(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086592
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】バナナ抽出物及びバナナ抽出物の用途
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9794 20170101AFI20240620BHJP
A61K 36/88 20060101ALI20240620BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240620BHJP
A61K 31/7016 20060101ALI20240620BHJP
A61K 31/194 20060101ALI20240620BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20240620BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240620BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K36/88
A61P17/14
A61K31/7016
A61K31/194
A61Q7/00
A61K8/73
A61K8/42
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191689
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】111148602
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520325072
【氏名又は名称】大江生医股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 詠 翔
(72)【発明者】
【氏名】林 煥 祐
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD211
4C083AD212
4C083CC37
4C083EE22
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA92
4C088AB71
4C088AC03
4C088CA05
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA92
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA11
4C206GA28
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA92
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヘアヘルスケア組成物を提供する。
【解決手段】有効量のバナナ花抽出物とキャリアを含むヘアヘルスケア組成物であって、前記バナナ花抽出物は、式(I)で示される化合物I、式(II)で示される化合物II、或いはそれらの組み合わせである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のバナナ花抽出物とキャリアを含むヘアヘルスケア組成物であって、前記バナナ花抽出物は、下記の式(I)で示される化合物I、下記の式(II)で示される化合物II、或いはそれらの組み合わせである
【化1】
ことを特徴とするヘアヘルスケア組成物。
【請求項2】
下記の式(I)で示される化合物I、下記の式(II)で示される化合物II、或いはその組み合わせである
【化2】
ことを特徴とするバナナ花抽出物。
【請求項3】
ヘルスケア組成物の調整に使用され、前記バナナ花抽出物は、
バナナの花の雄蕊の水性抽出ステップを経て抽出することにより得られる
ことを特徴とするバナナ花抽出物の用途。
【請求項4】
前記バナナ花抽出物は毛根の直径を高める作用を具備する
ことを特徴とする請求項3に記載のバナナ花抽出物の用途。
【請求項5】
前記バナナ花抽出物は毛嚢の安定性を高める作用を具備する
ことを特徴とする請求項3に記載のバナナ花抽出物の用途。
【請求項6】
前記バナナ抽出物は抜け毛を減少させる作用を具備する
ことを特徴とする請求項3に記載のバナナ花抽出物の用途。
【請求項7】
前記バナナ抽出物は、前記バナナの花の雄蕊の水性抽出ステップ、再抽出ステップ、及び洗浄ステップを経て抽出される
ことを特徴とする請求項3に記載のバナナ花抽出物の用途。
【請求項8】
前記バナナ抽出物は、下記の式(I)で示される化合物I、下記の式(II)で示される化合物II、或いはその組み合わせである
【化3】
ことを特徴とする請求項7に記載のバナナ花抽出物の用途。
【請求項9】
前記バナナ抽出物はジヒドロテストステロンの生成を抑制する作用を具備する
ことを特徴とする請求項7に記載のバナナ花抽出物の用途。
【請求項10】
前記バナナ抽出物は育毛を促進させる作用を具備する
ことを特徴とする請求項7に記載のバナナ花抽出物の用途。
【請求項11】
前記バナナ抽出物は毛嚢細胞が増殖するのを高める作用を具備する
ことを特徴とする請求項7に記載のバナナ花抽出物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバナナ抽出物及びバナナ抽出物の用途に関し、特に、ヘアヘルスケア用のバナナ抽出物、及びバナナ抽出物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
バナナは生で食べるだけにとどまらず、様々なデザートとしても人気があるトロピカルフルーツである。現在、台湾のバナナ作付面積は約1万ヘクタールで、その豊富な生産量は国内への販売に加えて、海外への輸出も行われている。
【0003】
