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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086564
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023150361
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022200511
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野 志津子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓己
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA11
2G046AA19
2G046AA21
2G046AA24
2G046BA01
2G046BA06
2G046BA09
2G046BB02
2G046BB04
2G046FB02
2G046FE02
2G046FE03
2G046FE09
2G046FE12
2G046FE15
2G046FE21
2G046FE25
2G046FE29
2G046FE31
2G046FE34
2G046FE35
2G046FE38
2G046FE39
2G046FE46
2G046FE49
(57)【要約】
【課題】簡易なプロセスで製造可能であって、良好な検出安定性および検出応答性を奏するガスセンサを提供する。
【解決手段】キャビティが形成される基材と、前記基材における前記キャビティの周縁部であるキャビティ周縁部に接続する複数の梁部と、前記梁部を介して前記キャビティ上に保持される第1絶縁膜メンブレン部と、を有する第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上側に積層する第2の絶縁膜と、前記第1絶縁膜メンブレン部の上側に設けられるヒーター部と、前記第1絶縁膜メンブレン部と前記第2の絶縁膜との間に設けられ、上方から見て前記ヒーター部より前記第1絶縁膜メンブレン部の中心側に配置され、上側を向く平坦面を形成する平坦部と、前記平坦部の上側に少なくとも前記第2の絶縁膜を介して配置され、前記平坦面より狭い面積を有するガス検出部と、を有するガスセンサ。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティが形成される基材と、
前記基材における前記キャビティの周縁部であるキャビティ周縁部に接続する複数の梁部と、前記梁部を介して前記キャビティ上に保持される第1絶縁膜メンブレン部と、を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上側に積層する第2の絶縁膜と、
前記第1絶縁膜メンブレン部の上側に設けられるヒーター部と、
前記第1絶縁膜メンブレン部と前記第2の絶縁膜との間に設けられ、上方から見て前記ヒーター部より前記第1絶縁膜メンブレン部の中心側に配置され、上側を向く平坦面を形成する平坦部と、
前記平坦部の上側に少なくとも前記第2の絶縁膜を介して配置され、前記平坦面より狭い面積を有するガス検出部と、
を有するガスセンサ。
【請求項2】
前記平坦部は、前記第2の絶縁膜より熱伝導率が高いことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記平坦部は、前記ヒーター部と同じ材質であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記ヒーター部は、略矩形である前記第1絶縁膜メンブレン部の辺の長さの1/2以下の振幅で屈曲を繰り返す屈曲部を有する請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記ヒーター部は、前記第1絶縁膜メンブレン部の中心を通り水平方向に延びる基準線を基準として、対称な形状を有する請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記ヒーター部は、前記平坦部と繋がっている請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記ガス検出部は、半導体材料に接触する少なくとも1対の電極を有し、
前記電極の間の抵抗変化によりガスの検出を行う請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記ガス検出部は、触媒材料に接触するPt線を有し、
前記Pt線の抵抗変化によりガスの検出を行う請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記ガス検出部は、サーミスタ膜に接触する少なくとも1対の電極を有し、
前記電極の間の抵抗変化によりガスの検出を行う請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記サーミスタ膜は、触媒材料に接触する請求項9に記載のガスセンサ。
【請求項11】
前記キャビティ周縁部に設けられるヒーター端子と前記ヒーター部とを、複数の前記梁部のいずれかの上側を通って接続するヒーター配線部を有する請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項12】
前記キャビティ周縁部に設けられる検出端子と前記ガス検出部とを、複数の前記梁部のいずれかの上側を通って接続する検出配線部を有する請求項1に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、雰囲気中に存在するガスを検知し、その種類、濃度等の情報を電気信号に変換して出力する装置である。このようなガスセンサは、家電機器、産業用機器、環境モニタリング機器等に搭載され、人間、環境等に対して影響を及ぼす特定のガスの濃度を検知するために用いられている。
【0003】
ガスセンサとしては、検知するガスの種類、濃度範囲、精度、動作原理、構成材料等の違いにより様々な検知方式が知られている。そのなかでも、検出部と、検出部周辺の温度を制御するためのヒーターとを組み合わせたものが、温度影響による誤差を低減できるセンサとして、開発が進められている。
【0004】
たとえば、従来技術に係るガスセンサの1つとして、メンブレンの外周部にヒーター線を配置し、メンブレンの内側部分に検出電極を配置するものがある(たとえば、特許文献1等参照)。このようなガスセンサでは、メンブレンの中央付近にはヒーター線からの熱が伝わりづらいため、検出電極周辺の温度分布の不均一性が大きくなり、検出安定性に悪影響が生じる場合がある。一方、メンブレンにおいて、ヒーター線と検出電極を層状に重ね合わせる技術も提案されている(たとえば、特許文献2等参照)。このような技術では、下層のヒーター線のパターン形状による凹凸により、上層の検出電極を平坦な面の上に形成することが難しいため、検出電極の形状に局所的な歪みが生じやすく、検出信号が不安定になって検出応答性が低下する課題がある。また、ヒーター線と検出電極を層状に重ね合わせる技術では、CMPなどにより中間層を平坦化する対応も考えられるが、このような対応を行う場合、プロセスのリードタイムの増加およびコストアップにつながる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6960645号明細書
【特許文献1】特許第6877397号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、簡易なプロセスで製造可能であって、良好な検出安定性および検出応答性を奏するガスセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガスセンサは、
キャビティが形成される基材と、
前記基材における前記キャビティの周縁部であるキャビティ周縁部に接続する複数の梁部と、前記梁部を介して前記キャビティ上に保持される第1絶縁膜メンブレン部と、を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上側に積層する第2の絶縁膜と、
前記第1絶縁膜メンブレン部の上側に設けられるヒーター部と、
前記第1絶縁膜メンブレン部と前記第2の絶縁膜との間に設けられ、上方から見て前記ヒーター部より前記第1絶縁膜メンブレン部の中心側に配置され、上側を向く平坦面を形成する平坦部と、
前記平坦部の上側に少なくとも前記第2の絶縁膜を介して配置され、前記平坦面より狭い面積を有するガス検出部と、を有する。
【0008】
このようなガスセンサは、ヒーター部の内側に平坦面を有する平坦部が形成されており、第2の絶縁膜を介して、平坦部の上に、平坦面より狭い面積を有するガス検出部が形成されている。そのため、ガス検出部は下層の形状による凹凸の影響を受けずに精度よく形成することができ、良好な応答性を奏することができる。また、平坦部は平面方向に略均一な厚みで形成すればよいため、このようなガスセンサは、簡易なプロセスで製造可能であって、プロセス効率も良好である。また、ヒーター部の熱は、第2の絶縁膜や平坦部等介してガス検出部に伝えられるためガス検出部における局所的な温度ばらつきが小さくなり、ガスセンサの検出安定性も良好である。
【0009】
また、たとえば、前記平坦部は、前記第2の絶縁膜より熱伝導率が高くてもよい。
【0010】
平坦部の熱伝導率を高くすることにより、ヒーター部の熱がより効率的にガス検出部に伝わるとともに、ガス検出部における局所的な温度ばらつきもより小さくなり、ガスセンサの検出安定性を効果的に高めることができる。
【0011】
また、たとえば、前記平坦部は、前記ヒーター部と同じ材質であってもよい。
