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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086530
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062356
(22)【出願日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0176012
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジン ボク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン スー
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、チョーン セオプ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ジュン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、セウン ヨン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐湿信頼性及び耐剛性を向上させた積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、本体110上に配置される外部電極131、132とを含む。本体110は、本体110の内部に配置され、本体110の表面と接する浸透層140を含む。浸透層140に含まれる副成分元素の平均含量は、誘電体層111に含まれる副成分元素の平均含量より高く、本体110の平均表面粗度は0.01nm以上40nm以下であり、浸透層140は、本体110の表面から内部方向に100nm以内の領域である。副成分元素は、希土類元素又はマンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)及びジルコニウム(Zr)の中から選択された一つ以上を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極とを含み、
前記本体は、前記本体の内部に配置され前記本体の表面と接する浸透層を含み、
前記浸透層に含まれた副成分元素の平均含量は、前記誘電体層に含まれた副成分元素の平均含量より高く、
前記本体の平均表面粗度は、0.01nm以上40nm以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記浸透層は、前記本体の表面から内部方向に100nm以内の領域である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記浸透層は、前記外部電極と接しない領域に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記浸透層が配置された本体の表面において、希土類元素が存在する領域は95%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記本体は、前記誘電体層及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む容量形成部と、前記容量形成部の上部及び下部にそれぞれ配置されるカバー部とを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記本体は、第1方向に互いに向かい合う第1面及び第2面と、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面及び第4面と、前記第1面、前記第2面、前記第3面、及び前記第4面と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5面及び第6面とを含み、
前記本体の前記第5面及び前記第6面に配置されるサイドマージン部を含み、
前記浸透層は、前記サイドマージン部の表面と接し、前記サイドマージン部の内部にさらに配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記サイドマージン部の平均表面粗度は、0.01nm以上40nm以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記サイドマージン部に含まれる浸透層は、前記サイドマージン部の表面から内部方向に100nm以内の領域である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記浸透層に含まれた副成分元素は、前記誘電体層に含まれた副成分元素のうち一つ以上の副成分元素を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記副成分元素は、希土類元素を含み、
前記希土類元素は、ジスプロシウム(Dy)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pd)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、トリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテニウム(Lu)の中から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記副成分元素は、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)及びジルコニウム(Zr)の中から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記副成分元素は、前記本体の表面から内部方向に100nm以内の領域に存在する気孔のうち少なくとも一つ以上を封孔している、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記浸透層の気孔率は、前記誘電体層の気孔率より小さい、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記浸透層の緻密度は、前記誘電体層の緻密度より高い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記誘電体層の平均厚さをtdと、前記内部電極の平均厚さをteと定義する場合、
