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特開2024-86589移動可能式キャビネット及びエネルギー貯蔵装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086589
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】移動可能式キャビネット及びエネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/02 20190101AFI20240620BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B65D90/02 P
E06B5/16
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189050
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】18/081,704
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523418764
【氏名又は名称】台泥儲能科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】張 安平
(72)【発明者】
【氏名】李 鐘培
【テーマコード(参考)】
2E239
3E170
【Fターム(参考)】
2E239CA26
2E239CA42
2E239CA52
2E239CA66
3E170AA21
3E170AB30
3E170BA02
3E170DA03
3E170HB04
3E170HC01
3E170HD03
3E170NA02
3E170PA01
3E170PA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンクリート本体を含む移動可能式キャビネット及びエネルギー貯蔵装置に関する。
【解決手段】移動可能式キャビネット10は、収容スペースS1を形成する複数の壁110(111~115)を含むコンクリート本体110、及び前記収容スペースS1内の前記複数の壁110(111~115)の1つ又は複数の内表面上に設置され、その中で前記収容スペースS1にはコンフィギュレーションによって少なくとも1つの電池システムが収容され、かつ前記収容スペースS1に露出している難燃材料層120を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能式キャビネットであって、
収容スペースを形成する複数の壁を含むコンクリート本体、及び
前記収容スペース内の前記複数の壁の1つ又は複数の内表面上に設置され、その中で前記収容スペースにはコンフィギュレーションによって少なくとも1つの電池システムが収容され、かつ前記収容スペースに露出している難燃材料層
を含む、移動可能式キャビネット。
【請求項2】
前記コンクリート本体と前記難燃材料層との全体がコンフィギュレーションによって約600℃以上の温度を持つ燃焼炎に耐える、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項3】
前記コンクリート本体は超高性能コンクリート(ultra-high performance concrete;UHPC)によって形成されており、かつ前記難燃材料層は前記コンクリート本体の前記複数の壁に直接接触している、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項4】
その中で前記難燃材料層はセラミックファイバーボード、セラミックファイバーコットンブランケット、耐火モルタル、断熱耐火レンガ、又は上記の任意の組み合わせを含み、かつ前記移動可能式キャビネットは金属板、鉄筋かご、複数のあばら筋で構成した鉄筋構成材、又は上記の任意の組み合わせを含まない、請求項3に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項5】
前記コンクリート本体は含有量120kg/m~180kg/mのシリカヒューム及び含有量30kg/m~150kg/mの石英粉を含み、前記コンクリート本体の圧縮強度は約120MPaを上回り、かつ前記コンクリート本体の極限曲げ強度は約15MPaを上回る、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項6】
前記コンクリート本体の単位構造重量は約2300kg/m~約2700kg/mであり、かつ前記コンクリート本体の熱伝導係数は約1.6W/m・K~約1.8W/m・Kである、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項7】
前記コンクリート本体は含有量30kg/m~60kg/mの合成繊維を含み、前記複数の壁はそれぞれ約5cm以下の厚みを有し、かつ前記難燃材料層は約5cm以下の厚みを有する、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項8】
前記コンクリート本体は一体成形である、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項9】
前記コンクリート本体はさらに、前記収容スペースを複数のサブスペースに分離するのに用いられる分離壁を含み、かつ前記難燃材料層は前記2つの相対する表面上に設置されている、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項10】
さらに扉を含み、それは前記コンクリート本体の開口の側縁に枢着されており、前記扉はコンクリート層を含み、前記コンクリート層はシリカヒューム、石英粉、合成繊維、又は上記の任意の組み合わせを含み、かつ前記難燃材料層はさらに前記扉の前記コンクリート層上に設置されている、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項11】
さらに難燃粘着層を含み、それは前記コンクリート本体と前記難燃材料層との間に設置され、その中で前記難燃材料層はセラミックファイバーボード、セラミックファイバーコットンブランケット、断熱耐火レンガ、又は上記の任意の組み合わせを含み、かつ前記難燃粘着層は耐火モルタルを含む、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項12】
さらに少なくとも1つの吊り下げ部品を含み、それは前記コンクリート本体上にロック固定されている、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項13】
前記コンクリート本体はシリカヒューム、石英粉、合成繊維、又は上記の任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電池システムは複数の電池パック(pack)を含み、前記複数の電池パックのそれぞれは複数の組電池を含み、かつ前記少なくとも1つの電池システムは前記コンクリート本体の前記複数の壁のうち少なくとも1つの内表面上にロック固定されている、請求項1に記載の移動可能式キャビネット。
【請求項15】