【0012】
平坦部とヒーター部とを同じ材質とすることにより、いずれも第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との間にある平坦部とヒーター部を、同一の成膜プロセスで形成することができるため、このようなガスセンサは、生産効率が良好である。
【0013】
また、たとえば、前記ヒーター部は、略矩形である前記第1絶縁膜メンブレン部の辺の長さの1/2以下の振幅で屈曲を繰り返す屈曲部を有してもよい。
【0014】
このような屈曲部を有するヒーター部は、ヒーター部が接触する第1の絶縁膜および第2の絶縁膜の熱収縮が、平面に沿う特定の方向に偏ることを防止することができる。そのため、このようなヒーター部を有するガスセンサは、メンブレンを構成する第1の絶縁膜および第2の絶縁膜の熱応力による検出誤差やノイズが生じる問題を、効果的に防止することができる。
【0015】
また、たとえば、前記ヒーター部は、前記第1絶縁膜メンブレン部の中心を通り水平方向に延びる基準線を基準として、対称な形状を有してもよい。
【0016】
このようなヒーター部は、上方から見てヒーター部より第1絶縁膜メンブレン部の中心側に配置されるガス検出部の温度分布を均一化することができるため、ガスセンサの検出安定性を効果的に高めることができる。
【0017】
前記ヒーター部は、前記平坦部と繋がっていてもよい。
【0018】
このようなガスセンサでは、ヒーター部から平坦部へ、より効率的に熱が伝わるため、ガスセンサの熱応答性が向上するとともに、平坦部の上側に形成されるガス検出部の温度分布を均一化することができ、ガスセンサの検出安定性を高めることができる。
【0019】
また、たとえば、前記ガス検出部は、半導体材料に接触する少なくとも1対の電極を有してもよく、
ガスセンサは、前記電極の間の抵抗変化によりガスの検出を行ってもよい。
【0020】
このようなガスセンサは、特に低濃度領域において高感度かつ信頼性の高いガスセンサを実現することができる。
【0021】
また、たとえば、前記ガス検出部は、触媒材料に接触するPt線を有してもよく、
ガスセンサは、前記Pt線の抵抗変化によりガスの検出を行ってもよい。
【0022】
このような構成を有するガスセンサは、簡易的な構造で、応答性および信頼性の良好なガスセンサを実現することができる。
【0023】
また、たとえば、前記ガス検出部は、サーミスタ膜に接触する少なくとも1対の電極を有してもよく、
ガスセンサは、前記電極の間の抵抗変化によりガスの検出を行ってもよい。
【0024】
このような構成を有するガスセンサは、簡易的な構造で、安定性の良好なガスセンサを実現することができる。
【0025】
また、サーミスタ膜は、触媒材料に接触していてもよい。
【0026】
このような構成を有するガスセンサは、簡易的な構造で、熱応答性が高く、出力値が高いガスセンサを実現することができる。
【0027】
また、ガスセンサは、前記キャビティ周縁部に設けられるヒーター端子と前記ヒーター部とを、複数の前記梁部のいずれかの上側を通って接続するヒーター配線部を有してもよい。
また、ガスセンサは、前記キャビティ周縁部に設けられる検出端子と前記ガス検出部とを、複数の前記梁部のいずれかの上側を通って接続する検出配線部を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るガスセンサの平面模式図である。
図2図2は、図1に示すガスセンサの、II-IIに沿う断面模式図である。
図3図3は、図1に示すガスセンサの、III-IIIに沿う断面模式図である。
図4図4は、図1に示すガスセンサの、IV-IVに沿う断面模式図である。
図5図5は、図1に示すガスセンサにおけるヒーター部およびガスセンサ部等の形状を示す部分拡大図である。
図6図6は、図1に示すガスセンサにおけるヒーター部および平坦部等の形状を示す部分拡大図である。
図7図7は、図2に示すガスセンサにおいてキャビティの上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係るガスセンサの平面模式図である。
図9図9は、図8に示すガスセンサのIX-IXに沿う断面模式図である。
図10図10は、図8に示すガスセンサのX-Xに沿う断面模式図である。
図11図11は、図8に示すガスセンサにおけるヒーター部およびガスセンサ部等の形状を示す部分拡大図である。
図12図12は、図9に示すガスセンサにおいてキャビティの上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。
図13図13は、本発明の第3実施形態に係るガスセンサの平面模式図である。
図14図14は、図13に示すガスセンサのXIV-XIVに沿う断面模式図である。
図15図15は、図13に示すガスセンサのXV-XVに沿う模式図である。
図16図16は、図13に示すガスセンサにおけるヒーター部およびガスセンサ部等の形状を示す部分拡大図である。
図17図17は、図14に示すガスセンサにおいてキャビティの上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。
図18図18は、第1変形例に係る平坦部およびヒーター部等を示す部分拡大図である。
図19図19は、第2~第4変形例に係る平坦部およびヒーター部等を示す部分拡大図である。
図20図20は、比較例に係るガスセンサの平面模式図である。
図21図21は、図20に示すガスセンサにおいてキャビティの上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。
図22図22は、実施例と比較例に係るガスセンサの温度分布の算出結果を示すグラフである。
図23図23は、比較例に係るガスセンサにおける素子応答性を示すグラフである。
図24図24は、実施例に係るガスセンサにおける素子応答性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を、具体的な実施形態等に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.第1実施形態
1.1.全体構成
1.2.基材
1.3.第1および第2の絶縁膜
1.4.ヒーター部およびヒーター配線部
1.5.平坦部
1.6.ガス検出部および検出配線部
1.7.半導体材料
1.8.製造方法
1.9.作用
2.第2実施形態
3.第3実施形態
4.変形例
5.実施例および比較例
【0030】
(1.第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るガスセンサ10を示す概略平面図であり、ガスセンサ10を上方から見た図である。なお、図1では、第2の絶縁膜40は透視しており、半導体材料92は、配置のみを仮想線で示している。ガスセンサ10は、薄膜状のメンブレン18により支持されるヒーター部50およびガス検出部60等を有する。検知対象ガスは可燃性ガスおよび還元性ガスであり、具体的には、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、プロパン(C38)、エタノール(C25OH)等が例示される。
【0031】
ガスセンサ10は、還元性ガスとの接触により抵抗値が変化する半導体材料92を有する。また、ガスセンサ10のガス検出部60は、半導体材料92に接触する少なくとも1対の電極62a、62bを有する。ガスセンサ10は、電極62a、62bの間を繋ぐ半導体材料92の抵抗変化により、ガス濃度を検出する。半導体材料92を用いるガスセンサ10は、特に低濃度領域において、高感度かつ信頼性の高いガスセンサ10を実現する。
【0032】
なお、本発明に係るガスセンサとしては、半導体材料92と1対の電極62a、62bとを有するもののみには限定されず、触媒材料、Pt線、サーミスタ膜などを有するものなどが含まれる(第2および第3実施形態等参照)。また、本発明に係るガスセンサには、直接的にはガス検知能を有さない参照用のガスセンサを有するものや、複数の互いに異なるガス検出部を有するものなども含まれる。
【0033】
(1.1.全体構成)
図2は、図1におけるII-II線に沿う平面で切断したガスセンサ10の断面模式図である。図3は、図1におけるIII-III線に沿う平面で切断したガスセンサ10の断面模式図であり、図4は、図1におけるIV-IV線に沿う平面で切断したガスセンサ10の断面模式図である。なお、ガスセンサ10の説明では、ガスセンサ10の上下方向をZ軸とし、Z軸に垂直であってヒーター部50の対称軸である基準線A1(図6参照)に平行な方向をY軸とし、Z軸およびY軸に垂直な方向をX軸とする。なお、ガスセンサ10のZ軸方向は、後述する第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40等の積層方向と一致する。また、ガスセンサ10の説明では、基材20から第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40側を上側およびZ軸正方向として、上側およびZ軸正方向の反対方向を下側およびZ軸負方向として説明を行う。
【0034】
図1および図2に示すように、ガスセンサ10は、キャビティ22が形成される基材20を有する。図2に示すように、ガスセンサ10の他の部材は、基材20のキャビティ22の上およびキャビティ22の周縁部であるキャビティ周縁部24に配置されている。ガスセンサ10が有する基材20以外の他の部材としては、第1の絶縁膜30、第2の絶縁膜40、ヒーター部50、ガス検出部60、ヒーター端子58a、58b、ヒーター配線部59a、59b、検出端子68a、68b、検出配線部69a、69b、平坦部70および半導体材料92等が挙げられる。