2×te<tdを満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記外部電極は、前記本体上に配置され前記内部電極と接続する第1導電性金属及びガラスを含む第1電極層と、前記第1電極層上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含む第2電極層とを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電または放電させる役割を達成するチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器など各種の電子機器が小型化、高出力化されることにより、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求も増大している。
【0004】
一方、積層型電子部品は、多様な悪条件の環境に晒される可能性があるが、この場合、外部からの水分浸透または衝撃により積層型電子部品に不良が発生するか予想寿命が短縮することがある。そこで、耐湿信頼性または耐剛性を向上させるために多様な研究が進行されている。
【0005】
特に、本体の表面は、微細な凹凸または気孔(pore)が存在し得るが、このような凹凸は、水分が浸透した後に残留する空間となり、乾燥が進行しない要因になるおそれがある。また、当該凹凸に外部衝撃が加えられる場合、クラック(crack)が発生するなどの問題点に晒されている。そこで、本体の表面に存在する凹凸または気孔は、積層型電子部品の耐湿信頼性または耐剛性を悪化させる原因として作用するおそれがある。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]韓国公開特許公報第10-2019-0116181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、積層型電子部品の表面粗度を改善し、気孔の数を最小化して耐湿信頼性及び耐剛性を向上させることである。
【0007】
但し、本発明が解決しようとする様々な課題は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極とを含み、上記本体は、上記本体の内部に配置され上記本体の表面と接する浸透層を含み、上記浸透層に含まれた副成分元素の平均含量は、上記誘電体層に含まれた副成分元素の平均含量より高いことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の耐湿信頼性及び耐剛性が向上することである。
【0010】
但し、本発明の多様かつ有益な長所と効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態である積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2図1の内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものである。
図3図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図4図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図5図3のP領域を拡大した拡大図を概略的に示したものである。
図6】比較例(a、b)及び実施例(c)の本体の表面粗度をPFM(Piezoresponse Force Microscope)装備で分析した画像イメージである。
図7】比較例(a、b)及び実施例(c)の本体の表面粗度をAFM(Atomic Force Microscope)装備で測定した表面粗度値である。
図8】比較例(a)及び実施例(b)の本体の表面をTEM-EDSを通じてDy元素をマッピング(mapping)した画像イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示若しくは簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0013】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面で示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のため任意に示したため、本発明が必ずしも図示されたものに限定されるものではない。また、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0014】
図面において、第1方向は積層方向または厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義されることができる。
【0015】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態である積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、図2は、図1の内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものであり、図3は、図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図4は、図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図5は、図3のP領域を拡大した拡大図を概略的に示したものである。
【0016】
以下、図1図5を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳しく説明する。但し、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を用いる多様な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0017】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132とを含み、上記本体110は、上記本体110の内部に配置され上記本体110の表面と接する浸透層140を含み、上記浸透層140に含まれた副成分元素の平均含量は、上記誘電体層111に含まれた副成分元素の平均含量より高く、上記本体の平均表面粗度は0.01nm以上40nm以下であることができる。
【0018】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0019】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに向かい合うように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0020】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0021】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面3及び第4面4、第1面1、第2面2、第3面3、及び第4面4と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5面5及び第6面6を有することができる。
