(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086534
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】農地集約システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240620BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080941
(22)【出願日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2022200931
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】506003015
【氏名又は名称】学校法人修道学園
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】黒阪 健吾
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】農家から耕作意向情報を効率的に収集し、これらの耕作意向情報を用いることで、農家が納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる農地集約システムを提供すること。
【解決手段】農地集約システム10は、複数の農家間で点在する利用可能な農地を交換して農地を集約するシステムである。農地集約システム10は、ネットワーク11に接続された入出力部20と、記録処理部30と、解析部31とを備えている。入出力部は、交換前の農地情報を表示し、耕作意向情報50を入力して送信するとともに交換後の農地情報60を表示する。記録処理部40は、交換前の農地情報40が登録され、農家が耕作したくない農地の情報を含む耕作意向情報50を受信して記録する。解析部31は、交換前の農地情報40と耕作意向情報50からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し交換後の農地情報60を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の農家間で点在する利用可能な農地を交換して利用可能な農地を集約する農地集約システムであって、
インターネットによるネットワークに接続された入出力部と、前記ネットワークに接続された記録処理部と、前記記録処理部に接続された解析部とを備え、
前記入出力部は、交換前の農地情報を表示し、前記農地について所定項目の耕作意向情報を入力して送信するとともに交換後の農地情報を表示するものであり、
前記記録処理部は、交換前の前記農地情報が登録され、前記入出力部から送信された前記耕作意向情報を受信して記録し、演算処理された交換後の前記農地情報を前記入出力部へ送信するものであり、
前記解析部は、交換前の前記農地情報と前記耕作意向情報からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し交換後の前記農地情報を出力するものであり、
前記耕作意向情報は、前記農家が耕作したくない農地の情報を含むことを特徴とする農地集約システム。
【請求項2】
請求項1記載の農地集約システムであって、
前記耕作意向情報は、前記農家が耕作したい農地の情報を含み、
前記解析部は、前記耕作したい農地の情報と前記耕作したくない農地の情報とを含む前記耕作意向情報と交換前の前記農地情報から交換後の前記農地情報を出力することを特徴とする農地集約システム。
【請求項3】
請求項2記載の農地集約システムであって、
前記耕作したい農地の情報は、自分が耕作している農地と他人が耕作している農地の中から選択可能であり、
前記耕作したくない農地の情報は、前記自分が耕作している農地の中から選択可能であることを特徴とする農地集約システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の農地集約システムであって、
前記入出力部では、前記記録処理部から交換前の前記農地情報を受信し、受信した交換前の前記農地情報から前記耕作したい農地の情報と前記耕作したくない農地の情報を選択することで前記耕作意向情報とすることを特徴とする農地集約システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の農地集約システムであって、
交換前の前記農地情報は、農地ID、耕作者名、所有者名、農地地番、農地面積及び区画の情報を含むことを特徴とする農地集約システム。
【請求項6】
請求項5記載の農地集約システムであって、
前記入出力部は、モバイル端末であり、前記農地情報が地図表記の中で表示され、前記耕作意向情報は前記地図上の前記区画を選択することで作成されることを特徴とする農地集約システム
【請求項7】
請求項1又は請求項2記載の農地集約システムであって、
前記記録処理部は、前記耕作したい農地の情報と前記耕作したくない農地の情報をデータベース化して出力可能であることを特徴とする農地集約システム。
【請求項8】
請求項1又は請求項2記載の農地集約システムであって、
前記解析部は、農家毎に交換前における前記農地全体の地理的中心から前記農地までの距離と、交換後における前記農地全体の地理的中心から前記各農地までの距離の合計を演算し、その変化率を出力可能であることを特徴とする農地集約システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の農家間で点在する利用可能な農地を交換して利用可能な農地を集約する農地集約システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の日本農業の最大の問題点の1つは耕地の分散であり、農家の作業時間の10~15%は移動時間という報告もある(梅本雅 (2010) 「圃場分散に伴う団地間・圃場間移動の実態」関東東海農業経営研究, 100,55-58)。このような耕地分散の問題に対して、農林水産省は「人・農地プラン」の策定を政策の柱とし、地域ごとに生産の担い手となる農家を定め、担い手への農地の集積および農地の面的な集約を進めている。プランの策定にあたっては、アンケートによる大規模な営農意向調査や、複数回の話し合いを行うことが提案されている。