【0035】
(1.2.基材)
図1に示すように、キャビティ22は基材20の中央付近に形成されている。キャビティ22の上方にはメンブレン18が配置されており、図1では、メンブレン18の下方に見えるキャビティ22が、濃いグレーで示されている。
【0036】
図1図3に示すように、基材20におけるキャビティ22は、基材20における略矩形の貫通孔で構成されるが、キャビティ22の形状は矩形のみには限定されない。また、キャビティ22は、図2および図3に示すような貫通孔のみには限定されず、キャビティ22は、基板表面側であるキャビティ周縁部24から下方に凹む凹部で構成されていてもよい。
【0037】
基材20の材質は、キャビティ22の上およびキャビティ周縁部24に形成される部材を支持できる程度の機械的強度を有し、かつエッチング等の微細加工に適した材料で構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、基材20として、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板、フェライト基板等が例示される。
【0038】
(1.3.第1および第2の絶縁膜)
図1図3に示すように、基材20の中央部に形成されるキャビティ22の上側および基材20の上側表面を構成するキャビティ周縁部24の上側には、第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40が形成されている。図1に示すように、第1の絶縁膜30は、キャビティ22の外縁部周辺に形成されるメンブレン周縁孔18aに相当する部分を除き、第2の絶縁膜40は、メンブレン周縁孔18aに相当する部分およびキャビティ周縁部24においてヒーター端子58a、58bが形成される部分を除き、基材20の上側全体に形成されている。また、第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40のうち、キャビティ22の上に配置される第1絶縁膜メンブレン部32および第2絶縁膜メンブレン部44(図7参照)が、ガスセンサ10におけるメンブレン18を構成する。
【0039】
図1に示すように、第1の絶縁膜30は、基材20におけるキャビティ22の周縁部であるキャビティ周縁部24に接続する複数(実施形態では4つ)の梁部31a、31b、31c、31dと、梁部31a~31dを介してキャビティ22上に保持される第1絶縁膜メンブレン部32(図2および図3参照)を有する。また、図1に示すように、第1の絶縁膜30は、キャビティ周縁部24上に形成される第1絶縁膜周縁部36を有している。第1の絶縁膜30における梁部31a~31dと第1絶縁膜周縁部36とは、キャビティ周縁部24上で接続する。
【0040】
図2図4に示すように、第2の絶縁膜40は、第1の絶縁膜30の上側に積層する。図1に示す第2の絶縁膜40の平面形状は、ヒーター端子58a、58bが形成される部分に第2の絶縁膜40が形成されないことを除き、第1の絶縁膜30と同様である。すなわち、第2の絶縁膜40も、第1の絶縁膜30の梁部31a~31dの上に積層する部分と、第1の絶縁膜30の第1絶縁膜メンブレン部32の上に積層する第2絶縁膜メンブレン部44と、第1絶縁膜周縁部36の上に積層する第2絶縁膜周縁部46とを有する。ただし、第2の絶縁膜40は、実施形態に示す形状のみには限定されず、第2の絶縁膜40の平面形状は、第1の絶縁膜30の平面形状とは、必ずしも一致していなくてもよい。
【0041】
図7は、図2に示すガスセンサ10においてキャビティ22の上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。図7に示すように、第1の絶縁膜30の第1絶縁膜メンブレン部32の上に積層する第2絶縁膜メンブレン部44は、第1部分41と、第2部分42と、第3部分43とを有する。ガスセンサ10においてキャビティ22の上側に配置される部分については、後ほど詳述する。
【0042】
図1図3に示すように、第1絶縁膜メンブレン部32および第2絶縁膜メンブレン部44で構成されるメンブレン18の周りには、メンブレン周縁孔18aが、メンブレン18を囲むように形成されている。また、図2および図3に示すように、第1絶縁膜メンブレン部32の下方にはキャビティ22が形成されており、第1絶縁膜メンブレン部32は基材20に接触せず、断面積の狭い梁部31a~31d等を介して、基材20に対して支持されている。
【0043】
このようなガスセンサ10は、ガス検出部60近傍において、ガス検出部60およびガス検出部60が接触する半導体材料92を除く他の物質の熱容量を小さくすることができる。また、梁部31a~31dを有するメンブレン18の構造により、メンブレン18の中央部分に配置されるガス検出部60等が、メンブレン18を支える基材20に対して好適に断熱された構造となる。このようなガスセンサ10は、ガス検出部60および半導体材料92を所定の温度まで加熱するために必要なヒーター部50の消費電力を非常に小さくすることができる。
【0044】
図2図4に示すように、第1の絶縁膜30は、メンブレン周縁孔18aが形成されていることを除き、全体的に平坦であり、第1の絶縁膜30の内部に段差や傾斜を有さない。これは、後述するように、第1の絶縁膜30が、平坦な基材表面のような平坦な表面に形成されるためである。これに対して、第2の絶縁膜40は、第1の絶縁膜30の上に直接接触する部分と、第1の絶縁膜30との間にヒーター部50等の他の層を挟む部分とがある。したがって、第2の絶縁膜40は、特に図7等に示す第2絶縁膜メンブレン部44内に、段差や傾斜を有する。
【0045】
図7を用いて後述するように、ガスセンサ10は、第2絶縁膜メンブレン部44内に形成される段差や傾斜の配置を、平坦部70を設けることで制御し、第2絶縁膜メンブレン部44の上に形成されるガス検出部60が、下層の凹凸の影響を受ける問題を防止できる。
【0046】
第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40の厚みとしては特に限定されないが、第1の絶縁膜30の厚みが、第2の絶縁膜40の厚みより厚いことが、メンブレン18の強度を確保しつつ、ヒーター部50の熱を効率的にガス検出部60および半導体材料92に伝える観点から好ましい。第1の絶縁膜30の厚みは、たとえば0.1~10μmとすることが好ましく、たとえば0.5~5μmとすることがより好ましい。また、第2の絶縁膜40の厚みは、たとえば0.1~5μmとすることが好ましく、たとえば0.2~2μmとすることがより好ましい。
【0047】
第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40の材質は、熱ストレスによる耐久性、機械的強度、膜応力、密着性、電気絶縁性等を考慮して採用され、酸化アルミニウムや五酸化二タンタルなどが挙げられる。第1の絶縁膜30と第2の絶縁膜40の材質は、同じであっても、異なっていてもよい。また、第1の絶縁膜30と第2の絶縁膜40は、上述した材質の膜の積層膜であってもよい。
【0048】
(1.4.ヒーター部およびヒーター配線部)
図1および図2に示すように、ヒーター部50は、第1絶縁膜メンブレン部32の上側に設けられ、実施形態では、上下方向に関してメンブレン18における第1の絶縁膜30と第2の絶縁膜40との間に設けられる。図2に示すガスセンサ10の断面図のうち、キャビティ22の上部に配置される部分を拡大した図7に示すように、ヒーター部50は、第1の絶縁膜30における第1絶縁膜メンブレン部32と、第2の絶縁膜40における第2絶縁膜メンブレン部44との間に配置されている。ヒーター部50は、通電によりジュール熱を発生し、ガス検出部60の温度を調整する。
【0049】
図6は、ガスセンサ10におけるメンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30と、ヒーター部50と、ヒーター配線部59a、59bと、平坦部70とを表示した部分説明図である。図6では、ガスセンサ10における第2の絶縁膜40および第2の絶縁膜40より上に配置されるガス検出部60等については、図示していない。
【0050】
図6に示すように、ヒーター部50は、第1絶縁膜メンブレン部32の上に、第1絶縁膜メンブレン部32における中央領域R1を囲むように、中央領域R1の外側に形成されている。ヒーター部50は、略矩形である第1絶縁膜メンブレン部32の辺32aの長さL1の1/2以下の振幅L2で屈曲を繰り返す屈曲部52を有する。特に、ヒーター部50における屈曲部52の大半は、所定の振幅L2の矩形波形状(ミアンダパターン)から構成される。
【0051】
このようなヒーター部50は、ヒーター部50が接触する第1の絶縁膜30における第1絶縁膜メンブレン部32および第2の絶縁膜40における第2絶縁膜メンブレン部44の熱収縮が、特定の方向に偏ることを防止することができる。したがって、ガスセンサ10は、メンブレン18を構成する第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40の熱応力による検出誤差やノイズを、効果的に抑制することができる。
【0052】
また、ヒーター部50は、第1絶縁膜メンブレン部32の中心34を通り水平方向に延びる基準線A1を基準として、対称な形状を有する。このようなヒーター部50は、メンブレン18においてヒーター部50より中央側の中央領域R1に配置されるガス検出部60の温度分布を均一化することができ、ガスセンサ10の検出安定性を高めることができる。
【0053】
