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特開2024-8659ドアホールカバーおよびドアホールカバーの製造方法
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  • 特開-ドアホールカバーおよびドアホールカバーの製造方法 図1
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  • 特開-ドアホールカバーおよびドアホールカバーの製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008659
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ドアホールカバーおよびドアホールカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110699
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 泰亮
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケーブル部材が挿通する貫通孔の隙間の低減に専用部品を必要としないドアホールカバーを実現する。
【解決手段】ドアインナーパネル(D2)のドアホールに取り付けられるドアホールカバー(1)であって、ケーブル部材(C)が挿通可能な貫通孔(11)が形成されたカバー部材(10)と、カバー部材(10)の車外側周縁部に位置するシール部材(20)と、貫通孔(11)を車外側から覆い、ケーブル部材(C)が挿通可能な挿通部(31)が形成されている蓋体(30)とを備え、蓋体(30)の一部とシール部材(20)の一部とが車内外方向において重なって位置している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールカバーであって、
ケーブル部材が挿通可能な貫通孔が形成された、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、
前記カバー部材における車外側の面の周縁部に位置するシール部材と、
前記貫通孔を車外側から覆い、前記ケーブル部材が挿通可能な挿通部が形成されている蓋体と、を備え、
前記挿通部が形成された位置とは異なる前記蓋体の一部と、前記シール部材の一部とが、車内外方向において重なって位置している、ドアホールカバー。
【請求項2】
前記蓋体は、前記シール部材の一部と連結して一体的に形成されている、請求項1に記載のドアホールカバー。
【請求項3】
前記挿通部は、前記ケーブル部材における延伸方向と直交する断面の形状に対応する形状の挿通孔を少なくとも1つ含む、請求項1または2に記載のドアホールカバー。
【請求項4】
前記挿通部は、前記挿通孔と、前記挿通孔に接続するスリットとの組み合わせとして形成されている、請求項3に記載のドアホールカバー。
【請求項5】
前記挿通部は、スリットを少なくとも1つ含む、請求項1または2に記載のドアホールカバー。
【請求項6】
前記挿通部は、複数の前記スリットの組み合わせとして形成されており、少なくとも2つの前記スリットは互いに交差している、請求項5に記載のドアホールカバー。
【請求項7】
自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールカバーの製造方法であって、
前記ドアホールカバーは、
ケーブル部材が挿通可能な貫通孔が形成された、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、
前記カバー部材における車外側の周縁部に位置するシール部材と、
前記貫通孔を車外側から覆い、前記ケーブル部材が挿通可能な挿通部が形成されている蓋体と、を備えるものであり、
前記挿通部が形成される位置とは異なる前記蓋体の一部と、前記シール部材の一部とが連結するように、前記蓋体と前記シール部材の一部とを一体的に成形する工程を含む、ドアホールカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアホールカバーおよびドアホールカバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のドアのドアインナーパネルに形成されたドアホールから、雨水等が車内側へ浸入するのを防止するため、ドアホールカバーが使用されている。ドアホールカバーは、ドアラッチケーブル等のケーブル部材を通すための貫通孔を備えている場合がある。このような貫通孔は、自動車のドアの構造上、ドアホールカバーの上部に設定される場合が多い。