【0003】
しかし、現在実施されている一般的なアンケートは離農や規模の縮小を予定している農家を明らかにするものが多く、農地の供給に関する情報を偏って収集しているといえる。発明者は、農家が納得できるプランを策定するためには、担い手となる農家が新たに耕作したいと思う、農地の需要に関する情報も収集する必要があると考えた。ただし、農家がどの農地を新たに耕作したと思うかは、現地を見ないと判断が難しく、紙によるアンケートでは回答が難しい。
【0004】
また、現在は関係者が納得できるプランを策定する方法として、ワークショップ形式の話し合いを開催して関係者から広く意見を集めることが推奨されている。しかしながら、どのような工夫をしても話し合いが利害対立に繋がる可能性は高く、現在のプランの策定方法は関係者に時間的・精神的な負担を強いるものになりかねない。そのため、できるだけ少ない回数の話し合いで合意に至るためにも、関係者が最初からある程度納得できる、農地集約案のたたき台を用意する必要性がある。このような、農地や土地の集約に関し、土地のマッチングを行う技術が知られている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1の土地のマッチングを行う技術において、土地検索を行う情報処理装置は、不動産登記簿データの地域ar1に含まれる土地の重心点にもとづき農地r10が有するベクトル群vg1を算出する。情報処理装置は、農地管理データの地域ar2に含まれる土地の重心点にもとづき農地r20、r30が有するベクトル群vg2、vg3を算出する。情報処理装置は、農地管理データの地域ar2のベクトル群vg2、vg3のうちで、ベクトル群vg1に類似するベクトル群vg2を有する農地を、農地管理データの地域ar2から検索する。この場合、情報処理装置は、不動産登記簿データのベクトル群vg1に類似するベクトル群として、農地管理データのベクトル群vg2を認識し、ベクトル群vg2を有する農地r20を検索する。
【0006】
しかし、特許文献1の技術は、測位基準の異なる地図上の土地のマッチングを行うものであり、農家から耕作意向を収集して農家が納得できる農地集約案を作成することができない。
【0007】
ところで、農地交換における問題点として、収集する情報が農地の供給に関するものに偏っている点、農地集約案が農家のインセンティブを考慮していない点、の2点が挙げられる。
【0008】
収集する情報が農地の供給に関するものに偏っている点については、農地集約をマッチングの問題ととらえた場合、農地の供給(耕作したくない農地)に関する情報と同じくらい、農地の需要(耕作したい農地)に関する情報は重要である。しかしながら、現在営農意向調査として各市町村で実施されているアンケートの多くが、離農もしくは耕作地の縮小を予定している農家の情報収集に偏っており、担い手農家による耕作したい土地に関する情報を十分に収集できていない。また、担い手農家であっても耕作に不便な農地を手放したい事態は十分考えられるが、現在のアンケートではそのような意向情報が取りこぼされている。このようなアンケートの不備の一因として、現在自身が耕作していない土地について、新たに耕作するか否かを判断するには、現地の様子を見る必要があるという問題が挙げられる。また、現地で目の前の農地が耕作に適すると判断できたとしても、農地の範囲や土地台帳上のどの地番と対応しているのかを調べるのは容易ではない。また、仮にそれらが分かったとしても、紙とペンによるアンケートでは正確に回答することは難しく、さらに事業実施者が集計する手間も膨大になることが予想される。
【0009】
また、農地集約案が農家のインセンティブを考慮していない点については、農地集約事業を行う際に重要なことは、最も効率よく耕作できる集約案を提示するというよりは、むしろ関係者全員が納得できる集約案を提示することにある。そのため、話し合いにおいて関係者間の相互理解や相互信頼を育むべく、様々なファシリテーションの技術が提唱されている。しかし、話し合いにかかる時間的・精神的なコスト自体が無視できないものであるため、関係者がある程度納得できる集約案を、話し合いのたたき台としての予め用意する必要がある。このような要望に答えるものとして国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した集約支援ソフト「QFarmLandManager」と呼ばれるものがあり、担い手が最短距離で耕作できる農地の集約案を自動で計算するものである。しかし、「QFarmLandManager」が提案する集約案には農家のインセンティブが考慮されていないため、これを話し合いのたたき台とした場合には、依然として多くの話し合いが必要となることが考えられる。
【0010】
