(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086557
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/20 20060101AFI20240620BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240620BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B60C9/20 E
B60C11/00 F
B60C11/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144284
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2022201135
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】御▲崎▼ 桃加
(72)【発明者】
【氏名】石田 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】三木 孝之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 益任
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA15
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA39
3D131AA44
3D131AA45
3D131BA01
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB09
3D131BB11
3D131BC31
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA44
3D131DA54
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131EB24V
3D131EB24X
(57)【要約】
【課題】耐久性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】ベルト層を備えたタイヤであって、
前記ベルト層はベルトプライを含み、
前記ベルトプライの補強材が4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードであり、
前記ベルトコードの外径D(mm)が0.50mm以下であり、
前記ベルトコードの外径D(mm)及び前記タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向の前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)が、20.0以上、28.0以下であるタイヤに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト層を備えたタイヤであって、
前記ベルト層はベルトプライを含み、
前記ベルトプライの補強材が4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードであり、
前記ベルトコードの外径D(mm)が0.50mm以下であり、
前記ベルトコードの外径D(mm)及び前記タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向の前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)が、20.0以上、28.0以下であるタイヤ。
【請求項2】
前記ベルトコードのタイヤ幅方向におけるコード間距離L(mm)が0.30mm以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ベルトコードのタイヤ幅方向におけるコード間距離L(mm)が0.60mm以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
トレッド部を有し、
タイヤ赤道面上におけるトレッド表面から前記ベルト層までのタイヤ半径方向距離をA、前記ベルトプライのうち最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ幅方向端部におけるトレッド表面からベルト層までの距離をBとしたとき、A/Bが1.08以上、1.22以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
トレッド部を有し、
ベルトコードのタイヤ幅方向の配列本数E(本/50mm)と、トレッド部の最表層を構成するキャップトレッドの硬度Hとの積(E×H)が、2920以上、4620以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記D及び前記Lの積(D×L)が、0.12以上、0.28以下である請求項2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記D、前記E及び前記Lの積(D×E×L)が、8.5以上、12.0以下である請求項2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記A/Bに対する前記Dの比(D/(A/B))が、0.20以上、0.55以下である請求項4に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記A/Bに対する前記D及び前記Eの積(D×E)の比((D×E)/(A/B))が、20以上、35以下である請求項4に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記D及び前記Hの積(D×H)が、23以上、30以下である請求項5に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記D、前記E及び前記Hの積(D×E×H)が、1590以上、1700以下である請求項5に記載のタイヤ。
【請求項12】
トレッド部に形成された周方向溝の溝深さG(mm)に対する前記Dの比(D/G)が、0.030以上、0.060以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
トレッド部に形成された周方向溝の溝深さG(mm)に対する前記D及び前記Eの積(D×E)の比((D×E)/G)が、2.0以上、5.0以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)が、50~70本/50mmである請求項1に記載のタイヤ。
【請求項15】
トレッド部を有し、
トレッド部の最表層を構成するキャップトレッドの硬度Hが、58~68である請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種タイヤ性能を改善する手法が種々検討されており、例えば、特許文献1ではベルト層を構成するベルトコードが単線ワイヤであり、ベルト補強層としてポリエチレンテレフタレート繊維を用いることで、耐久性能を維持し操縦安定性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、ライフサイクルアセスメントの観点からタイヤの長寿命化が望まれていることから、タイヤの耐久性能をさらに向上させていくことが望まれていると考えられる。
本発明は、前記課題を解決し、耐久性能に優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ベルト層を備えたタイヤであって、
前記ベルト層はベルトプライを含み、
前記ベルトプライの補強材が4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードであり、
前記ベルトコードの外径D(mm)が0.50mm以下であり、
前記ベルトコードの外径D(mm)及び前記タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向の前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)が、20.0以上、28.0以下であるタイヤに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベルト層を備えたタイヤであって、前記ベルト層はベルトプライを含み、
前記ベルトプライの補強材が4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードであり、前記ベルトコードの外径D(mm)が0.50mm以下であり、前記ベルトコードの外径D(mm)及び前記タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向の前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)が、20.0以上、28.0以下であるタイヤであるので、耐久性能に優れたタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図である。
【
図2】4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードの一構成例の斜視図である。
【
図3】
図2のベルトコードの長手方向と垂直な面での断面図である。
【
図4】
図1のタイヤのベルト層及びバンド層のタイヤ赤道面付近の拡大断面図である。
【
図5】
図1のタイヤのトレッド部の近辺が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ベルト層を備えたタイヤであって、
前記ベルト層はベルトプライを含み、
前記ベルトプライの補強材が4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードであり、
前記ベルトコードの外径D(mm)が0.50mm以下であり、
前記ベルトコードの外径D(mm)及び前記タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向の前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)が、20.0以上、28.0以下であるタイヤである。
【0009】
前述の作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムにより奏するものと推察される。
4本のフィラメントを撚り合わせた1×4構造のベルトコードにすると、ベルトコード断面を効率よく丸に近づけることができる。断面が丸に近いベルトコードは、ベルトコード表面にかかる応力が1点に集中せず均一に分散するので、ベルトコード/ゴムの間の剥離に強くなる。一方、5本や6本のフィラメントを撚り合わせた1×5構造や1×6構造のようにフィラメント本数が増えると、潰れやすく丸い形状を維持しにくくなるため、1×4構造のベルトコードが用いられる。また、ベルトコード内に撚りが形成されることで、柔軟に変形させることが可能となり、走行時に変形が加わった際にベルトコードが座屈して折れることを抑制できると考えられる。
加えて、ベルトコードの外径Dを0.50mm以下とすることで、コード自体が柔軟に変形できるようにするとともに、ベルトコードの外径Dとタイヤ幅方向の配列本数E(本/50mm)の積(D×E)を20.0以上にすることで、剛性を高め、1本のベルトコード表面にかかる応力が十分に分散され、ベルトコード/ゴムの間の剥離に強くなる。また、D×Eを28.0以下とすることで、ベルトコードと周囲のゴムとの接触面積を適度に増やし、かつタイヤ幅方向に隣接したベルトコード間に十分な量のゴムが存在するようになるため、変形時に力を逃がしやすくなる。
以上により、ベルトコード自体でも応力を集中しにくくし、ベルトプライ内でも特定のベルトコードの表面に応力が集中することを抑制することが可能となるため、ベルトコード/ゴム間の剥離が抑制され、耐久性能が向上すると推察される。
【0010】
このように、4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードを用いたベルトプライにおいて、「Dが0.50mm以下」、「D×Eが20.0以上、28.0以下」を満たす構成にすることにより、耐久性能を向上するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、「Dが0.50mm以下」、「D×Eが20.0以上、28.0以下」のパラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、耐久性能を向上することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にしたものである。
【0011】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明されるが、これは一形態にすぎず、本発明のタイヤは以下の形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ2(空気入りタイヤ)の正規状態のタイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。
本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