【0003】
このような貫通孔は、雨水の浸入または音漏れの原因となり得る。一方で、ケーブル部材と貫通孔の周縁部との隙間を完全に塞ぐと、貫通孔の周縁部に対してケーブル部材が強く固定されてしまう。そうすると、自動車の衝突等でドアに強い力がかかった場合、ドアホールカバーが、意図せずドアから外れると共にケーブル部材を引っ張ることで、ドアが開いてしまう恐れがある。
【0004】
例えば特許文献1では、サービスホールカバーにスリットを設けると共に、2本のリンクにドアリンクサイレンサを装着し、スリットの部分にドアリンクサイレンサの中心を置くことが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、ラッチリリースケーブルの外周が緩衝材によって囲まれており、この緩衝材を介して、ホールカバーに設けられたケーブル/ハーネス挿通部の孔にラッチリリースケーブルが挿通される態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭57-48655号公報
【特許文献2】特開2006-44635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貫通孔を挿通するケーブル部材がドアラッチケーブルである場合、ドアラッチケーブルは、ドアハンドルの操作に応じて貫通孔に対する位置が移動する。特許文献2のように、貫通孔を移動するケーブル部材がウレタンスポンジ等の緩衝材によって囲まれている場合、当該緩衝材は隙間の閉塞には不十分である。そのため、止水性および遮音性に課題がある。
【0008】
また、特許文献1および特許文献2のような先行技術では、ケーブル部材が挿通する貫通孔の隙間を塞ぐことのみを目的とした、ドアリンクサイレンサまたは緩衝材等の閉塞用部品が必要になるという問題がある。
【0009】
本発明の一態様は、ドアラッチケーブル等のケーブル部材が挿通移動する貫通孔の隙間の低減に専用部品を必要としない、雨水等の車内側への浸入防止機能と、前記貫通孔の隙間を塞ぐ機能とを兼ね備えたドアホールカバー等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアホールカバーは、自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールカバーであって、ケーブル部材が挿通可能な貫通孔が形成された、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、前記カバー部材における車外側の面の周縁部に位置するシール部材と、前記貫通孔を車外側から覆い、前記ケーブル部材が挿通可能な挿通部が形成されている蓋体と、を備え、前記挿通部が形成された位置とは異なる前記蓋体の一部と、前記シール部材の一部とが、車内外方向において重なって位置している。
【0011】
本発明の一態様に係るドアホールカバーは、前記蓋体は、前記シール部材の一部と連結して一体的に形成されていてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係るドアホールカバーは、前記挿通部は、前記ケーブル部材における延伸方向と直交する断面の形状に対応する形状の挿通孔を少なくとも1つ含んでいてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係るドアホールカバーは、前記挿通部は、前記挿通孔と、前記挿通孔に接続するスリットとの組み合わせとして形成されていてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係るドアホールカバーは、前記挿通部は、スリットを少なくとも1つ含んでいてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係るドアホールカバーは、前記挿通部は、複数の前記スリットの組み合わせとして形成されており、少なくとも2つの前記スリットは互いに交差していてもよい。