ヒーター部50は、梁部31aを通るヒーター配線部59aと、梁部31bを通るヒーター配線部59bに接続する。図1に示すように、ヒーター配線部59a、59bは、キャビティ周縁部24の上に設けられるヒーター端子58a、58bとヒーター部50とを、複数の梁部31a~31bのうちいずれか(実施形態では2つの梁部31a、31b)の上側を通って接続する。
【0054】
ヒーター配線部59a、59bは、ヒーター部50と同様に、上下方向に関して第1の絶縁膜30と第2の絶縁膜40との間に形成されている。ただし、図4に示すように、ヒーター配線部59a、59bのうち、ヒーター端子58a、58bの下側に形成される部分については、ヒーター配線部59a、59bの上側の第2の絶縁膜40が形成されていない。
【0055】
図6に示すように、ガスセンサ10におけるヒーター部50は、ヒーター配線部59aに接続する部分と、ヒーター配線部59bに接続する部分とが略対称であり、これらの2つの部分が、導電性の平坦部70を介して電気的に接続している。ただし、ヒーター部50としては平坦部70を介して2つの部分が電気的に接続するものには限定されず、ヒーター配線部59aに接続する部分と、ヒーター配線部59bに接続する部分とが、直接接続していてもよい。
【0056】
ヒーター部50およびヒーター配線部59aの材質としては、導電性であれば特に限定されないが、ガス検出部60および半導体材料92の形成工程における高温プロセスを可能とする観点から、比較的高融点の材料であることが好ましい。このような材料として、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、ニッケルクロム合金(NiCr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または、これらを2つ以上含む合金が例示される。本実施形態では、リフトオフ等の高精度のパターニングが可能であり、耐久性が高いという理由から、特に白金が好ましい。ヒーター部50とヒーター配線部59a、59bとは、同一の材質とすることが、同じ成膜工程で形成可能とする観点から好ましいが、ヒーター部50とヒーター配線部59a、59bとは異なる材質であってもよい。
【0057】
図1および図2に示すように、ヒーター端子58a、58bは、基材20のキャビティ周縁部24において、ヒーター配線部59a、59bの上に、ヒーター配線部59a、59bに対して接触するように設けられる。図4に示すように、ヒーター端子58a、58bの上面はガスセンサ10の上側に露出しており、ヒーター端子58a、58bに対して、ヒーター部50に対して電力を供給する外部配線が接続される。
【0058】
ヒーター端子58a、58bの材質は、良導体であれば特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などが挙げられ、外部配線に対する接合性などの観点から、金(Au)が好ましい。
【0059】
(1.5.平坦部)
図6に示すように、平坦部70は、ヒーター部50と同様に、上下方向に関してメンブレン18における第1の絶縁膜30と第2の絶縁膜40との間に設けられる。すなわち、図7に示すように、平坦部70は、第1の絶縁膜30における第1絶縁膜メンブレン部32と、第2の絶縁膜40における第2絶縁膜メンブレン部44との間に配置されている。
【0060】
図6に示すように、平坦部70は、上方から見てヒーター部50に比べて第1絶縁膜メンブレン部32の中央側の領域である中央領域R1に配置される。図6および図7に示すように、平坦部70は、上側を向き平坦である平坦面72を有する。
【0061】
平坦部70は、上方から見て略矩形であるが、平坦部70の平面形状としてはこれに限定されず、円形、楕円形および矩形以外の多角形などの形状であってもよい。平坦部70は、上方から見て第1絶縁膜メンブレン部32の中心34に重なることが、平坦部70の上に形成されるガス検出部60をメンブレン18の中央部分に配置し、ガス検出部60の温度分布を均一化する観点から好ましい。
【0062】
上方から見た平坦部70の面積は、第1絶縁膜メンブレン部32の面積の5~25%とすることが好ましく、第1絶縁膜メンブレン部32の面積の10~20%とすることがさらに好ましい。平坦部70の第1絶縁膜メンブレン部32に対する面積割合を所定値より大きくすることで、ガス検出部60の形成面積を広く確保して、ガスセンサ10の検出感度を好適に確保することができる。一方、平坦部70の第1絶縁膜メンブレン部32に対する面積割合を所定値より小さくすることで、ヒーター部50の形成面積を広く確保して、ガス検出部60の温度応答性を好適に確保することができる。
【0063】
図7に示すように、平坦部70は、第2の絶縁膜40の第2絶縁膜メンブレン部44を介して平坦部70の上に配置されるガス検出部60に対してヒーター部50の熱を効果的に伝える観点から、第2の絶縁膜40より熱伝導率が高いことが好ましい。また、図6に示すように、平坦部70は、ヒーター部50と繋がっていてもよい。平坦部70とヒーター部50とが繋がっていることにより、ヒーター部50による熱が、ガス検出部60に対してより近くに配置される平坦部70に効果的に伝わり、ガスセンサ10の熱応答性を高めることができる。また、平坦部70が、熱伝導性が高ければ、ガス検出部60の温度の均一性が向上する。
【0064】
なお、図6に示すように、ヒーター部50の2つの部分が平坦部70を介して接続(直列接続)している場合、平坦部70にも電流が流れてジュール熱が生じ、平坦部70での発熱がガス検出部60の温度調整に寄与する場合がある。ただし、平坦部70は、電流方向に直交する断面積がヒーター部50より広いため、仮に平坦部70とヒーター部50とが同材質であれば、平坦部70での発熱量は、ヒーター部50での発熱量に比べて小さい。平坦部70で生じるジュール熱は、平坦部70の材質の他、平坦部70の厚みや、ヒーター部50の2つの部分と平坦部70との接続形態(直列・並列)などによっても調整可能である。なお、平坦部70の厚みは、ヒーター部50の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
平坦部70の材質は、たとえば金属である。より具体的には、ヒーター部50と同様に、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、ニッケルクロム合金(NiCr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または、これらを2つ以上含む合金が例示される。また、平坦部70は、ヒーター部50と同じ材質であってもよく、この場合、平坦部70はヒーター部50と同じ成膜プロセスで形成可能であり、製造プロセスを簡略化できる。ただし、平坦部70は、ヒーター部50と異なる材質であってもよい。ヒーター部50とは異なる平坦部70の材質としては、上述したもの以外に、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)などが挙げられる。
【0066】
(1.6.ガス検出部および検出配線部)
図1および図2に示すように、ガス検出部60は、メンブレン18における第2の絶縁膜40の上に設けられる。図5は、ガスセンサ10におけるメンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30と、ヒーター部50と、ヒーター配線部59a、59bと、平坦部70と、ガス検出部60と、検出配線部69a、69bとを表示した部分図である。図5では、ガスセンサ10における第2の絶縁膜40は透視しており、半導体材料92は配置のみを仮想線で示している。
【0067】
図5に示すように、ガス検出部60は、上方から見てヒーター部50より第1絶縁膜メンブレン部32の中心34側の領域である中央領域R1に配置される。ガス検出部60は、図5に示すように、一対の電極62a、62bを有しており、一対の電極62aは、図7に示すように、半導体材料92に接触している。
【0068】
図5に示すように、一対の電極62a、62bは、互いに所定の間隔を空けて水平方向に対向しており、一対の電極62a、62bを接続するように配置される半導体材料92の抵抗変化を検出する。一対の電極62a、62bは、いずれの櫛歯形状を有しており、互いの櫛歯と櫛歯の間の隙間とが噛み合うように配置されている。このような櫛歯状の電極62a、62bを有するガス検出部60は、狭い面積の中で、電極62a、62b同士が対向する長さを長くすることができ、検出感度を向上させることができる。
【0069】
なお、ガスセンサ10におけるガス検出部60は、一対の電極62a、62bが互いに対向している部分、すなわち図5および図7において一点鎖線(太線)で囲まれる部分である。図5において一点鎖線で囲まれる部分の外側の部分は、互いに対向していない部分であり、ガス検出部60および電極62a、62bに含まれず、後述する検出配線部69a、69bに含まれる。
【0070】
図5に示すように、ガスセンサ10は、一対の検出配線部69a、69bを有する。図7に示すように、一対の検出配線部69a、69bも、ガス検出部60と同様に、第2の絶縁膜40の上に設けられる。図5に示すように、検出配線部69aは、メンブレン18内において電極62aに接続しており、検出配線部69bは、メンブレン18内において電極62bに接続している。
【0071】
図1に示すように、検出配線部69a、69bは、キャビティ周縁部24の上に設けられる検出端子68a、68bとガス検出部60とを、複数の梁部31a~31bのうちいずれか(実施形態では2つの梁部31c、31d)およびこれに重なる第2の絶縁膜40の梁部の上側を通って接続する。
【0072】
