IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2024-86586ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法及びそれから製造されたディップ成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086586
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法及びそれから製造されたディップ成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/06 20060101AFI20240620BHJP
   C08F 2/24 20060101ALI20240620BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20240620BHJP
   B29C 41/14 20060101ALI20240620BHJP
   B29C 41/36 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
C08F236/06
C08F2/24
C08F2/38
B29C41/14
B29C41/36
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185272
(22)【出願日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2022-0175910
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョン ウォン
【テーマコード(参考)】
4F205
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4F205AA46
4F205AC05
4F205AG06
4F205AH70
4F205GA08
4F205GB01
4F205GC01
4F205GF01
4F205GF24
4F205GN21
4F205GN29
4J011AA05
4J011KA04
4J011KB14
4J011KB29
4J011NA25
4J011NB03
4J100AJ02S
4J100AM02Q
4J100AS02P
4J100AS11R
4J100CA06
4J100DA47
4J100DA50
4J100DA51
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100JA01
4J100JA57
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境に優しく機械的安定性に優れたディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)共役ジエン系モノマー、ファルネセンモノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階、(b)乳化剤及び無機溶媒を含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階、及び(c)前記モノマー混合物を重合させて共重合体ラテックスを製造する段階を含み、前記共役ジエン系モノマー及び前記ファルネセンモノマーの総重量に対して前記ファルネセンモノマーの重量比は5~55%である、ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)共役ジエン系モノマー、ファルネセンモノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階と、
(b)乳化剤及び無機溶媒を含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階と、
(c)前記モノマー混合物を重合させて共重合体ラテックスを製造する段階と、を含み、
前記共役ジエン系モノマー及び前記ファルネセンモノマーの総重量に対して前記ファルネセンモノマーの重量比は5~55%である、ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項2】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項3】
前記ファルネセンモノマーは、α-ファルネセンモノマー、β-ファルネセンモノマーまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和酸モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項6】
前記添加剤は、分子量調節剤をさらに含む、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項7】
前記分子量調節剤は、α-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項6に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項8】
前記分子量調節剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.2~0.65重量部である、請求項6に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項9】
前記(c)段階で製造された共重合体ラテックスのゲル含量は、80%以下である、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製造方法で製造された、ディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造された、ディップ成形品。
【請求項12】