一方で、経済学では伝統的に経済主体のインセンティブを重視しており、特に近年のマッチング理論の発展によると、市場取引が難しい財であっても効率的に交換することができる。昨今、農家のインセンティブを考慮した農地集約の試みとしてのシミュレーション研究がなされているが、それらのアルゴリズムは耐戦略性(偽りの選好を表明しないという理論的な性質)が満たされないため、実際に農家の耕作意向情報を収集する際には注意が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上の点に鑑み、農家から耕作意向情報を効率的に収集し、これらの耕作意向情報を用いることで、農家が納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる農地集約システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施例によれば、複数の農家間で点在する利用可能な農地を交換して利用可能な農地を集約する農地集約システムであって、
インターネットによるネットワークに接続された入出力部と、前記ネットワークに接続された記録処理部と、前記記録処理部に接続された解析部とを備え、
前記入出力部は、交換前の農地情報を表示し、前記農地について所定項目の耕作意向情報を入力して送信するとともに交換後の農地情報を表示するものであり、
前記記録処理部は、交換前の前記農地情報が登録され、前記入出力部から送信された前記耕作意向情報を受信して記録し、演算処理された交換後の前記農地情報を前記入出力部へ送信するものであり、
前記解析部は、交換前の前記農地情報と前記耕作意向情報からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し交換後の前記農地情報を出力するものであり、
前記耕作意向情報は、前記農家が耕作したくない農地の情報を含むことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、農地集約システムは、インターネットによるネットワークに接続された入出力部と、記録処理部と、解析部とを備えている。入出力部は、交換前の農地情報を表示し、農地について所定項目の耕作意向情報を入力して送信するとともに交換後の農地情報を表示するものであり、記録処理部は、交換前の農地情報が登録され、入出力部から送信された耕作意向情報を受信して記録し、演算処理された交換後の農地情報を前記入出力部へ送信するものである。解析部は、交換前の農地情報と、農家が耕作したくない農地の情報を含む耕作意向情報からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し交換後の農地情報を出力するもので、農家から耕作意向情報を効率的に収集し、これらの耕作意向情報を用いることで、農家が納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる。
【0015】
好ましくは、前記耕作意向情報は、前記農家が耕作したい農地の情報を含み、
前記解析部は、前記耕作したい農地の情報と前記耕作したくない農地の情報とを含む前記耕作意向情報と交換前の前記農地情報から交換後の前記農地情報を出力する。
【0016】
かかる構成によれば、耕作意向情報は、農家が耕作したい農地の情報を含む。解析部は、耕作したい農地の情報と耕作したくない農地の情報とを含む耕作意向情報から交換後の農地情報を出力するので、農家から耕作意向情報を効率的且つ正確に収集し、これらの耕作意向情報を用いることで、農家がより納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる。
【0017】
好ましくは、前記耕作したい農地の情報は、自分が耕作している農地と他人が耕作している農地の中から選択可能であり、
前記耕作したくない農地の情報は、前記自分が耕作している農地の中から選択可能である。
【0018】
現在、営農意向調査として各市町村で実施されているアンケートの多くが、離農もしくは耕作地の縮小を予定している農家の情報収集に偏っており、担い手農家による耕作したい土地に関する情報を十分に収集できておらず、特に耕作したくない土地の情報を収集できていない。この点、本発明の構成によれば、耕作したい農地の情報は、自分が耕作している農地と他人が耕作している農地の中から選択可能であり、耕作したくない農地の情報は、自分が耕作している農地の中から選択可能であるので、農家からの情報収集の偏りを低減し、農家から耕作意向情報をより効率的且つ正確に収集し、これらの耕作意向情報を用いることで、農家がより納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる。
【0019】
好ましくは、前記入出力部では、前記記録処理部から交換前の前記農地情報を受信し、受信した交換前の前記農地情報から前記耕作したい農地の情報と前記耕作したくない農地の情報を選択することで前記耕作意向情報とする。
【0020】
かかる構成によれば、入出力部では、記録処理部から交換前の農地情報を受信し、受信した交換前の農地情報から耕作したい農地の情報と耕作したくない農地の情報を選択するので、農地情報を正確に把握したうえで選択形式により耕作したい農地の情報と耕作したくない農地の情報を決めるので、農家の選択作業を簡単にし、農家から耕作意向情報をより効率的且つ正確に収集することができる。
【0021】
好ましくは、交換前の前記農地情報は、農地ID、耕作者名、所有者名、農地地番、農地面積及び区画の情報を含む。
【0022】
かかる構成によれば、交換前の農地情報は、農地ID、耕作者名、所有者名、農地地番、農地面積及び区画の情報を含むので、農家は複合的情報を考慮したうえで耕作したい農地の情報と耕作したくない農地の情報を決めることができ、農家から耕作意向情報をより効率的且つ正確に収集することができる。
【0023】
好ましくは、前記入出力部は、モバイル端末であり、前記農地情報が地図表記の中で表示され、前記耕作意向情報は前記地図上の前記区画を選択することで作成される。
【0024】