前記少なくとも1つの電池システムはロック固定機構によって前記コンクリート本体の前記複数の壁の少なくとも1つの前記内表面上にロック固定されており、かつ前記ロック固定機構はさらに前記難燃材料層をロック固定している、請求項14に記載の移動可能式キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、実質上、移動可能式キャビネット及びエネルギー貯蔵装置に関する。さらに特定すると、本開示はコンクリート本体を含む移動可能式キャビネット及びエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーの使用効率と融通性を向上させるため、エネルギー貯蔵装置の開発が既にここ数年の傾向となっている。電池技術(例えば、リチウム電池)が発展・成熟するにつれて、電池エネルギー貯蔵装置が既にエネルギー貯蔵装置の主流の1つとなっている。積載や搬送の利便性及び耐候性等を考慮した上で、現在はみな国際海運で常用される金属コンテナをエネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵ラックとして使用している。
【0003】
しかし、電池は貯蔵又は搬送の過程において、各種の要因(例えば、過充電、衝撃、電子制御システムエラー、操作環境又は製造工程上の瑕疵)により、電池内のセパレータの破損を引き起こすことで、正極と負極が接触してショートが起こり、これにより高温熱の化学反応が発生して電池内の可燃性有機成分が発火する可能性がある。電池の熱暴走(thermal runaway)により発生する高温は、さらに電池エネルギー貯蔵装置の付近にある装置の損壊及び火災事故といった不測の事態の発生を招く可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つ又は複数の実施例において、移動可能式キャビネットは、コンクリート本体及び難燃材料層を含む。コンクリート本体は、複数の壁を含み、これにより収容スペースを形成する。難燃材料層は、収容スペース内の複数の壁の1つ又は複数の内表面上に設置されている。
【0005】
1つ又は複数の実施例において、エネルギー貯蔵装置は、移動可能式キャビネット及び少なくとも1つの電池システムを含む。移動可能式キャビネットは収容スペースを備え、移動可能式キャビネットはコンフィギュレーションによって約600℃以上の温度の燃焼炎に耐える。電池システムは移動可能式キャビネット上に固定接合されている。
【0006】
添付の図面を結び付けて本開示を閲読した場合、以下の実施例に基づいて本開示の形態をより良く理解できる。各種特性はサイズの比率通りに描かれていない可能性があり、かつ本開示内容を明確に説明するために各種特性のサイズを任意に拡大又は縮小している可能性があることに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの概略図である。
図1B】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの断面図である。
図1C】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの断面図である。
図2】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた電池システムの概略図である。
図2A】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた電池パックの概略図である。
図3A】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット及び電池システムの部分透視図である。
図3B】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの部分透視図である。
図4A】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置の透視図である。
図4B】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置の透視図である。
図4C】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置の透視図である。
図4D】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置の透視図である。
図5A】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの概略図である。
図5B】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの扉の概略図及びコンクリート本体と難燃材料層の部分側面図である。
図6】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの扉の概略図である。
図7A】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの扉の分解図である。
図7B】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの扉の部分透視図である。
図8A】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの透視図である。
図8B】本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の図式及び実施例において、同じ又は類似したエレメントは、同じエレメント符号で表示している。
【0009】
実施例
図1Aは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10の概略図であり、図1Bは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10の断面図である。いくつかの実施例において、図1B図1A内の構造のx方向に沿って表示した断面図である。移動可能式キャビネット10は、コンクリート本体110、難燃材料層120及び扉130を含む。また、明確に示し説明するため、一部のエレメント(例えば、扉130)は図1B内では省略し図示していない。
【0010】
コンクリート本体110は、複数の壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)を含むことができ、これにより収容スペースS1を形成する。いくつかの実施例において、収容スペースS1のサイズは、作業員がその中に入り、収容スペースS1内に設置されている機能構成材又は装置に対しメンテナンス及び/又は操作をすることが許容されるサイズである。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の壁111、112及び113は側壁であってよく、壁114は頂板であってよく、壁115は床板であってよい。いくつかの実施例において、壁111、112、113、114及び115はそれぞれ約5cm以下の厚みT1を有する。いくつかの実施例において、壁111、112、113、114及び115はそれぞれ約2.5cm以下の厚みT1を有する。いくつかの実施例において、図1A及び図1Bに示すとおり、壁111、112、113、114及び115は板状構造を有し、壁111、112、113、114及び115の外表面は実質上平坦な表面である。いくつかの実施例において、壁111、112、113、114及び115のうちの1つ又は複数は非板状構造を有していてもよく、例えば、壁111、112、113、114及び115のうちの1つ又は複数の外表面は、波型造形構造、孔状構造、溝状構造、突起リブ構造、又はその他任意の形状の立体造形といった特殊立体造形を有していてもよい。
