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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008657
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
F02M51/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110697
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩太郎
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA53
3G066CE22
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、色による識別のバリエーションを増やすことができる燃料噴射弁を提供することにある。
【解決手段】
燃料噴射弁の識別情報を含み、C環状を成して燃料噴射弁の外周に取り付けられるカラークリップ50を備えた燃料噴射弁において、カラークリップ50は、C環状の第1カラークリップ51と、第1カラークリップ51に組み付けられたC環状の第2カラークリップ52と、が径方向に重ねられた二重構造を成す。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射弁の識別情報を含み、C環状を成して燃料噴射弁の外周に取り付けられるカラークリップを備えた燃料噴射弁において、
前記カラークリップは、C環状の第1カラークリップと、前記第1カラークリップに組み付けられたC環状の第2カラークリップと、が径方向に重ねられた二重構造を成すことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射弁において、
前記第2カラークリップは、前記第1カラークリップに対して径方向外側に重ねられ、燃料噴射弁の中心軸線に沿う方向の幅寸法が、前記第1カラークリップの幅寸法よりも大きいことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第2カラークリップは、その外周面が前記第1カラークリップの外周面に対して径方向外側に突出するように設けられることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料噴射弁において、
前記第1カラークリップは外周面から径方向内側に窪むくぼみ部を備え、
前記第2カラークリップは前記くぼみ部にはめ込まれていることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料噴射弁において、
前記第2カラークリップの内径は、前記第1カラークリップの前記くぼみ部の外径と同じであり、
前記第2カラークリップの幅寸法は、前記第1カラークリップの前記くぼみ部の幅寸法以下であることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項6】
請求項4に記載の燃料噴射弁において、
前記第1カラークリップの前記くぼみ部の幅寸法は、前記第1カラークリップの幅寸法の1/3であることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項7】
請求項4に記載の燃料噴射弁において、
前記第2カラークリップの外径は、前記第1カラークリップの外径と同じであることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃料噴射弁において、
前記第1カラークリップと前記第2カラークリップとは、異なる色を使用することを特徴とする燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁の識別手法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-113771号公報(特許文献1)に記載された燃料噴射弁が知られている。特許文献1の燃料噴射弁は、固定コアの外周を覆う樹脂材に、樹脂材の外壁を挟持するように設けられたシール部材を備えている。このシール部材はU字状に形成された板状の樹脂部材である(以上、要約参照)。シール部材の外周側には、燃料噴射弁の特性を示す識別情報である噴射量、閉弁時の燃料漏れ量等が表示されており、これら識別情報は、色または記号等で分類されている(段落0015参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-113771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシール部材において、識別情報を色で表示する場合、色のバリエーションが少なく、識別のバリエーションを増やすことが難しい。色による識別のために用いられる部材は、シールを目的とするシール部材に限らず、識別を主目的として燃料噴射弁の外周部に取り付けられるものがある。以下、色による識別のために燃料噴射弁の外周部に取り付けられる部材を、カラークリップと呼んで説明する。