本明細書において、「正規状態」とは、タイヤが正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない場合、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0013】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける“標準リム”、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0014】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、「正規リム」の場合と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250kPa以上)を指す。なお、250kPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0015】
また、本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は以下の計算により、正規荷重WLを求める。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt
WL=0.000011×V+175
WL:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm3)
Dt:タイヤ外径(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0016】
タイヤの「断面幅Wt(mm)」は正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
【0017】
タイヤの「外径Dt(mm)」は正規状態におけるタイヤの外径を指す。
【0018】
タイヤの「断面高さHt(mm)」はタイヤの半径方向断面における、タイヤ半径方向の高さを指し、タイヤのリム径をR(mm)としたとき、タイヤの外径Dtとリム径Rとの差の半分に相当する。言い換えると、断面高さHtは(Dt-R)/2により求めることが可能である。
【0019】
図1において、トレッド部4からビード12の方向、すなわち左右方向がタイヤ2の半径方向であり、1対のビード12を結ぶ方向、すなわち上下方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。トレッド部4は、キャップ層30及びベース層28を備えている。
【0020】
なお、
図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド部4の例が示されているが、トレッド部4が単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッドで構成されるものでもよい。
【0021】
タイヤ2において、それぞれのサイドウォール6は、トレッド部4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド部4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10と接合されている。このサイドウォール6は、カーカス14の損傷を防止できる。
【0022】
図1のそれぞれのウィング8は、トレッド部4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド部4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。
【0023】
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置し、少なくとも1か所以上、リムと接する部分を有している。
【0024】
カーカス14は、カーカスプライ36を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ36からなるが、2枚以上で構成されてもよい。
【0025】
このタイヤ2では、カーカスプライ36は、両側のビードコア32の間に架け渡されており、トレッド部4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ36は、それぞれのビードコア32の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ36には、主部36aと一対の折り返し部36bとが形成されている。すなわち、カーカスプライ36は、主部36aと一対の折り返し部36bとを備えている。
【0026】
それぞれのビードコア32は、このビードコア32から半径方向外向きに延びるビードエイペックス34を備えている。ビードコア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含むことが望ましい。ビードエイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。
【0027】
図示されていないが、カーカスプライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°が好適である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有することが好ましい。
【0028】
図1のベルト層16は、トレッド部4の半径方向内側に位置している。ベルト層16は、カーカス14と積層されている。ベルト層16は、カーカス14を補強する。
図1のタイヤ2は、ベルト層16は、内側層38及び外側層40の2層のベルトプライからなる。
図1から明らかなように、軸方向において、内側層38の幅は外側層40の幅よりも若干大きいことが望ましい。このタイヤ2では、ベルト層16の軸方向幅はタイヤ2の断面幅の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
【0029】
なお、
図1では、内側層38及び外側層40の2層のベルトプライからなるベルト層16の例が示されているが、ベルト層16は、単層のベルトプライ、3層以上のベルトプライから構成されるものでもよい。
【0030】
図1のベルト層16では、内側層38、外側層40、必要に応じて配される他のベルトプライのそれぞれが、並列させた多数の4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードと、トッピングゴム(被覆ゴム)とからなることが望ましい。言い換えれば、ベルト層16を構成する各ベルトプライは、並列させた多数の1×4構造のベルトコード17Aを含んでいる。
【0031】
ここで、
図2に、1×4構造のベルトコード17Aの一構成例の斜視図を示す。また
図3に、
図2に示した1×4構造のベルトコード17Aの長手方向と垂直な面での断面図を示す。なお、ベルトコードの長手方向は図中のY軸方向となる。長手方向と垂直な面は、図中のXZ平面と平行な面になる。
【0032】
図2、3に示したベルトコード17Aは、4本のフィラメント17Aeが撚り合わされた1×4構造を有している。1×4構造とは、ベルトコード1本が、4本のフィラメントを撚り合わせたストランド1本で構成されていることを指す。そのため、ベルトコードが7本のフィラメントを撚り合わせたストランドを3本撚り合わせて構成されている場合には3×7構造と表現される。
【0033】
なお、1×N構造のNは各コードを構成するストランドに含まれるフィラメントの本数に相当し、1は前記ストランドの本数に相当する。1×N構造としては、N本のフィラメントをその長手方向と垂直な断面において、フィラメントが1つの円形状の周方向に沿って単層となるように配列し撚り合せた構造などが挙げられる。
【0034】
本実施形態の1×4構造のベルトコード17Aに含まれるフィラメントの直径、すなわちフィラメント径は特に限定されないが、好ましくは0.10mm以上、より好ましくは0.13mm以上、更に好ましくは0.15mm以上、より更に好ましくは0.16mm以上、より更に好ましくは0.17mm以上、より更に好ましくは0.18mm以上、より更に好ましくは0.19mm以上であり、また、好ましくは0.30mm以下、より好ましくは0.25mm以下、更に好ましくは0.21mm以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
【0035】
図4は、ベルト層16(内側層38及び外側層40)及びバンド層18のタイヤ赤道面CL付近における拡大断面図である。
【0036】
図4に示されるように、ベルトプライ17は、1×4構造のベルトコード17Aと、該ベルトコード17Aを被覆するトッピングゴム17B(被覆ゴム)とを含んでいる。
図4では、1×4構造のベルトコード17Aの横断面を模式的に円形として示している。ただ、
図3の円形状の横断面にも示されているとおり、横断面が円形となる1×4構造のベルトコードのほか、横断面が楕円形状となるコードでもよいし、横断面が多角形状など、他の形状となるコードでもよい。
【0037】
また、フィラメント17Aeは、耐久性能などの観点から、予めくせ付けを施したものを使用しても良い。
【0038】
図4の例では、ベルトプライ17は、第1ベルトプライ(内側層38)と、第1ベルトプライ(内側層38)とタイヤ半径方向に隣接する第2ベルトプライ(外側層40)とを含んでいる。第2ベルトプライ(外側層40)は、第1ベルトプライ(内側層38)のタイヤ半径方向の外側に位置している。
【0039】
ベルトコード17Aは、スチールコードであることが望ましい。このようなベルトコード17Aは、ベルトプライ17の走行中の変形を抑制する。第1ベルトプライ(内側層38)のベルトコード17A、及び、第2ベルトプライ(外側層40)のベルトコード17Aは、同じ形状であっても、異なる形状であってもよい。
【0040】
1×4構造のベルトコード17Aの外径Dは、0.50mm以下であり、好ましくは0.47mm以下、より好ましくは0.45mm以下、更に好ましくは0.43mm以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは0.25mm以上、より好ましくは0.32mm以上、更に好ましくは0.35mm以上、より更に好ましくは0.38mm以上、より更に好ましくは0.40mm以上であり、また、上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
【0041】
本発明において、ベルトコードの外径Dは、コード断面の外接円の直径を指し、例えば、1×2構造のベルトコードの場合、フィラメントの径がdとすると、外径D=2dであり、本発明で使用される1×4構造のベルトコードの場合、フィラメントの径がdとすると、外径D=d×√2+dで簡易的に求めることができる。
図2、3の1×4構造のベルトコード17Aの場合は、
図3のコード断面の外接円の直径Dがベルトコード17Aの外径に相当する。
【0042】
なお、ベルトコードを形成するフィラメント径dは、タイヤから抜き出したベルトコードのフィラメントの長手方向に垂直な方向でノギスを用いて測定することができる。この時、同一断面において、径が異なる場合は、最大値と最小値の単純平均をフィラメント径dとして取り扱う。
【0043】
ベルトコード17Aは、例えば、タイヤ周方向に対して15~45度の角度で傾斜していることが望ましい。なお、ここでいうベルトコード17Aとタイヤ周方向のなす角は、タイヤ赤道面上における、ベルトコード17Aとタイヤ周方向のなす角である。前記ベルトコード17Aとタイヤ周方向のなす角は、当該タイヤのトレッド部等を剥がし、タイヤ表面上にベルトコード17Aが露出するようにすることで測定することが可能である。
【0044】
特に限定されるものではないが、第1ベルトプライ(内側層38)のベルトコード17Aと、第2ベルトプライ(外側層40)のベルトコード17Aとは、互いに交差するように、タイヤ周方向に対する傾斜が逆向きに配されていることが望ましい。
【0045】
ベルトコード17Aは、その周囲を被覆しているゴム組成物との接着性の観点から、表面に銅及び亜鉛を含むめっきが施されていることが好ましい。また、前記した銅、亜鉛に加えて、コバルト、ニッケル、ビスマス、アンチモンなどのイオン化傾向が銅及び亜鉛の間に属する金属元素を含むめっきが施されていることがより好ましい。
【0046】
また、ベルトコード17Aは、周囲のゴム組成物との接着性の観点から、表面にポリベンゾオキサジン化合物の層を有することが好ましい。
【0047】
ベルトコード17Aを被覆するトッピングゴム17B(被覆ゴム)としては、周知のゴム材料に加えて、フェノール系の熱硬化樹脂やシリカ、前記したコバルト、ニッケル、ビスマス、アンチモンなどのイオン化傾向が銅及び亜鉛の間に属する金属と有機脂肪酸との塩、ポリベンゾオキサジン化合物などを含有していることが望ましい。
【0048】
タイヤ2の幅方向断面において、タイヤ幅方向50mm当たりのベルトコード17Aの配列本数(打ち込み本数(エンズ))E(本/50mm)は、好ましくは40本/50mm以上、より好ましくは46本/50mm以上、更に好ましくは50本/50mm以上、より更に好ましくは55本/50mm以上、より更に好ましくは56本/50mm以上、特に好ましくは60本/50mm以上であり、また、好ましくは100本/50mm以下、より好ましくは82本/50mm以下、更に好ましくは70本/50mm以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、Eは、タイヤを幅方向に切り出した断面において、タイヤ赤道面から±25mmの範囲におけるコードの配列本数を指す。
【0049】
Eは、タイヤを製造する際のベルト層でのベルトコードの配列本数により適宜調整することが可能である。
【0050】
タイヤ2は、ベルトコード17Aの外径D(mm)及びタイヤ2の幅方向断面におけるタイヤ幅方向のベルトコード17Aの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)が、20.0以上、28.0以下である。
D×Eは、好ましくは20.7以上、より好ましくは21.5以上、更に好ましくは22.0以上、より更に好ましくは24.0以上、より更に好ましくは25.0以上、特に好ましくは25.8以上であり、また、好ましくは27.0以下、より好ましくは26.6以下、更に好ましくは26.5以下、より更に好ましくは26.2以下、より更に好ましくは26.0以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