また、バナナの花には前方にある雄花、中性の花に加え、雌花が存在するが、雌花の底部の子房だけが成長した後に果実となることができる。ここで、バナナの果実となる栄養分を奪い合うことを避けるため、雄花に関しては間引かれることが多い。ここで、間引かれるように切り取られた雄花はバナナの花とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、男性が禿げ(ハゲ)やすい原因としては遺伝的な要素や体質に加えて、ホルモンが関係していると考えられている。
【0005】
人間の体内に存在する男性ホルモンであるテストステロン(Testosterone)は、リダクターゼの作用によりジヒドロテストステロン(DHT)に変換される。そして、毛髪はこのDHTの影響を受けて徐々に細くなって抜け落ち、長期的には毛嚢(毛包)すらも委縮させてしまう。
【0006】
ファナステリド等の一般的な禿げの治療薬は、男性型脱毛症の悪化を防ぐ効果が認められるものの、性欲減退や、勃起不全や、不妊させにくくしてしまう(男性不妊症)といった副作用も見受けられる。
【0007】
本発明は、これらの事情に鑑みて、副作用が生じない禿げの治療法を提供すると共に、廃棄されてしまうバナナの花の他の用途を開拓すべく、毛髪の健康管理をする組成物及びバナナ抽出物、並びに、毛髪の健康管理をする組成物を調製する際の用途を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.有効量のバナナ花抽出物とキャリアを含むヘアヘルスケア組成物であって、前記バナナ花抽出物は、下記の式(I)で示される化合物I、下記の式(II)で示される化合物II、或いはそれらの組み合わせである
【0009】
【0010】
ことを特徴とするヘアヘルスケア組成物。
【0011】
2.また、下記の式(I)で示される化合物I、下記の式(II)で示される化合物II、或いはその組み合わせである
【0012】
【0013】
ことを特徴とするバナナ花抽出物。
【0014】
3.また、ヘルスケア組成物の調整に使用され、前記バナナ花抽出物は、
バナナの花の雄蕊の水性抽出ステップを経て抽出することにより得られる
ことを特徴とするバナナ花抽出物の用途。
【0015】
4.また、前記バナナ花抽出物は毛根の直径を高める作用を具備する
ことを特徴とする上記3.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【0016】
5.また、前記バナナ花抽出物は毛嚢の安定性を高める作用を具備する
ことを特徴とする上記3.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【0017】
6.また、前記バナナ抽出物は抜け毛を減少させる作用を具備する
ことを特徴とする上記3.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【0018】
7.また、前記バナナ抽出物は、前記バナナの花の雄蕊の水性抽出ステップ、再抽出ステップ、及び洗浄ステップを経て抽出される
ことを特徴とする上記3.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【0019】
8.また、前記バナナ抽出物は、下記の式(I)で示される化合物I、下記の式(II)で示される化合物II、或いはその組み合わせである
【0020】
【0021】
ことを特徴とする上記7.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【0022】
9.また、前記バナナ抽出物はジヒドロテストステロンの生成を抑制する作用を具備する
ことを特徴とする上記7.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【0023】
10.また、前記バナナ抽出物は育毛を促進させる作用を具備する
ことを特徴とする上記7.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【0024】
11.また、前記バナナ抽出物は毛嚢細胞が増殖するのを高める作用を具備する
ことを特徴とする上記7.に記載のバナナ花抽出物の用途。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明によれば、任意の実施形態のバナナの花の抽出物は、ヘアヘルスケア組成物を調製するために使用することができる。本発明の任意の実施形態のバナナの花の抽出物は、毛根の直径を増大させ、毛包の安定性を改善し、脱毛量を減少させ、ジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制し、発毛を促進し、毛包細胞の増殖を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態におけるバナナの花の抽出物のジヒドロテストステロン含有量を抑制した結果を示したグラフである。
【
図2】本発明の実施形態によるバナナ抽出物が毛嚢細胞の増殖を促進した結果を示した図である。
【
図3】本発明の他の実施形態によるバナナ抽出物が毛嚢細胞の増殖を促進した結果を示した図である。
【
図4】ヒト試験による相対平均毛根直径の結果を示すグラフである。
【
図5】ヒト試験による毛嚢の安定性の結果を示すグラフである。
【
図6】ヒト試験の相対平均脱毛結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で使用される「バナナの花」とは、植物のバナナの花を指す。
【0028】
本発明の実施形態では、バナナの花の抽出物は、バナナ(Musa sapientum L.)のバナナの花、AABシルクのバナナ(Musa spp.AAB Silk)のバナナの花、ピンクバナナ(Musa spp.ABB Bluggoe)のバナナの花、バナナ(Musa spp.AAA Robusta)のバナナの花、及びハニーバナナ(Musa spp.AAB Bluggoe)のバナナの花、又はバナナ(Musa paradisiacal)のバナナの花から抽出され得る。
