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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086581
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H05B6/12 316
H05B6/12 308
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183791
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2022201363
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】錦織 信晴
(72)【発明者】
【氏名】相田 泰志
(72)【発明者】
【氏名】大浴 清作
(72)【発明者】
【氏名】金川 朋之
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA11
3K151BA14
3K151CA22
(57)【要約】
【課題】加熱コイルに対するセンサコイルの位置ずれを抑えることで、被加熱物の位置検出精度の向上を図りつつ、部品点数の削減も可能とする。
【解決手段】トッププレート1に載置された被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器100であって、トッププレート1の裏側に配置された基板B上に設けられて、被加熱物を加熱するためのシート状の加熱コイル2と、加熱コイル2と一体的に設けられて、被加熱物の位置を検出するためのセンサコイル3とを備えるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トッププレートに載置された被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器であって、
前記トッププレートの裏側に配置された基板上に設けられて、前記被加熱物を加熱するためのシート状の加熱コイルと、
前記加熱コイルと一体的に設けられて、前記被加熱物の位置を検出するためのセンサコイルとを備えることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
1つの前記加熱コイルに対して、少なくとも2つの前記センサコイルが設けられており、
それら2つのセンサコイルが、前記加熱コイルの中心を挟んで対角に配置されていることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記基板上に少なくとも2つの加熱コイルが配置されており、それら2つの加熱コイルの間隔が、前記加熱コイルの外径寸法の半分よりも狭いことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記基板が、前記加熱コイルが設けられるとともに互いに絶縁されている2層以上の加熱コイル層と、前記センサコイルが設けられたセンサ層と、前記加熱コイル層及び前記センサ層の間に介在する絶縁層とを有し、
前記2層以上の加熱コイル層のうち、共振コンデンサに接続される加熱コイル層が、その他の加熱コイル層よりも、前記センサ層から離れて配置されていることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱コイル及び前記センサコイルと一体的に設けられた温度センサをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記温度センサが、前記加熱コイルの中心或いはその近傍、又は、前記加熱コイルが接続される接続コネクタの近傍に配置されていることを特徴とする請求項5記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記基板上には、別の制御基板に接続される接続コネクタが実装されており、
前記接続コネクタが、前記トッププレートに対して逆向きに実装されていることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記センサコイルと当該センサコイルに接続される駆動回路部との間に、前記センサコイルに発生する誘起電圧から前記駆動回路部を保護する保護回路部が設けられている、請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記温度センサにより検出された温度を用いて、前記センサコイルの出力値を補正する、請求項5又は6に記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記加熱コイルの駆動開始時に前記加熱コイルの磁束吸収で生じる前記センサコイルの出力値の変化を補正する、請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋等の被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器としては、特許文献1に示すように、被加熱物を加熱するための加熱コイルとして、リッツ線をコイル形状にしたものを用いたものがある。