かかる構成によれば、入出力部は、モバイル端末であり持ち運びが容易であるので、モバイル端末を現地に持ち運び、現地で耕作したい農地の情報と耕作したくない農地の情報を確認しながら選択することができる。さらに、農地情報が地図表記の中で表示され、耕作意向情報は地図上の区画から選択するので、視覚的に操作することができ、より簡単に効率的に耕作したい農地と耕作したくない農地を選択することができる。
【0025】
好ましくは、前記記録処理部は、前記耕作したい農地の情報と前記耕作したくない農地の情報をデータベース化して出力可能である。
【0026】
現在、営農意向調査として各市町村で実施されているアンケートの多くが、離農もしくは耕作地の縮小を予定している農家の情報収集に偏っており、担い手農家による耕作したい土地に関する情報を十分に収集できていない。この点かかる構成によれば、記録処理部は、耕作したい農地の情報と耕作したくない農地の情報をデータベース化して出力可能であるので、農家の情報収集の偏りを低減することができる。
【0027】
好ましくは、前記解析部は、農家毎に交換前における前記農地全体の地理的中心(たとえば重心)から前記農地までの距離(たとえば重心距離)と、交換後における前記農地全体の地理的中心から前記各農地までの距離の合計を演算し、その変化率を出力可能である。
【0028】
かかる構成によれば、解析部は、農家毎の交換前の農地全体の地理的中心(たとえば重心)から農地(たとえば各圃場の地理的中心、重心)までの距離(たとえば重心距離)と、交換後における農地全体の地理的中心(たとえば重心)から各農地(たとえば各圃場の地理的中心、重心)までの距離(たとえば重心距離)の合計を演算し、その変化率を出力するので、農地交換を希望する農家が事前に交換前後の農地全体の地理的中心から各農地までの距離の合計の変化率から農地間(圃場間)の移動時間がどれくらい削減できるか推測することができる。これにより、移動時間の削減分を作業時間に割り当てることも推測することができる。なお、重心は「農地全体の地理的中心」の例であり、重心距離は「農地全体の地理的中心から各農地までの距離の合計」の例である。
【発明の効果】
【0029】
農家から耕作意向情報を効率的に収集し、これらの耕作意向情報を用いることで、農家が納得できる農地の集約案を自動的に作成する農地集約システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る農地集約システムの説明図である。
【
図2】耕作したい農地と耕作したくない農地の耕作意向情報の説明図である。
【
図3】農地の選好関係(耕作意向情報)に基づき、最大流問題を用いてマッチングアルゴリズム(CIRPアルゴリズム)を実行するイメージ図である。
【
図5】農家と記録処理部を紐づけするデータの説明図である。
【
図6】交換前の農地情報と耕作意向情報の入力から交換後の農地情報を出力するイメージを説明する図である。
【
図8】集約前の農地と集約後の農地の状態の説明図である。
【
図9】例とする各市町村A~Xにおいて農地を交換した場合の、農地と生産拠点との平均距離の減少率を説明する図である。
【
図10】集約案の評価基準である圃場間の移動時間と圃場内の移動時間(作業時間)のイメージ図である。
【
図11】集約案の評価基準である重心距離の変化率と団地数の変化率のイメージ図である。
【
図13】重心距離の変化率と耕作希望の登録率の説明図である。
【
図14】団地数の変化率と交換前と交換後の団地を示す説明図である。
【
図15】平均費用の推定削減率と投入量の推定削減率の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、農地集約システムの各説明図は構成の一例を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例0032】
図1に示されるように、農地集約システム10は、複数の農家間(農地利用者、農地所有者等)で点在する利用可能な農地を交換して利用可能な農地を集約するシステムであり、インターネットによるネットワーク11に接続された入出力部20と、ネットワーク11に接続された記録処理部30と、この記録処理部30に接続された解析部31とを備えている。入出力部20は参加農家Aが扱うものであり、記録処理部30及び解析部31は事業実施者Bが扱うものである。
【0033】
入出力部20は、いわゆるモバイル端末であり、記録処理部30から交換前の農地情報40(図では農地情報1と示す)を受信し、農地について所定項目の耕作意向情報50を入力して送信するとともに交換後の農地情報60(図では農地情報2と示す)を表示するものである。
【0034】
なお、実施例では、入出力部20をいわゆるモバイル端末としたが、これはタブレット端末、スマートフォン、ノートパソコン、デスクトップ型パソコンなどでもよく、入力、出力(閲覧)、データ保存等ができる端末であれば種類は問わない。また、実施例では、入出力部20をネットワーク11に無線で接続しているが、これに限定されず、有線で接続しても差し支えない。
【0035】
記録処理部30は、いわゆるホストコンピュータであり、交換前の農地情報40が登録され、入出力部20から送信された耕作意向情報50を受信して記録し、演算処理された交換後の農地情報60を入出力部20へ送信するものである。
【0036】
なお、実施例では、記録処理部30をホストコンピュータとしたが、いわゆるワークステーションと呼ばれる端末、デスクトップ型パソコン、ノートパソコンなど、データの送受信、保存、演算処理を行うことができれば形式は問わない。
【0037】
解析部31は、いわゆるパソコンと呼ばれるものであり、交換前の農地情報40と耕作意向情報50からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し交換後の農地情報60を出力するものである。
【0038】
