(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086578
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】循環式水耕栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240620BHJP
C02F 3/06 20230101ALI20240620BHJP
B01F 21/20 20220101ALI20240620BHJP
B01F 23/2326 20220101ALI20240620BHJP
【FI】
A01G31/00 602
C02F3/06
B01F21/20
B01F23/2326
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181709
(22)【出願日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2022201560
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯地 実
(72)【発明者】
【氏名】真本 英光
【テーマコード(参考)】
2B314
4D003
4G035
【Fターム(参考)】
2B314MA23
2B314MA27
2B314MA46
2B314PA09
2B314PA12
2B314PA13
4D003AA01
4D003AB13
4D003AB19
4D003BA02
4D003CA02
4D003CA07
4D003CA10
4D003DA20
4D003EA01
4G035AA02
4G035AB20
4G035AC22
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】水耕栽培ベッドの液体を効率的に再利用すること。
【解決手段】循環式水耕栽培システム(SYS)は、水耕栽培ベッド(BD)と、水耕栽培ベッドの排水口に一端が接続された第1流路(1010)と、第1流路の他端に接続され、第1流路を通過した水に含まれる有機物を無機物に還元する生物濾過槽(1020)と、生物濾過槽の排水口に一端が接続され、他端が水耕栽培ベッドに接続された第2流路(1030)とを備え、第1流路および第2流路の少なくとも一方に、微細気泡発生器(1015,1037)が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培ベッドと、
前記水耕栽培ベッドの排水口に一端が接続された第1流路と、
前記第1流路の他端に接続され、前記第1流路を通過した水に含まれる有機物を無機物に還元する生物濾過槽と、
前記生物濾過槽の排水口に一端が接続され、他端が前記水耕栽培ベッドに接続された第2流路とを備え、
前記第1流路および前記第2流路の少なくとも一方に、微細気泡発生器が設けられている、循環式水耕栽培システム。
【請求項2】
前記微細気泡発生器が、前記第1流路および前記第2流路の両方に設けられている、請求項1に記載の循環式水耕栽培システム。
【請求項3】
前記第1流路の前記微細気泡発生器は、循環水に気体を供給するための気体供給手段を有している、請求項2に記載の循環式水耕栽培システム。
【請求項4】
前記第2流路の前記微細気泡発生器は、キャビテーション方式によって微細気泡を発生させる、請求項2に記載の循環式水耕栽培システム。
【請求項5】
前記微細気泡発生器は、
x軸方向に延びる上流管および下流管の間に位置し、前記x軸に交差するy軸方向に円弧状に膨出するケーシングと、
前記ケーシングの内側面との間に、上流側から下流側に向かう水の高速流路となる隙間をあけて配置され、前記x軸および前記y軸に交差するz軸方向に延びる円柱形状のコマ部材とを備え、
前記コマ部材は、前記x軸および前記y軸で区画される4つの扇形領域のうち、下流側に位置する2つの扇形領域の外周部に、前記隙間を通過した水を引き込んで旋回流を発生させる切欠き部を有している、請求項1~4のいずれかに記載の循環式水耕栽培システム。
【請求項6】
前記微細気泡発生器は、
上流側と下流側とを結ぶ流路形成空間を有するケーシングと、
前記流路形成空間の内面に設けられ上流側から下流側に向かって縮径する第1テーパ部と、
前記流路形成空間の内面の前記第1テーパ部よりも下流側に設けられ上流側から下流側に向かって拡径する第2テーパ部と、
前記第1テーパ部及び前記第2テーパ部に対向して配置される上流側部材と、
前記上流側部材よりも下流側に配置される下流側部材とを備え、
前記上流側部材は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部を備えて、前記第1テーパ部との間で第1流路部を、前記第2テーパ部との間で第2流路部を構成し、
前記下流側部材は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部を備えて、前記第2テーパ部との間で第4流路部を構成し、
前記第2流路部と前記第4流路部との間に、前記第2流路部及び前記第4流路部よりも流路の断面積が大きく流路内に負圧を発生させる第3流路部を備えている、請求項4に記載の循環式水耕栽培システム。
【請求項7】
前記第2流路には、前記生物濾過槽の下流側に間に吸着槽が設けられている、請求項1に記載の循環式水耕栽培システム。
【請求項8】
水耕栽培ベッドと、
前記水耕栽培ベッドの排水口に一端が接続された第1流路と、
前記第1流路の他端に接続され、魚を生育するための貯留部と、
前記貯留部に一端が接続され、他端が前記水耕栽培ベッドに接続された第2流路とを備え、
前記第1流路および前記第2流路の少なくとも一方に、微細気泡発生器が設けられ、
前記第2流路に、生物濾過剤を有する濾過装置が設けられている、循環式水耕栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環式水耕栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境制御による植物の計画生産を実現する植物工場が大きな関心と期待を集めている。一般的な植物工場では、水耕栽培ベッドの液体は排水されるため、常に、多くの水が必要となる。
【0003】
一方で、水耕栽培ベッドの液体を再利用する循環式水耕栽培システムも従来から提案されている。たとえば特開2013-039500号公報(特許文献1)では、加圧溶解部と貯留タンクとを接続した第1循環路、および、貯留タンクと水槽とを接続した第2循環路を備え、第1循環路を循環する培養液を減圧ノズルにより噴出することで、貯留タンクの培養液中に直径1μm未満のナノスケールの微細気泡を供給する構成が開示されている。
【0004】
特開2014-57号公報(特許文献2)では、培養液パンに収容された培養液を循環させる循環経路に第1のナノバブル供給装置を設け、水の補給経路に第2のナノバブル供給装置を設ける構成が開示されている。また、循環経路に、培養液パンから流出した培養液を濾過する濾過槽(物理濾過または生物濾過)を設け、濾過槽を通過した培養液をナノバブル添加タンクに送ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-039500号公報(特許第5892744号)
【特許文献2】特開2014-57号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1では、第1循環路と第2循環路とが個別に設けられているため、水槽に戻される液体の水質を良好に保つことが困難である。
【0007】
また、引用文献2では、一つの循環経路に、濾過槽およびナノバブル添加タンクが設けられているが、別途、水の補給経路が設けられており、より効率的に水耕栽培ベッド(培養液パン)の液体を再利用する技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、水耕栽培ベッドの液体を効率的に再利用することのできる循環式水耕栽培システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従う循環式水耕栽培システムは、水耕栽培ベッドと、水耕栽培ベッドの排水口に一端が接続された第1流路と、第1流路の他端に接続され、第1流路を通過した水に含まれる有機物を無機物に還元する生物濾過槽と、生物濾過槽の排水口に一端が接続され、他端が水耕栽培ベッドに接続された第2流路とを備え、第1流路および第2流路の少なくとも一方に、微細気泡発生器が設けられている。
【0010】
好ましくは、微細気泡発生器が、第1流路および第2流路の両方に設けられている。
【0011】
第1流路の微細気泡発生器は、循環水に気体を供給するための気体供給手段を有していることが望ましい。第2流路の微細気泡発生器は、キャビテーション方式によって微細気泡を発生させることが望ましい。
【0012】
