(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086575
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】時計ムーブメントを収納するための弾性ケーシングリング及びこのような弾性ケーシングリングを含む時計ケース
(51)【国際特許分類】
G04B 37/05 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G04B37/05 F
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023178173
(22)【出願日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】22213671.5
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バルマー、 ラファエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】時計ムーブメントへの衝撃を吸収可能な、時計ムーブメントを時計ケースの内部に締結するためのケーシング装置を提供する。
【解決手段】中間部110を含む時計ケース100の内部に時計ムーブメント10を収納するための弾性ケーシングリング200であって、中心軸Zを有する環状体205と、環状体205に担持され、挿入位置とロック位置との間の、中心軸Zを中心とする弾性ケーシングリング200の回転によりバヨネットケーシングシステム300を形成するように中間部110と協働することができる締結タブ210とを含み、弾性ケーシングリング200は少なくとも1つの弾性保持要素を含み、少なくとも1つの弾性保持要素は、弾性ケーシングリング200が中間部110内でロック位置にあるときに時計ムーブメント10と協働すること及び弾性保持要素の弾性変形によって中心軸Zに平行な軸力を時計ムーブメント10に加えることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間部(110)を含む時計ケース(100)の内部に時計ムーブメント(10)を収納するための弾性ケーシングリング(200)であって、中心軸(Z)を有する環状体(205)と、前記環状体(205)によって担持され、挿入位置とロック位置との間の、前記中心軸(Z)を中心とする前記中間部(110)に対する前記弾性ケーシングリング(200)の回転によりバヨネットケーシングシステム(300)を形成するように前記中間部(110)と協働することができる締結タブ(210)とを含み、前記弾性ケーシングリング(200)は少なくとも1つの弾性保持要素を含み、前記少なくとも1つの弾性保持要素は、前記弾性ケーシングリング(200)が前記中間部(110)内で前記ロック位置にあるときに前記時計ムーブメント(10)と協働すること及び前記弾性保持要素の弾性変形によって前記中心軸(Z)に平行な軸力を前記時計ムーブメント(10)に加えることができることを特徴とする、弾性ケーシングリング(200)。
【請求項2】
前記弾性ケーシングリング(200)は、前記時計ムーブメント(10)又は前記中間部(110)と協働して前記中間部(110)内で前記弾性ケーシングリング(200)のロック位置を回転に対してロックすることができるロック部材(220)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項3】
前記ロック部材(220)は、前記時計ムーブメント(10)又は前記中間部(110)と協働して前記弾性ケーシングリング(200)のための角度位置決め停止部を形成することができることを特徴とする、請求項2に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項4】
前記弾性ケーシングリング(200)は、金属又はポリマー材料で作られることを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弾性保持要素は前記環状体(205)によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項6】
前記弾性ケーシングリング(200)は、前記環状体(205)に接続されかつ弾性変形を受けるように形作られた弾性部分(251)を含む弾性保持突出部(250)によって形成された複数の弾性保持要素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項7】
前記弾性部分(251)は、少なくとも前記弾性ケーシングリング(200)が前記中間部(110)内で前記ロック位置にあるときに前記時計ムーブメント(10)に当接すること及び前記弾性部分(251)の弾性変形によって前記中心軸(Z)に平行な軸力を前記時計ムーブメント(10)に加えることができる、前記環状体(205)から前記中心軸(Z)に沿って軸方向にずらされた少なくとも1つの部分(253)を有する自由接触端(252)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項8】
組み立て用の位置決めコード化要素(245)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項9】
少なくとも1つの凹部(260、270)を含み、その形状はケーシングツール(400)と協働するように適合されることを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項10】
前記弾性ケーシングリング(200)の回転を確実にするように構成された第1の凹部(260)と、前記弾性ケーシングリング(200)のロック解除を確実にするように構成された第2の凹部(270)とを含み、各凹部(260、270)はケーシングツール(400)と協働するように構成された形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項11】
中間部(110)と、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)と、前記弾性ケーシングリング(10)によって前記中間部(110)の内部に収納された時計ムーブメント(10)とを含む時計ケース(100)。
【請求項12】
前記弾性ケーシングリング(200)は、好ましくは前記中心軸(Z)に平行な軸方向において、前記時計ケース(100)への衝撃の際に前記時計ムーブメント(10)のための減衰手段を形成するように構成されることを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項13】