【0005】
本発明の目的は、色による識別のバリエーションを増やすことができる燃料噴射弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の燃料噴射弁は、
燃料噴射弁の識別情報を含み、C環状を成して燃料噴射弁の外周に取り付けられるカラークリップを備えた燃料噴射弁1において、
前記カラークリップは、C環状の第1カラークリップと、前記第1カラークリップに組み付けられたC環状の第2カラークリップと、が径方向に重ねられた二重構造を成す。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、色による識別のバリエーションを増やすことができる燃料噴射弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る燃料噴射弁1の一実施例について、弁軸心(中心軸線)に沿う断面を示す断面図である。
図2A】本発明の一実施例(実施例1)に係るカラークリップの外観図である。
図2B】本発明の一実施例(実施例1)に係る第1カラークリップの外観図である。
図2C】本発明の一実施例(実施例1)に係る第2カラークリップの外観図である。
図3A】本発明の一実施例(実施例2)に係るカラークリップの外観図である。
図3B】本発明の一実施例(実施例2)に係る第1カラークリップの外観図である。
図3C】本発明の一実施例(実施例2)に係る第2カラークリップの外観図である。
図4A】本発明の一実施例(実施例3)に係るカラークリップの外観図である。
図4B】本発明の一実施例(実施例3)に係る第1カラークリップの外観図である。
図4C】本発明の一実施例(実施例3)に係る第2カラークリップの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施例について、図面を用いて説明する。
【0010】
[実施例1]
図1を参照して、燃料噴射弁1の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る燃料噴射弁の一実施例について、弁軸心(中心軸線)に沿う断面を示す断面図である。なお、中心軸線1aは、後述する弁体17が一体に設けられた可動子27の中心軸心(弁軸心)に一致し、後述する筒状体5の中心軸線に一致している。また、中心軸線1aは、後述する弁座15bの中心軸線とも一致している。
【0011】
燃料噴射弁1には、金属材製の筒状体(ケーシング)5によって、その内側に燃料流路3がほぼ中心軸線1aに沿う方向に構成されている。筒状体5は、磁性を有するステンレス等の金属素材を用い、深絞り加工等のプレス加工により中心軸線1aに沿う方向に段付きの形状に形成されている。これにより、筒状体5は、一端側5aの径が他端側5bの径に対して大きくなっている。図1においては、一端側に形成された大径部5aが、他端側に形成された小径部5bの上側になるように描いてある。
【0012】
図1において、上端部(上端側)を基端部(基端側)と呼び、下端部(下端側)を先端部(先端側)と呼ぶことにする。基端部(基端側)及び先端部(先端側)という呼び方は、燃料の流れ方向に基づいている。また、本明細書において説明される上下関係は図1を基準とするもので、燃料噴射弁1の内燃機関への搭載時における上下方向とは必ずしも一致しない。
【0013】
筒状体5の基端部には燃料供給口2が設けられ、この燃料供給口2に、燃料に混入した異物を取り除くための燃料フィルタ13が取り付けられている。
【0014】
筒状体5の基端部には、径方向外側に向けて拡径するように曲げられた鍔部(拡径部)5dが形成され、鍔部5dと樹脂カバー47の基端側端部47aとで形成される環状凹部(環状溝部)4にOリング11が配設されている。
【0015】