【0003】
ところで、近年の誘導加熱調理器には、被加熱物をトッププレートのどこにでも自由に置けるもの(以下、Any Place調理器ともいう)が開発されている。
【0004】
このAny Place調理器は、上述した加熱コイルの他に、被加熱物の位置を検出するためのセンサコイルを備えている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す誘導加熱調理器は、加熱コイルとセンサコイルとが別の構造体であり、加熱コイルに対するセンサコイルの位置にズレが生じやすく、例えば被加熱物に流れる渦電流の僅かな違いや、被加熱物の細かな位置まで検知することができない。
【0006】
その結果、被加熱物の位置検出精度が悪くなったり、位置検出精度を担保しようとするとセンサコイルの数が増大したりするという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献1に示すように、加熱コイルとしてリッツ線を用いると、このリッツ線をコイル形状に維持するための部材が必要となり、部品点数が増大する。
【0008】
さらに、特許文献1では、加熱コイルをフレキシブル基板上に設けているが、フレキシブル基板自体の部品コストは高額であるし、加熱コイルとは別部品として構成する必要があるため、加熱コイル自体の信頼性が保証できないといった問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2016-77445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題を一挙に解決するべくなされたものであり、加熱コイルに対するセンサコイルの位置ずれを抑えることで、被加熱物の位置検出精度の向上を図りつつ、部品点数の削減をも可能とすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係る誘導加熱調理器は、トッププレートに載置された被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器であって、前記トッププレートの裏側に配置された基板上に設けられて、前記被加熱物を加熱するためのシート状の加熱コイルと、前記加熱コイルと一体的に設けられて、前記被加熱物の位置を検出するためのセンサコイルとを備えることを特徴とするものである。
【0012】
このように構成された誘導加熱調理器によれば、加熱コイルとセンサコイルとを一体的に設けているので、加熱コイルに対するセンサコイルの位置ずれを抑えることができ、しかも、シート状の加熱コイルを用いているので、リッツ線を用いた従来構成に比べて、部品点数の削減を図れる。
【0013】
1つの前記加熱コイルに対して、少なくとも2つの前記センサコイルが設けられており、それら2つのセンサコイルが、前記加熱コイルの中心を挟んで対角に配置されていることが好ましい。
このような構成であれば、可及的少ない数のセンサコイルを用いて、被加熱物の位置検出精度の高精度化を具現可能である。
【0014】
前記基板上に少なくとも2つの加熱コイルが配置されており、それら2つの加熱コイルの間隔が、前記加熱コイルの外径寸法の半分よりも狭いことが好ましい。
このような構成であれば、センサコイルに対する加熱コイルの影響を抑えつつ、加熱効率を担保することができる。
【0015】
前記基板が、前記加熱コイルが設けられるとともに互いに絶縁されている2層以上の加熱コイル層と、前記センサコイルが設けられたセンサ層と、前記加熱コイル層及び前記センサ層の間に介在する絶縁層とを有し、前記2層以上の加熱コイル層のうち、共振コンデンサに接続される加熱コイル層が、その他の加熱コイル層よりも、前記センサ層から離れて配置されていることが好ましい。
このような構成であれば、センサ層に近い側の加熱コイル層を低耐圧設計にすることができ、絶縁層の薄型設計が可能となる。
【0016】
前記加熱コイル及び前記センサコイルと一体的に設けられた温度センサをさらに備えることが好ましい。
このような構成であれば、温度センサを加熱コイル及びセンサコイルと一体的に設けているので、配線の削減等による製品コストの削減を図れる。
【0017】
前記温度センサが、前記加熱コイルの中心或いはその近傍、又は、前記加熱コイルが接続される接続コネクタの近傍に配置されていることが好ましい。
