IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

特開2024-86567光学レンズ用又はカメラ部材用樹脂組成物、光学レンズ及びカメラユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086567
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】光学レンズ用又はカメラ部材用樹脂組成物、光学レンズ及びカメラユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240620BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240620BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20240620BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B1/04
G03B11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170084
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022200581
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 愛
(72)【発明者】
【氏名】持松 拓途
【テーマコード(参考)】
2H083
2H148
【Fターム(参考)】
2H083AA04
2H148CA01
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、長波長の近赤外光の吸収特性に優れた光学レンズ用又はカメラ部材用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学レンズ用又はカメラ部材(但し、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有する近赤外線カットフィルターを除く)用樹脂組成物は、750nm~1200nmに極大吸収波長を有し且つテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素と、熱可塑性樹脂とを含む点に特徴を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
750nm~1200nmに極大吸収波長を有し且つテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素と、熱可塑性樹脂とを含む光学レンズ用又はカメラ部材(但し、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有する近赤外線カットフィルターを除く)用樹脂組成物。
【請求項2】
前記色素が、下記式(1)で表されるカチオンを含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、
は、CR1617を表すかまたはR15と連結する場合は炭素原子を表し、R16とR17は互いに連結して環を形成してもよく、
は、CR2627を表すかまたはR25と連結する場合は炭素原子を表し、R26とR27は互いに連結して環を形成してもよく、
11およびR21はそれぞれ独立して、有機基を表し、
12~R15、R16~R17、R22~R25、R26~R27はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または有機基を表し、
15は、R14と連結して芳香環を形成していてもよく、Yが炭素原子のときYと連結して芳香環を形成していてもよく、
25は、R24と連結して芳香環を形成していてもよく、Yが炭素原子のときYと連結して芳香環を形成していてもよく、
Lは、炭素数5以上9以下のメチン鎖を表し、当該メチン鎖に含まれるメチン基はそれぞれ独立して置換基を有していてもよく、当該置換基は互いに連結していてもよい。]
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂に対する前記色素の濃度を0.014質量%に調整し、厚さ1mmの平滑な成形板を形成したときに、前記成形板は、波長700nm以上の範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を成形して形成される光学レンズ。
【請求項5】
厚さが30μm~5mmである請求項4に記載の光学レンズ。
【請求項6】
請求項4に記載の光学レンズと、近赤外線カットフィルターとを含むカメラユニット。
【請求項7】
前記近赤外線カットフィルターは、700nm~750nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素を含む請求項6に記載のカメラユニット。
【請求項8】
前記近赤外線吸収色素は、下記式(3)で表されるスクアリリウム系色素を含む請求項7に記載のカメラユニット。
【化2】

[式(3)中、R71~R72はそれぞれ独立して、下記式(3a)または下記式(3b)で表される基を表す。]
【化3】

[式(3a)中、
環Pは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、
81~R83はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R82とR83は互いに連結して環を形成してもよく、
*は、式(3)中の4員環との結合部位を表す。]
【化4】

[式(3b)中、
84~R88はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R84とR85、R85とR86、R86とR87、R87とR88はそれぞれ、互いに連結して環を形成していてもよく、
*は、式(3)中の4員環との結合部位を表す。]
【請求項9】
前記近赤外線カットフィルターは、
波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有し、
波長620nm~660nmの範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有する請求項6に記載のカメラユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ用又はカメラ部材用樹脂組成物、光学レンズ及びカメラユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン用のカメラ等の撮像装置には、角度依存性や光学ノイズを低減するための近赤外線カットフィルターが備えられている。
【0003】
近年主流となっている反射吸収型の近赤外線カットフィルターとしては、主として青ガラスが広く使用されているが(例えば、特許文献1)、青ガラスは近赤外光を一定量透過するため角度依存性を十分に低減することが難しい。
【0004】
一方で、長波長(波長750nm~1100nm程度)の近赤外光を十分にカットする目的で、近赤外線カットフィルターにシアニン系色素を含ませる技術も知られている(例えば、特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/138299号
【特許文献2】国際公開第2019/151344号
【特許文献3】国際公開第2019/168090号
【特許文献4】国際公開第2019/022069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4が示すように、近赤外線領域と紫外線領域に幅広い吸収を有し角度依存性を低減できる近赤外線カットフィルターは種々提案されているものの、昨今の近赤外線カットフィルターに対する薄膜化の要請に応えるには、さらなる改良が求められる。近赤外線カットフィルターの塗布膜は非常に薄く、また厳密な吸収スペクトルの制御が必要なため、近赤外線カットフィルターだけでなく、近赤外線カットフィルターと組み合わせて用いられる光学レンズ等のカメラ部材の構成を改良することで長波長の近赤外光の吸収特性を改善できないか検討を重ねた。すなわち本発明の課題は、長波長の近赤外光の吸収特性に優れたカメラ部材用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、750nm~1200nmに極大吸収波長を有し且つテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素と、熱可塑性樹脂とを含む光学レンズ用又はカメラ部材(但し、近赤外線カットフィルターを除く)用樹脂組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は以下の点に要旨を有する。
[1] 750nm~1200nmに極大吸収波長を有し且つテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素と、熱可塑性樹脂とを含む光学レンズ用又はカメラ部材(但し、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有する近赤外線カットフィルターを除く)用樹脂組成物。
[2] 前記色素が、下記式(1)で表されるカチオンを含む[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、
は、CR1617を表すかまたはR15と連結する場合は炭素原子を表し、R16とR17は互いに連結して環を形成してもよく、
は、CR2627を表すかまたはR25と連結する場合は炭素原子を表し、R26とR27は互いに連結して環を形成してもよく、
11およびR21はそれぞれ独立して、有機基を表し、
12~R15、R16~R17、R22~R25、R26~R27はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または有機基を表し、
15は、R14と連結して芳香環を形成していてもよく、Yが炭素原子のときYと連結して芳香環を形成していてもよく、
25は、R24と連結して芳香環を形成していてもよく、Yが炭素原子のときYと連結して芳香環を形成していてもよく、
Lは、炭素数5以上9以下のメチン鎖を表し、当該メチン鎖に含まれるメチン基はそれぞれ独立して置換基を有していてもよく、当該置換基は互いに連結していてもよい。]
[3] 前記熱可塑性樹脂に対する前記色素の濃度を0.014質量%に調整し、厚さ1mmの平滑な成形板を形成したときに、前記成形板は、波長700nm以上の範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有する[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] [1]~[3]のいずれか1つに記載の樹脂組成物を成形して形成される光学レンズ。
[5] 厚さが30μm~5mmである[4]に記載の光学レンズ。
[6] [4]又は[5]に記載の光学レンズと、近赤外線カットフィルターとを含むカメラユニット。
[7] 前記近赤外線カットフィルターは、700nm~750nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素を含む[6]に記載のカメラユニット。
[8] 前記近赤外線吸収色素は、下記式(3)で表されるスクアリリウム系色素を含む[7]に記載のカメラユニット。
【化2】