【0051】
タイヤ2において、より効果が得られる観点から、ベルトコード17Aのタイヤ幅方向におけるコード間距離L(mm)が0.25mm以上であることが望ましい。Lは、好ましくは0.29mm以上、より好ましくは0.30mm以上、更に好ましくは0.33mm以上、より更に好ましくは0.39mm以上、より更に好ましくは0.40mm以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは0.70mm以下、より好ましくは0.64mm以下、より好ましくは0.60mm以下、更に好ましくは0.57mm以下、より更に好ましくは0.55mm以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、本発明において、コード間距離Lは、タイヤを幅方向に切り出した断面において、タイヤ赤道面から±25mmの範囲におけるベルトプライ内で隣り合うコード間距離を指す。
図4では、コード間距離Lは、内側層38内で隣り合うベルトコード17A表面間の直線距離、外側層40内で隣り合うベルトコード17A表面間の直線距離である。
【0052】
コード間距離Lを所定範囲、特に、0.30mm以上、0.60mm以下とすることで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
クラウン部(中心より左右2.5cmの計5cm領域)において、隣り合うコード同士のゴムゲージが0.30mm以上とすることにより、走行時にかかるせん断応力が隣り合うコード間に集中することを抑制し、亀裂発生を抑制することができると考えられる。
更に隣り合うベルトコード表面間のゴムゲージが0.60mm以下であることで、配列本数が小さくなりすぎることを抑制し、ベルトコード表面にかかる応力が集中することを抑制し、ベルトコード/ゴム間の剥離を抑制しやすくなる。
以上から、上記所定範囲、特に0.30mm以上、0.60mm以下の範囲に調整することで、耐久性能が向上すると推察される。
【0053】
図1のバンド層(ベルト補強層)18は、ベルト層16の半径方向外側に位置している。
図1のタイヤ2では、軸方向において、バンド層18はベルト層16の幅と同等の幅を有している。このバンド層18が、このベルト層16の幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0054】
バンド層18は、ベルト補強層コードとトッピングゴム(被覆ゴム)とからなることが望ましい。ベルト補強層コードは、タイヤ周方向に螺旋状に巻かれている。このバンド層18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。ベルト補強層コードは、実質的に周方向に延びている。タイヤ周方向に対するベルト補強層コードの角度は、5°以下、さらには2°以下であることが好ましい。このベルト補強層コードによりベルト層16が拘束されるので、走行中の内圧によりタイヤの外径が大きくなることが抑制される。
【0055】
タイヤ2において、バンド層18は、各ベルトプライ17の拘束性を高め、高速走行時の耐久性能を高めることが可能である。
【0056】
バンド層18の一形態として、有機繊維コード18Aと、有機繊維コード18Aを被覆する補強ゴム18B(バンド層用被覆ゴム組成物)とを含む形態などが挙げられる。なお、通常、有機繊維コードは、ゴムとの接着性を改善するためにディップ処理が行われている。
【0057】
有機繊維コード18Aを構成する有機繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、セルロースなどが挙げられる。これらは合成繊維でも良く、バイオマス由来の繊維であっても良い。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、リサイクル、再生材料由来であることが望ましい。また、これらの繊維は合成繊維、バイオマス繊維、リサイクル/再生繊維の単一成分で形成されていても良く、これらを撚り合わせたハイブリッドコード、それぞれのフィラメントを合わせたマルチフィラメントを用いたコード、それぞれの成分が化学的に結合した化学構造を有するコードの何れであっても良い。
【0058】
ポリエステルコードとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)コード、ポリエチレンナフタレート(PEN)コード、ポリエチレンフラノエート(PEF)等が挙げられる。他のポリエステルコードと比較して、耐空気透過性に優れ、タイヤ内部の空気圧を保持しやすい観点から、PEFを用いても良い。また、ポリエステルコードの一部がポリアミド繊維等他の有機繊維からなるコードに代わった他の有機繊維からなるコードとのハイブリッドコードであっても良い。
【0059】
ポリエステルコードがバイオマス由来のポリエステルコードである場合、例えば、バイオマス由来のテレフタル酸やエチレングリコールを用いたバイオマスPETコード、バイオマス由来のフランジカルボン酸を用いたバイオマスPEFなどを好適に用いることができる。
【0060】
バイオマスポリエステルコードは、例えば、バイオエタノールやフルフラール類、カレン類、シメン類、テルペン類などから変換、もしくは各種動植物由来の化合物から変換、微生物等から直接発酵製造したバイオマステレフタル酸、バイオマスエチレングリコールなどから得ることが可能である。
【0061】
ポリアミドコードとしては、例えば、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0062】
脂肪族ポリアミドは、直鎖の炭素鎖がアミド結合により繋がった骨格を有するポリアミドであり、ナイロン4(PA4)、ナイロン410(PA410)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン610(PA610)、ナイロン10(PA10)、ナイロン1010(PA1010)、ナイロン1012(PA1012)、ナイロン11(PA11)、などを挙げることが出来る。中でも部分的又は完全にバイオマス由来の材料で得られやすい観点からはナイロン4、ナイロン410、ナイロン610、ナイロン10、ナイロン1010、ナイロン11などが挙げられる。
【0063】
ナイロン6及びナイロン66としては、従来の化学合成由来のカプロラクタムを開環重合させたもの、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸を縮合重合させたもののほか、バイオ由来のシクロヘキサンを出発原料としてバイオカプロラクタムもしくは、バイオアジピン酸、バイオヘキサメチレンジアミンを製造し、それらを用いたナイロン6、もしくはナイロン66を用いても良い。また、前述のバイオ原料は、グルコースのような糖などから得たものであっても良い。これらのナイロン6、ナイロン66は従来用いられてきたものと同様の強度を備えると考えられる。
【0064】
ナイロン4としては、バイオ発酵由来のグルタミン酸から、γ-アミノ酪酸に変換したのちに得られる2‐ピロリドンを原料としたものが代表として挙げられるが、これに限られない。ナイロン4は、熱的・機械的安定性が良好であり、高分子構造設計が容易という特徴を有しているため、タイヤの性能、強度向上に寄与するため、好適に用いることが可能である。
【0065】
ナイロン410、ナイロン610、ナイロン1010、ナイロン1012、ナイロン11等は、ひまし油(トウゴマ)から得られるリシノール酸などを原料として得ることが出来る。具体的には、ひまし油から得たセバシン酸、ドデカン二酸と、任意のジアミン化合物とを縮合重合することにより、ナイロン410、ナイロン610、ナイロン1010を得ることができ、ひまし油から得た11-アミノウンデカン酸を縮合重合することによりナイロン11を得ることが可能である。
【0066】
半芳香族ポリアミドは、分子鎖の一部に芳香環構造を有するポリアミドであり、例えば、ナイロン4T(PA4T)、ナイロン6T(PA6T)、ナイロン10T(PA10T)などが挙げられる。
【0067】
ナイロン4T、ナイロン6T、ナイロン10Tは、ジカルボン酸として、テレフタル酸を用い、それぞれ任意の炭素数のジアミン化合物と縮合重合を行うことにより得ることが可能である。その際、前述のバイオマス由来のテレフタル酸を用いてこれらのナイロン材料を得ることも可能である。これらは分子鎖内に剛直な環状構造を有する為、耐熱性などの観点で優れる。
【0068】
また、前述の脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドとして、リジン由来の1,5-ペンタンジアミンをジカルボン酸類と重合したポリアミド5X(Xはジカルボン酸由来の炭素数であり、整数もしくはテレフタル酸を表すT)などを挙げることが出来る。
【0069】
全芳香族ポリアミドとしては、芳香環がアミド結合により繋がった骨格を有するポリアミドであり、ポリパラフェニレンテレフタルアミドなどを挙げることができる。全芳香族ポリアミドも前述の脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドと同様に、バイオマス由来のテレフタル酸とフェニレンジアミンを結合させることにより得ても良い。
【0070】
セルロース繊維としては、木材パルプ等の植物素材から製造されるレーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、リヨセル、モダール等を挙げることができる。これらセルロース系繊維は、原料がカーボンニュートラルであるだけでなく、生分解性であり使用後焼却しても有害ガスが出ない等の優れた環境性能を有するため好ましい。上記の中でも、工程の効率、環境への優しさ、機械強度のバランスから、レーヨン、ポリノジック、リヨセルが特に好ましい。
【0071】
また、上記のコードは、合成、バイオマス由来を問わず、飲料用ボトルや衣料品などの使用済みのものから回収、精製したものを再度紡糸することにより得られたリサイクルコードであっても良い。
【0072】
上記のコードは、1本以上のフィラメントを撚り合わせることにより形成されてよい。例えば、1100デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1100/2デシテックス)、48回/10cmの下撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて下撚と反対又は同方向に同数の上撚をかけたもの、1670デシテックスのマルチフィラメントをそれぞれ2本合わせて(言い換えれば、1670/2デシテックス)、40回/10cmの撚りをかけた後、この下撚コード2本を合せて上撚をかけたものなどを使用することが出来る。
【0073】
また、上記のコードは、被覆層との良好な接着性を確保する観点から、予め接着層が塗布された処理をされていることが好ましい。接着層としては公知のものが使用でき、例えばレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)による処理のほか、ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物などによりエポキシ処理した後、RFL処理したものや、ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物により処理したもの等が使用可能である。
【0074】
レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)は、例えば、特開昭48-11335号公報に記載されているように、天然ゴム及び/又は合成ゴムラテックスと、フェノール-ホルムアルデヒドとレゾルシノールとの共縮合物とを含む接着剤組成物などが挙げられる。このような接着剤組成物は、例えば、アルカリ性触媒の存在下でフェノールとホルムアルデヒドとを縮合する工程と、水性フェノール-ホルムアルデヒド樹脂溶液とレゾルシノールとを共重合する工程と、生成したフェノール-ホルムアルデヒド-レゾルシノール樹脂溶液とラテックスゴムとを混合する工程とを含む製造方法により製造できる。
【0075】
なお、合成ゴムラテックスとしては、ブタジエン重合体ラテックス、スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス、イソプレン重合体ラテックス、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体ラテックス、ブタジエン/ビニルピリジン重合体ラテックス、ブタジエン/ビニルピリジン/スチレン共重合体ラテックスなどが挙げられる。
【0076】
上記レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)からなる接着層は、RFL接着剤を付与すること(上記コードをRFL液に浸漬(DIP:ディッピング)する方法など)により、形成できる。上記RFL接着剤は、通常、撚糸して繊維コードを得た後に付着されるが、撚糸の前又は途中に行ってもよい。
【0077】
上記RFL接着剤の組成は特に限定されず、適宜選択すればよいが、なかでも、レゾルシン0.1~10質量%、ホルマリン0.1~10質量%、及びラテックス1~28質量%を含む組成物であることが好ましく、レゾルシン0.5~3質量%、ホルマリン0.5~3質量%、及びラテックス10~25質量%を含む組成物であることがより好ましい。
【0078】
加熱処理における加熱方法としては、例えば、RFL接着剤組成物が付着したコードを100~250℃で1~5分乾燥処理した後、さらに、150~250℃で1~5分で熱処理を行う方法などが挙げられる。乾燥処理後の熱処理の条件は、180~240℃で1~2分であることが望ましい。
【0079】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物は、ソルビトールポリグリシジルエーテルと、ブロックイソシアネートとを含む組成物であれば特に限定されない。なかでも、ソルビトールポリグリシジルエーテルであって塩素含有量が9.6質量%以下であるエポキシ化合物と、ブロックイソシアネートとを含む組成物が望ましい。