このような構成であれば、温度が最も高温になりやすい箇所に温度センサが配置されるので、加熱コイルや接続コネクタそのものの温度検出が可能となり、高い信頼性で加熱コイルを制御することができる。
【0018】
前記基板上には、別の制御基板に接続される接続コネクタが実装されており、前記接続コネクタが、前記トッププレートに対して逆向きに実装されていることが好ましい。
このような構成であれば、接続コネクタがトッププレートに向いて実装されている構成に比べて、被加熱物と加熱コイルとの間隔が狭くなるので、被加熱物を効率良く加熱することができる。
【0019】
センサコイルを加熱コイル上に配置した場合等には、加熱コイルの駆動時にセンサコイルに誘起電圧が発生してしまう。この誘起電圧によりセンサコイルに接続された駆動回路部が破壊する可能性がある。そのため、本発明の誘導加熱調理器は、前記センサコイルと当該センサコイルに接続される駆動回路部との間に、前記センサコイルに発生する誘起電圧から前記駆動回路部を保護する保護回路部が設けられていることが望ましい。
【0020】
センサコイルの出力値は周囲温度により影響を受けて変化する。具体的には、周囲温度によりセンサコイルの抵抗値が変化することによって、センサコイルの出力値は変化する。例えば、周囲温度が上昇することにより、センサコイルの出力値は低下する。そうすると、加熱している最中に、「鍋無し」と同じ状態まで値が低下してしまい、「鍋無し」と誤検知して加熱を停止してしまう。そのため、本発明の誘導加熱調理器は、前記温度センサにより検出された温度を用いて、前記センサコイルの出力値を補正することが望ましい。
【0021】
加熱コイルが駆動されていない状態では加熱コイルに共振回路が構成されていないので、センサコイルは、加熱コイルからの影響を受けにくい。一方で、加熱コイルが駆動されると加熱コイルに共振回路が構成されるため、当該加熱コイル近傍のセンサコイルで発生する磁束が加熱コイルに吸収されてしまう。その結果、被加熱物の位置検出精度が悪化する可能性がある。そのため、本発明の誘導加熱調理器は、前記加熱コイルの駆動開始時に前記加熱コイルの磁束吸収で生じる前記センサコイルの出力値の変化を補正することが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、加熱コイルに対するセンサコイルの位置ずれを抑えることで、被加熱物の位置検出精度の向上を図りつつ、部品点数の削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る誘導加熱調理器の全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態の位置検出用センサの構成を示す模式図。
図3】同実施形態の誘導加熱調理器の基板を示す模式図。
図4】同実施形態の誘導加熱調理器の基板を示す模式図。
図5】同実施形態の制御機器の機能を示す機能ブロック図。
図6】同実施形態のセンサコイルの配置を説明するための図。
図7】同実施形態のセンサコイルの配置を示す模式図。
図8】同実施形態のセンサコイルの配置の違いに対する渦電流損失を計算した結果を示す図。
図9】同実施形態のセンサコイルの配置を示す模式図。
図10】従来のリッツ線を用いた場合における基板の構成を説明するための模式図。
図11】同実施形態の加熱コイルを用いた場合における基板の構成を示す模式図。
図12】変形実施形態のセンサコイル、駆動回路部、MUX部及び保護回路部の構成を示す回路図。
図13】保護回路部の各動作状態を模式的に示す図。
図14】変形実施形態において(a)温度補正なしのカウント値、及び(b)温度補正有りのカウント値を示す図。
図15】変形実施形態において(a)磁束吸収を補正しない場合のカウント値、及び、(b)磁束吸収を補正した場合のカウント値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る誘導加熱調理器の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
本実施形態に係る誘導加熱調理器は、トッププレートに載置された調理用鍋などの調理器具たる被加熱物を誘導加熱するものであり、被加熱物をドッププレートのどこにでも自由に置いて加熱できるように構成されている。
【0026】
具体的に誘導加熱調理器100は、図1に示すように、被加熱物が置かれるトッププレート1と、被加熱物を加熱するための複数の加熱コイル2と、被加熱物の位置を検出するためのセンサコイル3と、加熱コイル2に交流電流を供給するインバータ回路4と、インバータ回路4を制御する制御機器5とを備えている。
【0027】
トッププレート1は、表側に被加熱物が置かれる平坦な載置面を有するものであり、例えばガラスやセラミックなどの電気絶縁材料からなる平板状のものである。