なお、実施例では、解析部31をパソコンとしたが、これをいわゆるワークステーション、デスクトップ型パソコン、ノートパソコン、タブレットなどにしてよく、交換前の農地情報40と耕作意向情報50からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し交換後の農地情報60を出力できれば形式は問わない。
【0039】
次に農地集約システム10を使用する際の流れを説明する。
まず、事業実施者Bが参加する各農家用の認証情報70を発行し、参加農家Aに認証情報70を紙媒体(電子媒体でもよい)で送付する。認証情報70は、例えばログインIDとパスワードからなる。現地などにいる参加農家Aは入出力部(モバイル端末)20に認証情報(ログインID、パスワード)70を入力し、農地集約システム10にログインする。入出力部20から事業実施者Bの記録処理部(ホストコンピュータ)30にユーザー情報が送信される。
【0040】
事業実施者Bの記録処理部30から登録された交換前の農地情報(農地情報1)40が入出力部20へ送信される。交換前の農地情報40は、農地ID、耕作者名、所有者名、農地地番、農地面積及び区画(地図データ上のポリゴン)の情報を含んでいる。
【0041】
参加農家A側では入出力部20の画面に交換前の農地情報(農地情報1)40が表示されるので、これを参加農家Aが確認して耕作意向情報50を入力する。参加農家Aは入出力部20から入力された耕作意向情報50を記録処理部30へ送信する。耕作意向情報50は、農家Aが耕作したくない農地の情報と、農家Aが耕作したい農地の情報を含んでいる。また、参加農家A側では入出力部20の画面に交換前の農地情報(農地情報1)40が表示された際に誤表記農地を確認することもでき、誤表記農地IDを電子メールなどで事業実施者Bに修正依頼として送り、事業実施者B側で交換前の農地情報(農地情報1)40を修正することもできる。
【0042】
事業実施者B側では記録処理部30に受信した複数の農家の耕作意向情報50が記録される。これらの複数の農家の耕作意向情報50と交換前の農地情報(農地情報1)40を、解析部31にダウンロードして入力する。解析部31は、交換前の農地情報(農地情報1)40と、複数の農家の耕作したい農地の情報と耕作したくない農地の情報とを含む耕作意向情報50からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し、交換後の農地情報(農地情報2)60を出力する。
【0043】
解析部31で出力された交換後の農地情報(農地情報2)60は、記録処理部30に登録される。交換後の農地情報(農地情報2)60は記録処理部30から入出力部20に送信され、参加農家A側では入出力部20の画面に表示された交換後の農地情報(農地情報2)60を確認し、農地交換の判断に使用する。
【0044】
また、参加農家が増える度に、解析部31で演算処理をし直し、演算処理し直した交換後の農地情報(農地情報2)60を記録処理部30に記録して、記録処理部30から入出力部20に送信することもできる。
【0045】
次に最適な交換後の農地情報を出力するマッチングアルゴリズムの適用について説明する。
図2、
図3を参照する。
図2(A)は地図上で耕作したい土地が集約した状態を示す図であり、
図2(B)は地図上での自分が耕作している土地の中での耕作したい土地と耕作したくない土地、他人が耕作している土地の中での耕作したい土地と耕作したくない土地を示す。本発明の実施例では、農地の交換にCIRPアルゴリズムを用いることが、農地集約に対してどの程度有効であるかについて、実際の農地データを用いたシミュレーションにより明らかにした。農地のデータは全国農業会議所がウェブ上で公開している「全国農地ナビ」を用い、合計5ha以上の複数の農地を耕作する農家を対象とした。農家の選好(=耕作意向)については、農地集積に関するアンケート調査を参考に、農家が現在耕作している農地の重心を生産拠点とみなし、各自が生産拠点から近い農地を耕作したいと考え、自分が新たに「耕作したい」と考える農地の数と、現在自分が耕作しているが「耕作したくない」と考える農地の数が等しくなるよう希望を出すという仮定を置いた。
【0046】
図3に示されるように、CIRPアルゴリズムを適用するため、農家を耕作面積の順に1番からn番まで番号を振り、
図2の選好関係を要約した最大流問題のグラフを作成した。なお、グラフ上の辺に書かれた|Ωi|は農家iが耕作している土地の数、qiは|Ωi\Ai|を最大値とする値で、それぞれ対応する辺における容量を意味する。なお、Aiは「耕作したい農地の集合」であり、|Ωi\Ai|は「現在耕作しているが、今後は耕作したくない農地の数」を意味する。ここで、最大流を変化させない範囲でq1、q2…qn(ベクトル)を減らしていき、最終的に確定したqiのもとでの最大流が通るパスが、CIRPアルゴリズムによる農地集約案に対応する。
【0047】
入出力部20では、記録処理部30から交換前の農地情報40を受信し、受信した交換前の農地情報40から耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地の情報52を選択することで耕作意向情報50とする。さらに、耕作したい農地の情報51は、自分が耕作している農地と他人が耕作している農地の中から選択可能であり、耕作したくない農地の情報52は、自分が耕作している農地の中から選択可能である。
【0048】
次に入出力部20の表示状態等を説明する。