[式(3)中、R71~R72はそれぞれ独立して、下記式(3a)または下記式(3b)で表される基を表す。]
【化3】

[式(3a)中、
環Pは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、
81~R83はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R82とR83は互いに連結して環を形成してもよく、
*は、式(3)中の4員環との結合部位を表す。]
【化4】

[式(3b)中、
84~R88はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R84とR85、R85とR86、R86とR87、R87とR88はそれぞれ、互いに連結して環を形成していてもよく、
*は、式(3)中の4員環との結合部位を表す。]
[9] 前記近赤外線カットフィルターは、
波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有し、
波長620nm~660nmの範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有する[6]~[8]のいずれか1つに記載のカメラユニット。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物によれば、長波長の近赤外光の吸収特性に優れた光学レンズやカメラ部材が容易に製造される。本構成により、カメラ部材と近赤外線カットフィルターでターゲットとする吸収領域を異ならせることができ、カメラ部材と近赤外線カットフィルターそれぞれで、産業界で求められる種々の特性を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、カメラユニットの概略図である。
図2-1】図2-1は、実施例1~3で得られた成形体の吸収スペクトルを表す。
図2-2】図2-2は、実施例4~5で得られた成形体の吸収スペクトルを表す。
図2-3】図2-3は、比較例2で得られた成形体の吸収スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<樹脂組成物>
図1はカメラユニットの概略図である。カメラユニット10は、光学レンズ1と近赤外線カットフィルター2を含む。レンズ単品に対する高精度の要求に応じて、光学レンズ1の枚数は増える傾向にあり、近年では厚さ5mm程度のカメラユニットの中に光学レンズ1が3~5枚収容されている(図1では5枚)。前記光学レンズ1と近赤外線カットフィルター2は、通常、筐体7に収容されている。カメラユニット10は、光学レンズ1よりも入光側にカバーガラス4を備える。カバーガラス4は、好ましくはカメラユニット10の最表側に備えられ、より好ましくは筐体7に備えられる。またカメラユニット10は、受光部(センサー)3を有しており、通常受光部3は、基板6上に設けられる。カメラユニット10は、必要に応じて、更に長波長の近赤外光の吸収に優れた第2近赤外線カットフィルター5を有していてもよい。図1では、カメラユニット10に入光した光は、カバーガラス4、光学レンズ1、近赤外線カットフィルター2、第2近赤外線カットフィルター5を経て、受光部3で感知される。本発明に係る樹脂組成物は、これらカバーガラス4、光学レンズ1、第2近赤外線カットフィルター5、受光部3等のカメラ部材(但し、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有する近赤外線カットフィルターを除く)の製造に好適な樹脂組成物である。
【0011】
以下では、「カメラ部材(但し、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有する近赤外線カットフィルターを除く)用樹脂組成物」を、単に「樹脂組成物」と称する場合がある。
【0012】
また本開示において、近赤外線カットフィルターは、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有するものとして定義する。前記近赤外線カットフィルターは、波長620nm~660nmの範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有することが好ましい。本発明に係る樹脂組成物から形成される成形体は、近赤外線カットフィルターとは異なる波長域に最大吸収ピークを有している。
【0013】
本発明に係る樹脂組成物は、750nm~1200nmに極大吸収波長を有し且つテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素と、熱可塑性樹脂とを含む。750nm~1200nmに極大吸収波長を有する色素を含有することで、長波長の近赤外光の吸収特性に優れた樹脂組成物が得られる。またテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素は耐熱性に優れているため、本発明に係る樹脂組成物を180℃~270℃で溶融して成形しても、当該樹脂組成物に含まれる色素は成形時の熱によって吸収特性が変化し難く(例えば、最大吸収ピークが消滅しない)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素は特に、本発明のような種々のカメラ部材用途に好ましい色素と言える。
【0014】
光学レンズを製造する際には、樹脂組成物を一般的に180℃~270℃で溶融して光学レンズを成形するが、本発明に係る樹脂組成物は耐熱性に優れていることから、本発明に係る樹脂組成物は特に、光学レンズの製造に好適な光学レンズ用樹脂組成物である。以下、本開示では、カメラユニットに含まれる光学レンズを例に挙げて説明しているが、光学レンズ用樹脂組成物は必ずしもカメラユニット用途に限定されるものではなく、望遠鏡、顕微鏡、医療機器等の光学機器に備えられる光学レンズ用途に幅広く適用できるものである。
【0015】
前記色素は、トルエン中で測定される吸収スペクトルにおいて、波長750nm~1200nmの範囲に最大吸収ピークを有するものであればよい。すなわち、前記色素はトルエン中で吸収スペクトルを測定したとき、波長750nm~1200nmの範囲に吸収極大を有するものである。なお、最大吸収ピークの波長を、極大吸収波長λmaxと称する。極大吸収波長λmaxは、770nm以上が好ましく、790nm以上がより好ましく、1100nm以下が好ましく、1050nm以下がより好ましく、1000nm以下がさらに好ましい。
【0016】
前記色素の分解温度は、好ましくは260℃以上、より好ましくは275℃以上、さらに好ましくは300℃以上であり、好ましくは360℃以下、より好ましくは350℃以下である。テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを有する色素は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを持たない色素と比べ、分解温度が高くなる傾向にある。なお分解温度の測定方法は、実施例の欄で詳述する。
【0017】
前記色素は、シアニン系カチオン及びジイモニウム系カチオンから選択される少なくとも1以上のカチオンを含むことが好ましい。これらのカチオンは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンと対イオン(塩)を形成できる。
【0018】
前記シアニン系カチオンは、下記式(1)で表されるカチオンであることが好ましい。なお、シアニン系カチオンには、共鳴関係にあるものが存在する場合があるが、式(1)のシアニン系カチオンには共鳴関係にあるものも含まれる。
【化5】

