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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086577
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】掃除ロボット
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A47L9/28 U
A47L9/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179519
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2022200206の分割
【原出願日】2022-12-15
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】照本 進
【テーマコード(参考)】
3B057
【Fターム(参考)】
3B057DE02
3B057DE06
(57)【要約】
【課題】吸引用モータに過大な負荷、瞬間的な負荷変動、突入電流等が生じたとしても、その影響が走行に関する機器に及ぶことを防止できる掃除ロボットを提供する。
【解決手段】吸引用モータを備え複数の旋回キャスタにて床面を走行可能な事業用掃除機本体70と、走行用モータを備え自律走行可能な走行台車と、を備えた掃除ロボット1であって、吸引用モータの駆動に用いられる吸引用バッテリ21と、走行用モータの駆動に用いられる走行用バッテリ31と、を備え、吸引用バッテリ21は走行用バッテリ31の上方に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引用モータを備え、複数の旋回キャスタにて床面を走行可能な事業用掃除機本体と、
走行用モータを備え、自律走行可能な走行台車と、
を備えた掃除ロボットであって、
前記吸引用モータの駆動に用いられる吸引用バッテリと、
前記走行用モータの駆動に用いられる走行用バッテリと、を備え、
前記吸引用バッテリは、前記走行用バッテリの上方に配置されていることを特徴とする掃除ロボット。
【請求項2】
前記走行台車は、前方に一対の車輪と、後方に一対の車輪を備え、
前記走行用バッテリは、前後の前記車輪の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の掃除ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な掃除ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、商業施設、宿泊施設などにおいて、衛生管理の一環として掃除機を用いて床面に落ちている塵埃を捕集する掃除が行われている。近年では、人件費高騰、人材不足などの要因により、作業者に掛かる負担を軽減するべく、塵埃を吸引させながら床面を自律走行させることを可能とした掃除ロボットに対する需要が高まってきている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される掃除ロボットは、走行部と、走行部内部における上方に配置される掃除機本体と、走行部の下部に配置されるノズルと、走行部内部に配置され掃除機本体とノズルとを接続するパイプと、を備え、自律走行可能に構成されている。この掃除ロボットは、掃除機本体を駆動させてノズルより吸引した塵埃をパイプを通じて掃除機本体内に捕集させながら自立走行させることにより、対象区域内を掃除することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6227948号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような掃除ロボットにおいては、走行部の前方側と後方側それぞれにおける、ノズルよりもやや上方位置に距離センサが配置されているため、走行部よりも前方側と後方側それぞれの床面近傍にある障害物を検出することが可能となっている。しかしながら、これら距離センサは、掃除機本体、パイプなどを囲繞する走行部の大型なケースの前方側と後方側に配置されていることから、ケースによって距離センサの水平方向におけるセンシング範囲が限定されてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、水平方向におけるセンシング範囲が広い掃除ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の掃除ロボットは、
吸引用モータを備え、複数の旋回キャスタにて床面を走行可能な事業用掃除機本体と、
走行用モータを備え、自律走行可能な走行台車と、
を備えた掃除ロボットであって、