【0011】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は合成繊維を含むことができる。いくつかの実施例において、合成繊維の長さは約4ミリメートル(mm)~約20ミリメートル、合成繊維の直径は約0.2ミリメートルである。いくつかの実施例において、コンクリート本体110に占める合成繊維の含有量は約30kg/m~約60kg/mである。合成繊維は、コンクリート本体110の曲げ強度を増強することができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は超高性能コンクリート(ultra-high performance concrete;UHPC)によって形成されている。
【0012】
本開示のいくつかの実施例に基づいて、コンクリート本体110は前述の合成繊維を含み、及び/又は超高性能コンクリートによって形成されているため、鉄筋構造(例えば、鉄筋かご及び/又は複数のあばら筋で構成した鉄筋構成材)をコンクリート本体110の壁中に設置する必要がなく、コンクリート本体110自身が一般鉄筋コンクリートに類似した耐屈曲性を備えることができる。さらに、コンクリート本体110中に曲げ強度を上げるのに用いる鉄筋構造を設置する必要がないため、コンクリート本体110が比較的薄い壁厚を備えるようにすることができ、これにより移動可能式キャビネット10の全体重量を低減でき、また移動可能式キャビネット10の搬送や移動にも有利である。
【0013】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110はさらに、異なる成分を有する1種又は2種以上のセメント、複数種の異なる粒材、酸化物及び複数種の異なる添加剤を含むことができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110はポルトランドセメント、シリカヒューム(そのサイズの特性は粉末状である)、シリカサンド(そのサイズ又は粒径は約2センチメートルを下回る)、石英粉(そのサイズ又は粒径は約20ミリメートル(mm)~約30ミリメートル)、減水剤、消泡剤、膨張剤、又は上記の任意の組み合わせを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は含有量約800kg/m~約900kg/mのポルトランドI型セメント、ポルトランドII型セメント、ポルトランドIII型セメント、ポルトランドIV型セメント及びポルトランドV型セメントのうちの1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は含有量約400kg/m~約500kg/mのポルトランドI型セメント、ポルトランドII型セメント、ポルトランドIII型セメント、ポルトランドIV型セメント及びポルトランドV型セメントのうちの1つ、及び含有量約400kg/m~約500kg/mのポルトランドI型セメント、ポルトランドII型セメント、ポルトランドIII型セメント、ポルトランドIV型セメント及びポルトランドV型セメントのうちの別の1つを含むことができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は含有量約120kg/m~約180kg/mのシリカヒュームを含むことができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は含有量約900kg/m~約1000kg/mのシリカサンドを含むことができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は含有量約30kg/m~約150kg/mの石英粉を含むことができる。いくつかの実施例において、上述のシリカヒュームと石英粉の組み合わせによって、一般コンクリートと比較して、コンクリート本体110により強い圧縮強度を持たせることができる。いくつかの実施例において、酸化物を添加することによりコンクリート本体110の外観の色の調整に用いることができる。
【0015】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は含有量約10kg/m~約20kg/mの減水剤を含むことができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は含有量約10kg/m以下の消泡剤及び含有量約25kg/m以下の膨張剤を含むことができる。
【0016】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110の単位構造重量は約2300 kg/m以上である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の単位構造重量は約2300kg/m~約2700kg/mである。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の圧縮強度は約120MPa以上である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の圧縮強度は約120MPa~約180MPaである。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の極限曲げ強度は約15MPaを上回る。このようにすると、コンクリート本体110中に曲げ強度を上げるのに用いる鉄筋かご及び/又は複数のあばら筋で構成した鉄筋構成材を設置する必要がなく、コンクリート本体110が比較的薄い壁厚を備えることができ、これにより移動可能式キャビネット10の全体重量を低減できる。その上、コンクリート本体110は移動可能式キャビネット10のために高い圧縮強度及び高い曲げ強度を提供することができ、従って比較的極端な環境(例えば、高温の燃焼炎を受ける環境)で使用してもなお全体構造の完全性を保持できる。
【0017】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110の熱伝導係数は約1.8W/m・K以下である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の熱伝導係数は約1.6W/m・K~約1.8W/m・Kである。金属材料又は一般コンクリート(その熱伝導係数は約1.9W/m・K~約2.1W/m・K)と比較して、本開示のコンクリート本体110はより優れた熱絶縁効果を有し、収容スペースS1内とコンクリート本体110外との間の熱伝導を緩和するのに有利であり、収容スペースS1内の装置又はエレメントが特定の高温又は低温を維持する必要がある場合、コンクリート本体110の良好な熱絶縁効果は空調設備が必要とするエネルギーを低減するのに役立ち、コストを低減でき、さらに環境保護、省エネ、二酸化炭素削減という付加的な効果を有する。