[式(1)中、
は、CR1617を表すかまたはR15と連結する場合は炭素原子を表し、R16とR17は互いに連結して環を形成してもよく、
は、CR2627を表すかまたはR25と連結する場合は炭素原子を表し、R26とR27は互いに連結して環を形成してもよく、
11およびR21はそれぞれ独立して、有機基を表し、
12~R15、R16~R17、R22~R25、R26~R27はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または有機基を表し、
15は、R14と連結して芳香環を形成していてもよく、Yが炭素原子のときYと連結して芳香環を形成していてもよく、
25は、R24と連結して芳香環を形成していてもよく、Yが炭素原子のときYと連結して芳香環を形成していてもよく、
Lは、炭素数5以上9以下のメチン鎖を表し、当該メチン鎖に含まれるメチン基はそれぞれ独立して置換基を有していてもよく、当該置換基は互いに連結していてもよい。]
【0019】
11~R17、R21~R27の有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基等が挙げられる。
【0020】
11~R17、R21~R27のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の環状(脂環式)アルキル基等が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有する置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。ハロゲノ基を有するアルキル基としては、モノハロゲノアルキル基、ジハロゲノアルキル基、トリハロメチル単位を有するアルキル基、パーハロゲノアルキル基等が挙げられる。ハロゲノ基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。アルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1~20が好ましく、具体的には、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば炭素数1~20が好ましく、より好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~5であり、環状のアルキル基であれば炭素数4~10が好ましく、5~8がより好ましい。
【0021】
11~R17、R21~R27のアルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基に含まれるアルキル基の具体例は、上記のアルキル基に関する説明が参照される。
【0022】
11~R17、R21~R27のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基等が挙げられる。アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、6~20が好ましく、より好ましくは6~12である。
【0023】
11~R17、R21~R27のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アラルキル基は置換基を有していてもよく、アラルキル基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、7~25が好ましく、より好ましくは7~15である。
【0024】
11~R17、R21~R27のアリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基に含まれるアリール基の具体例は、上記のアリール基に関する説明が参照される。
【0025】
11~R17、R21~R27のヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、ヘテロアリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。ヘテロアリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、2~20が好ましく、より好ましくは3~15である。
【0026】
11~R17、R21~R27のアミノ基としては、式:-NRc1c2で表され、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は、上記のこれらの基の説明が参照され、アルケニル基とアルキニル基としては、上記に例示したアルキル基の炭素-炭素単結合の一部が二重結合または三重結合に置き換わった基が挙げられる。Rc1とRc2は互いに連結して環形成していてもよい。
【0027】
11~R17、R21~R27のアミド基としては、式:-NH-C(=O)-Rc3で表され、Rc3がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は、上記のこれらの基の説明が参照される。
【0028】
11~R17、R21~R27のスルホンアミド基としては、式:-NH-SO-Rc4で表され、Rc4がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は、上記のこれらの基の説明が参照される。
【0029】
12~R17、R22~R27のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0030】
15がR14と連結して芳香環を形成する場合、および/または、R25がR24と連結して芳香環を形成する場合、R15がR14と連結して形成される芳香環およびR25がR24と連結して形成される芳香環としては、芳香族炭化水素環および芳香族複素環が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。芳香族複素環は、N(窒素原子)、O(酸素原子)およびS(硫黄原子)から選ばれる1種以上の原子を環構造に含み、芳香族性を有するものであり、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。
【0031】
15がR14と連結して形成される芳香環とR25がR24と連結して形成される芳香環は置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲノ基(ハロゲン原子)や前述したR11~R17、R21~R27の有機基が挙げられる。
【0032】
15がR14と連結して形成される芳香環およびR25がR24と連結して形成される芳香環としては、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。この場合、式(1)のシアニン系カチオンは下記式(1-1)で表されるものとなる。
【化6】
[式(1-1)中、R11~R13、R16~R17、R21~R23、R26~R27およびLは上記と同じ意味を表し、Ra1およびRa2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または有機基を表し、複数のRa1は互いに同一または異なっていてもよく、複数のRa2は互いに同一または異なっていてもよい。]
a1およびRa2の有機基としては前述したR11~R17、R21~R27の有機基が挙げられる。
【0033】
式(1-1)のシアニン系カチオンにおいて、R11~R13、R16~R17、R21~R23、R26~R27、Ra1およびRa2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアミノ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基がより好ましい。この場合のアルキル基、アルコキシ基の炭素数は1~8が好ましく、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3であり、アリール基の炭素数は6~12が好ましく、6~10がより好ましく、アラルキル基の炭素数は7~13が好ましく、7~11がより好ましい。
11およびR21は、アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数3~6のアルキル基であることが特に好ましい。
12、R13、R22、R23、Ra1およびRa2は、水素原子であることが特に好ましい。
16、R17、R26およびR27は、アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが特に好ましい。
【0034】
が炭素原子を表し、R15がYと連結して芳香環を形成する場合、および/または、Yが炭素原子を表し、R25がYと連結して芳香環を形成する場合、R15がYと連結して形成される芳香環およびR25がYと連結して形成される芳香環としては、芳香族炭化水素環および芳香族複素環が挙げられ、これらの説明は前述したR15がR14と連結して形成される芳香環およびR25がR24と連結して形成される芳香環の説明が参照される。
【0035】
15がYと連結して形成される芳香環およびR25がYと連結して形成される芳香環は置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲノ基(ハロゲン原子)や前述したR11~R17、R21~R27の有機基が挙げられる。
【0036】
15がYと連結して芳香環を形成する場合、R14は炭素数4以上のアルキル基または炭素数3以上のアルコキシ基を表し、R25がYと連結して芳香環を形成する場合、R24は炭素数4以上のアルキル基または炭素数3以上のアルコキシ基を表すことが好ましい。R14とR24のアルキル基、およびR14とR24のアルコキシ基に含まれるアルキル基としては、直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。R14とR24のアルキル基の炭素数は5以上が好ましく、また20以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、7以下がさらにより好ましい。R14とR24のアルコキシ基に含まれるアルキル基の炭素数は4以上が好ましく、また20以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、6以下がさらにより好ましい。R14とR24の直鎖状のアルキル基、およびR14とR24のアルコキシ基に含まれる直鎖状のアルキル基としては、n-プロピル基(R14とR24のアルキル基を除く)、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。R14とR24の分岐状のアルキル基、およびR14とR24のアルコキシ基に含まれる分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基(R14とR24のアルキル基を除く)、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、1-エチルプロピル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、tert-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。R14とR24のアルキル基、およびR14とR24のアルコキシ基に含まれるアルキル基は直鎖状のアルキル基であることが好ましく、これによりシアニン系カチオンの有機溶媒への溶解性が高まるとともに、耐熱性が高まる傾向となる。R14とR24はアルコキシ基であることがより好ましい。
【0037】
15がYと連結して形成される芳香環およびR25がYと連結して形成される芳香環としては、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。この場合、式(1)のシアニン系カチオンは下記式(1-2)で表されるものとなる。
【化7】