前記中間部(110)は差し込み溝(113)を含み、前記差し込み溝(113)は前記締結タブ(210)と協働して前記時計ムーブメント(10)のバヨネットケーシングシステム(300)を形成することを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項14】
前記中間部(110)は、前記弾性ケーシングリング(200)を締結するための前記タブ(210)を前記弾性ケーシングリング(200)の挿入位置において受け止めるために少なくとも1つの支持面(111)を含み、前記少なくとも1つの支持面(111)は前記弾性ケーシングリング(200)に当接することを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項15】
前記弾性ケーシングリング(200)はロック部材(220)を含み、前記中間部(110)は、前記弾性ケーシングリング(200)が弾性クリッピングによって前記中間部(110)内で回転に対してロックされることを確実にするために前記ロック部材(220)と協働するように構成された弾性ロックフィンガ(230)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項16】
前記弾性ケーシングリング(200)はロック部材(220)を含み、前記時計ムーブメント(10)は、前記弾性ケーシングリング(200)が弾性クリッピングによって前記中間部(110)内で回転に対してロックされることを確実にするために前記ロック部材(220)と協働するように構成された弾性ロックフィンガ(230)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項17】
請求項11に記載の時計ケース(100)の時計ムーブメント(10)を収納するためのケーシングツール(400)であって、前記弾性ケーシングリング(200)内の少なくとも1つの凹部(260、270)と協働するように構成された少なくとも1つの突出要素(460、470)を含むことを特徴とする、ケーシングツール(400)。
【請求項18】
前記弾性ケーシングリング(200)内の複数の凹部(260、270)と協働するように構成された突出要素(460、470)を含み、前記突出要素(460、470)は、前記ケーシングツール(400)が回転されると前記弾性ケーシングリング(200)を回転させることを特徴とする、請求項17に記載のケーシングツール(400)。
【請求項19】
前記弾性ケーシングリング(200)をロック解除することを可能にし、前記弾性ケーシングリング(200)を分解することを可能にするために、前記ケーシングツール(400)が前記弾性ケーシングリング(200)上の適切な位置にあるときに前記弾性ロックフィンガ(230)を係合解除するように構成されたロック解除ピン(470)を含むことを特徴とする、請求項17に記載のケーシングツール(400)。
【請求項20】
請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)を用いて中間部(110)を含む時計ケース(100)に中心軸(Z)を有する時計ムーブメント(10)を収納する方法であって、
・前記時計ムーブメント(10)を前記中間部(110)に挿入するステップと、
・前記弾性ケーシングリング(200)を前記中心軸(Z)に沿って前記時計ムーブメントの上に挿入するステップと、
・前記時計ムーブメント(10)を前記中間部(110)に締結するステップであって、当該ステップ中に、前記弾性ケーシングリング(200)は前記中心軸(Z)を中心として回転可能に係合され、前記締結タブは前記弾性ケーシングリング(200)の回転中に前記弾性ケーシングリング(200)がそのロック位置に達するまで前記中間部(110)の複数の差し込み溝(113)内に係合するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントを時計ケースの内部に締結するためのケーシング装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、ケーシング装置によって時計ケースに締結された時計ムーブメントを含む時計ケースに関する。
【0003】
本発明はさらに、このようなケースを含む時計に関する。
【0004】
本発明はさらに、本発明に係る弾性ケーシングリングを用いた時計ムーブメントのケーシング方法に関する。
【0005】
本発明はさらに、本発明に係る弾性ケーシングリングをロック及びロック解除するためのケーシングツールに関する。
【背景技術】
【0006】
時計ムーブメントのケーシング、すなわち時計ムーブメントの時計ケースの内部への締結は通常、締付クランプによって行われ、締付クランプはケースの内周に沿って設けられた溝に挿入され、アセンブリはクランプねじによって強固に接続される。しかしながら、このソリューションは、多数の部品とクランプ及びねじを配置するために必要なさまざまな操作とにより実施が比較的複雑であり、そのことは、このようなケーシングソリューションの生産性に大きく影響する。
【0007】
他のケーシングソリューションも知られており、裏蓋がケースにねじ込まれたときに時計ムーブメントを適切な位置に保持するように時計ムーブメントの周りに配置された、ケーシングリング又は拡大リングなどの中間部品を使用する。このソリューションはムーブメントを迅速に締結することを可能にするが、ケーシングリング又はユニットを受け入れるために時計ムーブメントとケースの間にスペースを設ける必要があり、ケースの寸法に対してムーブメントの可能な寸法が制限される。
【0008】
また、既存のソリューションは、時計ムーブメントへの衝撃を吸収するという問題を実際には解決していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記の問題の少なくとも1つに対処するために、時計ムーブメントをケースの内部に収納するための装置を改良する必要がある。
【0010】
また、時計ムーブメントを時計ケースの内部に収納する方法を改良し、上記の制限を受けない方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、時計ムーブメントを時計ケースの内部に締結するためのケーシング装置に関し、この装置は、前記欠点の少なくとも1つを克服する。
【0012】
本発明によれば、このようなケーシング装置は、時計ムーブメントを時計ケースの内部に迅速に固定するための弾性ケーシングリングの形態をとる。本発明に係るこのような弾性ケーシングリングは、多数の保持クランプ及びクランプ締付ねじの必要性を排除し、ひいてはねじ及びクランプに必要な多数の操作を排除する。
【0013】
本発明に係る弾性ケーシングリングはまた、時計のケースへの衝撃の際に時計ムーブメントの変位を減衰させるためのソリューションを提供する。