【0029】
また、本実施形態では、バナナ花抽出物(バナナの花の抽出物)を抽出するために使用されるバナナの花は、バナナの花の雄蕊(雄しべ)であっても良い。なお、バナナの花には、生のもの、乾燥したもの、冷凍のものが存在する。
【0030】
本実施形態では、バナナ抽出物を抽出するために使用されるバナナの花は、バナナの花の全体であっても良く、又は、バナナの花を刻み、さいの目状に切り、製粉し、粉砕し、或いは、その他の方法で物理的に加工して、原料のサイズや物理的な形状を、本来のものと変えても良い。
【0031】
本実施形態では、バナナ抽出物の抽出ステップ(以下、「工程」とも言う場合がある。)は、水性抽出ステップを含む。また、本実施形態では、バナナ抽出物の抽出ステップは、再抽出ステップ及び洗浄ステップを更に含む。
【0032】
水性抽出ステップ:バナナの花の雄蕊を水で抽出して、バナナの花の水抽出物を得る。
【0033】
再抽出ステップ:バナナの花の水抽出物に対して、水とn-ブタノールを溶媒として液相分配抽出を行い、n-ブタノール分離層を得る。
【0034】
溶出工程:n-ブタノール分離層を水、水とメタノールの混合メタノール溶液をそれぞれ用いて溶出する。
【0035】
本実施形態において、水性抽出ステップは、水を一定の温度範囲に加熱し、その後、その水にバナナの花を添加し、混合した後更に、上記の温度を一定時間維持して、バナナの花の水抽出物を調製することを指す。
【0036】
本実施形態では、一定の温度範囲は、30℃から65℃の間、40℃から60℃の間、又は45℃から55℃の間を指す。
【0037】
本実施形態では、一定時間は50分から100分の範囲である。例えば、バナナの花を50℃の水と混合し、50℃で50分間保持して抽出することにより、バナナの花の水抽出物が得られる。
【0038】
本実施形態では、水性抽出ステップにおいて、水対バナナの花の重量比は2~11:1~4である。たとえば、水:バナナの花は4:1であっても良い。
【0039】
本実施形態では、水抽出工程において、バナナの花の雄蕊を水で抽出することによって得られた一次抽出物に対して、遠心分離ステップ又は濾過ステップの少なくとも何れかを実施することで、バナナの花の水性抽出物を得ることができる。遠心分離ステップとは、最初の抽出液を遠心分離して上清を得るステップをいう。
【0040】
本実施形態では、濾過ステップは、遠心分離ステップから得られた上清(または一次抽出物)をスクリーンに通して溶液中の固体を濾過し、濾液を取得することを指す。例えば、スクリーンは350メッシュ(mesh)のスクリーンであっても良い。すなわち、バナナの花の水抽出物は、上記の一次抽出物であっても良いし、遠心分離ステップにより得られる上清であっても良く、或いは、濾過ステップにより得られる濾液であっても良い。
【0041】
本実施形態では、再抽出ステップにおいて、n-ブタノール対水の比は3:1であってもよい。
【0042】
本実施形態では、フラッシングステップは二次フラッシュであっても良い。このうち、第一のフラッシングは、純水分離部とメタノール水溶液分離部を得るために、n-ブタノール分離層上で水とメタノールからなる3次線形勾配による生物活性誘導分離であっても良い。
【0043】
二次フラッシュは、水分離セクションで純水から50%メタノール溶液までの直線溶出勾配を使用する逆相-高速カラムクロマトグラフィーであり得る。また、メタノール水溶液分離部では、純水から100%メタノールまでの直線溶出勾配で逆相-高速カラムクロマトグラフィーを実行する。
【0044】
本実施形態において、バナナ抽出物は、下記の式(I)で示される化合物I、下記の式(II)で示される化合物II、或いはそれらの組み合わせである
【0045】
【0046】
このうち、化合物Iは窒素-β-シトロイルドーパミンN-β-Citroyldopamine)であり、化合物 II は 6,2',3',6'-オキシ-テトラエチル-3-オキソ-トランス-p-クマリルスクロース (6,2’,3’,6’-O-tetraacetyl-3-O-trans-p- coumaroylsucrose)である。
【0047】
本実施形態では、バナナの花の抽出物は、バナナの花の水性抽出物、化合物I、化合物II、又は化合物Iと化合物IIの組み合わせであり得る。
【0048】
本実施形態では、バナナの花の抽出物の有効用量は1グラム/日である。
【0049】
また、本実施形態では、バナナの花の抽出物を、ヘアケア組成物を調製するために使用することができる。
【0050】
本実施形態では、前述の組成物は健康食品(サプリメント)であっても良い。換言すると、このサプリメントにはバナナの花のエキスが有効な量含まれる。
【0051】
本実施形態では、前述のヘルスケア組成物は、当業者に周知の技術を使用して、経腸投与又は経口投与に適した剤形に製造することができる。
【0052】
これらの投薬剤のタイプとしては、錠剤(tablet)、トローチ(troche)剤、丸剤(pill)、カプセル(capsule)剤、分散性粉末(dispersible powder)、又は細粒剤(granule)、溶液、懸濁液(suspension)、エマルション(emulsion)、シロップ(syrup)、エリキシル(elixir)剤、濃厚スラリー(slurry)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本実施形態では、前述のヘルスケア組成物は、当業者に周知の技術を使用して、非経口(parenterally)又は局所投与に適した剤形に製造することができる。これらの投薬剤のタイプには以下が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、注射剤(injection)、滅菌粉末(sterile powder)、外用剤(external preparation)等であっても良い。
【0054】