【0016】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアホールカバーの製造方法は、自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールに取り付けられるドアホールカバーの製造方法であって、前記ドアホールカバーは、ケーブル部材が挿通可能な貫通孔が形成された、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、前記カバー部材における車外側の周縁部に位置するシール部材と、前記貫通孔を車外側から覆い、前記ケーブル部材が挿通可能な挿通部が形成されている蓋体と、を備えるものであり、前記挿通部が形成される位置とは異なる前記蓋体の一部と、前記シール部材の一部とが連結するように、前記蓋体と前記シール部材の一部とを一体的に成形する工程を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、ドアラッチケーブル等のケーブル部材が挿通移動する貫通孔の隙間の低減に専用部品を必要としない、雨水等の車内側への浸入防止機能と、前記貫通孔の隙間を塞ぐ機能とを兼ね備えたドアホールカバー等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係るドアホールカバーが取り付けられるドアを車内側から見た模式図である。
図2】一実施形態に係るドアホールカバーを示す模式図である。
図3図2に示すドアホールカバーにケーブルが挿通した状態を示す模式図である。
図4】一実施形態に係るドアホールカバーが備える蓋体の変形例を示す模式図である。
図5】一実施形態に係るドアホールカバーが備える蓋体の他の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に、本実施形態に係るドアホールカバー1が装着される自動車のドアDの一例を示している。図1では、紙面に向かって手前側が車内側であり、奥側が車外側である。図1の符号101に、ドア内装パネルD1が装着された状態のドアDを示し、図1の符号102に、ドア内装パネルD1を取り外した状態のドアDを示している。
【0020】
図1に示すように、ドアDにおいて、最も車外側に位置するドアアウターパネル(不図示)の車内側の面にドアインナーパネルD2が取り付けられる。ドアインナーパネルD2の車内側の面には、ドア内装パネルD1が取り付けられる。ドア内装パネルD1は、例えばドアハンドルD3等の部品を備えている。
【0021】
ドアインナーパネルD2には、作業用の孔であるドアホールD4が形成されている。ドアホールD4は、例えばドアDの内部に配置された各種部品を修理するために、作業者が手または工具等を入れるための開口部である。なお、図1に示すドアDの形成態様はあくまで一例である。ドアホールD4の個数・形成箇所は、必要に応じて任意に変更されてよい。
【0022】
ドアインナーパネルD2の車内側の面には、図2に示すドアホールカバー1が取り付けられる。ドアホールカバー1は、自動車のドアガラスとドアアウターパネルに取り付けられたベルトラインアウターウェザーストリップ(不図示)との間からドアDの内部に浸入した雨水等が、ドアホールD4から車内に浸入するのを防止する。また、ドアホールカバー1は、ドアホールD4を塞ぐことでドアDの遮音性を向上する。
【0023】
〔ドアホールカバー〕
図2は、本実施形態に係るドアホールカバー1を示す図であって、符号201は車内側から見た模式図を示し、符号202は車外側から見た模式図を示す。図3は、ドアホールカバー1に形成される貫通孔11をケーブル部材Cが挿通した状態を示す図であって、符号301は車内側から見た模式図を示し、符号302は符号301に示す図におけるA-A線の矢視断面図を示す。
【0024】
図2および図3に示すように、ドアホールカバー1は、自動車のドアインナーパネルD2に形成されたドアホールD4に取り付けられる板状部材である。ドアホールカバー1は、ドアインナーパネルD2に車内側から取り付けられる。ドアホールカバー1のドアインナーパネルD2への固定方法は特に限定されないが、例えば、嵌め込みによって行ってもよく、ドアホールカバー1にクリップ(不図示)等の固定用部材を設けて行ってもよい。
【0025】
ドアホールカバー1は、カバー部材10と、シール部材20と、蓋体30とを備えている。
【0026】
(カバー部材)
カバー部材10は、ドアホールD4を車内側から覆う板状部材である。カバー部材10は、車内側の面である内面10aと、車外側の面である外面10bとを有している。カバー部材10には、ケーブル部材Cが挿通可能な貫通孔11が形成されている。貫通孔11は、カバー部材10の内面10a側から外面10b側まで貫通する孔として形成されている。