前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群から選ばれる1つである、請求項11に記載のディップ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法及びそれから製造されたディップ成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用、農畜産物加工用または産業用として使用されている手袋の主原料は、天然ゴムラテックスであった。ところが、天然ゴムラテックスから製造された手袋を使用する場合、天然ゴムラテックスに含まれるタンパク質によって手袋のユーザーが接触性アレルギー疾患を患う問題が頻繁に発生した。そこで、ニトリル系共重合体ラテックスのようにタンパク質を含まない合成ゴムラテックスを適用して手袋を製造しようとする試みが行われた。ニトリル系共重合体ラテックス手袋は、天然ゴムラテックス手袋に比べて機械的強度に優れており、鋭い物体との接触が頻繁に発生する医療ないし食品分野で需要が増加する傾向にある。
【0003】
しかし、従来のニトリル系共重合体ラテックス手袋は、使用後の自然分解が困難であり、その廃棄物処理による深刻な環境汚染問題を発生させている。そこで、環境にやさしく再生可能な素材を使用しながらも、ラテックス手袋に求められる引張強度、伸び率などの機械的物性及び耐久性を満たすニトリル系共重合体ラテックス手袋の開発に対する社会的な要求が増加している。
【0004】
また、従来のニトリル系共重合体ラテックス手袋は、内面同士が互いに凝着するか、または手袋に手を入れる過程でべたつきが発生するという問題点があり、これを改善するために後処理工程においてパウダーを処理する場合、着用時に手に付着するか、または手術室などで汚染を発生させるという問題点が発生する。したがって、機械的物性及び耐久性に優れながらも、手袋内のべたつきを改善したニトリル系共重合体ラテックス手袋の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書の記載事項は、前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、本明細書の一つの目的は、環境に優しく機械的安定性に優れたディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供することである。
【0006】
本明細書の他の目的は、引張強度、伸び率などの機械的物性及び耐久性に優れながらも、ベタつきが改善されたディップ成形用ラテックス組成物及びそれから製造されたディップ成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、(a)共役ジエン系モノマー、ファルネセンモノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階、(b)乳化剤及び無機溶媒を含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階、及び(c)前記モノマー混合物を重合させて共重合体ラテックスを製造する段階を含み、前記共役ジエン系モノマー及び前記ファルネセンモノマーの総重量に対して前記ファルネセンモノマーの重量比は5~55%である、ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【0008】
一実施例において、前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0009】
一実施例において、前記ファルネセンモノマーは、α-ファルネセンモノマー、β-ファルネセンモノマーまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0010】
一実施例において、前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0011】
一実施例において、前記エチレン性不飽和酸モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0012】
一実施例において、前記添加剤は、分子量調節剤をさらに含んでもよい。
【0013】
一実施例において、前記分子量調節剤は、α-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0014】
一実施例において、前記分子量調節剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.2~0.65重量部であってもよい。
【0015】
一実施例において、前記(c)段階で製造された共重合体ラテックスのゲル含量は、80%以下であってもよい。
【0016】
他の一態様によれば、前記製造方法で製造された、ディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0017】
さらに他の態様によれば、前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造された、ディップ成形品を提供する。
【0018】
一実施例において、前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群から選ばれる1つであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本明細書の一態様によるディップ成形用ラテックス組成物の製造方法は、ファルネセンモノマーを含み、環境に優しく機械的安定性に優れたディップ成形用ラテックス組成物の製造に適用できる。
【0020】
さらに、本明細書の他の一態様によるラテックス組成とそれから製造されたディップ成形品は、引張強度、伸び率などの機械的物性及び耐久性に優れながらも、ベタつきが改善されて医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋などの製造に適用できる。
【0021】
本明細書の一態様の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明や請求範囲に記載された構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解されなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して本明細書の一態様を説明する。しかし、本明細書の記載事項は、様々な異なる形態で具現されてもよく、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において本明細書の一態様を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて類似の部分に対しては、類似の図面符号を付した。