【0014】
これに関連して、本発明は、中間部を含む時計ケースの内部に時計ムーブメントを収納するための弾性ケーシングリングであって、前記弾性ケーシングリングは、中心軸Zを有する環状体と、前記環状体によって担持され、挿入位置とロック位置との間の、中心軸Zを中心とする中間部に対する弾性ケーシングリングの回転によりバヨネットケーシングシステムを形成するように前記中間部と協働することができる締結タブとを含み、前記弾性ケーシングリングは、弾性変形を受けるように構成された少なくとも1つの弾性保持要素を含み、前記少なくとも1つの弾性保持要素は、前記弾性ケーシングリングが中間部内でロック位置にあるときに前記時計ムーブメントと協働すること及び前記弾性保持要素の弾性変形によって中心軸Zに平行な軸力を時計ムーブメントに加えることができる、弾性ケーシングリングに関する。
【0015】
前の段落に記載した特徴に加えて、本発明に係る弾性ケーシングリングは、個別に又は技術的に可能な任意の組み合わせによって考慮される、以下のうちの1つ以上の相補的な特徴を有することができる。
・弾性ケーシングリングは、時計ムーブメント又は中間部と協働して中間部内で弾性ケーシングリングのロック位置を回転に対してロックすることができる角度ロック部材を含む。
・前記角度ロック部材は、時計ムーブメント又は中間部と協働して前記弾性ケーシングリングのための角度位置決め停止部を形成することができる。
・前記弾性ケーシングリングは金属又はポリマー材料で作られる。
・前記少なくとも1つの弾性保持要素は環状体によって形成される。
・弾性ケーシングリングは、環状体に接続されかつ弾性変形を受けるように形作られた弾性部分を含む弾性保持突出部によって形成された複数の弾性保持要素を含む。
・前記弾性部分は、少なくとも前記弾性ケーシングリングが中間部内でロック位置にあるときに前記弾性部分の弾性変形によって時計ムーブメントに当接しかつ中心軸Zに平行な軸力を時計ムーブメントに加えることができる、環状体から中心軸Zに沿って軸方向にずらされた少なくとも1つの部分を有する自由接触端を含む。
・弾性ケーシングリングは組み立て用の位置決めコード化要素を含む。
・弾性ケーシングリングは少なくとも1つの凹部を含み、その形状はケーシングツールと協働するように適合される。
・弾性ケーシングリングは、弾性ケーシングリングの回転を確実にするように構成された第1の凹部と、前記弾性ケーシングリングのロック解除を確実にするように構成された第2の凹部とを含み、各凹部はケーシングツールと協働するように適合された形状を有する。
【0016】
本発明はさらに、中間部と、本発明に係る弾性ケーシングリングと、前記弾性ケーシングリングによって前記中間部に収納された時計ムーブメントとを含む時計ケースに関する。
【0017】
好ましくは、弾性ケーシングリングは、好ましくは中心軸Zに平行な軸方向において、時計ケースへの衝撃の際に時計ムーブメントのための減衰手段を形成するように構成される。
【0018】
好ましくは、中間部は差し込み溝を含み、前記差し込み溝は前記締結タブと協働して時計ムーブメントのバヨネットケーシングシステムを形成する。
【0019】
好ましくは、中間部は、弾性ケーシングリングを締結するための前記タブを弾性ケーシングリングの挿入位置において受け止めるために少なくとも1つの支持面を含み、これらのタブは前記支持面に当接する。
【0020】
好ましくは、弾性ケーシングリングは角度ロック部材を含み、中間部は、弾性ケーシングリングが弾性クリッピング又はロックによって中間部内で回転に対してロックされることを確実にするために前記角度ロック部材と協働するように構成された弾性ロックフィンガを含む。
【0021】
好ましくは、弾性ケーシングリングは角度ロック部材を含み、時計ムーブメントは、弾性ケーシングリングが弾性クリッピング又はロックによって中間部内で回転に対してロックされることを確実にするために前記角度ロック部材と協働するように構成された弾性ロックフィンガを含む。
【0022】
本発明はさらに、このようなケースを含む腕時計に関する。
【0023】
本発明はさらに、本発明に係る時計ムーブメントを時計ケースの内部に収納するためのケーシングツールに関する。
【0024】
好ましくは、ケーシングツールは、弾性ケーシングリングの少なくとも1つの凹部と協働するように構成された少なくとも1つの突出要素を含む。
【0025】
好ましくは、ケーシングツールは、前記弾性ケーシングリングの複数の凹部と協働するように構成された複数の突出要素を含み、前記突出要素は、前記ケーシングツールが作業者、コントローラ又はロボットによって回転されると前記弾性ケーシングリングを回転させる。
【0026】
好ましくは、ケーシングツールは、弾性ケーシングリングをロック解除することを可能にし、前記時計ムーブメントを分解することを可能にするために、前記ケーシングツールが前記弾性ケーシングリング上の適切な位置にあるときに前記弾性ロックフィンガを係合解除するように構成されたロック解除ピンを含む。
【0027】
本発明はさらに、本発明に係る弾性ケーシングリングを用いて時計ムーブメントを時計ケースの内部に締結するためのケーシング方法であって、時計ケースは、支持面と複数の差し込み溝とを有する中間部を含み、前記ケーシング方法は、
・前記時計ムーブメントを中間部に挿入するステップと、
・前記弾性ケーシングリングを時計ムーブメントの上に挿入するステップと、
・時計ムーブメントを中間部に締結するステップであって、このステップ中に、弾性ケーシングリングは軸Zを中心として回転可能に係合され、前記締結タブは弾性ケーシングリングの回転中に弾性ケーシングリングがそのロック位置に達するまで中間部の複数の差し込み溝内に係合するステップと
を含むケーシング方法に関する。
【0028】
好ましくは、弾性ケーシングリングのロック部材が中間部の角度位置決め停止部又は前記時計ムーブメントの角度位置決め停止部に当接したときにロック位置に達する。
【0029】
好ましくは、ムーブメントを締結するステップは、前記ケーシングツールが作業者、コントローラ又はロボットによって回転されると前記弾性ケーシングリングに回転可能に係合するように前記弾性ケーシングリングの少なくとも1つの凹部と協働する少なくとも1つの突出要素を含むケーシングツールを用いて実行される。
【0030】
ケーシング方法は、手作業である、すなわち人によって行われるか又は自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の目的、利点及び特徴は、以下の図を参照して以下に与えられる詳細な説明を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【