[式(1-2)中、R11~R14、R21~R24およびLは上記と同じ意味を表し、Rb1およびRb2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または有機基を表し、複数のRb1は互いに同一または異なっていてもよく、複数のRb2は互いに同一または異なっていてもよい。]
b1およびRb2の有機基としては前述したR11~R17、R21~R27の有機基が挙げられる。
【0038】
式(1-2)のシアニン系カチオンにおいて、R11~R14、R21~R24、Rb1およびRb2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアミノ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基がより好ましい。この場合のアルキル基、アルコキシ基の炭素数は1~8が好ましく、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3であり、アリール基の炭素数は6~12が好ましく、6~10がより好ましく、アラルキル基の炭素数は7~13が好ましく、7~11がより好ましい。
11およびR21は、アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数3~6のアルキル基であることが特に好ましい。
12、R13、R22、R23、Rb1およびRb2は、水素原子であることが特に好ましい。
14およびR24は、アルコキシ基であることがさらに好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基が特に好ましい。
【0039】
15がR14またはYと連結せず、R25がR24またはYと連結しない場合、式(1)のシアニン系カチオンは下記式(1-3)で表されるものとなる。
【化8】
[式(1-3)中、R11~R17、R21~R27およびLは上記と同じ意味を表す。]
【0040】
式(1-3)のシアニン系カチオンにおいて、R11~R17、R21~R27はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアミノ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基がより好ましい。この場合のアルキル基、アルコキシ基の炭素数は1~8が好ましく、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3であり、アリール基の炭素数は6~12が好ましく、6~10がより好ましく、アラルキル基の炭素数は7~13が好ましく、7~11がより好ましい。
11、R16、R17、R21、R26およびR27は、アルキル基であることがさらに好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが特に好ましい。
12~R15、R22~R25は、水素原子であることが特に好ましい。
【0041】
式(1)、式(1-1)~式(1-3)において、Lは炭素数5以上9以下のメチン鎖を表し、すなわち、5以上9以下のメチン基(-CH=を意味する)が繋がったメチン鎖を表す。メチン鎖に含まれるメチン基(すなわちメチン基上の水素原子)はそれぞれ独立して置換基を有していてもよく、当該置換基は互いに連結していてもよい。メチン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲノ基(ハロゲン原子)や前述したR11~R17、R21~R27の有機基が挙げられる。なお、メチン鎖の炭素数は、メチン鎖に含まれるメチン基が置換基を有する場合は、置換基を除く炭素数を意味する。
【0042】
メチン鎖Lは奇数個のメチン基が繋がったものであることが好ましく、従って、メチン鎖は炭素数5、7または9であることが好ましく、5、7または9のメチン基が繋がったものであることが好ましい。この場合、式(1)は、下記式(1A)~式(1C)で表されるものとなる。式(1A)~式(1C)において、R31~R39はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または有機基を表す。
【化9】
【0043】
メチン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミノ基が好ましく、ハロゲノ基、アルキル基、アリール基、アミノ基がより好ましい。この場合のアルキル基、アルコキシ基の炭素数は1~8が好ましく、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3であり、アリール基の炭素数は6~12が好ましく、6~10がより好ましく、アラルキル基の炭素数は7~13が好ましく、7~11がより好ましい。アミノ基は、式:-NRc1c2で表され、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基であるものが好ましく、当該アルキル基の炭素数は1~5が好ましく、1~3がより好ましく、当該アリール基の炭素数は6~12が好ましく、6~10がより好ましい。
【0044】
メチン基の有する置換基が互いに連結する場合、2つ隣のメチン基の有する置換基が互いに連結して環を形成することが好ましい。式(1A)~式(1C)においては、R31とR33、R32とR34、R33とR35、R34とR36、R35とR37、R36とR38またはR37とR39が互いに連結して環を形成することが好ましい。
【0045】
メチン基の有する置換基が互いに連結して形成された環は、5~8員環であることが好ましく、5~7員環であることがより好ましく、5または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが特に好ましい。メチン基の有する置換基が互いに連結して形成された環は、メチン鎖と一部共有して形成されるが、メチン鎖と共有する部分以外に不飽和結合を有していてもよく、有していなくてもよい。好ましくは、メチン基の有する置換基が互いに連結して形成された環は、メチン鎖と共有する部分以外に不飽和結合を有しない。
【0046】
メチン基の有する置換基が互いに連結して形成された環は置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、ハロゲノ基(ハロゲン原子)や前述したR11~R17、R21~R27の有機基が挙げられる。なかでも、当該置換基としては、ハロゲノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基が好ましい。この場合のアルキル基、アルコキシ基の炭素数は1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1または2がさらに好ましく、アリール基の炭素数は6~12が好ましい。アミノ基は、式:-NRc1c2で表され、Rc1およびRc2がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基であるものが好ましく、当該アルキル基の炭素数は1~5が好ましく、1~3がより好ましく、当該アリール基の炭素数は6~12が好ましく、6~10がより好ましい。
【0047】
メチン基が有していてもよい置換基は、メソ位(中央)またはその隣のメチン基に結合していることが好ましく、それ以外のメチン基は置換基を有しないことが好ましい。
式(1A)では、R32~R34がハロゲン原子または有機基であってもよく、R31とR35が水素原子であることが好ましい。
式(1B)では、R33~R35がハロゲン原子または有機基であってもよく、R31、R32、R36、R37が水素原子であることが好ましい。
式(1C)では、R34~R36がハロゲン原子または有機基であってもよく、R31~R33、R37~R39が水素原子であることが好ましい。
より好ましくは、連結して環を形成しない置換基はメソ位のメチン基に結合し、連結して環を形成する置換基は、メソ位の隣のメチン基に結合し、互いに連結している。メチン鎖Lはまた、置換基を有しないことも好ましい。
【0048】
メチン鎖Lは、好ましくは式(L1)~(L3)で表される鎖であり、より好ましくは式(L1)または式(L2)で表される鎖である。
【化10】
【0049】
特に好ましいシアニン系カチオンとして、下記式(1-a)~(1-c)で表されるカチオンが示される。下記式(1-a)~(1-c)中、R11、R14、R16、R17、R21、R24、R26、R27は上記と同じ意味を表す。
【化11】