【0028】
加熱コイル2は、トッププレート1の裏側に設けられており、ここでは図1に示すように、複数の加熱コイル2が、平面視において二次元アレイ状(縦横マトリクス状)をなすように配置されている。
【0029】
より具体的に説明すると、図1に示すように、トッププレート1の裏側に配置された共通の基板Bに一対の加熱コイル2が設けられており、この基板Bが、平面視において二次元アレイ状(縦横マトリクス状)をなすように敷設されている。
【0030】
各加熱コイル2は、基板Bに設けられたシート状をなすものであり、具体的にはフォトレジスト等により作成されたプリント基板として形成されたものである。ここでは、1枚の基板Bに2つの加熱コイル2が設けられており、それらの加熱コイル2の間隔は、各加熱コイル2の外径寸法(具体的には、例えば外形寸法の最大値又は最小値)の半分よりも狭くなっている。複数の加熱コイル2それぞれは、ここでは同じ形状及び大きさのものであるが、形状及び大きさは適宜変更して構わない。
【0031】
センサコイル3は、トッププレート1の裏側に設けられており、具体的には上述した基板Bに設けられた誘導近接コイルである。
【0032】
このセンサコイル3は、トッププレート1に置かれた被加熱物の位置を検出するためのものであり、図2に示すように、共振用コンデンサ31、発振用アンプ32、発振周波数検知回路33、及び制御部34などとともに位置検出用センサ30を構成するものである。
【0033】
ここで、上述した基板Bは、図3及び図4に示すように、加熱コイル2が設けられた加熱コイル層B1と、センサコイル3が設けられたセンサ層B2とを有しており、これらの層を絶縁層B3を介して積層して一体化させたものである。
【0034】
かかる構成により、加熱コイル2とセンサコイル3とが一体的に設けられるとともに、加熱コイル2に対してセンサコイル3が位置決めされる。つまり、敷設された複数枚の基板Bそれぞれにおいて、加熱コイル2とセンサコイル3との相対的な位置関係が共通している。
【0035】
ここでは、図3に示すように、センサ層B2がトッププレート1側に位置し、加熱コイル層B1がセンサ層B2に対してトッププレート1の反対側に位置するように積層されている。
【0036】
より具体的に説明すると、図3及び図4に示すように、加熱コイル層B1には、制御基板6に接続される接続コネクタCNが実装されており、この接続コネクタCNが、トッププレート1に対して逆向きに実装されている。
【0037】
さらに、本実施形態の誘導加熱調理器100は、図1、3、4に示すように、基板B上や互いに隣り合う基板Bの間に設けられた温度センサTを備えており、被加熱物や加熱コイル2の温度を検知できるようにしてある。
【0038】
ここでの温度センサTは、加熱コイル2及びセンサコイル3と一体的に設けられており、加熱コイル2の中心或いはその近傍、又は、加熱コイル2を制御基板6に接続するための上述した接続コネクタCNの近傍に配置されている。
【0039】
インバータ回路4は、電源から供給される交流電圧を任意の駆動周波数に変換して加熱コイル2に出力するものである。ここでのインバータ回路4は、スイッチング素子を用いたハーフブリッジ方式のものであるが、フルブリッジ方式のものを用いても構わない。
【0040】
制御機器5は、物理的にはCPU、メモリ、入力手段などを備えるものであり、機能的には、前記メモリの記憶されたプログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することにより、図5に示すように、位置検出部51及びインバータ制御部52としての機能を発揮するものである。
【0041】
位置検出部51は、上述した位置検出用センサ30の出力値に基づいて被加熱物の位置を検出するものであり、トッププレート1に置かれている被加熱物の位置及び大きさを検出する。
【0042】
ここで、本実施形態の位置検出用センサ30は、センサコイル3のインダクタンス値を出力するものであり、このインダクタンス値は、センサコイル3の上方に被加熱物が位置しているか否かにより変動する。
【0043】
より詳細には、位置検出用センサ30から出力されるインダクタンス値は、被加熱物からセンサコイル3までの距離に応じて変動する値であり、例えば、センサコイル3から離れた位置にある被加熱物をセンサコイル3に近づけていくと、インダクタンス値は減少する。
【0044】
そこで、位置検出部51は、位置検出用センサ30から出力されるインダクタンス値と予め設定した閾値とを比較して、被加熱物の位置及び大きさとして検出する。
【0045】
具体的には、この位置検出部51は、閾値よりも低いインダクタンス値のセンサコイル3の上方に被加熱物が位置していると判断し、それらのセンサコイル3の上方を、被加熱物が置かれている検出位置として出力する。