【0018】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は一体成形である。いくつかの実施例において、混合して完成させたコンクリートスラリーを所定の形状の型枠に注入し、引き続いて養生及び脱型をすることにより、一体成形(例えば、壁111、112、113、114及び115が一体成形)のコンクリート本体110を作り出すことができる。
【0019】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110は組み立ててできる複数の部分構造構成材又は壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)を含むことができる。いくつかの実施例において、混合して完成させたコンクリートスラリーを所定の形状の型枠に注入し、引き続いて養生及び脱型をすることにより複数の部分構造構成材又は壁を作り出すことができ、さらに複数の部分構造構成材又は壁を連結部品(例えば、ボルト)によって接合し、又はグラウトを構造構成材又は壁の継ぎ目に補填する方式で接合することで、複数の部分構造構成材又は壁を組み立ててできるコンクリート本体110を形成することができる。
【0020】
難燃材料層120は、収容スペースS1内の壁の1つ又は複数の内表面上に設置できる。例えば、難燃材料層120は、壁111の内表面111a、壁112の内表面(図示していない)、壁113の内表面113a、壁114の内表面114a及び壁115の内表面115a上に設置できる。いくつかの実施例において、難燃材料層120は、コンクリート本体110の複数の壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)に直接接触する。いくつかの実施例において、難燃材料層120は、コンクリート本体110の複数の壁(例えば、壁111、112、113、114及び115)の1つ又は複数の内表面に直接接触する。いくつかの実施例において、難燃材料層120はセラミックファイバーボード、セラミックファイバーコットンブランケット、耐火モルタル、断熱耐火レンガ、又は上記の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、難燃材料層は約5cm以下の厚みT2を有する。いくつかの実施例において、難燃材料層は約2.5cm以下の厚みT2を有する。
【0021】
いくつかの実施例において、混合して完成させたコンクリートスラリーを所定の形状の型枠に注入し、コンクリートスラリーが硬化する前に、難燃材料層120とコンクリートスラリーの半製品を貼り合わせ、続いてさらに養生を行う。このようにすると、硬化後のコンクリートを難燃材料層120と頑丈に結合させることができ、これによりコンクリート本体110と難燃材料層120の結合界面が高い結合強さを持つことで、難燃材料層120は高温熱を受けても剥離しない。
【0022】
いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10はコンフィギュレーションによって約600℃以上の温度の燃焼炎に耐える。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10はコンフィギュレーションによって約900℃以上の温度の燃焼炎に耐える。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10はコンフィギュレーションによって約900℃以上~約1200℃の温度の燃焼炎に耐える。いくつかの実施例において、コンクリート本体110と難燃材料層120との全体はコンフィギュレーションによって約600℃以上の温度を持つ燃焼炎に耐える。いくつかの実施例において、コンクリート本体110と難燃材料層120との全体はコンフィギュレーションによって約900℃以上の温度の燃焼炎に耐える。いくつかの実施例において、コンクリート本体110と難燃材料層120との全体はコンフィギュレーションによって約900℃以上~約1200℃の温度の燃焼炎に耐える。
【0023】
扉130は、コンクリート本体110の開口117の側縁(例えば、側縁1171及び1172のうち少なくとも1つ)に枢着できる。いくつかの実施例において、扉枠130Aは開口117の側縁上に設置されている。いくつかの実施例において、扉130は、扉枠130Aによってコンクリート本体110の開口117に枢着可能である。いくつかの実施例において、扉130は、扉枠130Aによってコンクリート本体110の開口117の側縁1171及び1172のうち少なくとも1つに枢着可能である。いくつかの実施例において、扉130は、二枚扉を含むことができ、二枚扉は左右に両開きになっており、かつそれぞれコンクリート本体110の開口117の側縁1171及び1172に枢着されている。いくつかの実施例において、扉130は、コンクリート本体110の開口117の側縁1171及び1172上の扉枠130Aに枢着されている。いくつかの実施例において、扉130は、一枚扉を含むことができ、扉板の一方はコンクリート本体110の開口117の側縁1171又は側縁1172に枢着されている。いくつかの実施例において、扉130は、扉枠130Aによってコンクリート本体110の開口117の側縁1171又は側縁1172に枢着可能である。いくつかの実施例において、扉130は防火扉であってよく、扉枠130Aは防火材料を含むことができる。
【0024】
いくつかの実施例において、図1Aに示すとおり、移動可能式キャビネット10は扉130を含み、かつ扉130は移動可能式キャビネット10の1つの側面(壁112と相対する側面であり、つまり開口117がある側面でもある)の面積全体をカバーしている。その他のいくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10はさらに壁111~115以外の別の壁を含むことができ、それは壁112に相対する側面に位置し、かつ開口117は上記壁の一部分のエリアしか露出せず、扉130は上記壁の開口117の側縁に枢着されていてよい。その他のいくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10は、2つ以上の扉を含むことができる。いくつかの実施例において、これらの扉は同じ又は異なる壁(同じ又は異なる側面)上に設置されていてよく、かつこれらの扉は異なる設計であってよい(例えば、それぞれ二枚扉の両開きの設計及び一枚扉の設計であってよい)。
【0025】
図1Cは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10’の断面図である。明確に示し説明するため、一部のエレメント(例えば、扉130)は図1C内では省略し図示していない。
【0026】
移動可能式キャビネット10’はさらに難燃粘着層160を含むことができる。いくつかの実施例において、難燃粘着層160はコンクリート本体110と難燃材料層120との間に設置できる。いくつかの実施例において、難燃材料層120はセラミックファイバーボード、セラミックファイバーコットンブランケット、断熱耐火レンガ、又は上記の任意の組み合わせを含み、難燃粘着層160は耐火モルタルを含む。いくつかの実施例において、耐火モルタルはアルミニウム基質材料を含む。
【0027】