【0027】
貫通孔11は、例えば、ドアホールカバー1がドアインナーパネルD2に取り付けられた状態で、ケーブル部材Cを挿通可能とするために形成される。ケーブル部材Cの種類は特に限定されないが、例えば、ドアハンドルD3とドアラッチ(不図示)とを接続するドアラッチケーブル等が挙げられる。ドアラッチケーブルは、ドアハンドルD3の操作により、頻繁に貫通孔11に対する位置が移動する。また、ドアラッチケーブルは比較的重量が大きいため、貫通孔11に対する位置の移動によりドアホールカバー1に作用する力の影響が大きくなる傾向がある。そのため、貫通孔11に挿通されるケーブル部材Cがドアラッチケーブルである場合には特に、貫通孔11の周縁部とケーブル部材Cとの間が強く固定されない態様により、可能な限り貫通孔11の周縁部とケーブル部材Cとの隙間を塞ぐことが求められる。
【0028】
図3の符号302に示すように、貫通孔11は、その周縁部において一部が他の部分よりも車外側に位置することで、当該一部と当該他の部分とが車内外方向において重なるように形成されていてもよい。この場合、貫通孔11は、車内外方向に対して傾いて開口するように形成される。言い換えれば、カバー部材10の一部に車内側または車外側に突出した突出部(不図示)が形成されており、貫通孔11は、当該突出部の一部が開口するように形成されていてもよい。
【0029】
このように、貫通孔11が車内外方向に対して傾いて開口していれば、例えば、貫通孔11が開口する方向が、ケーブル部材Cが挿通する方向に沿うようにカバー部材10を設計できる。この場合、ケーブル部材Cの貫通孔11への挿通が容易となる。また、貫通孔11が開口する方向をドアDの下側方向とすれば、ドアDの上側から浸入する雨水等が貫通孔11を通る可能性を低減できる。
【0030】
カバー部材10の材料としては、例えば加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、複合体または金属を挙げることができる。加硫ゴムの例としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)およびNBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)が挙げられる。熱可塑性エストラマーの例としては、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)およびTPS(スチレン系熱可塑性エラストマー)が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)およびEVA(エチレン酢酸ビニル)が挙げられる。複合体の例としては、ガラス繊維ブレンド等の繊維の集合体が挙げられる。金属の例としては、アルミ合金および鉄合金が挙げられる。なかでも、カバー部材10の材料は、剛性および遮音性の観点から熱可塑性樹脂または金属であることが好ましく、軽量化の観点からは熱可塑性樹脂であることがより好ましい。カバー部材10は、これらのうち単一の材料により形成されていてもよく、複数の材料により形成されていてもよい。
【0031】
(シール部材)
シール部材20は、カバー部材10の外面10bの周縁部に位置する。ドアホールカバー1がドアインナーパネルD2に取り付けられた状態において、シール部材20はドアインナーパネルD2に当接し、ドアホールカバー1とドアインナーパネルD2との間をシールする。このようなシール部材20のシール機能により、車内側への雨水等の浸入を低減できると共に、ドアDの遮音性を向上できる。
【0032】
シール部材20は、外面10bの周縁部の全周に亘って位置していることが好ましい。このような構成によれば、ドアホールカバー1の止水性および遮音性を容易に確保できる。なお、所望の止水性および遮音性が確保される限り、シール部材20は、外面10bの周縁部において、一部に不連続となる部分があってもよい。
【0033】
シール部材20がカバー部材10に取り付けられる態様は、特に限定されない。シール部材20は、例えば、カバー部材10に接着剤等により取り付けられていてもよい。また、シール部材20は、カバー部材10において外面10bの周縁部に形成された溝に挿入されることで、カバー部材10に取り付けられていてもよい。
【0034】