図4に示されるように、入出力部20では様々な情報が地図上に表示されている。シミュレーションで用いた農家の農地に対する選好は、平均的な農家の選好を捉えていると考えられるが、真の選好は農家ごとに異なり多様であることが予想される。そのため、実際にマッチングアルゴリズムを農地交換に用いる際には、いかに実際の農家の選好情報を収集するかという問題が鍵となる。本発明の実施例では、農家の農地に対する選好を収集する手法として、農家が現地に入出力部20としてタブレット端末を携帯し、専用のアプリケーション(アプリ)を通じて事業者に選好情報を送信する方法をとしている。実施例のアプリケーションでは、現在自分が耕作している農地を含む全ての農地のポリゴン情報(区画情報)が地図上に表示され、農家は実際に現地の様子を確認しながら「耕作を希望する農地」と「耕作を希望しない農地」を選択する。
【0049】
このように、入出力部20は、モバイル端末であり、農地情報が地図表記の中で表示され、耕作意向情報50(
図1参照)は地図上の区画を選択することで作成される。
【0050】
図5に示されるように、使用される情報(データ)は、公益機関の管理データの情報等である。一例として、地方公共団体(公益機関)が管理する、地番、経緯度、土地境界、所有者、耕作者、耕作面積等を管理するデータベースの情報と、集約案としての人・農地プランの地番、耕作者、面積等の情報とを紐付けして使用してもよい。
【0051】
図6に示されるように、地方公共団体(公益機関)が管理するデータの地番、耕作者、面積、経緯度、土地境界等の情報と、参加農家からの参加農家入力情報である耕作したい土地、耕作したくない土地、それらの優先順位等の情報とを、アプリケーションに入力して解析部31(
図1参照)でマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し、交換後の農地情報をデータ出力する
【0052】
参加農家側の入出力部20における耕作意向情報50の登録フローについて説明する。
図7に示されるように、農地集約システム10にログイン後、STEP1(図ではSTEPをSと表記する)で交換前の農地情報が表示される。STEP2で交換前の農地情報に誤りがないか確認する。交換前の農地情報に正しければ(YES)STEP3に進む。交換前の農地情報に誤りがあれば(NO)STEP4に進み農地情報の修正依頼をしてSTEP1に戻る。
【0053】
STEP3で地図上から農地の区画(ポリゴン)を選択する。STEP5で選択した農地が現在耕作中か否か判断する。選択した農地が耕作中であれば(YES)STEP6に進む。選択した農地が耕作中でなければ(NO)STEP7に進む。STEP6で選択した農地を耕作したいか判断し、耕作したい場合(YES)はSTEP8に進み耕作したい土地として登録されてSTEP11に進む。耕作したくない場合(NO)はSTEP9に進み情報を耕作したくない農地として登録されてSTEP11に進む。一方、STEP7で選択した農地を耕作したいか否か判断し、耕作したい場合(YES)はSTEP10に進み情報を耕作したい農地として追加しSTEP11に進む。STEP7で選択した農地を耕作したくない場合(NO)はそのままSTEP11に進む。
【0054】
STEP11では他に検討する農地はないか否か検討し、他に検討する農地がない場合(YES)はSTEP12に進み、他に検討する農地がある場合(NO)はSTEP3に戻る。STEP12では耕作したい農地の数が耕作したくない農地の数と等しいか否か判断し、耕作したい農地の数が耕作したくない農地の数と等しい場合(YES)はSTEP13に進み、耕作意向情報を登録して処理を終了する。STEP12で耕作したい農地の数が耕作したくない農地の数と異なる場合(NO)はSTEP14に進み、本当に登録するか否か判断する。STEP14で本当に登録する場合(YES)はSTEP13に進み、登録しない場合(NO)はSTEP3に戻る。
【0055】
次にシミュレーション結果を地図上に示した状態を説明する。
図8(A)は交換前の農地情報であり、第1の使用者の農地(丸表記)、第2の使用者の農地(三角表記)、第3の使用者の農地(ばつ表記)が、離れた場所にバラバラに点在している。
【0056】
図8(B)は交換後の農地情報であり、第1の使用者の農地(丸表記)、第2の使用者の農地(三角表記)、第3の使用者の農地(ばつ表記)が、それぞれ距離的に近い場所にまとまっている。
【0057】
次にシミュレーション結果の効果を説明する。
図9(A)、
図9(B)のように、耕地分散の問題を解決するため、マッチングアルゴリズム(CIRPアルゴリズム)を応用した農地集約システム10が有効であることを、シミュレーションによって示した。
図9(A)では、シミュレーションは任意の県の市町村(A~X)ごとに5ha以上の農家が耕作する農地を対象とし、大規模農家ほど高い優先順位を与えたもとでは県全体で14.12%の農地が交換され、各農家が耕作する農地の重心距離が6.70%減少することが明らかにした。
図9(B)では、シミュレーションは任意の県の市町村(A~X)ごとに農家が耕作する農地を対象とし、小規模農家ほど高い優先順位を与えたもとでは県全体で20.11%の農地が交換され、各農家が耕作する農地の重心距離が9.45%減少することを明らかにした。このように最適な状態に農地交換を行うことで、生産拠点から農地への移動効率を向上させ、作業効率及び生産性を向上させることができる。
【0058】
また、従来は、現在自身が耕作していない土地の耕作意向情報については、現地の状況と農地に関する様々な情報(農地の範囲、現在の耕作者、所有者、地番、面積など)を総合的に判断して回答する必要があるため、収集することが困難であった。本発明により、このような情報を収集するアンケートでは、モバイル端末を用いた一元的な情報提供および回答の保存が可能となる。なお、一例に挙げる地域でのフィールド実験では、農地集約に必要となる耕作意向情報を1ヶ月程度で収集できる見込みである。また、従来は、手作業で記録したデータをもとに作業者の直感を用いた集約案を作成するか、農家のインセンティブを考慮しない集約案を作成していた。本発明は、農家のインセンティブを考慮しつつ、集約案を短時間で作成することができる。たとえば、1ha以上耕作している農家が184戸いる地域の場合、集約案は2分程度で作成可能である。なお、5ha以上耕作している6戸の農家に絞った場合はさらに早く、集約案は1分程度で作成可能である。