【0022】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認し難いほど一体化されることができる。
【0023】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り、制限されない。一般的にペロブスカイト(ABO)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZr)O(0<y<1等が挙げられる。
【0024】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に本発明の目的に応じて多様なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0025】
誘電体層111に含まれる主成分である誘電体の特性を多方面で向上させるために、焼成前に誘電体粒子に多様な添加剤を添加して誘電体組成物を製造することができる。
【0026】
以下では、誘電体組成物に含まれることができる添加剤について説明し、添加剤は、誘電体組成物において副成分として存在することができる。
【0027】
ここで、主成分とは、他の成分に比べて相対的に多くの重量割合を占める成分を意味することができ、全体組成物または全体誘電体層の重量を基準として50重量%以上の成分を意味することができる。
【0028】
副成分とは、他の成分に比べて相対的に少ない重量割合を占める成分を意味することができ、全体組成物または全体誘電体層の重量を基準として50重量%未満の成分を意味することができる。
【0029】
a)第1副成分
原子価可変アクセプター(variable valence acceptor)元素の酸化物あるいは炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、上記原子価可変アクセプター元素は、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、コペルニシウム(Cn)及び亜鉛(Zn)の中から選択された一つ以上を含むことができる。
【0030】
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプター元素は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割をすることができる。
【0031】
b)第2副成分
誘電体組成物は、マグネシウム(Mg)の酸化物あるいは炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分をさらに含むことができる。
第2副成分のMgは、RC値を高める役割を果たすことができる。
【0032】
c)第3副成分
誘電体組成物は、希土類元素(rare earth element)の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、上記希土類元素は、ジスプロシウム(Dy)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pd)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、トリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテニウム(Lu)の中から選択された一つ以上を含むことができる。
第3副成分に含まれた希土類元素は、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0033】
d)第4副成分
誘電体組成物は、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)のうち一つ以上の元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含むことができる。
第4副成分に含まれるBa及びCaは、誘電率とRC値を高める役割を果たすことができる。
【0034】
e)第5副成分
誘電体組成物は、アルミニウム(Al)及び珪素(Si)のうち一つ以上の酸化物及び炭酸塩及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第5副成分をさらに含むことができる。
第5副成分は、焼結温度を低くする液相形成元素であり、液相焼結を通じて焼結性を制御することで、緻密度及び耐湿信頼性の向上に影響を与えることができる。
【0035】
誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。
【0036】
但し、積層型電子部品の高容量化を目的とする場合、誘電体層111の厚さは3.0μm以下であることができるが、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは1.0μm以下であることができ、好ましくは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0037】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0038】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向のサイズを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向平均サイズを意味することができる。
【0039】
誘電体層111の第1方向平均サイズは、本体110の第1方向断面及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて一つの誘電体層111を第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向平均サイズをさらに一般化することができる。
【0040】
一方、積層型電子部品は、多様な悪条件の環境に晒される可能性があるが、この場合、外部からの水分浸透または衝撃により積層型電子部品に不良が発生するか予想寿命が短縮し得る。そこで、耐湿信頼性または耐剛性を向上させるために多様な研究が進行されている。
【0041】
特に、本体の表面には、微細な凹凸または気孔(pore)が存在し得るが、このような凹凸は、水分が浸透した後に残留する空間となり、乾燥が進行しない要因になるおそれがある。また、当該凹凸に外部衝撃が加えられる場合、クラック(crack)が発生するなどの問題点に晒されている。そこで、本体の表面に存在する凹凸または気孔は、積層型電子部品の耐湿信頼性または耐剛性を悪化させる原因として作用するおそれがある。
【0042】
そこで、本発明の一実施形態は、本体110の表面に浸透層140を形成及び配置することで、耐湿信頼性または耐剛性を向上させることができるという効果がある。
【0043】