筒状体5の先端部には、弁体17と弁座部材15とからなる弁部7が構成されている。弁座部材15には、中心軸線1aに沿う方向に貫通する貫通孔15aが形成されている。貫通孔15aの途中には下流側に向かって縮径する円錐面が形成され、貫通孔15aはこの円錐面によって段付き状に形成されている。そして円錐面上には弁座15bが構成され、弁体17が弁座15bに対して離接することにより、燃料通路の開閉が行われる。なお、弁座15bが形成された円錐面全体を弁座15bと呼ぶ場合もある。貫通孔15aの内周面に、弁体17を中心軸線1aに沿う方向に案内するガイド面15cが形成されている。貫通孔15aの先端側端部(下端部)は弁座部材15の先端面に開口し、この開口は燃料通路を構成する。
【0016】
弁座部材15は、筒状体5の先端側内側に挿入され、レーザ溶接等により筒状体5に固定され、弁座部材15の先端面にはノズルプレート(噴孔プレート)21nが取り付けられている。ノズルプレート21nは弁座部材15に対してレーザ溶接等により固定されている。ノズルプレート21nは板厚が均一な板状部材(平板)で構成されており、複数の燃料噴射孔110が形成されている。
【0017】
ノズルプレート21nによって、燃料噴霧の形態を決定するノズル部(燃料噴射部)21が構成される。本実施例では、ノズルプレート21nに曲面で形成された膨出部21aを設け、この膨出部21aに燃料噴射孔110を設けているが、膨出部21aを設けることなく燃料噴射孔110の上流側に燃料に旋回力を付与する旋回室を設ける構成としてもよい。
【0018】
本実施例では、弁体17としてボール弁を用いているが、ボール弁以外で弁体17を構成することも可能である。例えば、ニードル弁を用いてもよい。
【0019】
筒状体5の中間部には弁体17を駆動するための駆動部9が配置されている。駆動部9は電磁アクチュエータ(電磁駆動部)で構成されている。具体的には、駆動部9は、筒状体5の内部(内周側)に固定された固定鉄心25と、筒状体5の内部において固定鉄心25に対して先端側に配置され、中心軸線1aに沿う方向に移動可能な可動子(可動部材)27と、固定鉄心25と可動子27に構成された可動鉄心27aとが微小ギャップδを介して対向する位置で筒状体5の外周側に外挿された電磁コイル29と、電磁コイル29の外周側で電磁コイル29を覆うヨーク33とによって構成されている。
【0020】
可動鉄心27aと固定鉄心25とヨーク33とは、電磁コイル29に通電することにより生じた磁束が流れる磁路を構成する。磁束は微小ギャップδを通過するが、微小ギャップδの部分で筒状体5を流れる漏れ磁束を低減するため、筒状体5の微小ギャップδに対応する位置に、磁気絞り5cが設けられている。この磁気絞り5cは、筒状体5に対する非磁性化処理、或いは筒状体5の外周面に形成した環状凹部等によって構成することができる。
【0021】
電磁コイル29は、樹脂材料で筒状に形成されたボビン31に巻回され、筒状体5の外周側に外挿されている。電磁コイル29はコネクタ41に設けられたターミナル43に電気的に接続されている。コネクタ41には図示しない駆動回路が接続され、ターミナル43を介して、電磁コイル29に駆動電流が通電される。
【0022】
固定鉄心25は、磁性金属材料からなる。固定鉄心25は筒状に形成され、中心部を中心軸線1aに沿う方向に貫通する貫通孔25aを有する。固定鉄心25は、筒状体5の小径部5bの基端側に圧入固定され、筒状体5の中間部に位置している。固定鉄心25は溶接により筒状体5に固定してもよいし、溶接と圧入を併用して筒状体5に固定してもよい。
【0023】
可動子27は、基端側に大径部27aが形成されており、この大径部27aが固定鉄心25と対向する可動鉄心27aを構成する。可動鉄心27aの先端側には小径部(ロッド部)27bが形成されており、この小径部27bの先端に弁体17が溶接により固定されている。この小径部27bは可動鉄心27aと弁体17とを接続する接続部を構成する。本実施例では、可動鉄心27aと接続部27bとを同一材料からなる一部材で形成しているが、二つの部材を接合して構成してもよい。
【0024】
本実施例では、弁体17を可動子27と別の構成要素として説明しているが、弁体17を可動子27の一部に含めてもよい。また、可動鉄心27aの外周面が筒状体5の内周面に接触することにより、可動子27は中心軸線1aに沿う方向(開閉弁方向)における移動を案内される。
【0025】
可動鉄心27aには、中心軸線1aに沿って貫通孔が形成され、この貫通孔により可動子27の内部に燃料流路3が構成される。可動子27内部の燃料流路3を流れた燃料は、小径部27b側面の開口部27dを通じて可動子27外部に流れ出る。
【0026】
