘電体結晶粒の中心点を通る最小直線大きさ及び最大直線大きさを測定し、最小直線大きさ及び最大直線大きさを平均した値を誘電体結晶粒の大きさとして記載し、単位はnmである。
【0160】
コアの大きさ測定は、コアの中心点を通る最小直線大きさ及び最大直線大きさを測定し、最小直線大きさ及び最大直線大きさを平均した値をコアの大きさとして記載し、単位はnmである。
【0161】
コア分率(%)は、誘電体結晶粒の大きさに対するコアの大きさを百分率で表記したものである。
【0162】
【0163】
表9を参照すると、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒の平均大きさは178.4nmであり、標準偏差は41.3nmに該当し、コアの平均大きさは112.7nmであり、標準偏差は28.3nmに該当する。この時、コア分率の平均は64%に該当する。
【0164】
これは、誘電体結晶粒の大きさに対するコアの大きさ分率が平均的に64%であることを意味するもので、相対的にコアの大きさが大きいことが分かる。これから、有効容量の値が大きくなりながら電界集中現象による有効容量減少率が改善されることが予測することができる。
【0165】
本明細書で使用された「一実施形態」という表現は互いに同一の実施形態を意味せず、それぞれ互いに異なる固有な特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態で説明されていなくとも、他の一実施形態でその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連した説明と理解されることができる。
【0166】
本明細書で使用された用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。この時、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0167】
100:積層型電子部品
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
20:誘電体結晶粒
21:コア
22:シェル