いくつかの実施例において、混合して完成させたコンクリートスラリーを所定の形状の型枠に注入し、引き続いて養生及び脱型をすることにより、コンクリート本体110又はコンクリート本体110の部分構造構成材(例えば、壁)を作り出すことができる。引き続いて、コンクリート本体110の表面上に難燃粘着層160を塗布し、さらに難燃材料層120を難燃粘着層160上に貼付し、その後養生を行う。いくつかの実施例において、このステップの養生温度は約25℃~約105℃、養生時間は約1~7日である。このようにすれば、養生完了後の難燃粘着層160(例えば、熱を受けた後)はコンクリート本体110と難燃材料層120との間に化学的結合を形成するため、コンクリート本体110と難燃材料層120とを緊密に結合して剥離しないようにすることができる。
【0028】
図2は本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた電池システム20の概略図である。
【0029】
いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10はコンフィギュレーションによって少なくとも1つの電池システム20を収容している。いくつかの実施例において、電池システム20は複数の電池パック(pack)210を含むことができ、各電池パック210には複数の組電池を含むことができる。いくつかの実施例において、電池システム20は収容ボックス220を含むことができ、電池パック210は収容ボックス220の中に設置されている。
【0030】
図2Aは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた電池パック210Aの概略図である。電池パック210Aの主な構造を明確に示し説明するため、一部のエレメントは図2A内では省略し図示していない。
【0031】
いくつかの実施例において、電池パック210Aは複数の組電池211及びハウジング215を含むことができ、組電池211はハウジング215の中に設置されている。いくつかの実施例において、各組電池211は複数の電池213を含むことができる。いくつかの実施例において、電池213は円筒形のリチウムイオン電池又はその他の類型の電池であってよい。例えば、円筒形リチウムイオン電池は、18650電池、21700電池、又はその他の類型のリチウムイオン電池であってよい。いくつかの実施例において、電池パック210A内の複数の組電池211は互いに直列接続されており、組電池211内の電池213は互いに並列接続されている。いくつかの実施例において、電池213の正負極の延伸方向はハウジング215の底板の延伸方向に垂直である。
【0032】
組電池211内の電池213(例えば、リチウム電池)の充電と放電の過程において、各種の要因(例えば、過充電、衝撃、電子制御システムエラー、操作環境又は製造工程上の瑕疵)により、リチウムイオンが電池内のセパレータを突き刺してしまい、正極と負極が接触してショートを起こし、これにより高温熱の化学反応が発生して電池内の可燃性有機成分が発火する可能性がある。リチウム電池の熱暴走が引き起こす高温は600℃~1000℃にまで又は甚だしきにいたってはさらに高い温度にまで達する可能性があり、これらの熱エネルギーが発火した電池213から周囲に向けて拡散する時、隣接するその他の電池213のセルもこれにつれて温度が上昇し、セルの許容温度(例えば、リチウム電池の許容温度は約150℃)を超えた時、温度が上昇した隣接するセルも自ら放熱し、組電池211さらには電池システム20の全面的な延焼を引き起こす。さらに、電池内部の正極材料の燃焼は内部材料の化学反応によるものであり、従って燃焼炎の持続的な発生を招き、また燃焼炎の温度は600℃~1000℃にまで達する可能性がある。
【0033】
本開示のいくつかの実施例に基づいて、移動可能式キャビネット10はコンクリート本体110及び難燃材料層120の複合構造を含み、リチウム電池の熱暴走によって引き起こされる高温を効果的に移動可能式キャビネット10内に制限することができ、同時に移動可能式キャビネット10内部に水を通すように組み合わせるだけで、火炎の拡散がもたらす火災事故の発生を防止できる。しかも、リチウム電池の熱暴走が引き起こす高温を移動可能式キャビネット10内に制限できるため、火炎が移動可能式キャビネット10の外に広がって火炎の蔓延をもたらすということがないようにし、これにより災害救助のプロセスをより便利及び安全にすることができる。
【0034】
さらに、従来の金属コンテナをエネルギー貯蔵キャビネットとして採用する場合、金属は高温を受けた時、変形、歪み、折れ曲がり等の状況が発生しやすいため、金属コンテナの崩壊を招き、ひいては火炎の広がりをもたらし、延焼して制御しがたい状況をもたらしやすくなる。相対的に説明すると、本開示のいくつかの実施例に基づいて、移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110は高い圧縮強度及び高い曲げ強度を有しており、これによりコンクリート本体110及び難燃材料層120の複合構造は高温環境にさらされても軟化・変形による崩壊が発生せず、災害救助のプロセスをより便利及び安全にすることができる。さらに、本開示のコンクリート本体110は鉄筋を内部に埋め込む必要なく、又は少量の鉄筋棒を埋め込むだけで、移動可能式キャビネット10に十分な構造強度を提供できる。従来の鉄筋コンクリートと比較して、本開示の移動可能式キャビネット10は重量を軽くすることができ、移動及び搬送にさらに有利である。
【0035】
図3Aは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10及び電池システム20の部分透視図である。いくつかの実施例において、図3A図2に示した収容ボックス220の底板を図1に示した移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110の壁(例えば、壁111、112、113、114又は115)上にロック固定した構造の部分透視図を描いたものである。
【0036】
いくつかの実施例において、電池システム20は移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110のうち少なくとも1つの壁上にロック固定されている。いくつかの実施例において、電池システム20はロック固定機構30によってコンクリート本体110のうち少なくとも1つの壁上にロック固定されている。いくつかの実施例において、電池システム20の収容ボックス220はロック固定機構30によってコンクリート本体110のうち少なくとも1つの壁上にロック固定されている。
【0037】
いくつかの実施例において、ロック固定機構30はスタッドボルト310及びナット320を含むことができ、移動可能式キャビネット10はロックホール10H1を有し、スタッドボルト310が螺合してロックホール10H1にロック固定される。いくつかの実施例において、スタッドボルト310はロックホール10H1中に穿設され、ナット320によって10H1にロック固定されている。いくつかの実施例において、スタッドボルト310は収容ボックス220の底板のロックホール及びロックホール10H1中に穿設され、ナット320によって10H1にロック固定され、それによって電池システム20を移動可能式キャビネット10上にロック固定している。
【0038】
いくつかの実施例において、ロック固定機構30はさらに難燃材料層120にロック固定する。ロックホール10H1は難燃材料層120及び少なくとも一部分のコンクリート本体110の壁を貫通することができる。いくつかの実施例において、ロックホール10H1は難燃材料層120及び一部分のコンクリート本体110の壁を貫通し、かつロックホール10H1の底部はコンクリート本体110の壁中に位置している。