固定鉄心25の貫通孔25aの内側にはアジャスタ(調整子)35が配設されており、アジャスタ35と可動鉄心27aとの間にコイルばね39が配設されている。コイルばね39の基端側端部はアジャスタ35の先端側端面に当接し、コイルばね39の先端側端部は可動鉄心27aに当接している。コイルばね39は、可動子27を、弁体17が弁座15bに当接する方向(閉弁方向)に付勢する付勢部材として機能する。
【0027】
ヨーク33は、磁性を有する金属材料でできており、燃料噴射弁1のハウジングを兼ねている。ヨーク33は大径部33aと小径部33bとを有する段付きの筒状に形成されている。大径部33aは電磁コイル29の外周を覆って円筒形状を成しており、大径部33aの先端側に大径部33aよりも小径の小径部33bが形成されている。小径部33bは筒状体5の小径部5bの外周に圧入されている。これにより、小径部33bの内周面は筒状体5の外周面に緊密に接触している。このとき、小径部33bの内周面の少なくとも一部は、可動鉄心27aの外周面と筒状体5を介して対向しており、この対向部分における磁路の磁気抵抗を小さくしている。
【0028】
ヨーク33の先端側端部の外周面には周方向に沿って環状凹部33cが形成されている。環状凹部33cの底面に形成された薄肉部において、ヨーク33と筒状体5とがレーザ溶接24により全周に亘って接合されている。
【0029】
筒状体5の先端部にはフランジ部49aを有する円筒状のプロテクタ49が外挿され、筒状体5の先端部がプロテクタ49によって保護されている。プロテクタ49はヨーク33のレーザ溶接部24の上を覆っている。
【0030】
プロテクタ49のフランジ部49aと、ヨーク33の小径部33bと、ヨーク33の大径部33aと小径部33bとの段差面とによって環状溝34が形成され、環状溝34にOリング46が外挿されている。Oリング46は、燃料噴射弁1が内燃機関に取り付けられる際に、内燃機関側に形成された挿入口の内周面とヨーク33における小径部33bの外周面との間で液密及び気密を確保するシールとして機能する。
【0031】
燃料噴射弁1の中間部から基端側端部の近傍までの範囲に、樹脂カバー47がモールドされている。樹脂カバー47の先端側端部はヨーク33の大径部33aの基端側の一部を被覆している。また、樹脂カバー47は配線部材45を被覆し、樹脂カバー47によりコネクタ(受電用カプラ)41が一体的に形成されている。
【0032】
樹脂カバー47には、コネクタ(受電用カプラ)41と樹脂カバー47との接続部を除く外周部分に溝47bが形成され、この溝47bにカラークリップ10が嵌められている。カラークリップ10については、後で詳細に説明する。
【0033】
次に、燃料噴射弁1の動作について説明する。
【0034】
電磁コイル29が非通電状態にあり電磁コイル29に駆動電流が流れていない場合、可動子27はコイルばね39により閉弁方向に付勢され、弁体17が弁座15bに当接(着座)した状態(閉弁状態)にある。この場合、固定鉄心25の先端側端面と可動鉄心27aの基端側端面との間には、ギャップδが存在する。なお、本実施例では、このギャップδは可動子27(すなわち弁体17)のストロークに等しい。
【0035】
電磁コイル29が通電状態に切り替わり電磁コイル29に駆動電流が流れると、可動鉄心27aと固定鉄心25とヨーク33とによって構成される磁路に磁束が発生する。この磁束により、ギャップδを挟んで対向する固定鉄心25と可動鉄心27aとの間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力が、コイルばね39による付勢力や、可動子27に対して閉弁方向に作用する燃料圧力などの合力に打ち勝つと、可動子27が開弁方向に移動し始める。可動子27が開弁方向にギャップδに等しい距離だけ移動して固定鉄心25に当接すると、可動鉄心27aは開弁方向への移動を止められ、開弁して静止した状態(開弁静止状態)に至る。
【0036】
可動子27が開弁方向に移動して弁体17が弁座15bから離れると、弁体17と弁座15bとの間に隙間(燃料通路)が形成され、この隙間から燃料噴射孔110に供給された燃料は燃料噴射孔110から燃料噴射弁1の外部に噴射される。
【0037】
電磁コイル29の通電を打ち切ると、磁気吸引力が減少し、やがて消失する。この段階で、磁気吸引力がコイルばね39の付勢力よりも小さくなると、可動子27が閉弁方向へ移動を開始する。弁体17が弁座15bに当接すると、弁体17は弁部7を閉弁して静止した状態(閉弁状態)に至る。
【0038】