シール部材20の材料としては、例えば加硫ゴム、熱可塑性エラストマーまたは熱可塑性樹脂を挙げることができる。加硫ゴムの材料としては、例えば、EPDM、IR、CR、SBRおよびNBRが挙げられる。熱可塑性エストラマーの例としては、TPOおよびTPSが挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、PE、PP、EVAおよび軟質のPVCが挙げられる。シール部材20は、これらのうち単一の材料により形成されていてもよく、複数の材料により形成されていてもよい。シール部材20の材料は、止水性および遮音性向上の観点から可撓性を有することが好ましい。シール部材20の材料は、ソリッド状であっても、発泡したスポンジ状であってもよい。
【0035】
(蓋体)
蓋体30は、貫通孔11を車外側から覆う部材である。蓋体30には、ケーブル部材Cが挿通可能な挿通部が形成されている。本実施形態において、挿通部は、1つ以上のスリット31を含んでいる。蓋体30は、貫通孔11を覆うことによって、貫通孔11による浸水または音漏れを低減する。「貫通孔11を覆う」とは、ドアホールカバー1を車外側から見た場合に、スリット31が閉じていれば、蓋体30の存在により貫通孔11が視認されない状態であればよい。
【0036】
図3に示すように、蓋体30に形成されているスリット31には、例えば、ケーブル部材Cが挿通可能である。そのため、蓋体30は、ケーブル部材Cが、ドアホールカバー1が取り付けられた状態でドアホールD4を挿通することを妨げない。本実施形態において、スリット31は、1本の直線状の切り込みとして蓋体30に形成されている。「直線状」とは、完全な直線であることは要さず、視認した場合におおよそ直線状であると認識できればよい。
【0037】
上述の特許文献1および特許文献2に開示の先行技術のように、ケーブル部材Cに閉塞用部品を装着する場合、貫通孔11に挿通される部分はケーブル部材Cの太さよりも太くなる。そのため、閉塞用部品と貫通孔11の周縁部との間に生じる隙間も大きくなってしまう恐れがある。
【0038】
本実施形態に係るドアホールカバー1によれば、貫通孔11を蓋体30で塞ぎつつ、スリット31によりケーブル部材Cの挿通が可能となる。スリット31によれば、ケーブル部材Cと蓋体30とは強く固定されないため、ケーブル部材CからドアDに力がかかることが防止できる。一方で、スリット31であれば、ケーブル部材Cが挿通する部分以外の部分には閉塞しようとする力が作用するため、ケーブル部材Cとスリット31の周縁部との隙間を小さくしやすい。したがって、ドアホールカバー1の止水性および遮音性を確保しやすい。ドアホールカバー1によるこのような効果は、ケーブル部材Cが前述のドアラッチケーブルであった場合、特に有効である。
【0039】
また、貫通孔11を挿通するケーブル部材Cの太さおよび数によって、スリット31を必要最小限の大きさとなるように調整することも容易である。スリット31を必要最低限の大きさに調整すれば、ケーブル部材Cとスリット31の周縁部との隙間を最小限とすることが容易である。ここで、スリット31が蓋体30に形成される態様によれば、カバー部材10の設計は変更せず、蓋体30のスリット31の大きさのみ調整すればよい。そのため、ドアホールカバー1の製造工程を大きく変更せず、ドアDにおけるケーブル部材Cの設定に応じて、スリット31の大きさを容易に調整できる。
【0040】
蓋体30は、貫通孔11を覆った状態で、車外側から見た場合に貫通孔11の外形よりも外側の部分において、貫通孔11を囲む全周に亘ってカバー部材10に固定されていることが好ましい。このような構成によれば、貫通孔11は、蓋体30のスリット31以外の部分において閉塞する。そのため、ドアホールカバー1の止水性および遮音性を良好に確保できる。なお、蓋体30は、貫通孔11を覆っている限りにおいて、蓋体30の一部がカバー部材10に固定されていればよく、貫通孔11を囲む全周に亘って固定されていることを要さない。
【0041】
蓋体30の形状は、貫通孔11を車外側から覆うことが可能な限りにおいて、特に限定されない。本実施形態において、蓋体30は、可撓性を有するシート状部材として構成されている。蓋体30が可撓性を有していれば、貫通孔11がカバー部材10の車外側に突出する突出部に形成されていた場合でも、蓋体30が貫通孔11を覆う形状に変形容易である。
【0042】