図1】中間部と、中間部に組み込まれた時計ムーブメントと、時計ムーブメントを時計ケースの内部に締結するための弾性ケーシングリングとを含む、本発明に係る時計ケースの半分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した時計ケースの上面図であり、
図2は特にその挿入位置にある弾性ケーシングリングを示す。
【
図3】
図1に示す時計ケースの上面図であり、
図2は特に中間部の内部でそのロック位置にある弾性ケーシングリングを示す。
【
図4】本発明に係る中間部の断面図を示し、断面図は差し込み溝において作られている。
【
図5】本発明に係る弾性ケーシングリングの詳細図であり、弾性ケーシングリングの角度ロック部材をより詳細に示す。
【
図6】本発明に係る弾性ケーシングリングの詳細図であり、弾性ケーシングリングの弾性保持突出部をより詳細に示す。
【
図7】本発明に係る弾性ケーシングリングを用いて時計ムーブメントを収納するための組み立て/分解ツールの概略図である。
【0032】
すべての図において、別段の定めがない限り、共通要素には同じ符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明に係る中心軸Bを有し、裏蓋(図示せず)及びクリスタル(図示せず)によって両側が閉じられるように構成された中間部110を含むケース100の半分解斜視図である。
【0034】
時計ケース100は、中間部110によって境界を定められた内部空間115に収容された時計ムーブメント10を含む。
【0035】
例えば、中間部110は、金属、セラミック又はポリマー材料、若しくは異なる材料の組み合わせで作られる。
【0036】
時計ムーブメント10は、機械式、電気機械式又は電子式ムーブメントであり得る。
【0037】
時計ムーブメント10は、一般平面P1に対して垂直な中心軸Aを有する。時計ムーブメント10の一般平面P1は、針(図示せず)の平面に平行である。時計ムーブメント10の中心軸Aは、ムーブメントの針の回転軸に平行であるか又は回転軸に一致する。
【0038】
時計ムーブメント10の中心軸Aは、中間部110の中心軸Bに平行又は中心軸Bに一致する。
【0039】
図示の例示的な実施形態では、時計ムーブメント10は、裏蓋側からケースに収められる。言うまでもなく、時計ムーブメント10は、本発明の範囲内で留まりながら、クリスタル側からケースに収めることもできる。
【0040】
本発明の主な目的は、時計ムーブメント10を時計ケース100の内部に収納する作業を容易にするケーシング装置を提供することである。
【0041】
この目的のために、出願人は、時計ムーブメント10を時計ケース100内に締結し、固定し、ロックするために弾性ケーシングリング200を使用することを提案する。
【0042】
弾性ケーシングリング200は、中心軸Zを有する環状体205と、軸方向Zに対して半径方向に延びる締結タブ210とを含む。
【0043】
図示の例示的な実施形態では、時計ムーブメント10の中心軸Aは、弾性ケーシングリングの環状体205の中心軸Zと一致する。しかしながら、本発明の範囲内でありながら、他の構成も可能である。
【0044】
図2は、本発明に係るこのような時計ケースの上面図をより詳細に示しており、時計ケース100の内部に時計ムーブメント10が組み込まれ、弾性ケーシングリング200は挿入(すなわち、ロックされていない)位置において時計ムーブメント10の上方に配置されている。弾性ケーシングリング200のこの挿入位置から、弾性ケーシングリング200が軸Zを中心として数度だけ回転すると、
図3に示すように弾性ケーシングリング200がロック位置になる。このロック位置は、時計ムーブメント10がケースに収められることを確実にする。
【0045】
例として、ロック方向は、
図2に示す弾性ケーシングリング200上の矢印によって時計回りであるように示されている。しかしながら、ロック方向は反時計回りであってもよい。
【0046】
有利には、このような弾性ケーシングリング200は金属又はポリマー材料で作られる。
【0047】
このような弾性ケーシングリング200はまた、時計ムーブメント10の変位の影響、及び主に時計ケース100への衝撃の際に軸Zに沿った軸方向の変位の影響を減ずる減衰機能を有する。
【0048】
しかしながら、弾性ケーシングリング200はまた、平面P1における時計ムーブメント10の変位を減じかつ減衰させることができる。
【0049】
有利には、このような弾性ケーシングリングは、弾性バヨネットケーシングリングである。
【0050】
弾性ケーシングリング200の締結タブ210は、バヨネットケーシングシステム300を形成する。このようなバヨネットロックシステム300は、弾性ケーシングリング200を挿入(ロックされていない)位置とロック位置との間で軸Zを中心として中間部110に対して回転させるだけで、時計ムーブメント10をケースに収めることを可能にする。
【0051】
図4は、特に差し込み溝113を有する部分を示す中間部110の断面図を示す。
【0052】
弾性ケーシングリング200を受け止めるために、中間部110は、中間部110の内周に沿って延びる円形の肩部を形成する支持面111を含む。
【0053】
より具体的には、弾性ケーシングリング200が中間部110に挿入されると、締結タブ210は少なくとも部分的に中間部110の支持面111上に置かれる。
【0054】
一般的に言えば、「内部の」、「内側の」、「外部の」及び「外側の」という用語は、当然ながら、弾性ケーシングリング200の中心軸を形成する、
図1に示される軸方向Zに関して理解されるべきであり、「内部の」要素は「外部の」要素よりも中心軸に近い。
【0055】
1つの代替的な実施形態によれば、複数の支持面111が配置され、中間部110の内周の角張った部分に広がり、中間部110の内周に沿って均等に、又は別の方法で分布することができる。この代替的な実施形態では、支持面111の数は、好ましくは弾性ケーシングリング200の締結タブ210の数と等しい。
【0056】
図示の例示的な実施形態では、弾性ケーシングリング200は、6つの締結タブ210を含む。しかしながら、締結タブ210の数は6に限定されず、この数は2に等しいか又は2より大きい任意の数であり得る。
【0057】
差し込み溝113は、支持面111と支持面111に対向する保持面114との間に形成される。
【0058】
差し込み溝113の数は、少なくとも締結タブ210の数に等しい。
【0059】
図示の例示的な実施形態では、差し込み溝113は、時計ムーブメント10の一般平面P1に平行な平面に、すなわち時計ムーブメントの中心軸Aに垂直な平面に配置される。
【0060】