ガス検出部60は、平坦部70の上側に少なくとも第2の絶縁膜40を介して配置される。図5に示すように、一対の電極62a、62bを有するガス検出部60は、上方から見て平坦面72(図6参照)に重なるように配置され、平坦面72より狭い面積を有する。図7に示すように、ガス検出部60の全体は、第2の絶縁膜40を介して平坦部70の平坦面72の上に形成されており、上方から見て平坦面72の範囲内に形成されることが好ましい。
【0073】
図7に示すように、第1絶縁膜メンブレン部32の上に形成される第2の絶縁膜40の第2絶縁膜メンブレン部44は、第1絶縁膜メンブレン部32の上に直接接触する第1部分41と、第1絶縁膜メンブレン部32との間にヒーター部50を挟む第2部分42と、第1絶縁膜メンブレン部32との間に平坦部70を挟む第3部分43とを有する。第1部分41は、第1絶縁膜メンブレン部32との間にヒーター部50や平坦部70を挟む第2部分42および第3部分43に比べて高さが低くなるため、第2絶縁膜メンブレン部44には起伏や段差が形成される。
【0074】
図7に示すように、検出配線部69aは、第1部分41、第2部分42および第3部分43に跨って形成されているため、検出配線部69aの形状自体も下層の起伏の影響を受け、形状ばらつきが生じやすくなる。これに対して、ガス検出部60は、平坦面72の上に形成される第3部分43の上に形成されるため、ガス検出部60の形状は、第2絶縁膜メンブレン部44の起伏や段差の影響を受けずばらつきが少なくなり、たとえば、一対の電極62a、62bとの間の隙間についても、精度よく管理することができる。
【0075】
一対の電極62a、62bを有するガス検出部60および検出配線部69a、69bの材質は、金属などの導電体を用いることができ、たとえば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などが挙げられる。ガス検出部60と検出配線部69a、69bとは、同一の材質とすることが、同じ成膜工程で形成可能とする観点から好ましいが、ガス検出部60と検出配線部69a、69bとは異なる材質であってもよい。
【0076】
図1および図2に示すように検出端子68a、68bは、基材20のキャビティ周縁部24において、検出配線部69a、69bの上に、検出配線部69a、69bに対して接触するように設けられる。図4に示すように、検出端子68a、68bの上面はガスセンサ10の上側に露出しており、検出端子68a、68bに対して、ガス検出部60の出力を伝える外部配線が接続される。
【0077】
検出端子68a、68bの材質は、良導体であれば特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などが挙げられ、外部配線に対する接合性などの観点から、金(Au)が好ましい。
【0078】
(1.7.半導体材料)
図7および図5に示すように、半導体材料92は、メンブレン18の中央領域R1に配置されるガス検出部60の電極62a、62bの間およびガス検出部60の上に設けられる。半導体材料92は、上方から見てガス検出部60の全体に重なるように、ガス検出部60より広い面積に形成されることが好ましい。半導体材料92は、ガス検出部60を構成する一対の電極62a、62bの双方に接触する。また、半導体材料92の一部は、ガス検出部60に接続する検出配線部69a、69bに接触していてもよい。
【0079】
図7に示すように、半導体材料92は、略ドーム状の外形状を有する。半導体材料92は、半導体材料92における温度分布の均一性の観点から、上方から見て略円形または略楕円形とすることが好ましく、略円形であることがより好ましい。
【0080】
半導体材料92としては、還元性ガスとの接触により抵抗値が変化する材料であれば特に制限されないが、熱的安定性および化学的安定性の観点から、金属酸化物であることが好ましい。半導体材料92に用いる金属酸化物としては、酸化スズ(SnO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化鉄(Fe23)、酸化タングステン(WO3)、酸化インジウム(In23)、酸化コバルト(Co34)等が例示される。また、検知対象ガスに対する感度をさらに高めるために、半導体材料92を構成する金属酸化物には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属が担持されていてもよい。また、これらの材料は複合化、又は合金化されていてもい。
【0081】
(1.8.製造方法)
以下、ガスセンサ10の製造方法の一例を説明する。ただし、ガスセンサ10の製造方法は、下記に示す製造方法にのみには限定されない。まず、ガスセンサ10の製造では、まず基材20の原料となる基材材料を準備する。基材材料は、キャビティ22が形成されていない平板状である。次に、準備した基材材料の一方の主面(キャビティ22形成後にキャビティ周縁部24となる面)に、第1の絶縁膜30を形成する。第1の絶縁膜30を形成する方法としては、熱酸化法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の成膜法を用いればよい。
【0082】
形成した第1の絶縁膜30上に、ヒーター部50、平坦部70およびヒーター配線部59a、59bを形成する。ヒーター部50、平坦部70およびヒーター配線部59a、59bは、同一成膜工程で形成可能である。ヒーター部50、平坦部70およびヒーター配線部59a、59bの形状は、たとえば、リフトオフ工法により形成される。リフトオフ工程では、まず、所定のパターンを形成する面全体にレジストを塗布して、所定のパターン形状となるように露光し現像する。現像により、所定のパターン形状に対応するレジストが溶解し、所定のパターン形状がパターニングされる。レジスト溶解後に、スパッタリング、蒸着等の成膜法によりパターンを構成する材料を成膜する。成膜後、残存しているレジストを剥離液により除去することにより、レジスト上に成膜された材料も除去され、パターニングした領域のみに成膜した材料が残り、所定のパターンが形成される。
【0083】
ヒーター部50、平坦部70およびヒーター配線部59a、59bを形成した後、これらが少なくとも覆われるように、第1の絶縁膜30の形成と同様にして、第2の絶縁膜40を、公知の成膜法により形成する。
【0084】
次に、第2の絶縁膜40の上に、ガス検出部60および検出配線部69a、69bを形成する。ガス検出部60および検出配線部69a、69bは、同一成膜工程で形成可能である。ガス検出部60および検出配線部69a、69bの形状は、ヒーター部50、平坦部70およびヒーター配線部59a、59bと同様に、リフトオフ工法等により形成される。さらに、第2の絶縁膜40に所定の開口を形成したのち、検出端子68a、68bおよびヒーター端子58a、58bの形成を行う。
【0085】
次に、基材材料の主面のうち、第1の絶縁膜30が形成されていない主面において、所定の領域にエッチングマスクを施し、反対側の主面に形成された第1の絶縁膜30が露出するまで基材材料をエッチングし、キャビティ22を形成する。キャビティ22が形成された領域に対応する第1の絶縁膜30が、第1絶縁膜メンブレン部32となる。
【0086】
さらに、ガス検出部60の一対の電極62a、62bの上から、一対の電極62a、62bに接触するように半導体材料92を形成し、ガスセンサ10を得る。半導体材料92の形成工程では、半導体材料92の原料を含む半導体材料用ペーストを用いて塗布体を形成し、これを所定の温度で熱処理することにより、半導体材料92を形成する。
【0087】
半導体材料用ペーストは、半導体材料として上述した材料の原料と、溶剤、バインダおよび添加剤とを混合することにより得られる。半導体材料の原料としては、たとえば金属酸化物粉末を用いる。金属酸化物粉末の平均粒子径は、特に制限されないが0.1~20μmであることが好ましい。
【0088】
(1.9.動作)
ガスセンサ10において、ヒーター部50は、ヒーター配線部59a、59b、平坦部70およびヒーター端子58a、58bを介して、図示しない外部回路に接続される。また、ガス検出部60の電極62a、62bは、検出配線部69a、69bおよび検出端子68a、68bを介して、図示しない外部回路に接続される。ガスセンサ10を作動させると、通電が開始され、ヒーター部50に所定の電圧が印加され、ガス検出部60およびその周辺部は、所定の温度に加熱される。
【0089】
ガス検出部60が接触する半導体材料92は、ガスセンサ10が配置された空間に検知対象ガスが含まれている場合、半導体材料92の表面に吸着している酸素と検知対象ガスとの間で生じる酸化還元反応に起因する電子の移動量に応じて、抵抗値が変化する。電子の移動量は検知対象ガスの濃度に対応しているので、この抵抗値変化をガス検出部60の電極62a、62bが検知することにより、検知対象ガスの濃度を測定することができる。半導体材料92の抵抗値変化は、検知対象ガスの濃度が非常に低くても高感度であるので、ガスセンサ10は、検知対象ガスが低濃度の場合の検知に好適である。ただし、検知対象ガスが高濃度の場合には、抵抗値変化が飽和するので、検知は可能であるが、濃度測定は困難となる。
【0090】
図5図7に示すように、ガスセンサ10は、ヒーター部50の内側に平坦面72を有する平坦部70が形成されており、第2の絶縁膜40を介して、平坦部70の上に、平坦面72より狭い面積を有するガス検出部60が形成されている。そのため、ガス検出部60は下層の形状による凹凸の影響を受けずに精度よく形成することができ、形状のばらつきなどに起因するノイズを低減し、良好な応答性を奏することができる。また、平坦部70は平面方向に略均一な厚みで形成すればよいため、このようなガスセンサ10は、プロセス効率も良好である。また、ヒーター部50の熱は、第2の絶縁膜40だけでなく平坦部70を経由してガス検出部60に伝えられるため、ガス検出部60における局所的な温度ばらつきが小さくなり、ガスセンサ10の検出安定性も良好である。