好ましくは、微細気泡発生器は、x軸方向に延びる上流管および下流管の間に位置し、x軸に交差するy軸方向に円弧状に膨出するケーシングと、ケーシングの内側面との間に、上流側から下流側に向かう水の高速流路となる隙間をあけて配置され、x軸およびy軸に交差するz軸方向に延びる円柱形状のコマ部材とを備え、コマ部材は、x軸およびy軸で区画される4つの扇形領域のうち、下流側に位置する2つの扇形領域の外周部に、隙間を通過した水を引き込んで旋回流を発生させる切欠き部を有している。
【0013】
あるいは、微細気泡発生器は、上流側と下流側とを結ぶ流路形成空間を有するケーシングと、流路形成空間の内面に設けられ上流側から下流側に向かって縮径する第1テーパ部と、流路形成空間の内面の第1テーパ部よりも下流側に設けられ上流側から下流側に向かって拡径する第2テーパ部と、第1テーパ部及び第2テーパ部に対向して配置される上流側部材と、上流側部材よりも下流側に配置される下流側部材とを備え、上流側部材は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部を備えて、第1テーパ部との間で第1流路部を、第2テーパ部との間で第2流路部を構成し、下流側部材は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部を備えて、第2テーパ部との間で第4流路部を構成し、第2流路部と第4流路部との間に、第2流路部及び第4流路部よりも流路の断面積が大きく流路内に負圧を発生させる第3流路部を備えている。
【0014】
好ましくは、第2流路には、生物濾過槽の下流側に間に吸着槽が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水耕栽培ベッドの液体を効率的に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る循環式水耕栽培システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の外観を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるコマ部材を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態におけるコマ部材が有する下流側の扇形領域を拡大して示す平面図である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるケーシングの構成を模式的に示す分解図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の内部の圧力分布を模式的に示す流跡図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る微細気泡発生器の内部の水の流れを模式的に示す流跡図である。
【
図10】比較例1のコマ部材の形状および解析結果を模式的に示す図である。
【
図11】比較例2のコマ部材の形状および解析結果を模式的に示す図である。
【
図12】比較例3のコマ部材の形状および解析結果を模式的に示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係るコマ部材を対象とした解析結果(給気なし)を模式的に示す図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係るコマ部材を対象とした解析結果(給気あり)を模式的に示す図である。
【
図15】微細気泡発生器の他の構成例1を示す図である。
【
図16】微細気泡発生器の他の構成例2を示す図である。
【
図17】本発明の実施の形態2に係る循環式水耕栽培システムの構成を模式的に示す図である。
【
図18】本発明の実施の形態2の濾過装置における液体の流れを模式的に示す縦断面図である。
【
図19】本発明の実施の形態2の濾過装置の前室における液体の流れを模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
[実施の形態1]
<構成について>
はじめに、
図1を参照して、本実施の形態に係る循環式水耕栽培システム(以下「水耕栽培システム」と略す)SYSの構成について説明する。水耕栽培システムSYSは、水耕栽培ベッドBDに収容された液体(以下「水」という)を循環させて植物を栽培するシステムである。
【0019】
水耕栽培システムSYSは、主に、水耕栽培ベッドBDと、水耕栽培ベッドBDの排水口に一端が接続された第1流路1010と、第1流路1010の他端に接続され、第1流路1010を通過した水に含まれる有機物を無機物に還元する生物濾過槽1020と、生物濾過槽1020の排水口に一端が接続され、他端が水耕栽培ベッドBDに接続された第2流路1030とを備えている。つまり、水耕栽培ベッドBD、第1流路1010、生物濾過槽1020、および第2流路1030により、1つの循環経路が形成されている。
【0020】
生物濾過槽1020は、有機物であるバクテリアを濾過材1021として含み、バクテリアの力を借りて水Wに含有する微生物を除去する。本実施の形態では、生物濾過槽1020の上流側に位置する第1流路1010、および、生物濾過槽1020の下流側に位置する第2流路1030のそれぞれに、微細気泡発生器1015,1037が設けられている。「微細気泡」とは、いわゆるファインバブル(登録商標)であり、粒子径がマイクロスケールまたはナノスケールの気泡を表わす。
【0021】
(第1流路の構成例)
図1に示されるように、第1流路1010の途中位置に、循環槽1012が設けられていることが望ましい。この場合、第1流路1010は、水耕栽培ベッドBDから排水される水を循環槽1012に送り込むメイン流路1011と、循環槽1012の水の一部をメイン流路1011に戻す戻り路1013と、循環槽1012の水の一部を生物濾過槽1020に送る送出流路1016とを含む。循環槽1012はたとえば定量タンクであり、定量を越えた水が戻り路1013に流出(オーバーフロー)する。後述の循環槽1034も同様の構成であってよい。
【0022】
メイン流路1011に、ポンプ1014および微細気泡発生器1015が設けられている。微細気泡発生器1015はポンプ1014と循環槽1012との間に設けられている。送出流路1016に、循環槽1012から送出する水量を調整する絞り弁1017が設けられている。
【0023】
微細気泡発生器1015は、たとえばキャビテーション方式によって微細気泡を発生させる。これにより、メイン流路1011を通る水の除菌が行われる。なお、「除菌」とは、菌を除去すること、および、菌を減少させること、の双方の意味を含む。微細気泡発生器1015から放出される微細気泡を含有した水(つまり、除菌後の水)が、循環槽1012に送られる。
【0024】
循環槽1012内の水は、少量ずつ、送出流路1016を介して生物濾過槽1020に送られる。このように、本実施の形態では、水耕栽培ベッドBDから排水される水(循環水)は、微細気泡発生器1015による一次除菌が行われた後、生物濾過槽1020において二次除菌が行われる。
【0025】
(第2流路の構成例)
第2流路1030には、吸着槽1032および循環槽1034がこの順序で設けられていることが望ましい。第2流路1030は、生物濾過槽1020と吸着槽1032とをつなぐ流路1031と、吸着槽1032を通過した水を循環槽1034に送り込むメイン流路1033と、循環槽1034の水の一部をメイン流路1033に戻す戻り路1035と、循環槽1034の水の一部を水耕栽培ベッドBDに送る送出流路1038とを含む。
【0026】
メイン流路1033に、ポンプ1036および微細気泡発生器1037が設けられている。微細気泡発生器1037はポンプ1036と循環槽1034との間に設けられている。送出流路1038に、循環槽1034から送出する水量を調整する絞り弁1039が設けられている。
【0027】
吸着槽1032は、たとえば活性炭1041を用いた物理濾過槽により構成されている。活性炭1041は、炭素物質を原料とし、微細孔(1~200nm)をもつ吸着材である。吸着槽1032では、活性炭1041の固体表面からの引力により、水に含まれる分子が個体表面に吸着される。活性炭1041は、吸着した物質(異物)を分解濾過し、吸着能力を自然回復させる効果があるため、活性炭1041を用いた物理吸着槽とすることで、水質劣化を防ぐことができる。なお、吸着槽1032は、物理吸着により異物を除去する構成が望ましいものの、化学吸着によって異物を除去する構成であってもよい。
【0028】
微細気泡発生器1037もまた、たとえばキャビテーション方式によって微細気泡を発生させ、微細気泡を含有した水を生成する。微細気泡発生器1037から放出される微細気泡を含有した水(つまり、除菌後の水)が、循環槽1034に送られる。
【0029】
循環槽1034内の水は、少量ずつ、送出流路1038を介して水耕栽培ベッドBDに送られる。このように、本実施の形態では、生物濾過槽1020において二次除菌が行われた後、吸着槽1032による三次除菌、および、微細気泡発生器1037による最終(四次)除菌が行われる。これにより、水質改善された良好な水を、水耕栽培ベッドBDに供給する(戻す)ことができる。
【0030】
<水質改善方法の具体例について>
次に、