【0023】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとするとき、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに備えることができることを意味する。
【0024】
本明細書において数値の範囲が記載されたとき、その具体的な範囲が特に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学における標準規則に従って提供される有効数字の精度を有する。例えば、10は5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0025】
以下、本明細書の一実施例を詳細に説明する。
【0026】
ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法
本明細書の一態様によるディップ成形用ラテックス組成物の製造方法は、(a)共役ジエン系モノマー、ファルネセンモノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階、(b)乳化剤及び無機溶媒を含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階、及び(c)前記モノマー混合物を重合させて共重合体ラテックスを製造する段階を含む。
【0027】
前記共役ジエン系モノマー及び前記ファルネセンモノマーの総重量に対して前記ファルネセンモノマーの重量比は、5~55%であってもよい。例えば、前記共役ジエン系モノマー及び前記ファルネセンモノマーの総重量に対して前記ファルネセンモノマーの重量比は、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。共役ジエン系モノマー及びファルネセンモノマーの総重量に対してファルネセンモノマーの重量比が前記範囲未満であれば、ラテックスの機械的安定性が低下するか、または最終成形品のべたつきが増加して耐久性が低下することがあり、前記範囲超過であれば、ラテックス重合反応速度が低下するか、またはラテックスのゲル含量が過度に増加するか、または最終成形品の引張強度及び伸び率が低下することがある。例えば、共役ジエン系モノマー及びファルネセンモノマーの総重量に対してファルネセンモノマーの重量比が前記範囲超過であれば、ラテックスのゲル含量が80%を超えるか、または最終成形品の引張強度及び伸び率がファルネセンモノマーを含まない従来のディップ成形用ラテックス組成物で製造した成形品の90%未満水準に低下し、ラテックス手袋に要求される機械的物性を満足できないことがある。
【0028】
前記(a)段階は、共重合体を構成するモノマーである共役ジエン系モノマー、ファルネセンモノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階で、窒素雰囲気下で行われてもよい。
【0029】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、1,3-ブタジエン(1,3-butadiene)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記共役ジエン系モノマーの含量は、前記モノマー混合物の総重量を基準として40~70重量%であってもよい。例えば、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。共役ジエン系モノマーの含量が前記範囲未満であれば、ラテックスのゲル含量が過度に増加するか、または最終成形品の引張強度及び伸び率が低下することがあり、前記範囲超過であれば、ラテックスの機械的安定性が低下するか、または最終成形品のべたつきが増加して耐久性が低下することがある。
【0031】
前記のファルネセンモノマー(farnesene monomer)は、α-ファルネセンモノマー、β-ファルネセンモノマーまたはこれらの組み合わせであってもよく、例えば、β-ファルネセンモノマーであってもよいが、これに限定されるものではない。ファルネセンモノマーは、様々な再生性供給源から入手可能で、環境に優しく再生可能な共重合体の製造に使用されてもよい。前記ファルネセンモノマーを使用することにより、ラテックスの機械的安定性が向上するとともに、最終成形品のべたつき性及び耐久性を改善できる。
【0032】
前記ファルネセンモノマーの含量は、前記モノマー混合物の総重量を基準として1~39重量%であってもよい。例えば、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、39重量%またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。ファルネセンモノマーの含量が前記範囲未満であれば、ラテックスの機械的安定性が低下するか、または最終成形品のべたつきが増加して耐久性が低下することがあり、前記範囲超過であれば、ラテックスのゲル含量が過度に増加するか、または最終成形品の引張強度及び伸び率が低下することがある。
【0033】
前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、アクリロニトリル(acrylonitrile)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーの含量は、前記モノマー混合物の総重量を基準として1~50重量%であってもよい。例えば、1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。エチレン性不飽和ニトリルモノマーの含量が前記範囲を外れる場合、成形品が過度に柔らかくなるか、または過度に硬化してディップ成形品のユーザーにおいて着用感を低下させるか、またはディップ成形品の耐油性が低下し、引張強度が低くなることがある。
【0035】
前記エチレン性不飽和酸モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、メタクリル酸(methacrylic acid)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記エチレン性不飽和酸モノマーの含量は、前記モノマー混合物の総重量を基準として1~10重量%であってもよい。例えば、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。エチレン性不飽和酸モノマーの含量が前記範囲を外れる場合、成形品が過度に柔らかくなるか、または過度に硬化してディップ成形品のユーザーにおいて着用感を低下させるか、またはディップ成形品の耐油性が低下し、引張強度が低くなることがある。