【0046】
インバータ制御部52は、電源から供給される実際の電力である実電力を算出するとともに、その実電力がユーザの設定した火力に対応する目標電力に近づくように、上述した駆動周波数を制御するものである。ただし、インバータ制御部52としては、上述したスイッチング素子のオン・オフのデューティ比を制御するものであっても良い。
【0047】
このインバータ制御部52は、トッププレート1に置かれた被加熱物の下方に位置する加熱コイル2にのみ選択的に通電できるように構成されている。
【0048】
ここで、図6を参照しながら、加熱コイル2に対するセンサコイル3の配置について検討する。なお、図6における斜線部分が、被加熱物の置かれている位置を示している。
【0049】
まず、図6(a)に示すように、1つの加熱コイル2に対して1つのセンサコイル3を設ける場合、センサコイル3の数が少なすぎて被加熱物の位置検出精度を担保することができない。
【0050】
一方、位置検出精度を担保するべく、図6(b)に示すように、1つの加熱コイル2に対して多くのセンサコイル3を設けると、部品点数が増大し高コスト化を招来する。
【0051】
また、図6(c)に示すように、1つの加熱コイル2に対して2つのセンサコイル3を横方向に並べると、部品点数は抑えられるものの、縦方向の位置検出精度を担保することができず、図6(d)に示すように、1つの加熱コイル2に対して2つのセンサコイル3を縦方向に並べると、部品点数は抑えられるものの、横方向の位置検出精度を担保することができない。
【0052】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、1つの加熱コイル2に対して、2つのセンサコイル3が設けるとともに、これらのセンサコイル3が、加熱コイル2の中心を挟んで対角に配置されている。
【0053】
言い換えれば、加熱コイル2の中心を通り互いに直交する2本の仮想線Zにより、加熱コイル2が形成されている領域を縦横方向に4つに区分した場合に、2つのセンサコイル3が、対角領域(象限)に配置されている。
【0054】
ここで、より具体的な配置について述べると、図8(a)に示すように、センサコイル3を加熱コイル2のコーナ部に近づけるほど、渦電流損失が大きくなる。かといって、図8(c)に示す配置では、上述した通り、横方向の位置検出精度を担保することができない。
【0055】
そこで、本実施形態では、図8(b)、及び、図9上段から図9下段への変更に示すように、1つの加熱コイル2に対して、2つのセンサコイル3を対角配置するとともに、これらのセンサコイル3の双方を、加熱コイル2のコーナ部よりも中央側に寄せて、つまり互いに近づくように寄せて配置してある。
【0056】
かかる配置により部品点数を抑えつつも、位置検出精度を担保することができ、なおかつ、渦電流損失の低減をも図れる。
【0057】
続いて、上述した加熱コイル層B1とセンサ層B2との積層構造について検討する。
【0058】
まず、図10に示すように、従来のリッツ線をコイル形状にした加熱コイル2’を加熱コイル層B1’に形成している構成について述べると、この構成では、加熱コイル2’の内周部の出力が例えば最大1000V程度の高出力になるので、低電圧のセンサ層B2’との間の電圧差が大きくなる。その結果、加熱コイル層B1’とセンサ層B2’との間には分厚い絶縁層B3’を介在させる必要が生じてしまい、基板B’の薄型化には限界が生じる。
【0059】
そこで、本実施形態の基板Bは、図11(a)、(b)に示すように、加熱コイル2が設けられるとともに互いに絶縁されている2層以上の加熱コイル層B1と、センサコイル3が設けられたセンサ層B2と、加熱コイル層B1及びセンサ層B2の間に介在する絶縁層B3とを有し、2層以上の加熱コイル層B1のうち、共振コンデンサに接続される加熱コイル層B1が、その他の加熱コイル層B1よりも、センサ層B2から離れて配置されている。
【0060】
つまり、この実施形態では、電流が所定方向に沿って往復しながら流れるように複数の加熱コイル層B1が積層されている。各加熱コイル層B1は、コア層B4を介して互いに絶縁させており、これらの加熱コイル層B1のうち、出力側の加熱コイル層B1が、入力側の加熱コイル層B1よりもセンサ層B2から離れて配置されている。
【0061】
この構成により、例えば図11(a)に示すように、加熱コイル層B1が電流を1往復させる2層構造であれば、上述したリッツ線形状と同等出力をするコイル設計でも、加熱コイル層B1の内周部の出力を500V程度に抑えられるし、図11(b)に示すように、加熱コイル層B1が電流を2往復させる4層構造であれば、加熱コイル層B1の内周部の出力を250V程度に抑えられる。
その結果、加熱コイル層B1とセンサ層B2との間に介在する絶縁層B3に必要な厚みを抑えることができ、基板Bの薄型化を図れる。