また、蓋体30は、可撓性が小さい一方で、貫通孔11の周縁部の形状に対応する立体的な形状を有していてもよい。例えば、蓋体30は、カバー部材10の外面10bと対向する面である第1面と、当該第1面の端部から車内側に延伸する側面である第2面とを有する形状であってもよい。この場合、スリット31は、第1面および第2面の少なくともいずれかに形成されていればよい。このような形状であれば、蓋体30は、貫通孔11がカバー部材10の車外側に突出する突出部に形成されていた場合でも、当該突出部ごと貫通孔11を覆うことができる。
【0043】
本実施形態において、蓋体30は、シール部材20の一部と連結して一体的に形成されている。シール部材20は、例えば、押出し成形部と型成形部とにより構成される場合がある。この場合、押出し成形部は、カバー部材10の周縁に沿って延びる部分であってよい。型成形部は、押出し成形部における延伸方向の2つの端部それぞれに接続し、当該2つの端部の間に形成される隙間を塞ぐ部分であってよい。
【0044】
蓋体30がシール部材20の一部と連結して一体的に形成される態様としては、例えば、シール部材20が有する型成形部が、蓋体30としても機能する態様が挙げられる。このように、シール部材20が有する型成形部を、貫通孔11の形成位置まで延長して貫通孔11を覆う形状とすれば、当該型成形部の設計変更のみによりドアホールカバー1に蓋体30を設けることができる。なお、蓋体30は、シール部材20の一部である押出し成形部と連結して一体的に形成されていてもよい。
【0045】
このように、蓋体30は、シール部材20の一部としての機能と、貫通孔11を覆う機能との両方を有していることで、ドアホールカバー1の止水性および遮音性の向上に寄与できる。また、シール部材20の一部を蓋体30として一体的に形成すれば、ドアホールカバー1の部品点数を増加させることなく、止水性および遮音性に優れたドアホールカバー1を製造できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」等の達成にも貢献するものである。
【0046】
また、蓋体30は、シール部材20の一部と一体的に形成されていることを要さず、スリット31が形成された位置とは異なる蓋体30の一部と、シール部材20の一部とが、車内外方向において重なって位置していればよい。図2の符号202に示す図には、蓋体30とシール部材20とが重なる位置を、重複部32として一点鎖線で囲んで示している。このような構成によれば、蓋体30における重複部32は、シール部材20のシール機能を補強できる。このような蓋体30であっても、シール部材20のシール機能を補強する機能と、貫通孔11を覆う機能との両方を有していることで、ドアホールカバー1の止水性および遮音性の向上に寄与できる。
【0047】
重複部32は、蓋体30において、スリット31が形成された位置とは異なる部分となるように設定される。このような構成によれば、重複部32が、スリット31へのケーブル部材Cの挿通を妨げない。
【0048】
蓋体30の材料は特に限定されないが、カバー部材10またはシール部材20の材料と同様に、例えば加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、複合体または金属であってよい。蓋体30は、これらのうち単一の材料により形成されていてもよく、複数の材料により形成されていてもよい。蓋体30がシール部材20と一体的に形成される場合、製造性の観点から、蓋体30の材料は、シール部材20と同じ材料であることが好ましい。
【0049】
蓋体30の材料は、加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマー等の、可撓性を有する材料であることが好ましい。蓋体30がこのような材料であれば、貫通孔11の周縁部の形状を問わず、必要に応じて蓋体30が変形して貫通孔11を覆うことが容易である。
【0050】
また、蓋体30において少なくとも重複部32が可撓性を有する材料で形成されていれば、重複部32において、蓋体30がシール部材20のシール機能を容易に補強可能である。また、蓋体30において少なくともスリット31の周縁部が可撓性を有する材料で形成されていれば、スリット31にケーブル部材Cを挿通しやすく、また、スリット31の周縁部とケーブル部材Cとの隙間が小さくなりやすい。
【0051】
〔変形例〕
本実施形態に係るドアホールカバー1は、種々の変形例が想定される。例えば、図4に示すように、ドアホールカバー1が備える蓋体30に形成されるスリット31は、1本の直線状の切り込みに限られない。
【0052】