代替的な実施形態では、差し込み溝113は、締結タブ210の回転及び平行移動を案内し、ひいては弾性ケーシングリングを、軸Zを中心とする回転によってロックする際に、軸Zに沿って時計ムーブメント10に向かって垂直方向に変位させるために、時計ムーブメント10の一般平面P1に対して傾斜した少なくとも1つの部分を含むように配置することができる。例えば、差し込み溝113は、ケース100のクリスタルに向かって(すなわち、時計ムーブメント10及び弾性ケーシングリング200が挿入される側とは反対側に向かって)勾配を有する少なくとも1つの部分を有することができる。
【0061】
支持面111と保持面114との間の空間は、差し込み溝113の幅を定める。言うまでもなく、差し込み溝113の幅は一定又は可変であることができ、例えば、締結タブ210の挿入を容易にするために挿入端部分での最も広い幅と、差し込み溝113の底部での最も狭い幅とを有し、例えば、擦れ又は摩擦によって締結タブ210をさらに保持するために締結タブ210の厚さに近いか又は締結タブ210の厚さに相当する幅を有する。
【0062】
しかしながら、以下で分かるように、このような構成は必須ではない。本発明に係る弾性ケーシングリング200は、時計ムーブメント10に弾性的に作用し、弾性的な反動によって、差し込み溝113において保持面114に押し付けられた弾性ケーシングリング200の締結タブ210を保持するように機能する1つの以上の弾性保持要素を含むからである。
【0063】
差し込み溝113は、弾性ケーシングリング200が回転しているときの角度位置決め停止部を形成するために底部、又は障害物、例えば突起を含むことができる。
【0064】
弾性ケーシングリング200は、弾性ケーシングリング200のロック位置が回転するのを防ぐロック部材220を含む。このようなロック部材は、特に時計ケース100への衝撃の際に、弾性ケーシングリング200が誤って緩んだりロック解除されたりするのを防ぐように構成される。
【0065】
1つの代替的な実施形態によれば、弾性ケーシングリング200は複数のロック部材220を含む。
【0066】
図5は、弾性ケーシングリング200のロック部材220を含む部分を示す。
【0067】
第1の代替的な実施形態では、図示のように、ロック部材220は、第1端に弾性ケーシングリング200の環状体205に接続された部分222を有する。部分222は、第1端の反対側に、環状体205に対して軸Zに沿って軸方向にずらされた自由端221を有する。したがって、自由端221は弾性ケーシングリング200の環状体205から突出し、時計ムーブメント10に向けられる。
【0068】
ロック部材220は、中間部110又は時計ムーブメント10に設けられた弾性ロックフィンガ230と協働するように構成される。このような弾性ロックフィンガ230は、弾性ケーシングリング200が被当接位置にあるときに回転することによってロック解除されるのを防ぐように形作られる。したがって、弾性ケーシングリング200はロック位置にある。
【0069】
第2の代替的な実施形態では、角度ロック部材220は、少なくとも環状体205の下面(すなわち、時計ムーブメント10に面するように意図された表面)に設けられた凹凸、例えば穴、の形態をとることができる。凹凸は貫通していても貫通していなくてもよい。したがって、中間部110又は時計ムーブメント10に設けられた弾性ロックフィンガ230は、導電性弾性リング200が当接するときに逆方向に回転するのを防ぐために、少なくとも部分的に凹凸に適合するように形作られる。したがって、リングはロック位置にある。
【0070】
図示の例示的な実施形態では、弾性ロックフィンガ230は、時計ムーブメント10に属し、時計ムーブメント10は、中間部110の内周に形成されたスロットと協働するキャッチ、バー又はアドホック手段によって中間部110内で回転に対してロックされる。これらの手段はまた、時計ムーブメント10を収納する際に中間部110における時計ムーブメント10の正確な位置決め及び配向を保証するために、組み立て用の位置決めコード化要素(組み立てキー)を形成することを可能にする。
【0071】
図5に示すように、弾性ケーシングリング200のロック部材220はまた、中間部110又は時計ムーブメント10の停止面16に接触することによって弾性ケーシングリング200を位置決めするための角度停止部を形成することができ、これにより中間部110の溝113内に1つの以上の角度停止部を形成する必要がなくなる。したがって、このような中間部110の製造は簡素化される。
【0072】
ロック部材220及び弾性ロックフィンガ230は、弾性ケーシングリング200の弾性クリッピングにより回転防止手段を形成する。回転防止手段は可逆的であり、ロック部材220を解放するために、この場合は軸Zに平行な軸方向に、弾性ロックフィンガ230に応力を加えて弾性ロックフィンガ230を弾性変形させることと、弾性ケーシングリングをロック解除及び分解する方向への、弾性ケーシングリング200の回転とを可能にする、先端又は組み立て/分解工具を用いてロック解除することができる。
【0073】
弾性ロックフィンガ230は、係合解除可能な要素として機能する。弾性ロックフィンガ230は、弾性ケーシングリング200を組み立てているときは非作動であり、ひとたびロック位置(時計の通常動作位置)になるとリングが逆方向に回転するのを防ぐように構成される。
【0074】
より詳細には、図示の代替的な実施形態では、弾性ロックフィンガ230は、それが自由位置にあるとき、その端部が環状体205から軸方向に最も遠い位置にあるロック部材220の自由端221の部分よりも軸方向上方に位置するように形作られる。
【0075】
弾性ロックフィンガ230は、ポリマー材料又は金属材料のいずれかで作ることができる。
【0076】
弾性ケーシングリング200はさらに、弾性変形によって、時計ムーブメント10の軸Zに平行な軸に沿って、時計ムーブメント10に軸力を加えるように構成された少なくとも1つの弾性保持要素を含む。
【0077】
第1の代替的な実施形態によれば、弾性保持要素は、弾性ケーシングリング200の環状体205によって形成することができる。弾性ケーシングリング200の環状体205は、好ましくは、時計ムーブメント10に当接するように、かつ中間部110内でロック位置になると時計ムーブメントに弾性軸力を加えるために弾性的に変形するように構成された弾性部材である。
【0078】
第2の代替的な実施形態によれば、弾性保持要素は、複数の弾性保持突出部250によって形成される。
【0079】
図6は特に、弾性ケーシングリング200の、弾性保持突出部250の1つにある部分を示す。
【0080】
弾性保持突出部250は、第1端に弾性ケーシングリング200の環状体205に接続された弾性部分251を含む。例えばブレードの形態をとる、この弾性部分251は、弾性ケーシングリング200の環状体205に対して弾性的に変形するよう意図されている。弾性部分251は、自由接触端252を含み、自由接触端252の少なくとも一部分253は、軸Zに沿って弾性ケーシングリング200の環状体205及び締結タブ210に対して軸方向にずらされている。 したがって、自由接触端252は、弾性ケーシングリング200の環状体205から時計ムーブメント10に向かって突出する。