【0091】
ガスセンサ10では、平坦面72はヒーター部50と同じ材質であり、ヒーター部50と繋がっており、第2の絶縁膜40より熱伝導性が高い。このようなガスセンサ10では、ヒーター部50の熱が平坦部70を経由してガス検出部60に効果的に伝えられるため、ガス検出部60における局所的な温度ばらつきがより小さくなり、ガスセンサ10の検出安定性が向上する。
【0092】
また、ガスセンサ10では、ヒーター部50が第1絶縁膜メンブレン部32の中心34を通り水平方向に延びる基準線A1を基準として対称な形状を有するため、ガス検出部60の温度分布を均一化することができる。また、ガスセンサ10のヒーター部50は、所定の振幅で屈曲を繰り返す屈曲部52を有するため、第1の絶縁膜30および第2の絶縁膜40に生じる熱応力による検出誤差やノイズを、効果的に抑制することができる。
【0093】
(2.第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るガスセンサ110を示す概略平面図であり、ガスセンサ110を上方から見た図である。なお、図8では、第2の絶縁膜40は透視しており、触媒材料192は、配置のみを仮想線で示している。第2実施形態に係るガスセンサ110は、ガス検出部160が触媒材料192に接触するPt線165(図11参照)を有し、Pt線165の抵抗変化によりガスの検出を行う点で、第1実施形態に係るガスセンサ10とは異なる。ただし、ガスセンサ110は、ガス検出部160および触媒材料192以外の部分については、第1実施形態に係るガスセンサ10と同様である。ガスセンサ110については、ガスセンサ10との相違点を中心に説明を行い、ガスセンサ10との共通点については、共通の符号を付して説明を省略する。
【0094】
図9は、図8におけるIX-IX線に沿う平面で切断したガスセンサ110の断面模式図であり、図10は、図8におけるX-X線に沿う平面で切断したガスセンサ110の断面模式図である。ガスセンサ110は、基材20、第1の絶縁膜30、第2の絶縁膜40、ヒーター部50、ガス検出部160、ヒーター端子58a、58b、ヒーター配線部59a、59b、検出端子68a、68b、検出配線部69a、69b、平坦部70および触媒材料192等を有する。ガスセンサ110は、基材20、第1の絶縁膜30、第2の絶縁膜40、ヒーター部50、ヒーター端子58a、58b、ヒーター配線部59a、59b、検出端子68a、68b、平坦部70など、第2の絶縁膜40より下側の構造については、第1実施形態に係るガスセンサ10と同様である。
【0095】
図8および図9に示すように、ガス検出部160は、メンブレン18における第2の絶縁膜40の上に設けられる。図11は、ガスセンサ110におけるメンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30と、ヒーター部50と、ヒーター配線部59a、59bと、平坦部70と、ガス検出部160と、検出配線部69a、69bとを表示した部分図である。図11では、ガスセンサ110における第2の絶縁膜40は透視しており、触媒材料192は配置のみを仮想線で示している。
【0096】
図11に示すように、ガス検出部160は、図5に示すガス検出部60と同様に、上方から見てヒーター部50より第1絶縁膜メンブレン部32の中心側の領域である中央領域R1に配置される。ガスセンサ110のガス検出部160は、図5に示す櫛歯状の電極62a、62bの換わりに、Pt線165を有する。Pt線165は、白金(Pt)の薄膜を、ミアンダ状にパターン形成したものである。このようなミアンダ状のPt線165を有するガス検出部160は、狭い面積の中で、触媒材料192に接触するPt線165の長さを長くすることができ、検出感度を向上させることができる。
【0097】
Pt線165の一方の端部は検出配線部69aに接続しており、Pt線165の他方の端部は検出配線部69bに接続している。なお、検出配線部69a、69bが、メンブレン18に配置されるガス検出部160と、キャビティ周縁部24に配置される検出端子68a、68bとを接続している点は、第1実施形態に係るガスセンサ10と同様である。また、検出配線部69a、69bの材質は、ガス検出部160と同様に白金(Pt)であってもよく、金(Au)などの他の導電材料であってもよい。
【0098】
図12は、図9に示すガスセンサ110においてキャビティ22の上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。図12に示すように、Pt線165を有するガス検出部160は、上方から見て平坦面72(図11参照)に重なるように配置され、平坦面72より狭い面積を有する。図12に示すように、ガス検出部160の全体は、第2の絶縁膜40を介して平坦部70の平坦面72の上に形成されており、上方から見て平坦面72の範囲内に形成されることが好ましい。なお、ガスセンサ110にけるガス検出部160は、Pt線165の一方の端部から他方の端部まであり、すなわち、図11において一点鎖線(太線)で囲まれる部分である。
【0099】
図12に示すガス検出部160は、平坦面72の上に形成される第3部分43の上に形成されるため、ガス検出部60の形状は、第2絶縁膜メンブレン部44の起伏や段差の影響を受けずばらつきが少なくなり、たとえば、Pt線165の線幅、全長および断面積についても、精度よく管理することができる。
【0100】
図12に示すように、触媒材料192は、メンブレン18の中央領域R1に配置されるガス検出部160のPt線165の間およびガス検出部160の上に設けられる。触媒材料192は、上方から見てガス検出部160の全体に重なり、Pt線165の全体に接触するように、ガス検出部160より広い面積に形成されることが好ましい。触媒材料192は、略ドーム状の外形状を有するが、触媒材料192の形状は特に限定されない。
【0101】
触媒材料192を構成する材料は、ガスセンサの触媒として公知の材料であれば特に制限されない。通常は、担体に貴金属粒子が担持されたものが用いられる。担体としては、酸化アルミニウム(γアルミナ等)、酸化シリコン等の酸化物材料が例示される。また、担体に担持される貴金属粒子としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)等の貴金属粒子等が例示される。
【0102】
ガスセンサ110のガス検出部160は、ガスセンサ10のガス検出部60と同様に、公知の成膜法およびリフトオフ工程等により形成される。また、触媒材料192は、ガスセンサ10の半導体材料92と同様に、ペースト塗布および熱処理工程等により形成される。
【0103】
ガスセンサ110が有する触媒材料192は、ガスセンサが配置された空間に、検知対象ガスが含まれている場合、その存在割合に応じて、触媒材料192上で可燃性ガスと酸素等が結合し燃焼する。ガスセンサ110が有するガス検出部160のPt線165は、触媒材料において生じた可燃性ガスの燃焼による温度変化を、その抵抗変化により検出する。
【0104】
ガスセンサ110は、ガスセンサ10と同様に、平坦部70の上に、平坦面72より狭い面積を有するガス検出部160が形成されている。そのため、ガス検出部160は下層の形状による凹凸の影響を受けずに精度よく形成することができ、形状のばらつきなどに起因するノイズを低減し、良好な応答性を奏することができる。また、ガスセンサ110は、平坦部70を経由してヒーター部50の熱がガス検出部160に伝えられるため、ガス検出部160における局所的な温度ばらつきが小さくなり、検出安定性が向上する。
【0105】
その他、ガスセンサ110は、第1実施形態に係るガスセンサ10との共通点については、ガスセンサ10と同様の効果を奏する。
【0106】
(3.第3実施形態)
図13は、第3実施形態に係るガスセンサ210を示す概略平面図であり、ガスセンサ210を上方から見た図である。なお、図13では、第2の絶縁膜40は透視しており、触媒材料192は、配置のみを仮想線で示している。第3実施形態に係るガスセンサ210は、ガス検出部260がサーミスタ膜294(触媒材料192に接触する)に接触する一対の電極262a、262b(図16参照)を有し、電極262a、262bにより検出されるサーミスタ膜294の触媒反応熱に伴う抵抗変化によりガスの検出を行う点で、第1実施形態に係るガスセンサ10とは異なる。ただし、ガスセンサ210は、ガス検出部260、サーミスタ膜294および触媒材料192以外の部分については、第1実施形態に係るガスセンサ10と同様である。ガスセンサ210については、ガスセンサ10との相違点を中心に説明を行い、ガスセンサ10との共通点については、共通の符号を付して説明を省略する。
【0107】
図14は、図13におけるXIV-XIV線に沿う平面で切断したガスセンサ210の断面模式図であり、図14は、図13におけるXV-XV線に沿う平面で切断したガスセンサ210の断面模式図である。ガスセンサ210は、基材20、第1の絶縁膜30、第2の絶縁膜40、ヒーター部50、ガス検出部260、ヒーター端子58a、58b、ヒーター配線部59a、59b、検出端子68a、68b、検出配線部69a、69b、平坦部70、サーミスタ膜294および触媒材料192等を有する。ガスセンサ210は、基材20、第1の絶縁膜30、第2の絶縁膜40、ヒーター部50、ヒーター端子58a、58b、ヒーター配線部59a、59b、検出端子68a、68b、平坦部70など、第2の絶縁膜40より下側の構造については、第1実施形態に係るガスセンサ10と同様である。
【0108】