【0039】
図3Bは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10の部分透視図である。いくつかの実施例において、図3A図1に示した移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110の壁114の構造を描いた部分透視図である。
【0040】
いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10は少なくとも1つの吊り下げ部品140を含むことができ、それはコンクリート本体110上にロック固定されている。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10はロックホール10H2を有し、吊り下げ部品140のスタッドボルトがロックホール10H2中に穿設されている。いくつかの実施例において、ロックホール10H2はコンクリート本体110の壁(例えば、壁114)及び一部分の難燃材料層120を貫通している。いくつかの実施例において、吊り下げ装置を使用し、吊り下げ部品140を介して移動可能式キャビネット10を引き上げたり移動したりできる。
【0041】
いくつかの実施例において、所定の形状(例えば、ロックホール形状の突起構造)を備える型枠を使用し、混合して完成させたコンクリートスラリーを所定の形状の型枠に注入し、引き続いて養生及び脱型をすることにより、ロックホール10H1及び10H2を備えたコンクリート本体110を作り出すことができる。
【0042】
図4Aは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置1Aの透視図である。エネルギー貯蔵装置1Aは、移動可能式キャビネット10及び1つ又は複数の電池システム20を含む。
【0043】
いくつかの実施例において、電池システム20は移動可能式キャビネット10上に固定接合されている。いくつかの実施例において、電池システム20は移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110の壁115上にロック固定されている。いくつかの実施例において、電池システム20は、図3Aに示したロック固定機構30によって移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110の壁115上にロック固定可能である。
【0044】
図4Bは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置1Bの透視図である。エネルギー貯蔵装置1Bは、移動可能式キャビネット10及び1つ又は複数の電池システム20を含む。いくつかの実施例において、電池システム20は移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110の壁113及び115上にロック固定されている。
【0045】
図4Cは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置1Cの透視図である。エネルギー貯蔵装置1Cは、移動可能式キャビネット10及び1つ又は複数の電池システム20を含む。いくつかの実施例において、電池システム20は移動可能式キャビネット10のコンクリート本体110の壁114及び115上にロックされている。
【0046】
図4Dは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いたエネルギー貯蔵装置1Dの透視図である。エネルギー貯蔵装置1Dは、移動可能式キャビネット10及び1つ又は複数の電池システム20を含む。
【0047】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110はさらに分離壁116を含むことができ、それは収容スペースS1を複数のサブスペース(例えば、サブスペースS11及びS12)に分離するのに用いられる。いくつかの実施例において、難燃材料層120は分離壁116の2つの相対する表面116a及び116b上に設置されている。
【0048】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110のサブスペースS11及びサブスペースS12内にそれぞれ1つ又は複数の電池システム20を設置可能である。いくつかの実施例において、複数の電池システム20はそれぞれサブスペースS11内の1つ又は複数の壁(例えば、壁112、113、114及び115)上及びサブスペースS12内の1つ又は複数の壁(例えば、壁111、112、114及び115)上にロック固定可能である。いくつかの実施例において、サブスペースS11内の電池システム20は分離壁116上にロック固定可能である。いくつかの実施例において、サブスペースS12内の電池システム20は分離壁116上にロック固定可能である。
【0049】
本開示のいくつかの実施例に基づくと、分離壁116の設計により1つのサブスペース内の電池システムの熱暴走をそのサブスペース内に制限することができ、その他のサブスペースひいては移動可能式キャビネット10の内部全体に火炎が蔓延する可能性を低減し、従って火炎の拡散がもたらす火災事故の発生をさらに効果的に防止できる。
【0050】
図5Aは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10Aの概略図である。
【0051】
いくつかの実施例において、コンクリート本体110の1つ又は複数の壁は非板状構造を備えている。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の壁114(又は頂板)は突起リブにより取り囲まれて形成されたくぼみ構造を備えている。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の壁113(又は側壁)は複数の垂直リブを有し、これらの垂直リブは複数のくぼみエリアを画定している。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の壁113の垂直リブ上に複数の穿孔を有している。これらの穿孔はロック固定作用を備えることができ、例えば、複数のコンクリートの板体を組み立てて壁113にし、及び/又は壁113を隣接する壁112、114及び115に組み付ける等である。いくつかの実施例において、コンクリート本体110の1つ又は複数の壁は、見た目の美しさという理由に基づいて、例えば管状、波状、不規則な形状といった各種の異なる立体形状を持つことができる。いくつかの実施例において、扉130は、コンクリート本体110の開口117の側縁(例えば、側縁1171及び1172)に枢着できる。
【0052】
図5Bは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10Aの扉130の概略図及びコンクリート本体110と難燃材料層120の部分側面図である。いくつかの実施例において、点線枠A1のエリアに示しているのは、扉130及び扉枠130Aを除いたコンクリート本体110と難燃材料層120の部分側面図である。
【0053】