前記吸引用モータの駆動に用いられる吸引用バッテリと、
前記走行用モータの駆動に用いられる走行用バッテリと、を備え、
前記吸引用バッテリは、前記走行用バッテリの上方に配置されていることを特徴としている。
前記走行台車は、前方に一対の車輪と、後方に一対の車輪を備え、
前記走行用バッテリは、前後の前記車輪の間に配置されていることを特徴としている。
距離センサを備える自立走行可能な掃除ロボットであって、
掃除機本体の機能を有する上部装置と、走行機能を有する下部装置とが立設する連結部によって連結されており、
前記距離センサは、前記連結部を挟んで複数配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、水平方向におけるセンシング範囲を広げることができる。
【0008】
前記距離センサは、前記連結部の前方側と後方側とにそれぞれ配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、進退方向における距離検出における処理を簡素にすることができる。
【0009】
前記前方側の距離センサは、前記後方側の距離センサよりも奥まって配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、前方の進行方向における下部装置近傍を確実にセンシング範囲に含めることができる。
【0010】
前記下部装置の前端部に、床面に対向配置され床面の塵埃を吸引するノズルが配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ノズルの近傍を確実にセンシング範囲に含めることができる。
【0011】
前記連結部の側方に、前記掃除機本体に接続されるパイプの一部が配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、パイプが距離センサのセンシングに干渉することを防止することができる。
【0012】
走行用のバッテリが前記下部装置に設けられ、掃除機本体用のバッテリが前記上部装置に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、連結部を細くすることができる。また、下部装置に重心を寄せて安定させることができる。
【0013】
前記掃除ロボットは、水平方向断面が略正方形状であることを特徴としている。
この特徴によれば、少ない数の距離センサで全方位をセンシング範囲に含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例における掃除ロボットを示す斜視図である。
図2】掃除ロボット前側の側面図である。
図3】掃除ロボット左側の側面図である。
図4】掃除ロボット後側の側面図である。
図5】掃除ロボット右側の側面図である。
図6】掃除ロボットにおけるセンシング範囲を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る掃除ロボットを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例に係る掃除ロボットにつき、図1から図6を参照して説明する。以下、図1の紙面右下側を掃除ロボットの前方側として説明する。
【0017】
掃除ロボットは、オフィス、商業施設、宿泊施設等において、人の手を借りずに床面を自律走行しながら床面に落ちている塵埃を吸引・捕集することにより掃除を行うものである。
【0018】
図1図5に示されるように、掃除ロボット1は、掃除機本体70が固定されている上部装置2と、走行機能を有する下部装置3とが立設する連結部としての連結体4(図2図5参照)によって連結されており、連結体4を挟んで前方側と後方側に配置されている距離センサ5,6(図2図5参照)を備え、自立走行可能に構成されている。
【0019】
上部装置2は、フレーム20(図2図5参照)と、バッテリ21(図2図5参照)と、制御装置22(図5参照)と、掃除機本体70と、外装80と、から主に構成されている。なお、説明の都合上、図2図5では、外装80,90の外形のみを破線にて示している。
【0020】
図2図5に示されるように、フレーム20は上面視略正方形状の直方体状のスケルトンに構成されている。なお、フレーム20は、左右方向寸法に対する前後方向の寸法が略同じである。なお、本発明では左右方向寸法に対する前後方向の寸法が10分の8以上10分の12以下であれば略正方形状であるものとする。
【0021】
フレーム20は、その上端に平坦状の載置面20aを有し、同載置面20a上に掃除機本体70を載置することが可能となっている。また、掃除機本体70は、フレーム20に固定された外装80に囲繞されて前後左右方向への移動が規制される。
【0022】