【化12】

【化13】
【0050】
前記ジイモニウム系カチオンが、下記式(2)で表されるカチオンであることが好ましい。
【化14】

[式(2)中、R43~R50はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基である。]
【0051】
43~R50のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0052】
43~R50の炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の環状(脂環式)アルキル基等が挙げられる。
【0053】
また、前記炭素数1~10のアルキル基の置換基としては、シアノ基;ヒドロキシ基;ハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2~8のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3~15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6~12のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基等の炭素数2~7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2~7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2~7のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。具体的にはR43~R50はトリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3,-トリフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基等が挙げられる。
【0054】
43~R50は、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、すべて同じであることが好ましい。また、ジアミンの結合位置は、フェニレンジアミン骨格に結合する窒素原子に対してp-位であるものが合成上は簡便であるが、特に限定されるものではない。
【0055】
ジイモニウム系カチオンとしては、例えば、特表2008-528706号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0056】
前記色素の含有量は、樹脂組成物の固形分100質量%中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.010質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。前記範囲内であれば所望の効果を発現させることができる。なお、樹脂組成物の固形分量とは、樹脂組成物が溶媒を含有する場合に、溶媒を除いた樹脂組成物の量を意味する。
【0057】
また所望の効果を発現させる観点から、前記色素の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.010質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以下である。
【0058】
樹脂組成物に含まれる前記色素は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0059】
熱可塑性樹脂としては、公知のものを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、透明性が高く、色素を溶解できるものが好ましい。このような熱可塑性樹脂を選択することにより、透過させたい波長域における高透過率と、遮断したい波長域における高吸収性を両立させることができる。
【0060】
熱可塑性樹脂としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体、当該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体等を含む)であって、本発明に係る樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれるものも用いることができる。いずれの樹脂も本発明の樹脂に含まれる。なお後者の場合は、重合反応で得られた反応液中に存在する、未反応物、反応性末端官能基、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等により、色素の構造の一部または全部が分解してしまうこともあり得る。従って、そのような懸念がある場合には、重合が完結した熱可塑性樹脂に色素を配合して、樹脂組成物とすることが望ましい。
【0061】
熱可塑性樹脂としては、透明性の高い熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、これにより樹脂組成物に含まれる色素の光選択吸収特性を好適に活用することができる。樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、シクロオレフィン系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアリレート樹脂等)、ポリスルホン樹脂、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN)等)等が挙げられる。これらの中でも、透明性や耐熱性に優れる観点から、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素化芳香族ポリマーが好ましい。
【0062】
ポリイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にイミド結合を含む重合体であり、例えば、テトラカルボン酸2無水物とジアミンとを縮重合させてポリアミド酸を得て、これを脱水・環化(イミド化)させることにより製造することができる。ポリイミド樹脂としては、芳香族環がイミド結合で連結された芳香族ポリイミドを用いることが好ましい。ポリイミド樹脂は、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリム(登録商標)、デュポン社製のカプトン(登録商標)、三井化学社製のオーラム(登録商標)、サンゴバン社製のメルディン(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI3000シリーズ等を用いることができる。
【0063】
ポリアミドイミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合とイミド結合を含む重合体である。ポリアミドイミド樹脂は、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のトーロン(登録商標)、東洋紡社製のバイロマックス(登録商標)、東レプラスチック精工社製のTPS(登録商標)TI5000シリーズ等を用いることができる。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸またはその誘導体由来の繰り返し単位を有する重合体であり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系樹脂は主鎖に環構造を有するものも好ましく、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、マレイミド環構造等のカルボニル基含有環構造;オキセタン環構造、アゼチジン環構造、テトラヒドロフラン環構造、ピロリジン環構造、テトラヒドロピラン環構造、ピペリジン環構造等のカルボニル基非含有環構造が挙げられる。なお、カルボニル基含有環構造には、イミド基などのカルボニル基誘導体基を含有する構造も含む。カルボニル基含有環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2004-168882号公報、特開2008-179677号公報、国際公開第2005/54311号、特開2007-31537号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0065】
シクロオレフィン系樹脂は、モノマー成分の少なくとも一部としてシクロオレフィンを用い、これを重合して得られる重合体であり、主鎖の一部に脂環構造を有するものであれば特に限定されない。シクロオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプラスチック社製のトパス(登録商標)、三井化学社製のアペル(登録商標)、日本ゼオン社製のゼオネックス(登録商標)およびゼオノア(登録商標)、JSR社製のアートン(登録商標)等を用いることができる。
【0066】
ポリエステル樹脂は、主鎖の繰り返し単位にエステル結合を含む重合体であり、例えば、多価カルボン酸(ジカルボン酸)とポリアルコール(ジオール)とを縮重合させることにより得ることができる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、例えば、大阪ガスケミカル社製のOKPシリーズ、帝人社製のTRNシリーズ、テオネックス(登録商標)、デュポン社製のライナイト(登録商標)、三菱化学社製のノバペックス(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のノバデュラン(登録商標)、東レ社製のルミラー(登録商標)、トレコン(登録商標)、ユニチカ社製のエリーテル(登録商標)等を用いることができる。
【0067】
ポリアリレート樹脂は、2価フェノール化合物と2塩基酸(例えば、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸)とを重縮合して得られる重合体であり、主鎖の繰り返し単位に芳香族環とエステル結合とを含む繰り返し単位を有する。ポリアリレート樹脂は、例えば、クラレ社製のベクトラン(登録商標)等を用いることができる。
【0068】
ポリアミド樹脂は、主鎖の繰り返し単位にアミド結合を含む重合体であり、例えば、ジアミンとジカルボン酸とを縮重合させることにより得ることができる。ポリアミド樹脂は主鎖に脂肪族骨格を有するものであってもよく、このようなアミド樹脂として、例えばナイロンを用いることができる。ポリアミド樹脂は芳香族骨格を有するものであってもよく、このようなポリアミド樹脂としてアラミド樹脂が知られている。アラミド樹脂は、耐熱性に優れ、強い機械強度を有する点から好ましく用いられ、例えば、帝人社製のトワロン(登録商標)、コーネックス(登録商標)、デュポン社製のケブラー(登録商標)、ノーメックス(登録商標)等を用いることができる。
【0069】
ポリカーボネート樹脂は、主鎖の繰り返し単位にカーボネート基(-O-(C=O)-O-)を含む重合体である。ポリカーボネート樹脂としては、帝人社製のパンライト(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチック社製のユーピロン(登録商標)、ノバレックス(登録商標)、ザンター(登録商標)、住化スタイロンポリカーボネート社製のSDポリカ(登録商標)等を用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖単位の一部にエステル結合を有したポリエステルポリカーボネート樹脂も用いることができる。ポリエステルポリカーボネート樹脂としては、帝人社製・三菱ガス化学社製のレンズ用樹脂、三菱ガス化学社製のユピゼータ(登録商標)等を用いることができる。
【0070】
ポリスルホン樹脂は、芳香族環とスルホニル基(-SO-)と酸素原子とを含む繰り返し単位を有する重合体である。ポリスルホン樹脂は、例えば、住友化学社製のスミカエクセル(登録商標)PES3600PやPES4100P、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のUDEL(登録商標)P-1700等を用いることができる。
【0071】
フッ素化芳香族ポリマーは、1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合よりなる群から選ばれる少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位を有する重合体であり、これらの中でも、1以上のフッ素原子を有する芳香族環とエーテル結合とを含む繰り返し単位を必須的に含む重合体であることが好ましい。フッ素化芳香族ポリマーは、例えば、特開2008-181121号公報に記載されたものを用いることができる。
【0072】