なお、可動鉄心27aと固定鉄心25との間に作用するスクイズ力を低減するために、可動鉄心27aの固定鉄心25と対向する端面に突起を設ける場合がある。このような場合は、弁体17の移動距離(ストローク)はギャップδから突起高さを差し引いた大きさになる。また、可動鉄心27aと固定鉄心25とが接触する前に、可動子27の開弁方向への移動を制限するストッパを設ける場合もある。
【0039】
次に、図2A乃至図2Cを用いて、本実施例に係るカラークリップ50について説明する。図2Aは、本発明の一実施例(実施例1)に係るカラークリップ50の外観図である。図2Bは、本発明の一実施例(実施例1)に係る第1カラークリップ51の外観図である。図2Cは、本発明の一実施例(実施例1)に係る第2カラークリップ52の外観図である。なお図2A(C)は、図2AのC-C断面に相当する図である。
【0040】
カラークリップ50は図1の10に当たるもので、図1の方向(中心軸線1aに垂直な方向)からカラークリップ10の識別情報をカメラで認識することにより、燃料噴射弁(インジェクタ)1を仕様ごとに自動で識別する。カラークリップ10は、製造ラインや出荷先での使用を識別するためのものとして使用される。なお本実施例では、識別情報として色を用いる。
【0041】
以下、本実施例のカラークリップ50について説明する。カラークリップ50は第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とを含んで構成され、円環の一部に切欠き部50bを有し、C環状を成す。カラークリップ50は、C環状の第1カラークリップ51と、第1カラークリップ51に組み付けられたC環状の第2カラークリップ52と、が径方向に重ねられた二重構造を成す。第2カラークリップ52は、第1カラークリップ51に対して径方向外側に重ねられる。言い換えれば、第1カラークリップ51は第2カラークリップ52に対して径方向内側に重ねられる。
【0042】
第1カラークリップ51は燃料噴射弁1に直接接し、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とが組み合わされたカラークリップ50において、内側(内周側)の部材を構成する。第1カラークリップ51は円環の一部に切欠き部51bを有し、C環状を成す。
【0043】
第2カラークリップ52は第1カラークリップ51に直接接し、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とが組み合わされたカラークリップ50において、外側(外周側)の部材を構成する。第2カラークリップ52は円環の一部に切欠き部52bを有し、第1カラークリップ51よりも径の大きなC環状を成す。
【0044】
第1カラークリップ51の切欠き部51bと第2カラークリップ52の切欠き部52bとが組み合わされてカラークリップ50の切欠き部50bが構成される。
【0045】
カラークリップ50は、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とが組み合わされ、二重構造を成すカラークリップであり、第1カラークリップ51の色(カラー)と第2カラークリップ52の色(カラー)との組み合わせが燃料噴射弁1の識別情報となる。第1カラークリップ51の色(カラー)と第2カラークリップ52の色(カラー)との組み合わせが認識できるよう、第1カラークリップ51の幅(中心軸線1a方向の長さ、幅寸法)W51は、第2カラークリップ52の幅(中心軸線1a方向の長さ、幅寸法)W52よりも大きい寸法を有する。言い換えれば、第2カラークリップ52の幅W52は第1カラークリップ51の幅W51よりも小さい。
【0046】
第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とは同色の組み合わせを含め、異なる色の組み合わせを使用することができる。同色の組み合わせの場合、第2カラークリップ52を省略することもできる。
【0047】
しかし、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とは異なる色の組み合わせで使用することが好ましい。1つの燃料噴射弁1に対して異なる色の第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とが装着されていることを確認することで、カラークリップ50が正しく燃料噴射弁1に装着されていることを確認することができる。
【0048】