【0080】
ソルビトールポリグリシジルエーテルとしては、ソルビトールジグリシジルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールペンタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、又はこれらの混合物などが挙げられ、ソルビトールモノグリシジルエーテルが含まれていてもよい。ソルビトールポリグリシジルエーテルは、1分子中に多数のエポキシ基を有しており高い架橋構造を形成することができる。
【0081】
ソルビトールポリグリシジルエーテルの塩素含有量は、9.6質量%以下が好ましく、9.5質量%以下がより好ましく、9.4質量%以下が更に好ましく、9.3質量%以下が特に好ましい。該塩素含有量の下限は、特に限定されず、例えば、1質量%以上である。
なお、本発明において、ソルビトールポリグリシジルエーテルの塩素含有量は、JIS K 7243-3に記載の方法などにより求めることができる。
【0082】
ソルビトールポリグリシジルエーテルの塩素含有量は、エポキシ化合物を合成する際に使用するエピクロルヒドリンの量を削減すること等により低減できる。
【0083】
ブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物とブロック剤との反応により生成し、ブロック剤由来の基により一時的に不活性化されている化合物であり、所定温度で加熱するとそのブロック剤由来の基が解離し、イソシアネート基を生成する。
【0084】
イソシアネート化合物としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するもの等が挙げられる。
2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、及びこれらの異性体、アルキル置換体、ハロゲン化物、ベンゼン環への水素添加物等を使用できる。また、3個のイソシアネート基を有するトリイソシアネート類、4個のイソシアネート基を有するテトライソシアネート類、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を使用できる。これらのイソシアネート化合物は、1種単独で又は2種以上併用することができる。中でも、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが好ましい。
【0085】
ブロック剤としては、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;フェノール、クレゾール、レゾルシノール、キシレノール等のフェノール系;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系等を挙げることができる。なかでも、ラクタム系、フェノール系、オキシム系ブロック剤が好ましい。
【0086】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物において、ブロックイソシアネートの含有量は、ソルビトールポリグリシジルエーテル100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは200質量部以上である。上限は、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下である。
【0087】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物には、必要に応じて以下の任意成分が含まれていても良い。例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル以外のエポキシ化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテルと共重合可能な樹脂、ブロックイソシアネート以外の硬化剤、有機増粘剤、酸化防止剤、光安定剤、接着性向上剤、補強剤、軟化剤、着色剤、レベリング剤、難燃剤、及び帯電防止剤等が挙げられる。
【0088】
ソルビトールポリグリシジルエーテル以外のエポキシ化合物として、例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、及びブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、及びダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル;トリグリシジルイソシアヌレート、グリシジルヒンダントイン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン;並びに3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の脂環族あるいは脂肪族エポキサイド等が挙げられる。
【0089】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物による処理としては、RFLに含まれる各種成分をコードに付着させるために行われる処理、及び必要に応じてその後の加熱処理を含む処理などが挙げられる。
【0090】
付着方法としては、例えば、ローラーを使った塗布、ノズルからの噴霧、浴液(接着剤組成物)への浸漬等任意の方法を用いることができる。均一に付着させ、かつ余分な接着剤を除去する観点から、浸漬による付着が好ましい。
【0091】
また、コードへの付着量を調整するために、圧接ローラーによる絞り、スクレイパー等によるかき落とし、空気吹き付けによる吹き飛ばし、吸引、ビーターによる叩き等の手段をさらに採用してもよい。
【0092】
コードへの付着量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。
なお、コードへの付着量は、コード100質量部に対して、付着される上記RFL接着剤中の固形分の量である。
【0093】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.9質量%以上、より好ましくは14質量%以上であり、また、好ましくは29質量%以下、より好ましくは23質量%以下である。
【0094】
上記ソルビトールポリグリシジルエーテルとブロックイソシアネートとを含む接着剤組成物には、レゾルシン、ホルマリン、ゴムラテックスの他に、加硫調整剤、亜鉛華、酸化防止剤、消泡剤等を添加してもよい。
【0095】
加熱処理における加熱方法としては、例えば、RFL接着剤組成物が付着した補強材を100~250℃で1~5分乾燥処理した後、さらに、150~250℃で1~5分で熱処理を行う方法などが挙げられる。乾燥処理後の熱処理の条件は、180~240℃で1~2分であることが望ましい。
【0096】
上記ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物はこれらの成分を含むものであれば特に限定されないが、ハロヒドリン化合物、ブロックイソシアネート化合物及びゴムラテックスを含み、かつレゾルシン及びホルムアルデヒドを含まない接着剤組成物が望ましい。
【0097】
ハロヒドリン化合物としては、ポリオール化合物とエピハロヒドリン化合物(ハロヒドリンエーテル)と反応させて得られる化合物などが挙げられる。
ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、酒石酸などのヒドロキシル酸、グリセリン酸、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
エピハロヒドリン化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられる。
【0098】
ハロヒドリン化合物としては、例えば、フルオロアルコール化合物、クロロヒドリン化合物、ブロモヒドリン化合物、ヨードヒドリン化合物などが挙げられる。なかでも、ハロゲン化ソルビトール、ハロゲン化グリセロールが好ましい。
【0099】
ハロヒドリン化合物100質量%中のハロゲン含有量は、5.0~15.0質量%が好ましく、7.0~13.0質量%がより好ましく、9.0~12.0質量%が更に好ましい。
【0100】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、前述のブロックイソシアネートと同様の化合物が挙げられる。また、ゴムラテックスは、前述のゴムラテックスと同様のものが挙げられる。
【0101】
上記ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物は、ハロヒドリン化合物が10.0~30.0質量部、ブロックイソシアネート化合物10.0~30.0質量部、及びゴムラテックス80.0~240.0質量部を含むことが望ましい。そして、当該接着剤組成物は、レゾルシン及びホルムアルデヒドを含まないことが望ましい。
【0102】
上記ハロヒドリン化合物とブロックイソシアネート化合物とゴムラテックスとを含む接着剤組成物からなる接着剤層は、該接着剤組成物を使用して、コードの表面上に形成される。該接着剤層は、例えば、浸漬、ブラッシング、鋳造、噴霧、ロールコーティング、ナイフコーティングなどによって形成されるが、これらに限定されない。
【0103】
図5は、
図1のタイヤ2のトレッド部4の近辺が示された拡大断面図である。
図5のA(mm)は、タイヤ赤道面CL上におけるトレッド表面24からベルト層16までのタイヤ半径方向距離である。
【0104】
Aは、好ましくは8.0mm以上、より好ましくは9.0mm以上、更に好ましくは10.0mm以上、特に好ましくは10.6mm以上であり、また、好ましくは13.0mm以下、より好ましくは12.0mm以下、更に好ましくは11.0mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0105】
なお、本発明において、「タイヤ赤道面上におけるトレッド表面からベルト層までのタイヤ半径方向距離A」は、タイヤ赤道面上におけるトレッド表面と最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ最表面側界面までの距離を指す。タイヤ赤道面上に溝を有する場合は、該溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線で形成される面と最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ最表面側の界面までの距離である。なお、ベルトプライにベルト補強層は含まれない。
図5のタイヤ2の場合、Aは、タイヤ赤道面CL上におけるトレッド表面24に相当する溝26のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線で形成される面から、外側層40(第2ベルトプライ)のタイヤ半径方向外側表面までの直線距離である。
【0106】
図5のB(mm)は、ベルトプライのうち最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ幅方向端部Pにおけるトレッド表面24からベルト層までの距離である。
【0107】
Bは、好ましくは6.0mm以上、より好ましくは8.0mm以上、更に好ましくは8.3mm以上、より更に好ましくは9.0mm以上、特に好ましくは9.6mm以上であり、また、好ましくは11.8mm以下、より好ましくは11.0mm以下、更に好ましくは10.5mm以下、より更に好ましくは10.0mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0108】
なお、本発明において、「ベルトプライのうち最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ幅方向端部におけるトレッド表面からベルト層までの距離B」は、トレッド表面と、ベルトプライのうち最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ幅方向端部のタイヤ最表面側界面との最短距離を指す。トレッド表面の溝部については溝底部との距離ではなく、前記Aと同様、溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線で形成される面との最短距離である。
図5のタイヤ2の場合、Bは、トレッド表面24と、外側層40(第2ベルトプライ)のタイヤ幅方向端部Pのタイヤ半径方向外側表面との最短距離である。
【0109】
タイヤ2において、A/Bは、好ましくは1.06以上、より好ましくは1.08以上、更に好ましくは1.10以上であり、また、好ましくは1.28以下、より好ましくは1.22以下、更に好ましくは1.18以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0110】
A/Bを上記範囲、特に1.08以上、1.22以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
A/Bが大きい場合には、トレッド部が接地する際にベルト層端部の動きが大きくなり、ベルトコードが疲労し損傷しやすくなると考えられる。
一方で、A/Bが小さい場合にはトレッド部のタイヤ幅方向中央部が接地する際にタイヤ半径方向内側へ変形し、浮いた状態(バックリング)となりやすくなり、局所的な曲げが発生してしまい、損傷しやすくなると考えられる。
よって、上記範囲、特に1.08以上、1.22以下に調整することで、耐久性能が顕著に向上すると推察される。
【0111】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、ベルトコード17Aのタイヤ幅方向の配列本数E(本/50mm)と、トレッド部4の最表層を構成するキャップトレッドの硬度Hの積(E×H)とが、2920以上、4920以下であることが望ましい。