なお、掃除機本体70をフレーム20に固定する手段については、例えばベルトを用いて固定されていてもよく、上部の外装80とベルトを両方使用して固定されていてもよく、適宜変更されてもよい。また、載置面20aに掃除機本体70の転落を防止するための立ち上がり片が設けられていてもよい。
【0023】
バッテリ21は、略立方体形状に形成されており、フレーム20内に配置固定されている。また、バッテリ21は、後述する下部装置3のバッテリ31よりも蓄電用量が大きく、大型で重量が重いものであり、主に掃除機本体70の駆動に使用される。なお、バッテリ21は、例えばバッテリケース内に複数のバッテリが配置されたものであってもよい。
【0024】
図5に示されるように、制御装置22はフレーム20に配置固定されている。制御装置22は、掃除機本体70への電力供給に関する制御、後述する走行に関する機器の制御などを行う。なお、制御装置22とは別に走行用の制御装置を下部装置3に設け、この制御装置によって走行制御するようにしてもよい。
【0025】
図2図5に示されるように、掃除機本体70は、床面に対向配置され床面の塵埃を吸引するノズル71に、パイプ72を通じて連通接続されている。また、掃除機本体70は、いわゆる商用電源にて動作する業務用掃除機の本体部分であり、紙パックが収容される筐体、キャスタ、吸引用のファン(図示略)、差込プラグ付コード(図示略)などを備えている。
【0026】
また、掃除機本体70は、差込プラグ付コードがインバータ(図示略)に接続されており、インバータから供給される交流電源により駆動する。インバータはバッテリ21から供給される直流電流を交流電流に変換する。さらに、掃除機本体70は、差込プラグ付コードを商用電源に電気的に接続することで、掃除機本体70を手動で操作して掃除を行うことにも使用することができる。
【0027】
図1図6に示されるように、下部装置3は、本体30と、バッテリ31(図2図5参照)と、駆動輪32L,32R,33L,33Rと、バンパ34,35(図6参照)と、外装90と、から主に構成されている。
【0028】
本体30は上面視略正方形状である箱状に構成されている。
【0029】
バッテリ31は、左右方向に長い直方体状であり、本体30において前方側の駆動輪32L,32Rと後方側の駆動輪33L,33Rの間に配置されている。また、上述したように、上部装置2のバッテリ21よりも小型であり、図3図5に示されるように、各駆動輪32L,32R,33L,33Rよりも高さ寸法が短い。
【0030】
これにより、本体30は、バッテリ31よりも高さ寸法が長く、各駆動輪32L,32R,33L,33Rよりも高さ寸法が短く形成されている。
【0031】
また、バッテリ31は、掃除ロボット1の走行に関する機器に電力を供給するためのものであり、例えば各駆動輪32L,32R,33L,33R、距離センサ5,6などの駆動に使用される。なお、距離センサ5,6への電力供給は、バッテリ21から行われる構成であってもよい。
【0032】
各駆動輪32L,32R,33L,33Rは、複数のローラを有する、いわゆるメカナムホイールであり、個別に走行用モータが設けられている。各走行用モータは、上部装置2の制御装置22によってバッテリ31から供給される印加電圧の大きさおよび入力方向が個別に切り替えられる。そのため、各駆動輪32L,32R,33L,33Rは回転速度および回転方向が個別に制御される。
【0033】
これにより、掃除ロボット1は、各駆動輪32L,32R,33L,33Rの駆動と、床面に接触している各ローラの転動とを組み合わせて、全方向へスムーズに移動可能となっている。
【0034】
前方側のバンパ34は、上面視コ字状に形成されており、前方側の駆動輪32L,32Rおよび本体30に固定されている外装90の外側を囲んだ状態で本体30に固定されている。また、バンパ34には障害物に接触することでON状態となるスイッチ(図示略)が設けられている。
【0035】
後方側のバンパ35は、上面視コ字状に形成されており、後方側の駆動輪33L,33Rおよび外装90の外側を囲んだ状態で本体30に固定されている。また、前方側のバンパ34と同様にスイッチ(図示略)が設けられている。
【0036】
制御装置22はバンパ34,35のうち少なくとも一方のスイッチがON状態となったことを検知すると、例えば停止、後退などの適切な回避行動を選択して、走行モータへの印加電圧の大きさおよび入力方向を決定する。
【0037】
また、図3図5図6に示されるように、下部装置3の本体30は、前後のバンパ34,35がなす矩形枠状内における前後左右方向中央よりもやや後方側に配置されている。また、本体30と前方側のバンパ34との間かつ本体30の前端右側にはノズル71が配置されている。ノズル71の右端は、前方側のバンパ34の前方右側の角よりも外側に露出している。これにより、バンパ34よりも右方外側の掃除を行うことが可能となっている。
【0038】