【0037】
前記(b)段階は、乳化剤及び無機溶媒を含む添加剤を前記モノマー混合物に投入して乳化重合を準備する段階である。
【0038】
前記乳化剤はイオン性界面活性剤であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記乳化剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0039】
前記乳化剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
前記乳化剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~5重量部であってもよい。
【0041】
前記無機溶媒は水であってもよく、例えば、イオン交換水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記添加剤は、分子量調節剤をさらに含んでもよい。
【0043】
前記分子量調節剤は、α-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、t-ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記分子量調節剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.2~0.65重量部であってもよい。例えば、前記分子量調節剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して、0.2重量部、0.21重量部、0.22重量部、0.23重量部、0.24重量部、0.25重量部、0.26重量部、0.27重量部、0.28重量部、0.29重量部、0.3重量部、0.31重量部、0.32重量部、0.33重量部、0.34重量部、0.35重量部、0.36重量部、0.37重量部、0.38重量部、0.39重量部、0.4重量部、0.41重量部、0.42重量部、0.43重量部、0.44重量部、0.45重量部、0.46重量部、0.47重量部、0.48重量部、0.49重量部、0.5重量部、0.51重量部、0.52重量部、0.53重量部、0.54重量部、0.55重量部、0.56重量部、0.57重量部、0.58重量部、0.59重量部、0.6重量部、0.61重量部、0.62重量部、0.63重量部、0.64重量部、0.65重量部またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。分子量調節剤の含量が前記範囲未満であれば、ラテックスのゲル含量が増加することがあり、前記範囲超過であれば、重合反応速度が増加してラテックスの機械的安定性が低下するか、またはラテックス分子量が減少して最終成形品の引張強度及び耐久性が低下することがある。
【0045】
前記(c)段階は、前記モノマー混合物を乳化重合させて共重合体ラテックスを製造する段階で、重合を通じて製造された前記共重合体ラテックスは、固形分濃度が30~60%、例えば、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%またはこれらのうち2つの値の間の範囲であり、pH7~12、例えば、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、9.0、9.2、9.4、9.6、9.8、10.0、10.2、10.4、10.6、10.8、11.0、11.2、11.4、11.6、11.8、12.0またはこれらのうち2つの値の間の範囲に調節されてもよく、これに限定されるものではない。
【0046】
前記(c)段階の重合は10~90℃で行われてもよく、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃またはこれらのうち2つの温度の間の温度で行われてもよい。
【0047】
前記(c)段階は、重合開始剤を投入して前記モノマー混合物を重合させる段階、重合停止剤を投入して重合反応を停止する段階、及び未反応モノマーを除去し、固形分濃度及びpHを調節して共重合体ラテックスを得る段階を含んでもよい。
【0048】
前記重合開始剤は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物、t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレートなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、過硫酸カリウム(potassium peroxodisulfate)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記重合開始剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.02~1.5重量部であってもよい。
【0049】
前記重合停止剤は、前記重合反応の転換率が90%以上の場合に投入するものであってもよく、例えば、前記重合停止剤は、前記重合反応の転換率が90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%またはこれらのうち2つの値の間の値の場合に投入するものであってもよい。
【0050】
前記重合停止剤は、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸及びそのアルカリ金属イオン、ナトリウムヒドロキシド、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸、及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、ナトリウムヒドロキシド(sodium hydroxide)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記重合停止剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.02~1.5重量部であってもよい。