E×Hの下限は、好ましくは3220以上、より好ましくは3360以上、更に好ましくは3400以上、より更に好ましくは3520以上、より更に好ましくは3720以上である。上限は、好ましくは4900以下、より好ましくは4760以下、更に好ましくは4620以下、より更に好ましくは4320以下、より更に好ましくは4060以下、特に好ましくは4020以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0112】
E×Hを上記範囲、特に2920以上、4620以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
キャップトレッドが柔らかくかつ配列本数が少ないと、トレッド部の剛性が低くなるので、ベルト層に曲げが発生しやすくなる。
キャップトレッドが固いと、トレッド部の剛性値が高すぎるために、接地時の地面からの衝撃を吸収できず、コード折れを発生させてしまう。
一方、E×Hを上記範囲に調整すると、ベルト層の曲げやコード折れが防止されるため、耐久性能が顕著に向上すると推察される。
【0113】
なお、本発明において、キャップトレッドとは、トレッド部4を構成するゴム層のうち、タイヤ半径方向の最表層を形成するゴム層であり、トレッド部4が単層構造トレッドの場合は単層構造のトレッド自体、キャップ層及びベース層の2層構造のトレッドの場合はキャップ層、3層以上の構造を有するトレッドを構成する場合は最も外側の層を形成するゴム層が、それぞれキャップトレッドに相当する。
【0114】
キャップトレッドの硬度Hは、好ましくは56以上、より好ましくは58以上、更に好ましくは60以上、より更に好ましくは62以上であり、また、好ましくは70以下、より好ましくは68以下、更に好ましくは66以下、より更に好ましくは65以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0115】
なお、本発明において、ゴム組成物(加硫後)の硬度(JIS-A硬度)は、JIS K6253-3:2012の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、25℃で測定される。
タイヤから採取して測定する際、サンプルサイズは30mm×30mm×4mmのサイズとし、タイヤのパターンなどにより、同じサイズのサンプルの作成が困難な場合には、可能な限り大きいサイズでサンプルを採取し、N=5で測定可能な数だけ、トレッド部からサンプルを作成すれば良い。
【0116】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、トレッド部4に形成された周方向溝の溝深さG(mm)が、5.0mm以上であることが望ましい。
Gは、好ましくは5.5mm以上、より好ましくは6.0mm以上、更に好ましくは7.0mm以上、特に好ましくは8.0mm以上である。上限は、好ましくは12.0mm以下、より好ましくは11.0mm以下、更に好ましくは10.0mm以下、より更に好ましくは8.5mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0117】
なお、本明細書において、周方向溝の溝深さGとは、トレッド最表面の接地面を形成する面を延長した面の法線に沿って計測され、該接地面を形成する面を延長した面から最深の溝底までの距離を意味し、備えられた周方向溝の溝深さのうち、最大の距離を指す。
【0118】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、ベルトコード17Aの外径D及びベルトコード17Aのタイヤ幅方向におけるコード間距離Lの積(D×L)が、0.09以上、0.28以下であることが望ましい。
D×Lは、好ましくは0.12以上、より好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上、より更に好ましくは0.17以上である。上限は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.24以下、更に好ましくは0.22以下、より更に好ましくは0.20以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0119】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、ベルトコード17Aの外径D、タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向のベルトコード17Aの配列本数E(本/50mm)、及びベルトコード17Aのタイヤ幅方向におけるコード間距離Lの積(D×E×L)が、7.6以上、12.0以下であることが望ましい。
D×E×Lは、好ましくは8.5以上、より好ましくは8.9以上、更に好ましくは10.4以上である。上限は、好ましくは11.5以下、より好ましくは11.0以下、更に好ましくは10.8以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0120】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、タイヤ赤道面CL上におけるトレッド表面24からベルト層16までのタイヤ半径方向距離A/ベルトプライのうち最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ幅方向端部Pにおけるトレッド表面24からベルト層までの距離B(A/B)に対するベルトコード17Aの外径Dの比(D/(A/B))が、0.20以上、0.55以下であることが望ましい。
D/(A/B)は、好ましくは0.27以上、より好ましくは0.32以上、更に好ましくは0.35以上、より更に好ましくは0.41以上、より更に好ましくは0.42以上、より更に好ましくは0.44以上である。上限は、好ましくは0.52以下、より好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.49以下、特に好ましくは0.47以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0121】
D/(A/B)を上記範囲、特に0.20以上、0.55以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
前述の通り、A/Bが大きくなると接地時のベルト層端部の変形量が大きくなると考えられる。そのため、A/Bに対して、ベルトコード17Aの外径Dを大きくすることで、変形に対して十分な強度が発揮されるため、耐久性能が向上すると考えられる。一方で、過度にベルトコード17Aの外径Dが大きい場合やA/Bが極端に小さい場合は、良好な接地形状が得られにくくなることから、上限以下とすることが好ましいと考えられる。
【0122】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、タイヤ赤道面CL上におけるトレッド表面24からベルト層16までのタイヤ半径方向距離A/ベルトプライのうち最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ幅方向端部Pにおけるトレッド表面24からベルト層までの距離B(A/B)に対する、ベルトコード17Aの外径D及びタイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向のベルトコード17Aの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)の比((D×E)/(A/B))が、20以上、35以下であることが望ましい。
(D×E)/(A/B)は、好ましくは21以上、より好ましくは22以上、更に好ましくは23以上である。上限は、好ましくは30以下、より好ましくは28以下、更に好ましくは24以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0123】
(D×E)/(A/B)を上記範囲、特に20以上、35以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
前述の通り、A/Bが大きくなると接地時のベルト層端部の変形量が大きくなると考えられる。そのため、A/Bに対して、ベルトコード17Aの外径D及び配列本数Eの積(D×E)を大きくすることで、変形に対して十分な強度が発揮されるため、耐久性能が向上すると考えられる。一方で、過度にベルトコード17Aの外径D及び配列本数Eの積(D×E)が大きい場合やA/Bが極端に小さい場合は、良好な接地形状が得られにくくなることから、上限以下とすることが好ましいと考えられる。
【0124】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、ベルトコード17Aの外径D、及びトレッド部4の最表層を構成するキャップ層30(キャップトレッド)の硬度Hの積(D×H)が、19以上、34以下であることが望ましい。
D×Hは、好ましくは22以上、より好ましくは23以上、更に好ましくは24以上、より更に好ましくは26以上、より更に好ましくは27以上である。上限は、好ましくは32以下、より好ましくは31以下、更に好ましくは30以下、より更に好ましくは28以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0125】
D×Hを上記範囲、特に23以上、30以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
キャップトレッドが柔らかくかつベルトコード17Aの外径Dが小さいと、トレッド部の剛性が低くなるので、ベルト層に曲げが発生しやすくなる。
キャップトレッドが固いと、トレッド部の剛性値が高すぎるために、接地時の地面からの衝撃を吸収できず、コード折れを発生させてしまう。
そのため、D×Hを上記範囲に調整すると、ベルト層の曲げやコード折れが防止されるため、耐久性能が顕著に向上すると推察される。
【0126】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、ベルトコード17Aの外径D、タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向のベルトコード17Aの配列本数E(本/50mm)、及びトレッド部4の最表層を構成するキャップ層30(キャップトレッド)の硬度Hの積(D×E×H)が、1574以上、1900以下であることが望ましい。
D×E×Hは、好ましくは1590以上、より好ましくは1595以上、更に好ましくは1600以上である。上限は、好ましくは1862以下、より好ましくは1809以下、更に好ましくは1800以下、より更に好ましくは1700以下、より更に好ましくは1680以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0127】
D×E×Hを上記範囲、特に1590以上、1900以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
キャップトレッドが柔らかくかつベルトコード17Aの外径Dや配列本数Eが小さいと、トレッド部の剛性が低くなるので、ベルト層に曲げが発生しやすくなる。
キャップトレッドが固いと、トレッド部の剛性値が高すぎるために、接地時の地面からの衝撃を吸収できず、コード折れを発生させてしまう。
そのため、D×E×Hを上記範囲に調整すると、ベルト層の曲げやコード折れが防止されるため、耐久性能が顕著に向上すると推察される。
【0128】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、トレッド部4に形成された周方向溝の溝深さG(mm)に対するベルトコード17Aの外径Dの比(D/G)が、0.030以上、0.060以下であることが望ましい。
D/Gは、好ましくは0.035以上、より好ましくは0.036以上、更に好ましくは0.040以上、より更に好ましくは0.042以上、より更に好ましくは0.048以上である。上限は、好ましくは0.059以下、より好ましくは0.058以下、更に好ましくは0.056以下、より更に好ましくは0.054以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0129】
D/Gを上記範囲、特に0.030以上、0.060以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
トレッド部が路面に接地する際、トレッド部は溝底部を中心に変形しやすくなると考えられる。溝深さが深い場合には、溝底部での変形量が大きくなり、ベルト層の変形量も大きくなると考えられる。そのため、溝深さGに対して、ベルトコード17Aの外径Dを十分に大きくすることで、溝底部での変形によりベルトコード17Aが損傷することを抑制しやすくなると考えられる。
一方で、ベルトコード17Aの外径Dが溝深さに対して過度に大きくなると、溝底部での変形が生じにくくなることで、接地性が低下し、接地時の力がベルト層の一部に集中してしまうため、上限以下に設定することが好ましいと考えられる。
【0130】
タイヤ2は、効果がより良好に得られる観点から、トレッド部4に形成された周方向溝の溝深さG(mm)に対する、ベルトコード17Aの外径D及びタイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向のベルトコード17Aの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)の比((D×E)/G)が、2.0以上、5.0以下であることが望ましい。
(D×E)/Gは、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.4以上、更に好ましくは2.5以上、より更に好ましくは2.6以上、より更に好ましくは2.7以上である。上限は、好ましくは4.7以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下、より更に好ましくは3.3以下、より更に好ましくは3.2以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0131】