連結体4は、基材40と、基材40における左右の壁部40a,40bの前方寄りに固定されその一部が前方に張り出す張出部材43と、左右の壁部40a,40bの後端部に固定されその一部が後方に張り出す張出部材44とから主に構成されている。
【0039】
図6を参照して、基材40は、上面視コ字状に形成されており、左右の壁部40a,40bと、これらの後端に略直交して連続している平板状の渡設部40cを有している。また、基材40は、コ字状に形成されていることから構造強度が高められている。
【0040】
図2図6を参照して、右側の壁部40aと左側の壁部40bは左右対称形状である。そのため、右側の壁部40aを例にこれらの説明を行い、左側の壁部40bの説明は省略する。
【0041】
図2図5図6を参照して、右側の壁部40aは、前方から見て上下の右方に延びるフランジとこれらに渡設され上下に延びる立設部を有するコ字状に形成されている(図2参照)。上側のフランジが上部装置2のフレーム20に固定され、下側のフランジが下部装置3の本体30に固定される。また、壁部40aは、コ字状に形成されていることから構造強度が高められている。
【0042】
また、壁部40aは、張出部材43の渡設部43aよりも前方側かつ上半分が略矩形状に切り欠かれ前方よりも後方の高さが高く形成されており、いうなれば横向きp字状に形成されている(図5参照)。
【0043】
図2図6を参照して、前方側に配置されている張出部材43は、壁部40a,40bの前方寄りに固定される渡設部43aと、渡設部43aの下端に略直交して前方側に張り出す張出部43bを有している。張出部43bの上面には距離センサ5が固定されている。
【0044】
また、連結体4は、基材40の壁部40a,40bそれぞれの立設部、渡設部40c、張出部材43の渡設部43aによる水平方向断面が略正方形状に構成されている。
【0045】
図4図6を参照して、後方側に配置されている張出部材44は、壁部40a,40bの後端部下方に固定される固定部44a,44aと、固定部44a,44aからさらに後方側に延びる平板状の張出部44bを有している。張出部44bの上面には距離センサ6が固定されている。
【0046】
図2図6を参照して、距離センサ5,6は、光を用いて距離を測定するいわゆるLiDARであり、略同じ高さ位置に検出部5a,6aが配置されている。検出部5a,6aは、水平方向における360度に亘ってセンシング可能であり、およそ0.5m以上10m以下のセンシング範囲内にある障害物との距離を測定することが可能である。なお、距離センサは、3次元的に測定可能であってもよい。また、検出可能な範囲については、角度、近距離、遠距離ともに適宜変更されてもよい。
【0047】
制御装置22は、室内を清掃する前に、距離センサ5が測定した室内の壁、柱などの障害物までの距離情報および相対的な位置情報に基づいてマッピングを行う。
【0048】
また、制御装置22は、室内を掃除する際に、距離センサ5,6が測定した距離情報および位置情報や4つの走行用モータに接続される図示しないロータリエンコーダからの回転数等の情報に基づいて現在位置を特定する。そして、マッピングしたマップに現在位置を照会して走行用モータ毎に印加電圧の大きさおよび入力方向を決定する。
【0049】
次に、距離センサ5,6のセンシング範囲S1,S2について、図1図6を参照して説明する。図6にて一点鎖線で挟まれた略250度の範囲、かつ網掛けして示す距離センサ5,6から半径0.5m以上の範囲が実際に障害物などを検出可能なセンシング範囲S1,S2である。一方、残りの110度の範囲や距離センサ5,6から半径0.5m未満はセンシング外である。
【0050】
図1図5を参照して、距離センサ5,6の検出部5a,6aは連結体4によって上部装置2と下部装置3とが離間されて形成されている開口部1a(図1図5参照)に配置されている。開口部1aは、連結体4によって上下方向に離間されている上部装置2の下端と下部装置3の上端の間のスリット状の空間のことであり、連結体4を中心軸と見立てた場合に360度に亘って外径方向に開放されている。
【0051】
図2図3図5に示されるように、距離センサ5は、開口部1a内における連結体4の前方側に配置されていることで前方側および左右側方側が開放されていることに加え、張出部材43の渡設部43aよりも前方に離間して配置されている(図3図5参照)。これにより、図6に示される距離センサ5のセンシング範囲S1に距離センサ5よりも後方側を含めることができる。
【0052】
また、距離センサ5の左右側方の連結体4の壁部40a,40bの前端部上方は切り欠かれていることから、壁部40a,40bが距離センサ5のセンシングに干渉することが防止されている。
【0053】
さらに、上部装置2や下部装置3に容積を要するバッテリ21,31などが配置されていることから、連結体4は、前後左右方向寸法を短くすること、すなわち細くすることができる。これにより、壁部40a,40bや張出部材43の渡設部43aが距離センサ5のセンシングに干渉する範囲が狭められている。