本実施形態では、ヘルスケア組成物は、以下からなる群から選択される非経口経路(parenteral routes)によって投与されても良い。
【0055】
投与の仕方としては、例えば、皮下注射(subcutaneous injection)、表皮内注射(intraepidermal injection)、比内注射(intradermal injection)、及び病巣内注射(intralesional injection)が挙げられる。
【0056】
本実施形態では、ヘルスケア組成物は、食品製造技術で広く使用されている投薬学に許容される担体(pharmaceutically acceptable carrier)を更に含むことができる。
【0057】
例えば、投薬学に許容される担体には、次の試薬の1つ又は複数が含まれる場合があり、具体的には、溶媒(solvent)、緩衝液(buffer)、乳化剤(emulsifier)、懸濁剤(suspending agent)、分解剤(decomposer)、崩壊剤(disintegrating agent)、分散剤(dispersing agent)、結合剤(binding agent)、賦形剤(excipient)、安定化剤(stabilizing agent)、キレート剤(chelating agent)、希釈剤(diluent)、ゲル化剤(gelling agent)、防腐剤(preservative)、湿潤剤(wetting agent)、潤滑剤(lubricant)、吸収遅延剤(absorption delaying agent)、リポソーム(liposome)及びこれらに近似するもの等である。
【0058】
これらの試薬の選択と量は、当業者の専門知識と常識的な技術の範囲内である。
【0059】
本実施形態では、食品許容可能な担体は、水、生理食塩水(normal saline)、リン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline, PBS)、アルコールを含む水溶液(aqueous solution containing alcohol)からなる群から選択される溶媒(溶剤)を含む。
【0060】
本実施形態では、前述のヘルスケア組成物は食用組成物であっても良い。本実施形態では、食用組成物は食品に製造することができ、又は、食品添加物(food additive)とすることもできる。
【0061】
意味としては、一般的な方法により食品原料を調製する際に添加して食品を製造すること、又は食品の製造過程で添加することである。
【0062】
ここで、食品は、人間又は動物が摂取するために可食材料を配合した製品であってもよい。
【0063】
本実施形態では、食品は、飲料(beverages)、発酵食品(fermented foods)、ベーカリー製品(bakery products)、健康食品(health foods)、及び栄養補助食品(dietary supplements)であっても良いが、これらに限定されない。
【0064】
実施例1:バナナの花の抽出物の調製
まず、台湾産のバナナ(学名:Musa paradisiacal)を使用し、雄蕊をバナナの花として採取する。
【0065】
次に、水を溶媒(溶剤)として使用し、水を50±5℃に加熱した後、バナナの花を加える。このうち、バナナの花と水の重さの比は1:4とする。バナナの花を水と混合し、50±5℃で50分間抽出して初期抽出物を得る。
【0066】
続いて、最初の抽出物を350網目の篩を使って濾過し、バナナの花の水抽出物を得る。
【0067】
次に、上記バナナの花の水抽出物10リットルを取り、n-ブタノールと水とを3:1で用いて液相分配抽出を行い、n-ブタノール層抽出物と水層抽出物を得る。
【0068】
ここで、バナナの花の水抽出物中の極性の高い物質は、n-ブタノール中に残留してn-ブタノール層抽出物を形成し、水溶性物質は水中に残留して水層抽出物を形成する。
【0069】
次に、n-ブタノール層抽出液を減圧下で濃縮させて乾燥し、n-ブタノール層抽出物(BUF)24.6gを得る。水層抽出物を濃縮し、減圧下で乾燥させて、198.7グラムの水層抽出物(WF)を得る。
【0070】
これに基づいて、バナナの花の抽出物10リットル(L)から合計 223.3グラムの粉末抽出物が得られると計算できる。そのうち、n-ブタノール層抽出物(BUF)は11%、水層抽出物(WF)は89%である。
【0071】
次に、バイオアッセイガイド分別法(Bioassay guided fractionation)を使用して、n-ブタノール層抽出物20グラム(g)を採取し、マクロ多孔質樹脂カラムクロマトグラフィー(Diaion HP-20 column chromatography60×5cm)を実行する。
【0072】
溶離液には純水、メタノール溶液(メタノール/純水=50/50)、メタノール(100%)を使用する。順次抽出することにより、BU1分離部、BU2分離部、及びBU3分離部の3つの分離部が得られる。
【0073】
このうち、BU1分離部では、逆相-高速カラムクロマトグラフィー(RP-MPLC)を使用して分離し、水から50%メタノール溶液まで順次溶出させ(なお、溶出勾配は、純水0minから50%メタノール溶液80minまでの直線勾配となる)、その後の薄層クロマトグラフィー(Thin-Layer Chromatography)を使用する。
【0074】
検出波長は210nmと280nm、流量は20mL/minで30mLずつ回収部に回収し、合計54の画分(区分)が得られ、同様の結果が得られた抽出物を組み合わせて5つの二次分離部を得る。5つの二次分離部をそれぞれ、BU1-1二次分離部、BU1-2二次分離部、BU1-3二次分離部、BU1-4二次分離部、及びBU1-5二次分離部と呼ぶ。
【0075】
そして、BU1-3二次分離部をHPLC(検出波長210nm)で分離精製し、20%メタノールを移動相とした逆相カーボン18カラムで精製して化合物Iを得る。
【0076】