いくつかの実施例において、扉130は二枚扉を含み、二枚扉は左右に両開きになっており、かつそれぞれコンクリート本体110の開口117の側縁1171及び1172に枢着されている。いくつかの実施例において、扉130は、扉枠130Aによってコンクリート本体110の開口117の側縁1171及び1172に枢着可能である。いくつかの実施例において、扉130は防火扉であってよく、扉枠130Aは防火材料を含んでいてよい。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10Aの扉130は一枚扉を含むこともでき、それはコンクリート本体110の開口117の側縁1171又は側縁1172に枢着されている。いくつかの実施例において、同時に図5Aを参照されたい。移動可能式キャビネット10Aはさらに壁111、壁112及び壁113のうち1つ又は複数に位置する1つ又は複数の扉を含むことができる。
【0054】
いくつかの実施例において、図5Bに示すとおり、扉枠130Aがコンクリート本体110上に設置され、かつ難燃材料層120がコンクリート本体110上に設置されている。いくつかの実施例において、扉枠130Aがコンクリート本体110の壁の内表面上に設置され、かつ難燃材料層120がコンクリート本体110の壁の内表面上に設置されている。いくつかの実施例において、開口117から収容スペースS1の方向を見ると、扉枠130Aは難燃材料層120を覆っている。
【0055】
図6は本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10Aの扉130’の概略図である。
【0056】
いくつかの実施例において、扉130’はコンクリート層131を含む。いくつかの実施例において、難燃材料層120はさらに扉130’のコンクリート層131上に設置されている。いくつかの実施例において、扉130’はさらに扉板框133を含み、コンクリート層131は扉板框133内に設置されている。いくつかの実施例において、扉枠130A及び扉板框133は防火材料を含むことができる。いくつかの実施例において、コンクリート本体110は超高性能コンクリート(UHPC)によって形成されている。いくつかの実施例において、コンクリート層131とコンクリート本体110は同じ材質で形成されている。
【0057】
図7Aは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10Aの扉130’の分解図である。いくつかの実施例において、前述の移動可能式キャビネット10及び10’は図7Aに示した扉130’を含んでいてもよい。
【0058】
いくつかの実施例において、扉130’の一枚扉はコンクリート層131及び難燃材料層120を含む。コンクリート層131は難燃材料層120と直接接触していてよい。いくつかの実施例において、扉130’の一枚扉はさらに難燃粘着層(例えば、前述の難燃粘着層160)を含むことができ、難燃粘着層はコンクリート層131と難燃材料層120との間に設置できる。
【0059】
図7Bは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネットの扉の部分透視図である。
【0060】
いくつかの実施例において、コンクリート層131及び難燃材料層120はいずれも扉板框133内に設置されている。コンクリート層131及び難燃材料層120は、係合方式、連結部品(例えば、ボルト)による接合、又はその他の適切な方式によって扉板框133内に組み付けられていてよい。いくつかの実施例において、コンクリート層131及び難燃材料層120の総厚は扉板框133の厚み以下である。
【0061】
図8Aは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10Bの透視図である。
【0062】
いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10Bはさらに複数の鉄筋棒150を含むことができ、それはコンクリート本体110内に埋め込まれている。いくつかの実施例において、鉄筋棒150の幅はコンクリート本体110の壁厚より小さい。いくつかの実施例において、鉄筋棒150と難燃材料層120はコンクリート本体110の一部分によって分離されている。いくつかの実施例において、鉄筋棒150はコンクリート本体110の1つ又は複数の辺に沿って延伸している。
【0063】
いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10Bは金属板を含まない。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10Bは、コンクリート本体110上に貼り合わされた又はコンクリート本体110内に埋め込まれた金属板を含まない。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10Bは、鉄筋かご及び/又は複数のあばら筋で構成した鉄筋構成材を含まない。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10Bは、コンクリート本体110と結合した鉄筋かご及び/又は複数のあばら筋で構成した鉄筋構成材を含まない。
【0064】
図8Bは本開示のいくつかの実施例に基づいて描いた移動可能式キャビネット10Cの透視図である。いくつかの実施例において、移動可能式キャビネット10Cの構造は移動可能式キャビネット10Bと類似しており、その違いは鉄筋棒150がさらにコンクリート本体110の1つ又は複数の壁の中に埋め込まれている点にある。
【0065】
以下の文は本開示に基づいたいくつかの実施例を示しており、さらに移動可能式キャビネットに用いられるコンクリート本体の特性及び長所の例示的な実施例の実験結果を示すのに用いられる。表1は実施例E1、E2、E3、E4及びC1の実験条件を示し、表2は実施例E1、E2、E3及びE4のテスト結果を示している。その中で「セメントI」及び「セメントII」はポルトランドI型セメント、ポルトランドII型セメント、ポルトランドIII型セメント、ポルトランドIV型セメント及びポルトランドV型セメントの中から2つが選ばれており、「粒材1」はシリカヒューム、「粒材2」は石英粉、「粒材3」はシリカサンド、「添加剤1」は減水剤、「添加剤2」は消泡剤、「添加剤3」は膨張剤である。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示した実施例のセメント、粒材、酸化物及び添加剤を比率に従って水と混合し、かつ数分間撹拌した後、スラリーが一様かつ糊状になるのを待ってから合成繊維を投入し、続けて再度撹拌して一様にし、続けてすぐにスラリーを型枠の中に注入する。次に22℃~24℃の養生温度と50~95%の湿度で3日間養生を行い、脱型し、脱型後の完成品は28日後に機械的性質のテストを実施しなければならず、テスト結果は表2に示すとおりである。
【0068】
【表2】
【0069】
表2内に示した結果に基づくと、一般コンクリートと比較して、本開示のいくつかの実施例に基づくコンクリート本体は良好な機械的性質を有することが明らかに見てとれる。本開示のいくつかの実施例のコンクリート本体は、約2300kg/m~約2700kg/mの単位構造重量、約120MPaを上回る圧縮強度、及び約15MPaを上回る極限曲げ強度を有する。さらに、本開示のいくつかの実施例のコンクリート本体は、約15MPaを上回る初期亀裂曲げ強度、約35GPaを上回る弾性係数、及び約5MPaを上回る引張強度を有する。その上、本開示のいくつかの実施例のコンクリート本体は、約300mm/mを下回る収縮率、約5x10-13/secを下回る塩化物イオン拡散係数、及び約1.6W/m・K~約1.8W/m・Kの熱伝導係数を有する。