【0062】
なお、上述した構成において、加熱コイル層B1、センサ層B2、及び絶縁層B3を連結するためのスルーホールTHには、加熱コイル2の高圧部分が印加されるので、この部分に重ならないように、センサ層B2のセンサコイル3が設けられている。この設計も、絶縁層B3の厚みを抑えることがで、ひいては基板Bの薄型化に資する。
【0063】
以上のように構成した誘導加熱調理器100によれば、加熱コイル2とセンサコイル3とを一体的に設けているので、加熱コイル2に対するセンサコイル3の位置ずれを抑えることができ、しかも、シート状の加熱コイル2を用いているので、リッツ線を用いた従来構成に比べて、部品点数の削減をも図れる。
【0064】
また、2つのセンサコイル3が、加熱コイル2の中心を挟んで対角に配置されているので、可及的少ない数のセンサコイル3を用いて、被加熱物の位置検出精度の高精度化を具現可能である。
【0065】
さらに、1つの基板Bに設けられた2つの加熱コイル2の間隔が、加熱コイル2の外径寸法の半分よりも狭いので、センサコイル3に対する加熱コイル2の影響を抑えつつ、加熱効率を担保することができる。
【0066】
そのうえ、積層された加熱コイル層B1のうち、共振コンデンサに接続される出力側の加熱コイル層B1が、入力側の加熱コイル層B1よりも、センサ層B2から離れて配置されているので、センサ層B2に近い側の加熱コイル層B1を低耐圧設計にすることができ、絶縁層B3の薄型設計が可能となる。
【0067】
加えて、加熱コイル2及びセンサコイル3と一体的に設けられた温度センサTを備えているので、配線の削減等による製品コストの削減を図れる。
【0068】
しかも、その温度センサTが、加熱コイル2の中心或いはその近傍、又は、加熱コイル2が接続される接続コネクタCNの近傍に配置されているので、温度が最も高温になりやすい箇所に温度センサTが配置されることになり、加熱コイル2や接続コネクタCNそのものの温度検出が可能となり、高い信頼性で加熱コイル2を制御することができる。
【0069】
そのうえ、基板B上の接続コネクタCNが、トッププレート1に対して逆向きに実装されているので、接続コネクタCNがトッププレート1に向いて実装されている構成に比べて、被加熱物と加熱コイル2との間隔が狭くなるので、被加熱物を効率良く加熱することができる。
【0070】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0071】
例えば、前記実施形態では、1つの基板Bに2つの加熱コイル2を設けていたが、単一の加熱コイル2を設けても良いし、3つ以上の加熱コイル2を設けても良い。
【0072】
また、前記実施形態では、1つの加熱コイル2に対して2つのセンサコイル3を設けていたが、3つ以上のセンサコイル3を設けても良い。
【0073】
さらに、前記実施形態では、センサコイル3が加熱コイル2のコーナ部よりも中央側に設けられていたが、コーナ部に設けられていても良い。
【0074】
また、前記実施形態の誘導加熱調理器100において、図12に示すように、センサコイル3とセンサコイル3に接続される駆動回路部3Dとの間に、センサコイル3に発生する誘起電圧(最大±80V)から駆動回路部3Dを保護する保護回路部35が設けられている。
【0075】
ここで、駆動回路部3Dは、前記実施形態の共振用コンデンサ31、発振用アンプ32、発振周波数検知回路33、及び制御部34などを有している。また、図12では、1つの駆動回路部3Dに対して複数のセンサコイル3がマルチプレクサ(MUX部)36を介して接続されている。そして、保護回路部35は、各センサコイル3と各センサコイル3に接続されるMUX部36との間に設けられている。つまり、保護回路部35は、複数のセンサコイル3それぞれに設けられている。
【0076】
具体的に保護回路部35は、ショットキーダイオード等のダイオード351a及びMOSFET等の電界効果トランジスタ(FET)351bを有する保護要素351を備えている。この保護要素351は、センサコイル3の両側に直列に接続されている。各保護要素351において、FET351bのドレインがセンサコイル3側に接続されている。また、各保護要素351において、ダイオード351aは、FET351bのソース側において、ダイオードの351aのカソードがセンサコイル3側に接続されて、ダイオードの351aのアノードはグランド(GND)に接続されている。この保護要素351では、FET351bのソース電圧が5V以上になると、自動的にFET351bがオフとなるように構成されている。
【0077】