例えば、焼成工程が終わった積層型電子部品の本体表面に液相で存在する副成分添加剤の塩(salt)を多様な方法で塗布した後、熱処理を進行して凹凸及び/または気孔を封孔(sealing)することで、表面粗度及び耐湿信頼性を改善することができる。但し、特にこれに制限されるものではなく、外部電極を形成する前に本体の表面全体に液相添加剤を塗布することができる。
【0044】
好ましくは、焼成工程後に本体の表面に液相添加剤を塗布することが積層型電子部品の電気的特性に影響を与えず物理的に凹凸を埋めることで、水分の浸透経路を遮断し、添加剤が塗布された領域の剛性を増加させることができる。
【0045】
液相添加剤を塗布する方法としては、液相添加剤が盛られた貯水槽溶液の上層部に一定深さほど積層型電子部品が濡れるようにディッピング(dipping)してコーティングすることができる。または、積層型電子部品上に液相添加剤を水滴(droplet)方式で塗布して濡れ性を付与した後、これを広がせて塗布することができる。また、積層型電子部品上にスプレイ方法で液相添加剤を吹き付けて塗布することができ、この場合、塗布しようとする領域上に塗布領域を除いてマスキング(masking)を通じて塗布面積を制御することができる。但し、特にこれに制限されるものではない。
【0046】
浸透性、濡れ性及び広がり性に優れた液相添加剤を塗布する場合、本体表面に存在する気孔及び凹凸を埋めるのに非常に容易かつ塗布の均質性が高く耐湿信頼性をより向上させることができる。
【0047】
また、液相(liquid-phase)であるため、本体の表面に塗布した時、本体の外表面に層(layer)形状で存在するものではなく本体の内部に染みこむことができるため、積層型電子部品の厚さを大きく変化させず超小型製品で体積当たり容量効率により優れることができる。
【0048】
この場合、塗布した液相添加剤は、後述する浸透層140になることができる。
【0049】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され本体110の表面と接する浸透層140を含むことができる。換言すると、浸透層140は、本体110の内表面に配置されることができる。
【0050】
浸透層140は、本体110の表面から内部方向に100nm以内の領域を意味することができ、浸透層140は、誘電体層111に含まれる副成分元素と同一の副成分元素を少なくとも一つ以上含むことができる。
【0051】
この場合、浸透層140に含まれた副成分元素の平均含量は、容量形成部Acの誘電体層111に含まれた副成分元素の平均含量より高いことができる。
【0052】
即ち、本体110の表面から内部方向に100nm以内の領域は、上記副成分元素の含量が高いことができる。これは、本体110の第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)をSEM-EDSまたはTEM-EDSで分析して、マッピングしようとする副成分元素をターゲティングして確認することができる。
【0053】
また、浸透層140に含まれた副成分元素は、本体110の表面から内部方向に100nm以内の領域に存在する気孔のうち少なくとも一つ以上を封孔していてよい。これにより、浸透層140の気孔率は、誘電体層111の気孔率より小さくてよい。気孔は、本体の第1方向断面及び第2方向断面をSEMを通じて観察及び測定することができる。
【0054】
また、浸透層140の緻密度は、誘電体層110の緻密度より高いことができる。
【0055】
これは、液相添加剤を本体表面に塗布して本体内部に浸透したことによる結果であり、表面粗度または気孔を副成分元素が埋めるため緻密度及び耐湿信頼性により優れることができる。
【0056】
本発明の一実施形態による積層型電子部品において、浸透層140は、本体110の中で、外部電極131、132と接しない領域に配置されることができる。
【0057】
例えば、本体110の第1面、第2面、第5面及び第6面の少なくとも一面に配置されることができる。
【0058】
これは、前述したように、焼成後の積層型電子部品において外部に露出した本体の表面に液相添加剤を塗布して浸透させたことによる製造工程上の差異であるだけで、特にこれに制限されるものではない。
【0059】
浸透層140に含まれる副成分元素は、前述した誘電体層111に含まれる副成分元素のうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0060】
誘電体層111に含まれた副成分元素と同一または類似した成分を浸透層140に含ませることで、既存誘電体層の構成成分との相溶性及び結合性に優れることができ、異常反応による副効果を容易に制御することができるため、耐湿信頼性及び耐剛性をより容易に向上させることができる。
【0061】
本発明の一実施形態において、本体110の平均表面粗度Raは、0.01nm以上40nm以下であることができる。
【0062】
本体110の平均表面粗度Raが0.01nm以上40nm以下を満たすことで、耐湿信頼性が向上することができ、耐剛性に優れクラック発生を抑制することができる。
【0063】
本体110の平均表面粗度Raの下限値は特に制限されるものではなく、例えば、0.01nm以上であれば十分である。但し、本体110の平均表面粗度Raが40nm超の場合、外部からの水分浸透が容易になり耐湿信頼性が劣る可能性があり、外部からの衝撃または環境などによってクラックが発生する恐れがある。
【0064】
表面粗度とは、対象物の表面に形成された微細な凹凸の程度を称するもので、表面粗さ(roughness)とも言う。
【0065】
表面粗度は、加工に使用される工具、加工法の適否、表面に掻いた傷、錆、エッチング(etching)などにより生じるもので、粗さの程度を表すにあたって表面をそれと直角である平面に切断し、その断面(cross-section)を見ると高低を有するが、最も低い所から最も高い所までの高さを最大表面粗度と定義することができる。
【0066】
例えば、図5を参照して説明すると、本体110の表面粗度は、本体110の第1方向断面及び第2方向断面をSEMを通じて観察した時、中心線から高低が存在するが、これを表面粗度といえる。
【0067】
平均表面粗度Raとは、平均表面粗さともいい、粗度測定装置を通じて求めた粗度曲線において、その平均線の方向に基準長さだけ抽出した後、該抽出部分の平均線方向にX軸を、縦倍率方向にY軸を取り、粗度曲線対応式f(x)を求めた後、下記数式1により求めた値を意味することができ、単位はマイクロメートル(μm)またはナノメートル(nm)であることができる。
【0068】
【数1】
【0069】
本発明の一実施形態の本体110の表面を概略的に示した図5を参照して説明すると、表面粗度の仮想の中心線Rcを基準として平均表面粗度を求める他の方法としては、表面粗度の仮想の中心線Rcを基準としてそれぞれの距離(例えば、r、r、r、…r)を測定した後、下記数式2のように各距離の平均値を求めて算出された値で平均表面粗度を算出することができる。