【0070】
このほか、表3では本開示のいくつかの実施例に基づくコンクリート本体とその他の多種の材料の重量と抗圧力の比較を示している。その中で、コンクリート本体は表1~2の実施例E3を採用し、一般コンクリートは表1~2の実施例C1を採用している。
【0071】
【表3】
【0072】
表3内に示した結果に基づくと、一般コンクリートと比較して、本開示のいくつかの実施例に基づくコンクリート本体の重量は軽く、比較的軽い移動可能式キャビネットを作るのに有利であることが明らかに見てとれる。さらに、プレストレストコンクリートや鉄筋コンクリートと比較して、本開示のいくつかの実施例に基づくコンクリート本体は同じ圧縮強度において薄い厚みを有するため、比較的薄いコンクリート本体の壁を作るのに有利である。
【0073】
このほか、本開示のいくつかの実施例に基づく移動可能式キャビネットの噴霧燃焼実験結果は下記のとおりである。その中で、移動可能式キャビネットはコンクリート本体110及び難燃材料層120の複合構造を含み、1100℃±50℃で難燃材料層120に対し噴霧燃焼を1時間持続させた後、難燃材料層120は少しも貫通しておらず、しかもコンクリート本体110及び難燃材料層120の複合構造は破裂又は炸裂を少しも起こしておらず、さらに噴霧燃焼を終了したコンクリート本体110の背面温度は約150℃以下を維持している。以上の結果から、本開示のいくつかの実施例に基づく移動可能式キャビネットは防火性・耐燃性・抗圧性といった良好な特性を備えていることがわかる。
【0074】
本文中で使用しているように、術語「だいたい」、「実質上」、「基本的に」及び「約(およそ)」は説明及び小さな変化の考慮のために用いている。事象又は状態を踏まえて使用する場合、術語は事象又は状態が明確に発生した状況、及び事象又は状態が極めて近似して発生した状況を指すことができる。例を挙げて説明すると、数値と結び付けて使用する場合、これらの術語は当該数値の±10%以内の変化の範囲を指し、例えば、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内、又は±0.05%以内の変化の範囲である。例を挙げて説明すると、2つの値の間の差が値の平均値の±10%以内である場合、例えば±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.1%以内、又は±0.05%以内である場合、2つの数値は「実質上」又は「およそ」同じだと考えられる。例を挙げて説明すると、「実質上」平行とは、0°に対して±10°以内の角度の変化の範囲を指すことができ、例えば±5°以内、±4°以内、±3°以内、±2°以内、±1°以内、±0.5°以内、±0.1°以内、又は±0.05°以内の角度の変化の範囲である。例を挙げて説明すると、「実質上」垂直とは、90°に対して±10°以内の角度の変化の範囲を指すことができ、例えば±5°以内、±4°以内、±3°以内、±2°以内、±1°以内、±0.5°以内、±0.1°以内、又は±0.05°以内の角度の変化の範囲である。
【0075】
2つの表面の間の位置ずれが5μm以下、2μm以下、1μm以下、又は0.5μm以下であるといった場合、2つの表面が共面又は実質上共面であると考えられる。
【0076】
本文中で使用しているように、術語「導電(conductive)」、「電気伝導(electrically conductive)」及び「導電率」は電流輸送の能力を指す。導電材料は通常、電流流動に対する抵抗が極めて小さいか又はゼロを示す材料を指す。導電率の測定単位はジーメンス/メートル(S/m)である。通常、導電性材料は約10S/mを上回る導電率(例えば、少なくとも10S/m又は少なくとも10S/m)を有する材料である。材料の導電率は、温度によって変化することがあってもよい。別途規定がない限り、室温下で材料を計測した時の導電率とする。
【0077】
本文中で使用しているように、上下の文で別途明確に規定されている場合を除き、単数の術語「1つの(a/an)」及び「当該」は複数の指示物を含むことができる。いくつかの実施例の説明において、別の構成材の「上」又は「上方」に設置するとは、前の構成材が直接、後の構成材の上にある(例えば、この実体と接触している)状況、及び1つ又は複数の介入部品が前の構成材と後の構成材との間に位置する状況を含むことができる。
【0078】
本開示の特定の実施例を参考にして描写及び説明しているが、これらの描写及び説明は本開示を制限しない。添付の特許請求の範囲が画定する本開示の真実の精神及び範疇を逸脱しない状況において、各種の変更を行うことができ、かつ実施例の中で同等の構成材を代替させることができることを、当業者は明らかに理解できる。図式は比率どおりに描かれていない可能性がある。製造工程における変量等によって、本開示におけるプロセスの再現と実際の装置との間に違いが存在してもよい。具体的に示していない本開示のその他の実施例が存在してもよい。明細書及び図式は説明のためのものであり、制限するためのものではないと見なされなければならない。具体的な状況、材料、物質の組成、方法又はプロセスを本開示の目標、精神及び範疇に適応するように、修正を行うことができる。この類のすべての修正は、ここに添付する特許請求の範囲の範疇内にあるようにされたい。特定の手順による特定の操作の実施を参考にすることで、本文中で開示する方法を説明しているが、本開示の教示から逸脱しない状況において、これらの操作を組み合わせ、さらに細分化し、又は改めて順序をつけ直すことによって同等の方法を形成できることを理解できる。従って、本文中に具体的な指示がある場合を除き、操作の手順及びグループ分けは本開示を制限するものではない。
【符号の説明】
【0079】
1A エネルギー貯蔵装置
1B エネルギー貯蔵装置
1C エネルギー貯蔵装置
1D エネルギー貯蔵装置
10 移動可能式キャビネット
10’ 移動可能式キャビネット
10A 移動可能式キャビネット
10B 移動可能式キャビネット
10C 移動可能式キャビネット
10H1 ロックホール
10H2 ロックホール
20 電池システム
30 ロック固定機構
110 コンクリート本体
111 壁
111a 内表面
112 壁
113 壁
113a 内表面
114 壁
114a 内表面
115 壁
115a 内表面
116 分離壁
117 開口
1171 側縁
1172 側縁
120 難燃材料層
130 扉
130’ 扉
130A 扉枠
131 コンクリート層
133 扉板框
140 吊り下げ部品
150 鉄筋棒
160 難燃粘着層
160a 表面
160b 表面
210 電池パック
210A 電池パック
210B 電池パック
211 組電池
213 電池
215 ハウジング
220 収容ボックス
310 スタッドボルト
320 ナット
S1 収容スペース
S11 サブスペース
S12 サブスペース
T1 厚み
T2 厚み
図1A
図1B
図1C
図2
図2A
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B