図1を参照しながら、水耕栽培システムSYSによる水質改善方法について具体的に説明する。
【0031】
水耕栽培システムSYSは、図示しない駆動制御手段がポンプ1014,1036を駆動することによって作動する。作動開始時においては、第1流路1010のポンプ1014を第2流路1030のポンプ1036よりも先に駆動してもよい。
【0032】
水耕栽培システムSYSの作動が開始すると、水耕栽培ベッドBDからオーバーフローした水が、第1流路1010のメイン流路1011へと流れる。メイン流路1011に取り込まれた水は、微細気泡発生器1015に供給される。本実施の形態では、微細気泡発生器1015の直前にポンプ1014が設けられているので、微細気泡発生器1015に供給する水の水圧を調整する(所望の水圧とする)ことができる。
【0033】
微細気泡発生器1015において生成された微細気泡を含有した水は、循環槽1012に貯留され、一定量を超えると戻り路1013からメイン流路1011に戻される。これにより、戻り路1013に戻された水は微細気泡発生器1015を再び通るので、水耕栽培ベッドBDから排出された水を効率良く除菌することができるとともに、生物濾過槽1020に多くの微細気泡を含んだ水を供給することができる。
【0034】
循環槽1012に貯留された水(微細気泡を含む水)の一部が、送出流路1016を介して、大気圧雰囲気下の生物濾過槽1020に流入する。流入した水Wは、生物濾過槽1020の濾過材1021を通過することにより、水Wに含まれていた有機物が無機物に変換され、除菌される。このようにして除菌された水は、第2流路1030の流路1031へと排出される。
【0035】
ここで、生物濾過槽1020の上流側に位置する微細気泡発生器1015は、気体(典型的には空気)を供給するための気体供給手段1018を有していることが望ましい。つまり、第1流路1010には、吸気方式を採用した微細気泡発生器1015を配置することが望ましい。この場合、生物濾過槽1020に、多くの酸素を含む水を供給することができるので、生物濾過槽1020内のバクテリアの働きを活性化させることができる。その結果、生物濾過槽1020による濾過効果を良好に維持することができる。
【0036】
生物濾過槽1020により生物濾過された水は、流路1031を介して吸着槽1032に送られる。吸着槽1032において、生物濾過槽1020で除去し切れなかった有機物や、水に含まれる硝酸塩が除去される。吸着槽1032を通過した水は、メイン流路1033に排出される。吸着槽1032を通過してメイン流路1033に流出した水は、微細気泡発生器1037に供給される。第2流路1030においても、微細気泡発生器1037の直前にポンプ1036が設けられているので、微細気泡発生器1037に供給する水の水圧を調整することができる。
【0037】
微細気泡発生器1037において生成された微細気泡を含有した水は、循環槽1034に貯留され、一定量を超えると戻り路1035からメイン流路1033に戻される。これにより、戻り路1035に戻された水は微細気泡発生器1037を再び通るので、生物濾過槽1020において発生し得る藻類(青子)などの菌を確実に圧死させることができる。
【0038】
循環槽1034に貯留された水(微細気泡を含む水)の一部が、送出流路1038を介して水耕栽培ベッドBDに供給される。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、水耕栽培ベッドBDにつながる新たな水の供給経路や、循環水中に残存する硝酸塩等を除去するための排水設備を必要することなく、水耕栽培に使用する水の浄化を行うことができる。つまり、自然ループで、水耕栽培ベッドBDに供給する水を良好に維持することができる。また、長期間に亘り、少ない電力量で水質を維持することができる。
【0040】
このような水耕栽培システムSYSによれば、水不足地域や、水質が悪い環境下においても、作物育成が可能になる。また、排水設備を必要としないので、設備を小型化できるとともに、設備投資に必要なコストを抑えることができる。以上より、本実施の形態によれば、環境問題への配慮が行き届いた水耕栽培システムSYSを提供することができる。
【0041】
<微細気泡発生器の構成例>
微細気泡発生器1015,1037の構成例について説明する。本実施の形態では、微細気泡発生器1015,1037の両方が、特願2022-201146号の出願明細書に記載の微細気泡発生器により構成されている。この微細気泡発生器の具体的な構成例について、以下に説明する。
【0042】
(概略構成)
図2~
図4を参照して、本実施の形態に係る微細気泡発生器1の概略構成について説明する。
図2は、微細気泡発生器1の外観を示す斜視図であり、
図3は、
図2のIII方向から見た側面図である。
図4は、微細気泡発生器1の断面図であり、
図3のIV-IV線に沿って切断した断面を示す。
【0043】
微細気泡発生器1は、主に、上流管91および下流管92の間に位置するケーシング2と、ケーシング2の内部に設けられたコマ部材3とを備えている。上流管91および下流管92は典型的には円筒形状であり、同軸配置されている。
図2等に示すx軸は、上流管91および下流管92の長手方向(軸線方向)に一致しており、x軸の正方向が液体(以下「水」という)の上流側を示している。なお、上流管91および下流管92も、微細気泡発生器1の構成要素であってもよい。
【0044】
ケーシング2は、上流管91および下流管92に接続された円筒部21と、円筒部21の軸線O方向一端の開口を塞ぐ蓋部23と、円筒部21の軸線O方向他端の開口を塞ぐ底部22とにより構成されている。
【0045】
円筒部21は、x軸に交差する「y軸方向」に円弧状に膨出するように配置されている。具体的には、円筒部21は、x軸およびy軸に交差する「z軸方向」に延び、かつ、円筒部21の内径d2が、上流管91および下流管92の内径d3よりも大きい。平面視における円筒部21の概略形状は、典型的には真円形状である。なお、「交差」とは、典型的には直交を表わすものの、多少のずれは許容されるものとする。
【0046】
以下の説明では、理解を容易にするために、x軸方向を「流れ方向」、y軸方向を「幅方向」または「左右方向」、z軸方向を「上下方向」または「高さ方向」ともいう。
図2等において、z軸の正方向が上方を示しているものとする。y軸の正方向は、下流側から円筒部21を見て右側(幅方向一方側)を示す。
【0047】
図4を参照して、円筒部21は、上流管91および下流管92の流路(開口部)910,920と重なる部分21aがくり抜かれており、ケーシング2の内部空間20と流路910,920とが互いに連通している。円筒部21の残部21bが、上流管91および下流管92の端面とネジ固定や溶着等により接続されている。残部21bによって、円筒部21の内部空間20が区画されている。具体的には、内部空間20は、幅方向両側に位置する残部21bの内側面、すなわち、一対の内側円弧面212により区画されている。
【0048】
内部空間20の上流側には、一対の上流側内側面213に区画された導入路24が設けられ、内部空間20の下流側には、一対の下流側内側面214に区画された放出路25が設けられている。一対の上流側内側面213は、互いに平行であり、上流管91の内径d3分離れている。同様に、一対の下流側内側面214は、互いに平行であり、下流管92の内径d3分離れている。内側円弧面212の流れ方向両端部が、上流側内側面213および下流側内側面214に接続されている。なお、上流管91の内径寸法と下流管92の内径寸法とは、同一である場合に限定されず、互いに異なっていてもよい。
【0049】
底部22は、接着剤等により円筒部21に接着されていてもよいし、円筒部21と一体形成されていてもよい。蓋部23は、
図7に示されるように、円筒部21に対して着脱自在であることが望ましい。これにより、コマ部材3の交換を容易に行うことができる。このように、コマ部材3は、ケーシング2に対して着脱可能に設けられていることが望ましい。
【0050】
コマ部材3は、円筒部21と同軸に配置された円柱形状の部材である。つまり、コマ部材3の軸線(中心線)は、円筒部21の軸線Oと一致する。平面視におけるコマ部材3の概略形状は、典型的には真円形状である。コマ部材3は、円筒部21の内部空間20に嵌め入れられている。コマ部材3の直径(外径)d1は、円筒部21の内径d2よりも小さく、コマ部材3は、一対の内側円弧面212との間に、隙間11をあけて配置されている。すなわち、導入路24と放出路25との間に、上流側から下流側に向かう水の高速流路となる隙間11が、幅方向両側に設けられている。
【0051】
隙間11は、一対の内側円弧面212とコマ部材3の外周面との間に、一定幅で円弧状に設けられている。隙間11の幅は、たとえば、円筒部21の半径(「d2」/2)の1/7以上1/9以下であり、一例として1/8程度である。この場合、コマ部材3の直径d1は、一例として円筒部21の内径d2の7/8程度である。一対の隙間11は、導入路24から左右に分岐するように設けられ、下流端で放出路25に合流する。
【0052】