【0070】
【数2】
【0071】
また、本体110の平均表面粗度Raは、PFM(Piezoresponse Force Microscope)またはAFM(Atomic Force Microscope)装置を利用して測定することができる。
【0072】
PFMは、強誘電体物質の表面粗度を測定する時に利用することができ、局部的な領域で表れる圧電(piezoelectric)特性を利用して表面粗度を測定することができる分析方法である。
【0073】
より具体的に、探針(cantilever)と誘電体試料表面を接近させ、AC電場を加えると、誘電体の寸法(dimension)変化が引き起こされて振動が発生し得るが、このような振動を探知して表面粗度を測定することができる。PFM技術は、ナノスケールで強誘電性を測定することができるため、微細構造に対する空間的な定性/定量分析が可能である。また、PFM imagingを利用して強誘電物質の分極状態及び分布を定性/定量的に分析することができる。
【0074】
AFMは、探針と誘電体試料表面の原子の間に作用するファンデルワールス力(van der Waals force)を利用して試料表面の粗さとそれによるイメージが得られる分析方法である。これは、表面粗度の定量的な測定が可能である。特に微細な探針で表面を走査してナノサイズの物質の表面を観察し粒子のサイズだけでなく表面の粗度(roughness)が定量的に分かり、前述した応用モードであるPFMを利用して表面形状の測定と物性の測定を同時に進行することができる。
【0075】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層されることができる。
【0076】
内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに向い合うように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0077】
より具体的に、第1内部電極121は、第4面4と離隔し第3面3を通じて露出することができ、第2内部電極122は、第3面3と離隔し第4面4を通じて露出することができる。本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置され第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置され第2内部電極122と連結されることができる。
【0078】
すなわち、第1内部電極121は、第2外部電極132とは連結されず第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は、第1外部電極131とは連結されず第2外部電極132と連結されることができる。この場合、第1内部電極121及び第2内部電極122は、その中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0079】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
【0080】
内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0081】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0082】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。
【0083】
但し、積層型電子部品の高容量化を目的とする場合、1μm以下であることができるが、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは1.0μm以下であることができ、好ましくは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0084】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向平均サイズを意味することができる。
【0085】
内部電極121、122の第1方向平均サイズは、本体110の第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極121、122を第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であることができる。上記等間隔の30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向平均サイズをさらに一般化することができる。
【0086】
一方、本発明の一実施形態において、誘電体層111の厚さtdと内部電極121、122の厚さteは、td>2×teを満たすことができる。
【0087】
換言すると、誘電体層111の厚さtdは、内部電極121、122の厚さteの2倍よりさらに大きいことができる。
【0088】
一般的に高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧(BDV:Breakdown Voltage)の低下による信頼性問題が主要なイシューである。
【0089】
そこで、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防ぐために、誘電体層111の厚さtdを内部電極121、122の厚さteの2倍よりさらに大きくすることで、内部電極間距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0090】
誘電体層111の厚さtdが内部電極121、122厚さteの2倍以下である場合は、内部電極間距離である誘電体層の厚さが薄くて絶縁破壊電圧が低下し得る。
【0091】
高電圧電子部品において、内部電極の厚さteは1.0μm以下であることができ、誘電体層の厚さtdは3.0μm以下であることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0092】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0093】
より具体的に、容量形成部Acの第1方向上部に配置される上部カバー部112及び容量形成部Acの第1方向下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0094】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層111または2個以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0095】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。即ち、上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0096】