化合物Iを、1H、13C、2D-NMR (HSQC、HMBC、COSY、NOESYを含む)及びHR-LC-ESI-MSMS(測定された模擬分子量はm/z350.0845 [M+Na]+、理論的な模擬分子式はC14H16NO8、理論的な模擬分子量はm/z 350.0840、実際の分子式C14H17NO8)は、下記式(I)の化学構造を有する窒素-β-シトロイルドーパミン(N-β-Citroyldopamine)であることが確認された。
【0077】
【0078】
このうち、BU2分離部では、分離に逆相-高速カラムクロマトグラフィー(RP-MPLC)を使用し、水からメタノールまで順次洗浄(溶出勾配は純水0minから100%メタノール120minまでの直線勾配)される。
【0079】
続いて、薄層クロマトグラフィー(Thin-Layer Chromatography)を用い、検出波長210nmと280nm、流速20mL/minで30mLずつ回収部に回収し、合計80個の回収部を用意し、同様の結果を持つ抽出物を組み合わせた。
【0080】
そして、10個の二次分離部を取得し、二次分離部は、それぞれBU2-1二次分離部、BU2-2二次分離部、BU2-3二次分離部、BU2-4二次分離部、BU2-5二次分離部、BU2-6二次分離部、BU2-7二次分離部、BU2-8二次分離部、BU2-9二次分離部、及びBU2-10二次分離部である。
【0081】
次に、BU2-8二次分離部をHPLC(検出波長310nm)で精製し、45%メタノールを移動相とした逆相カーボン-18カラムで精製して化合物IIを得る。
【0082】
化合物IIは、1H、13C、2D-NMR及びHR-LC-ESI-MSMS(実測模擬分子量 はm/z 655.1888 [M+H]+、理論模擬分子式はC29H35O17、理論模擬分子量は m/z 655.1880、実際の分子式はC29H36O17)によって、6,2',3',6'-オキシ-テトラアセチル-3-オキシ-トランス-p-芳香族(6,2’,3’,6’-O-tetraacetyl-3-O-trans-p-coumaroylsucrose)であることが確認され、且つ下記式(II)の化学構造を有する。
【0083】
【0084】
ここで、バナナの花の水性抽出物、化合物I及び化合物IIはバナナの花抽出物である。
【0085】
実施例2:バナナの花の抽出物がジヒドロテストステロンを抑制する試験
若い男性の禿げ患者では、額の毛嚢(毛包)におけるジヒドロテストステロン(Dihydrotestosterone,DHT)の産生の大幅な増加が観察される。そこで、ジヒドロテストステロンの増加を抑制できれば、毛包を保護し、発毛を促進することができる。
【0086】
この試験では、様々な濃度のバナナ抽出物で処理した後に、ヒト前立腺細胞のジヒドロテストステロン含有量が減少するかどうかを測定し、一般的な男性型脱毛症治療薬ファナステリド(Finasteride)と比較した。
【0087】
材料と装置の説明:
細胞株:ヒト前立腺細胞LNcap(BCRCから購入;保存番号Cat.60088)、以下、LNcap細胞と言う。
【0088】
細胞培養液(ヒト前立腺細胞LNcap細胞培養液):RPMI1640培地(Medium,RPMI)、粉末 (powder,Gibco; Cat. 31800-022)、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco;Cat.10437-028)、1%抗生物質抗真菌剤 (Antibiotic-Antimycotic ,AA) (Gibco; Cat. 15240-062)を使用する。
【0089】
試薬は、1XDPBS (Gibco、Cat. 14200-075)、トリプシン(1XTrypsin-EDTA,Thermoから購入,Cat. FNN0011)、フィナステリド (フィナステリ又はフィナステリドFinasterideとしても知られ、Sigmaから購入、Cat.F1293)、テストステロン(Testosterone、Sigmaから購入; Cat. T1500)、細胞溶解緩衝液(バッファー)(cell lysis buffer、RIPA Lysis and Extraction Buffer(Thermo #89900)から購入)である。
【0090】
検査キットは、ジヒドロテストステロンELISA試薬検査キット(USCN; CEA443Ge)である。
【0091】
テストプロセスは以下の流れで行われる。
【0092】
まず、LNcap細胞を6ウェル細胞培養プレートに1×105細胞の密度で移植し、5%の二酸化炭素インキュベーター内で37℃、24時間培養する。
【0093】
培養したLNcap細胞を実験群A、実験群B、対照群及びブランク群に分ける。ここで、実験群Aには実施例1で調製した化合物Iを10μg/mL添加し、実験群Bには化合物Iを5μg/mL添加する。対照群には20μg/mL Ropeを補充し、ブランク群には細胞培養培地のみを補充する。
【0094】
次に、10mg/mLのテストステロンを各群に加え、37℃の二酸化炭素インキュベーターに2時間入れた。
【0095】
各群の上清を除去した後、培養プレートに1XDPBSを使用して2回洗浄し、200μLのトリプシンを添加する。37℃の5%二酸化炭素インキュベーター内でLNcap細胞と3分間インキュベートし、細胞培養プレートを軽く叩いてLNcap細胞を懸濁する。
【0096】
続いて、細胞培養培地600μLを各ウェルに添加して、トリプシンの作用を停止させる。各ウェルの細胞液を集めて1.5mL微量遠心管に移し、400xgで5分間にわたり遠心分離を行う。微量遠心管の上清を除去し、洗浄のために200μL1XDPBSをチューブに加えて、LNcap細胞を洗浄する。マイクロ遠心管を再度5分間にわたり遠心分離して上清を除去する。
【0097】
次に、200μLの1X細胞溶解緩衝液(バッファー)をチューブに追加して、LNcap細胞を溶解する。4℃、13,000rpmで5分間遠心分離し、上清を集めて1.5mL微量遠心管に保管する。最後に、ジヒドロテストステロンELISA試薬検出キットを使用して、LNcap細胞内のジヒドロテストステロン含有量を検出する。(詳しい操作は工場出荷時の取扱説明書に準ずる)。