【0051】
前記共重合体ラテックスの固形分濃度及びpHは、pH調整剤、酸化防止剤、消泡剤などの添加剤を投入することにより調節してもよい。
【0052】
前記pH調整剤は、水酸化カリウム水溶液またはアンモニア水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記共重合体ラテックスは、機械的安定性に優れており、安定したディップ成形用ラテックス組成物の製造に適用されてもよい。
【0054】
前記(c)段階で製造された共重合体ラテックスのゲル含量は、80%以下であってもよい。例えば、前記共重合体ラテックスのゲル含量は、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下または50%以下であってもよい。共重合体ラテックスのゲル含量は、ラテックス内の架橋結合の程度を示す。ゲル含量が高いほど、架橋結合が多いことを意味する。共重合体ラテックスのゲル含量が前記範囲超過であれば、手袋に微細なクラックや穴が発生し、引張強度と伸び率の低下が現れることがある。
【0055】
前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法は、(d)前記共重合体ラテックスに加硫剤、架橋剤及び加硫促進剤を投入してディップ成形用ラテックス組成物を製造する段階をさらに含んでもよい。
【0056】
前記加硫剤は、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄を含んでもよいが、これに限定されるものではない。前記加硫剤は、共役二重結合内のパイ結合を攻撃して高分子鎖の間を架橋するため、共重合体に弾性を付与するだけでなく、ディップ成形品の耐化学性を改善しうる。前記加硫剤の含量は、前記共重合体ラテックス100重量部に対して0.1~3.0重量部であってもよい。
【0057】
前記架橋剤は、酸化亜鉛であってもよいが、これに限定されるものではない。前記架橋剤の含量は、前記共重合体ラテックス100重量部に対して0.1~3.0重量部であってもよい。
【0058】
前記加硫促進剤は、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2-ジチオビスベンゾチオゾール-2-スルフェンアミド、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、2-モルホリノチオベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジンクジエチルジチオカーバメート、ジンクジブチルジチオカーバメート、ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、ジンクジブチルジチオカーバメート(zinc dibutyldithiocarbamate)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記加硫促進剤の含量は、前記共重合体ラテックス100重量部に対して0.1~3.0重量部であってもよい。
【0059】
ディップ成形用ラテックス組成物
本明細書の他の一態様によるディップ成形用ラテックス組成物は、前述したディップ成形用ラテックス組成物の製造方法で製造されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、固形分濃度が10~30重量%であり、pH9~11であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0061】
ディップ成形品
本明細書のさらに他の一態様によるディップ成形品は、前述したディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造される。
【0062】
前記ディップ成形品は引張強度、伸び率などの機械的物性に優れており、耐久性に優れており、運動摩擦係数が高く、べたつきが少なく肌触りなどの品質に優れているため、様々な分野のディップ成形品に適用できる。
【0063】
前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群から選ばれる一つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
以下、本明細書の実施例についてさらに詳細に説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容が縮小または制限されて解釈できない。以下、明示的に提示していない本明細書の様々な具現例のそれぞれの効果は、当該部分で具体的に記載する。
【0065】
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器、及び窒素ガスの引き込み口が備えられており、各構成要素を連続的に投入できるように装着された1Lの高圧反応器を用意した。前記反応器を窒素で置換した後、モノマー混合物の総重量を基準として1,3-ブタジエン57重量%、β-ファルネセンモノマー10重量%、アクリロニトリル27重量%及びメタクリル酸6重量%を混合したモノマー混合物を投入した。その後、前記モノマー混合物100重量部に対して分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan,TDDM)0.48重量部、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量部及びイオン交換水120重量部を反応器に投入した。反応器の温度を約30℃まで昇温した後、重合開始剤として過硫酸カリウム0.3重量部を投入した。
【0066】
前記モノマー混合物を基準として転換率が約95%に達した時点で、ナトリウムヒドロキシド0.9重量部を投入して重合反応を停止した。その後、脱臭工程を通じて未反応のモノマーを除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤などを添加して固形分濃度45重量%、pH8.5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0067】
実施例2
1,3-ブタジエン及びβ-ファルネセンモノマーの含量がそれぞれ52重量%及び15重量%のモノマー混合物を投入し、t-ドデシルメルカプタンを0.52重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0068】