図14および図15に示すように、ガス検出部260は、メンブレン18における第2の絶縁膜40の上に設けられる。図16は、ガスセンサ210におけるメンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30と、ヒーター部50と、ヒーター配線部59a、59bと、平坦部70と、ガス検出部260とサーミスタ膜194と、検出配線部69a、69bとを表示した部分図である。図16では、ガスセンサ110における第2の絶縁膜40は透視しており、触媒材料192は配置のみを仮想線で示している。
【0109】
図16に示すように、ガス検出部260は、図5に示すガス検出部60と同様に、上方から見てヒーター部50より第1絶縁膜メンブレン部32の中心側の領域である中央領域R1に配置される。ガスセンサ210のガス検出部260は、図5に示す櫛歯状の電極62a、62bの換わりに、サーミスタ膜294に接触する一対の電極262a、262bを有する。
【0110】
図16に示すように、一対の電極262a、262bは略直線状であり、互いに所定の間隔を空けて水平方向に対向している。サーミスタ膜294は、一対の電極262a、262bを跨ぐように形成されており、一対の電極262a、262bの両方に接触する。ガス検出部260の電極262aは、検出配線部69aに接続しており、ガス検出部260の電極262bは、検出配線部69bに接続している。なお、検出配線部69a、69bが、メンブレン18に配置されるガス検出部260と、キャビティ周縁部24に配置される検出端子68a、68bとを接続している点は、第1実施形態に係るガスセンサ10と同様である。ガス検出部260における電極262a、262bの材質は、ガスセンサ10の電極26a、26bと同様である。
【0111】
図17は、図14に示すガスセンサ210においてキャビティ22の上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。図17に示すように、一対の電極262a、262bを有するガス検出部260は、上方から見て平坦面72(図16参照)に重なるように配置され、平坦面72より狭い面積を有する。図17に示すように、ガス検出部260の全体は、第2の絶縁膜40を介して平坦部70の平坦面72の上に形成されており、上方から見て平坦面72の範囲内に形成されることが好ましい。なお、ガスセンサ210におけるガス検出部260は、サーミスタ膜294を挟んで対向する電極262a、262bであり、図16および図17において一点鎖線(太線)で囲まれる部分である。
【0112】
図17に示すように、サーミスタ膜294は、ガス検出部260を構成する電極262a、262bの間およびガス検出部260の上に配置される。すなわち、サーミスタ膜294の一部は、電極262a、262bの間の第2の絶縁膜40(第2絶縁膜メンブレン部44の第3部分43)に接触する。また、サーミスタ膜294の他の一部は、電極262a、262bの外側に接続する検出配線部69a、69bにも接触している。
【0113】
サーミスタ膜294は、サーミスタ膜294の上に設けられる触媒材料192に接触する。サーミスタ膜294は、負の抵抗温度係数を有している。サーミスタ膜294は触媒材料192と熱的に接続されており、触媒材料192における可燃性ガスの燃焼による温度変化に起因してサーミスタ膜294の熱伝導率の変化が生じ、これに応じてサーミスタ膜294の抵抗値が変化する。サーミスタ膜294を構成する材料としては、サーミスタとして使用可能な材料であれば特に制限されないが、たとえば、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の金属元素を含む複合金属酸化物等が例示される。サーミスタ膜294は、スパッタリングなどの公知の成膜法により形成される。
【0114】
ガスセンサ210が有する触媒材料192は、ガスセンサ210が配置された空間に、検知対象ガスが含まれている場合、その存在割合に応じて、触媒材料192上で可燃性ガスと酸素等が結合し燃焼する。ガスセンサ210が有するガス検出部260の電極262a、262bは、可燃性ガスの燃焼により触媒材料192において生じた燃焼熱に伴うサーミスタ膜294の抵抗変化を検出する。このようなガスセンサ210は、検知対象ガスが高濃度の場合には、サーミスタ膜294の抵抗変化を検出しやすくなるため、検知対象ガスが高濃度の場合の検知に特に好適である。
【0115】
ガスセンサ210は、ガスセンサ10と同様に、平坦部70の上に、平坦面72より狭い面積を有するガス検出部260が形成されている。そのため、ガス検出部260は下層の形状による凹凸の影響を受けずに精度よく形成することができ、形状のばらつきなどに起因するノイズを低減し、良好な応答性を奏することができる。また、ガスセンサ210は、平坦部70を経由してヒーター部50の熱がガス検出部60に伝えられるため、ガス検出部60における局所的な温度ばらつきが小さくなり、検出安定性が向上する。
【0116】
なお、ガスセンサ210の電極262a、262bは、ガスセンサ10の電極62a、62bと同様に、櫛歯状であってもよい。また、ガスセンサ210は、触媒材料192を有さず、電極262a、262bに接触するサーミスタ膜の抵抗変化によりガスを検出するものであってもよい。その他、ガスセンサ210は、第1実施形態に係るガスセンサ10との共通点については、ガスセンサ10と同様の効果を奏する。
【0117】
(4.1.第1変形例)
上述したガスセンサ10、110、210では、図6に示すような形状のヒーター部50および平坦部70を用いたが、ガスセンサ10、110、210に用いるヒーター部50および平坦部70としては、図5に示すもの以外にも、様々な形状が考えられる。図18は、第1変形例に係るヒーター部450および平坦部470を、メンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30、ヒーター配線部59a、59b等とともに表示した部分説明図である。
【0118】
図18に示すように、第1変形例に係るヒーター部450は、平坦部470に対して接続していない。ヒーター部450は、ヒーター配線部59aに接続する部分と、ヒーター配線部59aに接続する部分とが略対称であり、これらの2つの部分が、直接接続している。ヒーター部450の材質は、図5に示すヒーターブ50の材質と同様である。
【0119】
平坦部470は、図6に示す平坦部70と同様に上を向く平坦面472を有し、平坦部70と同様の形状および配置である。ただし、平坦部470は、平坦部470を囲むように配置されるヒーター部450から離間しており、ヒーター部450を流れる電流は、平坦部470を通過しない。
【0120】
平坦部470の材質は、ヒーター部450の材質と同様であってもよいが、平坦部470はヒーター部450に対して離間しているため、ヒーター部450とは異なる材質とすることも容易である。たとえば、平坦部470の材質として、ヒーター部450より熱伝導率の高い材料を採用してもよい。
【0121】
平坦部470は、ヒーター部450とは繋がっていないが、ガス検出部60、160、260に伝える熱伝導経路として好適に作用する。また、平坦部470の平坦面472は、図5に示す平坦面72と同様に、上層のガス検出部60、160、260の形状ばらつきを抑制し、ガスセンサの応答性の向上に寄与する。したがって、図5に示すヒーター部50および平坦部70に代えて、第1変形例に係るヒーター部450および平坦部470を用いるガスセンサも、ガスセンサ10、110、210と同様の効果を奏する。
【0122】
(4.2.第2変形例)
図19(a)は、第2変形例に係るヒーター部550および平坦部570を、メンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30、ヒーター配線部59a、59b等とともに表示した部分説明図である。図19(a)に示すように、第2変形例に係るヒーター部550は、図5に示すヒーター部50と同様に、平坦部570に対して接続している。
【0123】
ヒーター部550は、ヒーター配線部59aに接続する部分と、ヒーター配線部59bに接続する部分とが略対称であり、これらの2つの部分が、導電性の平坦部570を介して電気的に接続している。ヒーター部550は、平坦部570における2箇所のY方向中央位置で平坦部570に対して接続している。なお、ヒーター部550の屈曲部は、複数の異なる振幅を有する部分を組み合わせてなり、このようなヒーター部550も、ヒーター部50と同様の効果を奏する。
【0124】
平坦部570は、図6に示す平坦部70と同様に上を向く平坦面572を有し、平坦部70と同様の形状および配置である。ヒーター部550および平坦部570の材質は、図5に示すヒーター部50および平坦部70と同様である。
【0125】
図5に示すヒーター部50および平坦部70に代えて、第2変形例に係るヒーター部550および平坦部570を用いるガスセンサも、ガスセンサ10、110、210と同様の効果を奏する。
【0126】
(4.3.第3変形例)
図19(b)は、第3変形例に係るヒーター部650および平坦部670を、メンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30、ヒーター配線部59a、59b等とともに表示した部分説明図である。図19(b)に示すように、第3変形例に係るヒーター部650は、図5に示すヒーター部50と同様に、平坦部670に対して接続している。
【0127】