【0054】
これらにより、掃除ロボット1は、略250度に亘る広範囲が距離センサ5のセンシング範囲S1として確保されている。
【0055】
また、図3図5に示されるように、距離センサ6は、開口部1a内における連結体4の後方側に配置されていることで後方側および左右側方側が開放されていることに加え、基材40の渡設部40cよりも後方に離間して配置されている(図3図5参照)。これにより、図6に示される距離センサ6のセンシング範囲S2に距離センサ6よりも前方側を含めることができる。
【0056】
また、距離センサ6のセンシング範囲S2よりも下方に張出部材44の各固定部44aは配置されていることから、各固定部44aが距離センサ6のセンシングに干渉することが防止されている。
【0057】
さらに、上述したように連結体4は細く形成されているため、基材40の渡設部40cや壁部40a,40bが距離センサ6のセンシングに干渉する範囲が狭められている。
【0058】
これらにより、掃除ロボット1は、略250度に亘る広範囲が距離センサ6のセンシング範囲S2として確保されている。
【0059】
また、掃除ロボット1は、上部装置2と下部装置3の水平方向断面が略正方形状であるため、2つの距離センサ5,6それぞれのセンシングに掃除ロボット1の構成が干渉することを防止しつつ、言い換えれば距離センサ5,6それぞれのセンシング外に掃除ロボット1の構成を収めつつ、センシング範囲S1,S2を掃除ロボット1の側方近傍にて重複させることができる。これにより、2つの距離センサ5,6のみで全方位をセンシング範囲S1,S2に含めることができる。
【0060】
なお、本実施例のセンシング範囲S1,S2は、連結体4を中心とした360度すべてを含む全方位であるが、これに限られず、360度よりも狭い範囲であってもよい。例えば270度以上であればよく、300度以上であることがより好ましい。
【0061】
さらに、掃除ロボット1は、連結体4が距離センサ5,6それぞれのセンシング外、より詳しくは図6にて一点鎖線で囲んで示すセンシング範囲S1,S2が含まれない110度の範囲内であるひし形状の死角S3内に配置可能なほど細い水平方向断面正方形状に構成されている。そのため、距離センサ5,6を連結体4に近い位置に配置することができる。
【0062】
これにより、距離センサ5,6のセンシング範囲S1,S2をより連結体4の側方近傍にて重複させることができるため、2つの距離センサ5,6のみで掃除ロボット1近傍をセンシング範囲S1,S2に含めることができる。
【0063】
また、距離センサ5,6のセンシング範囲S1,S2を重複させることにより、距離センサ5,6の一方が他の場所をセンシングしている場合に、他方がセンシングすることができる。なお、複数の距離センサのセンシング範囲は、それぞれの距離センサがセンシング可能な距離が離間しており交わらないなどにより重複していなくてもよい。
【0064】
また、距離センサ5は、連結体4の後方側に配置されている距離センサ6よりも掃除ロボット1における前後方向中央側に配置されている。すなわち、開口部1aにおいて、距離センサ5は距離センサ6よりも奥まった位置に配置されている。これにより、距離センサ5は、センシング範囲S1に前方側のバンパ34の角と、ノズル71の角を含めることができる。そのため、掃除ロボット1は塵埃が溜まりやすい壁際の掃除を円滑に行うことができる。
【0065】
また、掃除ロボット1は、パイプ72が距離センサ5,6それぞれのセンシングに干渉しないように配置されている。より詳しくは、掃除機本体70とノズル71を連通接続するためには、距離センサ5,6それぞれと同じ高さ位置を縦断する必要があるが、パイプ72の立ち上がり部72aを上述したひし形状の死角S3内かつ連結体4の左側の壁部40bの左側に配置したため、パイプ72が距離センサ5,6のセンシングに干渉することが防止されている。
【0066】
以上説明したように、本実施例の掃除ロボット1は、上部装置2と下部装置3とを連結している連結体4の前方側と後方側にそれぞれ距離センサ5,6を配置したことから、水平方向におけるセンシング範囲S1,S2を広げることができる。
【0067】
また、進退方向における距離検出における処理を簡素にすることができる。例えば、掃除ロボットの左右側方に距離センサが配置されている構成であれば、前方または後方を測定しているのがいずれの距離センサであるかを特定する必要があり、設置位置に対する角度の補正などを考慮する必要があるため、主な進退方向における処理が煩雑になりやすい。
【0068】
また、走行用のバッテリ31が下部装置3に設けられ、掃除機本体70用のバッテリ21が上部装置2に設けられているため、下部装置3に重心を寄せて安定させることができる。
【0069】