【0098】
試験結果:
ここでは、統計的に有意な差があるかどうかを判断するために片側スチューデントt検定を使用して2つの比較群を分析し、p 値を取得する。なお、図中、「*」はp値が0.05未満であることを示し、「**」はp値が0.01未満であることを示す。 また、「*」の数が多い程、統計的に有意な差が生ずる。
【0099】
図1を参照されたい。ブランク群のジヒドロテストステロン含有量は 32.8 pg/mLである。対照群のジヒドロテストステロン含有量は17.16 pg/mLである。実験群Aのジヒドロテストステロン含量は25.03 pg/mLであり、実験群Bのジヒドロテストステロン含量は25.20 pg/mLであった。
【0100】
これにて、ロペイ又はバナナ抽出物を使用した実験群Aと実験群Bのどちらがブランク群と比較して統計的に有意な差があることがわかる。つまり、ジヒドロテストステロンを抑制する作用があることが分かる。
【0101】
更に、5μg/mLの濃度でのバナナ抽出物Bの有効性は、ブランク群と比較して有意な差を生み出す可能性がある。バナナ抽出物Bは、10μg/mLの濃度で、p値が0.01未満の市販薬Ropepaと同様の顕著な効果を示す。このように、バナナの花のエキスには髪の健康上の利点があることが分かる。
【0102】
実施例3:バナナの花のエキスが毛包細胞の増殖を促進させる試験
毛包(毛嚢)細胞は髪の基礎であり、成長期には毛根の毛包球部の細胞が1日に1回分裂することができ、毛包細胞の増殖を促進することで髪の成長を促進することができる。この試験では、化合物Iで処理したヒト毛包細胞の増殖を調査した。
【0103】
材料と装置の説明:
細胞株:ヒト毛包毛乳頭細胞(Human Follicle Dermal Papilla Cells,HFDPC)(PromoCellから購入;Cat.C-12071)、以下単に「HFDPC細胞」とも言う。
【0104】
細胞培養培地:毛包毛乳頭細胞増殖培地(Follicle Dermal Papilla Cell Growth Medium 培養液)(PromoCell から購入; Cat. C-26501)。
【0105】
試薬:10XDPBS(Gibco、Cat.14200-075)、トリプシン(1XTrypsin-EDTA,Thermoから購入、Cat. FNN0011)。
【0106】
試験キットは、組成物C(Dimethyl sulfoxide DMSO)、組成物D(Click-iTTM fixative)、組成物E(Click-iTTM saponin-based permeabilization and wash reagent)、組成物F(Copper protectant)、および組成物G(Click-iTTM EdU buffer additive)を含む細胞増殖ELISA試薬試験キット(Click-iTTM Plus EdU Flow Cytometry Assay Kits-Alexa FluorTM 488 picolyl azide, 50 tests ブランドInvitrogenモデル C10632)である。
【0107】
テストプロセス:
まず、HFDPC細胞を6ウェル細胞培養プレートに1×105の密度で移植し、5%の二酸化炭素インキュベーター内で、更に37℃で、24時間培養する。
【0108】
培養したHFDPC細胞を実験群とブランク群に分けた。ここで、実験群には実施例1で調製した10μg/mLの化合物Iを添加し、ブランク群には細胞培地のみを添加した。
【0109】
次に、10μMの組成物Cを各群に添加し、次いで、37℃の二酸化炭素インキュベーター中に2時間置く。
【0110】
各群の細胞培養液を除去した後、培養プレートを1XDPBSで1回洗浄する。トリプシン200μLを加え、HFDPC細胞を37℃で、更に5%の二酸化炭素インキュベーター内で5分間インキュベートし、細胞培養プレートを軽く叩いてHFDPC細胞を懸濁する。
【0111】
続いて、上清を除去した後、各ウェルに細胞培養液を200μL添加し、トリプシンの作用を停止させる。
【0112】
次に、各ウェル内の細胞液を収集し、1.5mL微量遠心管に入れ、400xgで5分間にわたり遠心分離を行う。微量遠心管内から上清を除去し、1XDPBSで洗浄し、遠心分離(400xgで5分間)を行い、上清を除去し、100μLの組成物Dを管内に添加し、室温で10分間暗所に保管する。
【0113】
次に、上清を除去し、1XDPBSで再度洗浄し、遠心分離(400xgで5分間)を行い、上清を除去した後、100μLの組成物Eをチューブに加え、暗所の室温で15分間保存する。次に、1%BSA/PBS洗浄緩衝液(バッファー)300μLを加えた後、400xgで5分間にわたり遠心分離を行う。(このステップを3回繰り返す)。
【0114】
上清を除去した後、100μLの組成物Eをチューブに加え、暗所の室温で15分間保存する。調製したClick-iTTM 試薬(細胞増殖ELISA試薬検出キットの取扱説明書に基づいて構成)100μlを各遠心分離管に加え、暗所の室温で30分間反応させる。
【0115】
300μlの1%BSA/PBS洗浄緩衝液を加えた後、400xgで5分間にわたり遠心分離を行う。最後に、フローサイトメーターを使用して蛍光シグナルを測定する(励起光:488nm、散乱光:527nm&590nm)。
【0116】
試験結果:
ここでは、統計的に有意な差があるかどうかを判断するために片側スチューデントt検定を使用して2つの比較群を分析し、p値を取得した。なお、図において、「*」はp値が0.05未満であることを示し、「**」はp値が0.01未満であることを示す。また、「*」の数が多いほど、統計的に有意な差が生じていることを意味する。
【0117】