【0059】
次に実証実験の結果について説明する。実証実験には13の経営体が参加し、参加者には専用アプリを導入したタブレット端末が貸与され、所定の期間にタブレット端末を用いて耕作意向情報(耕作したい農地および耕作したくない農地)を申告した。この耕作意向情報をもとにCIRPアルゴリズムを用いて作成した農地の集約案の特徴を示す。集約案を評価する客観的な指標としては、集約案どおりに農地を交換することができた場合に、農家による圃場間の移動時間の減少をどの程度見込めるかという観点から、重心距離の減少率を用いた。重心距離とは、各農家が現在耕作している農地の重心を求め、そこから各農家が耕作している農地の距離を計算したものである。また、農家による圃場内の移動時間の減少を見込めるかという観点から、団地数の減少率も求めた。
【0060】
次に集約案の評価基準について説明する。
図10(A)は複数の圃場間距離が短くなるタイプの集約のイメージ図であり、
図10(B)は複数の圃場が団地化されるタイプの集約のイメージ図である。(A)のタイプの集約では移動時間の短縮効果が、(B)のタイプの集約では作業時間の短縮がそれぞれ見込まれる。
【0061】
図11(A)は集約案の評価基準である重心距離のイメージ図であり、
図11(B)は団地数の変化率のイメージ図である。
図11(A)に示されるように、分散した農地であってもある程度集約される(例えば10カ所に分散していた農地が4カ所に集約される)ことで移動時間が短縮されて作業時間が増加し、作業効率を向上させることができる。
図11(B)に示されるように、農地の交換前後の団地数(圃場数)の変化率を求め、団地数が減少すれば農地がまとまり(圃場数が減少して一つの圃場が広くなり)、広くなった圃場内では効率よく作業でき作業時間が短縮される。
【0062】
図12に示されるように、実際にある土地に対して耕作意向をもとにCIRPアルゴリズムを用いて作成した集約案の効果を検証した。農家番号をA~Mとし、それぞれの農家の農地に対して重心距離(交換前、km)、重心距離(交換後、km)、重心距離増加率、面積(交換前、ha)、面積(交換後、ha)、面積増加率、耕作地数(団地数)、入力筆数、登録率、交換耕作地数、交換率を演算した結果である。
【0063】
この結果によると、重心距離は交換前の568.45kmから交換後の520.3kmに変化し、重心距離の変化率は8.5%減少した。また、団地数は交換前の312箇所から交換後の294箇所に変化し、団地数の変化率は5.8%減少した。
【0064】
図13(A)に示されるように、農地交換を希望した農家はD、H、K、Lなど一部を除き、交換前の重心距離よりも交換後の重心距離が減少し、重心距離の変化率もマイナスとなる。この例では、元々の農地の重心距離が小さい農家ほど、重心距離の減少率は大きい結果となった。
【0065】
図13(B)に示されるように、耕作希望の登録率をみると、農地の交換が起こらなかったD、H、K、Lは、他の参加者と比べて提出率が低かったことが分かる。
【0066】
図14(A)に示されるように、団地数の変化率をみると、この例では元々の団地数が少ない農家ほど、交換がわずかでも行われると、団地数の変化率が大きい結果となった。地図で示すと、
図14(B)では交換前の農地(団地、圃場)が示され、
図14(C)では交換後の農地(団地、圃場)を示されており、農地がまとまり団地が減少していることが分かる。
【0067】
図15(A)に示されるように、平均費用の推定削減率は、この例では、この例では元々の団地数が少ない農家ほど、交換がわずかでも行われると、平均費用の推定削減率も大きい結果となった。また、
図15(B)に示されるように、投入量の推定削減率(労働削減率、経常投入削減率、固定資本削減率)は、この例では、この例では元々の団地数が少ない農家ほど、交換がわずかでも行われると、投入量の推定削減率(労働削減率、経常投入削減率、固定資本削減率)も大きい結果となった。なお、平均費用の推定削減率は次の論文に掲載された弾力性を用いて計算した:川崎賢太郎 (2009) 「耕地分散が米生産費及び要素投入に及ぼす影響」農業経済研究, 81(1),14-24)。
【0068】
図16に示されるように、交換前後の面積は、交換が実行されてもほとんど変化がないことが分かる。なお、この例では、参加者が同じ大きさの農地を交換対象として挙げたことに起因すると思われる。
【0069】
以上から、参加者が耕作している農地は全体で752箇所あったが、その約10.5%にあたる79箇所が参加者の利害が一致した形で交換可能であることが分かった。また、集約案による農地の交換前には568.45kmだった重心距離は、交換により520.26kmと約8.5%も減少することが分かった。さらに、交換前には312箇所だった団地数も、交換により294箇所と約5.8%減少することも分かった。
【0070】
個別の参加者に注目した場合、多い人で重心距離が約44.3%も減少することが分かった。また、重心距離が全く減少しない参加者もいたが、それは交換を希望する農地の割合が10%台もしくは全く交換を希望していないため、結果として農地が交換されなかった参加者であった。このことから、積極的に交換希望を申告する参加者が集まれば、農地交換システムを用いることでより大きな集約効果を期待できることが分かった。
【0071】
次に以上に述べた農地集約システム10の効果を説明する。