同色の組み合わせで、且つ第2カラークリップ52を省略する場合、第2カラークリップ52が誤って脱落したケースを区別することができなくなる。また同色の組み合わせで、且つ第2カラークリップ52が正しく装着されている場合であっても、カメラで第2カラークリップ52の装着を確認することが難しく、第2カラークリップ52が誤って脱落したケースを区別することができなくなる虞がある。このため、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とは異なる色の組み合わせで使用し、両方のカラークリップ51,52の色を認識するようにすることが好ましい。
【0049】
次に、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52との組み付けについて説明する。
【0050】
カラークリップ50は、第2カラークリップ52の中心O52と第1カラークリップ51の中心O51とがカラークリップ50の中心O50と一致するように組み付けられる。すなわち、カラークリップ50は、第2カラークリップ52の中心軸線52aと第1カラークリップ51の中心軸線51aとがカラークリップ50の中心軸線50aと一致するように組み付けられる。
【0051】
第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とが組み合わされた状態において、第2カラークリップ52の外径φ52outは第1カラークリップ51の外径φ51outよりも大きく、第2カラークリップ52の内径φ52inは第1カラークリップ51の内径φ51inよりも大きい。すなわち第2カラークリップ52は、その外周面が第1カラークリップ51の外周面に対して径方向外側に突出するように設けられる。また、第1カラークリップ51の外周面と第2カラークリップ52の内周面とは密着しており、第1カラークリップ51の外径φ51outと第2カラークリップ52の内径φ52inとは同じ大きさである。
【0052】
カラークリップ50が燃料噴射弁1に取り付けられた状態では、カラークリップ50の中心O50、第1カラークリップ51の中心O51、および第2カラークリップ52の中心O52が一致することで、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52との密着度が向上し、第1カラークリップ51と燃料噴射弁1との密着度が向上する。
【0053】
第2カラークリップ52は、図2A(B)中において、第1カラークリップ51に対して、左右にずれて取り付けられることがある。この場合、中心軸線1a方向における第1カラークリップ51の端部と第2カラークリップ52の端部とが一致する場合があり、第1カラークリップ51の色と第2カラークリップ52の色とを区別することができなくなる、或いは、第1カラークリップ51の色と第2カラークリップ52の色とを区別するために時間がかかる虞がある。中心軸線1a方向において、第2カラークリップ52の両側に第1カラークリップ51の色を確認できるようにすることで、第1カラークリップ51の色と第2カラークリップ52の色とを区別することができる。そして第1カラークリップ51の色と第2カラークリップ52の色とを区別することで、識別のバリエーションを増やすことができる。
【0054】
第1カラークリップ51の色と第2カラークリップ52の色とを区別することができるようにするためには、中心軸線1a方向における第1カラークリップ51と第2カラークリップ52との位置ずれを考量して、第2カラークリップ52の幅W52は第1カラークリップ51の幅W51に対して3分の1(1/3)程度の大きさにすることが好ましい。
【0055】
しかし本実施例では、第2カラークリップ52の幅W52を第1カラークリップ51の幅W51に対して3分の1程度の大きさに限定するものではなく、第2カラークリップ52は第1カラークリップ51に対しての1/3以上、或いは1/3以下であってもよい。そして少なくとも第1カラークリップ51の幅W51を第2カラークリップ52の幅W52よりも大きくすることで、言い換えれば第2カラークリップ52の幅W52を第1カラークリップ51の幅W51よりも小さくすることで、第1カラークリップ51および第2カラークリップ52の両方の色を確実に認識できるようにする。
【0056】
第2カラークリップ52の厚みT52は第1カラークリップ51の厚みT51よりも薄くするとよい。これは、第1カラークリップ51はカラークリップ50の土台となる部材であり、ある程度の強度を有することが望ましく、第2カラークリップ52は色による識別のバリエーションを増やための部材であり、少ない材料量で軽量に製作されることが好ましいためである。ただしこれは必須ではなく、T52とT51とが等しい大きさであってもよく、或いは、T52がT51よりも大きな構成であってもよく、これらの場合であっても色のバリエーションを増やすことができることに変わりはない。