(D×E)/Gを上記範囲、特に2.0以上、5.0以下に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
トレッド部が路面に接地する際、トレッド部は溝底部を中心に変形しやすくなると考えられる。溝深さが深い場合には、溝底部での変形量が大きくなり、ベルト層の変形量も大きくなると考えられる。そのため、溝深さGに対して、ベルトコード17Aの外径D及び配列本数Eの積を十分に大きくすることで、溝底部での変形によりベルトコード17Aが損傷することを抑制しやすくなると考えられる。
一方で、ベルトコード17Aの外径D及び配列本数Eの積が溝深さに対して過度に大きくなると、溝底部での変形が生じにくくなることで、接地性が低下し、接地時の力がベルト層の一部に集中してしまうため、上限以下に設定することが好ましいと考えられる。
【0132】
ゴム組成物(加硫後)の硬度は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、軟化剤、硫黄)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、軟化剤を減量、充填材を増量、硫黄を増量すると大きくなり、軟化剤を増量、充填材を減量、硫黄を減量すると小さくなる傾向がある。
【0133】
図1のベルト層16は、トレッド部4の半径方向内側に位置している。ベルト層16は、カーカス14と積層されている。ベルト層16は、カーカス14を補強する。
図1のタイヤ2では、ベルト層16は、内側層38及び外側層40からなる。
図1から明らかなように、軸方向において、内側層38の幅は外側層40の幅よりも若干大きいことが望ましい。このタイヤ2では、ベルト層16の軸方向幅はタイヤ2の断面幅の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
【0134】
図1のタイヤ2において、インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー20の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0135】
それぞれのチェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなることが望ましい。このチェーファー22が、クリンチ10と一体とされてもよい。
【0136】
このタイヤ2では、トレッド部4は溝26として主溝42を備えている。
図1に示されているように、このトレッド部4には、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド部4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブ44が形成されている。つまり、リブ44とリブ44との間が主溝42である。
【0137】
それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。主溝42は、例えば雨天時において、路面とタイヤ2との間に存在する水の排水を促す。このため、路面が濡れていても、タイヤ2は路面と十分に接触することができる。
【0138】
タイヤ2において、トレッド部4(単層構造トレッド、2層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッド部など)を構成する各ゴム層(
図1のキャップ層30、ベース層28など)は、それぞれのトレッド用ゴム組成物で構成される。また、ベルト層16(内側層38、外側層40など)は、ベルトコード17Aと、ベルトコード17Aを被覆するトッピングゴム17B(被覆ゴム)とを含み、被覆ゴムは、ベルト層用被覆ゴム組成物で構成される。
【0139】
以下のゴム組成物に用いることができる材料について、特に断りがない限り、トレッド部(トレッド用ゴム組成物)、ベルト層の被覆ゴム(ベルト層用被覆ゴム組成物)の双方に共通である。
【0140】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物は、ゴム成分を含む。
ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーで、アセトンにより抽出されないポリマー成分がゴム成分に該当する。前記ゴム成分は、常温(25℃)で固体状態である。
【0141】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0142】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0143】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、トレッド用ゴム組成物においては、効果がより得られる観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましく、BR、SBRがより好ましい。また、ベルト層用被覆ゴム組成物においては、効果がより得られる観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましく、イソプレン系ゴムがより好ましい。
また、これらのゴム成分は後述の変性処理、水素添加処理が行われていても良く、オイル、樹脂、液状ゴム成分などにより伸展された、伸展ゴムを用いても良い。
【0144】
上記ジエン系ゴムは、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0145】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0146】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
トレッド用ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0148】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、特に好ましくは85質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0149】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
BRのシス含量は、BRが1種である場合、当該BRのシス含量を意味し、複数種である場合、平均シス含量を意味する。
BRの平均シス含量は、{Σ(各BRの含有量×各BRのシス含量)}/全BRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、シス含量:90質量%のBRが20質量%、シス含量:40質量%のBRが10質量%である場合、BRの平均シス含量は、73.3質量%(=(20×90+10×40)/(20+10))である。
【0150】
また、BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。また、BRは、水素添加ブタジエン重合体(水添BR)も使用可能である。
【0151】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0152】
トレッド用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0153】
ベルト層用被覆ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0154】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0155】
SBRのスチレン含有量(スチレン量)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内にすることで、耐久性能が改善される傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、1H-NMR測定によって測定できる。
SBRのスチレン含有量は、SBRが1種である場合、当該SBRのスチレン含有量を意味し、複数種である場合、平均スチレン含有量を意味する。
SBRの平均スチレン含有量は、{Σ(各SBRの含有量×各SBRのスチレン含有量)}/全SBRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン含有量40質量%のSBRが85質量%、スチレン含有量25質量%のSBRが5質量%である場合、SBRの平均スチレン含有量は、39.2質量%(=(85×40+5×25)/(85+5))である。
【0156】
SBRのビニル結合量(ビニル量)は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは42質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内にすることで、耐久性能が改善される傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
SBRのビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)はSBR中におけるブタジエン部の総質量を100としたときのビニル結合の割合であり(単位:質量%)、ビニル量[質量%]+シス量[質量%]+トランス量[質量%]=100[質量%]となる。SBRが1種である場合、当該SBRのビニル結合量を意味し、複数種である場合、平均ビニル結合量を意味する。
SBRの平均ビニル結合量は、Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン含有量[質量%])×各SBRのビニル結合量[質量%]}/Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン含有量[質量%])}で算出でき、例えば、ゴム成分100質量部中、スチレン含有量40質量%、ビニル結合量30質量%のSBRが75質量部、スチレン含有量25質量%、ビニル結合量20質量%のSBRが15質量部、残り10質量部がSBR以外である場合、SBRの平均ビニル結合量は、28質量%(={75×(100[質量%]-40[質量%])×30[質量%]+15×(100[質量%]-25[質量%])×20[質量%])}/{75×(100[質量%]-40[質量%])+15×(100[質量%]-25[質量%])}である。
【0157】
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれも使用可能である。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。また、SBRとして、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)も使用可能である。
【0158】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0159】
トレッド用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0160】
ベルト層用被覆ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0161】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物は、フィラー(充填材)を含んでもよい。
フィラー(充填材)としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー、バイオ炭(BIO CHAR);難分散性フィラー等が挙げられる。
【0162】
トレッド用ゴム組成物において、フィラーの合計含有量(シリカ、カーボンブラックなどのフィラーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは65質量部以上、より更に好ましくは70質量部以上、特に好ましくは80質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0163】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、フィラーの合計含有量(シリカ、カーボンブラックなどのフィラーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0164】
フィラー(充填材)のなかでも、カーボンブラックなどの炭素由来フィラー(炭素含有フィラー)、シリカが好ましい。
【0165】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物に使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、日鉄カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、従来の鉱物油などを原料としたカーボンブラックのほか、リグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックを用いても良い。また、タイヤなどのカーボンブラックを含むゴム製品、プラスチック製品などを分解して得られたリサイクルカーボンブラックを適宜、上記カーボンブラックと等量置換して用いても良い。
【0166】