熱可塑性樹脂は透明性が高いことが好ましく、これにより樹脂組成物を光学レンズ用途やカメラ部材用途に好適に適用しやすくなる。熱可塑性樹脂は、例えば、厚さ0.1mmでの全光線透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の前記全光線透過率の上限は特に限定されず、全光線透過率は100%以下であればよいが、例えば95%以下であってもよい。全光線透過率は、JIS K 7105に基づき測定する。
【0073】
熱可塑性樹脂はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましく、これにより、樹脂組成物やこれから得られる成形体の耐熱性を高めることができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、例えば、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、樹脂組成物の成形加工性を確保する点から、例えば250℃以下が好ましい。
【0074】
樹脂組成物は、溶媒を含有するものであってもよい。樹脂組成物を製造する際、色素を溶媒に溶解させて色素溶液を調製し、これを熱可塑性樹脂と混合することにより、樹脂組成物を製造できる。また熱可塑性樹脂を溶媒に溶解させて樹脂溶液を調製し、これを色素と混合することにより、樹脂組成物を製造できる。これにより各成分を均一かつ高濃度に存在させるようにすることができる。なお光学レンズやカメラ部材の成形方法によっては、成形前に前記溶媒を加熱等により除去してもよい。
【0075】
樹脂組成物が溶媒を含む場合、前記溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;PGMEA(2-アセトキシ-1-メトキシプロパン)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体類(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;N-メチル-ピロリドン等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ケトン類、グリコール誘導体類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素系溶媒が特に好ましい。
【0076】
樹脂組成物が溶媒を積極的に含む場合、溶媒の含有量は、樹脂組成物100質量%中、例えば50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。溶媒の含有量をこのような範囲内に調整することにより、色素濃度の高い樹脂組成物を得ることが容易になる。
樹脂組成物が溶媒を積極的に含まない場合、溶媒の含有量は、樹脂組成物100質量%中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0077】
樹脂組成物には、必要に応じて、分散剤、表面調整剤、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、添着剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0078】
なお樹脂組成物は後述するスクアリリウム系色素を含んでいてもよいが、スクアリリウム系色素の含有量は少ない方が好ましい。スクアリリウム系色素は一般的に上記色素よりも短波長側に優れた吸収特性を有するため、スクアリリウム系色素は後述する近赤外線カットフィルターに含まれることが望ましい。スクアリリウム系色素の含有量は、色素の含有量に対し、質量基準で、好ましくは2倍以下、より好ましくは1倍以下、さらに好ましくは0.2倍以下である。
【0079】
本発明に係る樹脂組成物であれば、熱可塑性樹脂に対する色素の濃度を0.014質量%に調整し、厚さ1mmの平滑な成形板を形成したときに、前記成形板は、好ましくは波長700nm以上、より好ましくは720~1100nm、さらに好ましくは750~1050nm、よりさらに好ましくは800~1000nmの範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有するとよい。これにより長波長の近赤外光の吸収特性に優れた光学レンズやカメラ部材が容易に製造される。また前記成形板は、波長750nm超1100nm以下の範囲(好ましくは波長770nm~1000nm)に最大吸収ピークを有することが望ましい。
【0080】
<光学レンズ>
本発明はさらに、本発明に係る樹脂組成物を成形して製造される光学レンズも包含する。光学レンズは、本発明に係る樹脂組成物をレンズ状に硬化することにより得られる。前記樹脂組成物は、加熱(軟化)および冷却することによって硬化するものであってもよく、樹脂成分の反応(例えば、重合反応や架橋反応)によって硬化するものであってもよく、樹脂組成物に含まれる溶媒が除去されて硬化するものであってもよい。好ましくは、光学レンズは、前記樹脂組成物を溶融成形することにより製造される。溶融成形時の温度は、一般的には180~270℃であり、好ましくは200~250℃である。加熱時間は特に限定されないが、好ましくは0.5~15分、より好ましくは1~10分、さらに好ましくは1.5~8分である。
【0081】
光学レンズの厚さ(1枚あたり)は、一般的には30μm~5mmであり、好ましくは50μm~4mmであり、より好ましくは70μm~3mmである。
【0082】
光学レンズは、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長750nm超1100nm以下の範囲(好ましくは波長770nm~1000nm)に最大吸収ピークを有することが望ましい。光学レンズでの長波長の近赤外光の吸収特性を良好にするためである。同様の観点から、光学レンズは、好ましくは波長700nm以上、より好ましくは720~1100nm、さらに好ましくは750~1050nm、よりさらに好ましくは800~1000nmの範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有するとよい。
【0083】
<カメラ部材>
本発明はさらに、本発明に係る樹脂組成物を成形して製造される光学レンズ;本発明に係る樹脂組成物を少なくとも片面に塗布して製造されるカバーガラス;本発明に係る樹脂組成物からなる第2近赤外線カットフィルター;本発明に係る樹脂組成物層を有する受光部;等のカメラ部材を包含する。カメラユニットが、前記カメラ部材と、近赤外線カットフィルターを備えることで、近赤外線カットフィルターの薄膜化の要請にこたえつつ、厳密な吸収スペクトルの制御が可能となる。以下、各カメラ部材について詳述する。
【0084】
<カメラユニット用光学レンズ>
光学レンズの製造方法、光学レンズの厚さ、最大吸収ピーク、及び波長(T50)は、前記に同じである。1つのカメラユニット内に2枚以上の光学レンズが備えられる場合、本発明の樹脂組成物を成形して得られる光学レンズは1枚または2枚以上含まれることが好ましい。図1には光学レンズ1が5枚の例を示すが、この場合、本発明の樹脂組成物を成形して得られる光学レンズは、5枚の光学レンズ1のいずれであってもよい。
【0085】
<カバーガラス>
本発明に係る樹脂組成物は、カバーガラスの片面、またはカバーガラスの両面に塗布されていることが好ましい。カバーガラスに塗布された樹脂組成物は、その後、硬化されることが好ましい。カメラユニットにおいてカバーガラスは、樹脂組成物の塗布面が、外側を向くように設置されてもよく、内側(つまりレンズ側)を向くように設置されてもよい。
【0086】
<第2近赤外線カットフィルター>
第2近赤外線カットフィルターとは、前記樹脂組成物からなるシート状またはフィルム状の成形体である。シートの厚さ(1枚あたり)は、一般的には0.5~5mmであり、好ましくは1~3mmである。フィルムの厚さ(1枚あたり)は、一般的には30~500μmであり、好ましくは50~250μmである。カメラユニットにおいて前記第2近赤外線カットフィルターは任意の位置に設置することが可能であり、例えば、レンズと近赤外線カットフィルターの間、近赤外線カットフィルターと受光部の間等に設置することができる。また前記第2近赤外線カットフィルターは、近赤外線カットフィルターと一体化されてもよく、近赤外線カットフィルターとは別の部材として設置されてもよい。
【0087】
<受光部>
受光部において、本発明に係る樹脂組成物層は、受光部の入光面側に形成されていることが好ましい。また樹脂組成物層は、硬化していることが好ましい。
【0088】
<カメラユニット>
本発明はさらに、前記光学レンズ、前記カバーガラス、前記第2近赤外線カットフィルター、及び前記受光部からなる群より選択される少なくとも1つ以上と、近赤外線カットフィルターとを含むカメラユニットも包含する。前記カメラユニットは、イメージセンサー(撮像素子)の構成部材として用いることができる。例えばイメージセンサーは、被写体の光を電気信号等に変換して出力する電子部品として用いられ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等が挙げられる。イメージセンサーは、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に用いることができる。カメラユニットはさらに、可視光線カットフィルター、近赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター等を有していてもよい。
【0089】
近赤外線カットフィルターとしては、公知の近赤外線カットフィルターを用いることができる。近赤外線カットフィルターは、波長350nm~1100nmの範囲の吸収スペクトルにおいて、波長700nm~750nmの範囲に最大吸収ピークを有する。可視光に近いため、近赤外線カットフィルターで精密な吸収特性の制御を行うとよい。同様の観点から、近赤外線カットフィルターは、波長620nm~660nmの範囲に透過率が50%となる波長(T50)を有することが好ましい。
【0090】
近赤外線カットフィルターは、例えば、近赤外線吸収色素、可視光吸収色素、紫外線吸収色素から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。近赤外線吸収色素は、例えば波長600nm~1100nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましい。可視光吸収色素は、例えば可視光領域(例えば、波長420nm超680nm未満の範囲)に極大吸収波長を有するものが好ましい。紫外線吸収色素は、例えば波長300nm~400nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましい。
【0091】
近赤外線吸収色素と可視光吸収色素は、有機色素であっても、無機色素であっても、有機無機複合色素(例えば、金属原子またはイオンが配位した有機化合物)であっても、特に限定されない。近赤外線吸収色素および可視光吸収色素としては、例えば、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(例えば、ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、コリン類等)、アゾ系色素、キノン系色素、キサンテン系色素、インドリン系色素、アリールメタン系色素、クアテリレン系色素、ジイモニウム系色素、ペリレン系色素、キナクドリン系色素、オキサジン系色素、ジピロメテン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられる。これらの色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。なかでも、近赤外線吸収色素および可視光吸収色素として、所望の波長光を効果的に吸収できる点から、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、およびジピロメテン系色素から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。近赤外線吸収色素としては、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、フタロシアニン系色素、およびシアニン系色素から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより近赤外領域の光を効果的に吸収し、可視光透過率を高めることが容易になる。
【0092】
前記近赤外線吸収色素は、波長700nm~750nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましく、下記式(3)で表されるスクアリリウム系色素を含むことがより好ましい。なお、スクアリリウム系色素には、共鳴関係にあるものが存在する場合があるが、式(3)のスクアリリウム系色素には共鳴関係にあるものも含まれる。
【化15】