【0057】
[実施例2]
次に、図3A乃至図3Cを用いて、本発明の第2実施例に係るカラークリップ50について説明する。図3Aは、本発明の一実施例(実施例2)に係るカラークリップ50の外観図である。図3Bは、本発明の一実施例(実施例2)に係る第1カラークリップ51の外観図である。図3Cは、本発明の一実施例(実施例2)に係る第2カラークリップ52の外観図である。なお図3Cは、図3AのC-C断面に相当する図である。
【0058】
本実施例では、実施例1と比べて、カラークリップ50の構成の一部が異なる。以下、実施例1と同様な構成には実施例1と同じ符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分について詳述する。
【0059】
本実施例の第1カラークリップ51は、外周面(側面)に、外周面から径方向内側に向かって窪むくぼみ部51cを有する。くぼみ部51cは、切欠き部51bによってC環状を成す第1カラークリップ51の一端部と他端部との間の全体に設けられている。すなわち本実施例では、第1カラークリップ51がくぼみ付きタイプのカラークリップで構成される。
【0060】
本実施例では、第2カラークリップ52の外径φ52outは第1カラークリップ51の外径φ51out以上であり、第2カラークリップ52の厚みT52は第1カラークリップ51のくぼみ部51cの深さD51cよりも大きい。第2カラークリップ52の内周面は第1カラークリップ51のくぼみ部51cの底面に密着しており、第2カラークリップ52の内径φ52inはくぼみ部51cの外径(底面の直径)φ51cと同じ大きさである。これにより、第2カラークリップ52の外周面は第1カラークリップ51の外周面よりも径方向外側に突出している。
【0061】
第2カラークリップ52の外径φ52outは、第1カラークリップ51の外径φ51out以上、或いは以下でもよい。
【0062】
第1カラークリップ51のくぼみ部51cの幅(幅寸法)W51cは、第1カラークリップ51の幅W51の1/3である。第2カラークリップ52の幅W52は、第1カラークリップ51の幅の1/3である。
【0063】
第1カラークリップ51に設けたくぼみ部51cの幅W51cは、第1カラークリップ51の幅W51の1/3以上、或いは以下になってもよい。また、第2カラークリップ52の幅W52は、第1カラークリップ51の幅W51の1/3以上、或いは以下になってもよい。ただし第2カラークリップ52の幅W52は、少なくとも第1カラークリップ51のくぼみ部51cの幅W51c以下とする。
【0064】
第2カラークリップ52の幅W52を、第1カラークリップ51のくぼみ部51cの幅W51c以下とすることで、第2カラークリップ52は第1カラークリップ51のくぼみ部1cにはめ込まれる。これにより、第2カラークリップ52の第1カラークリップ51に対する幅方向(中心軸線1aに沿う方向)の位置が確定される。これは、実施例1で説明した識別のバリエーションを増やす上で、有利である。
【0065】
第1カラークリップ51に設けたくぼみ部51cの位置は、第1カラークリップ51の幅方向の中心(中心線)からずれていてもよい。この場合、第2カラークリップ52の第1カラークリップ51に対する取り付け位置は、第1カラークリップ51の幅方向の中心(中心線)からずれる。
【0066】
本実施例では、第2カラークリップ52は、第1カラークリップ51のくぼみ部51cにはめ込む仕様のため、第1カラークリップ51に対するずれや第1カラークリップ51からの外れが生じにくい。またくぼみ部51cは、第2カラークリップ52を第1カラークリップ51に組み付ける際に、第2カラークリップ52における第1カラークリップ51に対する接地部のガイドになり、第2カラークリップ52の設置が容易になる。
【0067】
本実施例のカラークリップ50は、上述した構成を除いて、実施例1のカラークリップ50と同様の構成を備え、同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
[実施例3]
次に、図4A乃至図4Cを用いて、本発明の第3実施例に係るカラークリップ50について説明する。図4Aは、本発明の一実施例(実施例3)に係るカラークリップ50の外観図である。図4Bは、本発明の一実施例(実施例3)に係る第1カラークリップ51の外観図である。図4Cは、本発明の一実施例(実施例3)に係る第2カラークリップ52の外観図である。なお図4Cは、図4AのC-C断面に相当する図である。
【0069】