【0081】
有利には、弾性保持突出部250の自由接触端252及びロック部材220の自由端222は、環状体205によって形成される平面に対して異なる高さに設けられる。
【0082】
弾性保持突出部250の自由接触端252は、弾性ケーシングリング200が中間部110の内部でロック位置にあるときに、好ましくは専用支持部分18において、時計ムーブメント10に当接し、時計ムーブメント10に力を加えるように構成される。
【0083】
好ましくは、弾性保持突出部250の自由接触端252は、弾性ケーシングリング200が中間部110の内部でロック位置にあるときに中心軸Zに平行な軸力を時計ムーブメント10に加えるように構成される。
【0084】
弾性保持突出部250は、時計ケース100への衝撃の際に時計ムーブメント10の変位を減ずる吸収又は減衰手段を形成しながら、通常の使用中に時計ムーブメント10を中間部110の内部の適切な位置に保持するために時計ムーブメント10が中間部110の内部で応力を受けることを可能にする。
【0085】
図示の例示的な実施形態では、弾性保持突出部250は、軸Zに沿った時計ムーブメント10の軸方向の変位の影響を減ずるために、この軸に沿って軸方向に時計ムーブメント10に応力を加える。
【0086】
時計ムーブメント10の専用支持部分18は凹凸、例えば窪み、すなわち時計ムーブメント10の上面から後退した表面、を含むことができ、凹凸は、弾性保持突出部250を受け入れて収容するように構成される。
【0087】
時計ムーブメント10のこれらの凹凸はまた、弾性ケーシングリング200用の角度位置決め停止部を形成し、弾性ケーシングリング200の位置決めの指標を与え、かつ/又は弾性ケーシングリング200をロック位置にロックすることに関与することができる。
【0088】
これらの凹凸に収容された弾性保持突出部250はまた、時計ムーブメント10が平面P1内で変位することを防ぎ、かつ/又は平面P1内の時計ムーブメント10の変位を減衰させるか又は減ずることができる。
【0089】
弾性ケーシングリング200はさらに、中間部110に形成されたキャビティ246と協働しかつ軸Zに沿って軸方向に延びる少なくとも1つの位置決めコード化要素245を含む。
【0090】
弾性ケーシングリング200はさらに、弾性ケーシングリング200を組み立てる(ロックする)ため及び分解する(ロック解除する)ためにケーシングツール400の突起、ピン又はキャッチなどの突出要素460と協働するように構成された凹部260(好ましくは少なくとも2つ)を含む。
【0091】
図示の例示的な実施形態では、弾性リングは5つの凹部260を含む。
【0092】
凹部260は、穴又は切り欠き等であり得る。
【0093】
ケーシングツール400は、弾性ケーシングリング200の取り扱い、ロック及びロック解除を容易にする本体410を含む。
【0094】
図7は、本発明に係る弾性ケーシングリング200を用いて時計ムーブメント10を収納する動作のための、本発明に係るこのようなケーシングツールを模式的に示す。
【0095】
ケーシングツール400は、時計職人によって容易に把持されるスリーブの形態をとることができ、弾性ケーシングリング200の前記少なくとも1つのキャビティ260に収まるように構成された少なくとも1つのピン460を有する。
【0096】
図示の例示的な実施形態では、ケーシングツール400は、弾性ケーシングリング200の5つのキャビティ260に適合するように構成された5つのピン460を含む。
【0097】
弾性ケーシングリング200はさらに、ケーシングツール400のロック解除ピン470を受け入れて通過させるように構成された分解凹部270を含む。このような分解凹部270は、好ましくは、特に他の凹部と比較して識別しやすくするために、他の凹部260の形状とは異なる特定の形状を有する。言うまでもなく、弾性ケーシングリング200を回転させるために使用される他の凹部260と比較して分解凹部270を容易に識別するために他の手段を使用することができる。
【0098】
分解凹部270は、例えば、楕円形の穴又は切り欠きであるが、一方、凹部260は、形状が円形であり得る。
【0099】
分解凹部270は、弾性ケーシングリング200が中間部110内でロック位置にあるときに弾性ロックフィンガ230より上に位置するように環状体205に形成される。
【0100】
ケーシングツール400のロック解除ピン470は、ケーシングツール400が弾性ケーシングリング200に配置されたときに弾性ロックフィンガ230を係合解除するように構成される。ロック解除ピン470は、弾性ロックフィンガ230を押して弾性変形させ、弾性ロックフィンガ230をロック部材220から解放するか又は弾性ロックフィンガ230をロック部材220の軌道から取り除くように構成され、それによって弾性ケーシングリング200が逆方向に回転することを可能にする。
【0101】
したがって、ケーシングツール400が弾性ケーシングリング200の適切な位置に配置されると、弾性ケーシングリング200を分解することは、ツールを組み立て方向の反対方向に回転させるだけで容易であり、これによりピン460と凹部260の協働の結果として弾性ケーシングリング200が回転する。
【0102】
有利には、弾性ケーシングリング200の挿入位置、すなわち、弾性ケーシングリング200が単に中間部110の支持面111に載っている(締結タブ210が差し込み溝113に係合していない)位置では、弾性保持突出部250は、時計ムーブメントの様々な支持部分18と接触していない。弾性保持要素250は、弾性ケーシングリング200がロック位置にあるときのみ、時計ムーブメントに力、特に軸力を加える。
【0103】
本発明に係る時計ムーブメントのケーシング方法
時計ムーブメント10をケースに入れるために、第1の作業は、時計ムーブメント10を中間部110に挿入して、時計ムーブメント10と中間部110の様々な割り出し要素が整列するようにすることから成る。したがって、時計ムーブメント10は、中間部110に対して所定の角度位置に設置することができる。様々な割り出し要素は、軸Zに対して中間部110内で順番に時計ムーブメント10を事前に保持する。
【0104】
図示の例示的な実施形態では、時計ムーブメント10は裏蓋側から挿入される。
【0105】
次いで、第2の作業は、締結タブ210が中間部110の支持面111に当接するまで、弾性ケーシングリング200を時計ムーブメント10の上に挿入することから成る。
【0106】
1つの代替的な実施形態によれば、弾性ケーシングリング200は、時計ムーブメント10上に直接置くことができる。
【0107】