[式(3)中、R71~R72はそれぞれ独立して、下記式(3a)または下記式(3b)で表される基を表す。]
【化16】

[式(3a)中、
環Pは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、
81~R83はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R82とR83は互いに連結して環を形成してもよく、
*は、式(3)中の4員環との結合部位を表す。]
【化17】

[式(3b)中、
84~R88はそれぞれ独立して、水素原子、有機基または極性官能基を表し、R84とR85、R85とR86、R86とR87、R87とR88はそれぞれ、互いに連結して環を形成していてもよく、
*は、式(3)中の4員環との結合部位を表す。]
【0093】
式(3)において、スクアリリウム骨格の一方側と他方側に結合した基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0094】
81~R88の有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基等が挙げられる。R81~R88の極性官能基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。有機基の詳細は、上記のR11~R17、R21~R27の有機基の説明が参照される。
【0095】
82~R88から形成される各環構造としては、炭化水素環や複素環が挙げられ、これらの環構造は芳香族性を有していても有していなくてもよいが、非芳香族炭化水素環または非芳香族複素環であることが好ましい。非芳香族炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等のシクロアルカン;シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(例えば、1,3-シクロヘキサジエン)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン等のシクロアルケン等が挙げられる。非芳香族複素環としては、前記に説明したような非芳香族炭化水素環の環を構成する炭素原子の1個以上が、N(窒素原子)、S(硫黄原子)およびO(酸素原子)から選ばれる少なくとも1種以上の原子に置き換わった環が挙げられる。非芳香族複素環としては、例えば、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピペリジン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオピラン環、モルホリン環、ヘキサメチレンイミン環、ヘキサメチレンオキシド環、ヘキサメチレンスルフィド環、ヘプタメチレンイミン環等が挙げられる。
【0096】
式(3a)においてR81~R83が環を形成しない場合、R81~R83はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、またはアラルキル基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、またはアリール基がより好ましい。R81~R83のアルキル基とアリール基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
【0097】
式(3a)において、R82とR83が連結して形成される環構造としては、4~9員の不飽和炭化水素環であることが好ましく、中でもシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンがより好ましい。
【0098】
式(3a)の環Pの芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。芳香族炭化水素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。環Pの芳香族複素環は、N(窒素原子)、O(酸素原子)およびS(硫黄原子)から選ばれる1種以上の原子を環構造に含み、芳香族性を有するものであり、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。芳香族複素環は、環構造を1個のみ有するものであってもよく、2個以上の環構造が縮合したものであってもよい。環Pのこれらの環構造を含む縮合環は、芳香族炭化水素環と芳香族複素環とが縮環した構造を有するものであり、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。
【0099】
環Pは置換基を有していてもよく、当該置換基としては上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。環Pが置換基を有する場合、その数は1~3が好ましく、1~2がより好ましく、さらに好ましくは1である。環Pは置換基を有さなくてもよい。
【0100】
式(3b)においてR84~R88が環を形成しない場合、R84~R88はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アミド基、またはヒドロキシ基であることが好ましい。なかでもR84~R88はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、またはアミド基であることが好ましい。この場合のアルキル基は、直鎖状または分岐状であることが好ましく、またその炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
【0101】
式(3b)で表される基は、R85とR86が連結して環を形成していることが好ましく、さらにR86とR87が連結して環を形成していてもよい。この場合、少なくともR84とR88は環を形成しない基となる。なお、R85とR86から形成される環構造やR86とR87から形成される環構造の環員数は5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。
【0102】
式(3b)で表される基では、R86がアミノ基であるか、アミノ基であるR86がR85と連結して環を形成しているか、さらにR87とも連結して環を形成していることが好ましい。R84またはR88がアミド基であることが好ましい。
【0103】
スクアリリウム系色素としては、例えば、特開2020-132699号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0104】
紫外線吸収色素としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、メロシアニン系化合物、トリアジン系化合物等の公知の紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。紫外線吸収色素(紫外線吸収剤)は、市販の物質を用いてもよく、例えば、ADEKA社製のアデカスタブ(登録商標)シリーズや、BASF社製のTINUVIN(登録商標)シリーズ、三共化成社製のジスライザー(登録商標)シリーズ、住友化学社製のスミソーブ(登録商標)シリーズ、共同薬品社製のバイオソーブ(登録商標)シリーズ、シプロ化成社製のシーソーブ(登録商標)シリーズ等を用いることができる。また、特開2019-014707号公報や特開2022-158995号公報に開示されるエチレン化合物を紫外線吸収色素として用いることもできる。
【0105】
近赤外線カットフィルターに含まれる樹脂としては、透明性の高い樹脂であればよく、本発明に係る樹脂組成物に用いられる樹脂の説明が参照される。近赤外線カットフィルターには、必要に応じて、分散剤、表面調整剤、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0106】
近赤外線カットフィルターは、単一または複数の樹脂層から形成されてもよく、支持体と一体化されて形成されてもよい。前記支持体としては、樹脂板、樹脂フィルム、ガラス板等の透明基板を用いることが好ましい。また近赤外線カットフィルターは、保護層、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性や防眩性を有する層(反射防止膜)、傷付き防止性能を有する層、近赤外線反射膜、紫外線反射膜、その他の機能を有する透明基材等を有していてもよい。
【実施例0107】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0108】
(1)色素の合成
(1-1)合成例1:シアニン色素1の合成
原料シアニン色素として3-ブチル-2-(2-[3-[2-(3-ブチル-1,1-ジメチル-1,3-ジヒドロベンゾ[e]インドール-2-イリデン)エチリデン]-2-クロロ-シクロヘキサ-1-エニル]ビニル)-1,1-ジメチル-1H-ベンゾ[e]インドリウム ヘキサフルオロホスフェート(Few Chemicals社製、S0712、以降比較シアニン色素1と称する場合がある):
【化18】