加えて、上部装置2や下部装置3に容積を要するバッテリ21,31などが配置されていることから、連結体4の上下方向寸法を短くすることができる。これにより、掃除ロボット1全体の高さ寸法を抑えることができるため、より下部装置3に重心を寄せることができる。
【0070】
なお、連結体4の上下方向寸法は、距離センサ5,6の検出部5a,6aのセンシング範囲S1,S2を確保できるのであれば、適宜変更されてもよい。その一方で、掃除ロボット1の移動時における揺動を抑制する観点から上下方向寸法は短いほうが好ましい。
【0071】
また、個別に設けられているバッテリ21,31のうち、より小型なバッテリ31が下部装置3に配置されているため、下部装置3の上下寸法を短くすることができる。これにより、距離センサ5,6を床面近傍に配置しやすいことから、各駆動輪32L,32R,33L,33Rの進路上にある障害物をより確実に検出することができる。
【0072】
また、掃除機本体70の下方に上部装置2のバッテリ21を配置したことより、掃除ロボット1の重心をより低くすることができる。そのため、掃除ロボット1の移動にあたって生じうる揺動が低減されやすくなっている。
【0073】
また、掃除機本体70を駆動させるためのバッテリ21と、掃除ロボット1の走行に関する機器に電力を供給するためのバッテリ31とが個別に設けられているため、パイプ72内にビニールが吸い込まれるなどにより吸引用モータに過大な負荷、瞬間的な負荷変動、突入電流等が生じたとしても、その影響が走行に関する機器に及ぶことが防止されている。
【0074】
また、掃除機本体70の単位時間当たりの電力消費量が走行に関する機器の電力消費量よりも多く、バッテリ21の蓄電残量の方がバッテリ31の蓄電残量よりも早くゼロになるようにそれぞれの蓄電容量を設定しているため、確実に掃除ロボット1を所定の位置に帰還させることができる。
【0075】
また、掃除ロボット1の前後それぞれにバンパ34,35が設けられていることから、前方側ばかりでなく、後方側について障害物の接触時に回避行動をとることが可能となっている。
【0076】
また、バンパ34,35それぞれのスイッチは、バンパ34,35に対する左右側方に障害物の接触した場合にもON状態となる。これにより掃除ロボット1は、左右方向についても障害物の接触時に回避行動をとることが可能となっている。これらにより、掃除ロボット1は、距離センサ5,6のセンシング外であっても、障害物などとの接触時に、確実に回避行動をとることができる。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0078】
例えば、前記実施例では、掃除機本体は、業務用掃除機の掃除機本体であるとして説明したが、これに限られず、上部装置が筐体、吸引ファンなどの構成を着脱不能に備えていて、掃除機本体としての機能を有している構成であってもよい。
【0079】
また、前記実施例では、距離センサは前後に一つずつ設けられている構成として説明したが、これに限られず、左右に一つずつ設けられていてもよく、連結部を挟んで上面視三角形状に配置されていてもよく、その位置や数は適宜変更されてもよい。
【0080】
また、前記実施例では、距離センサは連結部に設けられている構成として説明したが、これに限られず、連結部を挟んで複数配置されている構成であれば、下部装置に固定されていてもよく、上部装置に固定されていてもよい。
【0081】
また、前記実施例では、距離センサはLiDARであるとして説明したが、これに限られず、赤外線センサ、画像センサなどであってもよく、適宜変更されてもよい。
【0082】
また、前記実施例では、連結部は、上部装置や下部装置とは別体である構成として説明したが、これに限られず、上部装置および下部装置のうち少なくとも一方の一部であってもよい。すなわち、上部装置と下部装置との間に開口部を形成可能であればその構成は適宜変更されてもよい。
【0083】
また、前記実施例では、各駆動輪はメカナムホイールである構成として説明したが、これに限らず、進路方向を変更可能であれば、適宜変更されてもよい。
【0084】
また、前記実施例では、掃除ロボットは、水平方向断面が略正方形状である構成として説明したが、これに限られず、水平方向断面が長方形状であってもよく、四角形以外の多角形状であってもよく、円形状、楕円形状であってもよく、その形状は適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 掃除ロボット
1a 開口部
2 上部装置
3 下部装置
4 連結体(連結部)
5,6 距離センサ
21,31 バッテリ
32L~33R 駆動輪
34,35 バンパ
70 掃除機本体
71 ノズル
72 パイプ
72a 立ち上がり部
80,90 下部の外装
S1,S2 センシング範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6