コマ部材3の直径d1は、上流管91(および下流管92)の内径d3よりも大きいことが望ましい。これにより、後述するように、導入路24から水が隙間11へ導かれる際に遠心力が働く。
【0053】
(コマ部材の構成)
図5を参照して、コマ部材3の構成例について説明する。
図5(A),(B)はそれぞれ、コマ部材3の斜視図および平面図(上面図)である。
図5(B)には、組み立て状態(使用状態)におけるケーシング2の内側面(一対の上流側内側面213、一対の内側円弧面212、一対の下流側内側面214)の位置が想像線で示されている。
【0054】
図5(B)を参照して、コマ部材3は、平面視において(軸線O方向に見て)x軸およびy軸で区画される4つの扇形領域301~304により構成される。扇形領域301,302はy軸よりも上流側に位置し、扇形領域303,304はy軸よりも下流側に位置している。コマ部材3は、下流側の扇形領域303,304の外周部に、内径側に窪ませた切欠き部(凹部)31,32を有している。切欠き部31,32は、コマ部材3の上端縁から下端縁まで貫通して上下方向に延びている。切欠き部31,32によって、一対の隙間11および放出路25に連通する負圧空間S1,S2が形成される。
【0055】
切欠き部31,32は、x軸を中心とし左右対称に設けられている。切欠き部31は、隣接する扇形領域302,304にはみ出ることなく、x軸およびy軸の両方から離れて配置されている。切欠き部32も同様に、隣接する扇形領域301,303にはみ出ることなく、x軸およびy軸の両方から離れて配置されている。
【0056】
切欠き部31,32の内壁面33,34は、円弧状の凹面をもつ曲面形状であることが望ましい。本実施の形態では、
図5(A)に示すように、内壁面33は、曲率半径の異なる2つの円弧面331,332と、2つの円弧面331,332を滑らかに接続する接続面333とを含む。内壁面34も同様である。切欠き部31,32の内壁面33,34の形状については、
図6を参照して説明する。
図6は、扇形領域303を拡大して示す平面図であり、扇形領域303をハッチングで示している。
【0057】
切欠き部31の内壁面33は、上流側に位置する円弧面331と、下流側に位置する円弧面332と、これらの円弧面331,332の間に位置する接続面333とを含む。円弧面331は、内壁面33の上流側端縁P1を含む位置に設けられ、円弧面332は、内壁面33の下流側端縁P2を含む位置に設けられている。下流側端縁P2は、隙間11から流出した水流を受け入れて、円弧面331,332を含む凹面に導く位置に設けられている。上流側端縁P1は、内壁面33の凹面に沿って流れる旋回流を下流管92に向かって導く位置に設けられている。
【0058】
本実施の形態では、上流側の円弧面331の曲率半径r1は、下流側の円弧面332の曲率半径r2よりも小さい。曲率半径r1は、たとえば曲率半径r2の0.5以上0.7以下である。円弧面331を規定する仮想円(真円)C1の中心O1、および、円弧面332を規定する仮想円(真円)C2の中心O2は、コマ部材3の外周円(想像線で示す)よりも内側(軸線O側)に位置していることが望ましい。これにより、切欠き部31の内部空間(すなわち負圧空間S1)は、上流側端縁P1と下流側端縁P2との間の出入口Seの幅(開口幅)よりも広がりをもった空間とされる。
【0059】
本実施の形態では、円弧面332を規定する仮想円C2は、コマ部材3の外周円から一部がはみ出ている。一方、円弧面331を規定する仮想円C1は、略全体がコマ部材3の外周円の内側に位置している。そのため、上流側端縁P1を頂点とする先鋭部35の方が、下流側端縁P2を頂点とする先鋭部36よりも尖った形状となっている。
【0060】
接続面333は、2つの円弧面331,332に外接する外接仮想円C3の円弧面により規定されている。そのため、2つの円弧面331,332と接続面333とにより構成される内壁面33の全体は、変形した円弧状凹面となっている。外接円C3の半径r3は、コマ部材3の半径(直径d1/2)を1とすると、たとえば0.4~0.6の比率で定められ、一例として0.5程度である。なお、図示される例では、仮想円C3の中心O3が、コマ部材3の外周円上に位置している。
【0061】
図4および
図5(B)に示されるように、組み立て状態において、切欠き部31の上流側端縁P1は、円筒部21(残部21b)の内側円弧面212と幅方向に対面する位置に位置している。そのため、幅方向(y軸方向)における上流側端縁P1の位置は、円筒部21の上流側内側面213および下流側内側面214の位置よりも外側方にある。これに対し、切欠き部31の下流側端縁P2は、円筒部21の下流側内側面214と幅方向に対面する位置に位置している。そのため、幅方向(y軸方向)における下流側端縁P2の位置は、円筒部21の上流側内側面213および下流側内側面214の位置よりも内側方にある。つまり、下流側端縁P2は、下流管92の流路920の幅内に位置する。
【0062】
なお、
図6(B)に拡大して示すように、上流側の先鋭部35の先端の一部、すなわち上流側端縁P1を含む部分35aが切り落とされ、上流側端縁P1´と円弧面331との間に(たとえば直線状の)切断面334が設けられていてもよい。この場合、上流側端縁P1´は、円弧面331を規定する仮想円C1の外側に位置する。これにより、圧力回復を抑制することができる。一例として、上流側端縁P1´は、下流側の円弧面332を規定する仮想円C2と交差する位置に設けられている。
【0063】
再び
図5を参照して、コマ部材3はまた、軸線O(z軸)を中心とする中心孔30と、中心孔30から左右両側の隙間11に向かって半径方向に延びる複数の横孔37とを有している。中心孔30は、コマ部材3を上下方向に貫通して真っすぐ延びている。
図2に示す流体供給ノズル5から供給される流体が中心孔30に吸入され、中心孔30から横孔37を通って隙間11に吐出される(吸引される)。流体は、気体および液体のいずれであってもよい。本実施の形態において横孔37は、上下方向に間隔をあけて複数個設けられている。なお、横孔37は少なくとも1つ設けられていればよい。
【0064】
図5(B)に示すように、横孔37は、下流側に若干傾斜して幅方向に延びている。具体的には、紙面右側に位置する横孔37は、扇形領域303の切欠き部31の上流側部分を横断するように半径方向に延びている。紙面左側に位置する横孔37は、扇形領域304の切欠き部32の上流側部分を横断するように半径方向に延びている。一例として、横孔37とy軸とのなす角度θは、5°~15°程度である。なお、横孔37は、y軸上を真っ直ぐ延びていてもよい。
【0065】
(添加剤供給手段)
本実施の形態に係る微細気泡発生器1は、
図2に示すように、中心孔30に挿入され、コマ部材3の固定手段を兼ねる流体供給管4をさらに備えている。流体供給管4は、流体供給ノズル5とともに添加剤供給手段を構成する。
【0066】
流体供給管4は、ケーシング2の底部22および蓋部23を貫通して上下方向に突出する。あるいは、底部22および蓋部23の一方のみを貫通してもよい。流体供給管4の上端に、流体供給ノズル5の一端が装着可能である。流体供給ノズル5の他端には、開度を調整可能なバルブ(図示せず)が設けられている。バルブを開状態とすると、流体供給ノズル5から流体供給管4に流体が供給される(吸引される)。バルブを全閉状態とすると、流体供給ノズル5から流体供給管4への流体供給が阻止される。
【0067】
図7に示されるように、流体供給管4は、たとえば、外周面にネジが切られた中空のボルトにより構成されている。流体供給管4の長手方向中央部には、コマ部材3の横孔37に対応する位置に、貫通孔41が設けられている。
【0068】
流体供給ノズル5から気体(空気、酸素ガス等)を供給する場合、バルブを開状態とすることで、気体が流体供給管4に吸引され、流体供給管4の貫通孔41から横孔37を通過して隙間11へと引き込まれる。これにより、切欠き部31,32内の旋回流に気体が連行され、水に供給(添加)される。流体供給ノズル5から液体(添加剤)を供給する場合も同様である。微細気泡発生器1が「気体供給モード」で動作し、吸気方式を兼ねる場合、微細気泡発生器1は、酸素等を溶解した水を放出することができる。微細気泡発生器1が「気体供給モード」で動作する形態における流体供給ノズル5および流体供給管4が、水耕栽培システムSYSの気体供給手段1018を構成する。
【0069】
図7に示したように流体供給管4をボルトとすることで、次の手順で微細気泡発生器1を組み立てることができる。まず、流体供給管4の下端部をケーシング2の底部22の貫通孔220に通して仮固定し、流体供給管4を中心孔30に通すようにしてコマ部材3(
図7において不図示)を円筒部21の内部空間20に挿入する。その状態で、蓋部23の貫通孔230に流体供給管4の上端部を通すようにして、蓋部23を円筒部21の上端に装着する。最後に、ナット42で締め付ける。これにより、コマ部材3は、円筒部21と同軸に位置決めされ、底部22と蓋部23とに上下方向に挟持される。コマ部材3の上端面および下端面は、それぞれ蓋部23の下面および底部22の上面に面接触する。
【0070】
<微細気泡発生方法>
図4および