ドアホールカバー1は、例えば、1本の曲線状の切り込みであるスリット31aを有する蓋体30aを備えていてもよい。「曲線状」とは、例えば、スリット31aのような規則的な波線状であってもよく、不規則に曲がる波線状であってもよく、円弧状であってもよい。スリット31aによれば、直線状のスリット31よりもケーブル部材Cが挿通しやすく、ケーブル部材Cとスリット31aの周縁部との隙間が小さくなりやすい。
【0053】
また、蓋体30には、スリットが複数形成されており、このうち少なくとも2つのスリットは互いに交差していてもよい。例えば、ドアホールカバー1は、蓋体30bを備えていてもよい。蓋体30bは、2つのスリットが交差して十字状を形成するスリット31bを有する。「スリット31b」は、蓋体30bに形成される2つの交差するスリットを、まとめて1つの部材名として称している。このように、蓋体30bに形成される挿通部は、複数のスリットの組み合わせであるスリット31bとして形成されていてもよい。蓋体30bには、挿通されるケーブル部材Cの本数に応じて、複数のスリット31bが形成されていてもよい。
【0054】
また、例えば、ドアホールカバー1は、蓋体30cを備えていてもよい。蓋体30cは、3つのスリットが交差してアステリスク形状を成すスリット31cを有する。「スリット31c」は、蓋体30cに形成される3つの交差するスリットを、まとめて1つの部材名として称している。蓋体30cには、挿通されるケーブル部材Cの本数に応じて、複数のスリット31cが形成されていてもよい。
【0055】
このように、蓋体30bおよび蓋体30cのように、複数のスリットが形成されていれば、ケーブル部材Cを挿通しやすく、ケーブル部材Cと各スリットの周縁部との隙間が小さくなりやすい。
【0056】
また、本実施形態に係るドアホールカバー1の他の変形例について、図5を参照して説明する。図5に示す蓋体30dのように、挿通部は、スリットではなく、ケーブル部材Cにおける延伸方向と直交する断面の形状に対応する形状の、少なくとも1つの挿通孔31dを含んでいてもよい。蓋体30dには、ケーブル部材Cの当該断面の形状が略正円形状である場合を例として、挿通孔31dの開口形状も略正円形状である。また、蓋体30dには、2つの挿通孔31dが形成されているため、2本のケーブル部材Cが挿通可能である。ケーブル部材Cの前記断面の形状は、略正円形状に限られず、例えば、楕円形状であってもよく、多角形状であってもよい。
【0057】
また、蓋体30eのように、挿通部31eは、ケーブル部材Cの前記断面形状に対応する形状の挿通孔と、当該挿通孔に接続するスリットとの組み合わせとして形成されていてもよい。当該構成によれば、挿通部31eの周縁部とケーブル部材Cとの間が固定されず、ケーブル部材Cは挿通部31eの周縁部に対して移動しやすい。また、挿通部31eにおけるスリット部分は、ケーブル部材Cの移動時以外は閉塞した状態となるため、ドアホールカバー1の止水性および遮音性についても確保できる。
【0058】
なお、挿通部が2つ以上の挿通孔を含む場合、これらの挿通孔は、蓋体30dに形成される2つの挿通孔31dのように互いに独立して形成されていてもよい。また、蓋体30eに形成される挿通部31eのように、2つの挿通孔が互いに繋がって形成されていてもよい。
【0059】
〔製造方法〕
本実施形態に係るドアホールカバー1の製造方法において、カバー部材10は、従来の製造方法をそのまま適用して製造できる。また、ドアホールカバー1において、蓋体30は、シール部材20の一部と連結して一体的に形成されていることが好ましい。このようなドアホールカバー1の製造方法は、スリット31等の挿通部が形成される位置とは異なる蓋体30の一部と、シール部材20の一部とが連結するように、蓋体30とシール部材20の一部と、を一体的に成形する工程を含んでいてもよい。当該工程は例えば、型成形により、シール部材20の一部である型成形部と、蓋体30とを一体的に成形することで実施できる。
【0060】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 ドアホールカバー
10 カバー部材
10b 外面(車外側の面)
11 貫通孔
20 シール部材
30、30a、30b、30c、30d、30e 蓋体
31、31a、31b、31c スリット(挿通部)
31d 挿通孔(挿通部)
31e 挿通部
32 重複部(蓋体の一部、シール部材の一部)
C ケーブル部材
D2 ドアインナーパネル
D4 ドアホール
図1
図2
図3
図4
図5