一方、カバー部112、113の厚さtcは、特に限定する必要はない。
【0097】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましく20μm以下であることができる。
【0098】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向平均サイズを意味することができる。
【0099】
カバー部112、113の第1方向平均サイズは、本体110の第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいてカバー部の第2方向に等間隔の30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であることができる。
【0100】
一方、積層型電子部品100は、本体110の第3方向両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0101】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び本体110の第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0102】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1方向断面及び第3方向断面(cross-section)を基準として、第1内部電極121及び第2内部電極122の第3方向両端面(end-surface)と本体110の境界面間の領域を意味することができる。
【0103】
サイドマージン部114、115は、容量形成部Acに適用されるセラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される所を除いて導電性ペーストを塗布し内部電極121、122を形成して、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層111または2個以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向両端面(end-surface)上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0104】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0105】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、セラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0106】
本発明の一実施形態において、サイドマージン部114、115は、サイドマージン部114、115の表面と接し、サイドマージン部114、115の内部にさらに配置される浸透層140を含むことができる。
【0107】
すなわち、本体110の内表面に配置される浸透層140とサイドマージン部114、115の内表面に配置される浸透層140は、同一であることができる。
【0108】
そこで、前述した本体110の浸透層140と同一の内容は重複するため、省略する。
【0109】
より具体的に、第1サイドマージン部114は、第1サイドマージン部114の表面から内部方向(第2方向)に100nm以内の領域に浸透層140を含むことができ、この場合、浸透層140は、誘電体層111の副成分元素と同一の副成分元素を含むことができ、第1サイドマージン部114の浸透層140に含まれた副成分元素の平均含量は、誘電体層111に含まれた副成分元素の平均含量より高いことができる。また、第1サイドマージン部114の平均表面粗度Raは、0.01nm以上40nm以下であることができ、上記数値範囲を満たす場合、積層型電子部品の耐湿信頼性により優れることができる。
【0110】
そして、第2サイドマージン部115は、第2サイドマージン部115の表面から内部方向(第2方向)に100nm以内の領域に浸透層140を含むことができ、この場合、浸透層140は、誘電体層111の副成分元素と同一の副成分元素を含むことができ、第2サイドマージン部114に含まれた浸透層140に含まれた副成分元素の平均含量は、誘電体層111に含まれた副成分元素の平均含量より高くてよい。また、第2サイドマージン部115の平均表面粗度Raは、0.01nm以上40nm以下であることができ、上記数値範囲を満たす場合、積層型電子部品の耐湿信頼性により優れることができる。
【0111】
一方、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは、特に限定する必要はない。
【0112】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましく20μm以下であることができる。
【0113】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向平均サイズを意味することができる。
【0114】
サイドマージン部114、115の第3方向平均サイズは、本体110の第1方向断面及び第3方向断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、サイドマージン部の第1方向に等間隔の30個の地点で第3方向のサイズを測定した平均値であることができる。
【0115】
本発明の一実施形態においては、セラミック電子部品100が2個の外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数及び形状などは、内部電極121、122の形態またはその他の目的に応じて変わることができる。
【0116】
外部電極131、132は、本体110上に配置され内部電極121、122と連結されることができる。
【0117】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は、本体の第3面3に配置され第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は、本体の第4面4に配置され第2内部電極122と連結されることができる。
【0118】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用しても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0119】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、131b、132b及び電極層131a、132a、131b、132b上に配置されるめっき層131c、132cを含むことができる。
【0120】