実施例3
1,3-ブタジエン及びβ-ファルネセンモノマーの含量がそれぞれ47重量%および20重量%のモノマー混合物を投入し、t-ドデシルメルカプタンを0.60重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0069】
実施例4
1,3-ブタジエン及びβ-ファルネセンモノマーの含量がそれぞれ37重量%及び30重量%のモノマー混合物を投入し、t-ドデシルメルカプタンを0.64重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0070】
比較例1
β-ファルネセンモノマーを含まず、1,3-ブタジエンの含量が67重量%のモノマー混合物を投入したことを除いては、前記実施例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0071】
比較例2
1,3-ブタジエン及びβ-ファルネセンモノマーの含量がそれぞれ27重量%および40重量%のモノマー混合物を投入したことを除いては、前記実施例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0072】
比較例3
1,3-ブタジエンを含まず、β-ファルネセンモノマーの含量が67重量%のモノマー混合物を投入したことを除いては、前記実施例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0073】
比較例4
t-ドデシルメルカプタンを0.64重量部投入したことを除いては、前記比較例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0074】
比較例5
t-ドデシルメルカプタンを0.68重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0075】
比較例6
t-ドデシルメルカプタンを0.72重量部投入したことを除いては、前記実施例3と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0076】
比較例7
t-ドデシルメルカプタンを0.76重量部投入したことを除いては、前記実施例4と同様にしてカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0077】
下記表1は、前記実施例1~4及び比較例1~7のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス重合に使用されたモノマー混合物の1,3-ブタジエン含量、β-ファルネセンモノマー含量、1,3-ブタジエンとβ-ファルネセンモノマーの総重量に対してβ-ファルネセンモノマーの重量比、及び分子量調節剤であるt-ドデシルメルカプタンの含量をまとめたものである。
【0078】
【表1】
【0079】
実験例1
実験例1-1:機械的安定性の評価
前記実施例1~4及び比較例1~7によって製造したそれぞれのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの機械的安定性を評価するために、ラテックス安定性テスト(Maron test)を行った。ラテックス安定性テストは、マロンテスト機を使用し、試料枠内にラテックス試料30gを入れ、49N、1000rpmで1分間せん断応力を加えた後に出た凝集物の重量を測定した。ラテックス安定性テスト時に出た凝集物の重量は、その数値が低いほど、機械的安定性に優れていると評価できる。
【0080】
実験例1-2:ゲル含量の測定
攪拌中のイソプロピルアルコール200mLに前記実施例1~4及び比較例1~7によって製造した各カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス5gを投入して凝固させた。凝固物を120メッシュ(mesh)の金網でろ過し、50±2℃、750±10mmHgの恒温真空乾燥機で1時間乾燥した後、デシケーター(desiccator)で室温まで放置した。乾燥した試料0.25~0.35gを0.1mg単位の精度で正確に坪量(W)して三角フラスコに投入し、メチルエチルケトン(MEK)100mLを加えた後、2時間撹拌した。その後、前記試料をろ過紙で全量ろ過した。ろ液20mLを加熱してメチルエチルケトンを蒸発させた後、デシケーターで室温まで放冷した後、0.1mg単位の精度で正確に坪量(W)した。下記式1によって試料中のゲル含量を測定し、2つの平均値を小数点以下1桁まで計算した。
【0081】
【数1】
【0082】
下記表2は、実施例1~4及び比較例1~7によって製造したそれぞれのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに対する機械的安定性評価及びゲル含量測定結果を示すものである。
【0083】
【表2】
【0084】
前記表2を参考すると、重合に使用された1,3-ブタジエンとβ-ファルネセンモノマーの総重量に対してβ-ファルネセンモノマーの重量比がそれぞれ15%、22%、30%、45%であり、分子量調節剤であるt-ドデシルメルカプタンの含量がモノマー混合物100重量部に対して0.48~0.64重量部である実施例1~4のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスが、β-ファルネセンモノマーを使用していない比較例1、4及び分子量調節剤を0.68~0.76重量部投入した比較例5~7に比べて優れた機械的安定性を示した。
【0085】
また、実施例1~4のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのゲル含量は、いずれも80%以下で優れた値を示したが、重合に使用された1,3-ブタジエンとβ-ファルネセンモノマーの総重量に対してβ-ファルネセンモノマーの重量比がそれぞれ60%、100%である比較例2、3のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのゲル含量は、80%を超えることを確認した。
【0086】
製造例
前記実施例1~4及び比較例1~7によって製造したそれぞれのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部に対して硫黄1.0重量部、酸化亜鉛1.2重量部、加硫促進剤としてジンクジブチルジチオカーバメート(zinc dibutyldithiocarbamate,ZDBC)0.5重量部を添加し、4%水酸化カリウム水溶液及び2次蒸留水を加えて固形分濃度18%、pH10.0のディップ成形用ラテックス組成物を製造した。