本発明の実施例では、農地集約システム10は、インターネットによるネットワーク11に接続された入出力部20と、記録処理部30と、解析部40とを備えている。入出力部20は、交換前の農地情報40を表示し、農地について所定項目の耕作意向情報50を入力して送信するとともに交換後の農地情報50を表示するものであり、記録処理部30は、交換前の農地情報40が登録され、入出力部20から送信された耕作意向情報50を受信して記録し、演算処理された交換後の農地情報60を入出力部20へ送信するものである。解析部31は、交換前の農地情報40と、農家が耕作したくない農地52の情報を含む耕作意向情報50からマッチングアルゴリズムを用いて演算処理し交換後の農地情報60を出力するので、農家から耕作意向情報50を効率的に収集し、これらの耕作意向情報50を用いることで、農家が納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる。
【0072】
さらに、耕作意向情報50は、農家が耕作したい農地の情報51を含む。解析部31は、耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地52の情報とを含む耕作意向情報50から交換後の農地情報60を出力するので、農家から耕作意向情報50を効率的且つ正確に収集し、これらの耕作意向情報50を用いることで、農家がより納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる。
【0073】
さらに、本発明の構成によれば、耕作したい農地の情報51は、自分が耕作している農地と他人が耕作している農地の中から選択可能であり、耕作したくない農地の情報52は、自分が耕作している農地と他人が耕作している農地の中から選択可能であるので、農家からの情報収集の偏りを低減し、農家から耕作意向情報50をより効率的且つ正確に収集し、これらの耕作意向情報50を用いることで、農家がより納得できる農地の集約案を自動的に作成することができる。
【0074】
さらに、入出力部20では、記録処理部30から交換前の農地情報40を受信し、受信した交換前の農地情報40から耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地の情報52を選択するので、農地情報を正確に把握したうえで選択形式により耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地の情報52を決めることができる。そのため、農家の選択作業を簡単にし、農家から耕作意向情報50をより効率的且つ正確に収集することができる。
【0075】
さらに、交換前の農地情報40は、農地ID、耕作者名、所有者名、農地地番、農地面積及び区画の情報を含むので、農家は複合的情報を考慮したうえで耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地の情報52を決めることができ、農家から耕作意向情報50をより効率的且つ正確に収集することができる。
【0076】
さらに、入出力部20は、モバイル端末であり持ち運びが容易であるので、モバイル端末を現地に持ち運び、現地で耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地の情報52を確認しながら選択することができる。さらに、農地情報が地図表記の中で表示され、耕作意向情報50は地図上の区画から選択するので、視覚的に操作することができ、より簡単に効率的に耕作したい農地と耕作したくない農地を選択することができる。
【0077】
さらに、前記記録処理部30は、耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地の情報52をデータベース化して出力可能である。現在、営農意向調査として各市町村で実施されているアンケートの多くが、離農もしくは耕作地の縮小を予定している農家の情報収集に偏っており、担い手農家による耕作したい土地に関する情報を十分に収集できていない。この点かかる構成によれば、記録処理部30は、耕作したい農地の情報51と耕作したくない農地の情報52をデータベース化して出力可能であるので、農家の情報収集の偏りを低減することができる。
【0078】
さらに、解析部は、農家毎の交換前の農地全体の地理的中心(たとえば重心)から農地(たとえば各圃場の地理的中心、重心)までの距離(たとえば重心距離)と、交換後における農地全体の地理的中心(たとえば重心)から各農地(たとえば各圃場の地理的中心、重心)までの距離(たとえば重心距離)の合計を演算し、その変化率を出力するので、農地交換を希望する農家が事前に交換前後の農地全体の地理的中心から各農地までの距離の合計の変化率から農地間(圃場間)の移動時間がどれくらい削減できるか推測することができる。これにより、移動時間の削減分を作業時間に割り当てることも推測することができる。
【0079】
尚、実施例では、交換する土地を農地としたが、これに限定されず、交換する土地は事業用地、住宅用地など他の一般的な土地であっても差し支えない。さらには、実施例では、記録処理部30と解析部31を別体の端末としたが、一体型の端末としても差し支えない。
【0080】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
10…農地集約システム、11…ネットワーク、20…入出力部(モバイル端末、ノートパソコン、スマートフォン、デスクトップ型パソコン、端末)、30…記録処理部(ホストコンピュータ、ワークステーション、デスクトップ型パソコン、ノートパソコン、端末)、31…解析部(ワークステーション、デスクトップ型パソコン、ノートパソコン、タブレット、端末)、40…交換前の農地情報、50…耕作意向情報、51…耕作したい農地(耕作したい農地の情報)、52…耕作したくない農地(耕作したくない農地の情報)、60…交換後の農地情報、70…認証情報、A…参加農家(農家)、B…事業実施者。