電極層131a、132a、131b、132bについてより具体的に例を挙げると、電極層131a、132a、131b、132bは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0121】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であることができる。
【0122】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0123】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属として電気伝導性に優れる材料を使用することができ、例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群より選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれに限定されない。
【0124】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a及び上記第1電極層131a、132a上に配置され導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0125】
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことにより本体110との接合性を向上させる役割を果たすことができ、第2電極層131b、132bは、樹脂を含むことにより曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0126】
第1電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群より選択された一つ以上を含むことができる。第1電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することで形成されることができる。
【0127】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0128】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群より選択された一つ以上を含むことができる。
【0129】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1つ以上を含むことができる。すなわち、導電性金属は、フレーク状粒子のみからなるか、球状粒子のみからなることができ、フレーク状粒子と球状粒子が混合した形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ割合(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子は、平たく長い形態を有する粒子を意味し、特に制限されるものではないが、例えば長軸と短軸の長さ割合(長軸/短軸)が1.95以上であることができる。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、セラミック電子部品の第3方向の1/2地点で切断した第1方向断面及び第2方向断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得たイメージから測定することができる。
【0130】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たす。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば特に制限されず、例えばエポキシ系樹脂を含むことができる。
【0131】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を取り囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0132】
この場合、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融され、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を取り囲むようになる。この場合、金属間化合物は、好ましく300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0133】
例えば、213~220℃の融点を有するスズ(Sn)を含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融され、溶融されたSnがAg、NiまたはCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により濡らし、Ag、NiまたはCu金属粒子の一部と反応してAgSn、NiSn、CuSn、CuSnなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に参加しないAg、NiまたはCuは、金属粒子形態として残る。
【0134】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、AgSn、NiSn、CuSn及びCuSnのうち一つ以上を含むことができる。
【0135】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させる役割を果たす。
【0136】
めっき層131c、132cの種類は特に限定せず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであることができ、複数の層で形成されることができる。
【0137】
めっき層131c、132cについてより具体的に例を挙げると、めっき層131c、132cは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a、131b、132b上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であることができる。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0138】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明するが、これは発明を具体的に理解するためのもので、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0139】
(試験例)
以下の表1は、比較例及び実施例のサンプルチップに対して耐湿信頼性の評価を進行したデータである。
【0140】
比較例1は、如何なる添加剤も本体の表面に形成していないサンプルチップに該当し、比較例2は、Dy酸化物浸透層を本体の表面に形成させたサンプルチップに該当し、実施例は、Dy液相添加剤を本体の表面に塗布して、浸透層を形成させたサンプルチップに該当する。