ヒーター部650は、梁部31cの上を通るヒーター配線部659aに接続する部分と、ヒーター配線部59bに接続する部分とが、平坦部670の中心位置を基準として180度回転対称である。ヒーター部650におけるこれらの2つの部分が、導電性の平坦部670を介して電気的に接続している。ヒーター部650は、略矩形の平坦部670において所定の対角線上に配置される2箇所のコーナーで、平坦部670に対して接続している。また、ヒーター配線部659a、59bは、略矩形の第1絶縁膜メンブレン部32において、所定の対角線上に配置される2箇所のコーナーに接続する梁部31c、31bの上を通る。
【0128】
平坦部670は、図6に示す平坦部70と同様に上を向く平坦面672を有し、平坦部70と同様の形状および配置である。ヒーター部650および平坦部670の材質は、図5に示すヒーター部50および平坦部70と同様である。
【0129】
図5に示すヒーター部50および平坦部70に代えて、第3変形例に係るヒーター部650および平坦部670を用いるガスセンサも、ガスセンサ10、110、210と同様の効果を奏する。
【0130】
(4.5.第4変形例)
図19(c)は、第4変形例に係るヒーター部750および平坦部770を、メンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30、ヒーター配線部59a、59b等とともに表示した部分説明図である。図19(c)に示すように、第3変形例に係るヒーター部750は、図5に示すヒーター部50と同様に、平坦部770に対して接続している。
【0131】
ヒーター部750は、梁部31cの上を通るヒーター配線部759aに接続する部分と、ヒーター配線部59bに接続する部分とが、平坦部770の中心位置を基準として180度回転対称である。ヒーター部750におけるこれらの2つの部分が、導電性の平坦部770を介して電気的に接続している。ヒーター部750は、平坦部770の外縁における2箇所のX方向中央位置で、平坦部770に対して接続している。また、ヒーター配線部759a、59bは、略矩形の第1絶縁膜メンブレン部32において、所定の対角線上に配置される2箇所のコーナーに接続する梁部31c、31bの上を通る。
【0132】
平坦部770は、図6に示す平坦部70と同様に上を向く平坦面772を有し、平坦面70と同様の形状および配置である。ヒーター部750および平坦部770の材質は、図5に示すヒーター部50および平坦部70と同様である。
【0133】
図5に示すヒーター部50および平坦部70に代えて、第4変形例に係るヒーター部750および平坦部770を用いるガスセンサも、ガスセンサ10、110、210と同様の効果を奏する。
【0134】
(5.実施例および比較例)
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
実施例に係る試料として、図1図7に示す第1実施形態に係るガスセンサ10を準備した。ガスセンサ10に用いた主な構成の材質は以下の通りである。
基材20:Si
第1の絶縁膜30:SiN/SiО2
第2の絶縁膜40:SiN
ヒーター部50:Pt
ガス検出部60:Pt
平坦部70:Pt
【0136】
比較例に係る試料として、平坦部を有さず、ヒーター部850の形状のみを変更し、ガスセンサ10と同様に作製したガスセンサを準備した。図20は、比較例に係るガスセンサにおけるメンブレン18およびその周縁部分における第1の絶縁膜30と、ヒーター部850と、ヒーター配線部59a、59bと、ガス検出部60と、検出配線部69a、69bとを表示した部分図である。
【0137】
図20に示すように、比較例に係るガスセンサのヒーター部850は、第1絶縁膜メンブレン部32の中央領域を含む、第1絶縁膜メンブレン部32上のほぼ全域に形成されている。図21は、比較例に係るガスセンサにおいてキャビティ22の上側に配置される部分を拡大した拡大断面図である。
【0138】
図20および図21に示すように、比較例に係るガスセンサは平坦部を有しておらず、ガス検出部60の下にもヒーター部850の一部が配置されている。したがって、比較例に係るガスセンサでは、ガス検出部60が、起伏や凹凸のある第2の絶縁膜40の上に形成されている。したがって、比較例に係るガスセンサにおけるガス検出部60の形状は、図20に示す平面図の上では図5に示すガスセンサ10と同様であるものの、下層の起伏や凹凸の影響を受けて、立体形状としては、ガスセンサ10のガス検出部60とは異なる起伏や傾斜を有し、形状ばらつきも大きいと考えられる。
【0139】
まず、準備した実施例および比較例に係る試料を用いて、各試料におけるメンブレン18の中央付近の温度部分を算出した。図22に結果を示す。比較例に係る試料では、図22において点線で示されるように、メンブレン18の中央で温度のピーク(最高値)が現れ、中央から離れるに従って放物線状に温度が低下する。比較例に係る試料では、温度が最も高い位置(メンブレン18の中央)と、温度が最も低い位置(メンブレン18の中央から75μm離れた位置)とでは、約2.3度の温度差が形成された。
【0140】
これに対して、実施例に係る試料では、図22において実線で示されるように、メンブレン18の中央から50μm程度離れた2箇所で温度のピーク(最高値)が現れ、2箇所のピークの間のメンブレン18の中央部分では、ピークが現れる位置から緩やかに温度が低下した。実施例に係る試料では、温度が最も高い位置(メンブレン18の中央から50μm離れた位置)と、温度が最も低い位置(メンブレン18の中央から75μm離れた位置)とでは、約1.3度の温度差が形成された。
【0141】
図22に示すように、ヒーター部50より中心側に平坦部70を形成した実施例に係る試料では、平坦部を形成せずヒーター部850をメンブレン18の中央部にも形成した比較例に係る試料に比べて、最高温度と最低温度との差が小さくなり、メンブレン18における温度分布が均一化されることが確認された。
【0142】
次に、準備した実施例および比較例に係る試料を用いて、COガスの検出における応答波形を取得した。図23および図24は、比較例および実施例に係るガスセンサで取得された応答波形(左縦軸、単位Ω、検出値を表す黒丸と、検出値の近似曲線で表される)を示すグラフである。なお、図23および図24において応答波形とともに示される矩形の波形は、素子に供給されるCOガスの濃度変化(右縦軸、ppm)を示している。応答波形を取得では、経過時間(横軸)が6200secの時点で0ppmから100ppmにCOガス濃度を変化させ、経過時間(横軸)が6800secの時点で100ppmから0ppmにCOガス濃度を変化させた。
【0143】
図23に示すように、比較例に係る試料では、COガスを検出した際の応答波形にオーバーシュートが見られ、また、オーバーシュートが解消するまでの経過時間も長く、6600secを超える時点まで影響が残っている。また、COガスを除去した際の応答波形については、ベースラインまでの収束に時間がかかり、7200secの時点でも完全に収束できていない。
【0144】
図24に示すように、実施例に係る試料では、COガスを検出した際の応答波形にオーバーシュートが見られず、また、検出値が安定するまでの経過時間が短く、6600secより前の時点までに検出値が安定している。また、COガスを除去した際の応答波形については、ベースラインまでの収束が早く、7200secより前の時点でも収束できている。
【0145】
比較例に係る試料では、図22に示すようにメンブレン18の温度勾配が大きく中央部の温度が高すぎる状態になり易いことが、図23に示すような応答波形のオーバーシュートを生じる一因であると考えられる。また、比較例に係る試料では、ガス検出部が起伏や傾斜を有し形状が均一でないことが、応答波形におけるベースラインまでの収束が遅れる一因であると考えられる。
【0146】
実施例に係る試料では、図22に示すようにメンブレン18の温度分布が均一であることにより、応答波形のオーバーシュートを防止できたと考えられる。また、実施例に係る試料では、ガス検出部60が平坦部70の上に形成されて形状が均一であるとともに、平坦部70により温度分布を均一にしつつ熱伝導率が向上したために、応答波形の安定および収束までの時間が短縮されたと考えられる。
【0147】
以上、実施形態、変形例および実施例を挙げてガスセンサ10、110、210について説明したが、本発明はこれらの実施形態等のみに限定されるものではなく、他の多くの実施形態や変形例が本発明の技術範囲に含まれることは言うまでもない。たとえば、平坦部70、ヒーター部50、ガス検出部60の形状については、多角形若しくは矩形波のような直線を繋ぐ形状のみには限定されず、円、楕円若しくは円弧のような曲線を繋ぐ形状や、曲線と直線とを繋ぐ形状であってもよい。また、ガス検出部60、260は、2対以上の電極62a、62b、262a、262bを有していてもよい。
【符号の説明】
【0148】
10、110、210…ガスセンサ
18…メンブレン
18a…メンブレン周縁孔
R1…中央領域
20…基材
22…キャビティ
24…キャビティ周縁部
30…第1の絶縁膜
31a、31b、31c、31d…梁部
32…第1絶縁膜メンブレン部
32a…辺
34…中心
A1…基準線
36…第1絶縁膜周縁部
40…第2の絶縁膜
41…第1部分
42…第2部分
43…第3部分
44…第2絶縁膜メンブレン部
46…第2絶縁膜周縁部
50、450、550、650、750…ヒーター部
52…屈曲部
L1…長さ
L2…振幅
60、160、260…ガス検出部
62a、62b、262a、262b…電極
58a、58b…ヒーター端子
59a、59b、659a、759a…ヒーター配線部
68a、68b…検出端子
69a、69b…検出配線部
70、470、570、670、770…平坦部
72、472、572、672、772…平坦面
92…半導体材料
165…Pt線
192…触媒材料
294…サーミスタ膜
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