トレッド用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上が更に好ましい。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、120m2/g以下が更に好ましく、114m2/g以下がより更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0167】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、25m2/g以上が更に好ましい。また、上記N2SAは、80m2/g以下が好ましく、60m2/g以下がより好ましく、45m2/g以下が更に好ましく、35m2/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0168】
トレッド用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、より更に好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0169】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0170】
特に、ベルト層用被覆ゴム組成物において、窒素吸着比表面積が45m2/g以下のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、特に好ましくは30質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0171】
ベルト層用被覆ゴム組成物においてN2SAが上記範囲のカーボンブラックを所定量配合すること、特にN2SA45m2/g以下のカーボンブラックを5~60質量部配合することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、ベルト被覆層に大粒径のカーボンブラックを用いることで、ベルト層の発熱性を低下させやすく、ベルト層での応答性を向上させやすくすることが可能となり、それにより、耐久性能が向上すると推察される。
【0172】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのシリカのほか、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカを用いても良い。
【0173】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上、より更に好ましくは175m2/g以上、特に好ましくは180m2/g以上、最も好ましくは190m2/g以上である。また、シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下、更に好ましくは250m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0174】
トレッド用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは65質量部以上、特に好ましくは75質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0175】
シリカ量を上記範囲、特に50~100質量部に調整することで、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、所定量のシリカを用いることで、tanδを低下させやすくなり、応答性を向上させやすくすることが可能となるため、耐久性能が向上すると推察される。
【0176】
ベルト層用被覆ゴム組成物がシリカを含む場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0177】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム分野で公知のものが使用可能であり、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0178】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0179】
難分散性フィラーとしては、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維、短繊維状セルロース、ゲル状化合物等が挙げられる。なかでも、ミクロフィブリル化植物繊維が好ましい。
【0180】
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらのミクロフィブリル化植物繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、典型的には、平均繊維径が10μm以下の範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径500nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。典型的なセルロースミクロフィブリルは、例えば、上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されている。
【0182】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、難分散性フィラーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0183】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物には、可塑剤を配合してもよい。
可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
【0184】
トレッド用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、前述の伸展ゴムを用いる場合、その伸展ゴムに用いられた伸展成分量は可塑剤の含有量に含まれる。
【0185】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、前述の伸展ゴムを用いる場合、その伸展ゴムに用いられた伸展成分量は可塑剤の含有量に含まれる。
【0186】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマーなど)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0187】
トレッド用ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、オイルの含有量も同様の範囲が好適である。
【0188】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、オイルの含有量も同様の範囲が好適である。
【0189】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、MES(Mild Extract Solvate)、DAE(Distillate Aromatic Extract)、TDAE(treated Distillate Aromatic Extract)、TRAE(treated Residual Aromatic Extract)、RAE(residual Aromatic Extract)などのパラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。またライフサイクルアセスメントの観点から上記したオイルとして、ゴム混合機やエンジンなどで用いられた潤滑油や調理店で使用された廃食用油を精製したものを用いても良い。
【0190】
液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0191】
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0192】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物に使用可能な上記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
【0193】
トレッド用ゴム組成物が上記樹脂を含有する場合、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0194】
ベルト層用被覆ゴム組成物が上記樹脂を含有する場合、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下であり、0質量部でもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0195】
上記樹脂の軟化点は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、耐久性能が改善される傾向がある。
なお、上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。前記した樹脂の軟化点は通常、樹脂のガラス転移温度より50℃±5℃高い値となる。
【0196】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0197】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0198】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0199】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0200】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0201】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0202】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
【0203】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーである。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。また、これらの水素添加物も使用できる。
【0204】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0205】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0206】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0207】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0208】
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0209】
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0210】
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0211】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0212】
上記可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業等の製品を使用できる。
【0213】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0214】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0215】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0216】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、より更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0217】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0218】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは11.0質量部以下、更に好ましくは10.0質量部以下である。
【0219】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0220】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは7.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
【0221】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0222】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0223】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な性能を付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
【0224】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
【0225】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0226】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。上限は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
【0227】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のベンゾチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、ベンゾチアゾール系加硫促進剤が好ましい。