本実施例では、実施例1及び実施例2と比べて、カラークリップ50の構成の一部が異なる。以下、実施例1及び実施例2と同様な構成には実施例1及び実施例2と同じ符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分について詳述する。
【0070】
本実施例では、第1カラークリップ51の外径φ51outと第2カラークリップ52の外径φ52outとは同じであり、第1カラークリップ51の外周面と第2カラークリップ52の外周面とが単一のカラークリップ50の外周面を構成する。
【0071】
図4Aに示すように、第2カラークリップ52が第1カラークリップ51に対して径方向外側に突出することがないため、径方向外側に突出した第2カラークリップ52が引っ掛かり、第1カラークリップ51からはずれる可能性を軽減できる。
【0072】
また、第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とを組み合わせた状態において、第1カラークリップ51の外周面と第2カラークリップ52の外周面とが径方向にずれていると、カメラで撮影した際に焦点が一致せず、認識エラーが生ずる可能性がある。しかし本実施例では、第1カラークリップ51の外周面と第2カラークリップ52の外周面とは同一面(同一半径の面)を構成するため、画像自動認識の際に焦点が一致し、認識エラーになる可能性を軽減できる。
【0073】
また、第1カラークリップ51と第2カラークリップ51とが凹凸を形成すると、光の当たり方により影が生じ、認識エラーが生ずる可能性がある。本実施例では、第1カラークリップ51の外径と第2カラークリップ52の外径とを略同じとすることで、第1カラークリップ51と第2カラークリップ51との間で凹凸をなくすことができ、段差による影の発生をなくし、認識エラーの可能性を軽減できる。
【0074】
本実施例のカラークリップ50は、上述した構成を除いて、実施例1及び実施例2のカラークリップ50と同様の構成を備え、同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
なお、上記実施例では、カラークリップ50を2種類のカラークリップ51,52で構成したが、3種類以上のカラークリップで構成し、カラークリップ50を三重以上の構造としてもよい。
【0076】
上述した様に、本発明の燃料噴射弁1は、下記の特徴を有する。
(1)燃料噴射弁1の識別情報を含み、C環状を成して燃料噴射弁1の外周に取り付けられるカラークリップ50を備えた燃料噴射弁において、
カラークリップ50は、C環状の第1カラークリップ51と、第1カラークリップ51に組み付けられたC環状の第2カラークリップ52と、が径方向に重ねられた二重構造を成す。
【0077】
(2)第2カラークリップ52は、第1カラークリップ51に対して径方向外側に重ねられ、燃料噴射弁1の中心軸線1aに沿う方向の幅寸法W52が、第1カラークリップ51の幅寸法W51よりも小さい。
【0078】
(3)第2カラークリップ52は、その外周面が第1カラークリップ51の外周面に対して径方向外側に突出するように設けられる。
【0079】
(4)第1カラークリップ51は外周面から径方向内側に窪むくぼみ部51cを備え、
第2カラークリップ52はくぼみ部51cにはめ込まれる。
【0080】
(5)第2カラークリップ52の内径φ52inは、第1カラークリップ51のくぼみ部51cの外径φ51cと同じであり、
第2カラークリップ52の幅寸法W52は、第1カラークリップのくぼみ部51cの幅寸法W51c以下である。
【0081】
(6)第1カラークリップ51のくぼみ部51cの幅寸法W51cは、第1カラークリップ51の幅寸法W51の1/3である。
【0082】
(7)第2カラークリップ52の外径φ52outは、第1カラークリップ51の外径φ51outと同じである。
【0083】
(8)第1カラークリップ51と第2カラークリップ52とは、異なる色を使用する。
【符号の説明】
【0084】
1…燃料噴射弁、1a…燃料噴射弁1の中心軸線、50…カラークリップ、51…第1カラークリップ、51c…くぼみ部、52…第2カラークリップ、W51…第1カラークリップ51の幅寸法、W51c…くぼみ部51cの幅寸法、W52…第2カラークリップの幅寸法、φ51c…くぼみ部51cの外径、φ51out…第1カラークリップ51の外径、φ52in…第2カラークリップ52の内径、φ52out…第2カラークリップ52の外径。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C