第3の作業は、決められたロック方向、例えば時計回り方向に弾性ケーシングリング200に回転を与えることから成り、これにより締結タブ210は、1つの以上の角度位置決め停止部のおかげで停止位置に達するまで差し込み溝113に挿入される。したがって、弾性ケーシングリング200はロック位置にある。上述の例示的な実施形態では、弾性ケーシングリング200のロック部材220は、時計ムーブメント10の停止面16と協働して、弾性ケーシングリング200の角度位置決め停止部を形成する。
【0108】
回転中に、作業者は、リング200の1つの以上の弾性保持要素の弾性変形による抵抗力に打ち勝たなければならない場合がある。
【0109】
例えば、回転中に、作業者は、リング200の回転中に時計ムーブメント10と接触する環状体205及び/又は弾性保持突出部250の弾性変形による抵抗力に打ち勝ち、かつ/又は時計ムーブメント10と接触する環状体205及び/又は弾性保持突出部250の摩擦によって生じる抵抗力に打ち勝たなければならない場合がある。
【0110】
作業者はまた、締結タブ210を溝113に係合させるために、環状体205及び/又は弾性保持突出部250に弾性応力を加えるように、軸Zに沿った軸力を弾性ケーシングリング200に加える必要がある場合がある。
【0111】
好ましくは、弾性ケーシングリング200は、上述の本発明に係るケーシングツール400を用いて回転される。このようなケーシングツール400は、本発明に係るこのような弾性ケーシングリング200の取り扱いを容易にする。
【0112】
この目的のために、本方法は、ケーシングツール400の様々なピン460、470を弾性ケーシングリング200内の様々なそれぞれの凹部260、270に整列させることによって、ケーシングツール400を弾性ケーシングリング200上に位置決めすることから成る事前のステップを含むことができる。
【0113】
弾性ケーシングリング200の回転中に、ロック部材220の自由端221は弾性ロックフィンガ230と接触し、リング200が回転するにつれて、又は導電性弾性リング200が時計ムーブメント10の上に配置されるとすぐに、弾性ロックフィンガ230を徐々に弾性変形させる。弾性ケーシングリング200が最終的な角度位置(停止位置)に達すると、弾性ロックフィンガ230はもはや応力を受けず、ロック部材220と協働するようにその自由静止位置に戻ることができ、これにより弾性ケーシングリング200が逆方向に回転するのを防ぐ。これにより、弾性ケーシングリング200は所定の位置にロックされる。
【0114】
図示の例示的な実施形態では、弾性ロックフィンガ230は、ロック部材220に面して又はロック部材220の上に軸方向に(軸Zに沿って)配置され、これにより弾性ケーシングリング200の逆回転を防止する。
【0115】
ロック部材220は、時計ムーブメントの弾性フィンガ230と協働して、弾性ケーシングリング200をロック位置にロックすることを可能にし、例えば振動、連続的な膨張サイクル、衝撃、着用者による不注意な使用などの影響下での、弾性ケーシングリング200の予期せぬ不本意な分解を防止する。
【0116】
弾性ケーシングリング200は、約20°回転することによって、挿入位置からロック位置に、又はその逆に移動する。
【0117】
ロック位置になると、弾性保持突出部250は、時計ムーブメント10の専用支持部分18に当接する。
【0118】
有利には、バヨネット接続による、特に軸Zを中心とする回転による、弾性ケーシングリング200のロックは可逆的である。
【0119】
弾性ケーシングリング200の分解は、好ましくは、弾性ケーシングリング200がロック解除方向に回転できるように、弾性フィンガ230を係合解除し、ロック部材220を解放するためにケーシングツール400の使用を必要とする。
【0120】
好ましくは、弾性ケーシングリング200の組み立て中に言及したツールは、弾性ケーシングリング200のロック解除及び分解にも使用される。上述したように、ツールは、ツールが作業者によって弾性ケーシングリング200上の適切な位置に保持されたときに、弾性ロックフィンガ230と協働しかつ軸Zに対して軸方向位置で弾性ロックフィンガ230に応力を加えるように構成されたロック解除ピン470を含む。
【0121】
一般的に言えば、作業者によって行われる作業を用いて本発明を説明してきた。しかしながら、本発明はコントローラ又はロボットにも適用することができ、本発明に係る時計ムーブメントのケーシング方法は、手作業であるか又は自動化することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間部(110)を含む時計ケース(100)の内部に時計ムーブメント(10)を収納するための弾性ケーシングリング(200)であって、前記弾性ケーシングリング(200)は、中心軸(Z)を有する環状体(205)と、前記環状体(205)によって担持され、挿入位置とロック位置との間の、前記中心軸(Z)を中心とする前記中間部(110)に対する前記弾性ケーシングリング(200)の回転によりバヨネットケーシングシステム(300)を形成するように前記中間部(110)と協働することができる締結タブ(210)とを含み、前記弾性ケーシングリング(200)は少なくとも1つの弾性保持要素を含み、前記少なくとも1つの弾性保持要素は、前記弾性ケーシングリング(200)が前記中間部(110)内で前記ロック位置にあるときに前記時計ムーブメント(10)と協働すること及び前記弾性保持要素の弾性変形によって前記中心軸(Z)に平行な軸力を前記時計ムーブメント(10)に加えることができることを特徴とする、弾性ケーシングリング(200)。
【請求項2】
前記弾性ケーシングリング(200)は、前記時計ムーブメント(10)又は前記中間部(110)と協働して前記中間部(110)内で前記弾性ケーシングリング(200)のロック位置を回転に対してロックすることができるロック部材(220)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項3】
前記ロック部材(220)は、前記時計ムーブメント(10)又は前記中間部(110)と協働して前記弾性ケーシングリング(200)のための角度位置決め停止部を形成することができることを特徴とする、請求項2に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項4】
前記弾性ケーシングリング(200)は、金属又はポリマー材料で作られることを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弾性保持要素は前記環状体(205)によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項6】