図5を参照しながら、微細気泡発生器1による微細気泡発生方法について説明する。
【0071】
図4および
図5(B)に示されるように、上流管91から導入路24に導入された水は、コマ部材3の上流側の円弧面に突き当たると、この円弧面に沿って幅方向(y軸方向)両側に位置する円弧状の隙間11へと分岐し、流速が高速化する。隙間11に流入した水は、遠心力によりさらに速度を上げて下流側へ流れる。隙間11に流入した水が、切欠き部31,32の上流側端縁P1を過ぎると、遠心力を伴ったまま、切欠き部31,32内に引き込まれ、高速の旋回流を発生する。隙間11から切欠き部31,32へと流路が急激に拡大することにより、切欠き部31,32内において負圧が生じ、キャビテーションによる微細気泡が発生する。
【0072】
隙間11から切欠き部31,32内へと水が引き込まれる際、下流側端縁P2を含む先鋭部36の内側面(下流側円弧面332の端部)で水流を受けて、変形した円弧状凹面である内壁面33に沿って水を流動させることにより、遠心力が生じる。したがって、切欠き部31,32の中心部付近を軸とする規則性のある、高速の旋回流が発生する。これにより、旋回流による気相分離を促進することができる。
【0073】
このように、本実施の形態によれば、コマ部材3に切欠き部31,32を設けることにより、キャビテーションと、無動力の旋回流とにより、効率良く微細気泡を発生させることができる。
【0074】
ここで、内壁面33の形状に関し、
図6(A)に示したように、上流側の円弧面331の曲率半径が下流側の円弧面332の曲率半径よりも小さいので、切欠き部31,32に引き込まれた水がすぐに放出路25へと放出されることを抑制できる。そのため、本実施の形態によれば、切欠き部31,32内において効率的に高速の旋回流を発生させることができる。その結果、切欠き部31、32においてナノスケールの微細気泡を発生させることができる。
【0075】
図8には、シミュレーションによる微細気泡発生器1内の流路の圧力分布が、水流とともに示されている。
図8では、圧力の大小が、流跡矢印の濃淡で示されている。切欠き部31,32の部分で矢印が最も濃くなっており、この部分において飽和水蒸気圧以下の圧力が発生している。
図8には、上流管91から「305,492Pa」の圧力で水を導入するケースにおける各部の圧力解析結果が数値で示されている。
【0076】
図8には、微細気泡発生器1内に生じる水流が、流跡線で示されている。
図8に示されるように、切欠き部31,32の部分で柱状の旋回流が生じている。
【0077】
(比較例について)
本実施の形態におけるコマ部材3の作用効果を、比較例を用いて説明する。
図10~
図12はそれぞれ比較例1~3に対応しており、各図において、(A)に、コマ部材の形状、(B)に、解析条件を共通として圧力分析を行った際の流跡が示されている。また、
図13は、本実施の形態に係るコマ部材3を対象とし、
図10~
図12(B)と同じ解析条件で圧力分析を行った際の流跡が示されている。なお、
図10~
図13においては、流跡矢印の濃淡と圧力の大小とは一致していない。
【0078】
比較例1のコマ部材3Aの切欠きパターンは、
図10(A)に示すように、切欠き部31A,32Aが、y軸を跨ぐ位置に設けられたパターンである。つまり、紙面右側の2つの扇形領域302,303に跨がるように切欠き部31Aが設けられ、紙面左側の2つの扇形領域301,304に跨がるように切欠き部32Aが設けられている。また、切欠き部31A,32Aの各内壁面は1つの円弧面により形成されている。
【0079】
比較例2のコマ部材3Bの切欠きパターンは、
図11(A)に示すように、切欠き部31B,32Bが、本実施の形態のコマ部材3と同様に扇形領域303,304に設けられているが、切欠き部31B,32Bの内壁面が1つの円弧面で形成されたパターンである。
【0080】
比較例3のコマ部材3Cの切欠きパターンは、
図12(A)に示すように、切欠き部31C,32Cが、本実施の形態のコマ部材3と同様に扇形領域303,304に設けられているが、切欠き部31C,32Cの内壁面を構成する2つの円弧面の曲率半径の大小を、本実施の形態の切欠き部31,32における2つの円弧面331、332の曲率半径の大小と逆にしたパターンである。
【0081】
解析条件として、水の温度を20℃とし、上流側圧力を「271,325Pa」、飽和水蒸気圧を「2,340Pa」とした。この条件で、各例についてシミュレーションを行うと、比較例1~3および実施例における最低圧力および旋回流圧力は、次の通りの結果となった。実施例は、本実施の形態のコマ部材3を使用した場合の解析例を示す。
・比較例1:最低圧力「55,794Pa」、旋回流圧力「約164,000Pa」
・比較例2:最低圧力「49,236Pa」、旋回流圧力「約50,000Pa」
・比較例3:最低圧力「28,481Pa」、旋回流圧力「約30,000Pa」
・実施例:最低圧力「-19,707Pa」、旋回流圧力「約1,300~22000Pa」
上記のように、比較例1~3はいずれも飽和水蒸気圧に達していない。実施例のみが、飽和水蒸気圧に達している。この結果は、各例の流跡図からも想定可能となっている。たとえば
図11(B)に示す比較例2の切欠きパターンでは、実施例の切欠きパターンよりも旋回流の厚みが薄い。
図12(B)に示す比較例3の切欠きパターンでは、実施例の切欠きパターンよりも旋回流の指向性にバラツキがある。
【0082】
これらの比較結果から、本実施の形態におけるコマ部材3は、ナノスケールの微細気泡を発生させるために有効であることが分かる。なお、微細気泡発生器1の用途等に応じて、コマ部材の切欠きパターンを、比較例1~3のようなパターンとしてもよい。つまり、ケーシング2内に、上述のコマ部材3A,3B,3Cを取り付けてもよい。
【0083】
参考例として、
図14に、本実施の形態に係るコマ部材3を対象とし、添加剤供給手段を介して気体を取り込む「気体供給モード」で圧力分析を行った際の流跡を示す。この場合の最低圧力は「-2,083Pa」、旋回流圧力は「約-2,084~17,000Pa」となった。このことから、「気体供給モード」で微細気泡発生器1を作動させることにより、圧力回復を図ることが可能である。その結果、隙間11での壊食を防止することができる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態に係る微細気泡発生器1は、x軸方向に延びる上流管91および下流管92の間に位置し、y軸方向に円弧状に膨出するケーシング2と、ケーシング2の内側面との間に、上流側から下流側に向かう水の高速流路となる隙間11をあけて配置され、z軸方向に延びる円柱形状のコマ部材3とを備えている。また、コマ部材3は、x軸およびy軸で区画される4つの扇形領域301~304のうち、下流側に位置する2つの扇形領域303,304の外周部に、隙間11を通過した水を引き込んで旋回流を発生させる切欠き部31,32を有している。
【0085】
本実施の形態によれば、ケーシング2内に、ケーシング2とは別体のコマ部材3を収容するだけの簡易な構成で、効率良く微細気泡を発生させることができる。また、その結果、コマ部材3の交換が容易になるので、様々な種類のコマ部材をケーシング2に取り付けることができる。また、微細気泡発生器1のメンテナンスを容易に行うこともできる。
【0086】
なお、本実施の形態では、平面視におけるコマ部材3の概略形状が真円形状である例を示したが、このような例に限定されず、たとえば楕円形状であってもよい。同様に、ケーシング2の円筒部21の平面形状が真円形状であることとしたが、たとえば楕円形状であってもよい。
【0087】
また、添加剤供給手段が必要ない形態においては、コマ部材3に中心孔30および横孔37が設けられていなくてもよい。
【0088】
<微細気泡発生器の他の構成例>
微細気泡発生器1015,1037は、気体の供給を必須としない場合、特願2022-055793号の出願明細書に記載の微細気泡発生器により構成されていてもよい。この微細気泡発生器の具体的な構成例1,2について、以下に説明する。以下の構成例1,2の示す微細気泡発生器は、気体供給手段を有していないので、第2流路1030側の微細気泡発生器1037に好適である。
【0089】
(他の構成例1)
図15は、微細気泡発生器の他の構成例1を示す図であり、(A),(B)に、微細気泡発生器1Aの断面図および斜視図を示す。
【0090】
微細気泡発生器1Aは、その内部に上流側と下流側とを結ぶ流路形成空間2000を有するケーシング2011を、上流管91と下流管92との間に介在させることによって、容易に設置することができる。
【0091】
ケーシング2011は、水の流れ方向に沿って、上流側から下流側に向かって縮径する第1テーパ部2012と、上流側から下流側に向かって拡径する第2テーパ部2015を備えている。第2テーパ部2015は第1テーパ部2012よりも下流側に設けられ、第1テーパ部2012と第2テーパ部2015との間は、内径側へ向かって(流路の軸心側へ向かって)鈍角状に突出する稜線部2018となっている。稜線部2018は、軸心を通る任意の縦断面において、滑らかな円弧状である。この第1テーパ部2012、稜線部2018、及び、第2テーパ部2015によって、流路形成空間2000の内面を構成している。なお、流路形成空間2000の軸心方向両端部は、上流管91及び下流管92の各流路910,920の内面に連続する円筒面2016,2017となっている。