図2を参照して説明する。ブランク群のHFDPC細胞の数を100%とすると、実験群のHFDPC細胞の換算数は118.81%となる。化合物Iはブランク群と比較して統計的に有意な差があることが分かり、バナナの花の抽出物には毛包細胞の増殖を促進する効果があることが分かる。
【0118】
実施例4:バナナの花の抽出物が毛包細胞の増殖を促進する試験
毛包細胞は髪の基礎であり、成長期には毛根の毛包球部の細胞が1日に1回分裂することができ、毛包細胞の増殖を促進することで髪の成長を促進することができる。この試験では、化合物IIで処理したヒト毛包細胞の増殖を調査する。
【0119】
材料と装置の説明:
細胞株:ヒト毛嚢細胞(Human Follicle Dermal Papilla Cells,HFDPC)(PromoCellから購入;Cat.C-12071)、以下HFDPC細胞と呼ぶ。
【0120】
細胞培養培地:Follicle Dermal Papilla Cell Growth Medium 培養液(PromoCellから購入,Cat. C-26501)。
【0121】
試薬:10XDPBS(Gibcoから購入,Cat. 14200-075)、トリプシン(1 X Trypsin-EDTA,Thermo公司から購入,Cat. FNN0011)。
【0122】
テストキット:細胞増殖ELISA試薬テストキット(Click-iTTM Plus EdU Flow Cytometry Assay Kits-Alexa FluorTM 488 picolyl azide, 50 tests ブランドInvitrogenモデル C10632)、組成物C(Dimethyl sulfoxide DMSO)、組成物D(Click-iTTM fixative)、組成物E(Click-iTTM saponin-based permeabilization and wash reagent)、組成物F(Copper protectant)、組成物G(Click-iTTM EdU buffer additive)を含む。
【0123】
テストプロセス:
まず、HFDPC 細胞を6ウェル細胞培養プレートに1×105の密度で移植し、5%の二酸化炭素インキュベーター内で、37℃にして、24時間培養する。
【0124】
培養HFDPC細胞を実験群、(陽性)対照群及びブランク群に分ける。ここで、実験群には実施例1で調製した100μMの化合物IIを添加し、対照群には20%FBSウシ胎児血を添加し、ブランク群には細胞培養培地のみを添加する。
【0125】
次に、10μMの組成物Cを各群(グループ)に添加し、次いで、37℃の二酸化炭素インキュベーター中に2時間置く。各グループの細胞培養液を除去した後、培養プレートを1XDPBSで1回洗浄し、トリプシン200μLを加え、HFDP細胞を5%の二酸化炭素インキュベーター内で、37℃の条件下で5分間インキュベートし、細胞培養プレートを軽くたたいてHFDPC細胞を懸濁する。
【0126】
続いて、上清を除去した後、各ウェルに細胞培養液を200μL添加し、トリプシンの作用を停止させる。
【0127】
次に、各ウェルの細胞液を集めて1.5mL微量遠心チューブに移し、400xgで5分間にわたり遠心分離し、微量遠心チューブ内の上清を除去した後、1XDPBSで洗浄し、遠心分離し(400xgで5分間)、上清を除去し、100μLの組成物Dをチューブに加え、暗所の室温で10分間保存する。
【0128】
次に、上清を除去し、1XDPBSで再度洗浄し、遠心分離(400xg、5分間)し、上清を除去し、100μLの組成物Eをチューブに加え、暗所の室温で15分間保存する。次に、1%BSA/PBS洗浄緩衝液(バッファー)300μLを加えた後、400xgで5分間遠心分離する(このステップを3回繰り返す)。
【0129】
上清を除去した後、100μLの組成物Eをチューブに加え、暗所の室温で15分間保存する。調製したClick-iTTM試薬(細胞増殖ELISA試薬検出キット操作マニュアルに基づいて構成)100μlを各遠心分離管に加え、暗所の室温で30分間反応させる。
【0130】
300μlの1%BSA/PBS洗浄緩衝液を加えた後、400xgで5分間にわたり遠心分離する。最後に、フローサイトメーターを使用して蛍光シグナル(励起光:488nm、散乱光:527nm & 590nm)を測定する。
【0131】
試験結果:
ここでは、統計的に有意な差があるかどうかを判断するために片側スチューデントt検定(Student t-test)を使用して2つの比較グループを分析し、p値を取得した。なお、図中、「*」はp値が0.05未満であることを示し、「**」はp値が0.01未満であることを示す。また、「*」の数が多いほど、統計的に有意な差が生じていることを意味する。
【0132】
図3を参照して説明する。ブランク群のHFDPC細胞数を100%とすると、対照群のHFDPC細胞数は117.01%、実験群のHFDPC細胞数は112.54%となる。化合物IIはブランク群と比較して統計的に有意な差があることが分かり、バナナの花の抽出物には毛包細胞の増殖を促進する効果があることがわかる。
【0133】
実施例5:バナナの花の抽出物のヒト試験
対象者:50名(対象者は対照群25名と実験群25名に分けられる)。これらのうち各対象者は20歳以上の成人である。
【0134】
検査項目:毛根径(直径)、毛包の安定性、シャンプー後の平均抜け毛量。このうち、毛根径はデジタル外径マイクロメーターMitutoyo C/N293-100モデルを用いて測定する。
【0135】
このうち、毛包安定性とは、前頭骨、側頭骨、後頭骨の3箇所の毛髪(各部位約60本)を引っ張り上げる力を加え、抜け毛の本数をカウントすることを指す。要するに、引っ張った際に、抜けた毛の本数が少ないほど毛包の安定性が高いことを意味する。
【0136】
また、シャンプー後の平均抜け毛量とは、髪の毛を洗った時に観察される抜け毛の量を指す。
【0137】
試験方法:
実験群の被験者25名に、実施例1で調製した乾燥バナナの花の水抽出物1gを含む粉末を毎日摂取させた。残りの25名の対照被験者は、バナナの花の抽出物を含まないプラセボを12週間毎日摂取させた。