前記弾性ケーシングリング(200)は、前記環状体(205)に接続されかつ弾性変形を受けるように形作られた弾性部分(251)を含む弾性保持突出部(250)によって形成された複数の弾性保持要素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項7】
前記弾性部分(251)は、少なくとも前記弾性ケーシングリング(200)が前記中間部(110)内で前記ロック位置にあるときに前記時計ムーブメント(10)に当接すること及び前記弾性部分(251)の弾性変形によって前記中心軸(Z)に平行な軸力を前記時計ムーブメント(10)に加えることができる、前記環状体(205)から前記中心軸(Z)に沿って軸方向にずらされた少なくとも1つの部分(253)を有する自由接触端(252)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項8】
前記弾性ケーシングリング(200)は組み立て用の位置決めコード化要素(245)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項9】
前記弾性ケーシングリング(200)は少なくとも1つの凹部(260、270)を含み、前記少なくとも1つの凹部(260、270)の形状はケーシングツール(400)と協働するように適合されることを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項10】
前記弾性ケーシングリング(200)は、前記弾性ケーシングリング(200)の回転を確実にするように構成された第1の凹部(260)と、前記弾性ケーシングリング(200)のロック解除を確実にするように構成された第2の凹部(270)とを含み、各凹部(260、270)はケーシングツール(400)と協働するように構成された形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)。
【請求項11】
中間部(110)と、請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)と、前記弾性ケーシングリング(200)によって前記中間部(110)の内部に収納された時計ムーブメント(10)とを含む時計ケース(100)。
【請求項12】
前記弾性ケーシングリング(200)は、前記中心軸(Z)に平行な軸方向において、前記時計ケース(100)への衝撃の際に前記時計ムーブメント(10)のための減衰手段を形成するように構成されることを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項13】
前記中間部(110)は差し込み溝(113)を含み、前記差し込み溝(113)は前記締結タブ(210)と協働して前記時計ムーブメント(10)のバヨネットケーシングシステム(300)を形成することを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項14】
前記中間部(110)は、前記弾性ケーシングリング(200)を締結するための前記締結タブ(210)を受け止めるために少なくとも1つの支持面(111)を含み、前記締結タブ(210)は前記弾性ケーシングリング(200)の挿入位置において前記少なくとも1つの支持面(111)に当接することを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項15】
前記弾性ケーシングリング(200)はロック部材(220)を含み、前記中間部(110)は、前記弾性ケーシングリング(200)が弾性クリッピングによって前記中間部(110)内で回転に対してロックされることを確実にするために前記ロック部材(220)と協働するように構成された弾性ロックフィンガ(230)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項16】
前記弾性ケーシングリング(200)はロック部材(220)を含み、前記時計ムーブメント(10)は、前記弾性ケーシングリング(200)が弾性クリッピングによって前記中間部(110)内で回転に対してロックされることを確実にするために前記ロック部材(220)と協働するように構成された弾性ロックフィンガ(230)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の時計ケース(100)。
【請求項17】
請求項11に記載の時計ケース(100)の時計ムーブメント(10)を収納するためのケーシングツール(400)であって、前記ケーシングツール(400)は、前記弾性ケーシングリング(200)内の少なくとも1つの凹部(260、270)と協働するように構成された少なくとも1つの突出要素(460、470)を含むことを特徴とする、ケーシングツール(400)。
【請求項18】
前記ケーシングツール(400)は、前記弾性ケーシングリング(200)内の複数の凹部(260、270)と協働するように構成された複数の突出要素(460、470)を含み、前記突出要素(460、470)は、前記ケーシングツール(400)が回転されると前記弾性ケーシングリング(200)を回転させることを特徴とする、請求項17に記載のケーシングツール(400)。
【請求項19】
前記ケーシングツール(400)は、前記弾性ケーシングリング(200)をロック解除することを可能にし、前記弾性ケーシングリング(200)を分解することを可能にするために、前記ケーシングツール(400)が前記弾性ケーシングリング(200)上の適切な位置にあるときに前記弾性ケーシングリング(200)のロック部材から前記中間部(110)又は前記時計ムーブメント(10)の弾性ロックフィンガ(230)を係合解除するように構成されたロック解除ピン(470)を含むことを特徴とする、請求項17に記載のケーシングツール(400)。
【請求項20】
請求項1に記載の弾性ケーシングリング(200)を用いて中間部(110)を含む時計ケース(100)に中心軸(Z)を有する時計ムーブメント(10)を収納する方法であって、
・前記時計ムーブメント(10)を前記中間部(110)に挿入するステップと、
・前記弾性ケーシングリング(200)を前記中心軸(Z)に沿って前記時計ムーブメントの上に挿入するステップと、
・前記時計ムーブメント(10)を前記中間部(110)に締結するステップであって、当該ステップ中に、前記弾性ケーシングリング(200)は前記中心軸(Z)を中心として回転可能に係合され、前記締結タブは前記弾性ケーシングリング(200)の回転中に前記弾性ケーシングリング(200)がそのロック位置に達するまで前記中間部(110)の複数の差し込み溝(113)内に係合するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【外国語明細書】