【0092】
この流路形成空間2000内に、内部部材2020が配置されている。この実施形態では、内部部材2020をケーシング2011とは別体の部材として成型した上で、その内部部材2020を、接着等の周知の手法でケーシング2011に一体に固定しているが、これを、ケーシング2011と一体の部材として成型してもよい。
【0093】
内部部材2020は、第1テーパ部2012及び第2テーパ部2015に対向して配置される上流側部材2030と、上流側部材2030よりも下流側に配置される下流側部材2040とを備えている。上流側部材2030は、第1テーパ部2012から第2テーパ部2015にかけて跨って対向配置されているが、下流側部材2040は、第2テーパ部2015のみに対向して配置されている。また、上流側部材2030と下流側部材2040とは連結部2035で連結されている。連結部2035は、第2テーパ部2015のみに対向して配置されている。
【0094】
上流側部材2030は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する上流側外周テーパ部2031と、その上流側外周テーパ部2031の裾部を閉じる下流側端面2033を備えた円錐状の部材である。上流側外周テーパ部2031の先端(上流側端部)2032は、先鋭な形状となっている。ただし、この先端2032の形状を滑らかな球面状としてもよい。この実施形態では、上流側外周テーパ部2031は、上流側部材2030の先端2032から下流側端面2033の外縁まで続く、単一勾配の円錐面(テーパ面)となっている。上流側外周テーパ部2031の上流寄りの部分は、それに対向する第1テーパ部2012との間で第1流路部2051を構成している。上流側外周テーパ部2031の下流寄りの部分は、それに対向する第2テーパ部2015との間で第2流路部2052を構成している。この実施形態では、第2テーパ部2015と第2流路部2052とは、その母線同士が互いに平行になるように設定されている。
【0095】
第1流路部2051は、流路の流れ方向に沿って徐々に縮径する第1テーパ部2012と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する上流側外周テーパ部2031との間で、しだいに流路の断面積が縮小する形態となっている。また、第2流路部2052は、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する第2テーパ部2015と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する上流側外周テーパ部2031との間で、流れ方向に沿ってやや流路の断面積が拡大する形態となっている。第2テーパ部2015の母線と上流側外周テーパ部2031の母線とは平行であるが、その間の流路を構成する空間の位置が、流れ方向に沿って徐々に外径側へ移動するからである。
【0096】
下流側部材2040は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部2043と、その下流側外周テーパ部2043の裾部を閉じる下流側端面2045、下流側外周テーパ部2043の上流側端部に設けられる上流側端面2042を備えた円錐台状の部材である。この実施形態では、下流側外周テーパ部2043は、下流側部材2040の上流側端から下流側端まで続く、単一勾配の円錐面(テーパ面)となっている。また、その下流側外周テーパ部2043の周方向に沿って、断続的に複数の保持部2044が設けられている。下流側外周テーパ部2043は、それに対向する第2テーパ部2015との間で第4流路部2054を構成している。第4流路部2054は、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する第2テーパ部2015と、流路の流れ方向に沿って徐々に拡径する下流側外周テーパ部2043との間で、流れ方向に沿ってやや流路の断面積が拡大する形態となっている。第2テーパ部2015の母線と下流側外周テーパ部2043の母線とは平行であるが、その間の流路を構成する空間の位置が、徐々に外径側へ移動するからである。ただし、第4流路部2054は、周方向に沿って断続的に設けられた複数の保持部2044によって、複数の流路部に分断されている。
【0097】
保持部2044は、
図15(A),(B)に示すように、流れ方向に沿って円弧状に伸びる側面2044aを対に備え、その側面2044a,2044a同士がつながる上流側端2044cが鋭角状に形状された舟形を成している。これにより、流体の流れを阻害しないようになっている。なお、この実施形態では、保持部2044の下流側端も鋭角状を成している。保持部2044の頂面2044bは第2テーパ部2015に当接して、下流側部材2040の軸心がケーシング2011の軸心に一致するように保持している。この実施形態では、保持部2044の頂面2044bと第2テーパ部2015とを接着固定している。
【0098】
第2流路部2052と第4流路部2054との間には、第2流路部2052及び第4流路部2054よりも流路の断面積が大きく、その断面の拡大により流路内に負圧を発生させる第3流路部2053を備えている。
【0099】
第3流路部2053は、上流側部材2030と下流側部材2040とを結ぶ連結部2035の外面2036と、第2テーパ部2015、上流側部材2030の下流側端面2033、及び、下流側部材2040の上流側端面2042との間に形成されている。連結部2035の外面2036は、上流側外周テーパ部2031及び下流側外周テーパ部2043よりも第2テーパ部2015から遠い位置にある。すなわち、連結部2035の外面2036は、上流側外周テーパ部2031及び下流側外周テーパ部2043よりも、流路の軸心に近い位置にある。このため、第2流路部2052から第3流路部2053に流体が流れ込む際に、第2流路部2052から第3流路部2053へと流路の断面積が急激に大きくなるので、その断面の拡大により流路内に負圧を発生させる。
【0100】
第3流路部2053における上流側部材2030の下流側端面2033と、上流側外周テーパ部2031の母線との成す角は鋭角であることが望ましい。流路が鋭角に屈曲することで負圧の発生状況がより顕著となる。また、この第1の実施形態では、上流側部材2030の下流側端面2033は、第2テーパ部2015から遠ざかるにつれて上流側に近づく傾斜面2034を備えた構成としているので、その鋭角をさらに小さくして(
図15(A)中の鋭角α参照)、キャビテーションの発生度合いを高めている。
【0101】
なお、この実施形態では、傾斜面2034を下流側端面2033の軸回り全周に設けているが、傾斜面2034を下流側端面2033の軸回り一部の方位にのみ設けてもよい。また、内部部材2020を構成する上流側部材2030、下流側部材2040及び連結部2035を一体の部材として成型したが、これらを別体の部材として成型し、それを互いに接続して一体化してもよい。
【0102】
(他の構成例2)
図16は、微細気泡発生器の他の構成例2を示す図であり、(A),(B)に、微細気泡発生器1Bの断面図および斜視図を示す。微細気泡発生器1Bの基本構成は、微細気泡発生器1Aの構成と同様であるので、微細気泡発生器1Aとの相違点のみ以下に説明する。
【0103】
微細気泡発生器1Bは、ケーシング2011と下流管92とが、フランジ2005,2006を介して接続されている。フランジ2005,2006間は面接触状態でボルト及びナット等で締め付け固定されている。また、フランジ2005,2006間にパッキンを配置しているので、内部の液密性が高められている。ケーシング2011と上流管91も、下流側と同様のフランジ接続としてもよい。
【0104】
内部部材2020の下流側部材2040は、その外面に上流側から下流側に向かって拡径する下流側外周テーパ部2043と、その下流側外周テーパ部2043の下流側に設けられた外周円筒面2046を備えた形態となっている。また、保持部2044は、その外周円筒面2046の周方向に沿って、断続的に複数設けられている。保持部2044がケーシング2011に設けられた周方向凹部2019に入り込むことで、下流側部材2040はケーシング2011に保持されている。
【0105】
第3流路部2053における上流側部材2030の下流側端面2033と、上流側外周テーパ部2031の母線との成す角は鋭角(
図16(A)中の鋭角β参照)となっている。なお、下流側端面2033に、微細気泡発生器1Aと同様に、下流側端面2033に傾斜面2034を設定することで、鋭角βをさらに小さな鋭角α(α<β)としてもよい。
【0106】
<変形例>
本実施の形態では、水耕栽培システムSYSの第1流路1010および第2流路1030の両方に、微細気泡発生器1015,1037が設けられることとしたが、第1流路1010および第2流路1030の少なくとも一方に微細気泡発生器が設けられていればよい。