【0141】
比較例1、比較例2及び実施例のサンプルをそれぞれ40個ずつ製造して、1100℃、1150℃、1200℃の温度に焼成してサンプルチップを製作した。
【0142】
耐湿信頼性の評価は、温度条件85℃、相対湿度85%、電圧条件1.5Vrで1時間の間進行した。
【0143】
この場合、それぞれの40個のサンプルチップの中で、初期絶縁抵抗(IR)に比べて絶縁抵抗(IR)の短絡が1つでも発生した場合、×と記載し、絶縁抵抗の短絡が発生しない(0個)場合、〇と記載した。
【0144】
【表1】
【0145】
本体の表面に如何なる添加剤も塗布していない比較例1-1~比較例1-3の場合、焼成温度と関係なく耐湿信頼性の評価で劣った結果を表し、本体の表面にDy酸化物浸透層が形成された比較例2-1~比較例2-3の場合、焼成温度と関係なく耐湿信頼性の評価で劣った結果を表した。一方、本体の表面にDy液相添加剤を塗布して浸透層を形成した実施例1-1~実施例1-3の場合、焼成温度と関係なく耐湿信頼性の評価時に絶縁抵抗の低下が発生しないことを確認することができ、これから耐湿信頼性が向上したことが分かる。
【0146】
以下では、比較例及び実施例に関する図6図8を参照して説明する。
【0147】
図6は、積層型電子部品の比較例及び実施例を1100℃の温度で焼成した本体の表面をPFM分析を通じて分析した画像イメージであり、より具体的に、図6の(a)は、本体の表面に添加剤を塗布していない比較例3であり、図6の(b)は、本体の表面にDyの酸化物浸透層を塗布した比較例4であり、図6の(c)は、本体の表面にDy液相添加剤を塗布して浸透層が形成された実施例2である。
【0148】
基準となる中心線(0nm)から-150nm~+150nm深さの表面粗度を表わすレファレンスイメージを参照した時、比較例3の図6の(a)及び比較例4の図6の(b)が実施例2の図6の(c)の表面粗度より相対的に大きいことを確認することができる。すなわち、図6の(a)及び図6の(b)において、-150nmまたは+150nmの明暗に近い領域が多いことを確認することができ、実施例の図6の(c)は、中心線(0nm)の明暗に近い領域が多く分布していることを確認することができる。
【0149】
図7は、積層型電子部品の比較例及び実施例を1050℃、1100℃、1150℃、1200℃の温度で焼成した本体の表面をAFM分析を通じて定量的に測定した表面粗度をグラフで示したものである。棒グラフは平均表面粗度を意味し、「I」直線は表面粗度の散布を意味する。
【0150】
より具体的に、図7の(a)は、本体の表面に添加剤を塗布していない比較例5-1(1050℃)、比較例5-2(1100℃)、比較例5-3(1150℃)及び比較例5-4(1200℃)を示し、図7の(b)は、本体の表面にDyの酸化物浸透層を塗布した比較例6-1~比較例6-4(比較例5-1~比較例5-4の温度と同一)であり、図7の(c)は、本体の表面にDy液相添加剤を塗布して浸透層を形成した実施例3-1~実施例3-4(比較例5-1~比較例5-4の温度と同一)である。
【0151】
比較例5-1~比較例5-4及び比較例6-1~比較例6-4の場合、焼成温度によって平均表面粗度及び表面粗度の散布において多少差異があり得るが、実施例3-1~実施例3-4に比べて表面粗度値が大きいことを確認することができる。
【0152】
図7の(a)及び図7の(b)を確認してみると、本体の表面から内部方向に100nm以内の領域の表面粗度のうち、平均表面粗度が40nm超であることが確認可能なことに対し、図7の(c)を確認してみると、本体の表面から内部方向に100nm以内の領域の表面粗度のうち、平均表面粗度が40nm以下であることを確認することができる。
【0153】
これから、液相添加剤の塗布によって形成された浸透層により表面粗度が改善されて微細凹凸がなだらかであるか深くないことが分かり、耐湿信頼性及び耐剛性が向上する効果があることを予測することができる。
【0154】
図8は、積層型電子部品の比較例及び実施例の本体の表面をTEM-EDS(Transmission Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectrometer)を通じてDy元素をマッピング(mapping)した画像イメージである。
【0155】
より具体的に、図8の(a)は、添加剤が塗布されていない本体の表面をDy元素でマッピングした比較例7であり、図8の(a)は、液相添加剤を塗布して浸透層が形成された本体の表面をDy元素でマッピングした実施例4である。
【0156】
比較例7である図8の(a)を確認してみると、誘電体に添加された副成分であるDy副成分によってマッピング時にDyが検出されるが、部分的にDyがマッピングされていない領域(黒色)が存在することを確認することができ、これからDyの緻密度が相対的に低いことを確認することができる。
【0157】
一方、実施例4である図8の(b)を確認してみると、誘電体層に添加されたDy副成分外に液相添加剤の塗布によって形成された浸透層の影響により、部分的にDyがマッピングされていない領域がほぼないかまたはないことで確認される。さらに詳しくは、8μm×8μmの大きさのTEM-EDS画像イメージにおいてDyがマッピングされる領域が90%以上であることができ、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上であることが分かる。これから、Dy浸透層が形成され、耐湿信頼性が向上することを予測することができる。
【0158】
以上で本発明の実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定しようとする。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0159】
本明細書で使用された「一実施形態」という表現は互いに同一の実施形態を意味せず、それぞれ互いに異なる固有な特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態で説明されていなくとも、他の一実施形態でその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連した説明と理解されることができる。
【0160】
本明細書で使用された用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。この場合、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0161】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
140:浸透層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8