を用い、当該原料シアニン色素50.0mg(0.06mmоl)をアセトン5gに溶解させ、ここに40℃に加熱した10.5%テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム水溶液0.45g(0.07mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。次いで、溶媒を留去し、得られた固体をイオン交換水で洗浄し、再結晶(溶媒:クロロホルム、メタノール)させることで、シアニン色素1:
【化19】

を73.5mg得た(収率:86.1%)。
【0109】
(1-2)合成例2:シアニン色素2の合成
合成例1において、原料シアニン色素として6-ブトキシ-2-[5-(6-ブトキシ-1-ブチル-1H-ベンゾ[cd]インドール-2-イリデン)-ペンタ-1,3-ジエニル]-1-ブチル-ベンゾ[cd]インドリウム テトラフルオロボレート(Few Chemicals社製、S2437、以降比較シアニン色素2と称する場合がある):
【化20】

を用いたこと以外は、合成例1と同様にしてシアニン色素2:
【化21】

を85.0mg得た(収率:89.8%)。
【0110】
(1-3)合成例3:シアニン色素3の合成
原料シアニン色素として2-[2-[2-クロロ-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド(東京化成工業社製、IR775クロリド、以降比較シアニン色素3と称する場合がある):
【化22】

を50.0mg(0.10mmol)、10.5%テトラキステトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム水溶液を0.71g(0.11mmol)用いたこと以外は、合成例1と同様にしてシアニン色素3:
【化23】
を36.5mg得た(収率:30.3%)。
【0111】
(2)色素の評価
シアニン色素1~3及び比較シアニン色素1~3を以下の方法で評価した。
【0112】
<耐熱性評価>
TG-DTAを用いて重量減少温度を測定した。昇温速度10℃/分、空気雰囲気下、常温から400℃まで昇温し、5%重量が減少した温度を分解温度として求めた。リファレンスにはα-アルミナを用いた。結果を表1に示す。
【0113】
<分光特性評価>
各シアニン色素のトルエン溶液を調製し、波長300nm~1100nmにおける吸収スペクトルを測定した。シアニン色素のトルエン溶液は、極大吸収波長における透過率が10%(±0.05%)となるように濃度を調整し、分光光度計(島津製作所社製、UV-1800)を用いて、測定ピッチ1nmで透過率を測定し、波長300nm~1100nmの範囲で吸収が最大となる波長(極大吸収波長λmax)を求めた。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
(3)光学レンズ用樹脂組成物の製造
実施例1
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社、ユーピロン(登録商標)HL3003)20gにクロロホルム80gを加え、25℃で24時間攪拌し、溶解させることにより濃度20質量%のポリカーボネート樹脂溶液を得た。ポリカーボネート樹脂溶液18.2gにシアニン色素1を0.5mg加え均一にした後、直径28mmのシャーレに約1mLを流し入れた。溶媒を除去するため150℃のオーブンで1時間加熱することにより光学レンズ用樹脂組成物を得た。樹脂に対する色素濃度は0.014質量%であった。240℃に加熱したホットプレート上にこの樹脂組成物を置き、5分間溶融成形することで平滑な成形板を得た。
【0116】
実施例2~3、比較例1~3
シアニン色素1の代わりに、以下のシアニン色素を用いた以外は実施例1と同様にして光学レンズ用樹脂組成物と成形板を得た。
実施例2:シアニン色素2
実施例3:シアニン色素3
比較例1:比較シアニン色素1
比較例2:比較シアニン色素2
比較例3:比較シアニン色素3
【0117】
実施例4
TOPAS(登録商標)樹脂(ポリプラスチックス株式会社、5013S-04)20gにトルエン80gを加え、25℃で24時間攪拌し、溶解させることにより濃度20質量%のTOPAS樹脂溶液を得た。TOPAS樹脂溶液18.2gにシアニン色素1を0.83mgとシアニン色素2を0.25mg加え均一にした後、直径28mmのシャーレに約1mLを流し入れた。溶媒を除去するため150℃のオーブンで1時間加熱することにより光学レンズ用樹脂組成物を得た。樹脂に対する色素濃度は0.03質量%であった。240℃に加熱したホットプレート上にこの樹脂組成物を置き、5分間溶融成形することで平滑な成形板を得た。
【0118】
実施例5
ARTON(登録商標)樹脂(JSR株式会社、RX4500)20gにトルエン80gを加え、25℃で24時間攪拌し、溶解させることにより濃度20質量%のARTON樹脂溶液を得た。ARTON樹脂溶液18.2gにシアニン色素1を0.66mgとシアニン色素2を0.18mg加え均一にした後、直径28mmのシャーレに約1mLを流し入れた。溶媒を除去するため150℃のオーブンで1時間加熱することにより光学レンズ樹脂組成物を得た。樹脂に対する色素濃度は0.023質量%であった。240℃に加熱したホットプレート上にこの樹脂組成物を置き、5分間溶融成形することで平滑な成形板を得た。
【0119】
(4)成形物の評価
各成形板について、分光光度計(島津製作所社製、UV-1800)を用いて、測定ピッチ1nmで吸収スペクトルを測定し、波長300nm~1100nmにおける透過率を求めた。結果を表2及び図2-1~図2-3に示す。極大吸収波長の光を吸収できた場合を「○」、極大吸収波長の光を吸収できなかった場合を「×」と評価した。また成形板の厚さはデジタルノギス(最小測定単位0.001mm)を用いて測定した。なお表中、「T50」は透過率が50%となる波長を意味し、「ND」は吸収ピークがなく、T50の読み取りができないことを意味する。
【0120】
【表2】
【符号の説明】
【0121】
1:光学レンズ、2:近赤外線カットフィルター、3:受光部(センサー)、4:カバーガラス、5:第2近赤外線カットフィルター、6:基板、7:筐体、10:カメラユニット
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】