【0107】
また、本実施の形態では、第1流路1010および第2流路1030に循環槽1012,1034が設けられることとしたが、循環槽1012,1034を省略してもよい。
【0108】
また、本実施の形態では、第2流路1030に吸着槽1032を設けることとしたが、吸着槽1032を省略してもよい。
【0109】
[実施の形態2]
<構成について>
図17を参照して、本発明の実施の形態2に係る水耕栽培システムSYS2の構成について説明する。なお、
図1に示した水耕栽培システムSYSと同じ構成については、
図17においても同じ符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0110】
本実施の形態に係る水耕栽培システムSYS2は、上述の実施の形態1で示した生物濾過槽1020を備えず、魚を生育するための貯留部3060を備えている。貯留部3060は、たとえば、池などの閉鎖水域であってもよいし、水槽であってもよい。「魚」は、典型的には養殖魚であるが、水中で生育可能な生物であれば、養殖魚に限定されない。
【0111】
本実施の形態では、水耕栽培ベッドBD、第1流路1010、貯留部3060、第2流路1030Aにより、1つの循環経路が形成されている。貯留部3060は、第1流路1010の送出流路1016に接続されている。
【0112】
第2流路1030Aには、吸着槽1032が設けられず、代わりに濾過装置3010が設けられている点において、上述の第2流路1030と大きく異なる。
【0113】
第2流路1030Aは、貯留部3060から濾過装置3010に至る濾過流入路3021と、濾過装置3010から水耕栽培ベッドBDに至る濾過流出路3022とを備えている。また、濾過装置3010から延びて濾過流入路3021の途中位置に合流する(交差する)循環路3023を備えている。
【0114】
濾過流入路3021には、ポンプ3031および微細気泡発生器3032がこの順序で設けられている。微細気泡発生器3032は、たとえばキャビテーション方式によって微細気泡を発生させる。これにより、貯留部3060から汲み上げられた液体(水)に微細気泡を含有させるとともに、液体の除菌が行われる。微細気泡発生器3032もまた、上述の微細気泡発生器1または1Aにより構成されている。
【0115】
微細気泡発生器3032から放出される微細気泡を含有した液体(つまり、除菌後の液体)が、濾過装置3010に送られる。
【0116】
濾過装置3010は、その外郭を形成するケーシング3011を備え、ケーシング3011に、濾過流入路3021、濾過流出路3022、および循環路3023が接続されている。すなわち、濾過装置3010は、濾過流入路3021の下流側端部が接続される流入部3012、濾過流出路3022の上流側端部が接続される流出部3013、および循環路3023の上流側端部が接続される循環用流出部3014を有している。
【0117】
ケーシング3011の内部空間は、仕切壁3041によって二つの空間3051,3052に区画されている。一方の空間(下方空間)3051が、流入部3012を介して液体を受け入れる室(以下「前室」という)を構成し、他方の空間(上方空間)3052が、濾過剤3044を収容する「濾過室」を構成する。流入部3012の吐出口および循環用流出部3014が前室3051側に設けられ、流出部3013が濾過室3052側に設けられている。
【0118】
流入部3012から流入する液体(処理対象の水)は、ケーシング3011内の前室3051に送られた後、濾過室3052で濾過される。浄化後の液体が、流出部3013を介して濾過流出路3022に吐出される。
【0119】
循環路3023は、一端(上流側端部)がケーシング3011の循環用流出部3014に接続され、他端(下流側端部)が濾過流入路3021の途中位置に接続されている。この途中位置(循環路3023の他端が接続される位置)は、少なくとも微細気泡発生器3032よりも上流側であればよい。本実施の形態では、濾過流入路3021におけるポンプ3031よりも上流側の位置に、循環路3023の他端が接続されている。循環路3023には、流路を開閉するためのバルブ3033が設けられている。バルブ3033が開状態で運転される場合、濾過装置3010は「濃度調整モード」として作動する。バルブ3033が全閉状態で運転される場合、濾過装置3010は「通常運転モード」として作動する。バルブ3033はたとえば絞り弁である。
【0120】
(濾過装置の構成例)
濾過装置3010の各部について、
図18を参照して具体的に説明する。
図18は、濾過装置3010の軸方向の断面図である。ケーシング3011は、ドラム管のような円筒状の箱体によって形成され、その軸線が上下方向(鉛直方向)となるよう縦向きで配置されている。仕切壁3041は、ケーシング3011の軸線に交差し、中央に円形の開口3041aを有する環状部材により構成されている。開口3041aは、前室3051と濾過室3052とを連通する唯一の開口である。仕切壁3041は、外周部よりも内周部(開口3041a側)が下方となるように勾配が付けられていることが望ましく、前室3051側に突出する逆円錐台形状(テーパ状)となっている。
【0121】
前室3051は、少なくとも1つの整流部材3043を含むことが望ましい。整流部材3043は、たとえば、上方に突出する円錐形状のコーン部材であり、後述する管部材3042の吐出口に対面するように、底壁部3112の中央部に設けられている。
【0122】
濾過室3052には、管部材3042を取り囲むように濾過剤3044が敷き詰められている。濾過剤3044は、典型的には、好気性微生物であるバクテリアを定着する活性炭により構成され、活性炭にバクテリアを定着させることにより、バクテリアの力を借りて液体に含有する汚染物質(魚の排泄物に起因するアンモニア等)を分解する。そのため、濾過剤3044は、生物濾過剤として機能し、濾過装置3010は生物濾過槽として機能する。なお、
図18では、便宜上、濾過剤3044とその周辺部材(ケーシング3011の円筒部3111、仕切壁3041、および管部材3042)との間に隙間を設けているが、濾過剤3044は、周辺部材との間に極力隙間が無いように配置されていることが望ましい。これにより、比較的大きなゴミを物理的に濾過したり、比較的小さなゴミを吸着濾過したりすることが可能である。
【0123】
流入部3012は、濾過室3052および仕切壁3041を貫通して、前室3051まで上下方向に沿って延びる管部材3042によって構成されている。管部材3042の縦管部3422が、仕切壁3041の開口3041aに挿通されている。縦管部3422の下端部は、仕切壁3041の内周部よりも下方に位置し、かつ、ケーシング3011の底壁部3112から離れて配置されている。仕切壁3041の開口3041aは、管部材3042よりも大径であり、開口3041aの周壁面(仕切壁3041の内周面)と管部材3042との間の環状空間が、前室3051と濾過室3052とを連通する連通路3053を形成している。
【0124】
流出部3013は、濾過室3052を取り囲む円筒部3111に設けられたオーバーフロー口3013aを含み、ケーシング3011内の上澄み液(濾過剤3044による濾過後の液体)をオーバーフローにより流出する。循環用流出部3014は、前室3051を取り囲む円筒部3111に設けられた貫通孔3014aを含む。循環路3023の上流側端部が、貫通孔3014aに直接または間接的に接続される。
【0125】
なお、循環路3023のバルブ3033が開状態とされると(濃度調整モードにおいて)、前室3051内の微細気泡を含む液体が循環路3023を介して濾過流入路3021上の微細気泡発生器3032の上流側に戻されるので、前室3051内の微細気泡の濃度を高めることができる。これにより、濾過室3052に供給する液体の酸素濃度を高めることができる。
【0126】
(濾過装置による濾過方法)
図17、
図18および
図19を参照しながら、濾過装置3010による液体の濾過方法について説明する。
図18は、濾過装置3010における液体の流れを模式的に示す縦断面図である。
図19は、濾過装置3010の前室3051における液体の流れを模式的に示す横断面図であり、
図18のXIX-XIX線に沿う切断面に相当する。
【0127】
濾過装置3010は、循環路3023のバルブ3033が全閉状態、ポンプ3031がON状態の場合に、「通常運転モード」で作動する。通常運転モードにおいて、微細気泡発生器3032が生成した微細気泡を含む液体が、濾過装置3010の流入部3012を介してケーシング3011の前室3051に吐出される(矢印F1)。具体的には、管部材3042の上流側端部に微細気泡を含む液体が流入し、流入した液体が管部材3042の下端開口である吐出口3042aから前室3051の底壁部3112に向かって吐出される。これにより、前室3051において、微細気泡を含む液体が撹拌される。
【0128】
管部材3042の吐出口3042aに対面する位置に円錐形状の整流部材3043が設けられているため、