図13に保護回路部35の各動作状態を示している。図13(a)は、保護回路部35がオフの状態(FET351bがオン)である。図13(b)は、保護回路部35がオンの状態(FET351bがオフ)である。図13(b)は、MUX部36により選択されていないセンサコイル3に誘起電圧が発生し、FET351bのソース電圧が5Vとなり、FET351bがオフとなっている状態を示している。その他、保護回路部35がオンの状態(FET351bがオフ)となるのは、例えば、MUX部36がDisable(無効)の場合において、センサコイル3に誘起電圧が発生し、FET351bのソース電圧が5Vとなる場合、MUX部36や駆動回路部3D等でエラーが生じた場合において、センサコイル3に誘起電圧が発生し、FET351bのソース電圧が5Vとなる場合等である。
【0078】
上記構成の保護回路部35により、センサコイル3に誘起電圧が発生したとしても、MUX部や駆動回路部3Dを誘起電圧から保護することができる。また、上記の保護回路部35では、誘起電圧を消費することなく、FET351bの耐圧で保護する構成であり、大きな誘起電圧に対しても対応可能である。
【0079】
さらに、前記実施形態の誘導加熱調理器100において、温度センサTにより検出された温度を用いて、センサコイル3の出力値(カウント値)を補正する構成としても良い。
【0080】
ここで、共振回路における抵抗Rpは以下で表される。
Rp=L/(Rs×C)
なお、Lは、センサコイル3のインダクタンス、Rsは、センサコイルの抵抗、Cは、共振用コンデンサ31の静電容量である。
【0081】
そして、センサコイル3の駆動回路部3Dは、センサコイル3を定電流制御して、インダクタンス値の変化による周波数の比率をカウント値として出力する。つまり、カウント値は、共振回路の抵抗Rpに比例することになる。
【0082】
また、共振回路の抵抗Rpの温度変化は、センサコイル3のコイル素材が一定の場合、以下のように表すことができる。なお、αは抵抗温度係数である。
Rp(t)=Rp(t0)×(1+α(t-t0))
【0083】
つまり、カウント値は、温度変化に対して線形的に低下する。そこで、所定の基準温度(T0)に対する温度変化(T-T0)と、予め求めた温度補正係数kとを用いて、例えば、以下の式に基づいて、カウント値を補正する。
補正後のカウント値=補正前のカウント値+k×(T-T0)
【0084】
上記のカウント値の温度補正は、位置検出用センサ30の発振周波数検知回路33又は制御部34で行っても良いし、制御機器5の位置検出部51で行っても良い。
【0085】
図14に温度補正の有り無しによるカウント値の変化を示している。図14(a)は、温度補正をしない場合の検出値の変動を示しており、この場合では、加熱開始後からカウント値が低下していき、鍋が有るにも関わらず、「鍋無し」を判定するための閾値を下回り、誤検知が発生している。一方、図14(b)は、温度補正をした場合の検出値の変動を示しており、この場合では、加熱開始後においてもカウント値の低下が抑制され、誤検知の発生がなくなっている。
【0086】
その上、前記実施形態の誘導加熱調理器100において、加熱コイル2の駆動開始時に加熱コイル2の磁束吸収で生じるセンサコイル3の出力値(インダクタンス値)の変化を補正する構成としても良い。
【0087】
具体的には、加熱コイル2の駆動開始時に加熱コイル2の磁束吸収により生じるセンサコイル3の出力値(インダクタンス値)の変化量を測定し、その測定した変化量を加熱コイル2の駆動開始後のセンサコイル3の出力値(インダクタンス値)に加算する。これにより、加熱コイル2の磁束吸収で生じるセンサコイル3の出力値(インダクタンス値)の変化を補正している。
【0088】
上記の出力値(インダクタンス値)に対する磁束吸収の影響補正は、位置検出用センサ30の発振周波数検知回路33又は制御部34で行っても良いし、制御機器5の位置検出部51で行っても良い。
【0089】
図15に磁束吸収を影響補正の有り無しによるカウント値の変化を示している。図15(a)は、磁束吸収を補正しない場合の検出値の変動を示しており、この場合では、加熱開始後に加熱コイルにより磁束が吸収されてカウント値が低下している。一方、図15(b)は、磁束吸収を補正した場合の検出値の変動を示しており、この場合では、加熱コイルの磁束吸収によるカウント値の低下分が補正されている。
【0090】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0091】
100・・・誘導加熱調理器
1 ・・・トッププレート
2 ・・・加熱コイル
3 ・・・センサコイル
4 ・・・インバータ回路
5 ・・・制御機器
B ・・・基板
B1 ・・・加熱コイル層
B2 ・・・センサ層
B3 ・・・絶縁層
T ・・・温度センサ
CN ・・・接続コネクタ
3D ・・・駆動回路部
35 ・・・保護回路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15