【0228】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0229】
トレッド部4は、トレッド部を構成する少なくとも1つのゴム層として上述のゴム組成物を用いることが望ましいが、トレッド部4のタイヤ半径方向の最外層のゴム層(
図1の例では、キャップ層30)が上述の好適なゴム組成物で構成されることが望ましい。
【0230】
また、ベルト層用被覆ゴム組成物は、有機酸コバルト、熱硬化性樹脂などを含んでもよい。
ここで、熱硬化性樹脂は、熱により効果反応を起こす樹脂で、可塑剤に含まれる樹脂と異なり溶媒抽出されない成分であるため、両者は区別される。
【0231】
有機酸コバルトとしては、例えば、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ホウ素3ネオデカン酸コバルト、アビチエン酸コバルト等が挙げられる。市販品としては、大日本インキ化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ステアリン酸コバルトが好ましい。
【0232】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、有機酸コバルトの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、コバルト元素に換算して、好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは1.2質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0233】
熱硬化性樹脂としては、レゾルシン縮合物(レゾルシン樹脂)、フェノール樹脂を好適に使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0234】
レゾルシン縮合物としては、例えば、下記式で表される化合物(樹脂)を使用できる。
【化1】
(式中、nは1以上の整数である。)
【0235】
また、レゾルシン縮合物は、変性レゾルシン縮合物であってもよい。変性レゾルシン縮合物としては、例えば、下記式で表される化合物(樹脂)を使用できる。
【化2】
(式中、nは1以上の整数であり、Rはアルキル基である。)
【0236】
レゾルシン縮合物の市販品としては、田岡化学工業(株)、インドスペック社等の製品を使用できる。
【0237】
フェノール樹脂は、フェノールと、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを、酸又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるものである。
【0238】
また、フェノール樹脂は、カシューオイル、トールオイル、ロジン等で変性された変性フェノール樹脂であってもよい。変性フェノール樹脂としては、カシューオイル変性フェノール樹脂が好ましい。また、カシューオイル変性フェノール樹脂としては、例えば、下記式で表される化合物(樹脂)を使用できる。
【化3】
(式中、pは、1~9の整数であり、5~6が好ましい。)
【0239】
フェノール樹脂の市販品としては、住友ベークライト(株)等の製品を使用できる。
【0240】
ベルト層用被覆ゴム組成物において、熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0241】
また、トレッド部4、ベルト層16以外の他の部材を構成するゴム組成物においても、前述の材料を用い、適宜配合量を変更して使用することが可能である。
【0242】
トレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物などの製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0243】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0244】
本発明の適用が可能なタイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。
【0245】
タイヤは、通常の方法により製造できる。例えば、未加硫の段階で、各種材料を配合したトレッド用ゴム組成物をトレッド部の形状に合わせて押し出し加工し、また、スチールコード(スチールモノフィラメント)と、スチールコードを被覆する各種材料を配合したベルト層用被覆ゴム組成物とを合わせてベルト層の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0246】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例0247】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0248】
図1の基本構造を有するサイズ195/65R15の乗用車用の空気入りタイヤ(試験用タイヤ)を、表1の仕様に基づき試作される。
試験用タイヤの共通仕様は、以下の通りである。
ベルトプライ:2枚(2層構造のベルト層)
各ベルト層内のベルトコードのタイヤ周方向に対する角度:20度(交差)
各ベルト層内のベルトコード:スチールコード
【0249】
各試験用タイヤは、キャップ層、ベルトプライの被覆ゴム(内側層の被覆ゴム及び外側層の被覆ゴム)は、表1に示されている配合のトレッド用ゴム組成物、ベルト層用被覆ゴム組成物で構成されている。
【0250】
表1に従って仕様を変化させた試験用タイヤを想定して、下記評価方法に基づいて算出した結果を表1に示す。
なお、基準比較例は比較例6とする。
【0251】
<硬度測定(H)>
JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、試験用タイヤのキャップ層(加硫済)から作製した試験片(30mm×30mm×4mmの直方体形状)のショア硬度(H)を測定する(JIS-A硬度)。測定は、25℃で実施する。値は、測定5回の平均値とする。
【0252】
<耐久性能>
試験用タイヤについて、ドラム試験機を用いて、標準リム(6.0J)、内圧(260kPa)、荷重(4.56kN)、雰囲気温度25℃の条件下、ドラム上で、速度を230km/hとして、損傷が発生するまでの走行時間を測定する。結果は、基準比較例を100として指数表示をする。指数が大きいほど、耐久性能に優れている。
【0253】
表1のトレッド配合(トレッド用ゴム組成物)の材料は、以下のとおりである。
SBR:JSR(株)製のHPR840(Tg:-65℃、スチレン量:10質量%、ビニル量:42質量%)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量98質量%)
シリカ:ウルトラシルVN3(エボニック社製、N2SA175m2/g)
カーボンブラックN220:ダイアブラックN220(三菱化学(株)製、N2SA114m2/g)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAH-24(アロマ系プロセスオイル)
シランカップリング剤:Si69(エボニック社製、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
ワックス:オゾエース0355(日本精蝋(株)製)
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤RD:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油(株)製
酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製)
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ-G(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDZ(N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、DCBS)
【0254】
表1のベルト層の被覆ゴム配合(ベルト層用被覆ゴム組成物)の材料は、以下のとおりである。
NR:TSR20
カーボンブラックN326:三菱化学(株)製のダイアブラックN326(N2SA:80m2/g)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAH-24(アロマ系プロセスオイル)
熱硬化性樹脂:田岡化学工業(株)製のスミカノール620(変性レゾルシン縮合物、軟化点:100℃)
ステアリン酸:日油(株)製
ステアリン酸コバルト:大日本インキ化学工業(株)製のcost-F(コバルト含有量:9.5質量%)
老化防止剤RD:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製)
硫黄:粉末硫黄(鶴見化学工業(株)製)
加硫促進剤DZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDZ(N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、DCBS)
【0255】
【0256】
本発明(1)は、ベルト層を備えたタイヤであって、
前記ベルト層はベルトプライを含み、
前記ベルトプライの補強材が4本のフィラメントをより合わせた1×4構造のベルトコードであり、
前記ベルトコードの外径D(mm)が0.50mm以下であり、
前記ベルトコードの外径D(mm)及び前記タイヤの幅方向断面におけるタイヤ幅方向の前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)の積(D×E)が、20.0以上、28.0以下であるタイヤである。
【0257】
本発明(2)は、前記ベルトコードのタイヤ幅方向におけるコード間距離L(mm)が0.30mm以上である本発明(1)記載のタイヤである。
【0258】
本発明(3)は、前記ベルトコードのタイヤ幅方向におけるコード間距離L(mm)が0.60mm以下である本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
【0259】
本発明(4)は、トレッド部を有し、
タイヤ赤道面上におけるトレッド表面から前記ベルト層までのタイヤ半径方向距離をA、前記ベルトプライのうち最もタイヤ半径方向外側のベルトプライのタイヤ幅方向端部におけるトレッド表面からベルト層までの距離をBとしたとき、A/Bが1.08以上、1.22以下である本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0260】
本発明(5)は、トレッド部を有し、
ベルトコードのタイヤ幅方向の配列本数E(本/50mm)と、トレッド部の最表層を構成するキャップトレッドの硬度Hとの積(E×H)が、2920以上、4620以下である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0261】
本発明(6)は、前記D及び前記Lの積(D×L)が、0.12以上、0.28以下である本発明(2)~(5)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0262】
本発明(7)は、前記D、前記E及び前記Lの積(D×E×L)が、8.5以上、12.0以下である本発明(2)~(6)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0263】
本発明(8)は、前記A/Bに対する前記Dの比(D/(A/B))が、0.20以上、0.55以下である本発明(4)~(7)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0264】
本発明(9)は、前記A/Bに対する前記D及び前記Eの積(D×E)の比((D×E)/(A/B))が、20以上、35以下である本発明(4)~(8)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0265】
本発明(10)は、前記D及び前記Hの積(D×H)が、23以上、30以下である本発明(5)~(9)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0266】
本発明(11)は、前記D、前記E及び前記Hの積(D×E×H)が、1590以上、1700以下である本発明(5)~(10)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0267】
本発明(12)は、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さG(mm)に対する前記Dの比(D/G)が、0.030以上、0.060以下である本発明(1)~(11)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0268】
本発明(13)は、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さG(mm)に対する前記D及び前記Eの積(D×E)の比((D×E)/G)が、2.0以上、5.0以下である本発明(1)~(12)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0269】
本発明(14)は、前記ベルトコードの配列本数E(本/50mm)が、50~70本/50mmである本発明(1)~(13)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0270】
本発明(15)は、トレッド部を有し、トレッド部の最表層を構成するキャップトレッドの硬度Hが、58~68である本発明(1)~(14)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。