図19に示されるように、吐出口3042aから真っすぐ下方に流出した液体が、整流部材3043によって径方向外側に向かって放射状に拡散する(矢印F2)。
【0129】
前室3051が液体で満たされた状態において、整流部材3043の円錐面(側面)に沿って拡散した液体が円筒部3111の内壁面および仕切壁3041の下面(テーパ面)に沿って流れることで、前室3051内で立体的に旋回する旋回流が発生する(矢印F3)。これにより、前室3051内の液体が整流されるので、液体中の微細気泡の濃度すなわち酸素濃度が均一化される。なお、前室3051において矢印F3で示したような軌道を描く旋回流が発生する構造であれば、図示したような構造に限定されず、たとえば底壁部3112をお椀状に形成してもよい。また、管部材3042からの下向き(矢印F1方向)の液体の流れによって回転するスクリューなど、液体中の微細気泡を拡散させる拡散手段を前室3051内に設けてもよい。
【0130】
前室3051が液体で満たされ、液体の水位が仕切壁3041の下端高さを超えている場合、
図18に示されるように、前室3051内の液体の一部が連通路3053を通り抜けて濾過室3052内に上昇する(矢印F4)。これにより、酸素濃度が均一化された液体が、連通路3053を介して濾過室3052の濾過層3521に供給される。
【0131】
仕切壁3041の上面は連通路3053側が下方となるように傾斜しているため、濾過層3521を構成する濾過剤3044の厚み(高さ)は、連通路3053の直上に位置する部分ほど大きく、その分だけ水の抵抗も大きい。そのため、前室3051から連通路3053を通過して上昇してきた液体は、径方向外側に広がりながら濾過層3521を上昇する(矢印F5)。これにより、濾過剤3044に吸着したバクテリアに与えられる酸素量のバラつきを抑制することができるので、濾過層3521内のバクテリアを万遍なく活性化させることができる。また、その結果、液体を均一に濾過することができる。ここでの濾過は、活性炭により液体から異物を除去するとともに、液体に含まれるアンモニアなどの有害物質(魚の排泄物などに起因するもの)をバクテリアによって植物の養分に分解することを指す。
【0132】
ケーシング3011内の液体の水位が満水レベルWLに達すると、濾過層3521を通過することで異物が除去され養分を含む液体(微細気泡を含む液体)が、上澄み層3522から流出部3013を介してオーバーフローにより流出する(矢印F6)。これにより、濾過装置3010により濾過された液体が、濾過流出路3022を介して水耕栽培ベッドBDに吐出される。
【0133】
濾過装置3010は、ポンプ3031をON状態としたまま循環路3023のバルブ3033を開状態とした場合に、「濃度調整モード」で作動する。
図18を参照して、濃度調整モードにおいては、前室3051内の微細気泡を含む液体が、前室3051の側部の循環用流出部3014から循環路3023に流出する(F7)。これにより、流入部3012から前室3051に下向きに吐出された微細気泡を含む液体が、循環路3023および濾過流入路3021を通って再び微細気泡発生器3032に送られる。つまり、濾過装置3010の前室3051に流入した液体が、循環路3023、濾過流入路3021、流入部3012、および前室3051の順に循環する。
【0134】
このように濾過装置3010を濃度調整モードで作動させることによって、濾過室3052に供給する液体の微細気泡の濃度(酸素濃度)を高めることができる。これにより、濾過層3521内のバクテリアによる生物濾過を促進することができるので、濾過層3521における濾過機能を安定化させることができる。また、濾過装置3010の流出部3013から水耕栽培ベッドBDに吐出する液体の酸素濃度を高めることもできるので、植物の発育を促進することも可能である。
【0135】
なお、濾過装置3010を通常運転モードや濃度調整モードで継続的に作動すると、濾過剤3044や濾過層3521の下部に異物(有機物やヘドロなど)が堆積する可能性がある。そのため、濾過装置3010は、濾過室3052に堆積した異物を外部に排出する「逆洗機能」を有していてもよい。上述のように、仕切壁3041が逆円錐台状に形成されているため、仕切壁3041の上面が、濾過層3521内の異物を排出させるための案内面として機能する。したがって、濾過層3521内の異物を、ケーシング3011の下端部から効果的に排出することができる。
【0136】
<水質改善方法の具体例>
図17を参照しながら、本実施の形態に係る水耕栽培システムSYS2による水質改善方法について説明する。
【0137】
水耕栽培ベッドBDからの排水が、メイン流路1011上の微細気泡発生器1015において除菌され、循環槽1012に貯留された水(微細気泡を含む水)の一部が、送出流路1016を介して貯留部3060に供給される。酸素を含む微細気泡が供給されることにより、貯留部3060内の養殖魚の生育を促すことができる。
【0138】
ポンプ3031の駆動により貯留部3060から汲み上げられた水は、微細気泡発生器3032の微細気泡により除菌され、濾過装置3010に供給される。濾過装置3010の濾過室3052には濾過剤3044が設けられているため、濾過装置3010において、水中の有害物質(魚の排泄物に起因するアンモニアなど)を分解し、たとえば毒性の比較的低い硝酸塩など植物の栄養分に変換される。このような養分と微細気泡を含んだ浄化水を水耕栽培ベッドBDに供給することで、植物の生育を効果的に促すことができる。このように、貯留部3060で養殖している魚の排泄物や餌などのタンパク質を、水耕栽培ベッドBDで生育している植物の養分とすることができる。
【0139】
また、水耕栽培ベッドBDの植物に、硝酸塩などの植物によっては有益ではあるが魚にとって有害な物質が吸収される。このようにサイクルを繰り返すので、水耕栽培ベッドBDから第1流路1010を介して貯留部3060に供給される水に含まれる有害物質(魚にとって有害なアンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩など)の濃度を規定値以下に保つことができる。したがって、本実施の形態に係る水耕栽培システムSYS2によれば、共通の自然ループによって、水耕栽培および養殖の両方の成長を促すことができる。
【0140】
なお、
図1に示した吸着槽1032は、生物濾過槽1020から流出する水に含まれる硝酸塩をある程度除去するものの、少量の硝酸塩を含んだ水が下流側に排出され得る。したがって、実施の形態1に係る水耕栽培システムSYSにおいても、水耕栽培ベッドBDに、少量の硝酸塩を含んだ水が供給されるため、植物の生育を効果的に促すことが可能である。
【0141】
ところで、本実施の形態では、前室3051から微細気泡発生器3032に戻る循環路3023が設けられており、前室3051から濾過室3052に供給する液体の酸素濃度を調整する(上昇させる)ことができるので、濾過装置3010の生物濾過効果を良好に維持することができる。したがって、濾過剤3044を半永久的に利用することができる。また、濾過装置3010から水耕栽培ベッドBDに、酸素を含んだ濾過後の水を供給することができる。
【0142】
なお、微細気泡発生器3032を通さず液体の循環のみで、貯留部3060からの排水を水質浄化可能としてもよい。
図17には、濾過流入路3021上に、微細気泡発生器3032を通らない迂回経路3021Bを設けた例を示している。微細気泡発生器3032を通る主経路と迂回経路3021Bとの分岐点に、方向切替弁3034が設けられている。方向切替弁3034を操作することにより、微細気泡発生器3032を通る「第1の水質浄化モード」と、微細気泡発生器3032を通らない「第2の水質浄化モード」とを簡単に切り替えることができる。
【0143】
[他の実施形態]
上記実施の形態2では、
図17に示したように、第1流路1010の下流端に貯留部3060を接続させる構成としたが、貯留部3036を設けず、第1流路1010の下流端に直接、生物濾過槽としての濾過装置3010を接続してもよい(図示せず)。また、その場合、濾過装置3010と水耕栽培ベッドBDとの間に、微細気泡発生器を設けるようにしてもよい。
【0144】
なお、
図17に示したバルブ3033を、循環路3023の下流側に接続された第1の出口ポートと、排水路(図示せず)に接続された第2の出口ポートとを有する三方バルブで構成してもよい。通常運転時は、第1の出口ポートを開状態、第2の出口ポートを閉状態とすることで、濾過装置3010から流出した液体を循環路3023に沿って循環させる。通常運転時以外の任意のタイミングで、第1の出口ポートを閉状態、第2の出口ポートを開状態とすることで、排水路を介して、濾過装置3010に溜まったゴミを排出することができる。
【0145】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0146】
1,1A,1B,1015,1037,3032 微細気泡発生器、1010 第1流路、1018 気体供給手段、1020 生物濾過槽、1030 第2流路、1032 吸着槽、3010 濾過装置、3060 貯留部、BD 水耕栽培ベッド,SYS,SYS2 水耕栽培システム。