【0138】
摂取前(つまり0週目)に測定されたデータは、それぞれ対照群01及び実験群01と呼ぶ。摂取から4週間後(つまり4週目)に測定したデータをそれぞれ対照群02、実験群02と呼ぶ。また、8週間摂取後(つまり8週目)に測定したデータをそれぞれ対照群03、実験群03と呼ぶ。12週間の摂取後(つまり12週目)に測定されたデータを、それぞれ対照群04及び実験群04と呼ぶ。
【0139】
試験結果:
以下の図は全被験者の平均値を元に、0週目のデータを100%として各群の相対値に換算したものである。
【0140】
このうち標準偏差はExcelソフトのSTDEV式を用いて計算する。Excelソフトウェアで片側スチューデントt検定(Student t-test)を使用して、統計的に有意な差があるかどうかを分析し、そのp値を取得する。
【0141】
また、図において「*」はp値が0.05未満であることを意味し、「**」はp値が0.01未満であることを意味し、「***」はp値が0.001未満であることを意味し、統計的に有意な差異があることを示す。
【0142】
このうち、同じ週数の対照群のデータを比較し、統計的に有意な差があるかどうかをt検定も用いて解析し、p値を求めた。図中の「#」はp値が0.05未満、「##」はp値が0.01未満、「###」はp値が0.001未満であることを意味し、統計的に有意な差異があることを示す。
【0143】
図4を参照して説明する。バナナの花の抽出物を4週間毎日摂取した後、25人の実験群の被験者の平均毛根直径は、0週目の100%(実験群01)から102.5%(実験群02)まで増加した。バナナの花のエキスを8週間毎日摂取し続けたところ、平均毛根径が103.2%まで増加した(実験群03)。バナナの花のエキスを12週間毎日摂取し続けたところ、平均毛根直径が107.8%と大幅に増加した(実験群04)。
【0144】
引き続き
図4を参照されたい。プラセボ群の平均毛根直径は、0週目に100%(対照群01)から101.3%(対照群02)に増加し、8週目に平均毛根直径に達するまでバナナの花の抽出物を毎日摂取し続けた。バナナの花のエキスを12週間にわたり毎日摂取し続けると、毛根の平均直径は102.4%まで増加した(対照群03)。
【0145】
一般に、薄毛は男性型脱毛症の最初の症状の1つである。毛根の直径を測定すると、毛根が徐々に太くなってきており、男性の禿げの状態が改善し始めていることがわかる。この試験の実験群では、0週目から12週目にかけて毛根の直径が更に太くなっていることが分かり、特に12週目では対照群と比較して6.4%も有意に太くなっていることが分かる。つまり、プラセボ効果を差し引いても、バナナの花のエキスを毎日摂取することで毛根の直径が大幅に増大し、毛髪の一本一本がより健康になり、毛髪のヘルスケア効果が得られる。
【0146】
図5を参照されたい。バナナの花の抽出物を4週間毎日摂取した後、25人の実験群の被験者の毛包の安定性は、0週目の100%(実験群01)から86.7%(実験グループ02)に低下した。バナナの花のエキスを8週間毎日摂取し続けた後、毛包の安定性は35.6%に低下した(実験群03)。また、バナナの花の抽出物を12週間毎日摂取し続けると、毛包の安定性は17.8%に大幅に低下した(実験群04)。
【0147】
引き続き
図5を参照されたい。プラセボ群の毛包の安定性は、0週目に100%(対照群01)から88.6%(対照群02)まで増加した。バナナの花のエキスを8週間毎日摂取し続けたところ、平均毛根径が85.7%まで増加した(対照群03)。バナナの花のエキスを12週間毎日摂取し続けると、毛包の安定性は85.7%に低下した(対照群04)。
【0148】
今回の実験群では、0週目から12週目まで、力を加えても脱毛数が大幅に減少し続けることが判明した。特に対照群と比較して、12週目では67.9%と有意に低かった。つまり、プラセボ効果を差し引いても、バナナの花のエキスを毎日摂取すると、力を利用して引っ張っても脱毛する本数が大幅に減少し、毛包の安定性が向上する。髪の健康効果は、髪の毛1本1本を健康にすることで実現し得る。
【0149】
図6を参照されたい。バナナの花の抽出物を12週間毎日摂取した後、25人の実験群の被験者がシャンプーをした際の相対平均脱毛率は、0週目の100%(実験群01)から66.9%(実験群04)まで大幅に減少した。引き続き
図6を参照されたい。プラセボ群の相対平均脱毛率は、0週目の100%(対照群01)から123.2%(対照群04)まで増加した。
【0150】
今回の実験群では、0週目から12週目まで、力を加えても脱毛する本数が大幅に減少し続けることが判明した。特に対照群と比較して、12週目では56.3%と有意に低かった。つまり、プラセボ効果を差し引いても、バナナの花のエキスを毎日摂取すると、力を入れて引っ張ったとしても、脱毛してしまう本数が大幅に減少し、毛包の安定性が向上することが分かる。髪の毛の健康効果は、髪の毛の1本1本を健康にすることで実現し得る。
【0151】
以上のように、任意の実施形態のバナナの花の抽出物は、ヘアヘルスケア組成物を調製するために使用することができる。本発明の任意の実施形態のバナナの花の抽出物は、毛根の直径を増大させ、毛包の安定性を改善し、脱毛量を減少させ、ジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制し、発毛を促進し、毛包細胞の増殖を増加させる。
【0152】
以上のように、本発明の技術内容を好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれ等の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者がなしえる若干の変更や修正を加えたものであっても全て本発明の範囲に含まれる。また、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に基づいて決定されるものとする。