【0087】
実験例2
実験例2-1:機械的物性の評価
前記製造例によって製造した各ディップ成形用ラテックス組成物からASTM D-412に準じてダンベル形状の試験片を作製した。UTM(Universal Testing Machine)を用いて前記試験片を伸長速度500mm/minで引き寄せ、破断時の引張強度及び伸び率を測定して機械的物性を評価した。通常、ラテックス成形品の引張強度及び伸び率は、その数値が高いほど、ディップ品質に優れていると評価される。
【0088】
実験例2-2:運動摩擦係数の測定
前記製造例によって製造したそれぞれのディップ成形用ラテックス組成物のフィルム試験片を作製した後、摩擦係数測定機を用いて、試験片のLatex side(手袋製造時に手に当たる部分)の摩擦係数を測定した。摩擦係数測定機のスレッド(sled)のサイズは30mm、垂直荷重は100gに設定した。前記ディップ成形用ラテックス組成物の試験片上にスレッドを配置した後、50mmを引っ張りながらフィルム上面のスレッドが移動しながら読み込んだLoad値の平均値から運動摩擦係数値を測定した。運動摩擦係数値が低いほど、ディップ成形品のべたつきが改善されたと評価できる。
【0089】
実験例2-3:耐久性の評価
前記製造例によって製造したそれぞれのディップ成形用ラテックス組成物から幅30mm、長さ135mm、厚さ0.06~0.08mmの試験片を作製した。前記ディップ成形品を長手方向に20%伸長させた状態で35℃のpH4.0~4.3クエン酸溶液に浸漬してクランプで固定し、モータを使用して10秒間長手方向の伸び率が50%になるように伸張させて2秒間固定した後、10秒間長手方向の伸び率が20%になるように弛緩させる工程を繰り返し、前記試験片が破損する時間を最大180分まで測定した。
【0090】
下記表3は、前記製造例によって製造したそれぞれのディップ成形用ラテックス組成物から作製した試験片の機械的物性評価、運動摩擦係数の測定及び耐久性評価結果を示すものである。
【0091】
【表3】
【0092】
前記表3を参照すると、重合に使用された1,3-ブタジエンとβ-ファルネセンモノマーの総重量に対してβ-ファルネセンモノマーの重量比がそれぞれ15%、22%、30%、45%であり、分子量調節剤であるt-ドデシルメルカプタンの含量がモノマー混合物100重量部に対して0.48~0.64重量部である実施例1~4のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、β-ファルネセンモノマーを使用していない比較例1及び4の従来のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスと類似したレベルの引張強度を示し、ラテックス手袋に要求される機械的物性を満たした。一方、β-ファルネセンモノマーの重量比がそれぞれ60%、100%である比較例2、3のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス及び分子量調節剤を0.68~0.76重量部投入した比較例5~7のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの引張強度は、β-ファルネセンモノマーを使用していない比較例1または比較例4のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス引張強度の90%未満レベルを示し、機械的物性が低下することを確認した。
【0093】
また、重合に使用された1,3-ブタジエンとβ-ファルネセンモノマーの総重量に対してβ-ファルネセンモノマーの重量比がそれぞれ15%、22%、30%、45%である実施例1~4のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの伸び率は、β-ファルネセンモノマーを使用していない比較例1及び4の従来のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの伸び率と類似したレベルを示し、ラテックス手袋に要求される機械的物性を満たした。一方、β-ファルネセンモノマーの重量比がそれぞれ60%、100%である比較例2、3のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの伸び率は、β-ファルネセンモノマーを使用していない比較例1のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス伸び率の90%未満レベルを示し、機械的物性が低下することを確認した。
【0094】
運動摩擦係数及び耐久性の場合、β-ファルネセンモノマーを使用した実施例1~4のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスが、β-ファルネセンモノマーを使用していない比較例1のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに比べて優れた値を示した。
【0095】
前述した本明細書の説明は例示のためのものであり、本明細書の一態様が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更せずに、他の具体的な形態に容易に変形可能であるということが理解できるだろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解しなければならない。例えば、単一の形態で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよく、同様に分散されていると説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0096】
本明細書の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味と範囲、及びその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本明細書の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。